説明

ペレット燃料の製造方法、およびペレット燃料

【課題】ペレット燃料の発熱量を増加させることができるとともに燃焼残渣が少なくなり、かつ、ペレット燃料を成型しやすく生産性が向上し、成型時の消費電力が少なくなるとともにペレタイザーのメンテナンスにも手間が掛からない、燃焼性の揃ったペレット燃料の製造方法等を提供する。
【解決手段】破砕されたバイオマス100重量部に対して廃食用油5〜20重量部を混合して得られた含油破砕物を、含水率が5〜25重量%の状態でペレタイザーを用いて成型する、ペレット燃料の製造方法とした。このとき、含油破砕物として、油凝固剤で廃食用油を固めて得られた含油凝固物を加熱して液状化し、破砕されたバイオマス100重量部に対して廃食用油が5〜20重量部となるように、液状化した前記含油凝固物を破砕されたバイオマスに混合して得られた、油凝固剤入り含油破砕物を用いる、ペレット燃料の製造方法とすることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマスを使用したペレット燃料の製造方法、およびバイオマスを使用したペレット燃料に関する。
詳しくは、刈草、剪定技、間伐材および紙屑、ならびに製材所・木工所等から出る木の樹皮、端材、鉋屑および鋸屑等のバイオマスと、廃食用油を原料としたペレット燃料の製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、農業用ハウス栽培の暖房用ボイラーは、化石燃料である灯油や重油が燃料の主流であった。しかしながら、近年、石油の価格が乱高下したため、石油を燃料として栽培すると採算性に不安があり、ハウス設備と栽培技術を持ちながら、冬季の栽培を断念する農家が増えている。
【0003】
一方、農家の近傍で容易に入手できる刈草、剪定枝、間伐材および紙屑、あるいは廃食用油は、いたずらに放置され朽ちるのを待ったり、可燃性ゴミとしてゴミ処理場で焼却されている。(ゴミ処理場に運搬するにも石油を使っている。)
【0004】
また、従来より、製材所・木工所等から出る木の樹皮、端材・鉋屑・鋸屑等の木材を用いたペレット燃料が知られており、近年、地球環境保護や資源の有効利用の観点から、石油や石炭等の化石燃料に代えて、このようなペレット燃料が用いられることが多くなっている。
【0005】
上記ペレット燃料の製造方法としては、原料となる草や木材を、異物を除去した上で数mm程度以下に粉砕し、粉砕された原料粉をペレット成型機に投入してペレット状に加圧・成型する方法がある。
【0006】
ここで、草などを用いたペレット燃料の製造方法等は、例えば、特許文献1や特許文献2に記載されている。
【0007】
特許文献1には、「型プレス処理を行う前にバイオマスに乾燥処理を行う、プレスしたバイオマスからの燃料製造方法において、バイオマスとして草を用いることを特徴とする方法」が記載されている。そして、発明の目的として「これまで燃料の製造に用いられていなかったバイオマスを利用し、移動、貯蔵及び燃焼中の取り扱いの観点から木材ペレットに匹敵する燃料を提供することにある」と記載されている。
【0008】
また、特許文献2には、「茸栽培に使用した茸栽培用培地の使用済培地を乾燥し、当該乾燥した使用済培地をペレット状、粒状、タブレット状およびフレーク状のいずれかの形状に成形してバイオマス燃料を製造するバイオマス燃料製造方法。」が記載されている。そして、これによって「一般的な燃焼装置の燃料として、好適に使用することが可能なバイオマス燃料を低コストで製造することができるため、利用者に対してバイオマス燃料を低価格で提供することができる。」と記載されている。
【0009】
【特許文献1】特表2006−517000号公報(請求項1、段落0006)
【特許文献2】特開2008−120890号公報(請求項1、段落0013)
【0010】
一方、廃天ぷら油等の廃食用油は、家庭用のものは少量であるため下水中に廃棄されることも多く、下水道、河川、湖沼等の汚染の原因の一つになっている。その一部は、少量の場合新聞紙や布きれ等に吸着され可燃性ごみとして廃棄されたり、油凝固剤(ゲル化剤)で固形化され一般可燃廃棄物として処理されている。また、事業用の廃食用油は産業廃棄物として処理されている。廃食用油は一部が石鹸やバイオディーゼル燃料(BDF)に使われている程度で、多くが有効利用されていなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前述したような従来のペレット燃料の製造方法では、原料となるバイオマスの種類によって燃焼時の発熱量が大きく左右されることになる。即ち、木の樹皮を含むバークペレットや紙のシュレッダー屑あるいは刈草等を原料としたペレット燃料は、木の幹に相当する部分(木の幹部)のみから作られたホワイトペレットに比し発熱量が約10%も少なくなっていた。このように、燃焼時の発熱量は原料次第となっており、ハウス栽培においてペレット燃料を用いた暖房を行う場合、原料の異なるペレット燃料に途中から切り替えると、ハウス内の温度が変動する可能性があった。
【0012】
つまり、従来のペレット燃料では、a)発熱量を向上させたい、b)ホワイトペレット以外のペレット燃料の発熱量をホワイトペレット並に向上させて一定量に調節したいという要望があり、一方、廃油処理では、高エネルギーを有する廃食用油が可燃性ゴミとして無駄に焼却処理され、二酸化炭素にされてしまうという課題がある。
【0013】
すなわち、発熱量が低く、原料によって発熱量にばらつきのあるペレット燃料を、高発熱量でありながら、水質汚濁の原因であったり可燃性ゴミとして処理されている廃食用油を用いてペレット燃料の発熱量を高いレベルで均一化し、一定品質の燃料として使用できるようにし、さらにこれによって、重油や灯油燃料の使用量削減、すなわち、二酸化炭素(C0)の発生を削減し、環境保全に寄与することができるペレット燃料の製造方法の開発が望まれていた。
【0014】
また、ペレタイザー(ペレット燃料製造装置)の主要部材は摩耗強度を上げるために耐摩耗性工具鋼であるSKD鋼のような合金工具鋼鋼材で製作されている。しかし、含水系のペレット原料をペレット化する場合、使用後にそのまま放置すると、ダイスの押出孔等に錆が発生し、ペレット燃料の滑りが悪くなり、しかもダイスの押出孔間で滑りに差が出るため、ペレット燃料の生産性が落ちるという現象があった。また、ダイスの押出孔から出るペレット燃料の堅さが異なってしまい燃焼の悪いペレット燃料が含まれることもあった。そのため、生産を休むときには、錆が発生しないように装置のすべてのダイスをメンテナンスしておく必要があった。
【0015】
本発明は、上述の事柄に留意してなされたものであって、固体の可燃性廃棄物として処理されている草や木材等のバイオマスを用いて、農業用ハウス、公共施設、工場、ホテルなどの暖房用ボイラーの化石燃料代替燃料として利用できる、発熱量の一定したペレット燃料の製造方法などを提供することを目的とする。
特に、刈草や剪定枝、間伐材あるいは紙のシュレッダー屑を原料としたペレット燃料は、木の幹部を原料としたホワイトペレットより発熱量が少ないため、これに続き燃焼させるときは単に目的の温度が低下するだけでなく、燃焼温度低下に伴う未燃焼灰の増加等問題を引き起こすので、これらの原料を使った場合でも同等の発熱量を得られるようなペレットを製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために、破砕されたバイオマス100重量部に対して廃食用油5〜20重量部を混合して得られた含油破砕物を、含水率が5〜25重量%の状態でペレタイザーを用いて成型する、ペレット燃料の製造方法とした。
ここで、「含水率」は、含油破砕物の全体重量に占める水分の割合であり、例えば、含油破砕物100g中に水分が20g含まれているときには、含水率が20重量%となる。
【0017】
上記ペレット燃料の製造方法では、破砕されたバイオマス100重量部に対して廃食用油5〜20重量部を混合するため、製造されたペレット燃料の燃焼時における発熱量を増加させることができる。また、燃焼温度が高いため燃焼残渣も少なくなる。さらに、廃食用油が潤滑剤の働きをしてペレタイザーとの摩擦が大きく低減されるため、含油破砕物を成型しやすくなってペレット燃料の生産性が向上するとともに成型時の消費電力が少なくなる。加えて、ペレタイザーで成型されたペレット燃料の堅さにバラツキが少なくなり、ペレット燃料の燃焼性(着火性、燃え易さ)が揃うようになる。さらに加えて、廃食用油がペレタイザーを構成する金属ダイス等の表面を薄く覆うため、成型後に手入れをしなくても金属ダイス等が錆びにくい。
ここで、廃食用油の量が、破砕されたバイオマス100重量部に対して5重量部よりも少ないと上記効果が発現しにくくなる。一方、廃食用油の量が20重量部よりも多いと、得られたペレット燃料の強度が急激に低下して、運搬時におけるペレットの粉化が激しくなる。
廃食用油の量は発熱量と燃焼残渣を考慮すると、多いことが好ましい。しかし、ペレット燃料の強度、ペレット燃料の生産性、成型時の消費電力、金属ダイス等の錆を防止する効果等を考慮すると、廃食用油の量は、好ましくは、破砕されたバイオマス100重量部に対して5〜17重量部、より好ましくは5〜15重量部、最も好ましくは6〜13重量部である。
【0018】
また、上記ペレット燃料の製造方法では、含水率が5〜25重量%の状態でペレタイザーを用いて成型する。含水率が5重量%よりも少ないと、含油破砕物が粉状になって成型しにくくなる。含水率が25重量%よりも多いと、空隙の多いペレット燃料になり輸送や保管に問題が生じる。成型する際の含水率は、好ましくは6〜15重量%であり、より好ましくは、8〜10重量%である。
【0019】
含油破砕物として、油凝固剤で廃食用油を固めて得られた含油凝固物を加熱して液状化し、破砕されたバイオマス100重量部に対して廃食用油が5〜20重量部となるように、液状化した含油凝固物を破砕されたバイオマスに混合して得られた、油凝固剤入り含油破砕物を用いる、ペレット燃料の製造方法とすることが好ましい。
【0020】
廃食用油を用いるに際しては、家庭等から回収する必要がある。しかし、液状のまま回収する場合には耐油性のある容器を各家庭等に常備して貰う必要があり、また廃棄する側(家庭等)として、容器に移し替える作業が面倒であることから廃食用油の回収率は伸びていなかった。実際には、家庭用廃食用油は固形化等され、一般可燃性廃棄物として処理されることが多かった。ここで、油凝固剤で廃食用油を固めて固形状の含油凝固物とし、これを回収して破砕されたバイオマスに混合することが考えられるが、この場合、十分な時間をかけて混合しないと、含油凝固物が均一に分散せず、発熱量にバラツキが出ることがあった。そこで、油凝固剤で廃食用油を固めて得られた含油凝固物を加熱して液状化し、この状態で、破砕されたバイオマスに混合することで、このような課題を解決し、回収等しやすい含油凝固物を用いた場合であっても発熱量にバラツキが出にくいペレット燃料を製造することができる。液状化した含油凝固物を破砕されたバイオマスに混合する際に、破砕されたバイオマスを予め加温していてもよい。
また、油凝固剤は脂肪酸を主成分としており、この脂肪酸は潤滑剤や防錆剤としての働きをすることから、廃食用油を混合することで得られた上記作用効果を補強することも期待できる。
【0021】
バイオマスとして、木の葉、木の樹皮、バガス、紙及び草の何れか一種以上を含んでいるものを用いる、ペレット燃料の製造方法とすることも好ましい。
【0022】
木の葉、木の樹皮、バガス、紙及び草の何れか一種以上を含んでいる従来のペレット燃料は、木の幹部のみから作られたいわゆるホワイトペレットと比較して、10%程度発熱量が低く燃焼残渣が多いものであったが、廃食用油を混合する本発明のペレット燃料の製造方法によって、発熱量が高く燃焼残渣の少ないペレット燃料を得ることができる。
例えば、ホワイトペレット燃料を燃焼させてボイラーを運転中、木の葉、木の樹皮やバガス、刈草、紙のシュレッダー屑原料のペレット燃料に切り替えた場合、従来であれば、発熱量が落ちるため農業ハウス等の温度が下がり、それに伴う問題が起きると考えられるが、上記本発明のペレット燃料の製造方法で得られたペレット燃料を用いることで、ボイラーの運転は安定化するのである。
【0023】
上記課題は、破砕されたバイオマスと、破砕されたバイオマス100重量部に対して5〜20重量部の廃食用油と、を含み、含水率が5〜25重量%である、ペレット燃料によっても解決される。ペレット燃料は、ペレタイザーで成型されたものである。
このとき、バイオマスが、木の葉、木の樹皮、バガス、紙及び草の何れか一種以上を含んでいる、ペレット燃料とすることができる。
またこのとき、廃食用油が、使用済みの食用油を出発原料としたバイオディーゼル燃料(BDF)の製造時に除去される、炭化廃食用油や固体脂肪を含んだ廃食用油残渣である、ペレット燃料とすることもできる。
またこのとき、バイオマスと廃食用油の他に、油凝固剤を含んでいる、ペレット燃料とすることもできる。ペレット燃料には、油凝固剤が均一に分散されている。
またこのとき、バイオマスが、木の葉、木の樹皮、バガス、紙及び草の何れか一種以上を含んでおり、廃食用油が、使用済みの食用油を出発原料としたバイオディーゼル燃料の製造時に除去される、炭化廃食用油や固体脂肪を含んだ廃食用油残渣であり、さらにこのとき、(バイオマスと廃食用油残渣の他に)、油凝固剤を含んでいる、ペレット燃料とすることもできる。
【発明の効果】
【0024】
本発明により、得られるペレット燃料の発熱量を増加させることができるとともに燃焼残渣が少なく、かつ、ペレット燃料を成型しやすく生産性が向上し、成型時の消費電力が少なくなるとともにペレタイザーのメンテナンスにも手間が掛からない、燃焼性の揃ったペレット燃料の製造方法、およびペレット燃料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を例示説明する。本発明は、破砕されたバイオマス100重量部に対して廃食用油5〜20重量部を混合して得られた含油破砕物を、含水率が5〜25重量%の状態でペレタイザーを用いて成型する、ペレット燃料の製造方法であり、破砕されたバイオマスと、破砕されたバイオマス100重量部に対して5〜20重量部配合された廃食用油と、からなり、含水率が5〜25重量%である、ペレット燃料である。
なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0026】
[バイオマス]
本発明で用いるバイオマスは、例えば、木の幹の他、木の葉、木の枝、木の樹皮、バガス、紙および草などが利用できる。バイオマスとは、燃料等として利用可能な生物に由来する有機質の資源の総称であり、石油や石炭などのいわゆる化石燃料を除く概念である。また、本発明において、バイオマスは固形のものに限定され、食用油や廃食用油は概念から除かれる。このうち、木の幹は、発熱量が高くいわゆるホワイトペレットの原料として用いられている。木の葉、木の枝、木の樹皮、バガス、紙および草などは、木の幹と比較して発熱量が低いものであるが、本発明によりこの欠点は補完される。
【0027】
[廃食用油]
廃食用油としては、家庭や業務用として使用された使用済みの食用油を用いることができる。また、廃食用油として、使用済みの食用油を出発原料としたバイオディーゼル燃料(BDF)の製造時に除去される、炭化廃食用油や固体脂肪を多く含んだ(炭化廃食用油や固体脂肪を含有する)廃食用油残渣を用いてもよい。廃食用油は、使用済みの食用油や廃食用油残渣を含む概念である。
【0028】
[ペレット燃料の製造方法]
まず最初に、図1に示すように、バイオマスをある程度の大きさになるまで破砕する(バイオマス破砕工程)。破砕装置としては特に制限されず種々の市販品などを使用することができる。バイオマスとして草を用いる場合には、押し切り(藁などを切る道具)で切断してもよい。本発明では、このような切断も「破砕」に含まれる。ここで、破砕前又は破砕後に、バイオマスの含水率を測定しておく。
【0029】
次に、破砕されたバイオマスに廃食用油を混合する(廃食用油混合工程)。このとき、破砕されたバイオマス100重量部に対して廃食用油5〜20重量部を混合する。この廃食用油混合工程では、破砕されたバイオマスに廃食用油を混合するだけでなく、廃食用油を混合しなが破砕されたバイオマスをさらに細かく破砕してもよい。例えば、破砕されたバイオマスにシャワーあるいはスプレー等の方法で廃食用油を振りかけた後、傾斜円筒型混合機、V型混合機、スクリュー混合機等の混合装置を用いて破砕混合して含油破砕物を得ることができる。また、廃食用油混合工程では、脂肪酸を主成分とする油凝固剤で廃食用油を固めて得られた含油凝固物を加熱して液状化し、この液状化された含油凝固物を破砕されたバイオマスに加えてもよい。
【0030】
廃食用油混合工程が終わると、得られた含油破砕物の含水率が5〜25重量%になるように調節する(含水率調節工程)。例えば、破砕前又は破砕後に測定しておいたバイオマスの含水率をベースに、含水率が5〜25重量%となるような量を計算して水を加えればよい。水は、例えば、如雨露で散布して加えることができる。水を加えたら、さらに十分に撹拌して水分量を均一にする。なお、含水率調節工程は廃食用油混合工程の前に行ってもよいが、廃食用油混合工程の後または同時に行うことが好ましい。バイオマスの含水率によっては、含水率調節工程が不要な場合もある。
【0031】
最後に、含水率が5〜25重量%に調整された含油破砕物を、ペレタイザーで一定の形状に成型する(ペレット燃料成型工程)。使用されるペレタイザーとしては種々のものを用いることができる。例えば、加圧ロール2とダイス3を備えた、図2及び図3に示すようなペレタイザー1を用いることができる。ペレタイザー1は、水分を含有する含油破砕物8を加圧成型するため、加圧ロール2、ダイス3等主要材質はSKD鋼等の耐摩耗性のある合金工具鋼鋼材が使用されるが、断続運転で休止中のとき、摺動部、特に含油破砕物8が通過するダイス3の押出孔4内壁に錆が生じ、滑りが悪くなることがあった。これによって、ダイス3の各押出孔4の間で滞留時間に差が出て全体として単位時間あたりの生産量が落ちるという現象が生じていたが、廃食用油を混合して使用した後は、ダイス3の押出孔4内壁等に錆が生じないため、装置のメンテナンスが容易になる。また、これによって、ペレット燃料9の単位時間あたりの生産量が約1.5倍になる。
【0032】
以下、本発明を実施例および比較例により具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、下記実施例及び比較例をまとめた一覧表を表1に示してある。
【実施例1】
【0033】
檜の幹部のみから出た鉋屑(含水率12.5重量%)3.0kgを幅広のポリエチレン製シートの上にほぼ均一の厚さに広げ、家庭から出た廃天ぷら油300g(鉋屑100重量部に対して10重量部)を如雨露で均一に散布し、さらに水450gを如雨露で散布した。次いでこの廃天ぷら油・水散布鉋屑を大型ゴミ袋に入れ、よく撹拌してからスクリュー混合機(神鋼造機株式会社製 植繊機SM-05-0.75(ダイ孔系6.0mm))を用いて混合・粉砕した。次いでこの含油破砕物をペレタイザーとしてのバイオマスペレット製造装置(株式会社アースエンジニアリング製 EF-075)でペレット化した。
ペレット燃料の強度は十分で、袋詰め、搬送を想定した強度テストにも耐え十分であった。この強度テストは、ペレット燃料をビニール袋に入れて、約1分間、上下に大きく振り、試験後におけるペレット燃料の保形性を評価したものであり試験後に粉化がない場合を○、試験後に粉化がある場合を×とした。
またこのペレット燃料の含水率は8.5重量%であり、発熱量を測定したところ(JIS Z7302−2:1999 廃棄物固形化燃料-第2部:発熱量試験方法による)2 0,500J/gであった。
【0034】
比較例1Aとして、廃天ぷら油を散布しない他は実施例1と同じ方法でペレット燃料を得た。しかし、実施例1における場合と比較して、成型時においてペレタイザーからの騒音が大きく、また、単位時間あたりの成型量が30〜40%程度低下するとともに、ペレタイザーの消費電力が40〜50%程度上昇した。
得られたペレット燃料の含水率は6.2重量%であり、強度および袋詰め・搬送を想定した強度テストにも耐えたが、実施例1と同様の発熱試験をしたところ発熱量は19,000J/gであり、実施例1のペレット燃料よりも発熱量が低いものであった。
【0035】
比較例1Bとして、廃天ぷら油を加える量を900g(鉋屑100重量部に対して30重量部)に増量した以外は実施例1と同じ方法でペレット燃料を得た。このペレット燃料は含水率10.3重量%で発熱量は23,500J/gと高かったが、ペレットの強度が弱く、強度テストにおいて一部のペレット燃料が破砕してしまい、粉化品が部屋に舞い散った。
【実施例2】
【0036】
津山市の沼地に生えていた葦(草)を刈り取り、天日で3日間乾燥し、押し切り(藁などを切る道具)で2〜5cmに切り、さらに天日で4日間乾燥し、含水率13.5重量%の葦のカット品を得た。この葦のカット品3.0kgに対し、廃天ぷら油150g(葦のカット品100重量部に対して5重量部)と水450gを如雨露で散布した以外は実施例1と同じ方法でペレット化したところ、強度テストにも耐えた。このペレット燃料の含水率は8.5重量%であり、発熱量を測定したところ17,500J/gであった。
【0037】
比較例2として、廃天ぷら油を散布しない他は実施例2と同じ方法でペレット燃料を得た。しかし、実施例2における場合と比較して、成型時においてペレタイザーからの騒音が大きく、また、単位時間あたりの成型量が30〜40%程度低下するとともに、ペレタイザーの消費電力が40〜50%程度上昇した。
得られたペレット燃料の含水率は9.8重量%であり、強度テストにも耐えたが、発熱試験をしたところ発熱量は16,500J/gであり、実施例2のペレット燃料よりも発熱量が低いものであった。
【実施例3】
【0038】
自宅の庭木を剪定し、その剪定屑(木の枝)を、チッパー(新興和産業KK製:共立マルチチッパー)で2〜5cmに切り、含水率12.3重量%の庭木剪定屑カット品を得た。この庭木剪定屑カット品3.0kgに対し、油凝固剤(ジョンソン株式会社製:固めるテンプル 内容:脂肪酸100%)で廃食用油を固めて得られた含油凝固物450g(廃食用油600ml(比重0.9)に対して18gの油凝固剤を加えて固めたもの:庭木剪定屑カット品100重量部に対して廃食用油約14.5重量部に相当)を40〜60℃程度で加熱液状化したものを散布した以外は実施例1と同じ方法でペレット化した。得られたペレット燃料の強度は十分で強度テストにも耐えた。このペレット燃料の含水率は9.4重量%であり、発熱量を測定したところ20,900J/gであった。
【0039】
比較例3として、含油凝固物を加熱液状化したものを散布しない他は実施例3と同じ方法でペレット燃料を得た。しかし、実施例3における場合と比較して、成型時においてペレタイザーからの騒音が大きく、また、単位時間あたりの成型数が30〜40%程度低下するとともに、ペレタイザーの消費電力が40〜50%程度上昇した。
得られたペレット燃料の含水率は9.2重量%であり、強度および袋詰め・搬送を想定したテストにも耐えたが、実施例3と同様の発熱試験をしたところ発熱量は18,400J/gであり、実施例3のペレット燃料よりも発熱量が低いものであった。
【0040】
上記実施例1〜3で用いたペレタイザーに関して、試験後、メンテナンスをせずに放置しておいたが、1週間程度放置しても、ダイス等の内部部品に錆は発生していなかった。一方、比較例1A、2及び3で用いたペレタイザーは、試験後、メンテナンスをせずに24時間程度放置しておいたところ、ダイスの押出孔等に錆が生じていた。
また、上記実施例1〜3で得られたペレット燃料を燃焼させたところ、上記比較例1A、2及び3で得られたペレット燃料よりも、燃焼残渣が少なくなっていた。
【0041】
【表1】

【0042】
以上、特定の実施形態及び実施例を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態等に限定されるものではなく、当該技術分野における熟練者等により、本出願の願書に添付された特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変更及び修正が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明のペレット燃料の製造方法を示すフローである。
【図2】ペレタイザーを示す図である。
【図3】ペレタイザーの要部拡大図である。
【符号の説明】
【0044】
1 ペレタイザー
2 加圧ロール
3 ダイス
4 押出孔
8 含油破砕物
9 ペレット燃料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
破砕されたバイオマス100重量部に対して廃食用油5〜20重量部を混合して得られた含油破砕物を、含水率が5〜25重量%の状態でペレタイザーを用いて成型する、ペレット燃料の製造方法。
【請求項2】
含油破砕物として、油凝固剤で廃食用油を固めて得られた含油凝固物を加熱して液状化し、破砕されたバイオマス100重量部に対して廃食用油が5〜20重量部となるように、液状化した前記含油凝固物を破砕されたバイオマスに混合して得られた、油凝固剤入り含油破砕物を用いる、
請求項1記載のペレット燃料の製造方法。
【請求項3】
バイオマスとして、木の葉、木の樹皮、バガス、紙及び草の何れか一種以上を含んでいるものを用いる、
請求項1又は2記載のペレット燃料の製造方法。
【請求項4】
破砕されたバイオマスと、
該破砕されたバイオマス100重量部に対して5〜20重量部の廃食用油と、
を含み、
含水率が5〜25重量%である、ペレット燃料。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−121047(P2010−121047A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−296297(P2008−296297)
【出願日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(508345106)アセス株式会社 (1)
【出願人】(508345128)
【Fターム(参考)】