説明

ペレット冷却装置

【課題】 樹脂ペレットを効率よく冷却できる空冷式のペレット冷却装置を提供する。
【解決手段】 一端に樹脂ペレットが供給され、振動させられることによって樹脂ペレットを一端から他端へ移送するとともに、この移送方向と交差する方向に延びる貫通溝が移送方向に並んで複数形成されたペレット移送用のスクリーン2と、樹脂ペレットを移送方向に移送させるようにスクリーン2を振動させる振動装置10と、樹脂ペレットを冷却するための空気を、スクリーン2の貫通溝に下から上に向けて流すための気流発生手段とを備えている。気流発生手段は、筐体である装置本体20と、装置本体20の下部に設けられた給気口1と、装置本体20の上部に設けられた排気口24と、給気口1から空気を送り込むための給気用ファン12と、排気口24から空気を吸引して外部へ排出するための排気用ファン25とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂ペレットを冷却するペレット冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最近では、製品の軽量化を目的とし、また成形による量産が容易である点等から、金属にかわるスーパーエンジニアプラスチックと呼ばれる高耐熱性樹脂の需要が増えている。
【0003】
このような高耐熱性樹脂の成形加工原料となる樹脂ペレットを生成する場合、例えば、樹脂材料と添加剤とを押出機で混錬して溶融し、押出機の先端に取り付けた多孔ダイから溶融樹脂をひも状の樹脂(以下、「ストランド」という)に成形して押し出し、このストランドを冷却しながらストランド切断装置へ搬送する。このストランド切断装置でストランドを連続的に切断して樹脂ペレットを生成する。この生成された樹脂ペレットは、例えば、ペレット冷却装置で冷却された後、選別装置へ供給され、選別装置で大きさが所定範囲内の樹脂ペレットが取り出され、この取り出された樹脂ペレットは、例えば空気輸送によってホッパ等からなる貯留装置へ送られ、貯留装置から随時排出されて袋に詰められる。
【0004】
ここで、従来のペレット冷却装置として、空冷式の装置がある(例えば特許文献1参照)。この空冷式のペレット冷却装置では、多数の孔があけられた板(多孔板)の一端に、ストランド切断装置で切断された樹脂ペレットが供給され、多孔板を振動させることによって樹脂ペレットが多孔板の他端へ移送されて排出される。そして、多孔板の下方から送風機で送風することによって、多孔板に設けられた多数の孔から上昇する空気によって多孔板上を移送される樹脂ペレットが冷却されるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−047735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来のペレット冷却装置では、多孔板として、例えば、図3(c)のような円形の孔(貫通穴3h)が多数設けられたものが用いられるが、このような多孔板では、樹脂ペレットが孔の部分を避けて移動することにより、孔から上昇する空気に樹脂ペレットが充分さらされず、効率よく冷却することができないという問題がある。このような従来のペレット冷却装置は、例えばポリ塩化ビニルのように融点が低く、ストランドを切断して生成される樹脂ペレットが100℃程度であり、それを50℃前後(40〜60℃程度)に冷却する場合に用いられている。
【0007】
一方、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)及び液晶ポリマー等のスーパーエンジニアプラスチックと呼ばれる高耐熱性樹脂の場合、融点が非常に高いため、押出機から押し出されたときのストランドは例えば350℃というように非常に高温であり、その後冷却された後、150℃〜180℃程度の高温の状態で切断されて樹脂ペレットが生成される。ここで、ストランドを急冷凝固させて低い温度で切断すると、ストランドが切断されないで粉砕される割合が大きくなるとともに、ストランド切断装置の切断刃の損耗も大きくなる。すなわち、前述のように、150℃〜180℃程度の高温の状態でストランドを切断することにより、ストランドが粉砕される割合が小さくなり、切断刃の損耗も少なくてすむので好ましい。また、ガラス繊維等を混入した繊維強化プラスチックの場合には、ストランドを低温にしてから切断すると、繊維によって切断刃の損耗がより著しくなる。また、ポリスチレン(PS)、アクリル樹脂(PMMA)及びポリカーボネイト(PC)などの樹脂は、低温にしてからストランドを切断すると切粉量が多くなりやすいため、高温の状態で切断する方が好ましい。
【0008】
以上のように、例えば150℃〜180℃程度の高温の状態でストランドを切断する場合、上記従来のペレット冷却装置では、効率的な冷却ができないため、50℃前後に冷却することができず、ペレット冷却装置による冷却工程の後工程において次のような問題が生じる。
【0009】
冷却装置を通過した後の樹脂ペレットの温度が高いと、樹脂ペレットのような高分子材料は温度が高いほど摩擦帯電によって静電気を帯びやすくなり、帯電によって付着している切粉が選別装置を通過しても除去されにくいという問題がある。近年、品質の点から切粉の付着量の少ない樹脂ペレットが要求されている。
【0010】
また、樹脂ペレットが温度の高い状態で袋に詰められると、袋の内面を被覆している被覆材(例えばポリプロピレンフィルム)が融けて樹脂ペレットが袋に付着するという問題も生じる。
【0011】
また、樹脂ペレットの温度が高いと、後工程において例えば金属検出機を通過させる工程がある場合には、金属検出機が誤動作するという問題も生じる。
【0012】
なお、ペレット冷却装置には、従来、水冷式のものも使用されているが、水冷式の場合、樹脂ペレットの付着水分を除去するための遠心脱水機のような脱水装置が必要になるだけでなく、排水処理設備も必要になる。また、繊維強化プラスチックの樹脂ペレットの場合、繊維によって脱水装置の損耗が著しくなる。このような点からも空冷式で、かつ効率よく冷却することができるペレット冷却装置が望まれている。
【0013】
本発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、例えば150℃〜180℃程度の高温の状態のストランドを切断して生成される樹脂ペレットを冷却するために有用な装置であって、樹脂ペレットを効率よく冷却することができる空冷式のペレット冷却装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明のペレット冷却装置は、一端に樹脂ペレットが供給され、振動させられることによって前記樹脂ペレットを前記一端から他端へ移送するとともに、この移送する方向である移送方向と交差する方向に延びる貫通溝が前記移送方向に並んで複数形成されたペレット移送板と、前記樹脂ペレットを前記移送方向に移送させるように前記ペレット移送板を振動させる振動装置と、前記樹脂ペレットを冷却するための空気を、前記ペレット移送板の貫通溝に下から上に向けて流すための気流発生手段とを備えている。
【0015】
この構成によれば、樹脂ペレットを移送するペレット移送板に移送方向と交差する方向に延びた貫通溝を設け、この貫通溝に下から上に向けて空気を流すことによってペレット移送板上にエアーカーテン状の上昇気流(冷却風)が形成される。このエアーカーテン状の冷却風を横切って樹脂ペレットが移送されるため、樹脂ペレットを効率よく冷却することができる。そのため、例えば150℃〜180℃程度の高温の状態のストランドを切断して生成される樹脂ペレットを50℃前後に冷却することが可能になる。したがって、樹脂ペレットを効率よく冷却できない場合の後工程における種々の問題を解消することが可能になる。
【0016】
また、前記気流発生手段は、前記ペレット移送板を内部に保持し、一端に前記ペレット移送板上に樹脂ペレットが供給されるためのペレット供給口を有するとともに他端に前記ペレット移送板の他端へ移送された樹脂ペレットを排出するためのペレット排出口とを有する筐体と、前記筐体の下部に設けられた開口部からなる給気口と、前記筐体の上部に設けられた開口部からなる排気口と、前記給気口に接続され、前記給気口から前記筐体内へ空気を送り込むための給気用送風機と、前記排気口から前記筐体内の空気を吸引して外部へ排出するための排気用送風機とを有していてもよい。
【0017】
このように、筐体内へ空気を送り込む給気用送風機と筐体内の空気を吸引して外部へ排出する排気用送風機とを設けることにより、ペレット移送板の貫通溝に下から上に向けて流れる安定した空気の流れを形成することが容易になる。
【0018】
また、前記筐体の内部で、前記ペレット移送板の下方にかつ前記給気口の上方に前記ペレット移送板と対向して配設され、複数の貫通穴を有する気流分散板をさらに備えていることが好ましい。
【0019】
この構成によれば、給気用送風機によって筐体内へ送り込まれた空気は気流分散板の複数の貫通穴を通ることにより分散されてペレット移送板へ到達することにより、ペレット移送板の全面に対してほぼ均等に空気を送ることが容易になる。
【0020】
また、前記給気口と前記排気口とのうちの少なくとも一方が複数設けられ、かつ前記給気口と前記排気口とが前記移送方向にずれて配置されていることが好ましい。
【0021】
この構成により、ペレット移送板の全面に対してほぼ均等に空気を送ることが容易になる。
【0022】
また、前記ペレット移送板の複数の前記貫通溝は、前記ペレット移送板の全長に亘って前記移送方向に所定間隔をおいて並んで形成されていることが好ましい。
【0023】
この構成により、樹脂ペレットがペレット移送板上を移送されている期間中、冷却風によって樹脂ペレットを効率よく冷却することができる。
【0024】
また、前記ペレット移送板の各々の前記貫通溝は、前記移送方向と直交する方向に延びて、前記樹脂ペレットが移送される経路の実質全幅に亘って形成されていることが好ましい。
【0025】
この構成により、ペレット移送板上を移送される全ての樹脂ペレットを、確実に冷却風にさらすことができる。
【0026】
また、前記ペレット移送板は、前記移送方向に隣接する前記貫通溝と前記貫通溝との間の断面が楔形状であってもよい。
【0027】
この構成により、ペレット移送板の下方の風速に対して貫通溝を通過する風速を速くすることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明は、以上に説明した構成を有し、樹脂ペレットを効率よく冷却することができる空冷式のペレット冷却装置を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態のペレット冷却装置を用いたペレット製造システムの一例の概略構成を示すブロック図である。
【図2】(a)は、本発明の実施形態のペレット冷却装置を上方から見た概略平面図であり、(b)は同ペレット冷却装置の概略側面図であり、(c)は同ペレット冷却装置の概略前面図である。
【図3】(a)は、本発明の実施形態のペレット冷却装置の上部スクリーンの一例を示す平面図であり、(b)は、同上部スクリーンの断面図であり、(c)は、同ペレット冷却装置の下部スクリーンの一例を示す平面図であり、(d)は、同ペレット冷却装置の上部スクリーンの他の例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下では全ての図面を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。また、本発明は、以下の実施形態に限定されない。
【0031】
(実施形態)
図1は、本発明の実施形態のペレット冷却装置を用いたペレット製造システムの一例の概略構成を示すブロック図である。
【0032】
このペレット製造システムにおいて、押出機31は、供給される樹脂材料と添加剤とを混錬して溶融し、先端の多孔ダイからストランド(ひも状樹脂)に成形して押し出す。
【0033】
ストランド冷却装置32は、例えば、金網等のネットベルトを用いたベルトコンベアと、このベルトコンベア上に冷却水を散布する散水装置とを有し、押出機31から押し出されるストランドをベルトコンベアに載せてストランド切断装置33へ搬送する。そしてこのとき、散水装置によってベルトコンベア上のストランドに冷却水を散布し、ストランド表面を固化状態にする。
【0034】
ストランド切断装置33は、例えば、ストランド冷却装置32のベルトコンベアによって送られてくるストランドを、上下の2本のロールからなる引取りロールで引き取って固定刃上に送り込んで、高速回転する回転刃によってストランドを所定長さに連続切断し、円柱状の樹脂ペレットを生成する。この生成される樹脂ペレットは次々にペレット冷却装置34へ供給される。
【0035】
ペレット冷却装置34は、ストランド切断装置33から供給される樹脂ペレットを冷却する本実施形態のペレット冷却装置であり、その構成の詳細については後述する。ペレット冷却装置34で冷却された樹脂ペレットは選別装置35に供給される。
【0036】
選別装置35は、例えば、粗い目の上層の篩と細かい目の下層の篩とからなる上下2層の篩と、これらの篩を振動させる振動装置とを有し、2層の篩を振動させて大きさが所定範囲内の樹脂ペレットを取り出す振動ふるい機である。この場合、上層の篩の上には大きさが大きすぎる所定範囲外の樹脂ペレットが残って移送されて排出され、それ以外のものが下層の篩上に落ちる。この下層の篩では大きさが小さすぎる所定範囲外の粒体及び粉体(切粉)が落下し、下層の篩の上には大きさが所定範囲内の樹脂ペレットが残って移送されて排出される。
【0037】
そして、選別装置35の下層の篩上を移送されて排出される大きさが所定範囲内の樹脂ペレットは、例えば空気輸送によってホッパ等からなる貯留装置36へ送られ、貯留装置36から随時排出されて袋に詰められる。
【0038】
次に図2を参照して本実施形態のペレット冷却装置34の構成を説明する。図2(a)は、本発明の実施形態のペレット冷却装置を上方から見た概略平面図であり、図2(b)は同ペレット冷却装置の概略側面図であり、図2(c)は同ペレット冷却装置の概略前面図である。なお、以下では、便宜上、ペレット冷却装置の前後左右を、図2(a)に示すものとして説明する。
【0039】
本実施形態のペレット冷却装置34は、基台2の上に、前後左右の4つの弾性部材6によって箱状の装置本体(筐体)20が弾性的に支持されている。弾性部材6は例えばばねである。
【0040】
装置本体20は、その後部(一端)の上部が開口されてペレット供給口21が設けられ、前部(他端)にペレット排出口22が設けられている。また、装置本体20の内部には、ペレット移送板である上部スクリーン2と気流分散板である下部スクリーン3とが、上下に所定間隔をあけて、それぞれ水平にあるいは略水平に固定されている。
【0041】
装置本体20の底板部20aは、漏斗状に形成され、略中央に開口部からなる給気口1が設けられている。この給気口1には、伸縮可能な可撓管11を介して給気用ファン12の吹出し口12aが接続され、給気用ファン12によって装置本体20内へ空気が送りこまれる。給気用ファン12は基台2上に配設され、吸気フィルタ13を備えている。上部及び下部スクリーン2、3は底板部20aの上部に取り付けられている。
【0042】
また、装置本体20には、その左右の側面の内側に固定されて垂下する垂直板4,4が設けられ、各垂直板4,4の前後の2箇所に水平取付板5が設けられている。全部で4つの水平取付板5のそれぞれが、基台2に立設された支脚8に、渡し板7及び弾性部材6を介して支持されている。これにより、装置本体20が基台2上に弾性支持されている。なお、右側の2本の支脚8はその上端が渡し板7によって接続され、同様に左側の2本の支脚8もその上端が渡し板7によって接続されている。
【0043】
2つの垂直板4,4の間に跨って棒状部材等からなる振動装置取付け部14が配設され、この取付け部14に装置本体20を振動させる振動装置10が取り付けられている。振動装置10には、ここでは振動モータを用いているが、電磁式のものを用いてもよい。本実施形態では、装置本体20を振動させることにより、装置本体20に固定された上部スクリーン2が振動し、ペレット供給口21から供給された上部スクリーン2上の樹脂ペレットが前方(ペレット排出口22の方向)へ移送される。
【0044】
装置本体20の上面部分には、逆漏斗状(山形)の2つの屋根部23が設けられ、各屋根部23の上端に開口部からなる排気口24が設けられている。各排気口24は図示しない配管を介して排気用ファン25に接続され、排気用ファン25によって装置本体20内の空気が吸引されて外部へ排出される。
【0045】
給気用ファン12は装置本体20内へ空気を送り込むための給気用送風機であり、排気用ファン25は装置本体20内の空気を吸引して装置外部へ排出するための排気用送風機である。
【0046】
図3(a)は、上部スクリーン2の一例を示す平面図であり、図3(b)は、同上部スクリーン2の断面図であり、図3(c)は、下部スクリーン3の一例を示す平面図である。
【0047】
図3(a)、(b)に示すように、上部スクリーン2には、複数のスリット(貫通溝)2sが上部スクリーン2の全長に亘ってペレット移送方向Spに所定間隔L2をおいて並んで設けられている。ここでは、スリット2sは、その長手方向がペレット移送方向Spと直交し、実質的に樹脂ペレットの移送経路の全幅に渡るように設けられ、隣合うスリット2s、2s間の断面が楔形状(三角形)になっている。このような上部スクリーン2としてウェッジワイヤースクリーンを用いてもよい。なお、スリット2sの幅(貫通溝の溝幅)L1は、樹脂ペレットより小さい所定の寸法であり、樹脂ペレットがスリット2sを通過できない寸法(スリット2sから落下しない寸法)である。一例を挙げれば、直径3mm、高さ3mmの円柱状の樹脂ペレットに対し、スリット2sの幅L1は0.5mmであり、スリット2sの幅L1は樹脂ペレットの直径及び高さのいずれの寸法よりも小さい。
【0048】
また、下部スクリーン3には、図3(c)に示すように、例えば金属板の全面に複数の丸い貫通穴3hが千鳥状に開けられた多孔金属板を用いている。なお、複数の貫通穴3hの配置形状は千鳥状に限られるものではない。
【0049】
以上のように構成されたペレット冷却装置の動作について説明する。
【0050】
このペレット冷却装置の稼動中は、振動装置10と給気用ファン12及び排気用ファン25とを常時駆動する。振動装置10によって装置本体20が振動することによって上部スクリーン2も振動する。すなわち、ペレット供給口21から供給された樹脂ペレットは、上部スクリーン2上に載せられ、上部スクリーン2の振動によってペレット排出口22の方向へ移送される。ここで、上部スクリーン2が固定された装置本体20は前方斜め上方位置と後方斜め下方位置との間を往復するように振動する。
【0051】
また、給気用ファン12によって外気を装置本体20内へ送り込み、排気用ファン25によって装置本体20内の空気を外部へ排出する。給気用ファン12によって装置本体20内へ送り込まれた空気は下部スクリーン3の貫通穴3hを通過した後、さらに上部スクリーン2のスリット2sを通過して排気用ファン25によって外部へ排出される。
【0052】
ここで、給気用ファン12によって装置本体20内へ送り込まれた空気は下部スクリーン3によって分散されて上部スクリーン2へ到達するので、上部スクリーン2の全面へほぼ均等に空気を送ることが可能になる。
【0053】
上部スクリーン2には、多数のスリット2sがペレット移送方向Spと直交し、かつ実質的に移送経路の全幅に亘って設けられているので、移送される樹脂ペレットがスリット2s上を必ず通過し、その際に、スリット2sから上昇する空気に必ずさらされるので、樹脂ペレットを効率よく冷却することができる。
【0054】
この冷却効果を検証するための実験を行った。この実験では、上部スクリーン2には、上部スクリーン2の幅が400m、長さ1500mmで、スリット2sの幅L1が0.5mmで、隣り合うスリット2sとスリット2sとの間隔L2が1.5mmのものを用いた。
【0055】
また、下部スクリーン3には、その幅及び長さは上部スクリーン2と同様で、貫通穴3hの直径が2.5mm、スクリーンの幅方向に隣接する貫通穴3hのピッチL3が4.5mm、スクリーンの長さ方向に隣接する貫通穴3hの列のピッチL4が3.9mmのものを用いた。
【0056】
そして、給気用ファン12及び排気用ファン25をインバータ制御することにより風量を調整して、上部スクリーン2のスリット2sを通過する風速が1.5〜2.0m/秒となるようにした。このスリット2sを通過する風速は、樹脂ペレットが飛び散らず、かつ冷却効果が高くなるような風速(例えば上記のような風速)とするのが好ましい。
【0057】
この実験では、直径3mm、高さ3mmの円柱状の樹脂ペレットを予め用意し、この樹脂ペレットを150℃以上に昇温させ、定量供給装置を用いてペレット供給口21へ供給した。ここで用いた樹脂ペレットは、PPS(ポリフェニレンサルファイド樹脂)にガラス繊維を混入した繊維強化プラスチックから生成されたものである。
【0058】
定量供給装置によるペレット供給口21への樹脂ペレット供給量が毎時510kgで、ペレット供給口21へ供給される樹脂ペレットの温度が153℃の場合、ペレット排出口22から排出される樹脂ペレットの温度は53℃になった。この場合、給気口1での冷却風温度は25.5℃であった。このときの外気温度24.4℃、湿度56.6%であった。
【0059】
また、定量供給装置によるペレット供給口21への樹脂ペレット供給量が毎時720kgで、ペレット供給口21へ供給される樹脂ペレットの温度が150℃の場合、ペレット排出口22から排出される樹脂ペレットの温度は60℃になった。給気口1での冷却風温度は25℃であった。このときの外気温度24.4℃、湿度56.6%であった。
【0060】
また、実験日を変えたときの実験結果の一例では、定量供給装置によるペレット供給口21への樹脂ペレット供給量が毎時480kgで、ペレット供給口21へ供給される樹脂ペレットの温度が150℃の場合、ペレット排出口22から排出される樹脂ペレットの温度は41℃になった。このときの外気温度16.5℃、湿度50.4%であった。
【0061】
以上の実験結果によれば、150℃程度の樹脂ペレットを50℃前後に冷却することができた。また、毎時の樹脂ペレット供給量が少ないほど、より低い温度に冷却することが可能になり、外気温度が低いほど、より低い温度に冷却することが可能になる。
【0062】
本実施形態では、樹脂ペレットを移送する上部スクリーン2に、空気の通路として、ペレット移送方向Spと直交する方向に長いスリット2sを設けている。このスリット2sを給気用ファン12によって送り込まれる空気が通過することによって上部スクリーン2上にエアーカーテン状(面状)の上昇気流(冷却風)が形成され、樹脂ペレットはエアーカーテン状の冷却風を横切って移送される。したがって、上部スクリーン2上を移送される樹脂ペレットは必ず冷却風にさらされ、樹脂ペレットを効率よく冷却することができる。そのため、例えば150℃〜180℃程度の高温の状態のストランドがストランド切断装置33によって切断されて生成される樹脂ペレットを50℃前後に冷却することも可能になる。したがって、樹脂ペレットを効率よく冷却できない場合の後工程における種々の問題、例えば、選別装置による切粉の除去が困難であるという問題、樹脂ペレットが袋に付着するという問題、及び金属検出機を通過させる工程がある場合に金属検出機が誤動作するという問題等を解消することが可能になる。また、冷却風によって樹脂ペレットの付着水分を除去することもできる。
【0063】
また、本実施形態のペレット冷却装置34の直後に除電ブロワのような静電気除去装置を配備し、あるいは後段の選別装置35の適所(例えば、樹脂ペレットの投入口付近)に静電気除去装置を配備して、樹脂ペレットの温度が充分に下がった状態で樹脂ペレットの静電気を除去することにより、選別装置35における切粉の除去をより効率的に行うことができる。
【0064】
また、本実施形態のペレット冷却装置34において、上部スクリーン2のスリット2sを通過する空気を、樹脂ペレットの静電気を除去するためのイオンを含む空気としてもよい。この場合、例えば、給気用ファン12を除電ブロワのような静電気除去機能を持つ装置に代えればよい。
【0065】
なお、本実施形態では、上部スクリーン2として、図3(b)に示すように、隣接するスリット2s間の断面が楔形状であるものを用いたが、スリット2s間の断面が長方形あるいは正方形であるものを用いてもよい。本実施形態のように、スリット2s間の断面を楔形状とすることにより、上部スクリーン2の下方の風速に対してスリット2sを通過するときの風速が速くなるので、給気用ファン12及び排気用ファン25の風量を小さくすることができる。
【0066】
また、スリット2sは必ずしもペレット移送方向Spと直交しなくても、ペレット移送方向Spと交差する方向に延びたスリット、すなわちペレット移送方向Spと交差する方向に長いスリットとしてもよい。
【0067】
また、図3(d)に示すように、スリット2sがスクリーンの幅方向(ペレット移送方向Spと直交する方向)に複数に分割された上部スクリーン2aを用いてもよい。但し、ペレット移送方向Spに並んで隣接するスリット列の分割部分d1、d2が互いに隣接せず、できるだけ離れて配置されていることが樹脂ペレットの効率的な冷却をする上で好ましい。すなわち、分割部分d1、d2ができるだけ離れて配置されていることにより、樹脂ペレットが分割部分d1、d2を連続して通過することなく、スリット2sからの冷却風にさらされるので好ましい。
【0068】
本実施形態では、装置本体20に、1つの給気口1と2つの排気口24とを設けているが、これに限られない。給気口と排気口とが同一鉛直線上にあれば、給気口から吸い込まれた空気が排気口へ到達しやすく、広がりにくいので、給気口と排気口とが同一鉛直線上になく、ペレット移送方向(前後方向)Spにずれて配置されていることが好ましい。また、本実施形態では、給気口の個数より排気口の個数を多くしているが、排気口の個数より給気口の個数を多くしてもよい。また、給気口の個数と排気口の個数とが1個以上の同数であってもよい。例えば、小型の装置の場合には、給気口及び排気口のいずれも1個としてもよい。
【0069】
なお、本実施形態では、上部スクリーン2が固定されている装置本体20を振動させることにより、上部スクリーン2を振動させて樹脂ペレットを移送するようにしたが、上部スクリーン2を装置本体20から分離し、上部スクリーン2のみを振動させて樹脂ペレットを移送するように構成してもよい。
【0070】
また、本実施形態のペレット冷却装置34は、図1に示すようなペレット製造システムに好適に用いることができる。この場合、ペレット供給口21を介して上部スクリーン2上に供給される樹脂ペレットは、押出機31のダイから押し出されたストランドを、その表面が固化された後、切断して樹脂ペレットを生成するストランド切断装置34から供給される樹脂ペレットである。ここで、押出機31のダイから押し出されたストランドをストランド冷却装置32によってストランドの表面を固化状態にするが、芯部まで固化させない。芯部まで固化させない方が、ストランドが切断時に切断されないで粉砕される割合が小さくなり、またストランド切断装置34の切断刃の損耗も小さくなる。
【0071】
なお、本実施形態のペレット冷却装置34が用いられるペレット製造システムは、廃棄物として回収したプラスチックを再ペレット化して成形加工原料に再生するペレット製造システムであってもよい。この場合、押出機31は、例えば図示しないホッパに貯留されているプラスチック(合成樹脂)の粉砕片を、加熱溶融及び混錬し、先端の多孔ダイからストランドに成形して押し出すように構成される。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明にかかるペレット冷却装置は、例えば150℃〜180℃程度の高温の状態のストランドを切断して生成される樹脂ペレットを効率よく冷却するための装置等として有用である。
【符号の説明】
【0073】
1 給気口
2 上部スクリーン
2s スリット
3 下部スクリーン
3h 貫通穴
24 排気口
10 振動装置
12 給気用ファン
20 装置本体
21 ペレット供給口
22 ペレット排出口
25 排気用ファン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に樹脂ペレットが供給され、振動させられることによって前記樹脂ペレットを前記一端から他端へ移送するとともに、この移送する方向である移送方向と交差する方向に延びる貫通溝が前記移送方向に並んで複数形成されたペレット移送板と、
前記樹脂ペレットを前記移送方向に移送させるように前記ペレット移送板を振動させる振動装置と、
前記樹脂ペレットを冷却するための空気を、前記ペレット移送板の前記貫通溝に下から上に向けて流すための気流発生手段と
を備えたペレット冷却装置。
【請求項2】
前記気流発生手段は、
前記ペレット移送板を内部に保持し、一端に前記ペレット移送板上に樹脂ペレットが供給されるためのペレット供給口を有するとともに他端に前記ペレット移送板の他端へ移送された樹脂ペレットを排出するためのペレット排出口とを有する筐体と、
前記筐体の下部に設けられた開口部からなる給気口と、
前記筐体の上部に設けられた開口部からなる排気口と、
前記給気口に接続され、前記給気口から前記筐体内へ空気を送り込むための給気用送風機と、
前記排気口から前記筐体内の空気を吸引して外部へ排出するための排気用送風機とを有する、請求項1に記載のペレット冷却装置。
【請求項3】
前記筐体の内部で、前記ペレット移送板の下方にかつ前記給気口の上方に前記ペレット移送板と対向して配設され、複数の貫通穴を有する気流分散板をさらに備えた、請求項2に記載のペレット冷却装置。
【請求項4】
前記給気口と前記排気口とのうちの少なくとも一方が複数設けられ、かつ前記給気口と前記排気口とが前記移送方向にずれて配置されている、請求項2に記載のペレット冷却装置。
【請求項5】
前記ペレット移送板の複数の前記貫通溝は、前記ペレット移送板の全長に亘って前記移送方向に所定間隔をおいて並んで形成されている、請求項1に記載のペレット冷却装置。
【請求項6】
前記ペレット移送板の各々の前記貫通溝は、前記移送方向と直交する方向に延びて、前記樹脂ペレットが移送される経路の実質全幅に亘って形成されている、請求項1に記載のペレット冷却装置。
【請求項7】
前記ペレット移送板は、前記移送方向に隣接する前記貫通溝と前記貫通溝との間の断面が楔形状である、請求項1に記載のペレット冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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