説明

ペプチドの組換え生成

本発明は、反復的自己組織化前駆体タンパク質、核酸配列及びそれをコードする発現構築物、並びにそのような前駆体タンパク質を用いて組換えでペプチドを生成する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反復的自己組織化前駆体タンパク質、核酸配列及びそれをコードする発現構築物、並びにそのような前駆体タンパク質を用いて組換えでペプチドを生成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生物工学手段によってペプチドを生成する、異なる公知の方法がある。微生物宿主細胞での短いポリペプチド鎖の安定性は通常低く、遊離のペプチドは宿主生物体に毒作用を及ぼすことがあり得る(例えば抗微生物性ペプチド)ので、ほとんどの方法は、前駆体タンパク質が精製された後にペプチドが切り出される、より大きな前駆体タンパク質を生成することを含む。
【0003】
安定した前駆体タンパク質を得る一つの可能性は、融合タンパク質として安定したタンパク質と一緒にペプチドを発現させることを含む。以降の作業段階に大きく影響する前記融合タンパク質の特性は、ペプチド配列とほとんど独立に融合パートナーによって決まり、したがって容易に制御可能であり、異なる配列のペプチドを生成するのに適する。
【0004】
国際公開第2008/085543号は、融合タンパク質を用いて、タンパク質及びペプチドを生成する特別な方法を記載する。この融合タンパク質は、所望のペプチド配列のほかに、融合タンパク質が逆の相転移動作を示すようにする融合パートナーを含む。この動作は、融合タンパク質を単純且つ安価な方法で細胞環境から精製することを第一に含む。第二に、ペプチドがタンパク分解性切断によって切り離された後、融合パートナーを同様に単純且つ安価な方法で取り出すことができる。融合タンパク質をしばしば好ましい収率で得ることができるが、前駆体タンパク質のペプチド部分は通常小さく、したがってこの方法の効率は最適以下である。
【0005】
別の手法は、組換えで生成される所望のペプチドの複数のコピーを含む反復的前駆体タンパク質を含む。国際公開第03/089455号は、抗微生物特性を有する所望のペプチド配列が酸分解によって切り出される、多量体の前駆体タンパク質の生成を記載する。
【0006】
いくつかのさらなる公開された手法があり(例: MetlitskayaらBiotechnol Appl. Biochem 39; 339-345 (2004); Wang & Cai Appl. Biochem and Biotechnol. 141; 203-213 (2007))、それらは、反復的前駆体タンパク質を用いる特定の方法によってペプチド配列又はペプチド配列ファミリーを生成することができることを証明するために用いられた。ある程度は、所望のペプチド配列の反復の間に位置する特定の補助配列の使用が記載されている。より具体的には、宿主細胞への反復的前駆体タンパク質中の陽イオン性抗微生物性ペプチド配列の有害作用を見かけ上低減させる、陰イオン性補助配列が提案されている(例えば国際公開第00/31279号及びUS 2003/0219854を参照)。この反復的手法での前駆体タンパク質は、融合タンパク質による場合よりも高い所望のペプチド配列の割合を有するが、反復的前駆体タンパク質の特性は所望の陽イオン性ペプチドの配列によって大いに影響される。
【0007】
発明者は、効率的に実行することができる、単純で低コストのプロトコルによって反復的前駆体タンパク質を用いて任意のペプチド配列を生成する可能性を含む、過去のいかなる方法についての知識も有しない。
【0008】
様々な抗微生物性ペプチドが文献に記載され、レビューで要約されている(Hancock, R.E.W.及びLehrer, R. 1998、Trends in Biotechnology、16: 82-88; Hancock, R.E.W.及びSahl, H.G. 2006、Nature Biotechnology、24: 1551-1557)。
【0009】
二つの活性ペプチドが組み合わせられる融合物ペプチドが同様に文献に記載されている。Wadeらは、ヒアロホーラ・セクロピア(Hyalophora cecropia)のセクロピンA及び毒素メリチンの様々な融合物の抗細菌性作用を報告する(Wade, D.ら、1992、International Journal of Peptide and Protein Research、40: 429-436)。Shinらは、20アミノ酸からなる、ヒアロホーラ・セクロピアのセクロピンA及びアフリカツメガエル(Xenopus laevis)のマゲイニン2の融合ペプチドの抗細菌性作用を記載する。セクロピンAは37アミノ酸からなり、グラム陽性菌に対する活性を低下させるグラム陰性菌に対して活性を示す。マゲイニン2は23アミノ酸からなり、細菌に対してだけでなく腫瘍細胞系に対しても活性がある。セクロピンA及びメリチンの融合物と比較して、この融合物は、同等の抗細菌性作用で明確により低い溶血活性を示す(Shin, S.Y.、Kang, J.H.、Lee, M.K.、Kim, S.Y.、Kim, Y.、Hahm, K.S.、1998、Biochemistry and Molecular Biology International、44: 1119-1126)。US 2003/0096745 A1及びUS 6,800,727 B2は、20アミノ酸からなるこれらの融合ペプチド、並びに、アミノ酸、特に正荷電のアミノ酸及び疎水性のアミノ酸の置換のためにより正に荷電し、より疎水性である前記融合物の変異体を特許請求する。
【0010】
Shinら、1999は、このセクロピンA-マゲイニン2融合ペプチドのさらなる開発を記載する。彼らは、配列番号6を有するペプチドが、出発融合物と比較してより低い溶血活性を有するが、大腸菌(Escherichia coli)及び枯草菌(Bacillus subtilis)に関する抗細菌活性は不利な影響を受けないことを証明した(Shinら1999 Journal of Peptide Research、53: 82-90)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第2008/085543号
【特許文献2】国際公開第03/089455号
【特許文献3】国際公開第00/31279号
【特許文献4】US 2003/0219854
【特許文献5】US 2003/0096745 A1
【特許文献6】US 6,800,727
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】MetlitskayaらBiotechnol Appl. Biochem 39; 339-345 (2004)
【非特許文献2】Wang & Cai Appl. Biochem and Biotechnol. 141; 203-213 (2007)
【非特許文献3】Hancock, R.E.W.及びLehrer, R. 1998、Trends in Biotechnology、16: 82-88
【非特許文献4】Hancock, R.E.W.及びSahl, H.G. 2006、Nature Biotechnology、24: 1551-1557
【非特許文献5】Wade, D.ら、1992、International Journal of Peptide and Protein Research、40: 429-436
【非特許文献6】Shin, S.Y.、Kang, J.H.、Lee, M.K.、Kim, S.Y.、Kim, Y.、Hahm, K.S.、1998、Biochemistry and Molecular Biology International、44: 1119-1126
【非特許文献7】Shinら1999 Journal of Peptide Research、53: 82-90
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、反復的前駆体タンパク質を用いてペプチドを生成する、広く適用可能な方法を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この目的は、生物工学手段によってペプチドを生成する新規手法によって達成され、高い割合の所望のペプチド配列を含み、前駆体タンパク質の特性を予測可能な方法で支配する補助配列を含む、反復的前駆体タンパク質が生成された。前記方法は、基本的に前駆体分子を発現させるための条件、又は異なるペプチド配列の各々のための以降の作業手順を再構築する必要性なしに、異なるペプチド配列の生成のために用いることができる。前に用いられた方法が効率的でないペプチドを生成することが、さらに可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】αらせん構造を示すための、アミノ酸配列のヘリカルホイール図である。反復的前駆体タンパク質に含まれるアミノ酸配列A1〜A7(A)は、円(B)の上に表される。この配置は、αらせん中のアミノ酸の位置を可視化する。
【図2】酸分解後のペプチド「ZnO」の逆相クロマトグラムを表す図である。
【図3】酸分解後の「ZnO」ペプチドの質量スペクトル及び逆相HPLCを表す図である。示される数字は、特定のモノアイソトピックピークのm/z値を示す。
【図4】酸分解後のペプチド「P18」の逆相クロマトグラム及び陽イオン交換クロマトグラフィーを表す図である。
【図5】酸分解後の「P18」ペプチドの質量スペクトル、陽イオン交換クロマトグラフィー、及び逆相HPLCを表す図である。示す数字は、特定のモノアイソトピックピークのm/z値を示す。
【図6】酸分解後のペプチド「Min」の逆相クロマトグラムを表す図である。
【図7】酸分解後の「Min」ペプチドの質量スペクトル及び逆相HPLCを表す図である。示す数字は、特定のモノアイソトピックピークのm/z値を示す。
【図8】酸分解後のペプチド配列番号6の逆相クロマトグラム及び陽イオン交換クロマトグラフィーを表す図である。
【図9】酸分解後の配列番号6ペプチドの質量スペクトル、陽イオン交換クロマトグラフィー、及び逆相HPLCを表す図である。示される数字は、特定のモノアイソトピックピークのm/z値を示す。
【図10】実施例6によるアミド化前後の「P18」ペプチドのHPLC陽イオン交換クロマトグラムを表す図である。「P18」ペプチドの配列と化学合成及びアミド化参照ペプチドのクロマトグラムを、比較のために示す。
【図11】実施例7によるアミド化前後の「P18」ペプチドのHPLC陽イオン交換クロマトグラムを表すである。「P18」ペプチドの配列と化学合成及びアミド化参照ペプチドのクロマトグラムを、比較のために示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、特に以下の実施形態に関する:
1.一般式
(Pep-Aux)x、又は
(Aux-Pep)x
の所望のペプチド(Pep)エレメント及び補助ペプチド(Aux)エレメントの反復配列の酵素的及び/又は化学的に切断が可能な反復配列を含む、合成、特に組換えで調製された前駆体タンパク質であって、式中、x>1であり、
Auxエレメントは同一であるか異なり、前記前駆体タンパク質に自己組織化特性を付与するアミノ酸配列エレメントを含み; Pepエレメントは同一であるか異なり、同一であるか異なるペプチド分子のアミノ酸配列を含む前駆体タンパク質。
【0017】
2.エレメントPep及びAuxが互いに直接に、又は切断可能なペプチド配列を通してペプチド結合し、ペプチド結合は化学的又は酵素で特異的に切断可能であり、すなわち既定のアミノ酸又は配列のアミノ酸の配列の上で排他的又は基本的に切断可能である、実施形態1による前駆体タンパク質。
【0018】
3.標準の条件下において、例えば特に0.2MのNaOHによって1時間以内に、又は2Mの尿素若しくは1Mの塩酸グアニジウムによってそれぞれ10分間以内に室温で溶解されることがない安定した非共有結合を自発的に、すなわちそれ自体が、又は誘導的に形成するように自己組織化特性を有する、前の実施形態のいずれかによる前駆体タンパク質。本発明による安定した結合は、指摘したこれらの三つの基準のうちの少なくとも一つが満たされることから生じる。
【0019】
4.少なくとも一つのAuxエレメントが自己組織化ペプチド(SA)エレメントを含み、前記SAエレメントは、少なくとも50%、例えば50〜100%、60〜90%若しくは70〜80%のアラニン残基、少なくとも50%、例えば50〜100%、60〜90%若しくは70〜80%のバリン残基、又は少なくとも50%、例えば50〜100%、60〜90%若しくは70〜80%のグルタミン残基を含むか、又はその少なくとも80%はこれらの残基の少なくとも一つからなる、少なくとも8個、例えば8〜10、8〜12、8〜14、8〜16、8〜18又は8〜20個の連続するアミノ酸の少なくとも一つの配列モチーフを含み; SAエレメントは、例えば、特に以下の配列モチーフ:
An (モチーフ1)
(GA)m (モチーフ2)
Vn (モチーフ3)
(VA)m (モチーフ4)
(VVAA)o (モチーフ5)
の少なくとも一つを含むことができ、式中、Aはアラニン、Gはグリシン、Vはバリン、nは2から12の整数、mは2から10の整数、oは1から6の整数であり、より特にはn = 5〜10、m = 4〜8及びo = 2〜4であり、例えばn = 7〜9、m = 6〜7及びo = 2〜3である、前の実施形態のいずれかによる前駆体タンパク質。
【0020】
上記のSA配列は、C及び/又はN末端が各場合にさらなる1〜3個のランダムアミノ酸残基、伸長してもよい。適するN末端伸長の例は、配列モチーフ「G-」、「GS-」、「GAG-」、「GPG-」、「GPS-」、「GAS-」、「GQQ-」及び「GSS-」である;適するC末端伸長の例には、配列モチーフ「-SGP」、「-GGA」、「-GPG」、「-SGA」、「-GGQ」、「-GGY」及び「-GGL」が含まれる。
【0021】
5.SAエレメントが、アミノ酸配列の配列番号1から配列番号5、又は配列番号73から選択されるアミノ酸配列を含む、実施形態4による前駆体タンパク質。
【0022】
6.少なくとも一つのAuxペプチドが保護ペプチド(SU)エレメントをさらに含む、前の実施形態のいずれかによる前駆体タンパク質。
【0023】
7.SUエレメントが、「増加した割合」の荷電した、すなわち(例えばpH=7で)、0と異なる全電荷、例えば+20から-20、又は+10から-10、又は+5から-5のアミノ酸残基、特に、例えばpH=7で0と異なる全電荷、例えば-1から-20、特に-4から-10の負に荷電したアミノ酸残基を有する、実施形態6による前駆体タンパク質。
【0024】
8.前駆体タンパク質中のSUエレメントが両親媒性らせん構造を形成することができる、実施形態7による前駆体タンパク質。
【0025】
9.SUエレメントが、両親媒性αらせんを形成することができる少なくとも7個のペプチド結合したアミノ酸の配列セグメントを含む両親媒性ペプチドであり、その垂直投影中の前記らせんのアミノ酸残基がらせんの疎水性の半分及び親水性の半分に分かれており、らせんの疎水性の半分は垂直投影に少なくとも3個、例えば3個又は4個の隣接した同一であるか異なる疎水性のアミノ酸残基を有し、らせんの親水性の半分は垂直投影に少なくとも3個、例えば3個又は4個の隣接した同一であるか異なる親水性のアミノ酸残基を有する、実施形態8による前駆体タンパク質。
【0026】
10.SUエレメントの荷電したアミノ酸残基の割合が、pH=7の前駆体タンパク質の全実効電荷が-10を超え+10未満である、例えば-8を超え+8未満; -5を超え及び/又は+5未満、-2を超え+2未満であるように選択される、実施形態7、8又は9による前駆体タンパク質。
【0027】
11.SUエレメントが、アミノ酸配列の配列番号16から配列番号19、及び配列番号68から選択されるアミノ酸配列を含む、実施形態7〜10のいずれかによる前駆体タンパク質。
【0028】
12.Pepエレメントが、陽イオン性陽性全電荷を有する抗微生物性ペプチド配列を含む、前の実施形態のいずれかによる前駆体タンパク質。
【0029】
13.Pepエレメントが、陽イオン性アミノ酸配列の配列番号6から配列番号15、配列番号23、配列番号26及び配列番号69から配列番号72から選択されるアミノ酸配列、又は下に示すそのC末端及び/又はN末端改変形のいずれかを含む、実施形態12による前駆体タンパク質。
【0030】
14.Pepペプチドが、アミノ酸配列の配列番号20若しくは配列番号29から67から選択されるアミノ酸配列、又は下に示すそのC末端及び/又はN末端改変形のいずれかを含む、実施形態1〜5のいずれかによる前駆体タンパク質。
【0031】
15.Auxエレメントが互いに独立に以下の意味のいずれかを有し:
SA、
SA-SU、
SU-SA、
SA-SU-SA、
SU-SA-SU、
式中、エレメントSA及びSUは互いにペプチド結合し、Auxエレメントは少なくとも一つのPepエレメントにペプチド結合で、すなわち直接、又は切断可能なペプチド配列を通してペプチド結合で末端に連結し、少なくともPepエレメントへのペプチド結合は、化学的に又は酵素で特異的に切断可能である、前の実施形態のいずれかによる前駆体タンパク質。
【0032】
16.前の実施形態のいずれかによる少なくとも一つの前駆体タンパク質をコードする核酸配列。
【0033】
17.配列番号21、24;27;74及び76の少なくとも一つのコード配列を含む、実施形態16による核酸配列。
【0034】
18.少なくとも一つの調節核酸配列に作動可能に連結している、実施形態16又は17による少なくとも一つの核酸配列を含む発現カセット。
【0035】
19.実施形態16及び17のいずれかによる核酸配列又は実施形態18による発現カセットを含む、真核生物又は原核生物の宿主を形質転換するための組換えベクター。
【0036】
20.所望のペプチド(pep)を生成する方法であって、
a)実施形態1〜15のいずれかによる前駆体タンパク質を生成する段階と、
b)前駆体タンパク質からPepペプチドを切り離す段階と、
c)任意選択でペプチドを酵素で、若しくは化学的に改変するか、例えばアミド化、エステル化、酸化、アルキル化するか、又はそれを(例えば天然の化学ライゲーション又はマイケル付加によって)別の分子に連結する段階であって、例えば、ペプチドは、前記ペプチドの疎水性を増加させる分子で改変され、例えばアルキル基を含む分子で改変され、付随する実施例によってもさらに例示されるように、前記改変をペプチドの任意選択の精製の前後に実行することが可能である段階とを含む方法。
【0037】
適するアルキル基の例は、エチル、イソプロピル若しくはn-プロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル若しくはtert-ブチル、n-ペンチル又はイソペンチル;さらにn-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル、n-ウンデシル、n-ドデシル、n-トリデシル、n-テトラデシル、n-ペンタデシル及びn-ヘキサデシルなどのC2〜C16-アルキル基、並びにその単分枝又は多分枝類似体、並びに一つ又は複数、例えば一つ、二つ又は三つのハロゲン(例えばF、Cl、Brなど)、ヒドロキシル、メルカプト、アミノ、C1〜C4-アルキルアミノ置換基を有することができるか、又はアルキル鎖が一つ又は複数、例えば一つ、二つ又は三つのO又はNなどのヘテロ原子によって中断されてもよい、その非置換又は置換された改変形である。より具体的には、C1〜C4-アルキルは、メチル、エチル、イソプロピル若しくはn-プロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル若しくはtert-ブチルである。
【0038】
21.前駆体タンパク質が実施形態19による少なくとも一つのベクターを有する組換え微生物で生成される、実施形態20による方法。
【0039】
22.前駆体タンパク質が組換え大腸菌株で生成される、実施形態21による方法。
【0040】
23.発現される前駆体タンパク質が、任意選択で安定した結合形に変換された後に精製され、化学的に又は酵素で切断されて所望のペプチド(Pep)を放出する、実施形態20〜22のいずれかによる方法。
【0041】
24.一般式
(Pep-Aux')x又は
(Aux'-Pep)x
の所望のペプチド(Pep)エレメント及び補助ペプチド(Aux')エレメントの切断可能な配列を含み、式中、x>1であり、
Aux'エレメントは同一であるか異なり、両親媒性αらせん形成性ペプチドを含み、前記両親媒性ペプチドは、両親媒性αらせんを形成することができる少なくとも7個のペプチド結合したアミノ酸の配列セグメントを含み、その垂直投影中の前記らせんのアミノ酸残基がらせんの疎水性の半分及び親水性の半分に分かれており、らせんの疎水性の半分は垂直投影に少なくとも3個、例えば3個又は4個の隣接した同一であるか異なる疎水性のアミノ酸残基を有し、らせんの親水性の半分は垂直投影に少なくとも3個、例えば3個又は4個の隣接した同一であるか異なる親水性のアミノ酸残基を有し、
Pepエレメントは同一であるか異なり、同一であるか異なるペプチド分子のアミノ酸配列を含む前駆体タンパク質。
【0042】
25.Aux'エレメントが実施形態4及び5のいずれかに記載の少なくとも一つの自己組織化ペプチド(SA)エレメントを含む、実施形態24による前駆体タンパク質。
【0043】
26.所望のペプチド(Pep)が陽イオン性抗微生物性ペプチドであり、Aux'エレメントが陰イオン性ペプチドであり、両親媒性αらせんを形成する、実施形態24又は25による前駆体タンパク質。
【0044】
27. 両親媒性ペプチドの、該両親媒性ペプチドと異なる抗微生物性の所望のペプチドを組換えで生成するための保護ペプチドとしての使用であって、前記両親媒性ペプチドは、両親媒性αらせんを形成することができる少なくとも7個のペプチド結合したアミノ酸の配列断片を含み、その垂直投影中の前記らせんのアミノ酸残基がらせんの疎水性の半分及び親水性の半分に分かれており、らせんの疎水性の半分は(垂直投影に)少なくとも3個の隣接した同一であるか異なる疎水性のアミノ酸残基を有し、らせんの親水性の半分は(垂直投影に)少なくとも3個の隣接した同一であるか異なる親水性のアミノ酸残基を有する使用。
【0045】
28.所望のペプチド(Pep)が陽イオン性抗微生物性ペプチドであり、Aux'エレメントが陰イオン性ペプチドであり、両親媒性αらせんを形成する、実施形態27による使用。
【0046】
29.実施形態12又は13による前駆体タンパク質、例えば配列番号23又は配列番号6によるP18ペプチド構成単位を含む前駆体タンパク質が生成される、実施形態20〜22のいずれかによる方法。
【0047】
30.以下の作業段階を含む実施形態29による方法:
・前駆体タンパク質結合体を、混在タンパク質を溶解するが、前記結合体を溶解しないか又は事実上溶解しない溶媒、例えば0.1Mから1.0MのNaOHで洗浄する段階。
・前駆体タンパク質を、例えば所望のペプチド、例えばP18が、酸切断可能な基を通して前駆体タンパク質に組み込まれる場合、酸で切断する段階。
【0048】
31.以下のさらなる作業段階の少なくとも一つを含む、実施形態30による方法:
・細胞破壊の後、前駆体タンパク質結合体を、例えばリン酸などの補助沈殿剤で処理する段階。
・クロマトグラフィーの方法を用いてペプチド切断反応混合液を精製する段階。
・精製し、乾燥させたペプチドを酸性溶媒又は溶媒混合液で洗浄する段階。
【0049】
32.以下の作業段階を含む、配列番号23のペプチドを生成するための実施形態20〜23及び29〜31のいずれかによる方法:
・細胞破壊の後、pH=3まで85%力価のリン酸を加えることによって、前駆体タンパク質結合体を処理する段階。
・前駆体タンパク質結合体を水酸化ナトリウム溶液、例えば0.4MのNaOHで洗浄する段階。
・前駆体タンパク質をリン酸又はギ酸、例えば2%リン酸で切断する段階。
・任意選択で、乾燥させたペプチドをヘキサン酸又は99部ヘキサン及び1部酢酸の混合物で洗浄する段階。
【0050】
33.以下の作業段階を含む、配列番号6のペプチドを生成するための実施形態20〜23及び29〜31のいずれかによる方法:
・ペレットを、例えば5%力価のH3PO4によって加水分解又は切断する段階。
・遠心分離。
・上清のpHを、例えば25%NaOHで約4.0に調節する段階。
・陽イオン交換クロマトグラフィーを用いて上清を精製する段階。
・所望のペプチドを、例えば溶出液にNaOHを加えることによって沈殿させる段階。
・遠心分離。
・ペレットを水に再懸濁する段階。
・ペプチドを、例えば酢酸を加えることによって溶解する段階。
・凍結乾燥。
【0051】
34.本発明は、本発明によるP18ペプチド(配列番号23)及びペプチド配列番号6及びその生成に、並びに垢、特にフケを治療又は予防するための化粧用又は医薬用の手段での、或いは脂肪好性菌類、特にマラセジア属の種(Malassezia ssp.)、特に癜風菌(Malassezia furfur)の増殖及び/又は活動を阻害するためのその使用にさらに関する。これは、例えば2008年12月19日に出願された以前の国際出願PCT/EP2008/010912にも記載され、その開示は本明細書で明示的に参照される。
【0052】
本発明の個々の態様の詳細な説明
1.ペプチド
「所望のペプチド」又は「標的ペプチド」と呼ぶこともできる本発明によるペプチド(Pep)は、2から100、例えば5から70、特に7から50、例えば10から40、12から35、又は15から25個のアミノ酸がペプチド結合を通して連結しているアミノ酸鎖である。ペプチドは、任意のαアミノ酸、特にタンパク質形成アミノ酸で構成されてもよい。
【0053】
ペプチドは、特定の所望の生物学的又は化学的、特に薬理的にも有用な特性を有することができる。そのような特性の例は、以下の通りである:抗微生物活性、特定表面への特異的結合性、結晶化過程及び粒子形成で核になる特性、結晶構造の制御、金属又は金属イオンの結合、界面活性特性、乳化特性、泡安定化特性、細胞吸着への影響。
【0054】
前記ペプチドは、これらの特性の一つ又は複数を有することができる。
【0055】
一実施形態では、本発明は、抗微生物性ペプチドを生成する方法に関する。そのような「抗微生物性ペプチド」は、≦100μMの抗微生物性ペプチドの濃度の存在下で阻害される少なくとも一つの型のグラム陽性若しくはグラム陰性の細菌及び/又は少なくとも一つの型の酵母及び/又は少なくとも一つの型の糸状菌及び/又は少なくとも一つの型の藻類、及び/又は破壊されるそれぞれの生物体の細胞の生育及び/又は増殖によって区別される。
【0056】
一実施形態では、本発明は、陽イオン性抗微生物性ペプチドの提供に関する。陽イオン性抗微生物性ペプチドは、上記の抗微生物性作用及びpH7において0を超える実効電荷を有することによって区別される。
【0057】
この種の陽イオン性ペプチドは、例えば以下の配列であって:
X1 X2K X3 X4 X5KIP X10 KFX6X7 X8 AX9KF(配列番号7)
式中、
X10は、ペプチド結合又は任意の一つ二つの塩基性若しくは疎水性のアミノ酸残基又は一つ二つのプロリン残基であり、
X1からX9は、プロリン以外の任意の塩基性又は疎水性のアミノ酸残基である;
及び/又はその突然変異体又は誘導体を含み、
前駆体タンパク質に存在する反復配列モチーフは、同一であっても異なってもよい。
【0058】
さらなる特別な実施形態では、本発明は、以下の配列であって、
X1 X2K X3 X4 X5KIP X11 X12 KFX6X7 X8 AX9KF(配列番号8)
式中、
X1は、リジン、アルギニン又はフェニルアラニンであり、
X2は、リジン又はトリプトファンであり、
X3は、ロイシン又はリジンであり、
X4は、フェニルアラニン又はロイシンであり、
X5は、ロイシン又はリジンであり、
X6は、ロイシン又はリジンであり、
X7は、ヒスチジン又はリジンであり、
X8は、アラニン、ロイシン、バリン又はセリンであり、
X9は、ロイシン又はリジンであり、
X11は、プロリン又は化学結合であり、
X12は、プロリン又は化学結合である、
並びに/又はその突然変異体及び誘導体を含むペプチドの生成に関し;
前駆体タンパク質に存在する反復配列モチーフは、同一であるか異なる。
【0059】
上の配列又は反復配列モチーフの非限定例は、配列番号6、配列番号9から配列番号15、配列番号23、配列番号69、配列番号71及び/又はその突然変異体若しくは誘導体である。
【0060】
他の適するペプチドが、例えば本出願人の国際出願、2008年12月19日に出願されたPCT/EP2008/010912に記載され、それは本明細書で明示的に参照される。
【0061】
2.反復的前駆体タンパク質
本発明による反復的前駆体タンパク質は、各場合に総配列長に基づき、それらのアミノ酸配列の少なくとも60%、特に少なくとも80%、例えば60〜99%、70〜95%、75〜85%がペプチドの反復配列(本明細書の下で定義される)からなることで区別される。残りの部分は、例えば非反復ペプチド、例えばシグナルペプチド、タグなどを含むことができる。
【0062】
3.反復配列
ペプチド反復配列は、本発明によって有利に生成される少なくとも一つのペプチドを含み、原則として、以下の通りに構築され、
(Pep-Aux)x又は
(Aux-Pep)x
式中、x>1であり、Pepは上に示すペプチドであり、Auxは本明細書で定義される通りである。
【0063】
本発明による反復配列(Pep-Aux又はAux-Pep)は、長さが10〜200、例えば20〜130及び/又は30〜80個のアミノ酸のアミノ酸配列であり、それは、同一の配列として、又は少なくとも70%、例えば少なくとも80%、特に少なくとも約90%の同一性、例えば91、92、93、94、95、96、97、98又は99%の同一性を有する特定配列の変異体として、前駆体タンパク質に複数回存在する。したがって、本発明による反復的前駆体タンパク質は、例えば単一のアミノ酸配列又は複数の異なるアミノ酸配列、例えばPep及び/又はAux構成単位の、同一のコピー又は変異体を含むことができる。
【0064】
さらに、任意数、例えば1〜100、1〜50、又は2〜32、特に4〜16個の上記反復配列を、反復的前駆体タンパク質に連結することができる。
【0065】
反復配列中の本発明によるペプチドの割合は、モル質量に基づくと20%〜80%、例えば30%〜70%である。反復配列の残りの部分は、Aux配列、特に上記SA及びSU配列で、及び任意選択でPep構成単位を選択的に切り離すための特異的切断配列で構成される。
【0066】
4.補助配列
最も広い意味で、補助配列は、本発明による前駆体タンパク質の発現、安定性及び/又は作業を改善するように前記前駆体タンパク質の特性に影響する、前駆体タンパク質中のアミノ酸配列である。反復的前駆体タンパク質中の補助配列は、反復配列の部分(上に示すAux構成単位)であってもよく、又は例えば6×Hisタグ(HHHHHH)、T7タグ(MASMTGGQQMG)、Sタグ(KETAAAKFERQHMDS)、c-Mycタグ(EQKLISEEDL)、Strepタグ(WSHPQFEK)又はHAタグ(YPYDVPDYA)、グルタチオンSトランスフェラーゼ、マルトース結合性タンパク質、セルロース結合性タンパク質など、前駆体タンパク質のアミノ末端又はカルボキシ末端に結合されてもよい。これら及び他の補助配列は、Terpe; Appl Microbiol Biotechnol; 60(5): 523-33 (2003)に記載されている。さらに、補助配列CanA(Mai「In Vitro Untersuchungen zum extrazellularen Netzwerk von Pyrodictium abyssi TAG11」[In Vitro Studies of the Extracellular Network of Pyrodictium abyssi TAG11]、PhD Theses、Regensburg University (1998))及びyaaD(Wohlleben Eur Biophys J、(2009)オンライン刊行物)は、前駆体タンパク質のアミノ末端又はカルボキシ末端に結合させるのに役立つ。
【0067】
一実施形態では、前駆体タンパク質は、前記前駆体タンパク質の溶解性に影響する補助配列を含む。
【0068】
好ましい実施形態では、補助配列は、前駆体タンパク質に「自己組織化」特性を付与する。前駆体タンパク質の前記自己組織化特性は、前記前駆体タンパク質が、すでに発現中に、さらなる手段を必要とせずに「自発的に」、すなわちそれ自体で安定した結合体を形成することによって、又は、溶解性の前駆体タンパク質のそのような安定した結合体の形成が、おそらく「誘導可能な」方法で、すなわちトリガーによって開始されることによって区別される。自己組織化特性を有する前駆体タンパク質は、それらが単純及び効率的な方法で精製することができるという点で、他の前駆体タンパク質より有利である。この種の結合体は、排他的に又は基本的に、例えば水素結合、イオン性及び/又は疎水性の相互作用などの非共有結合の形成を通常含む。
【0069】
自己組織化配列は、例えば長さが少なくとも8個の連続するアミノ酸であってよい。適する配列は、例えば、より高い分子量の結合体への組織化が前に検出されている、それ自体公知であるタンパク質に位置することができる。そのような結合体の例は、アミロイド線維、アクチン若しくはミオシンフィラメント、タンパク質線維、例えばエラスチン線維、コラーゲン線維、イガイ類足糸スレッド、ケラチン線維又は蚕糸である。自己組織化配列を含むこれら及び他のタンパク質は、本明細書で明示的に参照される、Scheibel、Current Opinion in Biotechnology 16; 1-7 (2005)に記載されている。
【0070】
コスモトロピック(cosmotropic)塩の溶液は、「トリガー」として使用することができる。例としてここに指摘することができるコスモトロピック塩は、「ホフマイスター」系列に従って、ナトリウム又は塩化物イオンよりも明白なコスモトロピック特性を有する少なくとも一つの型のイオンを含むものである。そのような塩の例は、リン酸カリウム及び硫酸アンモニウムである。そのような塩溶液の例は、0.5Mのリン酸カリウム及び0.8Mの硫酸アンモニウムである。
【0071】
前駆体タンパク質の本発明による安定した結合体は、一般的に複数の凝集タンパク質を可溶化することができ、このようにタンパク質汚染から分離することができる溶液による処理の間、特定の期間それらの結合形を維持することによって区別される。そのような溶液の例は、塩基、酸、尿素、塩及び界面活性剤の溶液である。より具体的には、本発明による安定した結合体は、アルカリ金属水酸化物、尿素、グアニジウム塩又は荷電した界面活性剤、例えばアルキルトリメチルアンモニウム塩又はアルキル硫酸の溶液に、特定の期間不溶性である。
【0072】
より具体的には、安定した結合体は、≧0.2M水酸化ナトリウム、≧2M尿素、≧1M塩酸グアニジン、≧1Mチオシアン酸グアニジン、≧0.1%ドデシル硫酸ナトリウム又は≧0.1%臭化セチルトリメチルアンモニウムの溶液に、特定の期間不溶性である。より具体的には、前駆体タンパク質の安定した結合体は、≧10分間、例えば≧30分間、特に≧60分間、上記の溶液中で安定である。
【0073】
安定した結合体は、特にそれが
a) 0.2MのNaOHによって1時間以内に、及び/又は
b) 2Mの尿素によって、及び/又は
c) 1Mの塩酸グアニジウムによって
10分以内に、室温(すなわち約20℃)で溶解され得ない場合に存在する。
【0074】
さらなる特別な実施形態では、前駆体タンパク質は、反復的前駆体タンパク質の有害な影響から宿主細胞を保護する補助配列(SU)を含む。
【0075】
特別な実施形態では、前駆体タンパク質は、反復的前駆体タンパク質に存在する陽イオン性、抗微生物性ペプチド配列の有害な影響から宿主細胞を保護する、補助配列SUを含む。より具体的には、これらの保護配列は、負荷電したアミノ酸(Asp、Glu)を含む。より具体的には、補助配列はいくつかの負荷電したグルタミン酸及び/又はアスパラギン酸アミノ酸を含み、反復的前駆体タンパク質内でpH=7において-10を超え+10未満の、特に-5を超え+5未満の、例えば-2を超え+2未満の全実効電荷になる。
【0076】
さらなる特別な実施形態では、負荷電した保護配列は、両親媒性らせんを形成する。本発明による両親媒性らせんは、以下のA1-A5-A2-A6-A3-A7-A4(図1)の順序の一次構造(A1-A7)の7個の連続的アミノ酸の配列の円形配置で(すなわちその軸性(らせん軸に沿っている)投影又は平面図で)、前記円上の少なくとも3個の隣接したアミノ酸が疎水性アミノ酸(Ala、Met、Cys、Phe、Leu、Val、Ile)又はグリシンであり、前記円上の3個の隣接したアミノ酸が親水性アミノ酸(Thr、Ser、Trp、Tyr、Pro、His、Glu、Gln、Asp、Asn、Lys、Arg)又はグリシンである場合に形成される。この円形配置は、「ヘリカルホイール投影」とも呼ばれる。
【0077】
好ましい実施形態では、負荷電した保護配列は、配列番号16〜配列番号19の配列のいずれかに対応する。
【0078】
5.切断配列
切断配列は、本発明によって望まれるペプチド配列(Pep)の上流及び下流に配置されるアミノ酸配列である。これらの配列は、Pep構成単位が「特異的」切断によって反復的前駆体タンパク質から切り離されることを可能にする。この関係において、「特異的」は、前記切断が、前駆体タンパク質中で基本的に、特に排他的に一つ又は複数の既定の位置で起こり、それによって所望のペプチド又はその前駆体が切り離されることを意味する。
【0079】
「前駆体」は、例えば、一方又は両方の末端に天然の本来のペプチド配列の一部でないが、そのさらなる使用及び機能を妨害しないアミノ酸残基、又は必要な場合には、従来の化学的又は生化学的方法を用いて切断によって切り離すことが可能であるアミノ酸残基を含むペプチド鎖からなることができる。
【0080】
切断配列は、前記配列に結合して、二つの特定のアミノ酸の間でペプチド結合を切断するタンパク質加水分解活性酵素の特異的認識配列として作用することができる。例は、Arg-Cプロテイナーゼ、Asp-Nエンドペプチダーゼ、カスパーゼ、キモトリプシン、クロストリパイン、エンテロキナーゼ、Xa因子、グルタミルエンドペプチダーゼ、グランザイムB、LysCリジルエンドペプチダーゼ(アクロモバクタープロテイナーゼI)LysNペプチジル-Lysメタロエンドペプチダーゼ、ペプシン、プロリンエンドペプチダーゼ、プロテイナーゼK、ブドウ球菌性ペプチダーゼI、サーモライシン、トロンビン、トリプシンの認識配列である。対応する認識配列は、文献に、例えばKeil、「Specificity of proteolysis」p. 335 Springer-Verlag (1992)に記載されている。
【0081】
或いは、特定のアミノ酸配列が、特定の化学物質、例えばBNPSスカトール(2-(2'-ニトロフェニルスルフェニル)-3-メチル-3-ブロモイノレニン)、臭化シアン、酸、ヒドロキシルアミン、ヨードソ安息香酸、NTCB(2-ニトロ-5-チオシアノ安息香酸)によってポリペプチド骨格が選択的に切断されることを可能にする。
【0082】
より具体的には、用いられる切断配列は、反復的な前駆体タンパク質が化学物質によって切断されるのを可能にする。特に適する切断配列は、ヒドロキシルアミンによる切断を可能にする配列モチーフAsn-Gly、又は酸切断を可能にするAsp-Pro若しくはAsp-Xxxを含み、Xxxは任意のタンパク質形成性アミノ酸である。
【0083】
6.本発明による配列のさらなる発展
6.1アミノ酸配列
本明細書で具体的に開示されるペプチド(Pep)の配列、並びに補助配列(Aux、SA、SU)、反復配列、切断配列及び反復的前駆体タンパク質のための配列のほかに、本発明は、前記配列の機能的同等物、機能的誘導体及び塩にも関する。
【0084】
本発明によると、「機能的同等物」は、特に、上述のアミノ酸配列の少なくとも一つの配列位置で、具体的に指摘されたものと異なるアミノ酸を有するが、元の改変されていないペプチドと同じ特性を変わらずに有する突然変異体も意味する。したがって、「機能的同等物」は、一つ又は複数のアミノ酸付加、置換、欠失及び/又は転位によって得られる突然変異体を含み、前記改変は、それらが本発明による特性プロファイルを有する突然変異体をもたらす限り、任意の配列位置で起こることが可能である。より具体的には、突然変異体と改変されていないポリペプチド間の反応性パターンが定性的に対応する場合にも、機能的同等性は存在する。
【0085】
上記の意味での「機能的同等物」は、記載のポリペプチドの「前駆体」でもあり、さらには前記ポリペプチドの「機能的誘導体」及び「塩」でもある。
【0086】
ここで「前駆体」は、所望の生物活性の有無に関係なく、前記ポリペプチドの天然又は合成の前駆体である。
【0087】
適するアミノ酸置換の例は、以下の表に見ることができる:


表現「塩」は、本発明のペプチド分子のカルボキシル基の塩及びアミノ基の酸添加塩の両方を意味する。カルボキシル基の塩は、それ自体が公知である方法で調製することができ、無機の塩、例えばナトリウム、カルシウム、アンモニウム、鉄及び亜鉛の塩、さらには有機塩基、例えばアミンとの塩、例えばトリエタノールアミン、アルギニン、リシン、ピペリジンなどを含む。本発明は、酸添加塩、例えば無機酸、例えば塩酸又は硫酸との塩、並びに有機酸、例えば酢酸及びシュウ酸との塩に同様に関する。
【0088】
本発明によるポリペプチドの「機能的誘導体」(又は「誘導体」)は、公知の技術を用いて、機能的アミノ酸側鎖の上に、又はそのN末端若しくはC末端に同様に生成することができる。この種の誘導体の例には、カルボン酸基の脂肪族エステル、アンモニア又は一級若しくは二級アミンとの反応によって得られるカルボン酸基のアミド;アシル基との反応によって調製される遊離アミノ基のNアシル誘導体;又はアシル基との反応によって調製される遊離のヒドロキシル基のOアシル誘導体が含まれる。さらに、1から5、例えば2、3又は4個の、ランダムなD-又はL-アミノ酸残基を、N末端及び/又はC末端に共有結合(ペプチド結合)でさらに結合させることができる。
【0089】
6.2核酸、発現構築物、ベクター及びそれらを含む微生物
核酸:
本発明は、本発明によって使用されるペプチド及びタンパク質配列をコードする核酸分子をさらに含む。
【0090】
本明細書で指摘される核酸配列のすべて(一本鎖及び二本鎖のDNA及びRNA配列、例えばcDNA及びmRNA)は、化学合成によってそれ自体公知である方法、例えば二重らせんの個々のオーバーラップ相補的核酸構成単位の断片融合によって、ヌクレオチド構成単位から調製することができる。例えば、オリゴヌクレオチドは、亜リン酸アミダイト法によって公知の方法で化学的に合成することができる(Voet、Voet、2版、Wiley Press New York、896-897頁)。DNAポリメラーゼのクレノウ断片及びライゲーション反応を用いて合成オリゴヌクレオチドを組み立て、ギャップを埋めること、並びに一般的なクローニング方法が、Sambrookら(1989)、Molecular Cloning: A laboratory manual、Cold Spring Harbor Laboratory Pressに記載されている。
【0091】
本発明は、本発明によるポリペプチド若しくはタンパク質又はその生物学的活性断片をコードする単離された核酸分子、及び、例えば、本発明によるコード核酸を同定又は増幅するためのハイブリダイゼーションプローブ又はプライマーとして用いることができる核酸断片の両方に関する。
【0092】
本発明による核酸分子は、コード遺伝子領域の3'末端及び/又は5'末端からの非翻訳配列をさらに含むことができる。
【0093】
「単離される」核酸分子は、前記核酸の天然源に存在する他の核酸分子から取り出され、さらに、組換え技術によって調製される場合は、他の細胞物質若しくは培地を事実上含まなくてもよく、又は、化学的に合成される場合は、化学物質前駆体若しくは他の化学物質を含まなくてもよい。
【0094】
本発明による核酸分子は、標準の分子生物学的技術、及び本発明によって提供される配列情報によって単離することができる。例えば、cDNAは、詳細に開示されている具体的な配列のいずれか又はその任意のセグメントをハイブリダイゼーションプローブとして、及び標準のハイブリダイゼーション技術を用いて、適するcDNAライブラリーから分離することができる(例えば、Sambrook, J.、Fritsch, E.F.及びManiatis, T. Molecular Cloning: A Laboratory Manual.2版、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY、1989に記載されている)。さらに、その配列に基づいて生成されるオリゴヌクレオチドプライマーを用いてポリメラーゼ連鎖反応によって単離される、開示されている配列のいずれか又はそのセグメントを含む核酸分子を用いることができる。この方法で増幅される核酸は、適するベクターにクローニングし、DNA配列分析によって特徴づけることができる。本発明によるオリゴヌクレオチドは、標準の合成法によって、例えばDNA合成装置を用いて調製することもできる。
【0095】
本発明は、具体的に記載されているヌクレオチド配列又はそのセグメントに相補的である核酸分子をさらに含む。
【0096】
本発明によるヌクレオチド配列は、プローブ及びプライマーの生成を可能にし、それらは、他の細胞型及び生物体で相同配列を同定及び/又はクローニングするために用いることができる。そのようなプローブ及びプライマーは、本発明による核酸配列のセンス鎖又は対応するアンチセンス鎖の少なくとも約12、好ましくは少なくとも約25、例えば約40、50又は75個の連続的なヌクレオチドと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列領域を通常含む。
【0097】
本発明は、「サイレント突然変異」を含むか、又は特別な元の又は宿主の生物体のコドン使用による具体的に指摘された配列と比較して改変されている核酸配列、並びに天然に存在する変異体、例えばそのスプライス変異体若しくは対立遺伝子変異体も含む。本発明は、保存的ヌクレオチド置換(すなわち、問題のアミノ酸が同等の電荷、サイズ、極性及び/又は溶解性のアミノ酸で置換される)によって得られる配列にも関する。
【0098】
本発明は、配列多型のために、具体的に開示されている核酸に由来する分子にも関する。これらの遺伝子多型は、天然の変異のために、単一の集団内の個体の間に存在することができる。これらの天然の変異は、遺伝子のヌクレオチド配列で1から5%の変動を通常もたらす。
【0099】
本発明は、上述のコード配列とハイブリダイズするか、それに相補的である核酸配列もさらに含む。これらのポリヌクレオチドは、ゲノム又はcDNAライブラリーをスクリーニングすることによって見出すことができ、任意選択で、適するプライマーを用いてPCRによってそこから増幅させ、次に、例えば適するプローブを用いて単離することができる。別の可能性は、本発明によるポリヌクレオチド又はベクターで適する微生物を形質転換し、前記微生物、したがって前記ポリヌクレオチドを増殖させ、その後それらを単離する可能性である。さらに、本発明によるポリヌクレオチドは、化学的に合成することもできる。
【0100】
ポリヌクレオチドと「ハイブリダイズする」ことができる特性とは、ストリンジェント条件下で相補的配列に実質的に結合するポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドの能力を意味し、非相補的パートナー間の非特異的結合性反応はこれらの条件下で起こらない。この目的のために、配列は、70〜100%、好ましくは90〜100%相補的であるべきである。互いに特異的に結合することができる相補的配列の特性は、例えば、ノーザン若しくはサザンブロット技術で、又はPCR若しくはRT-PCRでのプライマー結合で利用される。通常、長さが少なくとも30塩基対のオリゴヌクレオチドが、この目的のために使用される。ストリンジェント条件とは、例えばノーザンブロット技術では、50〜70℃、好ましくは60〜65℃の洗浄溶液、例えば0.1% SDSを含有する0.1×SSC緩衝液(20×SSC: 3MのNaCl、0.3Mのクエン酸ナトリウム、pH7.0)を用いて、非特異的にハイブリダイズしたcDNAプローブ又はオリゴヌクレオチドを溶出することを意味する。上記のように、この場合、高度に相補的な核酸だけが互いに結合したままである。ストリンジェント条件を調節することは、当業者に公知であり、例えばAusubelら、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley & Sons、N.Y. (1989)、6.3.1-6.3.6に記載されている。
【0101】
二つの核酸の間の「同一性」とは、各場合に核酸の全体長にわたるヌクレオチドの同一性、特にInformax(USA)からのベクターNTI Suite 7.1ソフトウェアを用いる比較、及びClustal方法(Higgins DG、Sharp PM.Fast and sensitive multiple sequence alignments on a microcomputer.Comput Appl. Biosci. 1989 Apr;5(2):151-1)を適用し、以下のパラメータを設定することを通して計算される同一性を意味する:
多重整列パラメータ:
ギャップ開放ペナルティ 10
ギャップ伸長ペナルティ 10
ギャップ分離ペナルティ範囲 8
ギャップ分離ペナルティ オフ
整列遅延の同一性% 40
残基特異的ギャップ オフ
親水性残基ギャップ オフ
転移秤量 0
ペアワイズ整列パラメータ:
FASTアルゴリズム オン
K-タプルサイズ 1
ギャップペナルティ 3
ウインドウサイズ 5
最良対角線の数 5
発現構築物及びベクター:
本発明は、調節核酸配列による遺伝子調節下の本発明によるペプチド又は前駆体タンパク質をコードする核酸配列を含む発現構築物、及び前記発現構築物の少なくとも一つを含むベクターにさらに関する。本発明によるそのような構築物は、好ましくは、特定のコード配列の5'上流のプロモーター及び3'下流の転写終結配列を含み、任意選択で、各場合にコード配列に作動可能に連結されるさらなる一般的調節エレメントを含む。「作動可能な連結」は、プロモーター、コード配列、転写終結区及び任意選択でさらなる調節エレメントの、コード配列の発現の間に前記調節エレメントの各々がその目的の機能を実行できるような方法での、逐次的な配置を意味する。作動可能に連結され得る配列の例は、ターゲッティング配列、さらにはエンハンサー、ポリアデニル化シグナルなどである。さらなる調節エレメントには、選択可能なマーカー、増幅シグナル、複製開始点などが含まれる。適する調節配列は、例えばGoeddel、Gene Expression Technology: Methods in Enzymology 185、Academic Press、San Diego、CA (1990)に記載されている。
【0102】
人工調節配列に加えて、天然の調節配列が実際の構造遺伝子の上流にまだ存在してもよい。任意選択で、この天然の調節を遺伝子改変によってスイッチを切り、それによって遺伝子の発現を増加又は減少させることができる。しかし、遺伝子構築物はより単純な構造を有することもでき、すなわち、いかなる追加の調節シグナルも構造遺伝子の上流に挿入されず、その調節を有する天然のプロモーターは除かれない。その代わりに、天然の調節配列は、調節がもはや起こらず、遺伝子発現が増加又は減少するように突然変異させられる。遺伝子構築物は、核酸配列の一つ又は複数のコピーを含むことができる。
【0103】
使えるプロモーターの例は、以下の通りである:グラム陰性細菌で有利に用いられるcos、tac、trp、tet、trp-tet、lpp、lac、lpp-lac、lac-lq、T7、T5、T3、gal、trc、ara、SP6、ラムダPR、若しくはラムダPLプロモーター中;さらに、グラム陽性プロモーターamy及びSPO2、酵母プロモーターADC1、MFa、AC、P-60、CYC1、GAPDH又は植物プロモーターCaMV/35S、SSU、OCS、lib4、usp、STLS1、B33、not又はユビキチンプロモーター又はファゼオリンプロモーター。例えば光、及び特に温度による誘導が可能なプロモーター、例えばPrPlプロモーターなどの誘導可能なプロモーターを用いることが、特に好ましい。原則では、それらの調節配列を有する任意の天然プロモーターを用いることができる。さらに、合成プロモーターを有利に用いることもできる。
【0104】
前記調節配列は、核酸配列及びタンパク質が特異的に発現されることを可能にするものである。宿主生物体によっては、このことは、遺伝子が誘導後だけに発現若しくは過剰発現すること、又は、例えばそれが直ちに発現及び/又は過剰発現することを意味することができる。
【0105】
ここでは、調節配列又は因子が正の影響を及ぼし、それによって発現を増加又は減少させることができることが好ましい。したがって、プロモーター及び/又は「エンハンサー」などの強い転写シグナルを用いることによって、調節エレメントを転写レベルで有利に強化することが可能である。しかし、さらに、例えばmRNAの安定性を向上させることによって、翻訳を強化することも可能である。
【0106】
発現カセットは、適するプロモーターを適するコードヌクレオチド配列に、及び終結又はポリアデニル化シグナルに融合することによって調製される。この目的のために、例えば、T. Maniatis、E.F. Fritsch及びJ. Sambrook、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、NY (1989)及びT.J. Silhavy、M.L. Berman及びL.W. Enquist、Experiments with Gene Fusions、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、NY (1984)及びAusubel, F.M.ら、Current Protocols in Molecular Biology、Greene Publishing Assoc. and Wiley Interscience (1987)に記載されるような、よく知られている組換え及びクローニング技術が用いられる。
【0107】
適する宿主生物体で組換え核酸構築物又は遺伝子構築物を発現させるために、有利には、それは、遺伝子が宿主で最適に発現されるのを可能にする宿主特異的ベクターに挿入される。ベクターは当業者に周知であり、例えば、「Cloning Vectors」(Pouwels P. H.ら編、Elsevier、Amsterdam-New York-Oxford、1985)に見出すことができる。ベクターには、プラスミドに加えて当業者に公知である任意の他のベクター、例えばファージ、ウイルス、例えばSV40、CMV、バキュロウイルス及びアデノウイルス、トランスポゾン、ISエレメント、プラスミド、コスミド並びに線状若しくは環状DNAが含まれると理解される。前記ベクターは、宿主生物体又は染色体で自律的に複製させることができる。
【0108】
指摘することができる好適発現ベクターの例は、以下の通りである:
pGEX(Pharmacia Biotech Inc; Smith, D.B.及びJohnson, K.S. (1988) Gene 67:31-40)、pMAL(New England Biolabs、Beverly、MA)並びにpRIT5(Pharmacia、Piscataway、NJ)などの一般的な融合発現ベクターであり、そこではそれぞれグルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、マルトースE結合性タンパク質及びプロテインAが、組換え標的タンパク質に融合される。
【0109】
pTrc(Amannら、(1988) Gene 69:301-315)及びpET 11d(StudierらGene Expression Technology: Methods in Enzymology 185、Academic Press、San Diego、California (1990) 60-89)などの非融合タンパク質発現ベクター。
【0110】
pYepSec1(Baldariら、(1987) Embo J. 6:229-234)、pMFa(Kurjan及びHerskowitz (1982) Cell 30:933-943)、pJRY88(Schultzら、(1987) Gene 54:113-123)及びpYES2(Invitrogen Corporation、San Diego、CA)などの、サッカロミセス・セレビシエ(S. cerevisiae)酵母での発現のための酵母発現ベクター。糸状菌などの他の菌類での使用に適するベクター及びベクター構築方法は、以下に詳述されるものを含む: Applied Molecular Genetics of Fungi、J.F. Peberdyら編、pp. 1-28、Cambridge University Press: Cambridge中の、van den Hondel、C.A.M.J.J. & Punt, P.J. (1991)「Gene transfer systems and vector development for filamentous fungi」。
【0111】
培養昆虫細胞(例えばSf9細胞)でタンパク質を発現させるのに利用可能なバキュロウイルスベクターは、pAc系(Smithら、(1983) Mol. Cell Biol. 3:2156-2165)及びpVL系(Lucklow及びSummers、(1989) Virology 170:31-39)を含む。
【0112】
以下に詳述されるものなどの植物発現ベクター: Becker, D.、Kemper, E.、Schell, J.及びMasterson, R. (1992)「New plant binary vectors with selectable markers located proximal to the left border」、Plant Mol. Biol. 20:1195-1197;及びBevan, M.W. (1984)「Binary Agrobacterium vectors for plant transformation」、Nucl. Acids Res. 12:8711-8721。
【0113】
pCDM8(Seed, B. (1987) Nature 329:840)及びpMT2PC(Kaufmanら(1987) EMBO J. 6:187-195)などの哺乳動物発現ベクター。
【0114】
原核生物及び真核生物の細胞のための他の適する発現系が、Sambrook, J.、Fritsch, E.F.及びManiatis, T.、Molecular cloning: A Laboratory Manual、2版、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY、1989のチャプター16及び17に記載されている。
【0115】
組換え微生物:
本発明によるベクターを用いて、例えば本発明による少なくとも一つのベクターで形質転換され、本発明によるポリペプチドを生成するために使用することができる、組換え微生物を生成することが可能である。有利には、本発明による上記の組換え構築物は、適する宿主系に導入されて発現される。ここでは、それぞれの発現系で前記核酸の発現をもたらすために、例えば共沈、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、レトロウイルストランスフェクションなどの当業者によく知られているクローニング及びトランスフェクション方法を用いることが好ましい。適する系は、例えば、Current Protocols in Molecular Biology、F. Ausubelら、Hrsg.、Wiley Interscience、New York 1997又はSambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual.2版、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY、1989に記載されている。
【0116】
本発明により、相同組換え微生物を生成することも可能である。この目的のために、本発明による配列を改変、例えば機能的に破壊する(「ノックアウト」ベクター)ために、任意選択で少なくとも一つのアミノ酸欠失、付加又は置換が導入されている、本発明による遺伝子又はコード配列の少なくとも一つのセグメントを含むベクターが調製される。導入される配列は、例えば、関連する微生物からの同族体であることもでき、又は哺乳動物、酵母若しくは昆虫源に由来することもできる。或いは、相同組換えのために用いられるベクターは、相同組換えの際に、内因性遺伝子が別の方法で突然変異又は改変されるが、機能的タンパク質を変わらずにコードするような方法で設計することができる(例えば、上流調節領域は、それが内因性タンパク質の発現を変化させるような方法で改変されていてよい)。本発明による遺伝子の改変セグメントは、相同組換えベクターに存在する。相同組換えのための適するベクターの構築は、例えばThomas, K.R.及びCapecchi, M.R. (1987) Cell 51:503に記載されている。
【0117】
適する宿主生物体は、原則として、本発明による核酸、それらの対立遺伝子変異体、それらの機能的同等物又は誘導体の発現を可能にする任意の生物体である。宿主生物体は、例えば、細菌、菌類、酵母、植物又は動物細胞を意味する。
【0118】
原核生物の発現生物体の非限定例は、大腸菌、枯草菌、巨大菌(Bacillus megaterium)、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)、その他である。真核生物の発現生物体の非限定例は、サッカロミセス・セレビシエ、ピチア・パストリス(Pichia pastoris)、その他などの酵母、黒色麹菌(Aspergillus niger)、麹菌(Aspergillus oryzae)、偽巣性麹菌(Aspergillus nidulans)、トリコデルマ・リーセイ(Trichoderma reesei)、アクレモニウム・クリソゲナム(Acremonium chrysogenum)、その他などの糸状菌、Hela細胞、COS細胞、CHO細胞、その他などの哺乳動物細胞、Sf9細胞、MEL細胞、その他などの昆虫細胞、ジャガイモ(Solanum tuberosum)、タバコ(Nicotiana)、その他などの植物若しくは植物細胞である。
【0119】
首尾よく形質転換された生物体は、ベクターに、又は発現カセットに同様に存在するマーカー遺伝子によって選択することができる。そのようなマーカー遺伝子の例は、抗生物質耐性のための、及び、形質転換細胞の着色をもたらす発色反応を触媒する酵素のための遺伝子である。次に、自動化された細胞選別によって後者を選択することができる。適当な抗生物質耐性遺伝子(例えばG418又はハイグロマイシン)を運ぶ、ベクターで首尾よく形質転換された微生物は、対応する抗生物質を含む液体又は固体の培地によって選択することができる。アフィニティークロマトグラフィーによる選択のために、細胞表面に提示されるマーカータンパク質を利用することができる。
【0120】
7.前駆体タンパク質及びペプチドの組換え生成
本発明によって用いられるペプチド及び前駆体タンパク質は、原則として、ペプチド/前駆体タンパク質産生微生物を培養し、任意選択で前記ポリペプチドの発現を誘導し、後者を培養物から単離することを含む、それ自体が公知の方法によって組換えで生成することができる。この方法で、所望により、ペプチド及び前駆体タンパク質を工業規模で生産することも可能である。
【0121】
組換え微生物は、公知の方法によって培養し、発酵させることができる。例えば、細菌は、TB又はLB培地において20から40℃、及びpH6から9で増殖させることができる。適する培養条件は、例えばT. Maniatis、E.F. Fritsch及びJ. Sambrook、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、NY (1989)に詳述されている。
【0122】
ペプチド又は前駆体タンパク質が培地中に分泌されない限り、細胞は次に破壊され、公知のタンパク質単離方法によって生成物が溶解物から回収される。任意選択で、細胞は、高周波超音波によって、高圧力によって、例えばフレンチ圧力セルで、浸透圧溶解によって、界面活性剤、分解酵素若しくは有機溶媒の作用で、ホモジナイザによって、又は記載する複数の方法を組み合わせることによって破壊することができる。
【0123】
ペプチド又は前駆体タンパク質は、公知のクロマトグラフィー方法、例えば分子篩クロマトグラフィー(ゲルろ過)、例えばQ-セファロースクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー及び疎水性クロマトグラフィーを用いて、並びに限外ろ過、結晶化、塩析、透析及び本来のゲル電気泳動などの他の一般的方法によって精製することができる。適する方法が、例えば、Cooper, F.G.、Biochemische Arbeitsmethoden[原書名: The Tools of Biochemistry]、Verlag Walter de Gruyter、Berlin、New York又はScopes, R.、Protein Purification、Springer Verlag、New York、Heidelberg、Berlinに記載されている。
【0124】
さらに、組換えペプチド又は前駆体タンパク質は、cDNAを特定のヌクレオチド配列で延長し、したがって、例えばより単純な精製のために用いられる改変ポリペプチド又は融合タンパク質をコードするベクター系又はオリゴヌクレオチドを用いて単離することができる。この種の適する改変例は、アンカーとして作用する「タグ」、例えばヘキサヒスチジンアンカーとして知られる改変、又は抗体が抗原として認識することができるエピトープである(例えば、Harlow, E.及びLane, D.、1988、Antibodies: A Laboratory Manual.Cold Spring Harbor (N.Y.) Press)。これらのアンカーは、タンパク質を固体支持体、例えば、クロマトグラフィーカラムに導入されてもよいか、又はマイクロタイタープレート若しくは別の支持体の上で用いてもよいポリマーマトリックスに固定するために用いることができる。
【0125】
同時に、これらのアンカーは、タンパク質を認識するために用いることもできる。さらに、タンパク質は、タンパク質を誘導体化するために、蛍光染料、基質の反応によって検出可能な反応生成物を形成する酵素マーカー又は放射性マーカーなどの一般的なマーカーを単独で、又は前記アンカーと組み合わせて用いることにより認識することができる。
【0126】
より具体的には、反復的前駆体タンパク質は、本発明による反復的前駆体タンパク質をコードする、合成的に調製された遺伝子配列を発現させることによって生成される。合成遺伝子配列の一つの可能な調製が、HummerichらBiochemistry 43; 13604-13612 (2004)に記載されている。
【0127】
反復的前駆体タンパク質は、宿主細胞に溶解性又は不溶性の形態で存在することができる。いずれの場合にも、細胞は破壊される。より具体的には、破壊は高圧ホモジナイザによって1000〜1500バールで実行される。溶解性の反復的前駆体タンパク質では、細胞タンパク質の大部分は、溶解物を60〜100℃、例えば70〜90℃又は75〜85℃まで加熱することによって沈殿させられ、適する分離法(例えば沈降又はろ過)によって溶解性の反復的前駆体タンパク質から除かれる。次に、コスモトロピック塩(上に述べたもの)を加えることによって反復的前駆体タンパク質を沈殿させる。反復的前駆体タンパク質は、この方法で安定した結合体を形成する。結合体によって、加えられるコスモトロピック塩の最終濃度は異なることができ、約0.2〜3M又は例えば0.8〜2Mの範囲内である。最適濃度は、タンパク質化学者によく知られている単純な方法で決定することができる。
【0128】
反復的前駆体タンパク質は、外部トリガーなしで組織化することもできる。この場合、対応する安定した結合体を与えるために、反復的前駆体タンパク質は宿主細胞にすでに組織化している。細胞の破壊の後、前記結合体は、適する分離法(例えば沈降又はろ過)によって、溶解性成分から分離される。
【0129】
結合体の分離は、細胞の破壊の後に補助沈殿剤を加えることによって向上させることができる。前記補助沈殿剤は、結合体のさらなる凝固を引き起こし、その結果、水性媒体から結合体を分離するために、例えば沈降のためにより低い加速しか必要としない。用いることができる補助沈殿剤は、酸、アルカリ液、ポリマー溶液、特に荷電ポリマーの水溶液である。補助沈殿剤の例は、リン酸又はポリエチレンイミン溶液である。
【0130】
反復的前駆体タンパク質の安定した結合体は、さらに精製されてもよい。この目的のために、安定した結合体は不溶性であるが他の混入物は溶解している溶液が、この精製のために用いられる。より具体的には、塩基、酸、尿素、塩及び界面活性剤の水溶液が用いられる。アルカリ金属水酸化物、尿素、グアニジウム塩又は荷電した界面活性剤、例えばアルキルトリメチルアンモニウム塩又はアルキル硫酸の溶液の使用が、特に適する。より具体的には、≧0.2M水酸化ナトリウム、≧2M尿素、≧1M塩酸グアニジン、≧1Mチオシアン酸グアニジン、又は≧0.1%ドデシル硫酸ナトリウム若しくは≧0.1%臭化セチルトリメチルアンモニウムの溶液が用いられる。精製のために、安定した結合体を対応する溶液に再懸濁し、次に単純な分離法(例えば沈降又はろ過)によって溶液から分離する。反復的前駆体タンパク質を次に水で洗浄し、当業者によく知られている方法を用いて乾燥させる。
【0131】
反復的前駆体タンパク質からペプチドを回収するために、これらの配列は前記前駆体タンパク質から切断され、補助配列から分離されなければならない。切断は、反復的前駆体タンパク質に存在する切断配列で起こる。アミノ酸鎖の特異的切断のための方法は、文献に記載されている。反復的前駆体タンパク質は、酵素で、又は化学的に切断することができる。アミノ酸鎖を特異的に切断するために用いることができる酵素の例は、Arg-Cプロテイナーゼ、Asp-Nエンドペプチダーゼ、カスパーゼ、キモトリプシン、クロストリパイン、エンテロキナーゼ、Xa因子、グルタミルエンドペプチダーゼ、グランザイムB、LysCリジルエンドペプチダーゼ(アクロモバクタープロテイナーゼI)LysNペプチジル-Lysメタロエンドペプチダーゼ、ペプシン、プロリンエンドペプチダーゼ、プロテイナーゼK、ブドウ球菌性ペプチダーゼI、サーモライシン、トロンビン、トリプシンである。アミノ酸鎖を特異的に切断するために用いることができる化学物質の例は、BNPS-スカトール(2-(2'-ニトロフェニルスルフェニル)-3-メチル-3-ブロモイノレニン)、臭化シアン、酸、ヒドロキシルアミン、ヨードソ安息香酸、NTCB(2-ニトロ-5-チオシアノ安息香酸)である。
【0132】
より具体的には、反復的前駆体タンパク質は、化学的に、例えばヒドロキシルアミン又は酸による切断によって切断される。5未満で0を超える、好ましくは4未満で1を超えるpKを有するあらゆる無機又は有機の酸が、酸分解のために適する。より具体的には、1〜5%リン酸又は1〜5%ギ酸が前記酸分解のために用いられる。酸分解の条件によって、アミノ酸AspとPro若しくはAspとXxxの間で起こる単純切断であって、Xxxは任意のタンパク質形成性アミノ酸であるか、又は、先ずアミノ酸AspとPro若しくはAspとXxxの間で切断が起こり、次にアスパラギン酸がペプチドのアミノ酸配列の前記アスパラギン酸の上流でアミノ酸N末端から完全に切断される。
【0133】
切断は、精製された反復的前駆体タンパク質を用いて、又は反復的前駆体タンパク質を含む細胞分画(例えば宿主細胞の溶解性成分又は宿主細胞の不溶性成分)を用いて、又は反復的前駆体タンパク質を含む完全な宿主細胞を用いて実行することができる。切断剤は、切断の後不活性化されなければならない。この目的のための方法は、当業者に公知である。
【0134】
不活性化の後、切断反応混合物は、とりわけ所望のペプチド、切断された補助配列及び不活性化切断剤を含む。この溶液では、ペプチドはそれらの所望の活性をすでに有することができる。より高い純度を必要とする場合、反復的前駆体タンパク質から開放されたペプチドは、切断後に補助配列から除いてもよい。自己組織化補助配列の利点は、前記補助配列が切断の間又は後に組織化されることである。それらは、選択された切断条件下での切断の間に、又は前記補助配列の組織化を助ける物質の添加のために、自発的に組織化することもできる。そのような組織化促進物質は、例えば、ホフマイスター系列に従って、ナトリウム又は塩化物イオンよりもコスモトロピック特性を有する少なくとも一つの型のイオンを含むコスモトロピック塩である。他の組織化促進物質は、酸又はアルカリ液、又は水と混和性の有機溶媒、例えばアルコールである。組織化された補助配列は、沈降又はろ過によって、溶解性の開放されたペプチドから除くことができる。所望のペプチドから、残りのタンパク質若しくはペプチド混入物、又は切断の間又は後に加えられる塩若しくは他の物質を除くために、さらなる精製段階が必要とされることがある。この目的のために、例えば、クロマトグラフィー法、沈殿、透析、二相抽出、及び当業者によく知られている他の方法を用いることができる。
【0135】
次に、所望の用途のためにペプチドを含有する溶液を直接に用いることができ、又は当業者によく知られている方法(例えば噴霧乾燥又は凍結乾燥)を用いて溶液を乾燥することができ、対応する乾燥生成物が用いられる。
【0136】
乾燥後、ペプチドから除くことができない混入物を、前記ペプチドが不溶性である溶媒による洗浄によって除くすことが可能であるが、それは、後者が水に溶解する場合に限る。有機溶媒、例えばn-ヘキサン、N-メチルピロリドン又は溶媒及び酸の混合物、例えばn-ヘキサン及び酢酸の混合物、又は有機酸、例えば酢酸若しくはヘキサン酸が、これのために適する。この精製段階のために、乾燥したペプチドは適当な溶媒/溶媒混合物に再懸濁され、次に沈降又はろ過によって再び取り出される。残留する溶媒/溶媒混合物は、乾燥によって取り出すことができる。
【0137】
切断によって得られる形態の所望のペプチドは、所望の活性を有することができる。しかし、切断の後にペプチドをさらに改変する必要があることもある。例えば、ペプチドは、アミド化、エステル化、酸化、アルキル化、又は任意の分子に化学的に連結することができる。そのような改変のために用いることができる分子の例は、アルコール、アルコールシステインエステル、カルボン酸、チオエステル又はマレイミドである。より詳細には、そのような改変のために用いられる分子は、ペプチドの疎水性を増加させるものである。そのような分子は、上で定義されるような、改変されたか改変されていないアルキル基を含むことができる。そのような分子は、好ましくはC2〜C16、特にC6〜C14アルキル基を含む。対応する方法は、当業者に公知である。改変はいかなるときにも、例えば細胞破壊の直後、前駆体タンパク質の精製後、前駆体タンパク質の切断後、又はペプチドの精製後にも実行することができる。
【0138】
所望の純度を有するペプチド溶液は、直接に用いることができる。或いは、より長期の保存のために、異なる保存方法を適用することができる。保存方法の例は、冷却、冷凍、保存剤の添加である。或いは、ペプチドを乾燥させてもよい。乾燥方法の例は、凍結乾燥又は噴霧乾燥である。乾燥させたペプチドは、次に保存することができる。ペプチドを用いるためには、乾燥した物質を適する溶媒、好ましくは水溶液に溶解する。前記水溶液は、塩若しくは緩衝物質を含むか、又はさらなる添加を含まなくともよい。
【0139】
8.様々な他の一般用語の定義
特に明記しない限り、具体的に開示された配列に「由来する」か、それに「相同」である配列、例えば誘導されたアミノ酸又は核酸配列は、本発明によって、出発配列に対して少なくとも80%又は少なくとも90%、特に91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%及び99%同一である配列を意味する。
【0140】
実験の部
任意のペプチド配列(Pep)を生成する本発明に記載の方法の汎用的適用性は、異なる配列及びアミノ酸組成(ZnO、P18、Min)の三つのペプチドを生成することに基づいて証明される。
【0141】
特に明記しない限り、有機及び生化学分析、並びにタンパク質の組換え生成及び微生物培養の標準方法が用いられる。
【実施例1】
【0142】
ペプチドZnO(配列番号20)の生成
ペプチドZnOは、公開された配列に由来するペプチドであり、酸化亜鉛粒子の形成に影響する(UmetsuらAdv. Mat. 17: 2571-75 (2005))。制限エンドヌクレアーゼBamHI及びHindIIIを用いて、合成遺伝子、ZnO4(配列番号21)を、HummerichらBiochemistry 43; 13604-13612 (2004)に記載されるベクターpAZLにクローニングし、そこに記載されているプロトコルに従って二量体化し、ベクターpET21(Novagen)にクローニングした。配列は、その後前記ベクターに存在し、反復的前駆体タンパク質ZnO8(配列番号22)をコードする。前記反復的前駆体タンパク質は8個の反復配列を含み、それぞれはZnOペプチドのコピー及び補助配列を含む。前記補助配列はポリアラニン配列を含み、反復的前駆体タンパク質に自己組織化特性を付与する。酸を用いてZnOペプチドを前駆体タンパク質から選択的に切断することを可能にすることが意図されるアミノ酸Asp-Proは、補助配列とペプチド配列の間に位置する。発現は、大腸菌株BL21[DE3](Novagen)で実行された。
【0143】
培養及びタンパク質合成は、流加法によりpO2>20%及びpH=6.8で実行した。
【0144】
培地:
8リットル 水
25g クエン酸一水和物
40g グリセロール(99%)
125g リン酸二水素カリウム(KH2PO4)
62.5g 硫酸アンモニウム((NH4)2SO4)
18.8g 硫酸マグネシウム七水和物(MgSO4*7H2O)
1.3g 塩化カルシウム二水和物(CaCl2*2H2O)
155ml 極微量塩溶液
水を9.8リットルまで加える
25%力価のNaOHでpHを6.3に調節する
3ml Tego KS 911(泡止め剤; Goldschmidt Produkte)
1g アンピシリン
190mg 塩酸チアミン
20mg ビタミンB12
極微量塩溶液:
5リットル 水
200.00g クエン酸一水和物
55.00g ZnSO4*7H2O
42.50g (NH4)2Fe(SO4)2*6H2O
15.00g MnSO4*H2O
4.00g CuSO4*5H2O
1.25g CoSO4*7H2O
流加溶液:
1125g 水
41.3g クエン酸一水和物
81.6g 硫酸ナトリウム(Na2SO4)
6.3g (NH4)2Fe(SO4)2*6H2O
4734g グリセロール99.5%
基礎培地に存在するグリセロールが消耗された後、100ml/時間の一定の流加が開始された。
【0145】
細菌培養がOD600=60の光学濃度に到達した後、1mMのイソプロピルβ-D-チオガラクトピラノシドを加えることによってタンパク質合成を誘導した。この時点で、培養の温度は37℃から30℃に低下した。誘導の5時間後に細胞を収集した。
【0146】
ZnO8は、以下のプロトコルによって精製された:
・湿質量1グラムにつき5mlの20mM MOPS(3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸)pH7.0への細胞ペレットの再懸濁
・1400バールの高圧ホモジナイザでの細胞の破壊
・遠心分離、5000×gで30分間
・上清のインキュベーション、80℃で30分間
・遠心分離、5000×gで30分間
・4℃で一晩、1.8Mの硫酸アンモニウム(最終濃度)を加えることによる上清からのZnO8の沈殿
・8M尿素によるペレットの洗浄
・水によるペレットの2回の洗浄
・凍結乾燥
・凍結乾燥されたZnO8を、-20℃にした。
【0147】
1リットルの培地から、2.2gの純粋なZnO8が回収された。
【0148】
切断のために、凍結乾燥されたZnO8前駆体タンパク質の250mgを5mlの1%ギ酸に再懸濁し、90℃で6時間インキュベートした。このインキュベーションの間に凍結乾燥物が溶解し、ゲル様物質になった。室温まで冷却した後、18000×gでの沈降によってゲル様物質を溶解性成分から除いた。残留した溶液を、2MのNaOHで中和した。次に溶液を凍結乾燥させた。凍結乾燥物は、所望の切断生成物及びギ酸の中和からのギ酸ナトリウムを含んでいた。
【0149】
凍結乾燥生成物は、HPLCによって分析した:これのために、生成物を水で1mg/mlの濃度に溶解し、逆相クロマトグラフィーカラム(Jupiter Proteo4.6×250mm; Phenomenex)を用いて分析した。用いた溶離液はトリフルオロ酢酸の0.1%水溶液であり、それは、直線濃度勾配を用いてトリフルオロ酢酸の0.1%アセトニトロール(acetonitrole)溶液で置換された。検出は、206nmで実行した(図2)。さらなる分析のために、主ピークの分画を収集し、その中に存在する物質をさらに調査した。N末端配列決定は、この成分がZnOペプチドであることを確認した。質量分析(MALDI TOF)による試験は、2002の質量を確定し、それはZnOペプチドの理論的質量と同一である(図3)。HPLC分析は、UV活性成分に基づく62%の純度を明らかにした。
【実施例2】
【0150】
ペプチドP18(配列番号23)の生成
ペプチドP18は、ShinらJ. Peptide Res. 58:504-14 (2001)によって記載される、高度活性抗微生物性ペプチド配列に由来するペプチドである。制限エンドヌクレアーゼBamHI及びHindIIIを用いて、合成遺伝子、AHeAP182(配列番号24)を、HummerichらBiochemistry 43; 13604-13612 (2004)に記載されるベクターpAZLにクローニングし、そこに記載されているプロトコルに従って二量体化し、ベクターpET21(Novagen)にクローニングした。その後前記ベクターに存在する配列は、反復的前駆体タンパク質AHeAP184(配列番号25)をコードする。前記反復的前駆体タンパク質は4個の反復配列を含み、それぞれはP18ペプチドのコピー及び補助配列を含む。前記補助配列は二つのポリアラニン配列を含み、反復的前駆体タンパク質に自己組織化特性を付与する。さらに、補助配列は、負荷電したらせん保護配列を含む。酸によってP18ペプチドを前駆体タンパク質から選択的に切断することを可能にすることが意図されるアミノ酸Asp-Proは、補助配列とP18ペプチド配列の間に位置する。発現は、大腸菌株BL21[DE3](Novagen)で実行された。
【0151】
培養及びタンパク質合成は、流加法によりpO2>20%及びpH=6.8で実行した。培地、極微量塩溶液及び流加溶液は、実施例1に記載の組成を有していた。
【0152】
基礎培地に存在するグリセロールが消耗された後、100ml/時間の一定の流加が開始された。
【0153】
細菌培養がOD600=60の光学濃度に到達した後、1mMのイソプロピルβ-D-チオガラクトピラノシドを加えることによってタンパク質合成を誘導した。誘導の10時間後に、5000×gで30分間の沈降によって細胞を収集した。湿生物量は、1932gであった。
【0154】
湿生物量は、以下のプロトコルによって精製した:
・細胞ペレットの再懸濁:生物量1gごとに、6gの20mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.5)を加え、完全に混合した。
・1500バールの高圧ホモジナイザでの細胞の破壊
・pH=3±0.5までのリン酸の添加
・撹拌しながらの23℃で10分間のインキュベーション
・遠心分離:少なくとも5000×gで20分間
・ペレットの再懸濁:湿質量1gごとに、25mlの0.2MのNaOHを加え、ホモジナイズし、撹拌しながら23℃で4時間インキュベートする
・中和:85%力価のH3PO4で8.5±0.5のpHを調節する
・遠心分離:少なくとも5000×gで20分間
・2%力価のH3PO4によって、P18前駆体タンパク質を含む洗浄された含有体からなるペレットを加水分解又は切断した。
切断条件:
i.ペレット1gごとに、5mlのH3PO4を用いる
ii.ホモジナイズする
iii.振盪させながら90℃で16時間インキュベートする。
・切断反応混合液を冷却させる。
・遠心分離:少なくとも5000×gで20分間
・中和: 10MのNaOHで5.5±0.5のpHを調節する
・遠心分離:少なくとも5000×gで20分間
・10mS/cm未満の伝導度まで、上清を水で希釈する
・陽イオン交換クロマトグラフィー(Fractogel COO; Merck)を通して上清からP18を精製する; 450mMのNaClによる溶出
・ペプチド含有分画をプールし、伝導度が10mS/cm未満まで水で希釈する
・陽イオン交換クロマトグラフィー(Fractogel COO; Merck)を通してプール分画からP18を精製する; 50mM HClによる溶出
・溶出液を、2MのNaOHで中和した。
・中和した溶液を凍結乾燥した。
【0155】
凍結乾燥した生成物を、HPLCによって分析した:これのために、生成物を水で1mg/mlの濃度に溶解し、逆相クロマトグラフィーカラム(Jupiter Proteo4.6×250mm; Phenomenex)を用いて分析した。用いた溶離液はトリフルオロ酢酸の0.1%水溶液であり、それは、直線濃度勾配を用いてトリフルオロ酢酸の0.1%アセトニトロール(acetonitrole)溶液で置換された。検出は、280nmで実行した(図4)。さらなる分析のために、主ピークの分画を収集し、その中に存在する物質をさらに調査した。N末端配列決定は、この成分がP18ペプチドであることを確認した。
【0156】
質量分析(MALDI TOF)による試験は、ペプチドの2512の質量を確定し、それはP18ペプチドの理論的質量と同一である(図5)。HPLC分析は、UV活性成分に基づく85%の純度を明らかにした。30gの湿生物量から、52mgのP18ペプチドが得られた。したがって、発酵培養の各リットルから約330mgの純粋なP18ペプチドを回収することができる。
【0157】
P18ペプチドの活性を調査するために、600nmで測定して0.1の光学濃度を有していた、LB培地(5g/l酵母抽出物; 10g/lトリプトン、5g/l塩化ナトリウム)の大腸菌B培養を、P18ペプチドの異なる濃度で、振盪しながら37℃でインキュベートした。24時間後に光学濃度を測定することによって、細菌増殖を監視した。増殖の完全な阻害(24時間後の600nmでの光学濃度<0.15)は、31ppmからのペプチド濃度で達成された。C末端のカルボキシル基をアミド化することによって、抗微生物活性をさらに向上させることが可能であった。これのために、前記カルボキシル基を、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩及びN-ヒドロキシスルホスクシンイミドで活性化し、アンモニアの以降の添加によってアミド化した。
【実施例3】
【0158】
ペプチドMin(配列番号26)の生成
制限エンドヌクレアーゼBamHI及びHindIIIを用いて、合成遺伝子、AEMin4(配列番号27)を、HummerichらBiochemistry 43; 13604-13612 (2004)に記載されるベクターpAZLにクローニングし、そこに記載されているプロトコルに従って二量体化し、ベクターpET21(Novagen)にクローニングした。その後前記ベクターに存在する配列は、反復的前駆体タンパク質AEMin8(配列番号28)をコードする。前記反復的前駆体タンパク質は8個の反復配列を含み、それぞれはMinペプチドのコピー及び補助配列を含む。補助配列はポリアラニン配列を含み、反復的前駆体タンパク質に自己組織化特性を付与する。補助配列は、負荷電した保護配列をさらに含む。酸を用いてP18ペプチドを前駆体タンパク質から選択的に切断することを可能にすることが意図されるアミノ酸Asp-Proは、補助配列とペプチド配列の間に位置する。発現は、大腸菌株BL21[DE3](Novagen)で実行された。
【0159】
培養及びタンパク質合成は、流加法によりpO2>20%及びpH=6.8で実行した。培地、極微量塩溶液及び流加溶液は、実施例1に記載の組成を有していた。
【0160】
基礎培地に存在するグリセロールが消耗された後、100ml/時間の一定の流加が開始された。
【0161】
細菌培養がOD600=60の光学濃度に到達した後、1mMのイソプロピルβ-D-チオガラクトピラノシドを加えることによってタンパク質合成を誘導した。この時点で、培養の温度は37℃から30℃に低下した。誘導の5時間後に細胞を収集した。
【0162】
AEMin8は、以下のプロトコルによって精製した:
・湿質量1グラムにつき5mlの20mM MOPS(3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸)pH7.0への細胞ペレットの再懸濁
・1400バールの高圧ホモジナイザでの細胞の破壊
・遠心分離、5000×gで30分間
・上清のインキュベーション、80℃で20分間
・遠心分離、5000×gで30分間
・4℃で一晩、2Mの硫酸アンモニウム(最終濃度)を加えることによる上清からのAEMin8の沈殿
・8Mの尿素によるペレットの洗浄
・水によるペレットの2回の洗浄
・凍結乾燥
・凍結乾燥させたAEMin8を、-20℃にした。
【0163】
1リットルの培地から、0.4gの純粋なAEMin8が回収された。
【0164】
切断のために、凍結乾燥させたAEMin8前駆体タンパク質250mgを12.5mlの1%リン酸に再懸濁し、90℃で8時間インキュベートした。室温まで冷却した後、18000×gでの沈降によって不溶性物質を溶解性成分から除いた。残留した溶液を、2MのNaOHで中和した。次に、溶液を凍結乾燥させた。凍結乾燥物は、所望の切断生成物及びリン酸の中和からのリン酸水素ナトリウムを含んでいた。
【0165】
凍結乾燥生成物は、HPLCによって分析した:これのために、生成物を水で1mg/mlの濃度に溶解し、逆相クロマトグラフィーカラム(Jupiter Proteo4.6×250mm; Phenomenex)を用いて分析した。用いた溶離液はトリフルオロ酢酸の0.1%水溶液であり、それは、直線濃度勾配を用いてトリフルオロ酢酸の0.1%アセトニトロール(acetonitrole)溶液で置換された。検出は、206nmで実行した(図6)。さらなる分析のために、主ピークの分画を収集し、その中に存在する物質をさらに調査した。N末端配列決定は、この成分がMinペプチドであることを確認した。ペプチドの質量分析(MALDI TOF)による試験は、1900の質量を確定し、それはMinペプチドの理論的質量と同一である(図7)。HPLC分析は、UV活性成分に基づく68%の純度を明らかにした。
【実施例4】
【0166】
ペプチドP18(配列番号23)の生成の最適化
実施例2からのペプチドP18の収量を増加させるために、ペプチド収量に及ぼす異なるAux配列の影響を研究した。発現及び全収量は、実施例2によるpET21ベクターへのクローニングの後に配列番号75の前駆体タンパク質をコードする合成遺伝子AHe2AP182(配列番号74)を用いることによって、著しく増加した。発酵は、実施例2に記載される条件の下で実行した。
【0167】
湿生物量は、以下のプロトコルによって精製した:
・細胞ペレットの再懸濁:生物量1gごとに、6gの水を加え、完全に混合した。
・1500バールの高圧ホモジナイザでの細胞の破壊
・pH=3±0.5までのリン酸の添加
・撹拌しながらの23℃で10分間のインキュベーション
・遠心分離:少なくとも5000×gで20分間
・ペレットの再懸濁:
湿質量1gごとに、20mlの0.4MのNaOHを加え、ホモジナイズし、撹拌しながら23℃で1時間インキュベートする
・中和: 1Mのリン酸カリウム緩衝液pH6.0で、8.5±0.5のpHを調節する
・遠心分離:少なくとも5000×gで20分間
・2%力価のH3PO4によって、P18前駆体タンパク質を含む洗浄された含有体からなるペレットを加水分解又は切断した。
【0168】
切断条件:
i.ペレット1gごとに、7mlのH3PO4を用いる
ii.ホモジナイズする
iii.振盪させながら90℃で16時間インキュベートする
・切断反応混合液を冷却させる
・遠心分離:少なくとも5000×gで20分間
・25% NaOHで4.0±0.5のpHを調節する
・遠心分離:少なくとも5000×gで20分間
・30mS/cm未満の伝導度まで、上清を水で希釈する
・陽イオン交換クロマトグラフィー(SP-Sepharose High Performance; GE Healthcare)を通して上清からP18を精製する;洗浄緩衝液: 10mM酢酸ナトリウム緩衝液pH4+450mM NaCl;溶出緩衝液: 10mM酢酸ナトリウム緩衝液pH4+1100mM NaCl
・pH=10.5±0.3まで溶出液に25% NaOHを加えることによるペプチドの沈殿
・遠心分離:少なくとも5000×gで20分間
・湿質量1gにつき5mlの水でのペレットの再懸濁
・ペプチドの溶解: pH6.0までの酢酸の添加pH=10.5±0.5
・凍結乾燥
記載の方法で、1リットルの発酵培養から、約1gの純粋なP18ペプチドを得ることができる。
【実施例5】
【0169】
ペプチド配列番号6の生成
実施例1〜4に記載されるペプチドは、酸分解によって反復的前駆体タンパク質から誘導された。これは、アスパラギン酸とプロリンの間のペプチド結合の加水分解を含む。したがって、実施例1に示すように、ペプチド配列はN末端からプロリンで始まり、C末端でアスパラギン酸で終結する。特定の状況では、C末端のアスパラギン酸は、実施例2及び3に示すように同様に切断され、それによって、自由選択のC末端配列を有するペプチド配列の生成を可能にする。
【0170】
本発明の方法を、そのN末端はプロリンから開始せずにその最初のN末端アミノ酸を自由に選択することができるペプチドを生成するために用いることもできることを証明するために、配列番号6を有するペプチドを生成した。これのために、実施例4による合成遺伝子AHe2AP182-P-G(配列番号76)を用いて、配列番号77を有する前駆体タンパク質を生成した。この前駆体タンパク質は、P18ペプチドのN末端アミノ酸Pro-Gly及びC末端のGlyが欠失している点でだけ、実施例4の前駆体タンパク質、配列番号75と異なる。クローニング及び発酵は、実施例4に記載される条件下で実行した。
【0171】
湿生物量は、以下のプロトコルによって精製した:
・細胞ペレットの再懸濁:生物量1gごとに、6gの水を加え、完全に混合した。
・1500バールの高圧ホモジナイザでの細胞の破壊
・遠心分離:少なくとも5000×gで20分間
・5%力価のH3PO4によって、P18前駆体タンパク質を含む含有体からなるペレットを加水分解又は切断した。
切断条件:
i.ペレット1gごとに、5mlのH3PO4を用いる
ii.ホモジナイズする
iii.振盪させながら90℃で16時間インキュベートする
・切断反応混合液を冷却させる
・遠心分離:少なくとも5000×gで20分間
・25% NaOHで4.0±0.5のpHを調節する
・遠心分離:少なくとも5000×gで20分間
・30mS/cm未満の伝導度まで、上清を水で希釈する
・陽イオン交換クロマトグラフィー(SP-Sepharose High Performance; GE Healthcare)を通して、上清からペプチドを精製する;洗浄緩衝液: 10mM酢酸ナトリウム緩衝液pH4+450mM NaCl;溶出緩衝液: 10mM酢酸ナトリウム緩衝液pH4+1100mM NaCl
・pH=10.5±0.3まで溶出液に25% NaOHを加えることによるペプチドの沈殿
・遠心分離:少なくとも5000×gで20分間
・湿質量1gにつき5mlの水でのペレットの再懸濁
・pH=6.0±0.5まで酢酸を加えることによるペプチドの溶解
・凍結乾燥
凍結乾燥させた生成物は、HPLCによって分析した。これのために、生成物を水で1mg/mlの濃度に溶解し、逆相クロマトグラフィーカラム(Jupiter Proteo4.6×250mm; Phenomenex)を用いて分析した。用いた溶離液はトリフルオロ酢酸の0.1%水溶液であり、それは、直線濃度勾配を用いてトリフルオロ酢酸の0.1%アセトニトリル溶液で置換された。検出は、280nmで実行した(図8)。さらなる分析のために、主ピークの分画を収集し、その中に存在する物質をさらに調査した。質量分析(MALDI-TOF)を用いる試験は、ペプチドの2300.6の質量を明らかにし、それは配列番号6のペプチドの理論的質量と同一である(図9)。
【実施例6】
【0172】
凍結乾燥させたペプチドP18(配列番号23)のアミド化
場合により、C末端が遊離のカルボキシル基であるよりはアミド化される方が、ペプチドの活性に有利であることがある。これを証明するために、実施例4の凍結乾燥P18ペプチドを、下記のプロトコルによってアミド化した:
・10mg/ml P18ペプチド
・30% EtOH
・10mMの2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸pH5.0
・3Mの塩化アンモニウム
・2.5mM N-ヒドロキシスクシンイミド
・50mM 1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド
・室温で2時間のインキュベーション
・NaOHによる中和pH7.0
アミド化された試料は、Luna SCX 5μ100Aクロマトグラフィーカラム(Phenomenex、Torrance、CA、USA)を用いてHPLCによって分析した:用いた溶離液は、25%アセトニトリルによる20mM KH2PO4 pH2.5であり、それは、直線濃度勾配を用いて20mM KH2PO4 pH2.5;25%アセトニトリル及び1M KClで置換された。検出は、280nmで実行した(図10)。図10は、「P18」ペプチドの配列と、化学合成及びアミド化参照ペプチドのクロマトグラムを、比較のために示す(Bachem AG、Bubendorf、Switzerlandの注文により生成された)。
【0173】
ペプチドは、実施例4に記載の通りに、陽イオン交換クロマトグラフィーによってさらに精製した。
【実施例7】
【0174】
統合アミド化によるペプチドP18(配列番号23)の生成
アミド化P18ペプチドの生成の費用効率を向上させるために、実施例6に記載のようにアミド化をペプチド精製の後に実行するのではなく、作業手順に組み込んだ。これのために、前駆体タンパク質、配列番号75を実施例4による発酵によって得、酸分解によってペプチドを前駆体タンパク質から放出させた。
【0175】
その後、以下の段階を実行した:
・切断反応混合液を冷却させる
・遠心分離:少なくとも5000×gで20分間
・25% NaOHで10.5±0.5のpHを調節する
・遠心分離:少なくとも5000×gで20分間
・湿質量1gにつき3mlのエタノールでのペレットの溶解
・遠心;上清中のペプチドの測定(希釈する)
・以下の成分の混合:
a.エタノール中の12.5mlの溶解ペプチド
b. 4.2mlの水
c. 400μlの500mM 2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸の添加
d. HClによるpH5.0への調整
e. 2.14gの塩化アンモニウムの添加
f. 200μlの500mM N-ヒドロキシスクシンイミド
g. 1mlの1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド
・室温で2時間のインキュベーション
・30mS/cm未満の伝導度まで、混合物を水で希釈する
・陽イオン交換クロマトグラフィー(SP-Sepharose High Performance; GE Healthcare)を通して、改変P18ペプチドを精製する;洗浄緩衝液: 10mM酢酸ナトリウム緩衝液pH4+450mM NaCl;溶出緩衝液: 10mM酢酸ナトリウム緩衝液pH4+1100mM NaCl
・pH=10.5±0.3まで溶出液に25% NaOHを加えることによるペプチドの沈殿
・遠心分離:少なくとも5000×gで20分間
・湿質量1gにつき5mlの水でのペレットの再懸濁
・ペプチドの溶解: pH6.0±0.5までの酢酸の添加
・凍結乾燥
アミド化された試料は、Luna SCX 5μ100Aクロマトグラフィーカラム(Phenomenex、Torrance、CA、USA)を用いてHPLCによって分析した。用いた溶離液は、25%アセトニトリルによる20mM KH2PO4 pH2.5であり、それは、直線濃度勾配を用いて20mM KH2PO4 pH2.5;25%アセトニトリル及び1M KClで置換された。検出は、280nmで実行した(図11)。図11は、「P18」ペプチドの配列と化学合成及びアミド化参照ペプチドのクロマトグラムを、比較のために示す(Bachem AG、Bubendorf、Switzerlandの注文により生成された)。
【0176】
本発明による配列の概要





SA=自己組織化配列
SU=保護的ペプチド
Pep=生成すべきペプチド
【0177】
上記の具体的なPepアミノ酸配列に加えて、記載される配列は、特異的切断配列(例えば酸分解のためには残基「DP」の間、又はヒドロキシルアミン切断のためには残基「NG」の間)の付加により、又はそのような切断から生じる残りのアミノ酸残基により、C末端及び/又はN末端に変更を加えることができる。任意選択で、例えばG残基などのスペーサー残基を、切断配列とPep配列の間にさらに挿入することもできる。本発明によって生成されるPep配列の酸分解又はヒドロキシルアミン切断から生じる可能性のある、上記のPep配列への以下の変更について特に指摘しておくべきである:
N末端: PG、P又はG残基の付加;
C末端: GD、GN、G、N又はD残基の付加
そのような変更は、上記のPep配列のいずれにも、特に配列番号6〜15、29〜67及び72のものに特に適用される。
【0178】
本明細書で引用される文献の開示が、明示的に参照される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式
(Pep-Aux)x、又は
(Aux-Pep)x
の所望のペプチド(Pep)エレメント及び補助ペプチド(Aux)エレメントの切断可能な反復的配列を含む前駆体タンパク質であって、式中、x>1であり、
Auxエレメントは同一であるか異なり、前記前駆体タンパク質に自己組織化特性を付与するアミノ酸配列エレメントを含み;
Pepエレメントは同一であるか異なり、同一であるか異なるペプチド分子のアミノ酸配列を含む前駆体タンパク質。
【請求項2】
エレメントPep及びAuxが互いにペプチド結合し、ペプチド結合は化学的に又は酵素で特異的に切断可能である、請求項1に記載の前駆体タンパク質。
【請求項3】
0.2MのNaOHによって1時間以内に、又は2Mの尿素若しくは1Mの塩酸グアニジンによって10分以内に室温で溶解されることがない安定した結合体を形成する、請求項1又は2に記載の前駆体タンパク質。
【請求項4】
少なくとも一つのAuxエレメントが少なくとも8個のアミノ酸の少なくとも一つの配列を含む自己組織化ペプチド(SA)エレメントを含み、前記配列は少なくとも50%のアラニン残基、少なくとも50%のバリン残基、又は少なくとも50%のグルタミン残基を含み、或いはその少なくとも80%はこれらの残基の少なくとも一つからなる、請求項1〜3のいずれかに記載の前駆体タンパク質。
【請求項5】
SAエレメントが以下の配列モチーフ:
An (モチーフ1)
(GA)m (モチーフ2)
Vn (モチーフ3)
(VA)m (モチーフ4)
(VVAA)o (モチーフ5)
の少なくとも一つを含み、式中、Aはアラニン、Gはグリシン、Vはバリン、nは2から12の整数、mは2から10の整数、oは1から6の整数である、請求項4に記載の前駆体タンパク質。
【請求項6】
SAエレメントが、アミノ酸配列の配列番号1から配列番号5及び配列番号73から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項4又は5に記載の前駆体タンパク質。
【請求項7】
少なくとも一つのAuxペプチドが保護ペプチド(SU)エレメントをさらに含む、請求項1〜6のいずれかに記載の前駆体タンパク質。
【請求項8】
SUエレメントが増加した割合の負荷電したアミノ酸残基を有する、請求項7に記載の前駆体タンパク質。
【請求項9】
前駆体タンパク質中のSUエレメントが両親媒性らせん構造を形成することができる、請求項8に記載の前駆体タンパク質。
【請求項10】
SUエレメントが、両親媒性αらせんを形成することができる少なくとも7個のペプチド結合したアミノ酸の配列セグメントを含む両親媒性ペプチドであり、その垂直投影中の前記らせんのアミノ酸残基がらせんの疎水性の半分及び親水性の半分に分かれており、らせんの疎水性の半分は(垂直投影に)少なくとも3個の隣接した同一であるか異なる疎水性のアミノ酸残基を有し、らせんの親水性の半分は(垂直投影に)少なくとも3個の隣接した同一であるか異なる親水性のアミノ酸残基を有する、請求項9に記載の前駆体タンパク質。
【請求項11】
SUエレメントの荷電したアミノ酸残基の割合が、pH=7の前駆体タンパク質の全実効電荷が-10を超え、+10未満であるように選択される、請求項8、9又は10に記載の前駆体タンパク質。
【請求項12】
SUエレメントが、アミノ酸配列の配列番号16から配列番号19、及び配列番号68から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項8〜11のいずれかに記載の前駆体タンパク質。
【請求項13】
Pepエレメントが、陽イオン性の抗微生物性ペプチド配列を含む、請求項1〜12のいずれかに記載の前駆体タンパク質。
【請求項14】
Pepエレメントが、陽イオン性アミノ酸配列の配列番号6から配列番号15、配列番号23、配列番号26及び配列番号69から配列番号72から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項13に記載の前駆体タンパク質。
【請求項15】
Pepエレメントが、アミノ酸配列の配列番号20又は配列番号29から67から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1〜6のいずれかに記載の前駆体タンパク質。
【請求項16】
Auxエレメントが互いに独立に以下の意味:
SA、
SA-SU、
SU-SA、
SA-SU-SA、
SU-SA-SU、
のいずれかを有し、式中、エレメントSA及びSUは互いにペプチド結合し、Auxエレメントは少なくとも一つのPepエレメントに末端でペプチド結合し、Pepエレメントへのこのペプチド結合は化学的に又は酵素で特異的に切断可能である、請求項1〜15のいずれかに記載の前駆体タンパク質。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれかに記載の少なくとも一つの前駆体タンパク質をコードする核酸配列。
【請求項18】
配列番号21、24、27、74及び76の配列の少なくとも一つのコード配列を含む、請求項17に記載の核酸配列。
【請求項19】
少なくとも一つの調節核酸配列に作動可能に連結している、請求項17又は18に記載の少なくとも一つの核酸配列を含む発現カセット。
【請求項20】
請求項17及び18のいずれかに記載の核酸配列又は請求項19に記載の発現カセットを含む、真核生物又は原核生物の宿主を形質転換するための組換えベクター。
【請求項21】
所望のペプチド(Pep)を生成する方法であって、
a)請求項1〜16のいずれかに記載の前駆体タンパク質を生成する段階と、
b)前駆体タンパク質からPepペプチドを切り離す段階とを含む方法。
【請求項22】
前駆体タンパク質が請求項19に記載の少なくとも一つのベクターを有する組換え微生物で生成される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前駆体タンパク質が組換え大腸菌株で生成される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
発現される前駆体タンパク質が、任意選択で安定した結合形に変換された後に精製され、化学的に又は酵素で切断されて所望のペプチド(Pep)を放出する、請求項21〜23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
一般式
(Pep-Aux')x、又は
(Aux'-Pep)x
の所望のペプチド(Pep)エレメント及び補助ペプチド(Aux')エレメントの切断可能な配列を含む前駆体タンパク質であって、式中、x>1であり、
Aux'エレメントは同一であるか異なり、両親媒性αらせん形成性ペプチドを含み、前記両親媒性ペプチドは、両親媒性αらせんを形成することができる少なくとも7個のペプチド結合したアミノ酸の配列セグメントを含み、その垂直投影中の前記らせんのアミノ酸残基がらせんの疎水性の半分及び親水性の半分に分かれており、らせんの疎水性の半分は(垂直投影に)少なくとも3個の隣接した同一であるか異なる疎水性のアミノ酸残基を有し、らせんの親水性の半分は(垂直投影に)少なくとも3個の隣接した同一であるか異なる親水性のアミノ酸残基を有し、
Pepエレメントは同一であるか異なり、同一であるか異なるペプチド分子のアミノ酸配列を含む前駆体タンパク質。
【請求項26】
Aux'エレメントが請求項4〜6のいずれかに記載の少なくとも一つの自己組織化ペプチド(SA)エレメントを含む、請求項25に記載の前駆体タンパク質。
【請求項27】
所望のペプチド(Pep)が陽イオン性抗微生物性ペプチドであり、Aux'エレメントが陰イオン性ペプチドであり、両親媒性αらせんを形成する、請求項25又は26に記載の前駆体タンパク質。
【請求項28】
両親媒性ペプチドの、該両親媒性ペプチドと異なる抗微生物性の所望のペプチドを組換えで生成するための保護ペプチドとしての使用であって、前記両親媒性ペプチドは、両親媒性αらせんを形成することができる少なくとも7個のペプチド結合したアミノ酸の配列断片を含み、その垂直投影中の前記らせんのアミノ酸残基がらせんの疎水性の半分及び親水性の半分に分かれており、らせんの疎水性の半分は(垂直投影に)少なくとも3個の隣接した同一であるか異なる疎水性のアミノ酸残基を有し、らせんの親水性の半分は(垂直投影に)少なくとも3個の隣接した同一であるか異なる親水性のアミノ酸残基を有する使用。
【請求項29】
所望のペプチド(Pep)が陽イオン性抗微生物性ペプチドであり、Aux'エレメントが陰イオン性ペプチドであり、両親媒性αらせんを形成する、請求項28に記載の使用。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公表番号】特表2012−528579(P2012−528579A)
【公表日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−513614(P2012−513614)
【出願日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【国際出願番号】PCT/EP2010/057726
【国際公開番号】WO2010/139736
【国際公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】