説明

ペンテンニトリル異性体の分離方法

【課題】技術的に簡単な、かつ経済的に有効な方法で、大気圧における相対揮発度α1.0〜2.0のペンテンニトリル異性体を蒸留分離すること可能とする方法を提供する。
【解決手段】混合物から1種類以上の異性体を除去するペンテンニトリル異性体混合物の分離方法であって、ペンテンニトリル異性体混合物を、減圧下に、蒸留により分離すること特徴とする分離方法が得られた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペンテンニトリル異性体混合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アジポニトリルはナイロン製造における重要な中間体であり、1,3−ブタジエンの二重のヒドロシアノ化(double hydrocyanation)を行うことにより製造される。第一のヒドロシアノ化では、リン配位子で安定化させたニッケル(0)の存在下に1,3−ブタジエンをシアン化水素と反応させ、3-ペンテンニトリルを得る。この第一のヒドロシアノ化による二次的成分は、主に2−メチル-3-ブテンニトリル、2-ペンテンニトリル、2−メチル-2-ブテンニトリル、C9ニトリル、メチルグルタロニトリル及び4−ビニルシクロヘキサンである。そして、第二のヒドロシアノ化でも、上記と同様にニッケル触媒を用いて、3−ペンテンニトリルをシアン化水素と反応させることによりアジポニトリルが得られる。この場合にはルイス酸が添加される。第二のヒドロシアノ化でも、反応体、生成物としてのニトリル及び上記二次的成分の混合物が得られる。
【0003】
上述の二度の反応で生ずる錯体混合物は、アジポニトリル製造法を、経済的に有利な方法で実施するために相互に分離しなければならない。1,3−ブタジエンをヒドロシアノ化し、これにより得られた3−ペンテンニトリルをシアン化水素の新たな分子と反応させることによるアジポニトリルの製造方法からは、錯体混合物の分離法、特にペンテンニトリル異性体の分離法については公知とはなっていない。
【0004】
DE10049265号に記載されているように、ペンテンニトリルの、大気圧での相対揮発度αは1.0〜2.0であり、2種の異性体の種々の組み合わせにおいては1.0〜1.5である。相対揮発度αは2種類の物質の蒸気圧の商であり、蒸気圧の高い方の物質の蒸気圧を分子とする。
【0005】
【表1】

【0006】
大気圧での相対揮発度が1.0よりも大きいため上記化学種の蒸留による分離は可能であるものの、実際には技術的には極めて困難であり、エネルギーの消費も激しい。
【0007】
トランス−3−ペンテンニトリルとトランス−2−ペンテンニトリルの分離を回避するため、例えば米国特許第3,526,654号明細書、米国特許第3,564,040号明細書、米国特許第3,852,325号明細書、及び米国特許第3,852,327号明細書では、触媒を用いた蒸留により除去することが困難なペンテンニトリル異性体を蒸留により容易に除去可能な異性体に転化することが提案されている。
【0008】
触媒を用いた異性化によると、不要な異性体やオリゴマーが生成し、所望の生成物が減少するという不具合がある。
【0009】
(Z)-2-メチル−2-ブテンニトリルと2-メチル−3-ブテンニトリルの分離、及びトランス−2−ペンテンニトリルとトランス−3−ペンテンニトリルの分離を回避するため、米国特許第3,865,865号明細書では、ニトリル混合物を亜硫酸塩水溶液で処理し、特に、共役ニトリル類(conjugated nitriles)、(Z)−2−メチル−2−ブテンニトリル又はトランス−2−ペンテンニトリルの重亜硫酸塩付加物を含む水性相を得、ニトリル中の有機相を除去する方法が提案されている。この方法の不具合は、リン(III)配位子を有するニッケル(0)触媒を用いてヒドロシアノ化反応に用いる前に、有機相から、まず水を完全に除去しなければならないことである。水の除去を行わないと、リン(III)配位子が不可逆的に加水分解し、失活するためである。本発明の方法の他の不具合は、米国特許第3,865,865号明細書に記載されている通り、得られた重亜硫酸塩付加物が共役ニトリルを更に用いた場合にのみ分離可能であり、結果的にも過激な条件において、平凡な収率が得られるに過ぎないということである。
【0010】
分離可能性を改善するため、DE10049265号には液体希釈剤を添加することにより抽出蒸留を行い除去可能性を向上することが提案されている。この方法も、得られたニトリル流から、液体希釈剤、特に水を、予め他の処理工程を行うことにより完全に分離しなければならないという不具合を有する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、技術的に簡単な、かつ経済的に有効な方法で、大気圧における相対揮発度α1.0〜2.0のペンテンニトリル異性体を蒸留分離すること可能とする方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明は、混合物から1種類以上の異性体を除去するペンテンニトリル異性体混合物の分離方法が得られた。本発明の分離方法によると、異性体ペンテンニトリル混合物の分離は減圧下の蒸留により行われる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の方法では、2種類以上の異性体を分離することが好ましい。
【0014】
本発明の方法は、
2−メチル−3−ブテンニトリルと3−ペンテンニトリルとを含む混合物、
2−メチル−3−ブテンニトリルと(Z)−2−メチル−2−ブテンニトリルとを含む混合物、
シス−2−ペンテンニトリルと3−ペンテンニトリルとを含む混合物、及び
(E)−2−メチル−2−ブテンニトリルと3−ペンテンニトリルとを含む混合物、からなる群から選択される混合物に適用されると好ましい。
【0015】
本発明において、3−ペンテンニトリルとは、トランス−3−ペンテンニトリル、又は場合に応じてシス−3−ペンテンニトリル及び4−ペンテンニトリルを含んでもよい、トランス−3−ペンテンニトリル混合物を意味する。
【0016】
本発明の方法では、ニッケル(0)触媒錯体の存在下に、ブタジエンがヒドロシアノ化され、3−ペンテンニトリル、及び3−ペンテンニトリルと2−メチル−3−ブテンニトリルとの混合物が得られる。
【0017】
リン配位子を有するNi(0)錯体、及び/又は遊離リン配位子は、ニッケル(0)錯体中に均一に溶解していると好ましい。
【0018】
ニッケル(0)錯体のリン錯体、及び遊離リン配位子は、単座又は二座ホスフィン、ホスフィット、ホスフィニット及びホスホニットから選択されると好ましい。
【0019】
これらのリン配位子は式Iで示されるものであると好ましい。
【0020】
【化1】

【0021】
本発明において、化合物(1)は単独の化合物であっても、上記式で示される複数の化合物の混合物であっても良い。
【0022】
本発明によると、X1、X2、X3はそれぞれ独立に酸素又は単結合を示す。
【0023】
X1、X2、X3の全てが単結合を意味する場合、化合物Iは式P(R1R2R3)で示され、R1、R2及びR3が以下の意味を有するホスフィンとなる。
【0024】
X1、X2、X3のうちの2個が単結合、1個が酸素を意味する場合、化合物Iは式P(OR1)(R2)(R3)、又はP(R1)(OR2)(R3)、又はP(R1)( R2)(OR3)で示され、R1、R2及びR3が以下の意味を有するホスフィニットとなる。
【0025】
X1、X2、X3のうちの1個が単結合、2個が酸素を意味する場合、化合物Iは式P(OR1)(OR2)(R3)、又はP(R1)(OR2)(OR3)、又はP(OR1)(R2)(OR3)で示され、R1、R2及びR3が以下の意味を有するホスホニットとなる。
【0026】
好ましい実施の形態においては、X1、X2、X3の全てが酸素であり、化合物Iは式P(OR1)(OR2)(OR3)で示され、R1、R2及びR3が以下の意味を有する。
【0027】
本発明によると、R1、R2及びR3は相互に同じであっても異なっても良い。R1、R2及びR3はそれぞれ独立に、好ましくは炭素原子数1〜10のアルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、アリール基、例えばフェニル、o−トリル、m−トリル、p−トリル、1−ナフチル、2−ナフチル、又は炭素原子数の1〜20のヒドロカルボニル、例えば1,1’−ビフェノール、1,1’−ビナフトールである。R1、R2及びR3は直接相互に結合、すなわち中心のリン原子を介してのみではなく、更に相互に結合していても良い。しかしながら、R1、R2及びR3は直接結合していないことが好ましい。
【0028】
好ましい実施の形態において、R1、R2及びR3は、フェニル、o−トリル、m−トリル及びp−トリルから選択される。好ましい実施の形態においては、R1、R2及びR3のうちの2個までがフェニル基とされる。
【0029】
他の好ましい実施の形態において、R1、R2及びR3のうちの2個までがo−トリル基とされる。
【0030】
使用可能な化合物Iの特に好ましい例は、式Iaの化合物である。
【0031】
(o‐トリル‐O‐)w(m‐トリル‐O‐)x(p‐トリル‐O‐)y(フェニル‐O‐)zP (Ia)
(w、x、y及びzはそれぞれ自然数であり、w+x+y+z=3、及びw、z≦2の条件が成立する。)
このような化合物Iaの例は(o‐トリル‐O‐)(フェニル‐O‐)2P、(m‐トリル‐O‐)(フェニル‐O‐)2P、(o‐トリル‐O‐)(フェニル‐O‐)2P、(p‐トリル‐O‐)2(フェニル‐O‐)P、(m‐トリル‐O‐)2(フェニル‐O‐)P、(m‐トリル‐O‐)2(フェニル‐O‐)P、(m‐トリル‐O‐)(p‐トリル‐O‐)(フェニル‐O‐)P、(o‐トリル‐O‐)(p‐トリル‐O‐)(フェニル‐O‐)P、(o‐トリル‐O‐)(m‐トリル‐O‐)(フェニル‐O‐)P、(p‐トリル‐O‐)3P、(m‐トリル‐O‐)(p‐トリル‐O‐)2P、(o‐トリル‐O‐)(p‐トリル‐O‐)2P、(m‐トリル‐O‐)2(p‐トリル‐O‐)P、(o‐トリル‐O‐)2(p‐トリル‐O‐)P、(o‐トリル‐O‐)(m‐トリル‐O‐)(p‐トリル‐O‐)P、(m‐トリル‐O‐)3P、(o‐トリル‐O‐)(m‐トリル‐O‐)2P、(o‐トリル‐O‐)2(m‐トリル‐O‐)P、又はこれらの化合物の混合物である。
【0032】
m−クレゾールとp−クレゾールとを、特に2:1のモル比で含む混合物を反応させることにより、(m‐トリル‐O‐)3P、(m‐トリル‐O‐)2(p‐トリル‐O‐)P、(m‐トリル‐O‐)(p‐トリル‐O‐)2P、及び(p‐トリル‐O‐)3Pを含む混合物が得られることがある。同混合物は粗製油の蒸留による後処理中に、三ハロゲン化リン、例えば三塩化リンと一緒に得られる。
【0033】
この他、好ましい実施の形態において適するリン配位子は式Ibで示されるホスフィットであり、詳細はDE−A19953058号公報に記載されている。
【0034】
【化2】

【0035】
式中、
1はリン原子を芳香族部分(aromatic system)に結合する酸素原子に対するo−位にC1−C18アルキル基を有する芳香族基、又はリン原子を芳香族部分に結合する酸素原子に対するo−位に芳香族置換基を有する芳香族基、又はリン原子を芳香族部分に結合する酸素原子に対するo−位に縮合芳香族置換基を有する芳香族基であり、
2はリン原子を芳香族部分に結合する酸素原子に対するm−位にC1−C18アルキル基を有する芳香族基、又はリン原子を芳香族部分に結合する酸素原子に対するm−位に芳香族置換基を有する芳香族基、又はリン原子を芳香族部分に結合する酸素原子に対するm−位に縮合芳香族置換基を有する芳香族基、又はリン原子を芳香族部分に結合する酸素原子に対するo−位に水素原子を有する芳香族基であり、
3はリン原子を芳香族部分に結合する酸素原子に対するp−位にC1−C18アルキル基を有する芳香族基、又はリン原子を芳香族部分に結合する酸素原子に対するp−位に芳香族置換基を有する芳香族基、又はリン原子を芳香族部分に結合する酸素原子に対するo−位に水素原子を有する芳香族基であり、
4は、リン原子を芳香族部分に結合する酸素原子に対するo−位、m−位、p−位にR1、R2及びR3以外の置換基を有する芳香族基、又はリン原子を芳香族部分に結合する酸素原子に対するo−位に水素原子を有する芳香族基であり、
xは1又は2であり、
y、z、pはそれぞれ独立に0、1又は2(但し、x+y+z+p=3)である。
【0036】
式Ibで示される好ましいホスフィットは、DE−A19953058号公報に記載されている。R1はo−トリル、o−エチルフェニル、o−n−プロピルフェニル、o−イソプロピルフェニル、o−n−ブチルフェニル、o−sec−ブチルフェニル、o−tert−ブチルフェニル、(o−フェニル)フェニル、又は1−ナフチル基である。
【0037】
好ましいR2基はm−トリル、m−エチルフェニル、m−n−プロピルフェニル、m−イソプロピルフェニル、m−n−ブチルフェニル、m−sec−ブチルフェニル、m−tert−ブチルフェニル、(m−フェニル)フェニル、又は2−ナフチル基である。
【0038】
好ましいR3基はp−トリル、p−エチルフェニル、p−n−プロピルフェニル、p−イソプロピルフェニル、p−n−ブチルフェニル、p−sec−ブチルフェニル、p−tert−ブチルフェニル、(p−フェニル)フェニル基である。
【0039】
4基はフェニル基であると好ましく、pは0であると好ましい。化合物Ibにおける符号x、y、z及びpは以下の値をとることができる。
【0040】
【表2】

【0041】
式Ibで表される好ましいホスフィットは、pが0であり、R1、R2及びR3がそれぞれ独立にo−イソプロピルフェニル、m−トリル及びp−トリルのいずれかを意味し、R4がフェニルを意味する。
【0042】
式Ibで表される特に好ましいホスフィットは、R1がo−イソプロピルフェニル基、R2がm−トリル基、及びR3がp−トリル基であり、各符号が上記の意味を示すホスフィット、R1がo−トリル基、R2がm−トリル基、R3がp−トリル基であり、各符号が上記の意味を示すホスフィット、R1が1−ナフチル基、R2がm−トリル基、R3がp−トリル基であり、各符号が上記の意味を示すホスフィット、R1がo−トリル基、R2が2−ナフチル基、R3がp−トリル基であり、各符号が上記の意味を示すホスフィット、及びR1がo−イソプロピルフェニル基、R2が2−ナフチル基、及びR3がt−トリル基であり、各符号が上記の意味を示すホスフィット、及びこれらのホスフィットの混合物である。
【0043】
式Ibのホスフィットは、
a)三ハロゲン化リンと、R1OH、R2OH、R3OH及びR4OH、並びにこれらの混合物から選択されたアルコールと、を反応させてジハロリンモノエステルを製造し、
b)上記ジハロリンモノエステルと、R1OH、R2OH、R3OH又はR4OH、又はこれらの混合物から選択されたアルコールとを反応させてモノハロリンジエステルを製造し、更に
c)モノハロリンジエステルと、R1OH、R2OH、R3OH又はR4OH、又はこれらの混合物から選択されたアルコールとを反応させて式Ibのホスフィットを得ることにより得られる。
【0044】
本発明の反応は3個の別々の工程により行うことも可能である。同様に、3工程のうちの2工程を合体させること、すなわちa)工程とb)工程、又はb)工程とc)工程を合体させることも可能である。この他、工程a)、b)及びc)の全ての工程を一体とすることも可能である。
【0045】
1OH、R2OH、R3OH及びR4OH、並びにこれらの混合物から選択されたアルコールの適するパラメーターと使用量は、数種類の単純な予備実験をすることにより簡単に決定される。
【0046】
有効な三ハロゲン化リンは、原則として全ての三ハロゲン化リンであり、使用されるハロゲンがCl、Br、I、特にCl、及びその混合物であると好ましい。更に、同様に又は異なってハロゲン置換された複数種類のホスフィンの混合物を三ハロゲン化リンとして用いることも可能である。特に好ましい例はPCl3である。ホスフィットIbの製造における反応条件と後処理についての詳細はDE−A19953058に記載されている。
【0047】
ホスフィットIbは、配位子としての異なるホスフィットIbの混合物の形態で使用しても良い。このような混合物は、例えばホスフィットIbの製造により得られる。
【0048】
しかしながら、リン配位子は多座、特に二座であると好ましい。好ましく使用される配位子の例を下式IIに示す。
【0049】
【化3】

【0050】
上記式中、
11、X12、X13、X21、X22、X23はそれぞれ独立に酸素又は単結合を意味し、
11、R12はそれぞれ独立に同一又は異なる、個別又は架橋(ブリッジ)した有機基、
21、R22はそれぞれ独立に同一又は異なる、個別又は架橋(ブリッジ)した有機基、
Yは架橋基(bridging group)を意味する。
【0051】
本発明において、化合物IIは上記式の単独の化合物であっても、異なる化合物の混合物であってもよい。
【0052】
好ましい実施の形態において、X11、X12、X13、X21、X22、X23はそれぞれ酸素であってもよい。このような場合には、架橋基Yはホスフィット基に結合している。
【0053】
他の好ましい実施の形態において、X11及びX12がそれぞれ酸素であり、かつX13が単結合であるか、X11及びX13がそれぞれ酸素であり、かつX12が単結合であってもよく、X11、X12及びX13により囲まれているリン原子はホスホニットの中心原子となる。この場合、X21、X22及びX23はそれぞれ酸素であるか、X21とX22がそれぞれ酸素であり、かつX23が単結合であるか、X21とX23がそれぞれ酸素であり、かつX22が単結合であるか、X23が酸素であり、かつX21及びX22がそれぞれ単結合であるか、X21が酸素であり、かつX22及びX23が単結合であるか、又はX21、X22及びX23がそれぞれ単結合であってもよい。これにより、X21、X22及びX23により囲まれるリン原子がホスフィット、ホスホニット、ホスフィニット、又はホスフィン、好ましくはホスホニットの中心原子となる。
【0054】
他の好ましい実施の形態において、X13が酸素であり、かつX11及びX12がそれぞれ単結合であるか、X11が酸素であり、かつX12及びX13がそれぞれ単結合であってもよく、これによりX11、X12及びX13により囲まれるリン原子がホスホニットの中心原子となる。この場合、X21、X22及びX23はそれぞれ酸素であるか、X23が酸素であり、かつX21及びX22がそれぞれ単結合であるか、X21が酸素であり、かつX22及びX23が単結合であるか、X21、X22及びX23がそれぞれ単結合であってもよい。これにより、X21、X22及びX23により囲まれるリン原子がホスフィット、ホスフィニット、又はホスフィン、好ましくはホスフィニットの中心原子となる。
【0055】
他の好ましい実施の形態において、X11、X12及びX13がそれぞれ単結合であってもよく、これによりX11、X12及びX13により囲まれるリン原子がホスフィンの中心原子となる。この場合、X21、X22及びX23はそれぞれ酸素であるか、X21、X22及びX23がそれぞれ単結合であってもよく、これにより、X21、X22及びX23により囲まれるリン原子がホスフィット又はホスフィン、好ましくはホスフィンの中心原子となる。
【0056】
架橋基Yは、C1−C4アルキル、ハロゲン、例えばフッ素、塩素、臭素、ハロゲン化アルキル、例えばトリフルオロメチル、アリール、例えばフェニルにより置換されているアリール基、又は無置換のアリール基、好ましくは芳香族部分の炭素原子数が6〜20の基、特にピロカテコール、ビス(フェノール)又はビス(ナフトール)であると有利である。
【0057】
11及びR12基はそれぞれ独立に、同一又は異なる有機基を意味してもよい。R11及びR12基はアリール基、好ましくは炭素原子数6〜10のものであると有利であり、これらの基は無置換であるか、又は単一置換もしくは多置換、特にC1−C4アルキル、ハロゲン、特にフッ素、塩素、臭素、ハロゲン化アルキル、例えばトリフルオロメチル、アリール、例えばフェニル又は無置換アリール基により単一置換もしくは多置換されていてもよい。
【0058】
21及びR22基はそれぞれ独立に、同一又は異なる有機基を意味してもよい。R21及びR22基はアリール基、好ましくは炭素原子数6〜10のものであると有利であり、これらの基は無置換であるか、又は単一置換もしくは多置換、特にC1−C4アルキル、ハロゲン、特にフッ素、塩素、臭素、ハロゲン化アルキル、例えばトリフルオロメチル、アリール、例えばフェニル又は無置換アリール基により単一置換もしくは多置換されていてもよい。
【0059】
11及びR12基は個別に存在しても、架橋されていても良い。 更にR21及びR22基も個別に存在しても、架橋されていても良い。又は上述のように、R11、R12、R21及びR22基が別々に存在していても、このうちの2基が架橋(結合)し、かつ2個が別々に存在していても、4基が全て架橋していても良い。
【0060】
特に好ましい実施の形態において、好ましい化合物は米国特許第5,723,641号明細書に記載された式I、II、III、IV及びVにより示される化合物である。特に好ましい実施の形態において、有用な化合物としては米国特許第5,512,696号明細書に記載された式I、II、III、IV、V、VI、及びVII、特に同文献の実施例1〜31で使用されている化合物を挙げることができる。特に好ましい実施の形態において、有用な化合物は米国特許第5,821,378号明細書に記載されている式I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIII、XIV、及びXVにより示される化合物、特に好ましくは同文献中の実施例1〜73に記載されている化合物である。
【0061】
特に好ましい実施の形態において、有用な化合物は米国特許第5,521,695号明細書に記載された式I、II、III、IV、V及びVIにより示される化合物である。特に好ましい実施の形態において、有用な化合物としては米国特許第5,981,772号明細書に記載された式I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIII及びXIVにより示される化合物、特に好ましくは同文献中の実施例1〜66に記載されている化合物である。
【0062】
特に好ましい実施の形態において、有用な化合物は米国特許第6,127,567号明細書に記載された実施例1〜29で使用されている化合物である。特に好ましい実施の形態において、有用な化合物は米国特許第6,020,516号明細書に記載された式I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX及びXにより示される化合物、特に好ましくは同文献中の実施例1〜33で使用されている化合物である。特に好ましい実施の形態において、有用な化合物としては米国特許第5,959,135号明細書に記載された化合物、及び同文献の実施例1〜13で用いられている化合物である。
【0063】
特に好ましい実施の形態において、好ましい化合物は米国特許第5,847,191号明細書に記載された式I、II及びIIIにより示される化合物である。特に好ましい実施の形態において、有用な化合物としては米国特許第5,523,453号明細書に記載された化合物、特に式、1、2、3、4、5、6、7、8、9,10、11、12、13、14、15、16,17、18、19、20及び21により示される化合物である。特に好ましい実施の形態において、有用な化合物はWO01/14392号公報に記載されたものであり、特に式V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIII、XIV、XV、XVI、XVII、XXI、XXII、XXIIIにより示される化合物である。
【0064】
特に好ましい実施の形態において、有用な化合物はWO98/27054号公報に記載された化合物である。特に好ましい実施の形態において、有用な化合物はWO99/13983号公報に記載されたものである。特に好ましい実施の形態において、有効な化合物はWO99/64155号公報に記載されている化合物である。
【0065】
特に好ましい実施の形態において、有用な化合物はドイツ特許出願DE100 380 37号に記載されている。特に好ましい実施の形態において、有用な化合物はドイツ特許出願DE100 460 25号に記載されている。特に好ましい実施の形態において、有用な化合物はドイツ特許出願DE101 502 85号に記載されている。
【0066】
特に好ましい実施の形態において、有用な化合物はドイツ特許出願DE101 502 86号に記載されている。特に好ましい実施の形態において、有用な化合物はドイツ特許出願DE102 071 65号に記載されている。更に特に好ましい実施の形態において、有用なリンキレート配位子はUS2003/0100442A1号公報に記載されている。
【0067】
特に好ましい実施の形態において、有用なリンキレート配位子は2003年10月30日付けのドイツ特許出願(整理)番号DE103 50 999.2号に記載されている。なお、同出願は前記出願日よりも前の優先日を有するが、本件特許出願の優先日には未公開であったものである。
【0068】
I、Ia、Ib及びIIに記載された化合物及びその製造方法は公知である。使用されるリン配位子は、化合物I、Ia、Ib及びIIの2種類以上の混合物であっても良い。
【0069】
本発明の製造法についての好ましい実施の形態においては、ニッケル(0)錯体のリン配位子及び/又はトリトリルホスフィット、二座リンキレート配位子及び下式Ib
【0070】
【化4】

で示され、R1、R2及びR3がそれぞれ独立にo−イソプロピルフェニル、m−トリル、p−トリルから選択され、R4がフェニル基であり、xが1又は2、y、z、pがそれぞれ独立に0、1又は2であり、x+y+z+p=3の条件を満たす値をとる化合物、又はこのような化合物の混合物である。
【0071】
アジポニトリルの製造に用いられるヒドロシアノ化の所望の生成物は、トランス−3−ペンテンニトリル、シス−3−ペンテンニトリル及び4−ペンテンニトリルである(本発明において3−ペンテンニトリルという)。しかしながら、触媒組成物に応じてヒドロシアノ化の間に生ずる2−メチル−3−ブテンニトリルは、ヒドロシアノ化流出液を処理する前に、形成されるペンテンニトリルの総量に対して少なくとも二桁のパーセンテージで除去しなければならない。3−ペンテンニトリルにおける2−メチル−3−ブテンニトリルの除去には厳密性が要求され、処理についての詳細には従わなければならない。すなわち、次工程のヒドロシアノ化においては2−メチル−3−ブテンニトリルから、アジポニトリルの製造で不要な副生成物のメチルグルタロニトリル(MGN)が生ずる可能性があるためである。しかしながら、3−ペンテンニトリルから2−メチル−3−ブテンニトリルを実質的に完全に除去するためには複雑な機器が必要とされる上、必要なエネルギー要求量も非常に多く、これらの条件は2種類の物質の蒸気圧の比として定義される相対揮発度に基づいて決定される。相対揮発度は大気圧において約1.7であるが、この値はトランス−3−ペンテンニトリルについての標準沸点416.8K、及び2−メチル−3−ブテンニトリルについての標準沸点396.1Kから得たものである。本発明により、大気圧未満における2−メチル−3−ブテンニトリル及び3−ペンテンニトリルの相対揮発度は低下することがわかった。
【0072】
従って、本発明の実施形態Iには、2−メチル−3−ブテンニトリルと3−ペンテンニトリルとを含む混合物を分離する方法が含まれる。同混合物は、ヒドロシアノ化触媒上の、1,3−ブタジエンとシアン化水素との反応において好ましく得られる。得られるヒドロシアノ化流出液は、ヒドロシアノ化を経ても一部未反応とされた1,3-ブタジエンを含むのが一般的である。未反応の1,3−ブタジエンは適当な方法により少なくとも部分的には除去可能であり、このように得られた生成物流中に存在する触媒成分も適当な方法により除去される。このような方法の例は、ドイツ特許出願公開第102 004 004 720号公報、及びドイツ特許出願公開第102 004 004 724号公報に記載されている。しかしながら、未反応の1,3−ブタジエンと触媒成分を除去することは必ずしも必須ではない。
【0073】
2−メチル−3−ブテンニトリルと3−ペンテンニトリルとを含む混合物は、混合物中の全ペンテンニトリル異性体の合計量に対して0.1〜99.9質量%であると好ましく、1〜99質量%であると更に好ましく、10〜90質量%であると特に好ましい。3−ペンテンニトリルの割合は、混合物中の全ペンテンニトリル異性体の合計量に対して0.1〜99.9質量%であると好ましく、1〜99質量%であると更に好ましく、10〜90質量%であると特に好ましい。
【0074】
2−メチル−3−ブテンニトリルと3−ペンテンニトリルとを含む混合物の分離は当業者に公知の適当な機器を用いて行われる。適する蒸留装置は、例えばKirk-Othmer, Encyclopedia of Chemical Technology、第4版、8巻、John Wiley&Sons、ニューヨーク、1996、334-348頁等に記載の、例えば多孔板(シーブトレイ)塔、泡鐘塔、所定の構造を有する充填物又はランダムな充填物を含む塔(分離壁塔として作用しても良い)等が挙げられる。いずれの場合にも、蒸留装置は蒸発のための適する装置、例えば薄膜流下型蒸発器、薄膜蒸発器、多相螺旋管蒸発器、自然循環式蒸発器、又は強制循環式フラッシュ蒸発器、及び蒸気流を凝縮するための装置を具備する。蒸留は2又は3基等の複数の装置でも行われるが、単一の装置で行われると好ましい。更に、供給流を部分的に蒸発させる場合には、蒸留を一段階で行うことが可能である。
【0075】
蒸留塔の理論段数は、0〜100であると好ましく、1〜60であると更に好ましく、10〜40であると特に好ましい。還流速度はm(塔頂採取)/m(塔への還流)は0.01〜100であると好ましく、0.1〜10であると更に好ましく、0.2〜5であると特に好ましい。蒸留塔への供給は液体状でも気体状でも行われる。精留塔への供給は塔の底部から行われても塔の頂部から行われても良い。直立して設けられた塔の底部から見て、塔の高さの好ましくは1〜99%、更に好ましくは5〜90%、特に10〜80%の高さに相当する合計段数の位置において材料供給が行われる。
【0076】
2−メチル−3−ブテンニトリルと3−ペンテンニトリルとを含む混合物の蒸留は、0.001〜1バールで行われると好ましく、0.01〜0.5バールで行われると更に好ましく、0.05〜0.2バールで行われると特に好ましい。蒸留は、蒸留装置の底部の温度を好ましくは20〜200℃、更に好ましくは30〜150℃、特に50〜100℃として行うとよい。更に、塔頂温度を好ましくは−15〜200℃、更に好ましくは0〜100℃、特に好ましくは20〜50℃とすることにより行われる。本発明の特に好ましい実施の形態においては、蒸留装置の底部及び頂部の双方で上記温度範囲とされる。
【0077】
蒸留装置の塔頂では、供給流に比較して2−メチル−3−ブテンニトリルに富む混合物が得られる。蒸留装置の底部からは、供給流に比較して3−ペンテンニトリルに富む混合物が得られる。
【0078】
本発明の方法の実施形態IIにおいて、2−メチル−3−ブテンニトリルと(Z)−2−メチル−2−ブテンニトリルとを含む混合物の分離が行われる。
【0079】
既に述べたように、アジポニトリルを製造するためのヒドロシアノ化方法において、1,3−ブタジエンは最初に3−ペンテンニトリルにヒドロシアノ化される。得られる副生成物は2−メチル−3−ブテンニトリルである。本発明の上述の実施の形態Iにおいて述べたように、同副生成物は第二のヒドロシアノ化工程の前に反応流から除去される。除去された2−メチル−3−ブテンニトリルは、他の処理工程における1,3−ブタジエンのヒドロシアノ化のための総合的な方法において、所望の生成物である3−ペンテンニトリルに異性化してもよい。異性化中、(Z)−2−メチル−2−ブテンニトリルが副生成物として形成するが、異性化流出液の後処理でこれを2−メチル−3−ブテンニトリルから除去する必要がある。これは異性化工程に2−メチル−3−ブテンニトリルを循環させるに際し、処理工程中に同副生成物が蓄積されることを防ぐための処理である。
【0080】
沸点が実質的に同じであることから、複雑さ及び費用を経済的に許容可能な範囲として、大気圧下の蒸留により、2−メチル−3−ブテンニトリルから(Z)−2−メチル−2−ブテンニトリルを分離することは不可能である。2−メチル−3−ブテンニトリルを含む混合物から(Z)−2−メチル−2−ブテンニトリルを除去するためには複雑な機器が必要とされる上、エネルギー要求量も非常に大きく、これらの条件は上記2種類の物質の蒸気圧の比として定義される相対揮発度に基づいて決定される。相対揮発度は大気圧において約1.1であるが、この値は(Z)−2−メチル−3−ブテンニトリルについての標準沸点392.1K、及び2−メチル−3−ブテンニトリルについての標準沸点396.1Kから得たものである。本発明により、大気圧未満における(Z)−2−メチル−2−ブテンニトリル及び2−メチル−3−ブテンニトリルの相対揮発度は上昇することがわかった。従って、2−メチル−3−ブテンニトリルを含む混合物から(Z)−2−メチル−2−ブテンニトリルを、減圧下にて、複雑さと費用に関して経済的に許容可能なレベルで除去することが可能であることが見出された。
【0081】
しかるに、本発明の方法では2−メチル−3−ブテンニトリルと、(Z)−2−メチル−2−ブテンニトリルとを含み、2−メチル−3−ブテンニトリルの異性化等により得られた混合物を分離することが好ましい。
【0082】
異性化は、
a)ニッケル(0)、
b)配位子としてニッケル(0)を有する錯体状の三価リン含有化合物、及び
c)ルイス酸、
を含む組成物の存在下に行われると好ましい。
【0083】
ニッケル(0)含有触媒組成物は、公知方法により製造される。
【0084】
異性化触媒に用いられる配位子は、上記ヒドロシアノ化に用いられるリン配位子と同じであってもよい。
【0085】
更に、組成物はルイス酸を含んでもよい。
【0086】
本発明において、ルイス酸とは単一のルイス酸、又は2、3又は4種類等の複数種類のルイス酸混合物の双方を意味する。
【0087】
有用なルイス酸は無機又は有機金属化合物であって、カチオンとしてスカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、銅、亜鉛、ホウ素、アルミニウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオビウム、モリブデン、カドミウム、レニウム又は錫を含むものである。具体例には、ZnBr2,Znl2,ZnCl2,ZnSO4,CuCl2,CuCl,Cu(O3SCF32,CoCl2,Col2,Fel2,FeCl3,FeCl2(THF)2,TiCl4(THF)2,TiCl4,TiCl3,ClTi(O−i−プロピル)3,MnCl2,ScCl3,AlCl3,(C817)AlCl2,(C8172AlCl,(i−C492AlCl,(C652AlCl,(C65)AlCl2,ReCl5,ZrCl4,NbCl5,VCl3,CrCl2,MoCl5,YCl3,CdCl2,LaCl3,Er(O3SCF33,Yb(O2CCF33,SmCl3,B(C653,TaCl5があり、これらは、例えば米国特許第6,127,567号明細書、米国特許第6,171,996号明細書、及び米国特許第6,380,421号明細書に記載されている。この他の有用な金属塩の例は、ZnCl2,Col2及びSnCl2であり、有機金属化合物の例はRAlCl2,R2AlCl,RSnO3SCF3,R3B(Rはアルキル又はアリール基)である。これらは例えば、米国特許第3,496,217号明細書、米国特許第3,496,218号明細書、米国特許第4,774,353号明細書に記載されている。米国特許第3,773,809によると、助触媒として、カチオン形態の金属、すなわち亜鉛、カドミウム、ベリリウム、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、エルビウム、ゲルマニウム、錫、バナジウム、ニオビウム、スカンジウム、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、レニウム、パラジウム、トリウム、鉄及びコバルト、好ましくは亜鉛、カドミウム、チタン、錫、クロム、鉄及びコバルトであってもよく、アニオン部分が、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン、炭素原子数2〜7の低級脂肪酸のアニオン、HPO32-,H3PO2-,CF3COO-,C715OSO2-又はSO42-を含む化合物を用いてもよい。米国特許第 3,773,809号明細書に開示された他の好ましい助触媒にはホウ化水素、有機ホウ化水素、及び式R3B又はB(OR)3で表され、Rが水素、炭素原子数6〜18のアリール基、炭素原子数1〜7のアルキル置換基を有するアリール基又は炭素原子数1〜7のシアノ置換されたアルキル基により置換されたアリール基を示すホウ酸エステル、好ましくはトリフェニルボロンである。更に米国特許第 4,874,884号明細書に記載されているように、触媒組成物の活性を向上させるためにルイス酸の相乗的な活性を有する組み合わせを使用することも可能である。適する助触媒は、例えばCdCl2,FeCl2,ZnCl2,B(C653,(C653SnX,X=CF3SO3,CH364SO3及び(C653BCNから選択される。助触媒:ニッケルの好ましい使用割合は約1:16〜約50:1である。
【0088】
本発明においては、ルイス酸は米国特許第3,496,217号明細書、米国特許第3,496,218号明細書、米国特許第4,774,353号明細書、米国特許第4,874,884号明細書、米国特許第6,127,567号明細書、米国特許第6,171,996号明細書、及び米国特許第6,380,421号明細書に記載された助触媒も含む。
【0089】
上述した中で特に好ましいルイス酸は、特に金属塩、更に好ましくは金属ハロゲン化物、たとえばフッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、特に塩化物である。特に好ましい具体例としては塩化亜鉛、塩化鉄(II)、及び塩化鉄(III)がある。
【0090】
異性化は、液体希釈剤、例えばヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン等の炭化水素、エーテル、例えばジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、グリコールジメチルエーテル、アニソール、エーテル、例えば酢酸エチル、安息香酸メチル、ニトリル、例えばアセトニトリル、ベンゾニトリル、又はこれらの希釈剤の混合物の存在下に行われる。特に好ましい実施の形態において、有効な異性化は液体希釈剤の存在下に行われる。
【0091】
更に、非酸化雰囲気下、例えば、窒素又はアルゴン等の希ガスからなる保護ガス雰囲気下で異性化を行うと好ましいことがわかっている。
【0092】
(Z)−2−メチル−2−ブテンニトリル及び2−メチル−3−ブテンニトリルを含む混合物の分離も、当業者に公知の適する機器内で行われる。適する蒸留装置は、例えばKirk-Othmer, Encyclopedia of Chemical Technology、第4版、8巻、John Wiley&Sons、ニューヨーク、1996、334-348頁等に記載の、例えば多孔板(シーブトレイ)塔、泡鐘塔、所定の構造を有する充填物又はランダムな充填物を含む塔(分離壁塔として作用しても良い)等が挙げられる。いずれの場合にも、蒸留装置は蒸発のための適する装置、例えば薄膜流下型蒸発器、薄膜蒸発器、多相螺旋管蒸発器、自然循環式蒸発器、又は強制循環式フラッシュ蒸発器、及び蒸気流を凝縮するための装置を具備する。蒸留は2又は3基等の複数の装置でも行われるが、単一の装置で行われると好ましい。更に、供給流を部分的に蒸発させる場合には、蒸留を一段階で行うことが可能である。
【0093】
蒸留塔の理論段数は、0〜100であると好ましく、1〜60であると更に好ましく、10〜40であると特に好ましい。還流速度はm(塔頂採取)/m(塔への還流)は0.1〜500であると好ましく、1〜200であると更に好ましく、10〜100であると特に好ましい。蒸留塔への供給は液体状でも気体状でも行われる。精留塔への供給は塔の底部から行われても塔の頂部から行われても良い。直立して設けられた塔の底部から見て、塔の高さの好ましくは0〜90%、特に0〜50%の高さに相当する合計段数の位置において材料供給が行われる。
【0094】
本発明の実施形態IIにより使用される混合物は、混合物中のペンテンニトリル各異性体の総量に対して、0.1〜99質量%、更に好ましくは1〜99質量%、特に10〜90質量%の2−メチル−3−ブテンニトリルを含む。混合物中の(Z)−2−メチル−2−ブテンニトリルの割合も、混合物中のペンテンニトリル各異性体の総量に対して、好ましくは0.1〜99質量%、更に好ましくは1〜90質量%、特に2〜70質量%とされる。
【0095】
本発明の方法の実施形態IIは0.001〜1バールで行われると好ましく、0.01〜0.5バールで行われると更に好ましく、0.05〜0.2バールで行われると特に好ましい。蒸留は、蒸留装置の底部の温度を好ましくは20〜200℃、更に好ましくは30〜150℃、特に50〜100℃として行うとよい。更に、塔頂温度を好ましくは−15〜200℃、更に好ましくは0〜100℃、特に好ましくは20〜50℃とすることにより行われる。本発明の特に好ましい実施の形態においては、蒸留装置の底部及び頂部の双方で上記温度範囲とされる。
【0096】
蒸留装置の頂部では、供給流と比較して2−メチル−3−ブテンニトリルが少ない混合物が得られる。蒸留装置の底部からは、供給流と比較して(Z)−2−メチル−2−ブテンニトリルが少ない混合物が得られる。
【0097】
実施の形態IIIにおいて、本発明の方法は、シス−2−ペンテンニトリル及び3−ペンテンニトリルを含む混合物の分離に関する。
【0098】
アジポニトリルを得るための3−ペンテンニトリルのヒドロシアノ化反応により、シス−2−ペンテンニトリルが生成し、3−ペンテンニトリル循環流中に蓄積される可能性があるため、これを循環組成物から除去することが好ましい。
【0099】
除去後のシス−2−ペンテンニトリルは熱的に又は触媒により異性化可能であり、これにより所望の生成物である3−ペンテンニトリルが得られる。トランス−2−ペンテンニトリル、トランス−3−ペンテンニトリル、及び未反応のシス−2−ペンテンニトリルを含む各種混合物が得られる。アジポニトリルを製造するための総合的な方法に異性化工程を導入するためには、混合物からのシス−2−ペンテンニトリルの除去が経済的に行われ得ることが必要条件となる。
【0100】
本発明の実施形態IIIでは、減圧下に蒸留による分離が行われ、かつ使用する混合物がシス−2−ペンテンニトリルと3−ペンテンニトリルとを含む、ペンテンニトリル異性体混合物の分離方法が提供される。上記混合物は、例えばヒドロシアノ化触媒を用いた、3−ペンテンニトリルとシアン化水素との反応から得られる。更に、上記混合物はシス−2−ペンテンニトリルを熱的又は触媒を用いて異性化することにより得られる。
【0101】
3−ペンテンニトリルからシス−2−ペンテンニトリルを除去するためは、機器について高い要求があり、エネルギー要求量も大きい。これらの条件は上記2種類の物質の蒸気圧の比として定義される相対揮発度に基づいて決定される。相対揮発度は大気圧において約1.55であるが、この値はシス−2−ペンテンニトリルについての標準沸点400.1K、及びトランス−3−ペンテンニトリルについての標準沸点416.8Kから得たものである。本発明により、大気圧未満におけるシス−2−ペンテンニトリル及びトランス−3−ペンテンニトリルの相対揮発度は上昇することがわかった。
【0102】
上記混合物におけるシス−2−ペンテンニトリルの割合は、混合物中の全ペンテンニトリル異性体の合計量に対して0.1〜99.9質量%であると好ましく、1〜99質量%であると更に好ましく、1〜90質量%であると特に好ましい。3−ペンテンニトリルの割合は、混合物中の全ペンテンニトリル異性体の合計量に対して0.1〜99.9質量%であると好ましく、1〜99質量%であると更に好ましく、2〜90質量%であると特に好ましい。
【0103】
シス−2−ペンテンニトリルと3−ペンテンニトリルとを含む混合物の分離は当業者に公知の適当な機器を用いて行われる。適する蒸留装置は、例えばKirk-Othmer, Encyclopedia of Chemical Technology、第4版、8巻、John Wiley&Sons、ニューヨーク、1996、334-348頁等に記載の、例えば多孔板(シーブトレイ)塔、泡鐘塔、所定の構造を有する充填物又はランダムな充填物を含む塔(分離壁塔として作用しても良い)等が挙げられる。いずれの場合にも、蒸留装置は蒸発のための適する装置、例えば薄膜流下型蒸発器、薄膜蒸発器、多相螺旋管蒸発器、自然循環式蒸発器、又は強制循環式フラッシュ蒸発器、及び蒸気流を凝縮するための装置を具備する。蒸留は2又は3基等の複数の装置でも行われるが、単一の装置で行われると好ましい。更に、供給流を部分的に蒸発させる場合には、蒸留を一段階で行うことが可能である。
【0104】
蒸留塔の理論段数は、0〜100であると好ましく、1〜60であると更に好ましく、10〜40であると特に好ましい。還流速度はm(塔頂採取)/−m(塔への還流)は0.1〜500であると好ましく、1〜200であると更に好ましく、10〜50であると特に好ましい。蒸留塔への供給は液体状でも気体状でも行われる。精留塔への供給は塔の底部から行われても塔の頂部から行われても良い。直立して設けられた塔の底部から見て、塔の高さの好ましくは0〜90%、特に0〜50%の高さに相当する合計段数の位置において材料供給が行われる。
【0105】
実施形態IIIにおける分離は、0.001〜1.0バールで行われると好ましく、0.01〜0.5バールで行われると更に好ましく、0.05〜0.2バールで行われると特に好ましい。蒸留は、蒸留装置の底部の温度を好ましくは20〜200℃、更に好ましくは30〜150℃、特に50〜100℃として行うとよい。更に、塔頂温度を好ましくは−15〜200℃、更に好ましくは0〜100℃、特に好ましくは20〜50℃とすることにより行われる。本発明の特に好ましい実施の形態においては、蒸留装置の底部及び頂部の双方で上記温度範囲とされる。
【0106】
蒸留装置の塔頂では、供給流に比較して3−ペンテンニトリルが少ない混合物が得られる。蒸留装置の底部からは、供給流に比較してシス-2-ペンテンニトリルの少ない混合物が得られる。
【0107】
本発明の実施形態IVでは、3−ペンテンニトリルと(E)−2−メチル−2−ブテンニトリルとを含む混合物の分離が行われる。
【0108】
3−ペンテンニトリルの製造の間には、1,3−ブタジエンのヒドロシアノ化及び2−メチル−3−ブテンニトリルの異性化の双方による3−ペンテンニトリルの製造の間に少量の(E)−2−メチル−2−ブテンニトリルが副生成物として生成する可能性があり、通常は3−ペンテンニトリルと一緒に生成物流中に見出される。ドイツ特許出願公開第102 004 004 683号公報に記載されているように、3−ペンテンニトリルをアジポニトリルにシアノヒドロ化する既存の方法では、上述の少量の(E)−2-メチル−2−ブテンニトリル分が蓄積する。これは、ヒドロシアノ化において未反応の3−ペンテンニトリル分と(E)−2−メチル−2−ブテンニトリル分とは反応に循環されることが一般的である。(E)−2−メチル−2−ブテンニトリルの挙動は反応において実質的に不活性であり、(E)−2−メチル−2−ブテンニトリルを排出するための他の手段をとらない限り、組成物から除去されることはない。
【0109】
3−ペンテンニトリルから(E)−2−メチル−ブテンニトリルを除去するためは、機器について高い要求があり、エネルギー要求量も大きい。これらの条件は上記2種類の物質の蒸気圧の比として定義される相対揮発度に基づいて決定される。相対揮発度は大気圧において約1.19であるが、この値は(E)−2−メチル−ブテンニトリルについての標準沸点410.1K、及びトランス−3−ペンテンニトリルについての標準沸点416.8Kから得たものである。本発明により、大気圧未満における(E)−2−メチル−ブテンニトリル及び3−ペンテンニトリルの相対揮発度は上昇することがわかった。
【0110】
アジポニトリルを得るための3−ペンテンニトリルのヒドロシアノ化反応により、(E)−2−メチル−2−ブテンニトリルが3−ペンテンニトリル循環流中に蓄積される可能性がある。ペンテンニトリル混合物としての循環流に含まれるペンテンニトリル分は、ヒドロシアノ化反応の直後に除去される。そして、循環流に対し、アジポニトリル含有生成物流に含まれる触媒成分を除去した後に残留し、循環のために生成物流から除去されるペンテンニトリルを添加してもよい。これは本発明と同時に出願されたドイツ特許出願公開第102 004 004 683号公報に記載されている。
【0111】
本発明の方法の実施形態IVによると、ヒドロシアノ化触媒を用いた1,3−ブタジエンとシアン化水素との反応、又は2−メチル3−ブテンニトリルの異性化、又はヒドロシアノ化触媒を用いた3−ペンテンニトリルとシアン化水素との反応から得られた混合物について主に用いられる。
【0112】
上記混合物における3−ペンテンニトリルの割合は、混合物中の全ペンテンニトリル異性体の合計量に対して0.1〜99.9質量%であると好ましく、1〜99質量%であると更に好ましく、10〜90質量%であると特に好ましい。(E)−2−メチル−2−ブテンニトリルの割合は、混合物中の全ペンテンニトリル異性体の合計量に対して0.1〜99.9質量%であると好ましく、0.5〜99質量%であると更に好ましく、1〜50質量%であると特に好ましい。
【0113】
3−ペンテンニトリルと(E)−2−メチル−2−ブテンニトリルとを含む混合物の分離は当業者に公知の適当な機器を用いて行われる。適する蒸留装置は、例えばKirk-Othmer, Encyclopedia of Chemical Technology、第4版、8巻、John Wiley&Sons、ニューヨーク、1996、334-348頁等に記載の、例えば多孔板(シーブトレイ)塔、泡鐘塔、所定の構造を有する充填物又はランダムな充填物を含む塔(分離壁塔として作用しても良い)等が挙げられる。いずれの場合にも、蒸留装置は蒸発のための適する装置、例えば薄膜流下型蒸発器、薄膜蒸発器、多相螺旋管蒸発器、自然循環式蒸発器、又は強制循環式フラッシュ蒸発器、及び蒸気流を凝縮するための装置を具備する。蒸留は2又は3基等の複数の装置でも行われるが、単一の装置で行われると好ましい。更に、供給流を部分的に蒸発させる場合には、蒸留を一段階で行うことが可能である。
【0114】
蒸留塔の理論段数は、0〜150であると好ましく、1〜120であると更に好ましく、10〜60であると特に好ましい。還流速度はm(塔頂採取)/m(塔への還流)は0.1〜500であると好ましく、1〜200であると更に好ましく、10〜100であると特に好ましい。蒸留塔への供給は液体状でも気体状でも行われる。精留塔への供給は塔の底部から行われても塔の頂部から行われても良い。直立して設けられた塔の底部から見て、塔の高さの好ましくは0〜90%、特に0〜50%の高さに相当する合計段数の位置において材料供給が行われる。
【0115】
蒸留装置の塔頂では、供給流に比較して3−ペンテンニトリルが少ない混合物が得られる。蒸留装置の底部からは、供給流に比較して(E)−2−メチル−2−ブテンニトリルの少ない混合物が得られる。
【0116】
本発明によるペンテンニトリル異性体混合物を分離する方法によると、少ない分離工程と少ないエネルギーを用いて3−ペンテンニトリルと、2−メチル−3−ブテンニトリル又は(E)−2−メチル−2−ブテンニトリルとを分離することが可能となる。2−メチル−2−ブテンニトリルと、(E)−2−メチル−2−ブテンニトリルとを分離する場合、更に(E)−2−メチル−2−ブテンニトリルと3−ペンテンニトリルを分離する場合、複雑さのレベルを工業的に実施可能なものとして、経済的な形態により、分離、又は含有量の増減が可能とされる。
【0117】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。
【実施例】
【0118】
以下の省略記号を用いる。
【0119】
T3PN: トランス−3−ペンテンニトリル
C3PN: シス−3−ペンテンニトリル
4PN: 4−ペンテンニトリル
2M3BN: 2−メチル−3−ブテンニトリル
T2PN: トランス−2−ペンテンニトリル
C2PN: シス−2−ペンテンニトリル
E2M2BN: (E)−2−メチル−2−ブテンニトリル
Z2M2BN: (Z)−2−メチル−2−ブテンニトリル
VAN: バレロニトリル
VCH: 4−ビニルシクロヘキサン
【0120】
1. 2−メチル−3−ブテンニトリル及び3−ペンテンニトリルを含む混合物
蒸発器、冷却器(total condenser)及び還流分離器を具備する蒸留塔にて分離を行った。蒸留塔の論理段数は15段である。還流比、m(採取)/m(蒸留塔への還流)は1であった。供給速度10kg/時間にて蒸留塔の下から10段目に材料供給を行った。塔頂における採取速度は5kg/時間であった。
【0121】
混合物は以下の組成を有するものである。
【0122】
【表3】

【0123】
【表4】

【0124】
同一還流速度、同一採取速度とした場合、実施例1〜6により、1.0バール未満での塔圧力が低ければ低いほど、2−メチル−3−ブテンニトリルと3−ペンテンニトリルの分離効率が高いことが示された。低圧では2−メチル−3−ブテンニトリルの塔底残留割合が低下し、トランス−3−ペンテンニトリルの塔頂残留割合も低下することがわかる。
【0125】
2. 2−メチル−3−ブテンニトリル及び(Z)−2−メチル−2−ブテンニトリルを含む混合物
蒸発器、冷却器(total condenser)及び還流分離器を具備する蒸留塔にて分離を行った。蒸留塔の論理段数は15段である。還流比、m(採取)/m(蒸留塔への還流)は50であった。蒸発器への供給は、10kg/時間にて蒸留塔底部に材料供給を行った。塔頂における採取速度は0.05kg/時間であった。
【0126】
【表5】

【0127】
【表6】

【0128】
同一還流速度、同一採取速度とした場合、実施例7〜12により、塔圧力が低ければ低いほど、2−メチル−3−ブテンニトリルと(Z)−2−メチル−2−ブテンニトリルの分離効率が高いことが示された。低圧では塔頂採取物における2−メチル−3−ブテンニトリルの残留割合が低下し、(Z)−2−メチル−2−ブテンニトリルの塔頂割合が増加することがわかる。
【0129】
3. シス−2−ペンテンニトリルと3−ペンテンニトリルを含む混合物
蒸発器、冷却器(total condenser)及び還流分離器を具備する蒸留塔にて分離を行った。蒸留塔の論理段数は15段である。還流比、m(採取)/m(蒸留塔への還流)は50であった。蒸発器への供給は、10kg/時間にて蒸留塔の下から10段目に行った。塔頂における採取速度は0.05kg/時間であった。
【0130】
【表7】

【0131】
【表8】

【0132】
同一還流速度、同一採取速度とした場合、実施例13〜18により、塔圧力が低ければ低いほど、トランス−3−ペンテンニトリルとシス−2−ペンテンニトリルの分離効率が高いことが示された。低圧では塔頂採取物におけるトランス−3−ペンテンニトリルの残留割合が減少し、除去すべきシス−2−ペンテンニトリルの塔頂での割合が増加することがわかる。
【0133】
4. 3−ペンテンニトリル及び(E)−2−メチル−2−ブテンニトリルを含む混合物
蒸発器、冷却器(total condenser)及び還流分離器を具備する蒸留塔にて分離を行った。蒸留塔の論理段数は40段である。還流比、m(採取)/m(蒸留塔への還流)は50であった。蒸発器への供給は、10kg/時間にて蒸留塔の下から5段目に材料供給を行った。塔頂における採取速度は1.5kg/時間であった。
【0134】
【表9】

【0135】
【表10】

【0136】
同一還流速度、同一採取速度とした場合、実施例19〜24により、塔圧力が低ければ低いほど、トランス−3−ペンテンニトリルと(E)−2−メチル−2−ブテンニトリルの分離効率が高いことが示された。低圧では塔底採取流における(E)−2−メチル−2−ブテンニトリルの残留割合が低下し、塔頂採取流における(E)−2−メチル−2−ブテンニトリルの残留割合が増大することがわかる。
【0137】
蒸留の公知原理とは異なり、蒸留を減圧下に行い、分離段数を減少させ、及び公知の標準沸点より予測される値よりも少ないエネルギーを使用しても、蒸留塔の底部及び頂部において所望の成分ペンテンニトリル異性体が得られていることが実施例1〜24よりわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
混合物から1種類以上の異性体を除去するペンテンニトリル異性体混合物の分離方法であって、ペンテンニトリル異性体混合物を、減圧下に、蒸留により分離すること特徴とする分離方法。
【請求項2】
2種類以上の異なる異性体を分離することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
混合物が、
2−メチル−3−ブテンニトリルと3−ペンテンニトリルとを含む混合物、
2−メチル−3−ブテンニトリルと(Z)−2−メチル−2−ブテンニトリルとを含む混合物、
シス−2−ペンテンニトリルと3−ペンテンニトリルとを含む混合物、及び
(E)−2−メチル−2−ブテンニトリルと3−ペンテンニトリルとを含む混合物、からなる群から選択されることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
混合物が2−メチル−3−ブテンニトリルと、3−ペンテンニトリルとを含み、ヒドロシアノ化触媒上の1,3−ブタジエンとシアン化水素との反応より得られたものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
混合物における2−メチル−3−ブテンニトリルの割合が、混合物中の全ペンテンニトリル異性体の合計量に対して0.1〜99.9質量%であり、及び/又は混合物における3−ペンテンニトリルの割合が、混合物中のペンテンニトリル異性体の合計量に対して0.1〜99.9質量%であることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
混合物が2−メチル−3−ブテンニトリルと、(Z)−2−メチル−2−ブテンニトリルとを含み、2−メチル−3−ブテンニトリルの異性化により得られたものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
混合物における2−メチル−3−ブテンニトリルの割合が、混合物中のペンテンニトリル異性体の合計量に対して0.1〜99質量%であり、及び/又は混合物における(Z)-2−メチル−2−ブテンニトリルの割合が、混合物中のペンテンニトリル異性体の合計量に対して0.1〜99質量%であることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
混合物がシス−2−ペンテンニトリルと、3−ペンテンニトリルとを含み、ヒドロシアノ化触媒上の3−ペンテンニトリルとシアン化水素との反応より得られたものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
混合物におけるシス−2−ペンテンニトリルの割合が、混合物中のペンテンニトリル異性体の合計量に対して0.1〜99.9質量%であり、及び/又は混合物における3−ペンテンニトリルの割合が、混合物中のペンテンニトリル異性体の合計量に対して0.1〜99.9質量%であることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
混合物が(E)−2−メチル−2−ブテンニトリルと、3−ペンテンニトリルとを含み、ヒドロシアノ化触媒上の1,3−ブタジエンとシアン化水素との反応、2−メチル−3−ブテンニトリルの異性化、又はヒドロシアノ化触媒上の3−ペンテンニトリルとシアン化水素との反応により得られたものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
混合物における3−ペンテンニトリルの割合が、混合物中のペンテンニトリル異性体の合計量に対して0.1〜99.9質量%であり、及び/又は混合物における(E)-2−メチル−2−ブテンニトリルの割合が、混合物中のペンテンニトリル異性体の合計量に対して0.1〜99.9質量%であることを特徴とする請求項10に記載の方法。

【公表番号】特表2007−519667(P2007−519667A)
【公表日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−550083(P2006−550083)
【出願日】平成17年1月26日(2005.1.26)
【国際出願番号】PCT/EP2005/000726
【国際公開番号】WO2005/073179
【国際公開日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【出願人】(595123069)ビーエーエスエフ アクチェンゲゼルシャフト (847)
【氏名又は名称原語表記】BASF Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】