説明

ペンタフルオロブタン系組成物

本発明は、ペンタフルオロブタン、ブタンおよび場合によっては存在してもよい水を含む組成物を提供する。本発明は、さらに本組成物を含む冷媒、発泡剤、フォーム組成物、ポリオールプレミックス、独立気泡フォーム、噴霧可能な組成物などを提供する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
関連出願への相互参照
本発明は、その内容が参照によって本明細書に取り込まれる2002年6月3日に出願された同時係属中の米国出願番号10/161,361に関連し、その優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、一般にペンタフルオロブタンの組成物に関する。より具体的には、本発明は、ペンタフルオロブタンを含む共沸混合物様組成物およびその使用を提供する。
【0003】
背景
フルオロカーボン系流体は、冷媒、エアゾールプロペラント、発泡剤、熱媒体および気体誘電体など数多くの用途で産業界で幅広く使用されてきた。これらの流体のいくつかの使用に関連する疑わしい環境問題ゆえに、ハイドロフルオロカーボン類("HFC")などオゾン枯渇可能性が低い、あるいはその可能性がない流体を用いることが望ましい。
【0004】
かくて、クロロフルオロカーボン類("CFC")もしくはハイドロクロロフルオロカーボン類("HCFC")を含まない流体の使用が望ましい。さらに、単一成分の流体もしくは共沸混合物(これらの混合物は、沸騰および蒸発時に分留しない)の使用が望ましいことは既知である。不幸にも、当業界で既知であるように、HFC/非HFC混合物は、混合物中のHFC/非HFC成分の相対濃度における相対的に小さな変化に対して沸点において有意な変化が生じる傾向がある。かくて、2つ以上のHFC/非HFC化合物の1つの特定な組合せが特定の用途での使用に適するとみなされた場合ですら、同じ2つ以上のHFC/非HFC成分の別の組合せは、HFC/非HFC成分の相対濃度においてほんのわずかに異なるだけなのだが、同じ用途で不適切となり得る。
【0005】
出願人等は、相対的に一定の沸点および蒸気圧、すなわち、成分の相対濃度が変化するにつれて相対的に小さな度合いで変化する沸点および蒸気圧、を有する2つ以上のHFCおよび非HFC溶媒の混合物が望ましいと理解するようになった。そのような混合物の製造において、相対的に一定の沸点/蒸気圧は、より幅広い範囲の組成物を特定の用途に用いることを可能せしめるであろう。不幸にも、そのような相対的に一定の沸点および蒸気圧特性を有するHFC/非HFC混合物はまれであるのみならず、そのような混合物の存在は、一般にあらかじめ予言することができない。
【0006】
発明の詳細な記述および好ましい実施態様
本発明者は、CFCおよびHCFCの代用品として継続する需要を満足させるために手助けできる組成物を開発した。1つの実施態様において、本発明は、ペンタフルオロブタンおよびブタン、好ましくはn-ブタンを含む共沸混合物様組成物を提供する。かくて、本発明は、実質的にCFCおよびHCFCを含まず、相対的に一定の沸点および蒸気圧特性を示す組成物を提供することにより、前記欠点を克服する。特に、出願人は、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン("HFC-365mfc")および未置換ブタン類、好ましくはn-ブタン、からなる群から選ばれる第二成分を含む共沸混合物様組成物を識別した。
【0007】
本明細書で用いられるとき、「共沸混合物様」という語は、厳密に共沸性である組成物および共沸混合物のように挙動する組成物の両方の組成物を含む広い意味で意図される。基本的原理から、流体の熱力学的状態は、圧力、温度、液体組成および蒸気組成により定義される。共沸混合物は、液体組成および蒸気組成が特定の圧力および温度で等しい2つ以上の成分のシステムである。実際問題として、このことは、共沸混合物の成分が定沸騰であり、相変化中に分離されないことを意味する。
【0008】
共沸混合物様組成物は、定沸騰もしくは本質的に定沸騰である。換言すれば、共沸混合物様組成物に関しては、沸騰もしくは蒸発中に形成される蒸気の組成は、原液体組成と同一、もしくは実質的に同一である。かくて、沸騰もしくは蒸発については、液体組成は、変化するとしても、最低限度もしくは無視し得る程度にしか変化しない。このことは、沸騰もしくは蒸発中に液体組成が相当な程度にまで変化する非共沸混合物様組成物と対比される。表示される範囲内の本発明の全ての共沸混合物様組成物および範囲外のある組成物は、共沸混合物様である。
【0009】
本発明の共沸混合物様組成物は、新しい共沸もしくは共沸混合物様システムを形成しない追加の成分、あるいは最初の蒸留留分にない追加の成分を含んでもよい。最初の蒸留留分は、蒸留塔が全還流条件下で定状操作を示した後に取られる最初の留分である。成分の付加が本発明の範囲外であるように新しい共沸もしくは共沸混合物様システムを形成するかどうか決定する1つの方法は、その成分を有する組成物の試料を非共沸混合物を個々の成分に分離すると予想される条件下で蒸留することである。追加成分を含む混合物が非共沸もしくは非共沸混合物様であるなら、その追加成分は共沸もしくは共沸混合物様成分から分留する。混合物が共沸混合物様なら、定沸騰であるか、あるいは単一の物質として挙動する混合物成分全てを含むある有限量の最初の蒸留留分が得られる。
【0010】
このことから、共沸混合物様組成物の別の特性は、共沸混合物様もしくは定沸騰である同じ成分を変動する配合比で含む組成物の範囲があるということになる。そのような組成物は全て、「共沸混合物様」および「定沸騰」という語により包含されることが意図される。例として、異なる圧力で、組成物の沸点がそうであるように、特定の共沸混合物の組成が少なくともわずかに変化することは周知である。かくて、AとBとの共沸混合物は、温度および/または圧力に依存する可変組成ではあるが、独特な類型の関係を示す。共沸混合物様組成物に関し、共沸混合物様である同じ成分を変動する配合比で含む組成物の範囲があるということになる。そのような組成物は全て、本明細書で用いられる共沸混合物様という語により包含されることが意図される。
【0011】
ペンタフルオロブタン/n-ブタン
本発明の1つの実施態様は、HFC-365mfcおよびn-ブタンを含む共沸混合物様組成物を提供する。好ましくは、本発明の新規な共沸混合物様組成物は、有効量のHFC-365mfcおよびn-ブタンを含む。本明細書で用いられる「有効量」という語は、別の成分(単数もしくは複数)との組合せで本共沸混合物様組成物の形成をもたらすそれぞれの成分の量をいう。これらの実施態様は、好ましくは、約1〜約50重量部のHFC-365mfc および約50〜約99重量部のn-ブタン、さらに好ましくは、約5〜約25重量部のHFC-365mfcおよび約75〜約95重量部のn-ブタンを含む、好ましくは本質的にそれらからなる共沸混合物様組成物を提供する。そのような組成物は、約14.41psiaで約−1.64℃±4℃、好ましくは±2℃、より好ましくは±1℃の沸点を特徴とする。
【0012】
好ましい実施態様において、本発明のHFC-365mfc/ブタンの組成物は、実質的に均質の共沸組成物である。
【0013】
ペンタフルオロブタン/n-ブタン/水
本発明の1つの実施態様は、HFC-365mfc、n-ブタンおよび水を含む共沸混合物様組成物を提供する。好ましくは、本発明の新規な共沸混合物様組成物は、有効量のHFC-365mfc、n-ブタンおよび水を含む。これらの実施態様は、好ましくは、約1〜約50重量部のHFC-365mfc および約49〜約99重量部のn-ブタンおよび約0.1〜約15重量部の水を含む、好ましくは本質的にそれらからなる共沸混合物様組成物を提供する。そのような組成物は、約14.41psiaで約−1.66℃±4℃、好ましくは±2℃、より好ましくは±1℃の沸点を特徴とする。
【0014】
この実施態様の好ましい、より好ましい、ならびにもっとも好ましい組成物は、下記表1に記載される。表1の数字範囲は、「約」という語が前置きされると理解すべきである。
【0015】
【表1】

【0016】
好ましい実施態様において、本発明のHFC-365mfc/ブタン/水の組成物は、均質共沸組成物である。
【0017】
組成物の使用
本発明は、CFCおよびHCFCの代用品としてなど、幅広い用途に実用性を有する。例えば、本発明の1つの実施態様は、噴霧可能な組成物におけるプロペラント/溶媒としての本組成物の使用に関する。一般に、噴霧可能な種類の組成物は、噴霧される材料およびプロペラント/溶媒もしくはプロペラント溶媒の混合物を含む。本組成物は、溶媒、発泡剤、冷媒、洗浄剤およびエアゾールとしても有用である。
【0018】
本発明の1つの実施態様は、本発明の共沸混合物様組成物の1つ以上を含む発泡剤に関する。別の実施態様において、本発明は、発泡性組成物、好ましくはポリウレタンおよびポリイソシアヌレートフォーム組成物、およびフォームを調製する方法を提供する。そのようなフォームの実施態様において、本共沸混合物様組成物の1つ以上が、発泡性組成物中に発泡剤として含まれ、その発泡性組成物は、当業界で周知のように、好ましくはフォームもしくは気泡構造を形成する適切な条件下で反応および発泡できる追加成分を1つ以上含む。本方法は、好ましくはそのような発泡性組成物を与え、フォーム、好ましくは独立気泡フォームを得るのに有効な条件下でそれを反応させることを含む。本発明は、また本発明の共沸混合物様組成物の1つ以上を含む発泡剤を含むポリマーフォーム配合物から調製されたフォーム、好ましくは独立気泡フォームに関する。その内容が参照によって本明細書に取り込まれる"Polyurethanes Chemistry and Technology", I&II卷、SaundersおよびFrisch, 1962, John Wiley and Sons, ニューヨーク、ニューヨーク州に記載される方法など、当業界で周知の方法のいずれも本発明のフォーム実施態様に応じた使用に使用もしくは適応してもよい。一般に、そのような好ましい方法は、イソシアネート、ポリオールもしくはポリオール類の混合物、本組成物の1つ以上を含む発泡剤もしくは発泡剤の混合物、ならびに触媒、界面活性剤、場合によっては存在してもよい難燃剤、着色剤もしくは他の添加剤などの他の材料を組み合わせることによりポリウレタンもしくはポリイソシアヌレートフォームを調製することを含む。多くの用途において、プレブレンドした配合物中にポリウレタンもしくはポリイソシアヌレートフォームのための成分を与えることは好都合である。もっとも典型的には、フォーム配合物は、2つの成分にプレブレンドされる。イソシアネートならびに場合によっては存在してもよいある界面活性剤および発泡剤は、普通“A”成分と称される第一成分を含む。ポリオールもしくはポリオール混合物、界面活性剤、触媒、発泡剤、難燃剤および他のイソシアネート反応性成分は、普通“B”成分と称される第二成分を含む。したがって、ポリウレタンもしくはポリイソシアヌレートフォームは、AおよびB副成分を小さな配合物の場合はハンドミックスで、好ましくは機械ミックス技術により合わせてブロック、スラブ、ラミネート、現場注入パネルおよび他の成形品、噴霧適用フォーム、フロスなどを形成することにより容易に調製される。場合によっては、難燃剤、着色剤、補助発泡剤などの他の成分ならびに他のポリオール類さえも第三流れとしてミックスヘッドもしくは反応部位に添加できる。しかし、もっとも好都合には、それらはすべて前述したような1つのB成分に組み込まれる。本発明の組成物を用いる熱可塑性フォームを製造することも可能である。例えば、従来のフォームポリウレタン類およびイソシアヌレート配合物を共沸混合物様組成物と従来の方法で組み合わせて硬質フォームを製造してもよい。
【0019】
本発明によるHFC-365mfcを含む共沸混合物様混合物は、特にフォーム発泡剤として好適である。特に有益なものは、場合によっては、例えば、他のハイドロフルオロカーボン類、例えば、ジフルオロメタン(HFC-32);ジフルオロエタン(HFC-152);トリフルオロエタン(HFC-143);テトラフルオロエタン(HFC-134);ペンタフルオロエタン(HFC-125);ペンタフルオロプロパン(HFC-245);ヘキサフルオロプロパン(HFC-236);ヘプタフルオロプロパン((HFC-227);ならびに不活性ガス類、例えば、空気、窒素、二酸化炭素など、他のゼロオゾン枯渇材料をさらに含んでもよい本発明の共沸混合物様組成物である。前述のハイドロフルオロカーボン類について異性体が存在する場合には、それぞれの異性体を単独もしくは混合物の形で用いてもよい。
【0020】
分散助剤、気泡安定剤および界面活性剤も発泡剤混合物中に組み込んでもよい。周知のシリコーン油などの界面活性剤類は、添加されると気泡安定剤としての務めを果たす。いくつかの代表的な材料は、DC-193、B-8404およびL-5340の名前で販売されているが、それらは、一般に米国特許番号2,834,748、2,917,480および2,846,458に開示される材料などポリシロキサンポリオキシアルキレンブロックコポリマー類である。発泡剤混合物のための場合によっては存在してもよい他の添加剤としては、トリ(2-クロロエチル)ホスフェート、トリ(2-クロロプロピル)ホスフェート、トリ(2,3-ジブロモプロピル)ホスフェート、トリ(1,3-ジクロロプロピル)ホスフェート、ジアンモニウムホスフェート、種々のハロゲン化芳香族化合物、酸化アンチモン、アルミニウムトリハイドレート、ポリビニルクロライドなどが挙げられる。
【0021】
別の実施態様において、本発明の共沸混合物様組成物を噴霧可能な組成物中にプロペラントとして単独もしくは既知のプロペラントと組み合わせて用いてもよい。噴霧可能な組成物は、噴霧される材料と、本発明の共沸混合物様組成物を含む、本質的にそれからなる、ならびにそれからなるプロペラントとを含む、本質的にそれらからなる、ならびにそれらからなる。不活性成分、溶媒および他の材料も噴霧可能な混合物中に存在してもよい。好ましくは、噴霧可能な組成物は、エアゾールである。噴霧される好適な材料としては、限定はされないが、消臭剤、香料、ヘアスプレー、クレンザーおよび艶出剤などの化粧材料、ならびに抗喘息および抗口臭医薬品などの医薬材料が挙げられる。
【0022】
別のプロセスの実施態様において、HFC-365mfcから水を除去するためのプロセスが提供されるが、そのプロセスは、HFC-365mfc、水およびブタンの混合物を蒸留して本質的にHFC-365mfc、ブタンおよび水からなる共沸混合物様組成物を分離する工程を含む。かくて、HFC-365mfc、水およびブタンの共沸混合物様混合物を用いて、HFC-365mfc製造プロセスにおいてバルク量の水を除去することができる。本発明の別の実施態様において、プロセスが提供されるが、そのプロセスにおいて、HFC-365mfc、水およびブタンの混合物は相分離され、該蒸留工程を実施する前にバルク量の水を除去する。HFC-365mfc相中の残留量の水は、共沸混合物の存在ゆえに蒸留できる。後続の蒸留もしくは多重蒸留を用いて、他の不純物とともに極微量の水を除去して所望の純度を達成できる。
【0023】
本発明の組成物の成分は、市販されている既知の材料であるが、あるいは既知の方法で調製してもよい。好ましくは、成分は、システムの冷却もしくは加熱特性、定沸点特性あるいは発泡剤特性に悪影響を及ぼすことを避けるために十分に高い純度のものである。計量投与インへラーの場合、適切な現行のGood Manufacturing Processをこれらの材料を製造するために用いてもよい。
【0024】
必要に応じて、追加の成分を添加して本発明の共沸混合物様組成物の特性を特注してもよい。例として、本発明の組成物が冷媒として用いられる場合には、油溶性助剤を添加してもよい。安定剤および他の材料も添加して本発明の組成物の特性を強化してもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンおよびn-ブタンを含む共沸混合物様組成物。
【請求項2】
約14.41psiaで約−1.64℃±4℃の定沸点を特徴とする、請求項1に記載の共沸混合物様組成物。
【請求項3】
約14.41psiaで約−1.66℃±4℃の定沸点を特徴とする、請求項1に記載の共沸混合物様組成物。
【請求項4】
さらに水を含む、請求項1に記載の共沸混合物様組成物。
【請求項5】
本質的に約40〜約98重量部のn-ブタンおよび約5〜約25重量部のHFC-365mfcからなる、請求項1に記載の共沸混合物様組成物。
【請求項6】
本質的に約65〜約85重量部のn-ブタン、約10〜約20重量部のHFC-365mfcおよび約5〜約15重量部の水からなる、請求項4に記載の共沸混合物様組成物。
【請求項7】
請求項1に記載の共沸混合物様組成物を含む組成物を発泡させることを含む、フォームを製造するための方法。
【請求項8】
ポリオールおよび請求項1に記載の組成物を含む発泡剤のプレミックス。
【請求項9】
請求項1に記載の共沸混合物様組成物を含む発泡性組成物を発泡させることにより調製される、独立気泡フォーム組成物。
【請求項10】
請求項1に記載の共沸混合物様組成物を含む発泡剤。
【請求項11】
噴霧される材料および請求項1に記載の共沸混合物様組成物を含むプロペラントを含む噴霧可能な組成物。
【請求項12】
前記噴霧可能な組成物がエアゾールである、請求項11に記載の噴霧可能な組成物。
【請求項13】
前記噴霧可能な組成物が化粧材料である、請求項12に記載の噴霧可能な組成物。
【請求項14】
前記噴霧される材料が医薬材料である、請求項13に記載の噴霧可能な組成物。
【請求項15】
請求項1に記載の組成物を含む冷媒組成物。
【請求項16】
本質的に約50〜約99重量部のn-ブタンおよび約1〜約50重量部のHFC-365mfcからなる、請求項1に記載の共沸混合物様組成物。
【請求項17】
請求項1に記載の共沸混合物様組成物を含む発泡性組成物。
【請求項18】
請求項10に記載の発泡剤を含む発泡性組成物。

【公表番号】特表2006−526701(P2006−526701A)
【公表日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−515122(P2006−515122)
【出願日】平成16年6月3日(2004.6.3)
【国際出願番号】PCT/US2004/017482
【国際公開番号】WO2004/108809
【国際公開日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】