ペロブスカイト構造の酸化物とその製造方法、及び光触媒
【課題】ペロブスカイト型結晶構造を有する複合酸化物とその製造方法、及び当該酸化物からなる高活性な光触媒を提供すること。
【解決手段】 アルカリ金属(M1)と周期律表第5族元素(M5)を構成成分とする焼成によって得られる結晶子径が10〜35nmの範囲にあるペロブスカイト型結晶構造を有する複合酸化物。当該酸化物は、アルカリ金属(M1)を構成成分とするアルカリ金属化合物(A)と周期律表第5族元素(M5)を構成成分とする金属化合物(B)を含有する混合物を水熱処理して、ペロブスカイト構造を持たない結晶性の沈殿物を形成させた後、次いで焼成処理することによって得られる。
【解決手段】 アルカリ金属(M1)と周期律表第5族元素(M5)を構成成分とする焼成によって得られる結晶子径が10〜35nmの範囲にあるペロブスカイト型結晶構造を有する複合酸化物。当該酸化物は、アルカリ金属(M1)を構成成分とするアルカリ金属化合物(A)と周期律表第5族元素(M5)を構成成分とする金属化合物(B)を含有する混合物を水熱処理して、ペロブスカイト構造を持たない結晶性の沈殿物を形成させた後、次いで焼成処理することによって得られる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、Z−スキーム型光水分解触媒系に利用することが期待できる、ペロブスカイト構造の酸化物とその製造方法に関し、更にはこのペロブスカイト構造の酸化物からなる高活性な光触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、光触媒としては酸化物半導体であるTiO2やSrTiO3などのペロブスカイト型酸化物がよく知られている。このTiO2やペロブスカイト型酸化物に代表される触媒を用いて、可視光下で水分解によって水素が製造できれば、太陽という無限のエネルギーを利用することが可能となり、またGHG削減にも寄与できるため研究が盛んに行われてきている。しかしながら、これらの酸化物半導体からなる触媒の価電子帯はO2p(約3V)であるため、水分解に必要な光触媒のバンドギャップは必然的に3eVを超える値が必要となる。すなわち、紫外光に対しては活性を有するが、太陽光の大部分を占める可視光に対しては可視光吸収ができないため活性を持たない。そのため、可視光応答型酸化物光触媒の開発を進めるためには、水の酸化還元電位(1.23eV)を挟みこみ、O2pに代わる新たな価電子帯あるいはドナー準位を形成することが必要であった。
【0003】
このような、価電子帯を制御する方法として、O2pに代わって価電子帯を形成する可能性がある元素の探索や、ドナー準位を形成させるために、既に開発されている紫外光応答型光触媒の中で、Tiと同様にd0電子配置をとるV、Zr、Nb、Mo、Ta、Wなどの金属を含んだd0系酸化物半導体に遷移金属、例えばCrをドーピングする方法(非特許文献1)、また、可視光応答化するため、紫外光応答型光触媒と同じ結晶構造を有し、かつ可視光を吸収できる元素を添加して固溶体を形成する方法など、多くの検討がなされてきた。
【0004】
例えば、SrTiO3にRhをドープすることによりエネルギーギャップを小さくし、
Ptを担持した触媒が、可視光分解活性を有する高活性触媒として開示されている。(特許文献1) この触媒は、少なくとも水の光分解によるH2の生成において効率の良い触媒であり、この触媒を利用して効率的に水素を生成する反応系として、Z−スキーム型光触媒系が開示されている。(特許文献2) このZ−スキーム型触媒系は酸素生成系触媒と水素生成系触媒とからなり、電子伝達剤を仲介して酸化還元を行うことによって、水素生成能力あるいは酸素生成能力のどちらか一方しか持たない材料でも水分解反応(2H2O→2H2+O2)のための光触媒として使用できる反応系である。
【0005】
紫外光活性の高いSrTiO3にRhをドープすることによる可視光活性化は太陽光を利用できるようになる点で非常に有効な手段であるが、現状はまだまだ十分な可視光活性を得られていないのが実情である。その原因の1つは、可視光化の効率が低いこともあるが、母材となる酸化物触媒そのものの活性が未だ不十分ということである。従って、母材の光活性を改良する方法も活発に研究されており、RhをドープしたSrTiO3触媒においては、更なる高活性化を狙って、母材中にSrを過剰に添加することが有効であることも開示されている。(非特許文献2)Sr添加量を増やすことで、Sr欠陥が減少し、また、Ruがより高分散に担持されることで高活性化できることが示唆されている。
【0006】
このように、太陽光エネルギーの利用を目指した水の光触媒的分解反応系開発のために触媒の可視光活性化は不可欠ではあるが、母材となるペロブスカイト型酸化物触媒そのものの活性を上げることも重要であり、その性能が上がれば、水の光触媒的分解反応活性のポテンシャルを上げることが可能となる。
【0007】
一般的に光触媒活性が高いペロブスカイト型酸化物(母材)としてよく知られているのはSrTiO3等の複合金属酸化物などである。例えば、ペロブスカイト構造のSrTiO3は、TiO2、SrCO3の金属化合物を原料として、これらを混合後、焼成による固相反応により一般に製造されている。固相法は操作が簡便であるという理由によって、母材の製造ではよく採用される技術であるが、焼成による結晶形成では結晶形態まで制御することは通常困難であった。一方で、結晶形態を制御できる製造法として水熱合成法が知られており、結晶成長を液相でゆっくりと行うことにより、形成される結晶は非常に微細にもかかわらず、その水熱条件によって、さまざまな結晶形態を形成させることが可能であることが知られている (例えば、非特許文献3)。本発明者らはこの水熱合成技術をベースにして、微細なペロブスカイト構造の結晶を得るための調製方法、すなわち小さい結晶でかつ高結晶性の触媒を得るための製造条件について種々検討した結果、従来にない小さな結晶子径を有するペロブスカイト構造の複合酸化物母材と、それを調製するための新しい製造方法を見出すに至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−008963号公報
【特許文献2】特開2005−199187号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Chem. Soc. Rev., 2009, 38, 253.
【非特許文献2】第88回日本化学会春季年会 予稿集(1L3-42)
【非特許文献3】ニチアス技術技報2008年2号 No.353
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記のような状況に鑑みてなされたもので、Z−スキーム型可視光活性水分解触媒系への展開が期待できるペロブスカイト型の酸化物とその製造方法、およびそのペロブスカイト型の酸化物からなる光触媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、ペロブスカイト型の結晶構造を有する複合酸化物とその製造方法に関するものであり、更に、従来から知られている触媒に比較して高活性なペロブスカイト型の酸化物からなる光触媒に関する。
【0012】
すなわち、本発明は、アルカリ金属(M1)と周期律表第5族元素(M5)を構成成分とする、結晶子径が10〜35nmの範囲にあるペロブスカイト型結晶構造を有する複合酸化物、並びに当該複合酸化物からなる光触媒に係る。
【0013】
ここで、結晶子径が10〜35nmの範囲にあるペロブスカイト型結晶構造を有する複合酸化物は、アルカリ金属(M1)、好ましくはNaおよびKから選ばれる一種以上を構成成分とするアルカリ金属化合物(A)と周期律表第5族元素(M5)、好ましくはNbおよびTaから選ばれる一種以上を構成成分とする金属化合物(B)を含有する混合物を水熱処理してペロブスカイト構造ではない結晶性の沈殿物を形成させた後、次いで当該沈殿物を焼成することによって調製される。
【0014】
水熱処理は145〜178℃の温度で実施し、金属化合物(B)中の周期律表第5族元素(M5)に対するアルカリ金属化合物(A)中のアルカリ金属(M1)の仕込み原子比が2.1〜5.5を満たすように、アルカリ金属化合物(A)の水溶液中で金属化合物(
B)を処理することが望ましい。
更に、焼成は360〜830℃で実施することが望ましい。
本発明はまた、このペロブスカイト型結晶構造を有する複合酸化物からなる光触媒である。
【0015】
更に本発明は、アルカリ金属(M1)、好ましくはNaおよびKから選ばれる一種以上を構成成分とするアルカリ金属化合物(A)と周期律表第5族元素(M5)好ましくはNbおよびTaから選ばれる一種以上を構成成分とする金属化合物(B)を含有する混合物を水熱処理して、ペロブスカイト構造を持たない結晶性の沈殿物を形成させた後、次いで当該沈殿物を焼成することによってペロブスカイト型結晶構造を有する複合酸化物を製造する方法に係る。
【発明の効果】
【0016】
従来得られていた複合酸化物に比較して、紫外光による水素生成活性が高いペロブスカイト型結晶構造を有する複合酸化物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の触媒の活性評価を行うための閉鎖循環式ガラス製水素生成反応装置である。
【図2】実施例1で得られた沈殿物のXRD測定チャートである。
【図3】実施例1で得られた沈殿物のSEM写真である。
【図4】実施例1で得られた触媒のXRD測定チャートである。
【図5】実施例1で得られた触媒のSEM写真である。
【図6】比較例1で得られた触媒のXRD測定チャートである。
【図7】比較例1で得られた触媒のSEM写真である。
【図8】比較例2で得られた沈殿物のXRD測定チャートである。
【図9】比較例2で得られた沈殿物のSEM写真である。
【図10】比較例2で得られた触媒のXRD測定チャートである。
【図11】比較例2で得られた触媒のSEM写真である。
【図12】本願明細書に記載した全実施例と、比較例2〜5、10、11(水熱処理でペロブスカイトができたものにつき、横軸に「ペロブスカイト化合物の結晶子径」を、縦軸に活性(水素生成速度)をプロットした図面である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の、例えばZ−スキーム型光水分解触媒系に利用することが期待できるペロブスカイト型結晶構造を有する複合酸化物は、アルカリ金属(M1)と周期律表第5族元素(M5)を構成成分とする、結晶子径が10〜35nmの範囲にある。アルカリ金属(M1)としては、Na、K、Rb、Csを挙げることができるが、後述するように当該複合酸化物を調製する際に用いられるアルカリ金属化合物(A)の安全性や入手容易性の視点からNaとKが好ましく、光触媒活性の視点からはNaが特に好ましい。アルカリ金属(M1)は一種類のみであっても二種以上の複数種であってもよい。周期律表第5族元素(M5)としては、V、Nb、Ta、Dbが挙げられるが、後述する当該複合酸化物を調製する際に用いられる金属化合物(B)の安全性や入手容易性の視点からNbとTaが好ましく、光触媒活性の視点からはNbが特に好ましい。周期律表第5族元素(M5)は一種類のみであっても二種以上の複数種であってもよい。本発明のペロブスカイト型結晶構造を有する複合酸化物の結晶子径は、通常10〜35nm、好ましくは20〜35nmである。結晶子径が小さいほど光触媒活性は高まるが、10nm未満の複合酸化物を調製するためには全工程時間が長くなり経済的ではない。また結晶子径が35nmを超える場合では十分な光触媒活性を得ることができない。本発明においては光触媒活性の点から、本発明の複合酸化物は全てがペロブスカイト型結晶構造を有することが好ましいが、本発明は非
ペロブスカイト型結晶構造を有する複合酸化物の混入を排除するものでない。後述するようにペロブスカイト型結晶構造の純度よりも当該複合酸化物の調製速度を優先する場合は、一般的に光触媒活性は多少低下する。このような光触媒活性低下が許容される場合であっても、ペロブスカイト型結晶構造のXRDピーク強度および非ペロブスカイト型結晶構造のXRDピーク強度から算出される、非ペロブスカイト型結晶構造複合酸化物混入量の上限値は全体の複合酸化物量に対して15%とするのが好ましい。
【0019】
ペロブスカイト型構造は、一般にABX3の結晶構造で表される。このペロブスカイト型構造は、Aサイトの陽イオンとXサイトの陰イオンが同程度の大きさを有し、このAとXで構成される立方晶系単位格子の中にAサイトより小さい陽イオンがBサイトとして位置している。したがって、Aサイトの陽イオンは12配位となり、Bサイトの陽イオンは6配位、Xサイトの陰イオンは6配位となる。
【0020】
本発明のペロブスカイト型結晶構造を有する複合酸化物は、まず初めにアルカリ金属(M1)を構成成分とするアルカリ金属化合物(A)と周期律表第5族元素(M5)を構成成分とする金属化合物(B)を含有する混合物を水熱処理して、ペロブスカイト構造を持たない結晶性の沈殿物を形成させた後、次いで当該沈殿物を焼成処理することによって得られる。水熱処理(以下の説明では「水熱合成」と呼称する場合もある)法は、高圧の水蒸気の存在下で行なわれる無機化合物の合成および結晶を成長させる方法であり、その条件は特に限定されるものではないが、本発明においては、この水熱合成は通常塩基性条件下で行われることが特徴である。そのため、Aサイトとしては、塩基性水溶液中でイオンとして安定に存在するアルカリ金属が好ましく、かつ、12配位を取りうる原子が必要なことから、Na、K、Rb、Csが好ましいのである。ここで、Xサイトは酸素原子であり、AサイトとXサイトは同程度の大きさであることからAサイトとしては、NaまたはKのいずれかが好ましい。この条件で、Bサイトには6配位を取る5価の陽イオンが候補となるが、安全性や価格を考慮すれば、NbまたはTaのいずれかが好ましい。
以下、水熱処理(水熱合成)、次いで焼成処理の順に本発明の製造方法を詳細に説明する。
【0021】
〔水熱処理〕
本発明に係る、水熱合成で得られるペロブスカイト構造を持たない前駆体は具体的には、非常に微細な針状結晶が形成されることが好ましく、このペロブスカイト構造を持たない針状結晶が形成された場合、その次の工程の焼成処理によって、針状が分断されると同時にこの前駆体は熱をかけることによってペロブスカイト構造に変化しやすいために、最終的に結晶子径の小さい、かつ結晶性の高いペロブスカイト構造を有する複合酸化物からなる触媒が得られると考えている。
【0022】
本発明による水熱合成と焼成を経て得られたペロブスカイト構造を有する結晶は、前記のように、AサイトはNaまたはK、BサイトはNbまたはTaとするペロブスカイトである。
【0023】
水熱合成は塩基性条件下で行うため、Aサイトの金属(M1)の原料であるアルカリ金属化合物(A)としては水溶液中で塩基性を示す化合物が好ましく、特にはアルカリ金属水酸化物が好ましい。Bサイトの金属(M5)は水熱条件下で溶解するのであれば、原料である金属化合物(B)としては特に制限はないが、酸化物あるいは水酸化物が操作上好ましい。
【0024】
本発明の特徴の1つは水熱合成で形成される微結晶は、その時点では未だ基本的にペロブスカイト構造を有しないということである。すなわち、本発明においては、水熱合成では、ペロブスカイトとは異なる水和物の結晶形成に留めるのが好ましい。特にこの段階の
結晶形態は針状結晶であることが望ましく、これは、ペロブスカイト構造の結晶が得られたときの立方晶の形状とは異なる。水熱合成の時点でペロブスカイト結晶構造が形成されてしまうと、そのあとの焼成では、得られたペロブスカイト構造の結晶性を改善はできても、結晶子径を小さくすることは出来ない。
【0025】
一方で、本発明によれば、水熱合成を終わった段階で、ペロブスカイト構造ではない前駆体構造の結晶を形成できれば、そのあとに行う焼成段階において、ペロブスカイト構造への結晶変態が起こり、前駆体構造の結晶は小さく細分化されることを見出した。またそのときにペロブスカイト構造に変態し易い前駆体構造であるためにより低温でのペロブスカイト構造への変態も可能となる。その結果として、従来に比較して、結晶子径は小さいにもかかわらず、高結晶性の結晶が得られるため、本発明による得られたペロブスカイト型の酸化物は高い光触媒活性を示すことができるのである。
【0026】
水熱合成においてペロブスカイト構造ではない前駆体の特に望ましい結晶形態は針状結晶である。前駆体が好ましい針状結晶構造であるかどうかについては、その針状結晶のXRDによる構造解析、走査電子顕微鏡(SEM)による形態観察によって判断可能である。本発明においては、SEM観察により直径が0.5μm以下、好ましくは0.1μm 以下の針状結晶が得られることが望ましい。
【0027】
このような、針状結晶が得られる水熱合成条件について次に述べる。水熱合成の際の原料仕込みについては、Bサイトに入る周期律表第5族元素(M5)に対するAサイトに入るアルカリ金属(M1)の仕込原子比が1以上であれば、その水熱条件にも左右される場合があるが、通常は望ましい結晶が形成される。また、一般に塩基性を示すアルカリ金属(M1)はAサイトの金属と同じであることが望ましく、そのため、前記の仕込原子比は2.1以上であることが好ましい。仕込原子比の上限値は特に制限されないが、その溶解度や、結晶析出速度などを考慮すれば、不必要に高くすることはあまり意味がなく、従って、仕込原子比は通常2.1〜5.5、好ましくは2.1〜5.0、更に好ましくは2.5〜5.0の範囲である。
【0028】
本発明においては、水熱処理する溶液中の[OH−]イオン濃度も結晶成長には影響する。
[OH−]イオン濃度は低すぎると結晶生成に時間がかかり、高すぎると短時間で結晶変態が進みすぎて構造制御が困難となり、ペロブスカイト構造にまで進んでしまうこともあるので、経済性や操作性を考慮すれば[OH−]濃度は通常、0.2〜2.5モル/リットル、好ましくは0.2〜2.5モル/リットルである。更に、結晶を形成する金属原料の仕込み量も同様に結晶形態に影響する。Bサイトの金属は酸化物などの化合物で仕込むため、仕込み時には懸濁液となるが、水熱反応後に得られる前駆体結晶として50〜200g/リットルの濃度範囲とするのが生産効率、及び再現性を考慮すれば望ましい。
【0029】
本発明において、水熱合成温度は重要な因子の1つである。この温度が低すぎると結晶成長が進まないので好ましくないが、逆に高すぎると、結晶変態の速度を制御できなくなり、望ましい結晶構造が得られない場合がある。実生産での操作を考慮すれば、水熱合成温度は、145〜178℃、好ましくは150〜175℃とすることが望まれる。この温度であれば低すぎて結晶生成が進まないということもなく、また、結晶がペロブスカイト構造を取るということもなく、目的とする前駆体結晶が得られるので好ましい。この水熱温度が決まると圧力は自己発生蒸気圧よって従属的に決まるが、更に、加圧することは結晶成長には大きく影響しないため加圧操作は任意である。但し、通常は経済性を考えて、温度上昇による自己発生蒸気圧で反応を行う。水熱合成時間は、短すぎると、結晶化が不十分となり好ましくないが、長くする分には特に影響はない。反応の効率や操作性等を考慮すれば、好ましい反応時間は8〜200時間、更に好ましくは10〜50時間である。
水熱合成で得られた前駆体結晶を含む沈殿溶液は、このあと、溶液から沈殿物を分離・回収するためにろ過する。ここで回収された沈殿物は余剰のアルカリ分を除去するため、得られた沈殿物重量の40〜200倍の水で洗浄した後、再びろ過・回収される。洗浄方法としては、洗浄水量を数回分に分けて洗浄・ろ過を繰り返す方法でもよく、最終的にこの水洗浄の際の濾液のpHが8以下となればよい。このようにして回収された結晶は、60〜120℃で一晩乾燥された後、焼成で温度が均一になるよう、適宜、解砕する。
【0030】
〔焼成処理〕
このようにして得られた前駆体結晶は、次に目的とするペロブスカイト構造にするために焼成処理が行われる。一般に、固相反応によってペロブスカイト構造の結晶を得るためには、少なくとも600℃以上の温度で20時間以上焼成することが必要であるが、本発明においては、ペロブスカイト構造に変化しやすい前駆体構造を予め形成させているため、その焼成温度は必ずしも結晶成長が起こるような高温を必要としない。本発明においては、その焼成温度は、固相反応に必要な温度より低くすることが可能であり、通常360〜830℃、好ましくは370〜800℃で行えばよい。水熱合成で得られた前駆体結晶の焼成は、この温度の範囲であれば、ペロブスカイト構造への変化が十分に起こらないということもなく、また、ペロブスカイト構造が結晶成長して、結晶子径が大きくなるということもない。焼成時間は特に限定されないが、結晶変態に十分な時間を与え、かつ経済的な時間を考慮すれば、通常5〜20時間、好ましくは5〜12時間焼成するのが好ましい。焼成雰囲気については特に制限はなく、還元雰囲気でも、不活性雰囲気でも、酸化性雰囲気でも行うことは可能である。一般的には、設備が最も簡単な大気中での焼成が好んで採用される。
【0031】
得られたペロブスカイト型酸化物を光触媒として使用する場合には、適宜、その使用形態に応じて粉砕工程にかけるなどした後、水素生成反応に用いられる。
本発明のペロブスカイト型の酸化物(母材)は、このままでは、可視光活性を持たないが、その紫外光活性は非常に高く、先に述べた可視光活性化の方策を施すことにより、可視光化することは可能である。本発明によるペロブスカイト型の酸化物の可視光化の処方については、従来から知られている処方が特に問題なく適用可能である。
【実施例】
【0032】
以下、実施例に基づいて本発明によるペロブスカイト型の酸化物、およびその光触媒としての活性評価結果について、さらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0033】
次に、本発明のペロブスカイト型結晶構造を有する複合酸化物を光触媒として用いる場合の活性評価活性評価方法について説明する。本発明の実施例および比較例で得られた複合酸化物は、図1に示すような閉鎖循環式のガラス製水素生成反応装置を用いて、メタノールを犠牲剤とした酸化還元反応での水素生成反応(2H++2e−→H2)に対する触媒活性で評価した。
【0034】
まず、300mlの反応容器に水を108mLとメタノール12mLを入れ、10体積%の濃度になるようにメタノール水溶液を調製した後、ペロブスカイト型酸化物の光触媒を100mg加えて、反応溶液を十分に撹拌した。次に、助触媒としてPtをこの光触媒に光析出担持させるため、塩化白金酸水溶液をPtとして0.1重量%担持できるよう添加後、反応容器を閉鎖循環式の水素生成反応装置に接続し、攪拌しながら系内を真空脱気した後、Arガスを400Torr導入し、300Wキセノンランプ(朝日分光:MAX−302、UVタイプミラーモジュール、石英製ファイバー、石英製ロッドレンズ)を光源として、溶液の上から石英製ガラス窓を通して光照射を行った。光照射により生成した気体は、オンラインのガスクロマトグラフ(島津:GC−8A、MS−5Aカラム、TCD、Arキャリアー)で分析し、水素発生量を定量した。
【0035】
〔実施例1〕
200mLのテフロン(登録商標)コートしたステンレス製反応容器に、水100mLおよび水酸化ナトリウム(関東化学製)4.00 gからなる水溶液と 、酸化ニオブ:Nb2O5(アルドリッチ製)4.61gを入れて、十分に攪拌する。(Na:Nb=1.00:0.35(原子比)、アルカリイオン[OH−]濃度=1.0モル/リットル)次に、反応容器を水熱反応装置に入れ、160℃、20時間、水熱処理する。水熱処理で得られた沈殿物は、ろ液のpHが8以下になるまで水洗浄、ろ過を行い、80℃で一晩乾燥、解砕した。
【0036】
得られた沈殿物はXRD測定、及びSEM観察により、ペロブスカイト構造ではない針状結晶であることを確認した。XRDの結果を図2、SEM写真を図3に示す。
得られた針状結晶を、大気中、400℃、10時間焼成した。焼成後、室温まで放冷、解砕した。その後、ろ液のpHが8以下になるまで水洗浄、ろ過を行い、乾燥後、触媒を得た。水熱処理、及び焼成条件を表1に示す。
【0037】
得られた触媒は、XRD測定において、結晶子径が25nmで、単一のペロブスカイト構造を示した。XRDの結果を図4、SEM写真を図5に示す。結晶子径は、XRD測定で得られた回折ピークの半値幅から、シェラーの式を使って計算した。
先に述べた触媒の活性評価方法に従って、水素生成反応を5時間行った。得られた水素生成反応の経時変化から、水素が定常的に生成したときの速度を水素生成速度とした。
水素生成活性とXRD測定の結果を、表2に示す。
【0038】
〔実施例2〜8〕
表1に記入した条件の変更以外は実施例1と同様にして、触媒調製を行った。
各実施例の結果を表2に示す。
【0039】
〔比較例1〕[固相法製造触媒]
炭酸ナトリウム:Na2CO3(関東化学製)粉末を1.11g、酸化ニオブ:Nb2O5(アルドリッチ製)粉末を2.66g(Na:Nb=1.05:1.00の原子比)秤量、混合後、大気中、600℃、20時間焼成する。焼成後、室温まで放冷してから、解砕する。未反応のアルカリを除去するために、解砕した粉末を、100mLの水に懸濁させ、30分間攪拌する。この懸濁液から、粉末を分離・回収した後、80℃で一晩乾燥させて、触媒を得た。焼成条件を表1に示す。
【0040】
得られた触媒は、XRDにおいて、結晶子径が37nmで、単一のペロブスカイト構造を示す。XRDの結果を図6、SEM写真を図7に示す。
実施例1と同様にして水素生成活性評価を行った。水素生成活性とXRD測定の結果を、表2に示す。
【0041】
〔比較例2〕[水熱法製造触媒]
200mLテフロン(登録商標)コートしたステンレス製反応容器に、水100mLと水酸化ナトリウム(関東化学製)8.00 gからなる水溶液と 、酸化ニオブ:Nb2O5(アルドリッチ製)4.61gを入れて、十分に攪拌する。(Na:Nb=2.00:0.35(原子比)、アルカリイオン[OH−]濃度=2.0モル/リットル)次に、反応容器を水熱反応装置に入れ、160℃、20時間、水熱処理する。水熱処理で得られた沈殿物は、ろ液のpHが8以下になるまで水洗浄、ろ過を行い、80℃で一晩乾燥、解砕した。得られた沈殿物はXRD測定により、結晶子径が41nmの単一のペロブスカイト構造であることを確認した。XRDの結果を図8、SEM写真を図9に示す。
【0042】
得られたペロブスカイト構造の沈殿物を、大気中、400℃、10時間焼成した。焼成後、室温まで放冷、解砕した。その後、ろ液のpHが8以下になるまで水洗浄、ろ過を行い、乾燥後、触媒を得た。水熱処理、及び焼成条件を表1に示す。
得られた触媒は、XRD測定において、単一のペロブスカイト構造を維持しており、結晶子径が41nmだった。XRDの結果を図10、SEM写真を図11に示す。
実施例1と同様にして水素生成活性評価を行った。水素生成活性とXRD測定の結果を、表2に示す。
【0043】
〔比較例3〜12〕
表1に記入した条件の変更以外は比較例2と同様にして、触媒調製を行った。
各実施例の結果を表2に示す。
【0044】
添付した図12からも明瞭に理解されるように、本願発明の結晶子径が35nm以下に制御された複合酸化物を用いた紫外光下での水分解触媒活性は、比較例(水熱処理でペロブスカイトができたもの、比較例2〜5、10、11)に比べて高活性である。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明によるペロブスカイト型の酸化物からなる光触媒は、従来得られていた触媒に比較して、紫外光による水素生成活性が高い。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、Z−スキーム型光水分解触媒系に利用することが期待できる、ペロブスカイト構造の酸化物とその製造方法に関し、更にはこのペロブスカイト構造の酸化物からなる高活性な光触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、光触媒としては酸化物半導体であるTiO2やSrTiO3などのペロブスカイト型酸化物がよく知られている。このTiO2やペロブスカイト型酸化物に代表される触媒を用いて、可視光下で水分解によって水素が製造できれば、太陽という無限のエネルギーを利用することが可能となり、またGHG削減にも寄与できるため研究が盛んに行われてきている。しかしながら、これらの酸化物半導体からなる触媒の価電子帯はO2p(約3V)であるため、水分解に必要な光触媒のバンドギャップは必然的に3eVを超える値が必要となる。すなわち、紫外光に対しては活性を有するが、太陽光の大部分を占める可視光に対しては可視光吸収ができないため活性を持たない。そのため、可視光応答型酸化物光触媒の開発を進めるためには、水の酸化還元電位(1.23eV)を挟みこみ、O2pに代わる新たな価電子帯あるいはドナー準位を形成することが必要であった。
【0003】
このような、価電子帯を制御する方法として、O2pに代わって価電子帯を形成する可能性がある元素の探索や、ドナー準位を形成させるために、既に開発されている紫外光応答型光触媒の中で、Tiと同様にd0電子配置をとるV、Zr、Nb、Mo、Ta、Wなどの金属を含んだd0系酸化物半導体に遷移金属、例えばCrをドーピングする方法(非特許文献1)、また、可視光応答化するため、紫外光応答型光触媒と同じ結晶構造を有し、かつ可視光を吸収できる元素を添加して固溶体を形成する方法など、多くの検討がなされてきた。
【0004】
例えば、SrTiO3にRhをドープすることによりエネルギーギャップを小さくし、
Ptを担持した触媒が、可視光分解活性を有する高活性触媒として開示されている。(特許文献1) この触媒は、少なくとも水の光分解によるH2の生成において効率の良い触媒であり、この触媒を利用して効率的に水素を生成する反応系として、Z−スキーム型光触媒系が開示されている。(特許文献2) このZ−スキーム型触媒系は酸素生成系触媒と水素生成系触媒とからなり、電子伝達剤を仲介して酸化還元を行うことによって、水素生成能力あるいは酸素生成能力のどちらか一方しか持たない材料でも水分解反応(2H2O→2H2+O2)のための光触媒として使用できる反応系である。
【0005】
紫外光活性の高いSrTiO3にRhをドープすることによる可視光活性化は太陽光を利用できるようになる点で非常に有効な手段であるが、現状はまだまだ十分な可視光活性を得られていないのが実情である。その原因の1つは、可視光化の効率が低いこともあるが、母材となる酸化物触媒そのものの活性が未だ不十分ということである。従って、母材の光活性を改良する方法も活発に研究されており、RhをドープしたSrTiO3触媒においては、更なる高活性化を狙って、母材中にSrを過剰に添加することが有効であることも開示されている。(非特許文献2)Sr添加量を増やすことで、Sr欠陥が減少し、また、Ruがより高分散に担持されることで高活性化できることが示唆されている。
【0006】
このように、太陽光エネルギーの利用を目指した水の光触媒的分解反応系開発のために触媒の可視光活性化は不可欠ではあるが、母材となるペロブスカイト型酸化物触媒そのものの活性を上げることも重要であり、その性能が上がれば、水の光触媒的分解反応活性のポテンシャルを上げることが可能となる。
【0007】
一般的に光触媒活性が高いペロブスカイト型酸化物(母材)としてよく知られているのはSrTiO3等の複合金属酸化物などである。例えば、ペロブスカイト構造のSrTiO3は、TiO2、SrCO3の金属化合物を原料として、これらを混合後、焼成による固相反応により一般に製造されている。固相法は操作が簡便であるという理由によって、母材の製造ではよく採用される技術であるが、焼成による結晶形成では結晶形態まで制御することは通常困難であった。一方で、結晶形態を制御できる製造法として水熱合成法が知られており、結晶成長を液相でゆっくりと行うことにより、形成される結晶は非常に微細にもかかわらず、その水熱条件によって、さまざまな結晶形態を形成させることが可能であることが知られている (例えば、非特許文献3)。本発明者らはこの水熱合成技術をベースにして、微細なペロブスカイト構造の結晶を得るための調製方法、すなわち小さい結晶でかつ高結晶性の触媒を得るための製造条件について種々検討した結果、従来にない小さな結晶子径を有するペロブスカイト構造の複合酸化物母材と、それを調製するための新しい製造方法を見出すに至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−008963号公報
【特許文献2】特開2005−199187号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Chem. Soc. Rev., 2009, 38, 253.
【非特許文献2】第88回日本化学会春季年会 予稿集(1L3-42)
【非特許文献3】ニチアス技術技報2008年2号 No.353
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記のような状況に鑑みてなされたもので、Z−スキーム型可視光活性水分解触媒系への展開が期待できるペロブスカイト型の酸化物とその製造方法、およびそのペロブスカイト型の酸化物からなる光触媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、ペロブスカイト型の結晶構造を有する複合酸化物とその製造方法に関するものであり、更に、従来から知られている触媒に比較して高活性なペロブスカイト型の酸化物からなる光触媒に関する。
【0012】
すなわち、本発明は、アルカリ金属(M1)と周期律表第5族元素(M5)を構成成分とする、結晶子径が10〜35nmの範囲にあるペロブスカイト型結晶構造を有する複合酸化物、並びに当該複合酸化物からなる光触媒に係る。
【0013】
ここで、結晶子径が10〜35nmの範囲にあるペロブスカイト型結晶構造を有する複合酸化物は、アルカリ金属(M1)、好ましくはNaおよびKから選ばれる一種以上を構成成分とするアルカリ金属化合物(A)と周期律表第5族元素(M5)、好ましくはNbおよびTaから選ばれる一種以上を構成成分とする金属化合物(B)を含有する混合物を水熱処理してペロブスカイト構造ではない結晶性の沈殿物を形成させた後、次いで当該沈殿物を焼成することによって調製される。
【0014】
水熱処理は145〜178℃の温度で実施し、金属化合物(B)中の周期律表第5族元素(M5)に対するアルカリ金属化合物(A)中のアルカリ金属(M1)の仕込み原子比が2.1〜5.5を満たすように、アルカリ金属化合物(A)の水溶液中で金属化合物(
B)を処理することが望ましい。
更に、焼成は360〜830℃で実施することが望ましい。
本発明はまた、このペロブスカイト型結晶構造を有する複合酸化物からなる光触媒である。
【0015】
更に本発明は、アルカリ金属(M1)、好ましくはNaおよびKから選ばれる一種以上を構成成分とするアルカリ金属化合物(A)と周期律表第5族元素(M5)好ましくはNbおよびTaから選ばれる一種以上を構成成分とする金属化合物(B)を含有する混合物を水熱処理して、ペロブスカイト構造を持たない結晶性の沈殿物を形成させた後、次いで当該沈殿物を焼成することによってペロブスカイト型結晶構造を有する複合酸化物を製造する方法に係る。
【発明の効果】
【0016】
従来得られていた複合酸化物に比較して、紫外光による水素生成活性が高いペロブスカイト型結晶構造を有する複合酸化物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の触媒の活性評価を行うための閉鎖循環式ガラス製水素生成反応装置である。
【図2】実施例1で得られた沈殿物のXRD測定チャートである。
【図3】実施例1で得られた沈殿物のSEM写真である。
【図4】実施例1で得られた触媒のXRD測定チャートである。
【図5】実施例1で得られた触媒のSEM写真である。
【図6】比較例1で得られた触媒のXRD測定チャートである。
【図7】比較例1で得られた触媒のSEM写真である。
【図8】比較例2で得られた沈殿物のXRD測定チャートである。
【図9】比較例2で得られた沈殿物のSEM写真である。
【図10】比較例2で得られた触媒のXRD測定チャートである。
【図11】比較例2で得られた触媒のSEM写真である。
【図12】本願明細書に記載した全実施例と、比較例2〜5、10、11(水熱処理でペロブスカイトができたものにつき、横軸に「ペロブスカイト化合物の結晶子径」を、縦軸に活性(水素生成速度)をプロットした図面である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の、例えばZ−スキーム型光水分解触媒系に利用することが期待できるペロブスカイト型結晶構造を有する複合酸化物は、アルカリ金属(M1)と周期律表第5族元素(M5)を構成成分とする、結晶子径が10〜35nmの範囲にある。アルカリ金属(M1)としては、Na、K、Rb、Csを挙げることができるが、後述するように当該複合酸化物を調製する際に用いられるアルカリ金属化合物(A)の安全性や入手容易性の視点からNaとKが好ましく、光触媒活性の視点からはNaが特に好ましい。アルカリ金属(M1)は一種類のみであっても二種以上の複数種であってもよい。周期律表第5族元素(M5)としては、V、Nb、Ta、Dbが挙げられるが、後述する当該複合酸化物を調製する際に用いられる金属化合物(B)の安全性や入手容易性の視点からNbとTaが好ましく、光触媒活性の視点からはNbが特に好ましい。周期律表第5族元素(M5)は一種類のみであっても二種以上の複数種であってもよい。本発明のペロブスカイト型結晶構造を有する複合酸化物の結晶子径は、通常10〜35nm、好ましくは20〜35nmである。結晶子径が小さいほど光触媒活性は高まるが、10nm未満の複合酸化物を調製するためには全工程時間が長くなり経済的ではない。また結晶子径が35nmを超える場合では十分な光触媒活性を得ることができない。本発明においては光触媒活性の点から、本発明の複合酸化物は全てがペロブスカイト型結晶構造を有することが好ましいが、本発明は非
ペロブスカイト型結晶構造を有する複合酸化物の混入を排除するものでない。後述するようにペロブスカイト型結晶構造の純度よりも当該複合酸化物の調製速度を優先する場合は、一般的に光触媒活性は多少低下する。このような光触媒活性低下が許容される場合であっても、ペロブスカイト型結晶構造のXRDピーク強度および非ペロブスカイト型結晶構造のXRDピーク強度から算出される、非ペロブスカイト型結晶構造複合酸化物混入量の上限値は全体の複合酸化物量に対して15%とするのが好ましい。
【0019】
ペロブスカイト型構造は、一般にABX3の結晶構造で表される。このペロブスカイト型構造は、Aサイトの陽イオンとXサイトの陰イオンが同程度の大きさを有し、このAとXで構成される立方晶系単位格子の中にAサイトより小さい陽イオンがBサイトとして位置している。したがって、Aサイトの陽イオンは12配位となり、Bサイトの陽イオンは6配位、Xサイトの陰イオンは6配位となる。
【0020】
本発明のペロブスカイト型結晶構造を有する複合酸化物は、まず初めにアルカリ金属(M1)を構成成分とするアルカリ金属化合物(A)と周期律表第5族元素(M5)を構成成分とする金属化合物(B)を含有する混合物を水熱処理して、ペロブスカイト構造を持たない結晶性の沈殿物を形成させた後、次いで当該沈殿物を焼成処理することによって得られる。水熱処理(以下の説明では「水熱合成」と呼称する場合もある)法は、高圧の水蒸気の存在下で行なわれる無機化合物の合成および結晶を成長させる方法であり、その条件は特に限定されるものではないが、本発明においては、この水熱合成は通常塩基性条件下で行われることが特徴である。そのため、Aサイトとしては、塩基性水溶液中でイオンとして安定に存在するアルカリ金属が好ましく、かつ、12配位を取りうる原子が必要なことから、Na、K、Rb、Csが好ましいのである。ここで、Xサイトは酸素原子であり、AサイトとXサイトは同程度の大きさであることからAサイトとしては、NaまたはKのいずれかが好ましい。この条件で、Bサイトには6配位を取る5価の陽イオンが候補となるが、安全性や価格を考慮すれば、NbまたはTaのいずれかが好ましい。
以下、水熱処理(水熱合成)、次いで焼成処理の順に本発明の製造方法を詳細に説明する。
【0021】
〔水熱処理〕
本発明に係る、水熱合成で得られるペロブスカイト構造を持たない前駆体は具体的には、非常に微細な針状結晶が形成されることが好ましく、このペロブスカイト構造を持たない針状結晶が形成された場合、その次の工程の焼成処理によって、針状が分断されると同時にこの前駆体は熱をかけることによってペロブスカイト構造に変化しやすいために、最終的に結晶子径の小さい、かつ結晶性の高いペロブスカイト構造を有する複合酸化物からなる触媒が得られると考えている。
【0022】
本発明による水熱合成と焼成を経て得られたペロブスカイト構造を有する結晶は、前記のように、AサイトはNaまたはK、BサイトはNbまたはTaとするペロブスカイトである。
【0023】
水熱合成は塩基性条件下で行うため、Aサイトの金属(M1)の原料であるアルカリ金属化合物(A)としては水溶液中で塩基性を示す化合物が好ましく、特にはアルカリ金属水酸化物が好ましい。Bサイトの金属(M5)は水熱条件下で溶解するのであれば、原料である金属化合物(B)としては特に制限はないが、酸化物あるいは水酸化物が操作上好ましい。
【0024】
本発明の特徴の1つは水熱合成で形成される微結晶は、その時点では未だ基本的にペロブスカイト構造を有しないということである。すなわち、本発明においては、水熱合成では、ペロブスカイトとは異なる水和物の結晶形成に留めるのが好ましい。特にこの段階の
結晶形態は針状結晶であることが望ましく、これは、ペロブスカイト構造の結晶が得られたときの立方晶の形状とは異なる。水熱合成の時点でペロブスカイト結晶構造が形成されてしまうと、そのあとの焼成では、得られたペロブスカイト構造の結晶性を改善はできても、結晶子径を小さくすることは出来ない。
【0025】
一方で、本発明によれば、水熱合成を終わった段階で、ペロブスカイト構造ではない前駆体構造の結晶を形成できれば、そのあとに行う焼成段階において、ペロブスカイト構造への結晶変態が起こり、前駆体構造の結晶は小さく細分化されることを見出した。またそのときにペロブスカイト構造に変態し易い前駆体構造であるためにより低温でのペロブスカイト構造への変態も可能となる。その結果として、従来に比較して、結晶子径は小さいにもかかわらず、高結晶性の結晶が得られるため、本発明による得られたペロブスカイト型の酸化物は高い光触媒活性を示すことができるのである。
【0026】
水熱合成においてペロブスカイト構造ではない前駆体の特に望ましい結晶形態は針状結晶である。前駆体が好ましい針状結晶構造であるかどうかについては、その針状結晶のXRDによる構造解析、走査電子顕微鏡(SEM)による形態観察によって判断可能である。本発明においては、SEM観察により直径が0.5μm以下、好ましくは0.1μm 以下の針状結晶が得られることが望ましい。
【0027】
このような、針状結晶が得られる水熱合成条件について次に述べる。水熱合成の際の原料仕込みについては、Bサイトに入る周期律表第5族元素(M5)に対するAサイトに入るアルカリ金属(M1)の仕込原子比が1以上であれば、その水熱条件にも左右される場合があるが、通常は望ましい結晶が形成される。また、一般に塩基性を示すアルカリ金属(M1)はAサイトの金属と同じであることが望ましく、そのため、前記の仕込原子比は2.1以上であることが好ましい。仕込原子比の上限値は特に制限されないが、その溶解度や、結晶析出速度などを考慮すれば、不必要に高くすることはあまり意味がなく、従って、仕込原子比は通常2.1〜5.5、好ましくは2.1〜5.0、更に好ましくは2.5〜5.0の範囲である。
【0028】
本発明においては、水熱処理する溶液中の[OH−]イオン濃度も結晶成長には影響する。
[OH−]イオン濃度は低すぎると結晶生成に時間がかかり、高すぎると短時間で結晶変態が進みすぎて構造制御が困難となり、ペロブスカイト構造にまで進んでしまうこともあるので、経済性や操作性を考慮すれば[OH−]濃度は通常、0.2〜2.5モル/リットル、好ましくは0.2〜2.5モル/リットルである。更に、結晶を形成する金属原料の仕込み量も同様に結晶形態に影響する。Bサイトの金属は酸化物などの化合物で仕込むため、仕込み時には懸濁液となるが、水熱反応後に得られる前駆体結晶として50〜200g/リットルの濃度範囲とするのが生産効率、及び再現性を考慮すれば望ましい。
【0029】
本発明において、水熱合成温度は重要な因子の1つである。この温度が低すぎると結晶成長が進まないので好ましくないが、逆に高すぎると、結晶変態の速度を制御できなくなり、望ましい結晶構造が得られない場合がある。実生産での操作を考慮すれば、水熱合成温度は、145〜178℃、好ましくは150〜175℃とすることが望まれる。この温度であれば低すぎて結晶生成が進まないということもなく、また、結晶がペロブスカイト構造を取るということもなく、目的とする前駆体結晶が得られるので好ましい。この水熱温度が決まると圧力は自己発生蒸気圧よって従属的に決まるが、更に、加圧することは結晶成長には大きく影響しないため加圧操作は任意である。但し、通常は経済性を考えて、温度上昇による自己発生蒸気圧で反応を行う。水熱合成時間は、短すぎると、結晶化が不十分となり好ましくないが、長くする分には特に影響はない。反応の効率や操作性等を考慮すれば、好ましい反応時間は8〜200時間、更に好ましくは10〜50時間である。
水熱合成で得られた前駆体結晶を含む沈殿溶液は、このあと、溶液から沈殿物を分離・回収するためにろ過する。ここで回収された沈殿物は余剰のアルカリ分を除去するため、得られた沈殿物重量の40〜200倍の水で洗浄した後、再びろ過・回収される。洗浄方法としては、洗浄水量を数回分に分けて洗浄・ろ過を繰り返す方法でもよく、最終的にこの水洗浄の際の濾液のpHが8以下となればよい。このようにして回収された結晶は、60〜120℃で一晩乾燥された後、焼成で温度が均一になるよう、適宜、解砕する。
【0030】
〔焼成処理〕
このようにして得られた前駆体結晶は、次に目的とするペロブスカイト構造にするために焼成処理が行われる。一般に、固相反応によってペロブスカイト構造の結晶を得るためには、少なくとも600℃以上の温度で20時間以上焼成することが必要であるが、本発明においては、ペロブスカイト構造に変化しやすい前駆体構造を予め形成させているため、その焼成温度は必ずしも結晶成長が起こるような高温を必要としない。本発明においては、その焼成温度は、固相反応に必要な温度より低くすることが可能であり、通常360〜830℃、好ましくは370〜800℃で行えばよい。水熱合成で得られた前駆体結晶の焼成は、この温度の範囲であれば、ペロブスカイト構造への変化が十分に起こらないということもなく、また、ペロブスカイト構造が結晶成長して、結晶子径が大きくなるということもない。焼成時間は特に限定されないが、結晶変態に十分な時間を与え、かつ経済的な時間を考慮すれば、通常5〜20時間、好ましくは5〜12時間焼成するのが好ましい。焼成雰囲気については特に制限はなく、還元雰囲気でも、不活性雰囲気でも、酸化性雰囲気でも行うことは可能である。一般的には、設備が最も簡単な大気中での焼成が好んで採用される。
【0031】
得られたペロブスカイト型酸化物を光触媒として使用する場合には、適宜、その使用形態に応じて粉砕工程にかけるなどした後、水素生成反応に用いられる。
本発明のペロブスカイト型の酸化物(母材)は、このままでは、可視光活性を持たないが、その紫外光活性は非常に高く、先に述べた可視光活性化の方策を施すことにより、可視光化することは可能である。本発明によるペロブスカイト型の酸化物の可視光化の処方については、従来から知られている処方が特に問題なく適用可能である。
【実施例】
【0032】
以下、実施例に基づいて本発明によるペロブスカイト型の酸化物、およびその光触媒としての活性評価結果について、さらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0033】
次に、本発明のペロブスカイト型結晶構造を有する複合酸化物を光触媒として用いる場合の活性評価活性評価方法について説明する。本発明の実施例および比較例で得られた複合酸化物は、図1に示すような閉鎖循環式のガラス製水素生成反応装置を用いて、メタノールを犠牲剤とした酸化還元反応での水素生成反応(2H++2e−→H2)に対する触媒活性で評価した。
【0034】
まず、300mlの反応容器に水を108mLとメタノール12mLを入れ、10体積%の濃度になるようにメタノール水溶液を調製した後、ペロブスカイト型酸化物の光触媒を100mg加えて、反応溶液を十分に撹拌した。次に、助触媒としてPtをこの光触媒に光析出担持させるため、塩化白金酸水溶液をPtとして0.1重量%担持できるよう添加後、反応容器を閉鎖循環式の水素生成反応装置に接続し、攪拌しながら系内を真空脱気した後、Arガスを400Torr導入し、300Wキセノンランプ(朝日分光:MAX−302、UVタイプミラーモジュール、石英製ファイバー、石英製ロッドレンズ)を光源として、溶液の上から石英製ガラス窓を通して光照射を行った。光照射により生成した気体は、オンラインのガスクロマトグラフ(島津:GC−8A、MS−5Aカラム、TCD、Arキャリアー)で分析し、水素発生量を定量した。
【0035】
〔実施例1〕
200mLのテフロン(登録商標)コートしたステンレス製反応容器に、水100mLおよび水酸化ナトリウム(関東化学製)4.00 gからなる水溶液と 、酸化ニオブ:Nb2O5(アルドリッチ製)4.61gを入れて、十分に攪拌する。(Na:Nb=1.00:0.35(原子比)、アルカリイオン[OH−]濃度=1.0モル/リットル)次に、反応容器を水熱反応装置に入れ、160℃、20時間、水熱処理する。水熱処理で得られた沈殿物は、ろ液のpHが8以下になるまで水洗浄、ろ過を行い、80℃で一晩乾燥、解砕した。
【0036】
得られた沈殿物はXRD測定、及びSEM観察により、ペロブスカイト構造ではない針状結晶であることを確認した。XRDの結果を図2、SEM写真を図3に示す。
得られた針状結晶を、大気中、400℃、10時間焼成した。焼成後、室温まで放冷、解砕した。その後、ろ液のpHが8以下になるまで水洗浄、ろ過を行い、乾燥後、触媒を得た。水熱処理、及び焼成条件を表1に示す。
【0037】
得られた触媒は、XRD測定において、結晶子径が25nmで、単一のペロブスカイト構造を示した。XRDの結果を図4、SEM写真を図5に示す。結晶子径は、XRD測定で得られた回折ピークの半値幅から、シェラーの式を使って計算した。
先に述べた触媒の活性評価方法に従って、水素生成反応を5時間行った。得られた水素生成反応の経時変化から、水素が定常的に生成したときの速度を水素生成速度とした。
水素生成活性とXRD測定の結果を、表2に示す。
【0038】
〔実施例2〜8〕
表1に記入した条件の変更以外は実施例1と同様にして、触媒調製を行った。
各実施例の結果を表2に示す。
【0039】
〔比較例1〕[固相法製造触媒]
炭酸ナトリウム:Na2CO3(関東化学製)粉末を1.11g、酸化ニオブ:Nb2O5(アルドリッチ製)粉末を2.66g(Na:Nb=1.05:1.00の原子比)秤量、混合後、大気中、600℃、20時間焼成する。焼成後、室温まで放冷してから、解砕する。未反応のアルカリを除去するために、解砕した粉末を、100mLの水に懸濁させ、30分間攪拌する。この懸濁液から、粉末を分離・回収した後、80℃で一晩乾燥させて、触媒を得た。焼成条件を表1に示す。
【0040】
得られた触媒は、XRDにおいて、結晶子径が37nmで、単一のペロブスカイト構造を示す。XRDの結果を図6、SEM写真を図7に示す。
実施例1と同様にして水素生成活性評価を行った。水素生成活性とXRD測定の結果を、表2に示す。
【0041】
〔比較例2〕[水熱法製造触媒]
200mLテフロン(登録商標)コートしたステンレス製反応容器に、水100mLと水酸化ナトリウム(関東化学製)8.00 gからなる水溶液と 、酸化ニオブ:Nb2O5(アルドリッチ製)4.61gを入れて、十分に攪拌する。(Na:Nb=2.00:0.35(原子比)、アルカリイオン[OH−]濃度=2.0モル/リットル)次に、反応容器を水熱反応装置に入れ、160℃、20時間、水熱処理する。水熱処理で得られた沈殿物は、ろ液のpHが8以下になるまで水洗浄、ろ過を行い、80℃で一晩乾燥、解砕した。得られた沈殿物はXRD測定により、結晶子径が41nmの単一のペロブスカイト構造であることを確認した。XRDの結果を図8、SEM写真を図9に示す。
【0042】
得られたペロブスカイト構造の沈殿物を、大気中、400℃、10時間焼成した。焼成後、室温まで放冷、解砕した。その後、ろ液のpHが8以下になるまで水洗浄、ろ過を行い、乾燥後、触媒を得た。水熱処理、及び焼成条件を表1に示す。
得られた触媒は、XRD測定において、単一のペロブスカイト構造を維持しており、結晶子径が41nmだった。XRDの結果を図10、SEM写真を図11に示す。
実施例1と同様にして水素生成活性評価を行った。水素生成活性とXRD測定の結果を、表2に示す。
【0043】
〔比較例3〜12〕
表1に記入した条件の変更以外は比較例2と同様にして、触媒調製を行った。
各実施例の結果を表2に示す。
【0044】
添付した図12からも明瞭に理解されるように、本願発明の結晶子径が35nm以下に制御された複合酸化物を用いた紫外光下での水分解触媒活性は、比較例(水熱処理でペロブスカイトができたもの、比較例2〜5、10、11)に比べて高活性である。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明によるペロブスカイト型の酸化物からなる光触媒は、従来得られていた触媒に比較して、紫外光による水素生成活性が高い。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ金属(M1)と周期律表第5族元素(M5)を構成成分とする、結晶子径が10〜35nmの範囲にあることを特徴とするペロブスカイト型結晶構造を有する複合酸化物。
【請求項2】
アルカリ金属(M1)が、NaおよびKから選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1記載の酸化物。
【請求項3】
周期律表第5族元素(M5)が、NbおよびTaから選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1記載の複合酸化物。
【請求項4】
アルカリ金属(M1)を構成成分とするアルカリ金属化合物(A)と周期律表第5族元素(M5)を構成成分とする金属化合物(B)を含有する混合物を水熱処理して、ペロブスカイト構造を持たない結晶性の沈殿物を形成させた後、次いで焼成処理して得られることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の複合酸化物。
【請求項5】
水熱処理を145〜178℃の温度で実施することを特徴とする、請求項4に記載の複合酸化物。
【請求項6】
周期律表第5族元素(M5)に対するアルカリ金属(M1)の仕込み原子比が、2.1〜5.5となるように、アルカリ金属化合物(A)の水溶液中で金属化合物(B)を水熱処理することを特徴とする、請求項4または5に記載の複合酸化物。
【請求項7】
焼成処理を360〜830℃で実施することを特徴とする請求項4〜6のいずれか一項に記載の複合酸化物。
【請求項8】
請求項1〜7に記載のペロブスカイト型結晶構造を有する複合酸化物からなる光触媒。
【請求項9】
アルカリ金属(M1)を構成成分とするアルカリ金属化合物(A)と周期律表第5族元素(M5)を構成成分とする金属化合物(B)を含有する混合物を水熱処理して、ペロブスカイト構造を持たない結晶性の沈殿物を形成させた後、焼成することを特徴とするペロブスカイト型結晶構造を有する複合酸化物の製造方法。
【請求項10】
アルカリ金属(M1)が、NaおよびKから選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項9記載の製造方法。
【請求項11】
周期律表第5族元素(M5)が、NbおよびTaから選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項9に記載の製造方法。
【請求項12】
水熱処理を145〜178℃の温度で実施することを特徴とする、請求項6に記載のペロブスカイト構造の酸化物の製造方法。
【請求項13】
周期律表第5族元素(M5)に対するアルカリ金属(M1)の仕込み原子比が、2.1〜5.5となるように、アルカリ金属化合物(A)の水溶液中で金属化合物(B)を水熱処理することを特徴とする、請求項9〜12のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項14】
焼成処理を360〜830℃で実施することを特徴とする、請求項6に記載のペロブスカイト構造の酸化物の製造方法。
【請求項1】
アルカリ金属(M1)と周期律表第5族元素(M5)を構成成分とする、結晶子径が10〜35nmの範囲にあることを特徴とするペロブスカイト型結晶構造を有する複合酸化物。
【請求項2】
アルカリ金属(M1)が、NaおよびKから選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1記載の酸化物。
【請求項3】
周期律表第5族元素(M5)が、NbおよびTaから選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1記載の複合酸化物。
【請求項4】
アルカリ金属(M1)を構成成分とするアルカリ金属化合物(A)と周期律表第5族元素(M5)を構成成分とする金属化合物(B)を含有する混合物を水熱処理して、ペロブスカイト構造を持たない結晶性の沈殿物を形成させた後、次いで焼成処理して得られることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の複合酸化物。
【請求項5】
水熱処理を145〜178℃の温度で実施することを特徴とする、請求項4に記載の複合酸化物。
【請求項6】
周期律表第5族元素(M5)に対するアルカリ金属(M1)の仕込み原子比が、2.1〜5.5となるように、アルカリ金属化合物(A)の水溶液中で金属化合物(B)を水熱処理することを特徴とする、請求項4または5に記載の複合酸化物。
【請求項7】
焼成処理を360〜830℃で実施することを特徴とする請求項4〜6のいずれか一項に記載の複合酸化物。
【請求項8】
請求項1〜7に記載のペロブスカイト型結晶構造を有する複合酸化物からなる光触媒。
【請求項9】
アルカリ金属(M1)を構成成分とするアルカリ金属化合物(A)と周期律表第5族元素(M5)を構成成分とする金属化合物(B)を含有する混合物を水熱処理して、ペロブスカイト構造を持たない結晶性の沈殿物を形成させた後、焼成することを特徴とするペロブスカイト型結晶構造を有する複合酸化物の製造方法。
【請求項10】
アルカリ金属(M1)が、NaおよびKから選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項9記載の製造方法。
【請求項11】
周期律表第5族元素(M5)が、NbおよびTaから選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項9に記載の製造方法。
【請求項12】
水熱処理を145〜178℃の温度で実施することを特徴とする、請求項6に記載のペロブスカイト構造の酸化物の製造方法。
【請求項13】
周期律表第5族元素(M5)に対するアルカリ金属(M1)の仕込み原子比が、2.1〜5.5となるように、アルカリ金属化合物(A)の水溶液中で金属化合物(B)を水熱処理することを特徴とする、請求項9〜12のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項14】
焼成処理を360〜830℃で実施することを特徴とする、請求項6に記載のペロブスカイト構造の酸化物の製造方法。
【図1】
【図2】
【図4】
【図6】
【図8】
【図10】
【図12】
【図3】
【図5】
【図7】
【図9】
【図11】
【図2】
【図4】
【図6】
【図8】
【図10】
【図12】
【図3】
【図5】
【図7】
【図9】
【図11】
【公開番号】特開2013−63873(P2013−63873A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−203141(P2011−203141)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】
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