説明

ペット臭消臭用香料組成物及びペット臭消臭剤

【課題】ペット臭、特にネコ排泄物臭に対して顕著な消臭効果を有するペット臭消臭用香料組成物及びペット臭消臭剤を提供する。
【解決手段】A群成分とB群成分とを含有し、B群成分/A群成分で表される質量比が1.0/1〜11.0/1であるペット臭消臭用香料組成物。
A群:1−ヘキサノール、カプロン酸アリル、シス−ジャスモン、シス−3−ヘキセノール、酢酸シス−3−ヘキセニル、シトラール、ユーカリ油、酢酸ヘキシル、ラバンジン油、ライム油、フェニルアセトアルデヒド、ジメチルテトラヒドロベンズアルデヒド
B群:3α,6,6,9α−テトラメチルドデカナフト[2,1−b]フラン、α−アミルシンナミックアルデヒド、酢酸シトロネリル、4(3)−(4−ヒドロキシ−4−メチルペンチル)−3−シクロヘキセン−1−カルボキシアルデヒド、γ−デカラクトン、p−tert−ブチル−α−メチルヒドロシンナミックアルデヒド、酢酸リナリル等

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペット臭消臭用香料組成物及びペット臭消臭剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ネコ、イヌ、ウサギ等のペット動物の排泄物からは、アンモニア臭やメルカプタン臭等の悪臭が発生する。このため、その排泄物の処理が必須である。そこで、各種香料を配合したペット用排泄物処理方法が提案されているが、長期間使用しているうちに、その消臭効果は十分でなくなる、あるいは単に悪臭をマスキングしているのみなので異臭として感じられるという問題点があった。以上のことから、ペット臭、特にネコ排泄物臭に対して顕著な消臭効果を有するものが望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−049363号公報
【特許文献2】特開平9−215457号公報
【特許文献3】特開2004−033047号公報
【特許文献4】特開2006−246797号公報
【特許文献5】特開2003−190264号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】AROMA RESEARCH No.29 (Vol.8/No.1 2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、ペット臭、特にネコ排泄物臭に対して顕著な消臭効果を有するペット臭消臭用香料組成物及びペット臭消臭剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記課題を解決するために、岩手大学の山下助教授を中心に解明された排尿直後のネコの尿臭やフン臭に基づき、擬似ペット糞尿臭を構築し、この擬似ペット糞尿臭を用いて様々な香料成分の消臭効果について鋭意研究を重ねた結果、特定の香料成分が、ネコの糞尿臭、すなわち3−メチル−3−メチルチオ−1−ブタノール(3MMB)に代表されるメルカプタン臭に対して顕著な消臭効果を有することを知見し、本発明をなすに至ったものである。
【0007】
従って、本発明は下記ペット臭消臭用香料組成物及びペット臭消臭剤を提供する。
[1].下記A群から選ばれる成分(A群成分)と、下記B群から選ばれる成分(B群成分)とを含有し、(B群成分)/(A群成分)で表される質量比が1.0/1〜11.0/1であるペット臭消臭用香料組成物。
A群:1−ヘキサノール、カプロン酸アリル、シス−ジャスモン、シス−3−ヘキセノール、酢酸シス−3−ヘキセニル、シトラール、ユーカリ油、酢酸ヘキシル、ラバンジン油、ライム油、フェニルアセトアルデヒド、ジメチルテトラヒドロベンズアルデヒド
B群:3α,6,6,9α−テトラメチルドデカナフト[2,1−b]フラン、α−アミルシンナミックアルデヒド、酢酸シトロネリル、4(3)−(4−ヒドロキシ−4−メチルペンチル)−3−シクロヘキセン−1−カルボキシアルデヒド、γ−デカラクトン、p−tert−ブチル−α−メチルヒドロシンナミックアルデヒド、酢酸リナリル、2,4−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−イル酢酸エチル、オレンジ油、酢酸スチラリル
[2].ネコ排泄物臭に対する消臭用香料組成物である[1]記載のペット臭消臭用香料組成物。
[3].A群成分の配合量が3質量%以上であり、B群成分の配合量が10質量%以上である[1]又は[2]記載のペット臭消臭用香料組成物。
[4].[1]〜[3]のいずれかに記載のペット臭消臭用香料組成物を含有するペット臭消臭剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ペット臭、特にネコ排泄物臭に対して顕著な消臭効果を有するペット臭消臭用香料組成物及びペット臭消臭剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のペット臭消臭用香料組成物は、下記A群から選ばれる香料成分と、下記B群から選ばれる香料成分とを含有し、(B群成分)/(A群成分)で表される質量比が1.0/1〜11.0/1であるものである。
A群:1−ヘキサノール、カプロン酸アリル、シス−ジャスモン、シス−3−ヘキセノール、酢酸シス−3−ヘキセニル、シトラール、ユーカリ油、酢酸ヘキシル、ラバンジン油、ライム油、フェニルアセトアルデヒド、ジメチルテトラヒドロベンズアルデヒド
B群:3α,6,6,9α−テトラメチルドデカナフト[2,1−b]フラン、α−アミルシンナミックアルデヒド、酢酸シトロネリル、4(3)−(4−ヒドロキシ−4−メチルペンチル)−3−シクロヘキセン−1−カルボキシアルデヒド、γ−デカラクトン、p−tert−ブチル−α−メチルヒドロシンナミックアルデヒド、酢酸リナリル、2,4−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−イル酢酸エチル、オレンジ油、酢酸スチラリル
【0010】
本発明の消臭用香料組成物は、ペット臭、特にネコ排泄物臭、3−メチル−3−メチルチオ−1−ブタノール(3MMB)に代表されるメルカプタン臭に対して効率的に消臭効果を有するものである。
【0011】
A群に属する成分は、ペット臭、特にネコ排泄物臭に対してマスキング効果に優れている化合物又は精油類(マスキング成分)であり、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。これらは成分が含まれる植物から抽出してもよいし、市販のものを用いてもよい。
A群:1−ヘキサノール、カプロン酸アリル、シス−ジャスモン、シス−3−ヘキセノール、酢酸シス−3−ヘキセニル、シトラール、ユーカリ油、酢酸ヘキシル、ラバンジン油、ライム油、フェニルアセトアルデヒド、ジメチルテトラヒドロベンズアルデヒド
【0012】
B群に属する成分は、ペット臭、特にネコ排泄物臭に対してハーモナイズド効果に優れている化合物又は精油類(ハーモナイズド成分)であり、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。これらは成分が含まれる植物から抽出してもよいし、市販のものを用いてもよい。
B群:3α,6,6,9α−テトラメチルドデカナフト[2,1−b]フラン、α−アミルシンナミックアルデヒド、酢酸シトロネリル、4(3)−(4−ヒドロキシ−4−メチルペンチル)−3−シクロヘキセン−1−カルボキシアルデヒド、γ−デカラクトン、p−tert−ブチル−α−メチルヒドロシンナミックアルデヒド、酢酸リナリル、2,4−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−イル酢酸エチル、オレンジ油、酢酸スチラリル
【0013】
本発明の香料組成物における上記A群成分と、B群成分との配合量は、製剤の剤型、使用方法、その他の配合成分等に応じて適宜選択できるが、消臭効果の点から、上記(B群成分)/(A群成分)で表される質量比が1.0/1〜11.0/1であり、2.0/1〜7.5/1が好ましい。なお、上記A群成分1に対するB群成分の比は小数点2桁を四捨五入した値である。A群成分及びB群成分の合計配合量は、香料組成物全体に対して5〜60質量%が好ましく、10〜40質量%がより好ましい。また、A群成分の配合量は、香料組成物全体に対して3質量%以上が好ましく、3〜30質量%がより好ましく、5〜25質量%がさらに好ましい。B群成分の配合量は、香料組成物全体に対して10質量%以上が好ましく、10〜40質量%がより好ましく、15〜30質量%がさらに好ましい。上記のように、A群成分とB群成分とを組み合わせることにより、消臭効果、香気のバランス及び拡散性に優れた香料組成物となる。
【0014】
本発明の香料組成物には、上記A群成分及びB群成分の他に、さらにその他の香料成分を含有することができる。その他に使用できる香料は、様々な文献、例えば「Perfume and Flavor Chemicals 」,Vol.Iand II,Steffen Arctander,Allured Pub.Co.(1994)及び「合成香料 化学と商品知識」、印藤元一著、化学工業日報社(1996)及び「香りの百科」、日本香料協会編、朝倉書店(1989)及び「Perfumery Material Performance V.3.3」,Boelens Aroma Chemical Information Service(1996)及び「Flower oils and Floral Compounds In Perfumery」,Danute LajaujisAnonis,Allured Pub.Co.(1993)等に記載の香料成分を挙げることができる。A群成分、B群成分及びこれら以外の香料成分全量に対するA群成分及びB群成分の合計配合量は、5〜60質量%が好ましく、10〜40質量%がより好ましい。
【0015】
本発明の香料組成物には、本発明の効果を損わない範囲で、香料用溶剤、香料安定化剤を配合することができる。
【0016】
香料用溶剤としては、エタノール、アセチン(トリアセチン)、ヘキシレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール等が挙げられ、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。香料用溶剤の配合量は、香料組成物全体に対して1〜50質量%が好ましい。
【0017】
香料安定化剤としては、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、ビタミンEとその誘導体、カテキン化合物、フラボノイド化合物、ポリフェノール化合物等が挙げられ、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。香料安定化剤の配合量は、香料組成物全体に対して0.001〜10質量%が好ましい。
【0018】
本発明の香料組成物はそのまま用いてもよいし、各種ペット臭消臭剤に配合して用いることができる。ペットとしては、ネコ、イヌ、ウサギ等が挙げられるが、ネコ臭消臭剤、特にネコ排泄物臭消臭剤として好適である。ペット臭消臭剤としては、空間芳香剤、空気洗浄剤、衣類消臭剤、排泄物噴霧・滴下用組成物等の液状のペット臭消臭剤、ペット用トイレ砂等の排泄物処理材(ネコ用、イヌ用、ウサギ用、小動物用等)等が挙げられる。排泄物噴霧・滴下用組成物とは、ペットの排泄物、排泄物を吸収したシート、ネコのトイレに敷くネコ砂等に噴霧・滴下することにより、ネコの排泄物を消臭するものである。液状のペット臭消臭剤全体に対する香料組成物の配合量は、A群成分及びB群成分の合計配合量で10-5〜50質量%が好ましく、10-4〜10質量%がより好ましく、10-3〜1質量%がさらに好ましい。
【0019】
ペット臭消臭剤には、上記香料組成物の他に、ペット臭消臭剤に通常用いる成分を本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。これらの成分は1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。これらの成分としては、殺菌剤、防腐剤、防カビ剤、有機酸及び/又はその塩等を挙げることができる。
【0020】
また、水膨潤性粘土鉱物からなる粒状成形体、天然の砂、シリカゲル又はパルプ粉末、葉粉末、オカラ又は米ぬか等の固形物に、上記香料組成物が担持されてなる排泄物処理材とすることもできる。固形物としては、水膨潤性粘土鉱物から形成された粒状成形体が好ましい。
【0021】
水膨潤性粘土鉱物から形成された粒状成形体における水膨潤性粘土鉱物としては、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイト等のスメクタイト類、膨潤性の雲母等が挙げられ、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。この中でもスメクタイト類が好ましい。
【0022】
スメクタイトはAlO6八面体層(又はFeO6八面体層)が二つのSiO4四面体層でサンドイッチされた三層構造を基本層単位とし、この基本層単位がc軸方向に積層された積層構造を有している。また、上記のAlO6八面体層のAlは、その一部がMgやFe(II)で同形置換され、SiO4四面体層のSiの一部はALやFe(III)で同形置換され、c軸方向に積層されている基本層単位間の層間には、同形置換による陽電荷の不足を補う形で金属カチオン(例えばNaイオン)が存在している。
【0023】
スメクタイト類には天然産出品と合成品とがあり、いずれも本発明に好適に使用できる。天然産のスメクタイトとしては、例えば、モンモリロナイトを含有するものとして、豊順鉱業(株)からベンゲル、ベンゲルHV、ベンゲルA、ベンゲルFW、ベンゲル31、ベンゲルW−100、クニミネ工業(株)からクニピアG、クニピアF、アメリカンコロイド社からウエスタンボンド、ドレッサーミネラルズ社からイエローストーン、サポナイトを含有するものとして、バンダービルド社からビーガムT、ビーガムHV、ビーガムF、ビーガムK、また、ヘクトライトを含有するものとして、アメリカンコロイド社からヘクタブライトAW、ヘクタブライト200、ベントンEW、ナショナルリード社からマカロイド等が市販されている。合成スメクタイトとしては、クニミネ工業(株)からスメクトンSA、水澤化学工業(株)からイオナイトH、コープケミカル(株)からSWN、SAN、ラポルテインダストリー社からラポナイト等が市販されている。また、膨潤性の雲母としては、例えば、コープケミカル(株)から膨潤性合成雲母ME、トピー工業(株)からナトリウム四ケイ素雲母DP−DM等が市販されている。
【0024】
水膨潤性粘土鉱物は層状構造を有し、さらに比較的小さな細孔を有するものであり、A群成分及びB群成分の一部は、基本層単位間の層間や小さな細孔中に安定に保持される。かかる香料は徐々に放出され、長期間にわたって適度な消臭性を確保することができる。
【0025】
粒状成形体は、水膨潤性粘土鉱物を造粒成形することにより得られる。造粒成形は、圧縮成形法、打錠成形法、転動造粒法、押出造粒法、噴霧造粒法等のそれ自体公知の成形法が使用されるが、混練物を直ちに押出造粒するのが好適である。この粒状成形体は、球状、立方体状、円柱状、角柱状、顆粒状、タブレット状等、任意の形状でよいが、取扱い性、膨潤固化性、固化物の取除き性の点で、最小方向にける粒径が0.5〜8mmであり、アスペクト比が1〜20の範囲にある柱状形状であることが好ましい。なお、アスペクト比の測定は、ノギス等により2次元形状物の長辺と短辺を測定し、その比率を計算して求める。
【0026】
粒状成形体の配合量は、排泄物処理材全量に対して90〜99.999質量%が好ましく、95〜99.99質量%がより好ましい。このような範囲とすることで、排泄物処理材として必要な尿等の液の吸収速度、液に対する膨潤性、固化性等が満たされる。
【0027】
粒状成形体全量に対する香料組成物の配合量は、一概に規定することができないが、A群成分及びB群成分の合計配合量で10-7〜20質量%が好ましく、10-6〜10質量%がより好ましく、10-6〜5質量%がさらに好ましい。10-7質量%未満であると、香りの経時安定性や香りの調和性が不十分となるおそれがあり、10質量%を超えると、香気が強くなりすぎ、好ましい香りを付与できないおそれがある。
【0028】
排泄物処理材は、天然の砂、シリカゲル又はパルプ粉末等の固形物に、上記香料組成物、ポリフェノール及びポリアルキレングリコールが担持されてなるものとすることにより、保存後における消臭性維持効果を、さらに向上させることができる。
【0029】
ポリフェノールとは、分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物をいう。ポリフェノールとしては、上記を満たしていれば特に限定されず、その配糖体もポリフェノールとして含む。その中でも、o−ジフェノール構造又はトリフェノール構造を有するポリフェノールが好ましい。なお、o−ジフェノール構造とは、ベンゼン環に直接水酸基が置換されており、しかもその水酸基が隣接しているときの構造を意味する。
【0030】
ポリフェノールの具体例としては、例えば、アピゲニン、アピゲニン配糖体、アカセチン、イソラムネチン、イソラムネチン配糖体、イソクエルシトリン、エピカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキン、エピガロカテキンガレート、エスキュレチン、エチルプロトカテキュ酸塩、エラグ酸、カテコール、ガンマ酸、カテキン、ガルデニン、ガロカテキン、カフェ酸、カフェ酸エステル、クロロゲン酸、ケンフェロール、ケンフェロール配糖体、ケルセチン、ケルセチン配糖体、ケルセタゲニン、ゲニセチン、ゲニセチン配糖体、ゴシペチン、ゴシペチン配糖体、ゴシポール、4−ジヒドロキシアントラキノン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、シアニジン、シアニジン配糖体、シネンセチン、ジオスメチン、ジオスメチン配糖体3,4’−ジフェニルジオール、シナピン酸、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、スピナセチン、タンゲレチン、タキシホリン、タンニン酸、ダフネチン、チロシン、デルフィニジン、デルフィニジン配糖体、テアフラビン、テアフラビンモノガレート、テアフラビンビスガレート、トリセチニジン、ドーパ、ドーパミン、ナリンゲニン、ナリンジン、ノルジヒドログアヤレチック酸、ノルアドレナリン、ヒドロキノン、バニリン、パチュレチン、ハーバセチン、バニリルアルコール、バニトロープ、バニリンプロピレングリコールアセタール、バニリン酸、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン酸、ビスフェノールA、ピロカテコール、ビテキシン、4,4’−ビフェニルジオール、4−t−ブチルカテコール、2−t−ブチルヒドロキノン、プロトカテキュ酸、フロログルシノール、フェノール樹脂、プロシアニジン、プロデルフィニジン、フロレチン、フロレチン配糖体、フィゼチン、フォリン、フェルバセチン、フラクセチン、フロリジン、ペオニジン、ペオニジン配糖体、ペルオルゴニジン、ペルアグゴニジン配糖体、ペチュニジン、ペチュニジン配糖体、ヘスペレチン、ヘスペレジン、没食子酸、没食子酸エステル(没食子酸ラウリル、没食子酸プロピル、没食子酸ブチル)、マンジフェリン、マルビジン、マルビジン配糖体、ミリセチン、ミリセチン配糖体、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、メチルアトラレート、4−メチルカテコール、5−メチルカテコール、4−メトキシカテコール、5−メトキシカテコール、メチルカテコール−4−カルボン酸、2−メチルレゾルシノール、5−メチルレゾルシノール、モリン、リグニン、リモシトリン、リモシトリン配糖体、リモシトロール、ルテオリン、ルテオリン配糖体、ルテオリニジン、ルテオリニジン配糖体、ルチン、レゾルシン、レスベラトロール、レゾルシノール、ロイコシアニジン、ロイコデルフィニジン等が挙げられる。
【0031】
これらのポリフェノールの中でも、o−ジフェノール構造を有するものが好ましく、具体的には、ケルセチン、エピカテキン、エピガロカテキン等のカテキン類、没食子酸、没食子酸エステル、クロロゲン酸、カフェ酸、カフェ酸エステル、タンニン酸、ピロカテコール、ノルジヒドログアヤレチック酸、ドーパ、4−メチルカテコール、5−メチルカテコール、4−メトキシカテコール、5−メトキシカテコール及びこれらの配糖体等が挙げられる。
【0032】
上記ポリフェノールは、公知の方法により調製できるが、市販品を購入してもよく、合成により調製してもよい。さらには、植物から調製したポリフェノール画分を使用することもできる。
【0033】
本発明では、ポリフェノールの代わりに、含ポリフェノール植物抽出物を使用することもできる。この植物抽出物は公知の方法により調製されたものを使用してもよいし、また市販のものを使用してもよい。
【0034】
植物抽出物の例としては、例えば、アロエ、アニスシード、エルダー、エレウテロコック、オオバコ、オレンジフラワー、オールスパイス、オレガノ、カノコソウ、カモミル、カプシカムペッパー、カルダモン、カシア、ガーリック、キャラウエイシード、クローブ、クミンシード、コーラ、コリアンダーシード、五倍子、サフラン、サンショウ、ジュニパーベリー、シナモン、ジンジャー、スター・アニス、セント・ジョーンズ・ウオルト、セロリーシード、セイボリー、セサミ(ゴマ)、ダイオウ、タラゴン、ターメリック、チィスル、デイルシード、ナツメグ、ネットル、ハイビスカス、ハマメリス、バーチ、バジル、ビター・オレンジ、フェンネル、プリムローズ、フェヌグリーク、ベルベナ、ベイローレル、ホップ、ボルドー、ホースラデイッシュ、ポピーシード、没食子、マリーゴールド、マロー、マジョラム、マスタード、ミルフォイル、ミントリーブス、メリッサ、メース、リンデン、リンドウ、ローズヒップ、ローズマリー、マンネンロウ、ひまわり種子、ブドウ果皮、リンゴ、ニンジン葉、バナナ、イチゴ、アンズ、モモ、プラム、パイナップル、ナシ、カキ、サクランボ、パパイヤ、マンゴー、アボガド、メロン、ビワ、イチジク、キウイ、プルーン、ブルーベリー、ブラックベリー、ラスベリー、ツルコケモモ、コーヒー豆、カカオ豆、ブドウ種子、グレープフルーツ種子、ピーカンナッツ、ペカンナッツ、カシューナッツ、クリ、ココナッツ、ピーナツ、クルミ、緑茶、紅茶、ウーロン茶、タバコ、シソ葉、ニワタイム、セージ、ラベンダー、スペアミント、ペパーミント、サントリソウ、ヒソップ、メボウキ、マリーゴールド、タンポポ、アーチチョーク、ドイツカミルレ、キンミズヒキ、カンゾウ、アニス、ノコギリソウ、ユーカリ、ワームウッド、香油、シシウド、コロハ、シシトウガラシ、ウイキョウ、トウガラシ、コエンドロ種子、ヒメウイキョウ種子、ウイキョウ種子、ショウガ、西洋ワサビ、マヨラナ、ハナハッカ、カラシ、パセリ、コショウ、セイヴォリー、タラゴン、ウコン、ワサビ、イノンド種子、柑橘果実等から常法により抽出処理して得られる植物抽出物が挙げられる。この中でも、緑茶、紅茶、ウーロン茶等の茶抽出物、ピーカンナッツ、ペカンナッツ、カシューナッツ、ピーナツ、クルミ等のナッツ抽出物等が好ましい。
【0035】
抽出方法は特に限定されず、原体を生のまま又は乾燥したものを適当な大きさに切断、粉砕加工したものを抽出して、それらの抽出エキスあるいは成分を分離精製したものとして用いることができる。抽出は常法による溶媒抽出することによって得ることができ、抽出溶媒が使用上無害のものであれば抽出液をそのまま用いても、適宜濃縮エキスとしたり、凍結乾燥等の乾燥粉末としたり、ペースト状に調製したもの等が使用できる。
【0036】
抽出に用いる溶媒としては、メタノール、エタノール、ブタノール、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、酢酸エチル、アセトン、モノテルペン類等の一般に用いられる有機溶媒、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール等のグリコ−ル類及び水等を挙げることができ、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。溶媒の中では、エタノール、水、1,3−ブチレングリコール及びこれらの混合物が好ましく、エタノール、水、エタノール及び水との混合物が好ましい。抽出温度は特に限定されず、冷浸、温浸、加熱還流、パーコレーション法等常法によって行うことができる。溶媒抽出のほかに、水蒸気蒸留、炭酸ガスを超臨界状態にして行う超臨界抽出によって得た抽出物も用いることができる。さらに、必要に応じて、限外ろ過、樹脂処理、カラムクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィ−等で精製することもできる。
【0037】
ポリフェノールとしては、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができ、ポリフェノールと、含ポリフェノール植物抽出物とを併用してもよい。
【0038】
ポリフェノールの配合量は、使用するポリフェノールにより選定されるが、悪臭を効率よく消臭するために、粒状成形体全量に対して10-7〜20質量%が好ましく、10-5〜5質量%がより好ましく、10-3〜3質量%がさらに好ましい。本発明においては排泄物処理材を5倍の水で水膨潤させたときのpHが8以上であることが好ましい。この点からは、上記ポリフェノール濃度は10-3〜2質量%が特に好ましい。なお、植物抽出物の場合は、固体分として10-5〜5質量%が好ましく、10-3〜2質量%がより好ましい。
【0039】
ポリアルキレングリコールとしては、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールを挙げることができ、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。ポリエチレングリコールとしては、ポリエチレングリコール200(重量平均分子量200)、300(重量平均分子量300)、400(重量平均分子量400)、600(重量平均分子量600)、1000(重量平均分子量1000)、1500(重量平均分子量1500)、6000(重量平均分子量6000)、20000(重量平均分子量20000)等が挙げられる。中でも、表面処理性、粉化防止性、スプレー噴霧性の観点から、100℃以下の融点を有している常温(20℃)で固形状のものであることが好ましく、重量平均分子量1000〜10000のものが好ましい。また、高分子量のポリエチレングリコールと低分子量のポリエチレングリコールとの混合物の形で使用することもできる。なお、重量平均分子量の測定方法はOstwald型、Ubbelohde型等の毛管粘度計を用いた粘度法に準拠する。
【0040】
ポリアルキレングリコールの配合量は、粒状成形体全量に対して0.01〜4.0質量%が好ましい。この量とすることで、保存後における消臭性維持効果を、さらに向上させることができ、粉化防止効果が向上する。より好ましくは0.05〜2.0質量%の範囲である。配合量が多すぎると、粒状成形体内部への水分の浸透が阻害されるおそれがある。
【0041】
また、本発明の排泄物処理材は、上記以外の成分が担持されていてもよく、このような成分としては、下記親水性成分、油性成分、香料が挙げられ、抗菌剤、脱臭剤等も担持することができる。
【0042】
本発明における親水性成分は、CH2OH基を少なくとも2個有し、炭素数が3〜12の範囲にあり、かつ25℃における水に対する溶解度が40%以上の親水性化合物である。
【0043】
上記親水性化合物としては、グリセリン、ペンタエリスリトール、単糖類、二糖類及びこれら糖類を還元して得られる糖アルコール(例えば、ソルビトール、キシリトール、ラクチトール等)を挙げることができ、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。中でも、グリセリン、ソルビトールが好ましい。なお、分子構造が上記条件を満足する親水性化合物であっても、水に対する溶解度が上記範囲よりも低いものは、バインダー機能を示すとしても、粒状成形体の膨潤固化機能を低下させてしまう。すなわち、スプレー噴霧による表面処理を行うためには、極めて多量の水に溶解させることが必要となってしまい、表面処理に際して多量の水を吹き付けることが必要となり、粒状成形体中に多量の水が浸透し、層状粘土鉱物の層間に水が取り込まれてしまい、この結果、トイレ砂として使用したときの特性低下を生じてしまう。しかるに、水に対する溶解度が上記範囲よりも高いものは、少量の水の使用によりスプレー噴霧して粒状成形体表面に付着させることができるため、上記のような特性低下を有効に回避することが可能となる。
【0044】
なお、上記のような親水性化合物の中には、グリセリンのような、常温で液状のものも含まれる。即ち、上記のような分子構造を有しているものは、常温で液状であったとしても、粒状成形体の内部に浸透しにくく、この結果、膨潤固化機能を低下させることがない。
【0045】
CH2OH基を少なくとも2個有し、炭素数が3〜12の範囲にあり、かつ25℃における水に対する溶解度が40%以上の親水性化合物の配合量は、粒状成形体に対して10-6〜3質量%が好ましく、10-5〜1質量%がより好ましい。
【0046】
油性成分としては、炭化水素類、炭素数8〜22の高級脂肪酸、炭素数8〜22の高級アルコール等が挙げられ、優れた剥離性を示し、トレイ等の排泄具から、膨潤固化した排泄物処理を容易に取り除くことができる。これらは1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0047】
炭化水素類としては、流動パラフィン、ワセリン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられる。これらの中で、100℃以下の融点を有している常温(20℃)で固形状のものという条件を満足するように、適宜の分子量や炭素数を有するものが使用される。
【0048】
炭素数8〜22の高級脂肪酸としては、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の飽和脂肪酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、ウンデシレン酸等の不飽和高級脂肪酸等が挙げられ、炭素数12以上のものが好ましい。また、アマイド、カルシウム塩、亜鉛塩、マグネシウム塩、バリウム塩等の金属塩も含まれる。
【0049】
炭素数8〜22の高級アルコールとしては、ラウリルアルコール、セチルアルコール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ベヘニルアルコール、エイコソニルアルコール、エライジルアルコール、リノレイルアルコール等が挙げられる。上記油性成分の中でも、流動パラフィン、パラフィンワックスが好ましい。
【0050】
炭化水素類、炭素数8〜22の高級脂肪酸及び炭素数8〜22の高級アルコール等の油性成分の配合量は、粒状成形体に対して10-5〜3質量%が好ましく、10-5〜2質量%がより好ましい。特に、剥離性を付与する流動パラフィンを用いる場合は、粒状成形体に対して0.1〜2.0質量%が好ましく、0.3〜1.5質量%がより好ましい。少なすぎると剥離性向上効果が不十分となり、多すぎると粉化防止効果が不十分となるおそれがあり、粒状成形体内部への水分の浸透が阻害されるおそれがある。
【0051】
以下、排泄物処理材の製造方法について詳述する。水膨潤性粘土鉱物からなる粒状成形体、天然の砂、シリカゲル又はパルプ粉末等の固形物表面に、香料組成物を担持する方法としては、例えば、水膨潤性粘土鉱物からなる粒状成形体、天然の砂、シリカゲル又はパルプ粉末等の固形物に、香料組成物を添加する方法が挙げられ、添加の方法としては滴下又はスプレー噴霧してもよく、スプレー噴霧が好ましい。また、香料組成物とポリアルキレングリコール水溶液又は加熱溶融液との混合物を滴下又はスプレー噴霧してもよく、篩い分けする段階でスプレー噴霧してもよい。
【0052】
排泄物処理材が、水膨潤性粘土鉱物からなる粒状成形体、天然の砂、シリカゲル又はパルプ粉末等の固形物表面に、香料組成物、ポリフェノール及びポリアルキレングリコールが担持されてなるネコ用排泄物処理材の場合、その製造方法は、上記固形物に、ポリフェノール及びポリアルキレングリコールを添加し、ポリフェノール及びポリアルキレングリコールで粒状成形体を表面処理する工程をさらに含む。ポリフェノール、ポリアルキレングリコールの添加順序は問わないが、ポリフェノールとポリアルキレングリコール水溶液又は加熱溶融液との混合溶液とするとよい。添加は、滴下又はスプレー噴霧する方法が挙げられ、特にスプレー噴霧が好適である。この場合、香料組成物の添加の順序は、ポリフェノール及びポリアルキレングリコールの添加前後のいずれでもよく、香料組成物とポリアルキレングリコール水溶液又は加熱溶融液との混合液、又は香料組成物とポリフェノールとポリアルキレングリコール水溶液又は加熱溶融液との混合液を滴下又はスプレー噴霧してもよい。
【0053】
ポリアルキレングリコール添加の場合、少量のポリアルキレングリコールを粒状成形体表面に均一に付着させるためには、ポリアルキレングリコール水溶液又は加熱溶融液を滴下又はスプレー噴霧する方法が好ましく、特にスプレー噴霧が好適である。ポリアルキレングリコールは、バインダー特性を有しており、少量の水に溶解させてあるいは適度な加温により溶融させてスプレー噴霧することが可能となり、粒状成形体の膨潤固化機能を低下する量の水を使用する必要がない。ポリアルキレングリコールが水溶性の場合、ポリアルキレングリコール水溶液にする。ポリアルキレングリコール水溶液は、できるだけ水の使用量を少なくすることが好ましく、水溶液中のポリアルキレングリコール濃度は40質量%以上とすることが好ましい。また、水不溶性のものについては、適度な温度に加熱溶融し、加熱溶融液を添加することができる。また、常温で固形のポリアルキレングリコールを用いる場合には、粒状成形体表面にほぼ均一な層状としてポリアルキレングリコールを分布させる点から、粒状成形体表面が加温された状態で上記成分を添加することが好ましく、例えば、乾燥直後の粒状成形体に滴下することが好ましい。添加時のポリアルキレングリコール水溶液又は加熱溶融液の温度は30〜100℃が好ましく、30〜80℃がより好ましく、30〜60℃がさらに好ましい。粒状成形体の温度も上記範囲にすることが好ましい。
【0054】
ポリフェノール添加の場合、ポリフェノール単独を添加、又は上記ポリアルキレングリコール水溶液又は加熱溶融液と混合した混合物として添加してもよい。ポリフェノール単独を添加する場合、上記ポリアルキレングリコール添加の前後でもよいが、同時に添加することが好ましく、上記ポリアルキレングリコール水溶液又は加熱溶融液との混合物を添加すると好適である。
【0055】
ポリフェノール及びポリアルキレングリコールの添加前、添加中及び添加後に、粒状成形体を撹拌することが好ましい。これにより、ポリフェノール及びポリアルキレングリコールを表面に均一に付着させることができる。撹拌は、不二パウダル社製マルメライザー(O−230型)、リボンミキサー等で行うことができ、撹拌速度は30〜1000rpmが好ましく、50〜300rpmがより好ましい。撹拌時間は、ポリアルキレングリコールを粒状成形体の表面に、均一に付着させることができるまで適宜選択されるが、添加後5秒〜3分が好ましい。
【0056】
上記親水性成分、油性成分、抗菌剤及び脱臭剤等は、粒状成形体の表面処理に用いることができる。表面処理の方法としては、粒状成形体に上記成分を滴下又はスプレー噴霧して添加する方法が挙げられる。また、ポリアルキレングリコール水溶液又は加熱溶融液と混合して、滴下又はスプレー噴霧することにより、粒状成形体を表面処理することもできる。油性成分の場合は、粒状成形体がポリフェノール及びポリアルキレングリコールとで表面処理された後、必要により乾燥を行った後に、油性成分をスプレー噴霧することが好ましい。油性成分を用いて表面処理を行うことにより、剥離性を著しく向上させ、尿の浸透により膨潤固化した部分の取り除きを一層容易に行うことができる。油性成分による表面処理を行った後に、ポリアルキレングリコールでさらに表面処理すると、剥離性の向上効果は得られない。油性成分として、パラフィンワックス、流動パラフィンを併用するときは、パラフィンワックスを流動パラフィンに分散させてスプレー噴霧を行うこともできる。さらに、必要に応じて、乾燥させ、篩い分けすることにより、排泄物処理材を得ることができる。
【0057】
排泄物処理材が、水膨潤性粘土鉱物からなる粒状成形体、天然の砂、シリカゲル又はパルプ粉末等の固形物表面に、香料組成物、ポリフェノール及びポリアルキレングリコールが担持されてなるネコ用排泄物処理材の場合、担持の状態は特に限定されず、粒状成形体表面の一部又は全面に、香料組成物、ポリフェノール及びポリアルキレングリコールが担持されていればよいが、水膨潤性粘土鉱物内部には担持されないほうがよい。香料組成物、ポリフェノール及びポリアルキレングリコールは、それぞれランダムに混在した状態になっていてもよく、偏在していてもよい。中でも、ポリフェノールは、粒状成形体の優れた膨潤固化機能を保持するためのpHがアルカリ性であり、ポリフェノールの安定性の点から、ポリアルキレングリコールと混在していることが好ましく、排泄物処理材の表層部分に偏在していることがより好ましい。香料組成物は、香料組成物の消臭効果がより発揮される点から、排泄物処理材の表層部分に偏在していることがより好ましい。
【0058】
排泄物処理材の使用方法は特に限定されないが、例えば、ネコのトイレ等に敷くことにより(ネコ用トイレ砂)、ネコの排泄物(尿、糞)を吸収し、取り込んで、消臭効果を発揮することができる。
【実施例】
【0059】
以下、試験例、調製例、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において特に明記のない場合は、組成の「%」は質量%、比率は質量比を示す。
【0060】
[試験例1]
ネコ排泄物臭(3−メチル−3−メチルチオ−1−ブタノール(3MMB))に対するマスキング効果及びハーモナイズド効果
3−メチル−3−メチルチオ−1−ブタノール(3−MMB)0.5%トリエチルシトレート溶液15μL及び表1〜4に示す香料成分単品10μLを、プラスティック製シャンプーボトル(跳ね上げキャップ式30mL容量)に入れた脱脂綿球に滴下した。キャップを閉めた後、シャンプーボトルの側面を押してキャップ口から出てきた臭気を嗅ぎ、マスキング効果、ハーモナイズド効果及び各効果を勘案した消臭効果の度合いをスコアリングした。なお、評価は10年以上の経験を持つ調香師1名によって、それぞれの香料単品の香調を勘案しながら行われた。結果を表中に併記する。
<マスキング効果の評価基準>
3:非常によくマスキングできている。
2:ほぼ、マスキングできているが、かすかにネコ排泄物臭がする。
1:ネコ排泄物臭がする(マスキングが不十分)
<ハーモナイズド効果の評価基準>
3:かなり調和している。
2:やや調和している。
1:調和していない。
【0061】
【表1】

【0062】
上記成分にネコ排泄物臭に対するマスキング効果が確認された。なお、濃度の差は、実際に使用される機会が多いそれぞれの香料成分の実用濃度レベルを基準に設定した。
【0063】
【表2】

【0064】
上記成分にネコ排泄物臭に対するハーモナイズド効果が確認された。
【0065】
【表3】

【0066】
【表4】

【0067】
上記成分には、ネコ排泄物臭に対するマスキング効果、ハーモナイズド効果のいずれも確認されなかった。
【0068】
[実施例1,2及び比較例1,2]
下記表5の処方に従って、常法により実施例1及び比較例1のグリーンタイプ香料組成物(ネコ排泄物臭に対する消臭用香料組成物)、ならびに表7の処方に従って、常法により実施例2及び比較例2のフルーティタイプ香料組成物(ネコ排泄物臭に対する消臭用組成物)を調製し、上記試験例1の方法に従って6人の専門パネラーを用いて評価を実施し、さらに下記マスキング効果、ハーモナイズド効果を勘案したネコ排泄物臭に対する消臭効果の評価基準に従い、消臭評価を行った。総合消臭効果の結果を以下に示す。
【0069】
<マスキング効果、ハーモナイズド効果を勘案した総合消臭効果>
3:ネコ排泄臭を非常によく抑えている。
2:ネコ排泄臭を抑えている。
1:ネコ排泄臭を抑えていない。
【0070】
【表5】

【0071】
その他の香料成分組成は、ネコ排泄物臭に対するマスキング効果、ハーモナイズド効果のいずれも確認されなかった成分で構成されている。ジヒドロミルセノール:10%、プロピオン酸トリシクロデセニル:7%、4,6,6,7,8,8−ヘキサメチル−1,3,4,6,7,8−ヘキサヒドロシクロペンタベンゾピラン(ガラクソリド;IFF社商品名):5%、安息香酸ベンジル:5%、アロオシメノール:5%、3−メチル−5−フェニルペンタノール:5%、酢酸o−tert−ブチルシクロヘキシル:5%、α−テルピネオール:2%、フェニルエタノール:2%、ゲラニルニトリル:1%、シトロネロール:1%、3−(4−t−ブチルフェニル)プロピオンアルデヒド:1%、グリーンベース:25%
【0072】
【表6】

【0073】
以上の結果から、実施例1の香料組成物のマスキング効果の評価値は2.33、ハーモナイズド効果の評価値は2.67、その結果、総合消臭効果は2.50で極めて優れていることが明らかになった。これに対し、比較例1の香料組成物のマスキング効果の評価値は1.50、ハーモナイズド効果の評価値は1.33、その結果、総合消臭効果は1.67で満足できるものではなかった。
【0074】
【表7】

【0075】
その他の香料成分組成は、ネコ排泄物臭に対するマスキング効果、ハーモナイズド効果のいずれも確認されなかった成分で構成されている。アロオシメノール:9%、シトロネロール:5%、酢酸o−tert−ブチルシクロヘキシル:5%、ネロール:3%、酢酸p−tert−ブチルシクロヘキシル:3%、β−ピネン:2%、ヘキサン酸ヘキシル:1%、フルーツベース:38%
【0076】
【表8】

【0077】
以上の結果から、実施例2の香料組成物の総合消臭効果は2.67で、極めて優れていることが明らかになった。これに対し、比較例2の香料組成物の総合消臭効果は1.67で満足できるものではなかった。
【0078】
[実施例3〜7、比較例3〜6]
下記A群処方組成物と、B群処方組成物、A群及びB群のいずれにも該当しない香料成分のみで構成したC群処方組成物を調製した。各A〜C群処方組成物を表9に示す比率で混合し、グリーンタイプ香料組成物を調製した。試験例1及び実施例と同様の方法で評価を行った。結果を表中に併記する。
【0079】
[A群処方組成物]
成分名 質量部
1−ヘキサノール 150
カプロン酸アリル 50
シス−ジャスモン 20
シス−3−ヘキセノール 150
酢酸シス−3−ヘキセニル 100
ユーカル油 100
酢酸ヘキシル 50
ラバンジン油 50
ライム油 25
フェニルアセトアルデヒド 5
ジメチルテトラヒドロベンズアルデヒド 300
合計 1000
【0080】
[B群処方組成物]
成分名 質量部
3α,6,6,9α−テトラメチルドデカヒドロナフト[2,1−b]フラン 10
α−アミルシンナミクアルデヒド 300
酢酸シトロネリル 30
4(3)−(4−ヒドロキシ−4−メチルペンチル−3−シクロヘキセン−1−カルボキシアルデヒド 80
γ−デカラクトン 200
p−tert−ブチル−α−メチルヒドロシンナミックアルデヒド 100
酢酸リナリル 100
2,4−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−イル酢酸エチル 120
オレンジ油 30
酢酸スチラリル 30
合計 1000
【0081】
[C群処方組成物]
成分名 質量部
アネトール 10
安息香酸ベンジル 80
サリチル酸ベンジル 80
4,6,6,7,8,8−ヘキサメチル−1,3,4,6,7,8−ヘキサヒドロシクロペンタベンゾピラン(ガラクソリド;IFF社商品名) 80
サリチル酸ヘキシル 50
エチレンブラシレート 60
7−アセチル−1,2,3,4,5,6,7,8−オクタヒドロ−1,1,6,7−テトラメチルナフタレン(イソ・イー・スーバー;IFF社商品名) 150
7−アセチル−1,1,3,4,4,6−ヘキサメチルテトラヒドロナフタレン(トナリド;PFW社商品名) 50
酢酸o−tert−ブチルシクロヘキシル 30
ローズベース 410
合計 1000
【0082】
【表9】

【0083】
上記結果から、(B群成分/A群成分=1.0/1〜11.0/1)の範囲において、より好ましくは(B群成分/A群成分=2.0/1〜7.5/1)の範囲において、適度なマスキング効果を保ちながら、非常に高いハーモナイズド効果を示した。
【0084】
[調製例1]
茶抽出物の調製
煎茶(緑茶)1kgを90℃の熱水10Lで1時間撹拌しながら抽出した。茶葉を濾過により除き、8.3Lの抽出液を得た。この液を1Lまで濃縮し、これにアセトン1Lを加えて撹拌し、生じた不溶物を遠心分離により除いた。上清液に酢酸エチル1Lを加えて撹拌し、30分間静置した。得られた酢酸エチル層を減圧下に濃縮し、水層に転換した後凍結乾燥して、純度60%の茶フェノールを含有する茶抽出物97gを得た。
【0085】
[調製例2]
粒状成形体の調製
新潟県中部地区産ベントナイトに所要量の炭酸ナトリウムを加えて、常法により活性化させ、押出成形法により造粒し、乾燥して、活性化ベントナイトの粒状成形体(最小方向にける粒径4mm、アスペクト比が2.50)を得た。
【0086】
[実施例8]
100mL三角フラスコにポリエチレングリコール6000(重量平均分子量6000、PEG#6000、ライオン社製)10gと精製水5gとをとり、40℃に加温してポリエチレングリコール水溶液を得た。
調製例2の粒状成形体1kgを不二パウダル社製マルメライザー(O−230型)に入れ、回転数200rpmでゆるく撹拌しながら、該ポリエチレングリコール水溶液と、香料組成物(実施例1の香料組成物)との混合溶液を、粒体ノズルの噴霧器でスプレー噴霧した。均一に表面に付着するまで撹拌を続け、排泄物処理材を調製した。ポリエチレングリコールの添加量(配合量)は、粒状成形体に対して0.1%、香料組成物の添加量(配合量)は0.01%であった。
【0087】
[実施例9]
100mL三角フラスコにポリエチレングリコール6000(重量平均分子量6000、PEG#6000、ライオン社製)10gと精製水5gとをとり、40℃に加温してポリエチレングリコール水溶液を得た。
調製例2の粒状成形体1kgを不二パウダル社製マルメライザー(O−230型)に入れ、回転数200rpmでゆるく撹拌しながら、該ポリエチレングリコール水溶液と調製例1の茶抽出物、香料組成物(実施例2の香料組成物)との混合溶液を、粒体ノズルの噴霧器でスプレー噴霧した。均一に表面に付着するまで撹拌を続け、排泄物処理材を調製した。ポリエチレングリコールの添加量(配合量)は、粒状成形体に対して0.1%、調製例1の茶抽出物の添加量(配合量)は0.05%、香料組成物の添加量(配合量)は0.01%であった。
【0088】
得られた排泄物処理材について、下記方法で「消臭性」、「保存後の消臭性」、「粉化防止性」を評価した。結果を表10に示す。
【0089】
<消臭性>
底面の直径が約5cm、高さが約8cmのプラスチック製円柱カップの底に、各種試料20gを敷き詰めた。その試料の上に排尿直後のネコの尿5mLを滴下し、すぐ蓋をした。2分間経過後、蓋を開けて臭いを官能評価した。
官能評価は、下記評価基準に基づき6名のパネラーで行い、表の数値はパネラーの平均値である。
[評価基準]
5:ネコ排泄臭が強く臭う。
4:ネコ排泄臭が臭う。
3:ネコ排泄臭がやや臭う。
2:ネコ排泄臭が殆ど臭わない。
1:ネコ排泄臭がまったく臭わない。
【0090】
<保存後の消臭性>
各種試料100gをポリエチレンテレフタレート製の透明容器(竹本容器製:JOY−120)に充填し蓋をして、40℃の恒温槽(タバイ エスペック製:プラチナスPU−4SP)に1ヵ月入れた後、上記の消臭性の評価試験を実施した。
【0091】
<粉化防止性>
500mLのマヨネーズ瓶に各種試料100gを入れその上に20cm四方の黒色のナイロン生地を被せ、さらに軽く蓋をする。その瓶を上下10回逆転させ、黒生地に付着した白色粉末の多さを官能評価した。
官能評価は、下記評価基準に基づき6名のパネラーで行い、表の数値はパネラーの平均値である。
[評価基準]
5:はっきりと白色粉末の付着が観察され、ナイロン生地が被覆される。
4:はっきりと白色の円形の付着が観察される。
3:付着はわずかであるが、円形が観察される。
2:微かに粉末の付着が認められるが、円形は観察されない。
1:ナイロン生地への付着が観察されない。
【0092】
【表10】

【0093】
[実施例10]
実施例1のグリーンタイプ香料組成物を用い、下記組成の液状のペット臭消臭剤を調製した。
【0094】
【表11】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記A群から選ばれる成分(A群成分)と、下記B群から選ばれる成分(B群成分)とを含有し、(B群成分)/(A群成分)で表される質量比が1.0/1〜11.0/1であるペット臭消臭用香料組成物。
A群:1−ヘキサノール、カプロン酸アリル、シス−ジャスモン、シス−3−ヘキセノール、酢酸シス−3−ヘキセニル、シトラール、ユーカリ油、酢酸ヘキシル、ラバンジン油、ライム油、フェニルアセトアルデヒド、ジメチルテトラヒドロベンズアルデヒド
B群:3α,6,6,9α−テトラメチルドデカナフト[2,1−b]フラン、α−アミルシンナミックアルデヒド、酢酸シトロネリル、4(3)−(4−ヒドロキシ−4−メチルペンチル)−3−シクロヘキセン−1−カルボキシアルデヒド、γ−デカラクトン、p−tert−ブチル−α−メチルヒドロシンナミックアルデヒド、酢酸リナリル、2,4−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−イル酢酸エチル、オレンジ油、酢酸スチラリル
【請求項2】
ネコ排泄物臭に対する消臭用香料組成物である請求項1記載のペット臭消臭用香料組成物。
【請求項3】
A群成分の配合量が3質量%以上であり、B群成分の配合量が10質量%以上である請求項1、2又は3記載のペット臭消臭用香料組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項記載のペット臭消臭用香料組成物を含有するペット臭消臭剤。

【公開番号】特開2010−254898(P2010−254898A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−109245(P2009−109245)
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【出願人】(597036477)ライオン商事株式会社 (12)
【出願人】(000169466)高砂香料工業株式会社 (194)
【Fターム(参考)】