説明

ペン型入力装置

【課題】ペン先が一時的に離れる文字入力の移動軌跡を簡易構造で検出し、小型、軽量化が可能なペン型入力装置を提供する。
【解決手段】ペン状ケースのペン先に、ペン先のX、Y、Z方向の加速度を検出する三次元加速度センサを収容し、筆記平面へ手書き文字を描くペン先の加速度を入力開始時から入力終了時まで連続して検出することによりペン先の三次元移動軌跡を検出し、三次元移動軌跡から筆記平面を求めて、三次元移動軌跡から、筆記平面に属する接触移動軌跡を抽出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筆記平面に文字を描く入力操作の移動軌跡を検出し、文字認識装置へ出力することによって描いた文字を認識させるペン型入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電子機器へ文字データを入力する入力方法として、タブレットの入力面へ専用ペンを用いて入力しようとする文字を描き、タブレットで検出する入力操作面への入力操作軌跡の特徴から、文字認識装置が、描いた文字を認識し、携帯電子機器へ認識した文字を入力する方法が知られている。しかしながら、この入力方法は、タブレットと専用ペンを携帯電子機器とともに用意する必要があり、持ち運びする携帯機器への文字入力装置として適さないものであった。
【0003】
そこで、タブレットを用いずに、入力操作するペン側で筆記平面に文字を描く移動軌跡を検出し、文字認識装置へ出力するペン型入力装置が提案されている。文字を描く移動軌跡を検出するためには、ペン型入力装置が自らの相対移動量及び移動方向を入力操作中に連続して検出する必要があるが、一筆で描けない文字は、文字入力操作中に、筆記平面からペン先が離れる区間があり、従来、筆記平面上の接触移動軌跡を、紙面に転がり接触するボールの回転方向と回転量で検出する他に、筆記平面からペン先が離れて移動する非接触移動軌跡を、ペン状ケースに内蔵の二次元加速度センサーで検出し、非接触移動軌跡で連続させた接触移動軌跡を文字認識装置へ出力していた(特許文献1)。
【0004】
図6は、この従来のペン型入力装置100の構成を示し、ペン状ケース101内に、ペン先から一部が突出するように、ボール102が回転自在に収容されている。ボール102の回転は、ボール102に接触するボール回転センサー103により、ペン状ケース101の軸方向に直交するX、Y方向の回転量に分けて検出され、ペン先のX、Y方向の移動軌跡が測定される。また、ボール102の基端側(図中右側)に接触状態判別部104が備えられ、ボール102に加わる押圧力を検出して、ペン型入力装置100のペン先の筆記平面への接触を検知している。
【0005】
接触状態判別部104の更に基端側には、X方向の加速度を検出するX方向加速度センサー105aとY方向の加速度を検出するY方向加速度センサー105bとからなる二次元加速度センサー105がペン状ケース101内に収容され、検出するX、Y方向の加速度からペン状ケース101のX、Y方向の移動軌跡を測定している。
【0006】
接触状態判別部104の出力側に接続するCPU106は、接触状態判別部104がペン先が筆記平面に接触を検知している間に、ボール回転センサー103が測定したX、Y方向の移動軌跡を接触移動軌跡と、筆記平面への接触を検知していない間に、二次元加速度センサー105が測定したX、Y方向の移動軌跡を非接触移動軌跡とし、ペン先が離れて途切れる接触移動軌跡間のXY平面(筆記平面)上の相対位置を、その間の非接触移動軌跡で連続させて得ている。また、CPU106は、接触状態判別部104が非接触を検知してから所定期間接触を検知しないことから、1文字分の文字入力が終了したとみなし、XY平面(筆記平面)上の相対位置が特定された複数の接触移動軌跡から1文字分の手書き文字情報を得る。
【0007】
CPU106は、更に1文字分の手書き文字情報からその特徴を抽出して、メモリ107に記憶されている多数の文字の特徴データと比較し、主要な特徴が一致している文字を手書きした文字と認識する。このペン型入力装置100は、携帯電話機を兼ねるものであり、認識した文字の文字列からなる電話番号を電話回路108へ出力し、アンテナ109を用いて相手先を呼び出す。
【0008】
【特許文献1】特開2000−99251号公報(明細書段落0010乃至0013、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この従来のペン型入力装置100では、筆記平面に文字を描く接触移動軌跡と、筆記平面からペン先を離して移動させる非接触移動軌跡とを、ボール102及びボール回転センサー103と、二次元加速度センサー105の二種類のセンサーを用いて測定するので、構造が複雑で入力装置全体が大型化し、小型、軽量化が求められるペン型の入力装置の障害となっていた。
【0010】
また、接触移動軌跡と非接触移動軌跡とを、接触状態判別部においてペン先のボール102に加わる筆圧を検出して識別しているが、1文字分の文字入力を終えた際にも、筆記平面からペン先を離すので、文字入力中にペン先を離す移動と識別できない。そこで、文字入力中に筆記平面からペン先が離れる非接触移動時間より長い時間を超えたときに1文字分の文字入力が終了したものとしている。
【0011】
しかしながら、文字入力中に入力を停止しても、1文字分の文字入力が終了したとみなされる場合があり、誤認識若しくは認識エラーとなる場合があり、また、1文字を入力する毎に、所定時間が経過するまで認識結果が得られないので、文字認識処理時間を短縮させることができないという問題があった。
【0012】
また、ペン状ケース101のペン先は限られた空間であるにもかかわらず、ペン先の接触移動軌跡やペン先の筆記平面への接触有無を検出するために、ボール102、ボール回転センサー103、接触状態判別部などを配置しているので、非接触移動軌跡を判別する二次元センサーは、ペン先から離れたペン状ケース101の中間に収容している。その結果、ペン先を移動させるためにペン状ケース101を傾けただけでもペン先の移動とご認識し、非接触移動軌跡にペン状ケース101の傾斜による誤差が含まれ、文字認識率が低下するという問題があった。
【0013】
本発明は、このような従来の問題点を考慮してなされたものであり、ペン先が一時的に離れる文字入力の移動軌跡を簡易構造で検出し、小型、軽量化が可能なペン型入力装置を提供することを目的とする。
【0014】
また、1文字入力の終了後に所定時間待機せず、文字入力中のペン先移動と1文字入力の終了とを明確に識別できるペン型入力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述の目的を達成するため、請求項1のペン型入力装置は、ペン状ケースのペン先に収容され、ペン先の互いに直交するX、Y、Z方向の加速度(αx、αy、αz)を検出する三次元加速度センサと、ペン状ケースに取り付けられ、筆記平面上に描く手書き文字毎の入力終了時を表す入力終了信号を入力する文字区切りスイッチと、三次元加速度センサで検出する加速度(αx、αy、αz)と、筆記平面上の入力開始位置でペン先を停止させた入力開始時から該ペン先の加速度(αx、αy、αz)を検出するまでの経過時間tとから、経過時間tにおける入力開始位置からX、Y、Z方向の相対移動距離を入力開始時から入力終了時まで連続して求め、手書き文字毎のペン先の三次元移動軌跡を検出する軌跡検出部と、三次元移動軌跡から、筆記平面をペン先が接触しながら移動する接触移動軌跡を抽出する移動軌跡抽出部とを備え、手書き文字毎に、筆記平面上に描いた手書き文字の接触移動軌跡を、文字認識装置へ出力することを特徴とする。
【0016】
三次元加速度センサーが文字入力操作中に検出するペン先のX、Y、Z方向の加速度から、ペン先の三次元移動軌跡が得られる。軌跡検出部は、文字区切りスイッチの入力で入力開始時から入力終了時までの1文字毎に区切られた三次元移動軌跡を検出する。三次元加速度センサーは、筆記平面上に文字を描く軌跡と同一に移動するペン先に収容されているので、三次元移動軌跡の全体は、筆記平面と平行に形成され、移動軌跡抽出部は、三次元移動軌跡を、筆記平面に属する接触移動軌跡と、筆記平面から離れた非接触移動軌跡に分け、非接触移動軌跡により筆記平面上の相対位置が特定される接触移動軌跡を抽出することができる。移動軌跡抽出部により抽出された筆記平面に属する接触移動軌跡は、手書き文字毎に文字認識装置へ出力される。
【0017】
請求項2のペン型入力装置は、ペン状ケースの先端に、筆記平面にペン先が接触した際に接触信号を出力する接触センサーが取り付けられ、移動軌跡抽出部は、接触センサーから接触信号が入力されている間の三次元移動軌跡を接触移動軌跡として抽出することを特徴とする。
【0018】
三次元相対移動軌跡を検出するためにペン先に収容される三次元加速度センサーは、ボールとボール回転センサーのような複雑で大型な機構ではないので、補助的にペン先と筆記平面との接触を検知する接触センサーをペン先に配置することができる。
【0019】
移動軌跡抽出部は、接触信号の入力有無によって、三次元移動軌跡の接触移動軌跡と非接触移動軌跡を、正確に判別できる。
【発明の効果】
【0020】
請求項1の発明によれば、三次元加速度センサーをペン先の先端に配置するので、検出される三次元移動軌跡に、ペン状ケースを傾斜させることによって生じる誤差が最小となり、手書き文字の軌跡を表す接触移動軌跡を正確に検出できる。
【0021】
また、手書き文字入力中に筆記平面からペン先が離れる非接触移動軌跡を三次元加速度センサーで検出し、手書き文字入力後に筆記平面から離れる文字区切りを、文字区切りスイッチの入力で判別するので、両者を明確に判別できる。
【0022】
また、ペン先の接触移動軌跡を、三次元加速度センサーのみで検出するので、検出構造が単純化され、ペン型入力装置を小型、軽量化することができる。
【0023】
請求項2の発明によれば、1文字の入力終了を入力する文字区切りスイッチと別に、接触移動軌跡と非接触移動軌跡を判別する接触センサーを備えるので、入力終了信号と接触信号を明確に判別できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の一実施の形態に係るペン型入力装置1を、図1と図2を用いて説明する。図1に示すように、ペン型入力装置1は、自らの相対移動軌跡を検出することにより、操作者がペン型入力装置1を用いて筆記平面10に描いた手書き文字の移動軌跡を検出し、この移動軌跡を図示しない文字認識装置へ出力して、その特徴から手書き文字を文字認識させるものである。従って、ペン型入力装置1は、手に持って筆記平面10に文字を描く筆記具に似せたペン状ケース2を備え、そのペン先内に、ペン先の相対移動を検出する為の三次元加速度センサー3を収容している。
【0025】
三次元加速度センサー3は、ペン状ケース2の軸方向をZ方向として、ペン先の互いに直交するX、Y、Z方向の加速度をそれぞれ検出する3個の加速度センサー3x、3y、3zで構成されている。加速度センサー3x、3y、3zは、加速度による変形に応じた電圧を発生する圧電基板を用いた圧電型の他、静電容量型やピエゾ抵抗型など、加速度に応じて直線性のある出力信号が得られれば、任意のセンサーを用いることができる。
【0026】
ペン型入力装置1を筆記平面10に対して傾けてペン先を筆記平面10上で移動させると、ペン先の移動方向の加速度αは、X、Y、Z方向の加速度成分αx、αy、αzに分けて、加速度センサー3x、3y、3zで検出される(図2参照)。
【0027】
三次元センサー3の出力側には、ローパスフィルター、信号増幅回路、A/Dコンバータなどから構成されるサンプリング部4が接続し、加速度センサー3x、3y、3zが検出する加速度αx、αy、αzを表す信号を増幅し、後段のマイコン回路5が処理可能なデジタル信号に変換して出力する。
【0028】
マイコン回路5は、加速度センサー3x、3y、3zがそれぞれペン先を移動期間中に連続して検出する加速度αx、αy、αzから、ペン先の三次元移動軌跡を検出する軌跡抽出部と、三次元移動軌跡から筆記平面10にペン型入力装置1のペン先が接触しながら移動する接触移動軌跡を抽出する移動軌跡抽出部とを兼ねている。
【0029】
マイコン5による三次元移動軌跡の検出は、1文字を筆記平面10に描く入力開始時から入力終了時まで連続してペン先の加速度αx、αy、αzを連続して求める。入力開始時からt時間経過した際に加速度センサー3x、3y、3zが検出した加速度αx、αy、αzを時間tについて2度積分した値は、微小時間前の位置からのX、Y、Z方向の相対移動距離を表す。筆記平面上の所定の入力開始位置(原点)でペン先を一定時間停止させた状態を入力開始時とすると、入力開始時のペン先の位置は、原点(0,0,0)で、X、Y、Z方向の移動速度が0となる初期条件が得られる。この初期条件と、入力開始時から連続して検出する加速度αx、αy、αzを用いて、検出した加速度αx、αy、αzを経過時間tで2度積分し、微小時間前の位置からのX、Y、Z方向の相対移動距離を、入力開始時から経過時間tまで求めれば、経過時間tにおける入力開始位置(原点)に対する相対位置が得られ、マイコン5は、これを1文字を入力する入力開始時から入力終了時まで算出して三次元移動軌跡を検出する。
【0030】
マイコン5には、この1文字の区切りを表す入力終了時を検知するために、文字区切りスイッチ6が接続されている。文字区切りスイッチ6は、操作者が入力操作しやすいように、操作摘みがペン状ケース2の中間に露出して取り付けられ、1文字分の文字入力を終えて、操作者が文字区切りスイッチ6を入力操作すると、入力終了時を表す入力終了信号がマイコン5に出力される。
【0031】
操作者による筆記平面10へ文字を描く際には、ペン先が筆記平面10に沿って移動するので、軌跡抽出部が検出する三次元移動軌跡は、概ね筆記平面10である一平面に沿って形成され、移動軌跡抽出部は、入力開始位置(原点)が筆記平面10に属する平面であって、平面に属する三次元移動軌跡が最も長くなる仮想平面を筆記平面10とし、仮想平面に属する三次元移動軌跡を接触移動軌跡と、仮想平面から一側に離れた三次元移動軌跡を非接触移動軌跡とする。
【0032】
三次元移動軌跡を接触移動軌跡を抽出する他の方法としては、例えば、入力開始位置(原点)に属し、三次元移動軌跡に接する仮想平面を筆記平面10とし、検出誤差を含めて仮想平面に接近する三次元移動軌跡を接触移動軌跡と、仮想平面から一定距離以上隔てた三次元移動軌跡を非接触移動軌跡としてもよい。
【0033】
マイコン5が抽出した1文字分の接触移動軌跡は、無線通信回路6から図示しない文字認識装置へ送信される。この接触移動軌跡は、筆記平面10に描いた1文字分の文字形態を表すので、文字認識装置では、接触移動軌跡を1文字分の文字情報として正規化し、その特徴を予め記憶している多数の文字の特徴と比較し、特徴が近似している文字を、ペン型入力装置1により手書きした文字と認識する。
【0034】
尚、このペン型入力装置1は、手書きが容易なペン型として、文字認識装置とケーブルで接続しないので、三次元加速度センサー3、マイコン5、無線通信回路7等の駆動電源となるバッテリー8を、ペン状ケース2内に内蔵している。
【0035】
この第1実施の形態に係るペン型入力装置1によれば、三次元加速度センサー3を、手書き文字を描くペン先に収容しているので、検出する三次元移動軌跡にペン状ケース2を傾けることにより生じる誤差が最小となり、筆記平面10とペン先との接触を検知せずに、接触移動軌跡を抽出できる。また、文字区切りスイッチ6の入力操作により、手書き文字毎の入力終了時を表す入力終了信号を出力するので、筆記平面10からペン先が離れる経過時間から入力終了を判別する必要がなく、文字認識処理時間が短縮される。
【0036】
第1実施の形態では、三次元加速度センサー3が検出する三次元移動軌跡のみから筆記平面10に沿った接触移動軌跡を抽出するので、三次元移動軌跡に誤差が生じると正確に接触移動軌跡と非接触移動軌跡を判別できない。第2実施の形態に係るペン型入力装置は、この問題を上述と同一構成のペン型入力装置1を用いて解決するものであり、三次元移動軌跡に多少の誤差を含んでいても、正確に接触移動軌跡を抽出できる。
【0037】
以下、この第2実施の形態を、図1乃至図4で説明する。第2実施の形態に係るペン型入力装置1によりペン先の三次元移動軌跡を検出する方法は、第1実施の形態と同一であるので省略する。この実施の形態では、ペン先を筆記平面10上に描く接触移動軌跡と、筆記平面10からペン先が離れる非接触移動軌跡とを、文字区切りスイッチ6の入力で判別する。すなわち、操作者は、ペン先を筆記平面10上に接触させて文字を描いている間に連続して文字区切りスイッチ6を入力し、文字区切りスイッチ6から接触移動時間中であることを示す接触移動信号をマイコン回路5へ出力するものである。
【0038】
以下、この第2実施の形態に係るペン型入力装置1により接触移動軌跡を抽出する方法を、筆記平面10へ平仮名「に」の文字を手書きする場合を示す図3、図4で詳述する。手書き文字入力を開始する入力開始時t0では、第1実施の形態と同様に、筆記平面10上の入力開始位置(原点)でペン先を一定時間停止させ、入力開始時のペン先の位置(イの開始位置)を原点(0,0,0)、X、Y、Z方向の移動速度を0とする初期条件に設定する。
【0039】
この入力開始時t0に文字区切りスイッチ6を入力し、文字区切りスイッチ6の入力を継続させた状態で、筆記平面10に図中「イ」の部分を描くようにペン先を接触移動させる。入力開始時t0から微小時間Δt後に加速度センサー3x、3y、3zが検出した加速度αx、αy、αzを時間tについて2度積分した値は、入力開始時t0の初期条件から、原点(0,0,0)からのX、Y、Z方向の相対移動距離、つまり入力開始位置を原点とするXYZ座標系で表される位置を表す。
【0040】
マイコン5は、入力開始時t0から以後、後述する入力終了時t6まで、ペン先が筆記平面10に接触しているか否かにかかわらず、連続して加速度センサー3x、3y、3zが検出する加速度αx、αy、αzを時間tについて2度積分し、直前の位置に対するX、Y、Z方向の相対移動距離から三次元移動軌跡を得る。
【0041】
筆記平面10に図中「イ」の部分を描いた後に、文字区切りスイッチ6の入力操作を解除し、「ハ」の部分を描き始める位置まで、ペン先を筆記平面10から離して「ロ」の部分を移動させる。「ハ」の部分を描く間には、再び文字区切りスイッチ6を連続入力操作し、同様にして、「に」の文字を描くように、「ニ」、「ホ」とペン先を移動させ、ペン先を筆記平面10へ接触させている区間「イ」、「ハ」、「ホ」のみ、図4に示すように、文字区切りスイッチ6を連続入力操作する。
【0042】
「に」の文字の手書き入力操作を終えた後、ペン先を筆記平面10から離した(「ヘ」の部分)入力終了時t6に、文字区切りスイッチ6を入力操作し、入力終了時を表す入力終了信号をマイコン回路5へ出力する。
【0043】
これにより、移動軌跡抽出部であるマイコン5は、入力開始時から入力終了時までの三次元移動軌跡(イ乃至ヘ)のうち、文字区切りスイッチ6から接触移動信号が入力されている三次元移動軌跡(イ、ハ、ホ)を接触移動軌跡と、接触移動信号が入力されていない三次元移動軌跡(ロ、ニ、ヘ)を非接触移動軌跡として、手書き文字「に」を構成する接触移動軌跡を抽出する。
【0044】
マイコン5は、抽出した手書き文字「に」を構成する接触移動軌跡(イ、ハ、ホ)の手書き文字情報を無線通信回路6から文字認識装置へ送信し、文字認識装置は、接触移動軌跡(イ、ハ、ホ)の特徴から描かれた文字を「に」と認識する。
【0045】
本実施の形態では、少なくともペン先を筆記平面10へ接触させるt2、t4の時点で、ペン先の移動速度を0として、t2、t4の時点での移動速度を時間tで積分して求める相対移動距離を補正できるので、三次元移動軌跡をより現実のペン先の移動軌跡に近似させることができる。
【0046】
また、本実施の形態では、文字区切りスイッチ6が、入力終了時を表す入力終了信号と、接触移動時間中であることを示す接触移動信号を出力することとなるが、両者は、文字区切りスイッチ6が入力される直前に加速度センサー3zが検出した加速度αzを時間tについて積分したZ方向の速度が正であるか負であるかによって判別する。
【0047】
1文字の入力終了後の文字区切りスイッチ6の入力は、筆記平面からペン先を離す+Z方向の移動の後の入力操作であり、文字区切りスイッチ6から入力信号を受けた直前(t5とt6の間の例えば、0.5秒前)に検出したZ方向の加速度αzを時間tで積分したZ方向の速度は、筆記紙面10の鉛直方向に対するペン型入力装置1の傾斜を無視すれば、筆記平面10から離れる方向の速度であり、正の値となる。一方、文字入力中にペン先が筆記平面10から一時的に離れ移動した後、筆記平面への文字入力を開始する際(t2、t4の時点)の文字区切りスイッチ6の入力は、筆記平面10へペン先を接近させた後の入力操作であり、直前に三次元加速度センサーが検出した加速度αzを時間tで積分したZ方向の速度は、筆記平面10に向かう方向の負の値となる。従って、マイコン5は、文字区切りスイッチ6が入力される直前に検出したZ方向の加速度αzを積分して得られるZ方向の速度の符号が、正であれば入力終了信号と、負であれば接触移動信号と判別する。
【0048】
尚、入力終了信号と接触移動信号の判別は、マイコン5が文字区切りスイッチ6から入力信号を入力した時の三次元移動軌跡のZ方向の位置が、原点「0」の近傍である場合に接触移動信号と、筆記平面10から離れたと推定される正の位置である場合に入力終了信号と判別してもよい。また、マイコン5が文字区切りスイッチ6から入力信号を入力した後の三次元移動軌跡が所定時間同一面に属する場合に接触移動信号と判別することもできる。
【0049】
上述の第2実施の形態では、ペン型入力装置1を筆記紙面10に対して傾斜させると、その軸方向となるZ方向が必ずしも筆記紙面10の鉛直方向と一致しないで、文字区切りスイッチ6が入力される直前のZ方向の速度の符号若しくはZ方向の位置から、入力終了信号と接触移動信号とを正確に判別できない場合がある。そこで、第3実施の形態では、1文字の入力終了後の文字区切りスイッチ6の入力は、筆記平面10から最後にペン先を離すt5の後、図4に示すように、文字入力中の非接触移動時間△T(図4参照)より充分に長い終了操作時間Tが経過した後の入力終了時t6に操作するものとする。
【0050】
これにより、第2実施の形態で判別した入力終了信号であっても、終了操作時間Tが経過していない場合には入力終了信号と判別しないので、接触移動信号を入力終了信号と誤って判別することがなくなる。
【0051】
図5は、三次元移動軌跡から、接触移動軌跡と非接触移動軌跡を確実に判別する第4の実施の形態に係るペン型入力装置20を示す。このペン型入力装置20は、ペン先にペン先と筆記平面10との接触を検知する接触センサー21が取り付けられている他は、第1実施の形態に係るペン型入力装置1と同一構成であるので、同一番号を付して共通する構成の説明は省略する。
【0052】
ペン型入力装置20のペン先には、ペン型入力装置20の相対移動を検出するボールやボールの回転を検出する機構が収容されず、配置スペースを占有しない圧電基板などからなる加速度センサー3のみを収容するので、補助的にペン先と筆記平面との接触を検知する接触センサー21を配置することができる。
【0053】
接触センサー21の出力は、マイコン5に接続し、ペン先が筆記平面10に接触している間、連続して接触信号を出力する。これにより、ペン型入力装置20では、文字区切りスイッチ6によって手書き文字入力中に、接触移動信号を入力することなく、移動軌跡抽出部であるマイコン5は、接触センサー21から接触信号が入力されている三次元移動軌跡を接触移動軌跡と、接触信号が入力されていない三次元移動軌跡を非接触移動軌跡として、確実に接触移動軌跡のみを抽出することができる。
【0054】
また、文字区切りスイッチ6からは、入力終了信号のみが入力されるので、第2、第3実施の形態のように、接触移動信号と判別する必要がなく、1文字の手書き文字の入力終了時を確実に軌跡抽出部へ伝達できる。
【0055】
尚、1文字を入力する際の接触移動軌跡で挟まれる非接触移動軌跡の長さは、1文字の文字入力終了後に次の文字の文字入力を行うためにペン先を非接触で移動させる非接触移動軌跡より一般に短いので、非接触移動軌跡が所定長さに設定するしきい値を超えた場合に、1文字の手書き文字の入力終了と判別することもできる。
【0056】
また、1文字の手書き文字の入力終了後に、ペン型入力装置1を例えば2度上下に振るなど、通常の手書き文字入力操作と異なる操作を行い、この操作によるペン先の加速度変化から1文字の手書き文字の入力終了と判別することもできる。
【0057】
上述の各実施の形態では、抽出した接触移動軌跡を、無線通信回路6により無線信号で文字認識装置へ送信しているが、ペン型入力装置1、20を文字認識装置にケーブルで接続し、ケーブルを介して出力してもよい。
【0058】
また、文字認識装置は、ペン型入力装置1、20のペン型ケース2内に内蔵するものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、手書き文字を認識する文字認識装置へ、手書きした文字の軌跡を出力するペン型入力装置に適している。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の一実施の形態に係るペン型入力装置1の説明図である。
【図2】ペン型入力装置1を筆記平面10に対して傾けて移動させる状態を示す説明図である。
【図3】平仮名「に」を手書きするペン先の軌跡を示す平面図である。
【図4】文字区切りスイッチ6とペン先の移動軌跡を比較するタイムチャートである。
【図5】他の実施の形態に係るペン型入力装置20の説明図である。 図である。
【図6】従来のペン型入力装置100の説明図である。
【符号の説明】
【0061】
1、20 ペン型入力装置
3 三次元加速度センサー
5 マイコン回路(軌跡検出部、移動軌跡抽出部)
6 文字区切りスイッチ
10 筆記平面
21 接触センサー
ΔT 非接触移動時間
T 終了操作時間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペン状ケースのペン先に収容され、ペン先の互いに直交するX、Y、Z方向の加速度(αx、αy、αz)を検出する三次元加速度センサと、
前記ペン状ケースに取り付けられ、筆記平面上に描く手書き文字毎の入力終了時を表す入力終了信号を入力する文字区切りスイッチと、
前記三次元加速度センサで検出する加速度(αx、αy、αz)と、筆記平面上の入力開始位置でペン先を停止させた入力開始時から該ペン先の加速度(αx、αy、αz)を検出するまでの経過時間tとから、経過時間tにおける入力開始位置からX、Y、Z方向の相対移動距離を入力開始時から入力終了時まで連続して求め、手書き文字毎のペン先の三次元移動軌跡を検出する軌跡検出部と、
前記三次元移動軌跡から、筆記平面をペン先が接触しながら移動する接触移動軌跡を抽出する移動軌跡抽出部とを備え、
手書き文字毎に、筆記平面上に描いた手書き文字の接触移動軌跡を、文字認識装置へ出力することを特徴とするペン型入力装置。
【請求項2】
ペン状ケースの先端に、筆記平面にペン先が接触した際に接触信号を出力する接触センサーが取り付けられ、
移動軌跡抽出部は、接触センサーから前記接触信号が入力されている間の三次元移動軌跡を接触移動軌跡として抽出することを特徴とする請求項1に記載のペン型入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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