説明

ペンジメタリンとメタザクロルの結晶複合体

本発明は、ペンジメタリンとメタザクロルの結晶複合体に関する。本発明はまた、前記複合体の農業上有用な組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はペンジメタリンとメタザクロルの結晶複合体に関する。本発明はまた、これらの複合体の農業上有用な組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
殺菌剤、除草剤および殺虫剤または殺ダニ剤などの農業上活性な有機化合物は、通常1種以上の農業上活性な有機化合物および好適な製剤添加物を含む液体または固体の製剤として市販されている。いくつかの理由から、農業上活性な有機化合物が固体の状態で存在するタイプの製剤、例えば、ダスト、粉末または顆粒などの固体製剤および懸濁液濃縮物(すなわち、活性な有機化合物を水性媒体中に分散する微細な粒子として含有する水性組成物)などの液体製剤が好ましい。懸濁液濃縮物は、注いだりポンプで汲み上げたりすることが可能で、施用に必要な所望の濃度まで水により容易に希釈できるという液体の望ましい特性を有する。エマルション濃縮物とは異なり、懸濁液濃縮物は水に非混和性の有機溶媒の使用を必要としないというさらなる利点を有する。
【0003】
このような固体状態の製剤のためには、農業上活性な有機化合物は十分に高い融点を有する結晶性物質でなければならない。残念なことに、これらの有機化合物の多くはアモルファス物質および/または低融点物質であるために、加工が困難であり、製剤が不安定になり、また微細な粒子の固化および沈降のために施用の信頼性が失われる。除草剤ペンジメタリン(pendimethalin)(N-(1-エチルプロピル)-2,6-ジニトロ-3,4-ジメチルアニリンの一般名)の場合には、ペンジメタリンが55〜57℃の低い融点を有し、さらに少量でも不純物または製剤添加剤が存在すると融点低下が生じるために、これらの問題が生じると言われている。
【0004】
ペンジメタリンの製剤に関するさらなる問題は、ペンジメタリンが経時により大きい結晶を形成する傾向を有することが原因であり、そのためにペンジメタリン粒子の沈降が増大し、それが不安定性、加工の困難および使用の信頼性の低下につながる。これらの問題は、ペンジメタリンの水性懸濁液濃縮物を35℃を超える温度で、特に40℃を超える温度で保存した場合に最も重大となる。
【0005】
US 4,874,425には、安定剤としてリグニンスルホン酸ナトリウムまたはカルシウムを含むペンジメタリンの水性濃縮物組成物が開示されている。
【0006】
EP 249 770には、融解したペンジメタリンを高温の水中に乳化し、界面活性剤および消泡剤を加えて約2〜10μmの液滴径を有するペンジメタリン液滴を形成し、高温のエマルションを攪拌しながら室温に冷却することにより調製されるペンジメタリンの安定な懸濁液濃縮物が開示されている。
【0007】
EP-A-823 993には、pH感受性高分子材料によりマイクロカプセル化されたペンジメタリンを含有する水性マイクロカプセル組成物が教示されている。
【0008】
低融点有機物質の水性製剤への適合性を改善するための別のアプローチは、より高い融点を有するそれらの薬剤の結晶複合体を提供することにより、その微細な粒子が安定な水性懸濁液として存在できるようにすることである。
【0009】
有機化合物の結晶複合体は、共結晶とも呼ばれるが、2種以上の異なる有機化合物から成る多成分結晶または結晶性物質であり、通常25℃で固体であるか、少なくとも不揮発性油(25℃で蒸気圧が1 mbar未満)である。結晶複合体(または共結晶)において、2種以上の異なる有機化合物は明確な結晶構造を有する結晶性物質を形成する。すなわち、2種以上の有機化合物は結晶構造内で明確な相対的空間配置を有する。
【0010】
共結晶において、2種以上の異なる化合物は、水素結合などの非共有結合、および可能性としてはπスタッキング、双極子-双極子相互作用およびファンデルワールス相互作用を含む他の非共有結合分子間力により相互作用する。
【0011】
結晶格子中の充填を設計または予測することはできないが、共結晶においていくつかの超分子シントンを認識することに成功した。用語「超分子シントン」は、非共有結合相互作用を介して互いに結合する通常2種の化合物から成る存在であると理解されるべきである。共結晶において、これらのシントンはさらに結晶格子中に充填されて分子結晶を形成する。分子認識はシントンの形成の一つの条件である。しかしながら、共結晶はまた、エネルギー的に有利でなければならない。すなわち、分子は典型的には純粋な成分の結晶として非常に効率良く充填され得るために共結晶の形成を妨げるので、共結晶の形成においてエネルギー的な利益も必要である。
【0012】
共結晶において、有機化合物の一方が共結晶形成剤、すなわちそれ自体が容易に結晶性物質を形成し、それ自体では必ずしも結晶相を形成しない他の有機化合物と共結晶を形成することができる化合物として作用する可能性がある。
【0013】
医薬活性化合物の結晶複合体は、当業界においてさまざまな状況で報告されており、例えば、US2003/224006、WO03/074474、WO2005/089511、EP1608339、EP1631260およびWO2006/007448に記載されている。
【0014】
メタザクロル(Metazachlor)(2-クロロ-N-(2,6-ジメチルフェニル)-N-(1H-ピラゾール-1-イルメチル)アセトアミドの一般名)は、式
【化1】

【0015】
で表される周知の結晶性除草剤であり、3つの異なる多型で存在する。熱力学的に最も安定なものは、EP 411408により公知の単斜晶系の形である。多型はさらに、U. J. Griesser, D. Weigand, J. M. Rollinger, M. Haddow, E. Gstrein, J. Therm. Anal. Calorim., 77 (2004) 511およびD. Weigand, Ph.D. thesis, Innsbruck, 2001に記載されている。報告された融点は76℃〜83℃の範囲である。メタザクロルはクロルアセトアニリドおよびピラゾール除草剤のグループに属する。
【0016】
ペンジメタリンは、式
【化2】

【0017】
で表される確立された結晶性除草剤であり、Stocktonらによれば、三斜晶系および単斜晶系結晶構造で存在する(G. W. Stockton, R. Godfrey, P. Hitchcock, R. Mendelsohn, P. C. Mowery, S. Rajan, A. F. Walker, J. Chem. Soc., Perkin Trans. 2, 1998, 2061を参照されたい)。報告された融点はそれぞれ57℃および55℃の範囲である。ペンジメタリンはジニトロアニリン除草剤のグループに属する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】US 4,874,425
【特許文献2】EP 249 770
【特許文献3】EP-A-823 993
【特許文献4】US2003/224006
【特許文献5】WO03/074474
【特許文献6】WO2005/089511
【特許文献7】EP1608339
【特許文献8】EP1631260
【特許文献9】WO2006/007448
【特許文献10】EP 411408
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】U. J. Griesser, D. Weigand, J. M. Rollinger, M. Haddow, E. Gstrein, J. Therm. Anal. Calorim., 77 (2004) 511
【非特許文献2】D. Weigand, Ph.D. thesis, Innsbruck, 2001
【非特許文献3】G. W. Stockton, R. Godfrey, P. Hitchcock, R. Mendelsohn, P. C. Mowery, S. Rajan, A. F. Walker, J. Chem. Soc., Perkin Trans. 2, 1998, 2061
【発明の概要】
【0020】
本発明の発明者らは、驚くべきことに、メタザクロルがペンジメタリンと結晶複合体を形成する好適な共結晶相手であることを見いだした。そこで、本発明はペンジメタリンおよびメタザクロルを含む、特にペンジメタリンおよびメタザクロルから成る結晶複合体に関する。
【0021】
本発明の結晶複合体は明確な結晶構造を有し、妥当な高融点を有するので、活性物質が固体の状態で存在する固体または液体製剤にこの複合体を組み込むことが容易になる。さらに、この結晶複合体の製剤は、特に別々の固体化合物としてのペンジメタリンとメタザクロルの混合物を含む製剤と比較して、増大した安定性を示す。
【0022】
本発明の結晶複合体の形成は、ペンジメタリンおよびメタザクロルのエネルギー的に有利な結晶格子を形成する能力に起因し、結晶格子の中でそれらは互いに明確な相対的空間的規則に従って配列しているので、2つの分子の会合は結晶構造の超分子シントンであると推測される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】メタザクロルとペンジメタリンの共結晶のX線粉末回折を示す図である。
【図2】単結晶のX線分析によるメタザクロル(左)とペンジメタリン(右)の共結晶の結晶構造の非対称単位を示す(非炭素および非水素原子を示す)図である。
【図3】10℃/分の加熱速度で、57℃の開始点および約62℃のピーク最大値を有する吸熱融解ピークを示すメタザクロルとペンジメタリンの共結晶のDSC曲線を示す図である。
【図4】メタザクロルとペンジメタリンの共結晶のTGAサーモグラムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の結晶複合体において、メタザクロルとペンジメタリンのモル比は、一般に0.5:1〜2:1、好ましくは0.8:1〜1.25:1の範囲である。特に、前記モル比は0.9:1〜1.1:1、とりわけ約1:1である。偏差も可能であるが、偏差は一般に20 mol%以下、好ましくは10 mol%以下である。
【0025】
結晶複合体は、X線粉末回折法(PXRD)ならびに熱化学分析、例えば熱重量分析(TGA)および示差走査熱量測定(DSC)を含む、結晶性物質の分析に使用される標準的な分析手段により、結晶性メタザクロルと結晶性ペンジメタリンの単純な混合物と識別することができる。メタザクロルおよびペンジメタリンの相対的な量は、例えばHPLCまたは1H-NMR分光法により決定することができる。
【0026】
メタザクロルとペンジメタリンの結晶複合体は、25℃(Cu放射、1.5406Å)で、純粋な化合物に特徴的な反射が消失したX線粉末回折を示す。特に、メタザクロルとペンジメタリンの結晶複合体は、下記の表1に2θ値または格子面間隔dとして記載する反射のうち、少なくとも4、好ましくは少なくとも6、特に少なくとも8、より好ましくはすべてを示す。
【0027】
表1:メタザクロルとペンジメタリンの結晶複合体のPXRD (25℃、Cu放射、1.5406Å)
【表1】

【0028】
メタザクロルとペンジメタリンの結晶複合体の単結晶の研究により、基本結晶構造が三斜晶であり、空間群P-1を有することが示された。構造分析により、結晶複合体は、メタザクロルおよびペンジメタリンを1分子ずつ含む非対称単位を有するメタザクロルおよびペンジメタリンの1:1混合物であることが明らかになった。メタザクロルおよびペンジメタリン分子の結晶内の空間配置は主にエネルギー的に有利な3次元充填ならびにメタザクロルおよびペンジメタリン分子の間の双極子-双極子相互作用および弱い水素結合により決定されると思われる。複合体の結晶構造の特性データを表2に示す。
【0029】
表2:メタザクロルとペンジメタリンの結晶複合体の結晶学的データ
【表2】

【0030】
a、b、c = 単位格子のエッジの長さ
α、β、γ = 単位格子の角度
Z = 単位格子中の分子の数
【0031】
メタザクロルとペンジメタリンの結晶複合体のDSC測定は、55〜57℃の開始点および59〜62℃のピーク最大値を有する吸熱融解ピークを示す。したがって、結晶複合体の融点は公知のペンジメタリン修飾物のそれと同様であり、メタザクロルの融点よりも約14〜21℃低い。
【0032】
本発明の結晶複合体は、メタザクロルおよびペンジメタリンを、溶液もしくはスラリーから、またはメタザクロルおよびペンジメタリンを含む溶融物から共結晶化することにより調製することができる。同様に、ペンジメタリンの水性懸濁液をメタザクロルの水性懸濁液と、好ましくは温度を上げて、例えば30℃よりも高い温度で混合する(combining)(または、それぞれ混合する(mixing))ことを含む方法により、本発明の結晶複合体を調製することも可能である。
【0033】
メタザクロルとペンジメタリンの結晶複合体の調製方法の好ましい実施形態において、複合体は、メタザクロルおよびペンジメタリンの有機溶媒中のスラリーから、または特にメタザクロルおよびペンジメタリンの水と有機溶媒との混合物中のスラリーから得られる。そのため、この方法はメタザクロルおよびペンジメタリンを有機溶媒または水と有機溶媒との混合物に懸濁することを含む(いわゆるスラリー法)。
【0034】
スラリー法に好ましい有機溶媒または水と有機溶媒との混合物は、ペンジメタリンとメタザクロルが同程度の溶解度を有するものである。同程度の溶解度とは、溶媒または溶媒系における個々の化合物の溶解度が20倍以下、特に10倍以下異なることを意味する。しかしながら、個々の化合物の溶解度が同程度でない溶媒または溶媒系を使用することも可能である。この場合、それぞれの溶媒または溶媒系においてより高い溶解度を有する化合物を過剰に使用することが好ましい。
【0035】
スラリー法に好ましい有機溶媒は、少なくとも部分的に水混和性であるもの、すなわち、室温で10% v/v以上、より好ましくは20% v/v以上の水に対する混和性を有するもの、およびそれらの混合物である。同様に好ましいのは、前記の少なくとも部分的に水混和性の溶媒と室温で10% v/v未満の水混和性を有する有機溶媒との混合物である。好ましくは、有機溶媒は、有機溶媒の総量に対して80% v/v以上の少なくとも1種の少なくとも部分的に水混和性の有機溶媒を含む。
【0036】
室温で10%以上の水混和性を有する好適な溶媒には下記のものが含まれるが、これらに限定されない。
【0037】
1. C1〜C4-アルカノール、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノールまたはイソプロパノール;
2. C1〜C3-カルボン酸のアミド、N-メチルアミドおよびN,N-ジメチルアミド、例えば、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトアミドおよびN,N-ジメチルアセトアミド;
3. 合計7個の炭素原子を有する5または6員ラクタム、例えば、ピロリドン、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン、N-イソプロピルピロリドン、N-ヒドロキシエチルピロリドン、ピペリドン、N-メチルピペリドン、カプロラクタム、またはN-メチルカプロラクタム;
4. ジメチルスルホキシドおよびスルホラン;
5. 3〜6個の炭素原子を有するケトン、例えば、アセトン、2-ブタノン、シクロペンタノンおよびシクロヘキサノン;
6. アセトニトリルまたはプロピオニトリル;
7. 5または6員ラクトン、例えば、γ-ブチロラクトン;
8. ポリオールおよびポリエーテルオール、例えば、グリコール、グリセロール、ジメトキシエタン、エチレンジグリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル等;
9. 3〜5個の炭素原子を有する環状カーボネート、例えば、プロピレンカーボネートおよびエチレンカーボネート;ならびに
10.ジメチル(ポリ)C2〜C3-アルキレングリコールエーテル、例えば、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、低分子量ポリエチレングリコールおよび低分子量ポリプロピレングリコール(MW ≦ 400)。
【0038】
群1の有機溶媒およびそれらの水との混合物がより好ましい。水との混合物において、有機溶媒と水との相対量は2:1〜1:200 (v/v)、特に1:5〜1:100 (v/v)の範囲であってよい。
【0039】
スラリー法は、メタザクロルおよびペンジメタリンを有機溶媒中または溶媒/水混合物中に懸濁することにより簡単に実施することができる。メタザクロル、ペンジメタリンおよび溶媒または溶媒/水混合物の相対量は、所定の温度で懸濁液が得られるように選択する。ペンジメタリンおよびメタザクロルが完全に溶解することは避けなければならない。特に、メタザクロルおよびペンジメタリンは、溶媒または溶媒/水混合物1リットルあたり1〜500 g、より好ましくは10〜400 gの量で懸濁する。
【0040】
スラリー法におけるメタザクロルおよびペンジメタリンの相対モル量は、選択された溶媒または溶媒系におけるメタザクロルおよびペンジメタリンの相対的溶解度に依存して、1:100〜100:1、好ましくは1:10〜10:1の範囲である。純粋なメタザクロルおよびペンジメタリンの溶解度が同程度である溶媒系において、好ましいモル比は2:1〜1:2、特に1.5:1〜1:1.5、とりわけ約1:1(すなわち、1.1:1〜1:1.1)である。ペンジメタリンがより高い溶解度を有する溶媒系においては過剰なペンジメタリンを使用する。これは反対にメタザクロルに関しても当てはまる。一方の成分が結晶複合体の化学量論に関して過剰に存在する場合、結晶複合体と過剰に存在する化合物との混合物が得られる可能性があるが、特に過剰に使用した化合物が選択された溶媒系において高い溶解度を有する場合には、過剰な化合物は通常母液に溶解したままである。製剤化の目的で、過剰のペンジメタリンまたはメタザクロルの存在は許容され得る。特に、過剰のメタザクロルの存在は安定性の問題を引き起こさない。純粋な結晶複合体を調製するために、メタザクロルおよびペンジメタリンは形成される複合体の化学量論に近い相対モル量で使用され、通常化学量論的に必要とされる量を基準として50 mol%を超える偏差を有しない。
【0041】
スラリー法は、通常、5℃以上、好ましくは10℃以上、特に20℃以上、例えば5〜80℃、好ましくは10〜55℃、特に20〜40℃の温度で実施する。
【0042】
スラリー法により結晶複合体を形成するために必要な時間は、温度、溶媒の種類に依存し、一般に2時間以上、およびしばしば6時間以上である。いずれの場合にも、1週間後には完全な変換が達成されるが、通常、完全な変換に必要な時間は24時間以下である。
【0043】
本発明の一実施形態によれば、スラリー法は、種結晶としてメタザクロルとペンジメタリンの共結晶を加えて実施する。メタザクロルおよびペンジメタリンの合計重量に対して、通常0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜5%、より好ましくは0.3〜2重量%の種結晶を使用する。
【0044】
本発明の別の好ましい実施形態において、結晶複合体は、ペンジメタリンおよびメタザクロルを水性液体中で混合することを含む方法により調製される。水性液体中でのペンジメタリンとメタザクロルとの混合は、例えば、ペンジメタリンの水性懸濁液をメタザクロルの水性懸濁液と混合することにより、または固体のメタザクロルをペンジメタリンの水性懸濁液に加えることにより、またはペンジメタリンをメタザクロルの水性懸濁液に加えることにより、またはペンジメタリンおよびメタザクロルを水性液体に懸濁することにより達成し得る。それにより、水性液体中に固体物質の懸濁液としてメタザクロルおよびペンジメタリンを含有する水性懸濁液が得られる。このようにして得られた水性懸濁液は、懸濁した粒子の形のペンジメタリンとメタザクロルの結晶複合体、および場合により懸濁した粒子としての過剰のペンジメタリンおよび/またはメタザクロルを含有する。
【0045】
水性液体中でのペンジメタリンとメタザクロルとの混合は、好ましくはそうして得られたペンジメタリンおよびメタザクロルを含有する水性懸濁液にせん断力を加えながらおこなう。せん断力を加えると、通常メタザクロルとペンジメタリンの結晶複合体への変換が促進される。この特に好ましい実施形態を、以下に「せん断法」とも呼ぶ。
【0046】
水性液体中でのペンジメタリンとメタザクロルの混合および/またはそうして得られた水性液体混合物へのせん断力の適用は、好ましくは15℃以上の温度で、しばしば20℃以上の温度で、好ましくは30℃以上、特に35℃以上、例えば15℃〜80℃、好ましくは20℃〜60℃、特に30℃〜55℃または35℃〜50℃の温度で実施する。
【0047】
通常、メタザクロルは液体媒体中に固体粒子として存在する。しかしながら、ペンジメタリンは工程の間に固体である必要はなく、温度がペンジメタリンの融点付近または融点よりも高いことが有利であり得る。高い温度で液体混合物にせん断力を加えると、結晶複合体の形成が促進される可能性がある。
【0048】
メタザクロルとペンジメタリンとを混合する水性液体において、液体媒体の主成分は水であり、これは20% v/v以下の水混和性溶媒、特に群1および/または8の溶媒を主成分として含有し得る。それとは別に、水性液体は、液体懸濁液濃縮物中に通常存在する添加剤を含有してもよい。
【0049】
メタザクロルとペンジメタリンとを水性液体中で混合することにより得られる水性懸濁液は、メタザクロルおよびペンジメタリンを、得られる懸濁液の総重量に対して5〜70重量%、特に10〜60重量%、より好ましくは15〜50重量%の量で含有し得る。
【0050】
メタザクロルとペンジメタリンとを水性液体中で混合することにより得られた水性懸濁液は、メタザクロルおよびペンジメタリンを、1:5〜20:1、好ましくは1:1.2〜15:1の範囲の相対モル比で含有し得る。一方の成分が結晶複合体の化学量論に関して過剰である場合には結晶複合体と過剰に存在する化合物との混合物が得られるであろう。製剤化の目的で、過剰なメタザクロルまたはペンジメタリンの存在は許容される。特に、過剰なメタザクロルの存在は安定性の問題を引き起こさない。しかしながら、水性懸濁液中のペンジメタリンの量は、混合物中に存在するメタザクロルの量を基準として重量で20 mol%を超えて、特に10 mol%を超えて過剰にならない。したがって、本発明は特に、メタザクロルおよびペンジメタリンの一方または両方が製剤中に複合体化しない形で存在する場合には、製剤中の複合体化しないペンジメタリンの量が20 mol%、特に10 mol%を超えないことを条件とする、本発明の結晶複合体を含有する水性製剤に関する。
【0051】
メタザクロルとペンジメタリンとを水性液体中で混合することにより得られる水性懸濁液の液体媒体は、液体懸濁液濃縮物中に通常存在する添加剤を含んでもよい。好適な添加剤は以下に記載するが、作物保護組成物に通常使用される界面活性剤、特にアニオン性または非イオン性乳化剤、湿潤剤および分散剤、さらに消泡剤、凍結防止剤、pH調節剤、安定剤、固化防止剤、染料および殺生物剤(保存剤)が挙げられる。好ましくは、液体媒体は粘度修正剤(増粘剤)を含まない。界面活性剤の量は、水性懸濁液の総重量に対して、一般に0.5〜20重量%、特に1〜15重量%、特に好ましくは1〜10重量%である。凍結防止剤の量は、液体媒体、メタザクロルおよびペンジメタリンの総重量に対して10重量%以下、特に20重量%以下、例えば0.5〜20重量%、特に1〜10重量%であり得る。凍結防止剤および界面活性剤以外の添加剤は、液体媒体、メタザクロルおよびペンジメタリンの総重量に対して0〜5重量%の量で存在し得る。
【0052】
結晶複合体の形成に必要な時間は、加えられるせん断力および温度に公知の方式で依存し、当業者が標準的な実験により決定することができる。メタザクロルおよびペンジメタリンを含有する水性懸濁液における結晶複合体の形成には、例えば、10分〜48時間の範囲の時間が好適であることが見いだされているが、より長い時間も考えられる。0.5〜24時間のせん断時間が好ましい。
【0053】
好ましい実施形態において、水性液体中でメタザクロルとペンジメタリンとを混合することにより得られたペンジメタリンとメタザクロルとの水性懸濁液にせん断力を加える。せん断力は、メタザクロルおよびペンジメタリンの粒子を緊密に接触させ、かつ/または結晶複合体の粒子を粉砕するのに十分なせん断を提供することができる好適な技術により加えることができる。好適な技術には、研磨、破砕またはミリングが含まれ、特に、例えばビーズミリングを含む湿式研磨または湿式ミリングにより、またはコロイドミルを使用することにより実施する。好適なせん断装置には、特に、ボールミルまたはビーズミル、撹拌ボールミル、循環ミル(ピン粉砕システムを有する撹拌ボールミル)、ディスクミル、環状チャンバーミル、ダブルコーンミル、三本ロールミル、バッチミル、コロイドミル、およびサンドミルなどの媒体ミルが含まれる。粉砕工程の間に導入される熱エネルギーを放散するために、好ましくは粉砕チャンバーに冷却システムを取り付ける。特に好適なものは、ボールミルDrais Superflow DCP SF 12(DRAISWERKE、INC.製、40 Whitney Road. Mahwah, NJ 07430 USA)、Drais Perl Mill PMC(DRAISWERKE、INC.製)、循環ミルシステムZETA(Netzsch-Feinmahltechnik GmbH製)、Netzsch Feinmahltechnik GmbH, Selb, Germany製のディスクミル、ビーズミルEiger Mini 50(Eiger Machinery, Inc.製、888 East Belvidere Rd., Grayslake, IL 60030 USA)およびビーズミルDYNO-Mill KDL(WA Bachofen AG製、Switzerland)である。しかしながら、高せん断攪拌機、Ultra-Turrax装置、静的ミキサー、例えば混合ノズルを有するシステムおよびコロイドミルなどの他のホモジナイザーを含む、他のホモジナイザーも好適であり得る。
【0054】
本発明の好ましい実施形態において、せん断はビーズミルによりおこなう。特に、0.05〜5 mm、より好ましくは0.2〜2.5 mm、最も好ましくは0.5〜1.5 mmの範囲のビーズ径が好適であることが見出された。一般に、40〜99%、特に70〜97%、より好ましくは65〜95%の範囲のビーズ充填率を使用し得る。
【0055】
十分なせん断力を加えた後、結晶複合体の懸濁液が、場合により過剰なメタザクロルおよび/またはペンジメタリンとの混合物として得られる。ここで、懸濁した粒子の90重量%が、動的光散乱により測定して、30μm以下、好ましくは20μm以下、特に10μm以下、とりわけ5μm以下の粒径を有する。
【0056】
このようにして得られた結晶複合体の液体懸濁液を、添加物と共に製剤化した後または特に製剤化する前に、通常の乾燥法、特に噴霧乾燥または凍結乾燥により、粉末組成物に変換することができる。乾燥の前または間に、乾燥または噴霧補助剤を加えてもよい。水性分散物の乾燥に適した乾燥または噴霧補助剤は公知である。これらには、保護コロイド、例えばポリビニルアルコール、特に>70%の加水分解度を有するポリビニルアルコール、カルボキシル化ポリビニルアルコール、フェノールスルホン酸/ホルムアルデヒド縮合物、フェノールスルホン酸/尿素/ホルムアルデヒド縮合物、ナフタレンスルホン酸/ホルムアルデヒド縮合物、ナフタレンスルホン酸/ホルムアルデヒド/尿素縮合物、ポリビニルピロリドン、マレイン酸(または無水マレイン酸)とスチレンおよびそのエトキシ化誘導体などのビニル芳香族とのコポリマー、マレイン酸または無水マレイン酸とジイソブテンなどのC2〜C10-オレフィンおよびそのエトキシ化誘導体とのコポリマー、カチオンポリマー、例えばN-アルキル-N-ビニルイミダゾリニウム化合物とN-ビニルラクタム等とのホモおよびコポリマー、ならびに無機ブロッキング防止剤(固化防止剤とも呼ばれる)、例えば、ケイ酸、特に焼成シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム等が含まれる。乾燥補助剤は、通常、本発明の液体殺有害生物組成物中の活性化合物粒子の重量に対して0.1〜20重量%の量で使用する。
【0057】
上で既に述べた通り、本明細書において定義される結晶複合体は作物保護組成物を調製するのに好適であり、特に水性懸濁液濃縮物を調製するのに好適である。したがって、本発明はまた、本明細書において定義される結晶複合体、適切な場合には液体の担体(=液相)または固体の担体および/または1種以上の通常の補助剤を含む農業用作物保護組成物を提供する。
【0058】
好適な液相/液体の担体は、水(場合により少量の水混和性有機溶媒、例えば群1〜10に属するものを含有する)、ならびにペンジメタリンおよびメタザクロルが難溶性または不溶性である有機溶媒、例えば、25℃および1013 mbarにおけるペンジメタリンおよびメタザクロルの溶解度が1重量%以下、特に0.1重量%以下、とりわけ0.01重量%以下である有機溶媒である。
【0059】
好適な固体の担体は、原則として、作物保護組成物、特に殺菌剤に通常使用されるすべての固体の物質である。固体の担体は、例えば、シリカゲル、ケイ酸塩、タルク、カオリン、アタクレー(attaclay)、石灰石、石灰、白亜、赤土、黄土、粘土、白雲石、珪藻土、硫酸カルシウムおよび硫酸マグネシウム、酸化マグネシウムなどの鉱物、粉砕した合成材料、例えば硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、尿素などの肥料、ならびに穀物の粗挽き粉、樹皮の粗挽き粉、木材の粗挽き粉および木の実の殻の粗挽き粉などの植物由来の製品、セルロース粉末および他の固体の担体である。
【0060】
典型的な補助剤には、界面活性剤、特に作物保護組成物に通常使用される湿潤剤および分散剤、さらに、粘性を修正する添加物(増粘剤)、消泡剤、凍結防止剤、pH調節剤、安定剤、固化防止剤および殺生物剤(保存剤)が含まれる。
【0061】
特に、本発明は、懸濁液濃縮物、特に水性懸濁液濃縮物(SC)の形の作物保護組成物に関する。前記懸濁液濃縮物は、微細に粉砕された粒子の形の結晶複合体、および液体の担体(=液体媒体/液相)、特に水性担体(=水性媒体/水相)を含み、ここで、結晶複合体の粒子は液体の担体、好ましくは水性担体中に懸濁される。活性化合物粒子の粒径、すなわち活性化合物粒子の90重量%がそれ以下である粒径は、動的光散乱により測定して、典型的には30μm以下、好ましくは20μm以下、特に10μm以下、とりわけ5μm以下である。有利には、本発明のSC中の40重量%以上、特に、60重量%以上の粒子が2μm未満の直径を有する。
【0062】
懸濁液濃縮物、特に水性懸濁液濃縮物は、結晶複合体を、下に記載する通りの通常の製剤添加剤を含有してもよい好適な液体の担体中に懸濁し、次いで適切な場合には例えば研磨またはミリングにより懸濁した活性物質を粉砕することにより調製することができる。しかしながら、本明細書に記載するせん断法により、すなわち、メタザクロルおよびペンジメタリンの懸濁した粒子ならびに場合により別の添加剤を含む液体に、結晶複合体が形成されるまでせん断力を加えることにより懸濁液濃縮物を調製することが好ましい。
【0063】
結晶複合体に加えて、懸濁液濃縮物は、典型的には、界面活性剤、ならびに適切な場合には、消泡剤、増粘剤、凍結防止剤、安定剤(殺生物剤)、pH調節剤、固化防止剤および場合によりさらなる活性化合物を含む。
【0064】
前記SCにおいて、活性化合物の量、すなわち、結晶複合体および適切な場合には別の活性化合物の総量は、懸濁液濃縮物の総重量に対して、通常10〜70重量%の範囲、特に15〜50重量%の範囲である。
【0065】
好ましい界面活性剤はアニオンおよび非イオン界面活性剤(乳化剤)である。また、好適な界面活性剤は保護コロイドである。一般に、界面活性剤の量は、本発明のSCの総重量に対して0.5〜20重量%、特に1〜15重量%、特に好ましくは1〜10重量%である。好ましくは、界面活性剤は少なくとも1種のアニオン界面活性剤および少なくとも1種の非イオン界面活性剤を含み、アニオン界面活性剤と非イオン界面活性剤との比は、典型的には10:1〜1:10の範囲である。
【0066】
アニオン界面活性剤(アニオンテンシド(tensides)、乳化剤および分散剤)の例には、アルキルアリールスルホネート、フェニルスルホネート、アルキルサルフェート、アルキルスルホネート、アルキルエーテルサルフェート、アルキルアリールエーテルサルフェート、アルキルポリグリコールエーテルホスフェート、ポリアリールフェニルエーテルホスフェート、アルキルスルホスクシネート、オレフィンスルホネート、パラフィンスルホネート、石油スルホネート、タウリド(taurides)、サルコシド(sarcosides)、脂肪酸、アルキルナフタレンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、リグノスルホン酸、スルホン化ナフタレンとホルムアルデヒドまたはホルムアルデヒドおよびフェノールおよび適切な場合には尿素との縮合物、ならびにフェノールスルホン酸、ホルムアルデヒドおよび尿素の縮合物、リグノ亜硫酸廃液およびリグノスルホネート、アルキルホスフェート、アルキルアリールホスフェート、例えばトリスチリルホスフェート、ならびに上記の物質のアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムおよびアミン塩が挙げられる。好ましいアニオン界面活性剤は、少なくとも一つのスルホネート基を有するもの、特にそれらのアルカリ金属塩およびそれらのアンモニウム塩である。
【0067】
非イオン界面活性剤(非イオン乳化剤および分散剤)の例としては、アルキルフェノールアルコキシレート、アルコールアルコキシレート、脂肪アミンアルコキシレート、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ひまし油アルコキシレート、脂肪酸アルコキシレート、脂肪アミドアルコキシレート、脂肪ポリジエタノールアミド、ラノリンエトキシレート、脂肪酸ポリグリコールエステル、イソトリデシルアルコール、脂肪アミド、メチルセルロース、脂肪酸エステル、アルキルポリグリコシド、グリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコールブロックコポリマー、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールアルキルエーテル、ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコールエーテルブロックコポリマー(ポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシドブロックコポリマー)、およびそれらの混合物が挙げられる。好ましい非イオン界面活性剤は、脂肪アルコールエトキシレート、アルキルポリグリコシド、グリセリン脂肪酸エステル、ひまし油アルコキシレート、脂肪酸アルコキシレート、脂肪アミドアルコキシレート、ラノリンエトキシレート、脂肪酸ポリグリコールエステルおよびエチレンオキシド/プロピレンオキシドブロックコポリマーおよびそれらの混合物である。
【0068】
保護コロイドは、典型的には水溶性両親媒性ポリマーである。例としては、タンパク質およびカゼインなどの変性タンパク質、水溶性デンプン誘導体およびセルロース誘導体などの多糖、特に疎水性に修飾したデンプンおよびセルロース、さらにポリカルボキシレート、例えば、ポリアクリル酸(ポリアクリレート)、アクリル酸またはメタクリル酸コポリマーまたはマレイン酸コポリマー、例えばアクリル酸/オレフィンコポリマー、アクリル酸/スチレンコポリマー、無水マレイン酸/オレフィンコポリマー(例えば、Sokalan(登録商標)CP9、BASF SE)および前記コポリマーとポリエチレングリコールとのエステル化産物、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドンコポリマー、ポリビニルアミン、ポリエチレンアミンおよびポリアルキレンエーテルが挙げられる。
【0069】
特に、本発明のSCは、水性の施用形態による植物の部分の濡れを改善する少なくとも1種の界面活性剤(湿潤剤)およびSC中での活性化合物粒子の分散を安定化させる少なくとも1種の界面活性剤(分散剤)を含む。湿潤剤の量は、SCの総重量に対して、典型的には0.5〜10重量%、特に0.5〜5重量%、とりわけ0.5〜3重量%の範囲である。分散剤の量は、SCの総重量に対して、典型的には0.5〜10重量%、特に0.5〜5重量%である。
【0070】
好ましい湿潤剤は、アニオン性または非イオン性であり、例えば、ナフタレンスルホン酸およびそれらのアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムおよびアミン塩、さらに脂肪アルコールエトキシレート、アルキルポリグリコシド、グリセリン脂肪酸エステル、ひまし油アルコキシレート、脂肪酸アルコキシレート、脂肪アミドアルコキシレート、脂肪ポリジエタノールアミド、ラノリンエトキシレートおよび脂肪酸ポリグリコールエステルより選択される。
【0071】
好ましい分散剤は、アニオン性または非イオン性であり、例えば、ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコールブロックコポリマー、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールアルキルエーテル、ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコールエーテルブロックコポリマー、アルキルアリールリン酸塩、例えばトリスチリルホスフェート、リグノスルホン酸、スルホン化ナフタレンとホルムアルデヒドまたはホルムアルデヒドおよびフェノールおよび適切な場合には尿素との縮合物、ならびにフェノールスルホン酸、ホルムアルデヒドおよび尿素の縮合物、リグノ亜硫酸廃液およびリグノスルホネート、ポリカルボキシレート、例えばポリアクリレート、無水マレイン酸/オレフィンコポリマー(例えば、Sokalan(登録商標)CP9、BASF SE)、ならびに前記の物質のアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムおよびアミン塩より選択される。
【0072】
本発明のSCに好適な粘性を修正する添加剤(増粘剤)は、特に、製剤に擬塑性流動特性を与える化合物、すなわち、休止状態では高い粘性を有し、撹拌状態では低い粘性を有するような特性を与える化合物である。好適なものは、原則として、この目的で懸濁液濃縮物に使用されるすべての化合物である。例えば、無機物質、例えば、ベントナイトまたはアタプルガイト(attapulgites)(例えば、Engelhardt製のAttaclay(登録商標))、および有機物質、例えば、Xanthan Gum(登録商標)(Kelco製のKelzan(登録商標))、Rhodopol(登録商標)23 (Rhone Poulenc)またはVeegum(登録商標)(R.T. Vanderbilt製)などの多糖およびヘテロ多糖が挙げられ、Xanthan-Gum(登録商標)を使用することが好ましい。粘性を修正する添加剤の量は、しばしば、SCの総重量に対して0.1〜5重量%である。
【0073】
本発明のSCに好適な消泡剤は、例えば、この目的に公知のシリコーンエマルション(Wacker製のSilikon(登録商標)SRE、またはRhodia製のRhodorsil(登録商標))、長鎖アルコール、脂肪酸、蝋の水性分散物タイプの消泡剤、固体の消泡剤(いわゆるコンパウンド)、有機フッ素化合物およびそれらの混合物である。典型的には、消泡剤の量は、SCの総重量に対して0.1〜1重量%である。
【0074】
本発明の懸濁液濃縮物を安定化させるために保存剤を加えてもよい。好適な保存剤は、イソチアゾロンをベースとするもの、例えば、ICI製のProxel(登録商標)またはThor Chemie製のActicide(登録商標)RSまたはRohm & Haas製のKathon(登録商標)MKである。典型的には、殺菌剤(bactericide)の量は、SCの総重量に対して0.05〜0.5重量%である。
【0075】
好適な凍結防止剤は、液体のポリオール、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコールまたはグリセロールである。凍結防止剤の量は、懸濁液濃縮物の総重量に対して一般に1〜20重量%、特に5〜10重量%である。
【0076】
適切な場合には、本発明のSCは、pHを調節するために緩衝剤を含んでもよい。緩衝剤の例は、例えばリン酸、ホウ酸、酢酸、プロピオン酸、クエン酸、フマル酸、酒石酸、シュウ酸およびコハク酸などの弱い無機または有機酸のアルカリ金属塩である。
【0077】
結晶複合体の製剤を種子の処理に使用する場合には、製剤は、さらに種子の処理、例えばドレッシングまたはコーティングに使用される通常の成分を含んでもよい。例としては、上記の成分に加えて、特に着色剤、粘着剤、充填剤および可塑剤が挙げられる。
【0078】
着色剤は、このような目的に通常使用されるすべての染料および顔料である。ここでは、水に難溶性の顔料および水溶性の染料の両方を使用することができる。言及し得る例は、ローダミンB、C.I.ピグメントレッド112およびC.I.ソルベントレッド1、ピグメントブルー15:4、ピグメントブルー15:3、ピグメントブルー15:2、ピグメントブルー15:1、ピグメントブルー80、ピグメントイエロー1、ピグメントイエロー13、ピグメントレッド48:2、ピグメントレッド48:1、ピグメントレッド57:1、ピグメントレッド53:1、ピグメントオレンジ43、ピグメントオレンジ34、ピグメントオレンジ5、ピグメントグリーン36、ピグメントグリーン7、ピグメントホワイト6、ピグメントブラウン25、ベーシックバイオレット10、ベーシックバイオレット49、アシッドレッド51、アシッドレッド52、アシッドレッド14、アシッドブルー9、アシッドイエロー23、ベーシックレッド10、ベーシックレッド108の名称で知られる染料および顔料である。着色剤の量は、通常、製剤の20重量%以下であり、好ましくは、製剤の総重量に対して0.1〜15重量%の範囲である。
【0079】
粘着剤は、ドレッシング製品に使用することができるすべての通常の結合剤である。好適な結合剤の例としては、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコールおよびタイロースなどの熱可塑性ポリマー、ならびに、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリブテン、ポリイソブテン、ポリスチレン、ポリエチレンアミン、ポリエチレンアミド、上記の保護コロイド、ポリエステル、ポリエーテルエステル、ポリ無水物、ポリエステルウレタン、ポリエステルアミド、熱可塑性多糖、例えば、セルロースエステル、セルロースエーテル、セルロースエーテルエステルなどのセルロール誘導体(メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースを含む)ならびにデンプン誘導体および修飾されたデンプン、デキストリン、マルトデキストリン、アルギン酸塩およびキトサン、さらに、脂肪、油、タンパク質(カゼイン、ゼラチンおよびゼインを含む)、アラビアゴム、セラックが挙げられる。好ましい粘着剤は生物適合性である。すなわち、それらは顕著な植物毒性活性を有しない。好ましくは、粘着剤は生物分解性である。好ましくは、粘着剤は、製剤の活性成分のマトリックスとして作用するように選択する。粘着剤の量は、通常、製剤の40重量%以下であり、好ましくは、製剤の総重量に対して1〜40重量%の範囲、特に5〜30重量%の範囲である。
【0080】
粘着剤の他に、製剤は不活性充填剤を含んでもよい。これらの例としては、上記の固体の担体材料、特に、粘土、白亜、ベントナイト、カオリン、タルク、パーライト、マイカ、シリカ、珪藻土、石英粉末、モンモリロナイトなどの微粒子状無機材料、ならびに、木材粉末、穀類粉末、活性炭等などの微粒子状有機材料が挙げられる。充填剤の量は、好ましくは、充填剤の総量が、製剤のすべての不揮発性成分の総重量に対して75重量%以下となるように選択する。一般的に、充填剤の量は、製剤のすべての不揮発性成分の総重量に対して1〜50重量%の範囲である。
【0081】
さらに、製剤は、コーティングの柔軟性を増大する可塑剤を含んでもよい。可塑剤の例としては、オリゴマーポリアルキレングリコール、グリセロール、ジアルキルフタレート、アルキルベンジルフタレート、グリコールベンゾエートおよび関連する化合物が挙げられる。コーティング中の可塑剤の量は、しばしば、製剤の総重量に対して0.1〜20重量%の範囲である。
【0082】
本発明の結晶複合体は、望まれない植物を防除(combating/controlling)するために、公知の方法により使用することができる。特に、結晶複合体は、活性を増大させるためおよび/または活性スペクトルを広くするために別の活性化合物と共に製剤することができる。したがって、それらを他の除草剤と組み合わせて、または他の作物保護剤との混合物の形で、例えば有害生物または植物病原性真菌もしくは細菌を防除するための薬剤と共に施用すると有利であり得る。また、栄養および希元素欠乏を治療するために使用される無機塩溶液との混和可能性も興味深い。植物毒性のない油または油濃縮物などの他の添加剤を加えてもよい。併用する場合、本発明の結晶複合体は、好ましくは通常ペンジメタリンと共に使用される除草剤および他の殺有害生物剤と共に施用する。
【0083】
したがって、本発明の好ましい実施形態は、結晶複合体に加えて、少なくとも1種のさらなる活性化合物を含む農業用組成物に関する。好ましくは、前記農業用組成物は、本発明の結晶複合体に加えて、少なくとも1種のさらなる活性化合物を微細に粉砕された粒子として含む懸濁液濃縮物の形である。
【0084】
原則として、本発明の結晶複合体の製剤は、ペンジメタリンおよびペンジメタリンとさらなる殺有害生物剤との組合せを含む従来の製剤により防除することができる、望まれない植物および有害な菌類または他の有害生物により引き起こされるすべての植物の病気を防除するために使用することができる。
【0085】
本発明の製剤は一般に、単子葉雑草、特にイヌビエ(バーンヤードグラス)(Echinochloa crusgalli var. crus-galli)などのヒエ属の種、オニメヒシバ(Digitaria sanguinalis)などのメヒシバ属の種、エノコログサ(Setaria viridis)およびアキノエノコログサ(Setaria faberii)などのエノコログサ属の種、セイバンモロコシ(Sorghum halepense Pers.)などのモロコシ属の種、カラスムギ(Avena fatua)などのカラスムギ属の種、シンクリノイガ(Cenchrus echinatus)などのクリノイガ属の種、スズメノチャヒキ(Bromus)属の種、ドクムギ(Lolium)属の種、クサヨシ(Phalaris)属の種、ナルコビエ(Eriochloa)属の種、キビ(Panicum)属の種、ニクキビ(Brachiaria)属の種、スズメノカタビラ(Poa annua)、ノスズメノテッポウ(Alopecurus myosuroides)、ヤギムギ(Aegilops cylindrical)、シバムギ(Agropyron repens)、セイヨウヌカボ(Apera spica-venti)、オヒシバ(Eleusine indica)、ギョウギシバ(Cynodon dactylon)等を含むイネ科雑草などの一年生雑草を含む非常に多くの有害な植物を防除するのに好適である。
【0086】
製剤は非常に多くの双子葉雑草、特にソバカズラ(Polygonum convolvolus)などのタデ属の種、アオゲイトウ(Amaranthus retroflexus)などのヒユ属の種、アカザ(Chenopodium album L.)などのアカザ属の種、アメリカキンゴジカ(Sida spinosa L.)などのキンゴジカ属の種、ブタクサ(Ambrosia artemisiifolia)などのブタクサ属の種、アカントスペルマム(Acanthospermum)属の種、カツミレモドキ(Anthemis)属の種、ハマアカザ(Atriplex)属の種、アザミ(Cirsium)属の種、セイヨウヒルガオ(Convolvulus)属の種、イズハハコ(Conyza)属の種、カッシア(Cassia)属の種、ツユクサ(Commelina)属の種、チョウセンアサガオ(Datura)属の種、トウダイグサ(Euphorbia)属の種、フクロソウ(Geranium)属の種、コゴメギク(Galinsoga)属の種、アサガオ(サツマイモ(Ipomoea)属の種)、オドリコソウ(Lamium)属の種、アオイ(Malva)属の種、シカギク(Matricaria)属の種、カキネガラシ(Sysimbrium)属の種、ナス(Solanum)属の種、オナモミ(Xanthium)属の種、クワガタソウ(Veronica)属の種、スミレ(Viola)属の種、ハコベ(Stellaria media)、イチビ(Abutilon theophrasti)、アメリカツノクサネム(Hemp sesbania (Sesbania exaltata Cory))、アノダ・クリスタータ(Anoda cristata)、コセンダグサ(Bidens pilosa)、ブラシカ・カベル(Brassica kaber)、ナズナ(Capsella bursa-pastoris)、ヤグルマギク(Centaurea cyanus)、チシマオドリコソウ(Galeopsis tetrahit)、ヤエムグラ(Galium aparine)、ヒマワリ(Helianthus annuus)、ムラサキヌスビトハギ(Desmodium tortuosum)、ホウキグサ(Kochia scoparia)、メルクリアリス・アヌア(Mercurialis annua)、ノハラムラサキ(Myosotis arvensis)、ヒナゲシ(Papaver rhoeas)、セイヨウノダイコン(Raphanus raphanistrum)、ノハラヒジキ(Salsola kali)、ノハラガラシ(Sinapis arvensis)、タイワンハチジョウナ(Sonchus arvensis)、グンバイナズナ(Thlaspi arvense)、シオザキソウ(Tagetes minuta)、ブラジルハシカグサモドキ(Richardia brasiliensis)等を含む広葉雑草を防除するためにも好適である。
【0087】
製剤は、ハマスゲ(Cyperus rotundus L.)、キハマスゲ(Cyperus esculentus L.)、ヒメクグ(Cyperus brevifolius H.)、カヤツリグザ(Cyperus microiria Steud)、コゴメガヤツリ(Cyperus iria L.)などのカヤツリグサ属の種等を含む非常に多くの一年生および多年生スゲ雑草を防除するためにも好適である。
【0088】
本発明の製剤は、単子葉および双子葉雑草およびスゲ雑草、特に、ノスズメノテッポウ、セイヨウヌカボ、カラスムギ、ニクキビ属の種、スズメノチャヒキ属の種、クリノイガ属の種、メヒシバ属の種、ヒエ属の種、オヒシバ、ナルコビエ属の種、フクロソウ属の種、ドクムギ属の種、キビ属の種、クサヨシ属の種、スズメノカタビラ、エノコログサ属の種、モロコシ属の種、イチビ、ヒユ属の種、カツミレモドキ属の種、ハマアカザ属の種、ブラシカ・カベル、ナズナ、アカザ属の種、イズハハコ属の種、トウダイグサ属の種、ヤエムグラ、ホウキグサ、オドリコソウ属の種、シカギク属の種、ヒナゲシ、タデ属の種、セイヨウノダイコン、ノハラガラシ、ハコベ、ナス属の種、カキネガラシ属の種、グンバイナズナ、クワガタソウ属の種、スミレ属の種、ツユクサ属の種およびカヤツリグサ属の種を防除するのに特に好適である。
【0089】
本発明の製剤は、有用な植物(すなわち、作物)中の一般的な有害植物を防除(combating/controlling)するために好適である。それらは、一般に下記の作物における望まれない植物を防除(combating/controlling)するのに好適である。
【0090】
- 穀物、例えば、
- コムギ(Triticum aestivum)およびコムギ様作物、例えばデュラムコムギ(T. durum)、ヒトツブコムギ(T. monococcum)、フタツブコムギ(T. dicoccon)およびスペルトコムギ(T. spelta)、ライムギ(Secale cereale)、ライコムギ(Tritiosecale)、オオムギ(Hordeum vulgare)などの穀類;
- トウモロコシ(Zea mays);
- モロコシ(例えば、モロコシ(Sorghum bicolour));
- イネ(イネ属の種、例えば、アジア栽培イネ(Oryza sativa)およびアフリカ栽培イネ(Oryza glaberrima);および
- サトウキビ;
- マメ科植物(Fabaceae)、例えば、ダイズ(Glycine max.)、ラッカセイ(Arachis hypogaea)、ならびにエンドウ(Pisum sativum)、キマメおよびササゲを含むエンドウ、ソラマメ(Vicia faba)、ササゲ(Vigna)属の種およびインゲンマメ(Phaseolus)属の種を含む豆およびヒラマメ(レンズマメ(lens culinaris var.))などの豆類作物;
- アブラナ科、例えば、カノーラ(Brassica napus)、アブラナ(Brassica napus)、キャベツ(B. oleracea var.)、カラシナ(B. juncea)、ブラシカ・カンペストリス(B. campestris)、タアサイ(B. narinosa)、クロガラシ(B. nigra)およびハリゲナタネ(B. tournefortii)などのカラシ;ならびにカブ(Brassica rapa var.);
- 他の広葉作物、例えば、ヒマワリ、ワタ、アマ、アマニ、サトウダイコン、ジャガイモおよびトマト;
- TNV作物(TNV:木、木の実およびブドウ)、例えば、ブドウ、柑橘類、ナシ状果実、例えばリンゴおよびセイヨウナシ、コーヒー、ピスタチオおよびアブラヤシ、 核果、例えばモモ、アーモンド、クルミ、オリーブ、サクラ、セイヨウスモモおよびアンズ;
- 芝、牧草および放牧地;
- タマネギおよびニンニク;
- 球根観賞植物、例えば、チューリップおよびスイセン;
- 針葉樹および落葉樹、例えば、マツ、モミ、オーク、カエデ、ハナミズキ、サンザシ、野生リンゴ、およびクロウメモドキ(バックソーン);および
- 庭園観賞植物、例えば、ペチュニア、マリーゴールド、バラおよびキンギョソウ。
【0091】
本発明の組成物は、コムギ、オオムギ、ライムギ、ライコムギ、デュラムコムギ、イネ、トウモロコシ、サトウキビ、モロコシ、ダイズ、エンドウ、マメおよびヒラマメなどの豆類作物、ラッカセイ、ヒマワリ、サトウダイコン、ジャガイモ、ワタ、アブラナ、カノーラ、カラシ、キャベツおよびカブなどのアブラナ属作物、芝、ブドウ、モモ、アーモンド、クルミ、オリーブ、サクラ、セイヨウスモモおよびアンズなどの核果、柑橘類およびピスタチオにおける望まれない植物を防除するのに特に好適である。
【0092】
本発明の組成物は、遺伝子工学もしくは品種改良のために1種以上の除草剤に対して耐性を有する作物、遺伝子工学もしくは品種改良のために1種以上の菌類などの病原体に対して耐性を有する作物、または遺伝子工学もしくは品種改良のために昆虫による攻撃に対して耐性を有する作物において使用することも可能である。例えば、好適なものは、例えばペンジメタリンに対して耐性を有する作物、好ましくはトウモロコシ、コムギ、ヒマワリ、イネ、カノーラ、アブラナ、ダイズもしくはヒラマメ、または遺伝子組換えによるBt毒素の遺伝子の導入によりある種の昆虫による攻撃に対して抵抗性を有する作物である。
【0093】
本発明の組成物は、当業者に周知の技術を用いることにより従来の方法で施用することができる。好適な技術としては、スプレー、噴霧、散布または散水が挙げられる。施用のタイプは周知の方式で意図される目的に依存するが、いずれの場合にも、それらは本発明の活性成分の可能な限り微細な分布を保証するものでなければならない。
【0094】
組成物は発芽前または後に、すなわち、望まれない植物の発芽の前、間および/または後に施用することが可能である。組成物を作物において使用する場合、それらは作物の種蒔きの後で発芽の前または後に施用することができる。しかしながら、本発明の組成物は、作物の種蒔きの前に施用することも可能である。
【0095】
組成物は、主に噴霧、特に土壌および葉への噴霧により植物に施用する。施用は、通常の噴霧技術により、担体として例えば水を使用して、約10〜2000 l/haまたは50〜1000 l/ha(例えば、100〜500 l/ha)の噴霧液量で実施することができる。微量法および超微量法による組成物の施用も可能である。
【0096】
ある種の作物が活性成分に対して十分な耐性を持たない場合、組成物を、噴霧装置を利用して、感受性の作物の葉には接触したとしてもごくわずかしか接触しないが、その下で成長する望まれない植物の葉またはむき出しの土壌には達するような方法で噴霧する施用技術を使用することができる(ポストディレクテッド、レイバイ)。
【0097】
植物の発芽後処理の場合、本発明の除草剤混合物または組成物を、好ましくは葉への施用により施用する。施用は、例えば担体として水を使用する通常の噴霧技術により、約50〜1000 l/haの噴霧混合物量を用いて実施し得る。
【0098】
純粋な活性化合物の組成物の必要な施量、すなわち、ペンジメタリン、メタザクロルおよび場合によりさらなる活性化合物の施量は望まれない植物の密度、植物の発達段階、組成物を使用する場所の気候条件、および施用法に依存する。一般に、組成物の施量(ペンジメタリン、メタザクロルおよび場合によりさらなる活性化合物の総量)は、15〜5000 g/ha、好ましくは20〜2500 g/haの活性物質である。
【0099】
本発明の複合体は、望まれない植物、植物病原性菌類または他の有害生物に対する活性を示す他の化合物と共に、公知の方法により製剤化することができる。これに関して、結晶複合体を、望まれない植物に対して活性を有する少なくとも1種の別の活性成分と共に製剤化することが特に有利であることが証明されている。
【0100】
したがって、本発明の一実施形態は、1種以上のイミダゾリノン除草剤と共に製剤化された本発明のペンジメタリンとメタザクロルの結晶複合体を含む製剤に関する。イミダゾリノン除草剤は、例えば、Shaner, D. L. O' Conner, S.L The Imidazolinone Herbicides, CRC Press Inc., Boca Raton, Florida 1991、ならびにThe Compendium of Pesticide Common Names http://www.alanwood.net/pesticides/により公知である。好ましいイミダゾリノン除草剤には、イマザモックス(imazamox)、イマザピック(imazapic)、イマザピル(imazapyr)、イマザキン(imazaquin)、イマゼタピル(imazethapyr)、それらの塩およびそれらのエステル、ならびにそれらの混合物が含まれる。
【0101】
この実施形態において、ペンジメタリンとイミダゾリノン除草剤との相対重量比は、好ましくは1:200〜200:1、特に1:50〜50:1の範囲、より好ましくは1:10〜10:1である。
【0102】
新規の結晶複合体により、結晶複合体それ自体と、結晶複合体および別の作物保護剤、特に上に示した混合相手との両方の、低溶媒または無溶媒水性懸濁液濃縮物を調製することが可能になる。溶媒含有量、特に芳香族炭化水素の含有量から凍結防止剤を引いたものは、一般に懸濁液濃縮物の2重量%以下であり、しばしば2重量%未満である。本発明の懸濁液濃縮物は、ペンジメタリンまたはペンジメタリンとメタザクロルとの混合物を含有する公知の懸濁液濃縮物およびサスポエマルション濃縮物と比較して、特に向上した保存安定性の点で優れている。
【0103】
下記の図面および実施例により本発明を説明するが、これは本発明を限定するものと理解されるべきではない。
【実施例】
【0104】
分析
X線粉末回折(PXRD)の図は、Cuアノード(λ = 1.5406Å; 45 kV、25 mA)を有するSiemens製のD-5000回折計を用いて、25℃において、2θ = 4°〜35°の範囲、0.02°の増分の反射配置で測定した。得られた2θ値は、記載した格子面間隔dを計算するために使用した。
【0105】
単結晶X線回折。データは、黒鉛により単色化したCuKα線(λ = 1.54178Å)を用いて、Bruker AXS CCD検出器により103(2) Kで収集した。構造は、SHELX-97ソフトウェアパッケージによるフーリエ技術を用いて、直接法により解析し、精密化し、展開した(expanded)。
【0106】
熱重量分析/示差熱分析(TG/DTA)は、Mettler Toledo TGA/SDTA 851により、基準としてAl2O3を用いて実施した。サンプル(8〜22 mg)を白金製サンプルカップに入れて測定した。10℃/分で30〜605℃の温度プログラムおよび窒素ガス流を使用した。
【0107】
示差走査熱量測定(DSC)は、TS0801ROサンプルロボットおよびTS08006C1ガスコントロールを用いるMettler Toledo DSC 823eによりおこなった。測定は、ピンホールを有するアルミニウムのるつぼを用いて、30〜185℃で、5℃/分の加熱速度で実施した。
【0108】
調製例
I スラリー法
498 mgのペンジメタリンおよび493 mgのメタザクロル(モル比1:1)を20 mlの水とエタノールの混合物(19:1 v/v)と共にフラスコに入れた。40℃で30分間攪拌した後、種結晶として約5〜10 mgのメタザクロルとペンジメタリンの共結晶を加えた。混合物を5日間攪拌した後、23℃に冷却し、濾過し、素焼板上で23℃で16時間乾燥した。PXRDにより、得られた結晶性物質が、図1に示す特徴的なPXRDパターンを有するメタザクロルとペンジメタリンの共結晶であることが明らかになった。結晶複合体の融解は57℃で開始した。
【0109】
II せん断法
下記の製剤添加物を使用した。
【0110】
下記の表(すべての量はg/kgで記載する)に記載した処方に従って5 kgのサンプルを調製した。キサンタンガム水溶液およびディスパースグリーン以外のすべての成分を容器中で混合した後、混合物を20℃に維持しながら、6.7 m/秒の先端速度で運転している600 mlビーズミルに8 kg/時間で2回連続して通すことにより粉砕した。得られた混合物にキサンタンガムの2%溶液および染料製剤を撹拌しながら加えた。均一な少し粘性の緑色の不透明な液体が得られた。この分散物の粒径を、水に100倍希釈してレーザー回折をおこなうことにより測定したところ、粒子の90%が3.9μm未満の粒径を有することが示された(D90値)。
【0111】
サンプルを蒸発乾固させた。得られた物質のPXRDにより、過剰なメタザクロル以外に、ペンジメタリンとメタザクロルの結晶複合体の存在が明らかになった。
【0112】
ペンジメタリン 42
メタザクロル 378
グリセロール 70
分散剤1 30
分散剤2 19
分散剤3 6
消泡剤 5
キサンタンガム(2%水溶液) 55
染料製剤 100
水 295
【0113】
分散剤1:エチレンオキシド/プロピレンオキシドブロックコポリマー(Pluronic PE 10500、BASF SE製)
分散剤2:アクリル酸グラフトコポリマー(Atlox 4913、Uniquema製)
分散剤3:16個のオキシエチレン単位を有するエトキシ化トリスチリルフェノールアンモニウムサルフェート:Soprophor 4D384、Rhodia製
分散剤4:フェノールスルホン酸とホルムアルデヒドの縮合生成物のナトリウム塩
消泡剤:市販のシリコン消泡剤(水性乳液、20重量%の活性物質 - Wacker Chemie AGより入手したSilfoam SRE)
染料製剤:ディスパースグリーン
【0114】
保存安定性
前記の実施例に従って製造したペンジメタリン/メタザクロル共結晶の安定性を、1 gのサンプルを20 mlの水中、室温で2週間攪拌することにより測定した。その後、ホットステージ顕微鏡およびPXRDにより、いかなる他の結晶形への変換も起こらなかったことが証明された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペンジメタリンおよびメタザクロルを含む結晶複合体。
【請求項2】
メタザクロルとペンジメタリンとのモル比が0.8 : 1〜1.25 : 1である、請求項1に記載の結晶複合体。
【請求項3】
25℃でのCu放射によるX線粉末回折において、2θ値で表して、6.40 ± 0.2°、7.06 ± 0.2°、7.36 ± 0.2°、11.82 ± 0.2°、12.78 ± 0.2°、14.72 ± 0.2°、19.21 ± 0.2°、21.28 ± 0.2°、22.15 ± 0.2°の反射のうちの少なくとも4つを示す、請求項1に記載の結晶複合体。
【請求項4】
ペンジメタリンおよびメタザクロルを有機溶媒中または水と有機溶媒との混合物中に懸濁することを含む、請求項1〜3のいずれか1項に定義された結晶複合体の調製方法。
【請求項5】
ペンジメタリンおよびメタザクロルを水性液体中で混合することを含む、請求項1〜3のいずれか1項に定義された結晶複合体の調製方法。
【請求項6】
ペンジメタリンおよびメタザクロルを水性液体中で混合することにより得られたペンジメタリンおよびメタザクロルを含有する水性懸濁液にせん断力を加える、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれか1項に定義されたペンジメタリンとメタザクロルの結晶複合体を含む農業用組成物。
【請求項8】
ペンジメタリンとメタザクロルの結晶複合体を水性懸濁液の形で含有する、請求項7に記載の農業用組成物。
【請求項9】
さらなる活性化合物を含有する、請求項7または8に記載の農業用組成物。
【請求項10】
さらなる活性化合物がイミダゾリノン除草剤である、請求項9に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−505187(P2012−505187A)
【公表日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−530511(P2011−530511)
【出願日】平成21年10月13日(2009.10.13)
【国際出願番号】PCT/EP2009/063328
【国際公開番号】WO2010/043607
【国際公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】