説明

ペレット及びそれを用いたゴム混練り方法

【課題】ベースゴムと連続混合してファイナル練りを行う際、ゴム混練り装置へ連続的にかつ安定的に投入することが可能なペレットを提供し、さらに、このペレットを用いて安定した練りゴムの物性を得ることが可能なゴム混練り方法を提供する。
【解決手段】ベースゴムと連続混合してファイナル練りを行う際に用いられるゴム薬品のペレットであって、回転軸を含む切断面における楕円の長軸の長さaと短軸の長さbの比率が1.25≦a/b≦3.0である回転楕円体の形状を有するペレット。前記のペレットとベースゴムとをゴム混練り装置へ連続的に投入し、連続混合してファイナル練りを行うゴム混練り方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベースゴムと連続混合してファイナル練りを行う際に用いられるゴム薬品のペレット及びそれを用いたゴム混練り方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤの製造においては、ゴム練り時、ベースゴムと連続混合してファイナル練りを行うことが広く行われている。具体的には、押出し成形機等のゴム混練り装置を用いて、ベースゴムを連続的に投入し、続いてファイナル薬品を連続的に加え、ゴム混練り装置内で連続的に混合する方法であり、従来のバッチ方式の混合に比べて中間在庫をなくすことができる利点がある。
【0003】
そして、前記のファイナル薬品は、従来、母材となるゴムに加硫剤や加硫促進剤等のゴム薬品を混合し、丸棒状に押出したものを、一定寸法にカットして円盤状のペレット(図5参照)に成型して供給されている(例えば、特許文献1)。
【0004】
ペレット化することにより、ゴム練り時に、ゴム薬品の飛散を防止することができ、練りゴムの品質にばらつきが発生することを抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−194421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような円盤状のペレットは、ゴム混練り装置に投入する際、フィーダーや樋等の投入経路をスムーズに搬送できず、投入経路の途中で引っ掛かる等の不都合が発生することがあった。その結果、ペレット(ゴム薬品)のゴム混練り装置への連続的な投入を安定させることができず、ベースゴムとの連続的な混合が安定しないため、練りゴムの物性にばらつきを生じさせるという問題があった。
【0007】
これを、図6および図7を用いて説明する。即ち、円盤状のペレットAは、図6(a)(b)に示すような状態に置かれた場合、矢印の方向には転がり難い。特に、図6(b)の状態では、接地面積がより大きいため、より大きな転がり抵抗を生じる。
【0008】
このため、円盤状のペレットAをフィーダーや樋等の投入経路Bに投入した場合、図7(a)に示すようにペレットAが重なり合って移動し難くなり、図7(b)に示すように投入経路Bの途中で引っ掛かりを生じ、投入経路B内でペレットAが詰まってしまう。その結果、ゴム混練り装置へのペレットの投入が不安定となり、ベースゴムとの連続的な混合が安定しないため、練りゴムの物性にばらつきを生じさせる。
【0009】
これに対して、転がり抵抗を小さくするために、ペレットの形状を円盤状から球体とした場合には、ペレットが転がり過ぎ、以下のような問題があった。即ち、螺旋状の投入経路では、ペレットに大きな遠心力が働き、投入経路の樋部分から跳び出して脱落する。また、投入経路に急傾斜の樋部分がある場合には、多数のペレットが同じ方向に一度に流れ込むため、下部から溢れ出す。その結果、やはり、ゴム混練り装置へのペレットの投入が不安定となり、ベースゴムとの連続的な混合が安定しないため、練りゴムの物性にばらつきを生じさせる。
【0010】
このように、従来の形状のペレットでは、ゴム混練り装置へ連続的にかつ安定的に投入することができず、安定した練りゴムの物性を得ることが困難であった。
【0011】
そこで、本発明は、ベースゴムと連続混合してファイナル練りを行う際、ゴム混練り装置へ連続的にかつ安定的に投入することが可能なペレットを提供し、さらに、このペレットを用いて安定した練りゴムの物性を得ることが可能なゴム混練り方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るペレットは、
ベースゴムと連続混合してファイナル練りを行う際に用いられるゴム薬品のペレットであって、
回転軸を含む切断面における楕円の長軸の長さaと短軸の長さbの比率が1.25≦a/b≦3.0である回転楕円体の形状を有する
ことを特徴とする。
【0013】
そして、本発明に係るゴム混練り方法は、
前記のペレットとベースゴムとをゴム混練り装置へ連続的に投入し、連続混合してファイナル練りを行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ベースゴムと連続混合してファイナル練りを行う際、ゴム混練り装置へ連続的にかつ安定的に投入することが可能なペレットを提供し、さらに、このペレットを用いて安定した練りゴムの物性を得ることが可能なゴム混練り方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態のペレットの(a)斜視図と(b)断面図である。
【図2】本発明の実施の形態のペレットの作製に用いられる治具の斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態のペレットの製造工程を説明する斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態のペレットの製造工程を説明する斜視図である。
【図5】従来のペレットの斜視図である。
【図6】従来のペレットを説明する斜視図である。
【図7】従来のペレットを説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明をその実施の形態に基づいて説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、以下の実施の形態に対して種々の変更を加えることが可能である。
【0017】
1.ペレットの形状
図1に、本発明の実施の形態のペレットを示す。なお、図1(a)はペレット1の外形を示しており、図1(b)はペレット1の回転軸を含む切断面における楕円(長軸の長さ:a、短軸の長さ:b)を示している。図1に示すように、本発明の実施の形態のペレット1の形状は、長軸を回転軸として得られる回転楕円体である。なお、ここでいう回転楕円体には、近似する形状も含まれる。そして、本発明においては、回転軸は長軸に限定されず、短軸を回転軸としても良い。
【0018】
上記において、長軸の長さaと短軸の長さbの比率は、1.25≦a/b≦3.0であることが好ましい。1.25未満であると、球体に近い回転楕円体となる(球体の場合、a/b=1となる)ため、前記した球体形状のペレットにおける問題、即ち、螺旋状の投入経路ではその樋部分から跳び出して脱落する問題や、投入経路に急傾斜の樋部分がある場合にペレットが下部から溢れ出すという問題が発生する可能性が高くなる。一方、3.0を超えると、円盤状に近い回転楕円体となるため、前記した円盤状形状のペレットにおける問題、即ち、投入経路内でペレットが詰まるという問題が発生する可能性が高くなる。1.25≦a/b≦3.0であるとこれらの問題の発生がなく、ゴム混練り時、ゴム混練り装置へ連続的にかつ安定的に投入することができ、所定の練りゴムの物性を安定して得ることができる。
【0019】
2.ペレット作製用の治具
前記のペレットは、図2に示す治具を用いて回転楕円体の形状に成形される。図2に示すように、治具2は、本体20の下面側に、断面形状が幅a×深さ(b/2)の半楕円状の成形溝21が複数本並設されており、成形溝21間の下端及び本体の両側の下端は成形刃22となっている。
【0020】
3.ペレットの作製
本発明の実施の形態のペレットは、図3および図4に示す方法により作製される。なお、図3および図4は、ペレットの製造工程を示す斜視図である。
【0021】
最初に、母材となるゴムに所定のゴム薬品を加えて、ニーダー等のゴム混練り装置を用いて混練した後、押出し成形機を用いて丸棒状に押出し、図3、図4に11で示す円柱状成形体(径b)を作製する。
【0022】
次に、得られた円柱状成形体11を、図3に示すように、間隔を設けて台上に配置し、図3の白抜き矢印の方向に、上から治具2で押え付ける。
【0023】
押え付けられた円柱状成形体11は、図4(a)に示されるように変形する。その後、治具2を成形溝21方向に水平に白抜き双方向矢印の方向に往復動させることにより、図4(b)に示す回転楕円体状のペレット1を得ることができる。
【0024】
4.ゴム混練り
本発明の実施の形態のゴム混練りは、ニーダー等のゴム混練り装置を用いて、前記で得られたペレットと所定のベースゴムを連続的に混合するものである。
【0025】
このとき、ペレットは、前記の回転楕円体状に形成されているため、投入経路を詰まらせることがなく、また投入経路からの跳び出し等がなく、ゴム混練り装置へ連続的にかつ安定的に投入されるため、所定の練りゴムの物性を安定して得ることができる。
【0026】
5.実施例および比較例
母材となるゴムに所定のゴム薬品を加えて、ニーダー等のゴム混練り装置を用いて混練した後、押出し成形機を用いて丸棒状に押出し、作製した円柱状成形体から、治具を用いて、表1に示す各a/bの回転楕円体状のペレット(実施例1〜3、比較例1、2)を作製した。
【0027】
得られた各ペレットと所定のベースゴムとを、所定の配合処方に基づき、ゴム混練り装置へ連続的に投入して混練りし、各混練りゴムバッチを得た。なお、この時、各ペレットのゴムへの供給状況を観察し、供給安定性を評価した。評価結果を、表1に併せて示す。
【0028】
得られた各混練りゴムバッチ毎に30箇所ランダムにサンプルを採取し、各サンプルについて200℃での加硫において90%加硫されるまでに要する時間(キュラスト測定においてトルク値が90%加硫品のトルク値に達するまでに要する時間:T−90)を測定し、そのばらつきの大きさ(標準偏差σ)を求めた。測定結果を、表1に併せて示す。
【0029】
【表1】

【0030】
表1に示すように、1.25≦a/b≦3.0である実施例1〜3においては、比較例2に比べても、T−90のσが充分小さく(0.018〜0.030)、ばらつきが小さいことが分かる。なお、比較例1のσは、他のσと比較して差が大き過ぎるため、不可としている。
【0031】
また、実施例1〜3では、ペレットが投入経路内に詰まったり、投入経路から跳び出したり溢れ出したりすることがなく、ゴム混練り装置へ安定して供給することができた。これに対し、比較例1では、ペレットの転がり性が良すぎて、投入経路からペレットが溢れ出し、ゴム混練り装置へ安定して供給することができなかった。また、比較例2では、ペレットを投入経路に供給する供給タンクの排出口や投入経路の出口でペレットの詰まりが発生し、ゴム混練り装置へ非常に不安定な供給しかできなかった。
【符号の説明】
【0032】
1 ペレット
11 円柱状成形体
2 治具
20 本体
21 成形溝
22 成形刃
A ペレット
B 投入経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースゴムと連続混合してファイナル練りを行う際に用いられるゴム薬品のペレットであって、
回転軸を含む切断面における楕円の長軸の長さaと短軸の長さbの比率が1.25≦a/b≦3.0である回転楕円体の形状を有する
ことを特徴とするペレット。
【請求項2】
請求項1に記載のペレットとベースゴムとをゴム混練り装置へ連続的に投入し、連続混合してファイナル練りを行うことを特徴とするゴム混練り方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate