説明

ペン装置及びそれに用いられるプログラム

【課題】利用者の所望する経路の距離情報を提供するペン装置及びそれに用いられるプログラムを提供する。
【解決手段】利用者がペン装置で、専用ペーパー上の地図エリアをなぞると、ペン装置は、ペン装置でなぞった経路(軌跡)の位置座標を演算し、当該位置座標に基づいて、地図エリア上の経路の距離及び実際の距離を算出し、当該距離を出力する。このように、ペン装置は、利用者の所望する経路に関する距離を算出して音声等により利用者に報知することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペン装置によりペン装置用媒体等に印刷された地図上の距離情報を提供する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、「電子ペン」、「デジタルペン」などと呼ばれるペン型入力デバイスが登場しており(以下、本明細書では「電子ペン」と呼ぶ。)、その代表的なものとしてスウェーデンのAnoto社が開発した「アノトペン(Anoto pen)」が知られている。アノトペンは、所定のドットパターンが印刷された専用紙(以下、「専用ペーパー」とも呼ぶ。)とペアで使用される。アノトペンは、通常のインクタイプのペン先部に加えて、専用紙上のドットパターンを読み取るための小型カメラと、データ通信ユニットを搭載している。利用者が専用紙上にアノトペンで文字などを書いたり、専用紙上に図案化されている画像にチェックマークを記入したりすると、ペンの移動に伴って小型カメラが専用紙に印刷されたドットパターンを検出し、利用者が書き込んだ文字、画像などの記入情報が取得される。この記入情報が、データ通信ユニットによりアノトペンから近くのパーソナルコンピュータや携帯電話などの端末装置に送信される。このアノトペンを利用したシステムは、キーボードに代わる入力デバイスとして利用することが可能であり、上述のパーソナルコンピュータやキーボードの使用に抵抗がある利用者にとっては非常に使いやすい。そのため、現在、各種ビジネス上の書類、申込書、契約書等に記入されたデータをデジタル化する手法として、電子ペンを利用したシステムが普及しつつある(特許文献1参照)。
【0003】
本出願人は、Anoto社の技術に見られるような電子ペンを用い、地図が印刷されている上記専用ペーパー上で、利用者が上記電子ペンで出発地と目的地とを指定すると、出発地から目的地までの経路と、当該経路の距離情報を提供する地理的情報提供システムを提案している(特許文献2参照)。また、本出願人の提案以前においても、建設現場や測量会社、地図会社において、図面から長さ等を求める場面が多くあるため、デジタイザによる座標入力装置を用い、スタイラスペンによってパネルをヒットして座標値を入力することで、例えば建築図面における長さを求める技術が提案されている(特許文献3参照)。
【0004】
【特許文献1】特表2003−511761号公報
【特許文献2】特開2004−46424号公報
【特許文献3】特公平3−50283号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の地理的情報提供システムでは、出発地の緯度経度情報と目的地の緯度経度情報とに基づいて、出発地から目的地までの最短直線経路を算出している。従って、この地理的情報提供システムは、最短直線経路以外の経路の距離情報を算出しないため、必ずしも利用者の所望の経路に関する距離情報を提供することができないという問題点があった。上記のデジタイザによる座標入力装置も同様に、単にスタイラスペンによってパネルをヒットして入力された座標値間の長さを求めるにとどまるものであった。
【0006】
そこで本発明は、利用者の所望する経路の距離情報を提供するペン装置、スキャナ及びそれに用いられるプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るペン装置は、コード化パターンが印刷された媒体を読み取るペン装置であって、前記媒体への接触状態を検出する接触検出手段と、前記接触検出手段によって接触状態が検出されている間、前記コード化パターンを局所的に撮像して、その位置座標を演算する位置座標演算手段と、前記位置座標演算手段によって演算された位置座標に基づいて、当該ペン装置による筆跡に応じた距離を演算する距離演算手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、利用者がペン装置により媒体に記入すると、接触検出手段がペン装置自身による媒体への接触状態を検出する。位置座標演算手段は、接触検出手段によって接触状態が検出されている間、媒体に印刷されているコード化パターンを局所的に撮像して、その位置座標を演算する。さらに、距離演算手段は、位置座標演算手段によって演算された位置座標に基づいて、当該ペン装置による筆跡に応じた距離を演算する。したがって、利用者がペン装置で媒体に記入すると、ペン装置自体が、その記入された筆跡下に印刷されているコード化パターンを局所的に撮像して位置座標を演算し、その位置座標に基づいて、筆跡に応じた距離を演算するため、利用者の所望する筆跡(軌跡)の距離を演算することができる。
【0009】
または、本発明に係るペン装置は、地図エリアとコード化パターンとが重ねて印刷された媒体を読み取るペン装置であって、前記媒体への接触状態を検出する接触検出手段と、前記接触検出手段によって接触状態が検出されている間、前記コード化パターンを局所的に撮像して、その位置座標を演算する位置座標演算手段と、前記位置座標演算手段によって演算された位置座標に基づいて、当該ペン装置による前記地図エリア上の筆跡に対応する、実際の距離を演算する距離演算手段とを備えることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、利用者がペン装置により媒体の地図エリアに記入すると、接触検出手段がペン装置自身による媒体への接触状態を検出する。位置座標演算手段は、接触検出手段によって接触状態が検出されている間、媒体に印刷されているコード化パターンを局所的に撮像して、その位置座標を演算する。さらに、距離演算手段は、位置座標演算手段によって演算された位置座標に基づいて、当該ペン装置による前記地図エリア上の筆跡で表される経路に対応する、実際の距離を演算する。したがって、利用者が実際の距離を知りたい経路を地図エリア上にペン装置で記入すると、ペン装置自体が、その記入された経路下に印刷されているコード化パターンを局所的に撮像して位置座標を演算し、その位置座標に基づいて、記入された経路に対応する、実際の距離を演算するため、利用者の所望する経路の距離を演算することができる。
【0011】
さらに、上記ペン装置において、距離演算手段によって演算された距離を報知する報知手段を備えるとよい。これにより、利用者は、距離演算手段によって演算された距離を認識することができる。
【0012】
さらに、上記ペン装置において、前記距離演算手段は、前記位置座標演算手段によって演算された位置座標のX座標がaからbであるとき、前記筆跡に応じた距離を式1に基づいて演算することを特徴とする。この場合、ペン装置は、式1に基づいて距離を演算することにより、利用者が媒体上にペン装置を用いて記入した筆跡に応じた距離を演算することができる。
【0013】
【数1】

【0014】
さらに、上記ペン装置において、前記コード化パターン上における前記地図エリアを識別するコード化パターンアドレスと、前記地図エリアの縮尺値とを対応付けた縮尺情報を記憶する記憶手段をさらに備え、前記距離演算手段は、当該ペン装置による筆跡に応じた距離と前記縮尺情報に基づいて、実際の距離を演算することを特徴とする。この場合、ペン装置は、記憶手段に記憶された縮尺情報を参照して、実際の距離を演算することができる。
【0015】
また、本発明に係るプログラムは、コード化パターンが印刷された媒体を読み取るペン装置により実行されるプログラムであって、前記媒体への接触状態を検出する接触検出手段、前記接触検出手段によって接触状態が検出されている間、前記コード化パターンを局所的に撮像して、その位置座標を演算する位置座標演算手段、前記位置座標演算手段によって演算された位置座標に基づいて、当該ペン装置による筆跡に応じた距離を演算する距離演算手段として前記ペン装置を機能させることを特徴とする。
【0016】
あるいは、本発明に係るプログラムは、地図エリアとコード化パターンとが重ねて印刷された媒体を読み取るペン装置により実行されるプログラムであって、前記媒体の接触状態を検出する接触検出手段、前記接触検出手段によって接触状態が検出されている間、前記コード化パターンを局所的に撮像して、その位置座標を演算する位置座標演算手段、前記位置座標演算手段によって演算された位置座標に基づいて、当該ペン装置による筆跡に対応する、実際の距離を演算する距離演算手段として前記ペン装置を機能させることを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係るスキャナは、コード化パターンが印刷された媒体を読み取るスキャナであって、前記媒体への接触状態を検出する接触検出手段と、前記接触検出手段によって接触状態が検出されている間、前記コード化パターンを局所的に撮像して、その位置座標を演算する位置座標演算手段と、前記位置座標演算手段によって演算された位置座標に基づいて、当該スキャナが前記媒体上を移動した軌跡に応じた距離を演算する距離演算手段とを備えることを特徴とする。
【0018】
本スキャナの構成によれば、利用者がスキャナを媒体上で移動させると、接触検出手段がスキャナ自身による媒体への接触状態を検出する。位置座標演算手段は、接触検出手段によって接触状態が検出されている間、媒体に印刷されているコード化パターンを局所的に撮像して、その位置座標を演算する。さらに、距離演算手段は、位置座標演算手段によって演算された位置座標に基づいて、当該スキャナが前記媒体上を移動した軌跡に応じた距離を演算する。したがって、利用者がスキャナを媒体上で移動させると、スキャナ自体が、その移動軌跡下に印刷されているコード化パターンを局所的に撮像して位置座標を演算し、その位置座標に基づいて、移動した軌跡の距離を演算するため、利用者の所望する経路の距離を演算することができる。
【0019】
また、本発明に係るスキャナは、地図エリアとコード化パターンとが重ねて印刷された媒体を読み取るスキャナであって、前記媒体への接触状態を検出する接触検出手段と、前記接触検出手段によって接触状態が検出されている間、前記コード化パターンを局所的に撮像して、その位置座標を演算する位置座標演算手段と、前記位置座標演算手段によって演算された位置座標に基づいて、当該スキャナが前記媒体上を移動した軌跡に対応する、実際の距離を演算する距離演算手段とを備えることを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、利用者がスキャナを媒体の地図エリア上で移動させると、接触検出手段がスキャナ自身による媒体への接触状態を検出する。位置座標演算手段は、接触検出手段によって接触状態が検出されている間、媒体に印刷されているコード化パターンを局所的に撮像して、その位置座標を演算する。さらに、距離演算手段は、位置座標演算手段によって演算された位置座標に基づいて、当該スキャナが前記媒体上を移動した軌跡で表される経路に対応する、実際の距離を演算する。したがって、利用者が実際の距離を知りたい経路の地図エリア上でスキャナを移動させると、スキャナ自体が、その移動経路下に印刷されているコード化パターンを局所的に撮像して位置座標を演算し、その位置座標に基づいて、移動による軌跡で表される経路に対応する、実際の距離を演算するため、利用者の所望する経路の距離を演算することができる。
【0021】
また、本発明に係るプログラムは、コード化パターンが印刷された媒体を読み取るスキャナにより実行されるプログラムであって、前記媒体への接触状態を検出する接触検出手段、前記接触検出手段によって接触状態が検出されている間、前記コード化パターンを局所的に撮像して、その位置座標を演算する位置座標演算手段、前記位置座標演算手段によって演算された位置座標に基づいて、当該スキャナが前記媒体上を移動した軌跡に応じた距離を演算する距離演算手段として前記スキャナを機能させることを特徴とする。
【0022】
または、本発明に係るプログラムは、地図エリアとコード化パターンとが重ねて印刷された媒体を読み取るスキャナにより実行されるプログラムであって、前記媒体への接触状態を検出する接触検出手段、前記接触検出手段によって接触状態が検出されている間、前記コード化パターンを局所的に撮像して、その位置座標を演算する位置座標演算手段、前記位置座標演算手段によって演算された位置座標に基づいて、当該スキャナが前記媒体上を移動した軌跡に対応する、地図上における実際の距離を演算する距離演算手段として前記スキャナを機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係るペン装置又はスキャナ及びそれらに用いられるプログラムによれば、利用者の操作に応じて、地図エリア等の媒体上に記入等をした際に、当該記入等による軌跡の位置座標を演算しつつ軌跡の距離を演算する。これにより、ペン装置やスキャナは、利用者の所望の経路に関する距離を演算することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施の形態について説明する。
【0025】
本実施形態の情報処理システムは、図1及び図2に示すように、電子ペン80、専用ペーパー(電子ペン用媒体)20及び端末装置85から構成される。ここで、図1は電子ペン80の使用形態を模式的に示す図であり、図2は電子ペン80の構成を示すブロック図である。専用ペーパー20には、ドットパターン(コード化パターン)が印刷されている。電子ペン80は、通常のインクペンと同様のペン先部17を備えており、利用者が通常のインクペンと同様にペン先部17によって専用ペーパー20上に経路などを書くと、電子ペン80は、ペン先部17の移動軌跡(筆跡)に沿って、専用ペーパー20に印刷されたドットパターンを局所的、連続的に読み取り、専用ペーパー20におけるその局所位置の座標を算出し、その座標データ等に基づいて、経路を記憶したり、経路に応じた距離を演算する等、所定の処理を実行する。また、本実施形態においては、電子ペン80がペン装置として機能する。以下、各構成について詳細に説明する。
【0026】
なお、端末装置85は、ハードウェアとして、電子ペン80とのデータ通信が可能なアンテナ装置、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)といったメモリ、スピーカ、ディスプレイ等で構成される、パーソナルコンピュータや携帯電話、或いは携帯端末である。
【0027】
[専用ペーパー]
まず、専用ペーパー20について説明する。専用ペーパー20は、用紙上にドットパターンが印刷され、さらにその上に罫線や記入枠などの図案や項目、文言、イラスト等が印刷されたものである。ドットパターンは、赤外線を吸収するカーボンを含んだインキにより印刷される。また、図案等は、カーボンを含まない通常のインキにより印刷される。ドットパターンと図案等とは用紙に対して同時に印刷してもよいし、どちらかを先に印刷してもよい。
【0028】
図3に、本実施形態で使用する地図等が印刷された専用ペーパー20の例を示す。図3に示す専用ペーパー20は、地図を表示する地図エリア100を有する。ドットパターンは、専用ペーパー20のほぼ全面に印刷されており、その上に地図の図柄、建物名称等の文字、地図記号等が、カーボンを含まない通常のインキにより印刷されている。
【0029】
利用者は、ドットパターンを意識することなく、電子ペン80を用いて、上記地図エリア100に所望する経路を記入する。
【0030】
[ドットパターン]
続いて、ドットパターンについて説明する。図4は、専用ペーパー20に印刷されたドットパターンのドットとそのドットが変換される値との関係を説明する図である。図4に示すように、ドットパターンの各ドットは、その位置によって所定の値に対応付けられている。すなわち、ドットの位置を格子の基準位置(縦線及び横線の交差点)から上下左右のどの方向にシフトするかによって、各ドットは、0〜3の値に対応付けられている。また、各ドットの値は、さらに、X座標用の第1ビット値及びY座標用の第2ビット値に変換される。このようにして対応付けられた情報の組合せにより、専用ペーパー20上の位置座標が決定されるよう構成されている。
【0031】
図5(a)は、あるドットパターンの配列を示している。図5(a)に示すように、縦横約2mmの範囲内に6×6個のドットが、専用ペーパー20上のどの部分から6×6ドットを取ってもユニークなパターンとなるように配置されている。これら36個のドットにより形成されるドットパターンは位置座標(例えば、そのドットパターンがその専用ペーパー20上のどの位置にあるのか)と専用ペーパー20毎に固有の識別子であるドットパターンアドレスを保持している。図5(b)は、図5(a)に示す各ドットを、格子の基準位置からのシフト方向によって、図4に示す規則性に基づいて対応づけられた値に変換したものである。この変換は、ドットパターンの画像を撮影する電子ペン80によって行われる。
【0032】
[電子ペン]
次に電子ペン80について説明する。図2に示すように、電子ペン80は、その内部にプロセッサ11、メモリ12、データ通信ユニット13、バッテリー14、LED15、カメラ16、圧力センサ18、スピーカ(音声出力部)19及びクロック22を備える。また、電子ペン80は通常のインクペンと同様の構成要素としてインクカートリッジ(図示せず)などを有する。
【0033】
バッテリー14は電子ペン80内の各部品に電力を供給するためのものであり、例えば電子ペン80のキャップ(図示せず)の脱着により電子ペン80自体の電源のオン/オフを行うよう構成させてもよい。クロック22は、現在時刻(タイムスタンプ)を発信し、プロセッサ11に供給する。圧力センサ18は、利用者が電子ペン80により専用ペーパー20上に文字などを書く際にペン先部17に与えられる圧力、即ち筆圧を検出し、プロセッサ11へ供給する。
【0034】
プロセッサ11は、圧力センサ18から与えられる筆圧データに基づいて、LED15及びカメラ16のスイッチオン/オフの切換を行う。即ち、利用者が電子ペン80で専用ペーパー20上に記入すると、ペン先部17には筆圧がかかり、圧力センサ18によって所定値以上の筆圧が検出されたときに、プロセッサ11は、利用者が専用ペーパー20に記入を開始したと判定して、LED15及びカメラ16を作動させる。
【0035】
LED15は、電子ペン80のペン先付近に取り付けられており、専用ペーパー20上のペン先部17近傍(領域15a)に向けて、赤外線を照明する(図1参照)。領域15aは、ペン先部17が専用ペーパー20に接触する位置とはわずかにずれている。カメラ16は、LED15によって照明された領域15a内におけるドットパターンを撮影し、そのドットパターンの画像データをプロセッサ11に供給する。ここで、カーボンは赤外線を吸収するため、LED15によって照射された赤外線は、ドットの部分でドットに含まれるカーボンによって吸収される。そのため、ドットの部分は、赤外線の反射量が少なく、ドット以外の部分は赤外線の反射量が多い。したがって、カメラ16の撮影により、赤外線の反射量の違いから、カーボンを含むドットの領域とそれ以外の領域を区別することができる。たとえ撮影領域に罫線や枠などが印刷されてあったとしても、罫線や枠などのインクには、カーボンが含まれていないため、ドットパターンを認識することができる。なお、カメラ16による撮影領域は、図5(a)に示すような約2mm×約2mmの大きさを含む範囲であり、カメラ16の撮影は、毎秒50〜100回程度行われる。
【0036】
プロセッサ11は、利用者による経路記入等が行われる間、カメラ16によって供給される画像データのドットパターンから、利用者が指定する経路の専用ペーパー20上でのX,Y座標(単に「座標データ」、「位置座標」とも呼ぶ)を連続的に算出していく。すなわち、プロセッサ11は、カメラ16によって供給される、図5(a)に示されるようなドットパターンの画像データを図5(b)に示すデータ配列に変換し、さらに、X座標ビット値・Y座標ビット値に変換して、そのデータ配列から所定の演算方法によりX,Y座標データを算出するとともに、専用ペーパー20に固有のドットパターンアドレス(コード化パターンアドレス)を算出する。そしてプロセッサ11は、現在時刻(タイムスタンプ)を発信するクロック22から時間情報を取得し、その時間情報と、筆圧データ、及びX,Y座標データ、ドットパターンアドレスとを関連付け、これらの情報を位置座標情報として取得する。さらに、プロセッサ11は、位置座標情報に基づいて所定の処理を実行する。ここで、一枚の専用ペーパー(電子ペン用媒体)20内の6×6のドットパターンは、その専用ペーパー20内で重複することはないため、利用者が電子ペン80で所定のエリアに記入すると、その筆跡が専用ペーパー20のどの位置に対応するものであるかを、座標データから特定することができる。
【0037】
メモリ12には、予めドットパターンアドレスで特定される地図エリア100に印刷された地図の縮尺値が、そのドットパターンアドレスに対応付けられた縮尺情報として記憶されている。また、メモリ12には、プロセッサ11によって、位置座標情報が時系列で記憶され、さらに後述する距離演算手段63によって演算される距離が一時記憶される。メモリ12の容量は例えば1Mバイト〜2Gバイト程度とすることができる。スピーカ(音声出力部)19は、プロセッサ11による出力指示によって、各種情報に応じた音声データを再生出力する。
【0038】
データ通信ユニット13は、プロセッサ11により供給されるメモリ12内の所定のデータを端末装置85へ無線送信する。データ通信ユニット13による送信は、Bluetooth(登録商標)の無線送信によると好適である。なお、USBケーブルを使用した有線送信、端子などの接触によるデータ送信など、他の方法によって、データ通信ユニット13から端末装置85へデータ送信を行ってもよい。
【0039】
ここで、電子ペン80が有する機能について図6を参照して説明する。図6は、電子ペン80の主要な構成を示す機能ブロック図である。電子ペン80は、取得したX,Y座標データに基づいて、専用アプリケーションを実行することで所定の処理を行う。
【0040】
図6に示すように、電子ペン80は、機能的には、情報記憶手段58、接触検出手段60、位置座標演算手段61、アドレス取得手段62、距離演算手段63、データ通信手段64、及び報知手段65を備える。情報記憶手段58は、物理的には、ROMやRAMといったメモリ12によって構成され、接触検出手段60は、ペン先部17が専用ペーパー20に接触していることを検出するための圧力センサ18やプロセッサ11等によって構成される。また、位置座標演算手段61、アドレス取得手段62は、カメラ16、メモリ12及びプロセッサ11等によって構成される。距離演算手段63は、プロセッサ11等によって構成される。そして、データ通信手段64は、データ通信ユニット13によって構成され、報知手段65は、プロセッサ11及びスピーカ19によって構成される。
【0041】
情報記憶手段58は、ドットパターンアドレス(コード化パターンアドレス)で特定される地図エリア100に印刷された地図の縮尺値を、そのドットパターンアドレスに対応付けた縮尺情報として記憶している。また、情報記憶手段58は、位置座標演算手段61が演算した座標データや、距離演算手段63によって演算された距離等を記憶する。
【0042】
接触検出手段60は、圧力センサ18で検出された筆圧が所定値以上であることを条件として、電子ペン80のペン先部17が専用ペーパー20に接触した状態であることを検出し、位置座標演算手段61及びアドレス取得手段62に伝達する。位置座標演算手段61は、接触検出手段60によってペン先部17が専用ペーパー20に接触している状態であると検出されている間、すなわち、電子ペン80が専用ペーパー20の地図エリア100に接触を開始して経路等が記入され、地図エリア100から離れるまでの間、カメラ16によって局所的にペン先部17付近のドットパターンを撮像し続け(例えば、1秒間に75回)、その画像データに基づいて専用ペーパー20上でのX,Y座標データを連続的に演算し続け、距離演算手段63に伝達するほか、情報記憶手段58に記憶する。
【0043】
アドレス取得手段62は、電子ペン80が地図エリア100へ接触したことを接触検出手段60が検出した際に、ドットパターンの画像データに基づいて、専用ペーパー20の種類毎ないし頁毎に設定されるドットパターンアドレスを求め、距離演算手段63に伝達するほか、情報記憶手段58に記憶する。
【0044】
距離演算手段63は、ペン先部17の専用ペーパー20への接触状態が接触検出手段60によって検出されている間、ペン先部17が地図エリア100に接触した位置(ペン・ダウン位置)から離脱する位置(ペン・アップ位置)までの、電子ペン80で専用ペーパー20の地図エリア100上がなぞられる経路等の筆跡に応じた座標データに基づいて、地図上の距離を演算し、さらに、実際の距離(地表上の道のり)を演算し、情報記憶手段58に記憶する。
【0045】
すなわち、距離演算手段63は、位置座標演算手段61によって連続的に演算される位置座標を用いて、ペン・ダウン位置から記入された筆跡の距離を線積分により演算する。位置座標演算手段61によって演算された位置座標のX座標がaからbであるとき、筆跡に応じた距離は、式1で表される。
【0046】
【数2】

【0047】
電子ペン80は、上記の式1に基づいて距離を算出することにより、利用者が電子ペン80を用いて地図エリア100上をなぞった筆跡の距離を算出することができる。なお、上記の線積分の式1以外で算出しても良い。
【0048】
それと同時に、距離演算手段63は、アドレス取得手段62によって求められたドットパターンアドレスに基づいて、情報記憶手段58に記憶された縮尺情報を参照して、そのドットパターンアドレスに対応した縮尺値を取得する。そして、距離演算手段63は、上記のように演算した筆跡の距離と縮尺値とから、ペン・ダウン位置からの実際の距離(地表上の道のり)を演算し続ける。
【0049】
例えば、筆記された線(筆跡)の線積分による距離をLとし、縮尺値をc(例えば、2万5千分の1)とすれば、実際の距離(地表上の道のり)Dは、
D = L/c
となる。
【0050】
すなわち、距離演算手段63は、接触検出手段60の検出情報、位置座標演算手段61による座標データ及びアドレス取得手段62によるドットパターンアドレス情報によって、ペン先部17の地図エリア100からの離脱(ペン・アップ)が認識されるまで、実際の距離Dの演算を行い、ペン先部17の離脱が認識された時点で、ペン・ダウン位置からペン・アップ位置まで電子ペン80で地図エリア100がなぞられた筆跡に応じた、実際の距離(地表上の道のり)Dを確定させ、報知手段65に伝達するほか、情報記憶手段58に記憶する。
【0051】
報知手段65は、距離演算手段63によって確定された実際の距離Dを、スピーカ19に音声で報知させる。報知手段65による案内メッセージ例としては「出発地から目的地までの道のりは、○○kmです。」である。
【0052】
なお、報知手段65は、距離演算手段63によって演算された実際の距離Dを端末装置85で表示させるために、距離Dの情報をデータ通信手段64によって端末装置85へ送信するように構成してもよい。
【0053】
電子ペン80は、専用アプリケーションがインストールされることにより、上述の各手段が構成される。
【0054】
[専用アプリケーション]
次に、専用アプリケーション55について図7を参照して説明する。図7は、専用アプリケーション55のモジュール構成を示す。専用アプリケーション55は、電子ペン80が専用ペーパー20をなぞった経路に関する座標情報に基づいて所定の処理を実行するものであって、ダウンロード等により予め電子ペン80にインストールされている。専用アプリケーションは、原則として専用ペーパー20に対応付けられている。つまり、専用ペーパー20の種類が異なれば、その種類に応じて各専用ペーパー20に記入されたデータを処理する専用アプリケーションは異なる。しかし、専用ペーパー20と専用アプリケーションの対応は必ずしも1対1である必要はなく、複数種類の専用ペーパー20に1つの専用アプリケーションを対応付けてデータを処理させてもよい。また、1種類の専用ペーパー20に複数の専用アプリケーションを対応付けてデータを処理させてもよい。
【0055】
図7に示すように、専用アプリケーション55は、接触検出モジュール300、情報記憶モジュール301、位置座標演算モジュール302、アドレス取得モジュール303、距離演算モジュール304、報知モジュール305、及びデータ通信モジュール306を有する。
【0056】
接触検出モジュール300は、電子ペン80のペン先部17が専用ペーパー20に対して接触状態であることを、圧力センサ18で検出された筆圧が所定値以上であることを条件として検出し、位置座標演算手段61及びアドレス取得手段62に伝達する機能を有し、電子ペン80に接触検出手段60を構成させるモジュールである。
【0057】
情報記憶モジュール301は、地図エリア100を特定するためのドットパターンアドレスとその地図エリア100の縮尺値とを対応付けた縮尺情報をメモリ12に記憶させる機能を有するほか、位置座標演算手段61が演算した座標データや、距離演算手段63によって演算された距離等をメモリ12に記憶させる機能を有する、電子ペン80に情報記憶手段58を構成させるモジュールである。
【0058】
位置座標演算モジュール302は、接触検出手段60によってペン先部17が専用ペーパー20に接触している状態であると検出されている間、カメラ16によって局所的にペン先部17付近のドットパターンを撮像し続け、その画像データに基づいてX,Y座標データを連続的に演算し続け、距離演算手段63に伝達するほか、情報記憶手段58に記憶する機能を有し、電子ペン80に位置座標演算手段61を構成させるモジュールである。
【0059】
アドレス取得モジュール303は、電子ペン80が地図エリア100へ接触したことを接触検出手段60が検出した際に、ドットパターンの画像データに基づいて、専用ペーパー20の種類毎ないし頁毎に設定されるドットパターンアドレスを求め、距離演算手段63に伝達するほか、情報記憶手段58に記憶する機能を有し、電子ペン80にアドレス取得手段62を構成させるモジュールである。
【0060】
距離演算モジュール304は、ペン先部17が地図エリア100に接触した位置(ペン・ダウン位置)から離脱する位置(ペン・アップ位置)まで電子ペン80で地図エリア100がなぞられる経路等の筆跡に応じた座標データに基づいて、地図上の距離を演算し、さらに、実際の距離(地表上の道のり)を演算して確定し、報知手段65に伝達するほか、情報記憶手段58に記憶させる機能を有し、電子ペン80に距離演算手段63を構成させるモジュールである。
【0061】
報知モジュール305は、距離演算手段63によって確定された実際の距離Dをスピーカ19に音声で報知させる機能を有し、電子ペン80に報知手段65を構成させるモジュールである。なお、報知モジュール305は、距離演算手段63によって確定された実際の距離Dを端末装置85で表示させるために、距離Dの情報をデータ通信手段64によって端末装置85へ送信させる機能を有するように構成してもよい。
【0062】
データ通信モジュール306は、端末装置85等を介して専用アプリケーション55をダウンロードしたり、距離演算手段63によって演算された実際の距離Dを端末装置85で表示したりする等のために、端末装置85とデータの送受信を行う機能を有し、電子ペン80にデータ通信手段64を構成させるモジュールである。
【0063】
[距離演算システムによる距離演算フロー]
次に、本実施形態の距離演算システムにより行われる距離演算フローについて図8及び図9を参照して説明する。図8は、電子ペン80でなぞられた筆跡のある専用ペーパー20を示す図である。図9は、電子ペン80における距離演算のフローチャートである。
【0064】
ここで、本実施形態における距離演算とは、利用者が電子ペン80を専用ペーパー20の地図エリア100に接触させてから離脱させるまでの間に、なぞった経路における実際の距離D(地表上の道のり)を算出し、その結果を通知する処理である。
【0065】
図8に示すように、利用者は、電子ペン80のペン先部17により、専用ペーパー(電子ペン用媒体)20の地図エリア100上の出発地(接触開始点)701を指定する(ペン・ダウン)。すると、接触検出手段60は、圧力センサ18で検出された筆圧が所定値以上となったことで、電子ペン80のペン先部17が専用ペーパー20に接触したことを検出し、位置座標演算手段61及びアドレス取得手段62に伝達する(ステップS1)。そして、利用者が地図エリア上の目的地(離脱点)703まで電子ペン80でなぞり、離脱点703で電子ペン80を専用ペーパー20から離す(ペン・アップ)まで、接触検出手段60は、電子ペン80の接触を検出し続け、位置座標演算手段61及びアドレス取得手段62に伝達し続けることとなる。
【0066】
続いて、位置座標演算手段61は、カメラ16によって接触開始点701からドットパターンの撮像を開始し、専用ペーパー20上での局所的なX,Y座標データ(位置座標)の演算を行い、距離演算手段63に伝達する。それとともに、アドレス取得手段62は、ドットパターンの画像データからドットパターンアドレスを求め、距離演算手段63に伝達する(ステップS2)。距離演算手段63は、X,Y座標データ及び式1に基づいて地図エリア100上の筆跡の距離を演算する(ステップS3)。さらに距離演算手段63は、ドットパターンアドレスに基づいて、情報記憶手段58に記憶された縮尺情報を参照してそのドットパターンアドレスに対応した縮尺値を取得し、筆跡の距離と縮尺値とから、実際の距離Dを演算する(ステップS4)。
【0067】
【数3】

【0068】
そして、接触検出手段60によって電子ペン80の地図エリア100への接触が検出され続け、電子ペン80が専用ペーパー20上から離れた(ペン・アップ)と判断されないと(ステップS5;ノー)、位置座標演算手段61は、カメラ16による局所的なドットパターンの撮像を所定の撮影間隔で続けて、電子ペン80で地図エリア100がなぞられる経路の通過点702A,702B,702C,702D,…の位置座標を演算し続ける(ステップS2)。ステップS2〜ステップS4の処理は、接触検出手段60によって電子ペン80のペン・アップが検出される(ステップS5;イエス)まで繰り返される。
【0069】
なお、通常、ドットパターンアドレスは専用ペーパー20の種類ないし頁毎に同一であり、ステップS2のアドレス取得手段62により求められるドットパターンアドレスは変わらないため、ドットパターンアドレスを求めるのは最初の1回のみでもよいし、繰り返しドットパターンアドレスを求めて、何らかの原因によりドットパターンアドレスが変わった場合は距離演算手段63に伝達することとしてもよい。また、ドットパターンアドレスが変わらない限り、距離演算手段63が縮尺情報を参照して縮尺値を取得するのは、最初の1回のみでよい。
【0070】
ここで、ステップS2〜ステップS5の処理における距離演算手段63の距離演算の詳細について説明する。距離演算手段63は、接触開始点701の位置座標と通過点702Aの位置座標から、線積分により接触開始点701と通過点702Aとの間の電子ペン80でなぞられた筆跡(経路)の距離を演算して、さらに縮尺値を用いて実際の距離Dを演算する。そして、接触検出手段60によってペン・アップは検出されないため(ステップS5;ノー)、距離演算手段63は、続けて通過点702Aの位置座標と通過点702Bの位置座標から、線積分により通過点702Aと通過点702Bとの間の筆跡距離を演算して、さらに実際の距離Dを演算して、先に演算した接触開始点701と通過点702Aとの間の実際の距離Dに加算する。同様にして、通過点702Bと通過点702Cとの間の実際の距離D、通過点702Cと通過点702Dとの間の実際の距離D、通過点702Dと離脱点703との間の実際の距離D、と演算していき、順次それまで演算した実際の距離Dに加算する。このようにして、電子ペン80は、利用者が指定した経路(筆跡経路)に対応する地図上の距離を演算して、さらに実際の距離Dを演算していく。
【0071】
利用者が、地図エリア100の離脱点703で電子ペン80をペン・アップさせると、接触検出手段60は、圧力センサ18で検出される筆圧が所定値未満となったことで、電子ペン80のペン・アップを検出する(ステップS5;イエス)。すると、距離演算手段63は、ペン・アップ検出の直前に取得した位置座標を離脱点703の位置座標であると判断して、それまでに演算した接触開始点701から離脱点703までの間の筆跡距離に対応する実際の距離Dを、電子ペン80により地図エリア100がなぞられた経路に対応する実際の距離Dであると確定して、報知手段65に伝達する(ステップS6)。
【0072】
報知手段65は、距離演算手段63が演算して確定した接触開始点701から離脱点703までの実際の距離(地表上の道のり)Dをスピーカ19に音声で通知させる(ステップS7)。これにより、距離演算を終了する。
【0073】
このように、利用者が電子ペン80を所望の経路に沿って地図エリア100上でなぞると、それに応じて、電子ペン80がなぞった経路の位置座標を取得し、当該位置座標に基づいて、地図上の経路の距離を演算し、実際の距離Dをスピーカ19を介して出力することができる。
【0074】
[本電子ペンシステムによる作用効果]
この電子ペン80を利用したシステムによれば、利用者が電子ペン80で、地図エリア100をなぞると、電子ペン80は、電子ペン80で地図エリア100をなぞった経路に応じた筆跡(軌跡)の位置座標を演算して、当該位置座標に基づいて、地図エリア100上の経路の距離及び実際の距離(地表上の道のり)Dを算出する。そして、当該実際の距離Dを出力する。このように、電子ペン80は、利用者の所望する経路に関する距離を算出して、音声等により利用者に報知することができる。これにより出発地から目的地までに複数の経路がある場合にも、利用者はこの電子ペン80を利用したシステムによって、簡単に経路毎の距離を知ることができ、経路の選択等に役立てられる。
【0075】
なお、本発明は、上記実施形態に限られない。
【0076】
上述の距離演算では、通過点702の位置座標又は離脱点703の位置座標を演算する度に、経路(軌跡)の距離を演算していたが、接触検出手段60によってペン・アップが検出された時点で、距離演算手段63が接触開始点701の位置座標と、通過点702A,702B,…の位置座標と、離脱点703の位置座標とに基づいて接触点位置座標から離脱点位置座標までの軌跡を決定し、軌跡の距離を演算して、さらに縮尺値に基づいて、当該軌跡に沿った実際の距離(地表上の道のり)Dを演算ししても良い。
【0077】
この場合、電子ペン80は、離脱点位置座標を演算した後に、接触点位置座標から離脱点位置座標までの距離を演算するので、通過点位置座標を取得する度に距離を算出する場合に比して、電子ペン80で地図エリア100をなぞっている間の処理負荷を軽減することができる。
【0078】
或いはまた、上述の距離演算では、地図上の距離を演算する度に実際の距離Dを演算していたが、ペン・アップを検出するまでは地図上の距離のみを演算し続けて、ペン・アップを検出した時点で、なぞられた経路の距離(地図上の距離)を確定して実際の距離Dを算出しても良い。この場合も、電子ペン80は、地図エリア100をなぞっている間の処理負荷を軽減することができる。
【0079】
また、上記実施形態において、報知手段65が、距離演算手段63によって演算された実際の距離Dをスピーカ(音声出力部)19に再生出力させたが、データ通信手段64を介して端末装置85に対して当該距離Dを送信させ、端末装置85の画面やスピーカから当該距離Dを出力させるようにしてもよい。更に、当該距離Dのみでなく、筆跡の経路に応じて演算した位置座標情報も合せて端末装置85に送信して、端末装置85の画面に、利用者が地図エリア100に記入した経路を当該距離Dと合せて表示させるようにしてもよく、利用者が複数の経路を記入した場合は色分けして、最短距離となる経路及び対応する距離Dを所定の色で表示させるようにすると、利用者により分かり易く距離情報を伝えることができるため利便性が向上する。
【0080】
上記実施形態では、ドットパターンアドレスに縮尺値を対応付けて縮尺情報としているが、その代わりに例えば、地図エリア100のエリアIDと、ドットパターン上における地図エリア100の位置座標を示す座標データと、その地図エリア100の縮尺値とを対応付けて縮尺情報としてもよい。この場合、距離演算手段63は、アドレス取得手段62により求められたドットパターンアドレスに代え、位置座標演算手段61が演算した座標データに基づいて、情報記憶手段58に記憶された縮尺情報を参照して、その座標データに対応した縮尺値を取得する。これにより座標データからエリアIDを特定して縮尺値を取得することができるため、同じ専用ペーパー20上に縮尺率の異なる複数の地図エリアが印刷されている場合にも、地図エリア毎に実際の距離Dを演算することができる。
【0081】
上記実施形態では、位置座標演算手段61が、所定の間隔で通過点位置座標を演算し、メモリ12に保持していたが、位置座標演算手段61が通過点位置座標を演算した結果、直前の通過点位置座標等と同一座標値である場合は、取得した通過点位置座標をメモリ12に保持しないようにしても良い。この場合、電子ペン80が軌跡の距離を算出するために、不要な座標値を保存してしまうことを回避することができる。
【0082】
上記実施形態では、ペン装置として電子ペン80を適用したが、インクカートリッジの付いていないペン型スキャナをペン装置の代わりに適用しても良い。ペン型スキャナは通常、ペン先やインクカートリッジを有さないが、上記実施形態の接触検出手段60と同等の機能を実現する、上記実施形態の電子ペン80のペン先部17と同様の物理的機構を設ければよい。或いは、ペン型スキャナに電源オン・オフによってカメラによる撮像を開始・終了させることとして、上記実施形態の位置座標演算手段61と同様の位置座標演算により、有意な座標データが得られた時点の位置座標を接触開始点701、所定時間以上、有意なデータが得られなくなった直前の時点の位置座標を離脱点703とするよう、上記実施形態を変形させてもよい。また、上記実施形態と同様に各種の変形が可能である。
【0083】
また、電子ペン80内に、ペン自体又はその所有者に関するプロパティ情報(ペン情報又はペン所有者情報)を保持しておき、端末装置85から参照することができるようにしてもよいし、プロパティ情報の全部又は一部を位置座標情報と共に端末装置85に送信するようにしてもよい。ペン情報としては、バッテリーレベル、ペンID、ペン製造者番号、ペンソフトウェアのバージョン、サブスクリプションプロバイダのID、空きメモリ容量などが挙げられる。また、ペン所有者情報としては、国籍、言語、タイムゾーン、emailアドレス、名称、住所、ファックス/電話番号、携帯電話番号などが挙げられる。
【0084】
また、上記実施形態では、ドットは赤外線を吸収するカーボンを含むインクとし、電子ペン80のLED15を、赤外線を照射するLEDとし、カメラ16によって赤外線の反射量の差によって、電子ペン80でドットパターンを読み取っていたが、これに限らない。例えば、ドットは所定波長の光によって所定波長を発光するインクとし、電子ペン80のLED15を、ドットのインクを発光させる光を照射するものとし、カメラ16によってドットのインクが発光する波長の領域を検知することによって、電子ペン80でドットパターンを読み取るようにしてもよく、カメラ16によってドットパターンが読み取れれば、ドットのインクの種別やLED15の照射光等は上記実施形態で示したものに限られない。また、専用ペーパー20における位置座標が特定できるものであれば、ドットパターンの代わりに、別のコード化されたパターン、例えば、2次元コードパターンなどであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、電子ペン用媒体から構成される、登山用の地図、タウンマップ等の地図アプリケーション、建築見取り図、設計図面等の建築アプリケーション、ゴールまでに辿った経路の最短距離を競う迷路クイズ等に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】電子ペンの使用形態を模式的に示す図である。
【図2】実施形態における電子ペンの構成を示すブロック図である。
【図3】実施形態における電子ペン用媒体を示す図である。
【図4】専用ペーパーに印刷されたドットパターンによる情報の表現方法を説明する図である。
【図5】(a)は、ドットパターンを模式的に示し、(b)は、それに対応する情報の例を示す図である。
【図6】電子ペンの主要な構成を示す機能ブロック図である。
【図7】実施形態における専用アプリケーションのモジュール構成図である。
【図8】実施形態における電子ペンでなぞられた筆跡のある専用ペーパーを示す図である。
【図9】実施形態における距離演算のフローチャートである。
【符号の説明】
【0087】
11…プロセッサ、12…メモリ、13…データ通信ユニット、14…バッテリー、15…LED、16…カメラ、18…圧力センサ、19…スピーカ、20…専用ペーパー(電子ペン用媒体)、22…クロック、55…専用アプリケーション、58…情報記憶手段、60…接触検出手段、61…位置座標演算手段、62…アドレス取得手段、63…距離演算手段、64…デーや通信手段、65…報知手段、80…電子ペン、85…端末装置、100…地図エリア、701…接触開始点、702A〜702D…通過点、703…離脱点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コード化パターンが印刷された媒体を読み取るペン装置であって、
前記媒体への接触状態を検出する接触検出手段と、
前記接触検出手段によって接触状態が検出されている間、前記コード化パターンを局所的に撮像して、その位置座標を演算する位置座標演算手段と、
前記位置座標演算手段によって演算された位置座標に基づいて、当該ペン装置による筆跡に応じた距離を演算する距離演算手段と
を備えることを特徴とするペン装置。
【請求項2】
地図エリアとコード化パターンとが重ねて印刷された媒体を読み取るペン装置であって、
前記媒体への接触状態を検出する接触検出手段と、
前記接触検出手段によって接触状態が検出されている間、前記コード化パターンを局所的に撮像して、その位置座標を演算する位置座標演算手段と、
前記位置座標演算手段によって演算された位置座標に基づいて、当該ペン装置による前記地図エリア上の筆跡に対応する、実際の距離を演算する距離演算手段と
を備えることを特徴とするペン装置。
【請求項3】
さらに、前記距離演算手段によって演算された前記距離を報知する報知手段と
を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のペン装置。
【請求項4】
前記距離演算手段は、前記位置座標演算手段によって演算された位置座標のX座標がaからbであるとき、前記筆跡に応じた距離を式1に基づいて演算することを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか一項に記載のペン装置。
【数1】

【請求項5】
前記コード化パターン上における前記地図エリアを識別するコード化パターンアドレスと、前記地図エリアの縮尺値とを対応付けた縮尺情報を記憶する記憶手段をさらに備え、
前記距離演算手段は、当該ペン装置による筆跡に応じた距離と前記縮尺情報に基づいて、実際の距離を演算することを特徴とする請求項2に記載のペン装置。
【請求項6】
コード化パターンが印刷された媒体を読み取るペン装置により実行されるプログラムであって、
前記媒体への接触状態を検出する接触検出手段、
前記接触検出手段によって接触状態が検出されている間、前記コード化パターンを局所的に撮像して、その位置座標を演算する位置座標演算手段、
前記位置座標演算手段によって演算された位置座標に基づいて、当該ペン装置による筆跡に応じた距離を演算する距離演算手段
として前記ペン装置を機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項7】
地図エリアとコード化パターンとが重ねて印刷された媒体を読み取るペン装置により実行されるプログラムであって、
前記媒体の接触状態を検出する接触検出手段、
前記接触検出手段によって接触状態が検出されている間、前記コード化パターンを局所的に撮像して、その位置座標を演算する位置座標演算手段、
前記位置座標演算手段によって演算された位置座標に基づいて、当該ペン装置による筆跡に対応する、実際の距離を演算する距離演算手段
として前記ペン装置を機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項8】
コード化パターンが印刷された媒体を読み取るスキャナであって、
前記媒体への接触状態を検出する接触検出手段と、
前記接触検出手段によって接触状態が検出されている間、前記コード化パターンを局所的に撮像して、その位置座標を演算する位置座標演算手段と、
前記位置座標演算手段によって演算された位置座標に基づいて、当該スキャナが前記媒体上を移動した軌跡に応じた距離を演算する距離演算手段と
を備えることを特徴とするスキャナ。
【請求項9】
地図エリアとコード化パターンとが重ねて印刷された媒体を読み取るスキャナであって、
前記媒体への接触状態を検出する接触検出手段と、
前記接触検出手段によって接触状態が検出されている間、前記コード化パターンを局所的に撮像して、その位置座標を演算する位置座標演算手段と、
前記位置座標演算手段によって演算された位置座標に基づいて、当該スキャナが前記地図エリア上を移動した軌跡に対応する、実際の距離を演算する距離演算手段と、
を備えることを特徴とするスキャナ。
【請求項10】
コード化パターンが印刷された媒体を読み取るスキャナにより実行されるプログラムであって、
前記媒体への接触状態を検出する接触検出手段、
前記接触検出手段によって接触状態が検出されている間、前記コード化パターンを局所的に撮像して、その位置座標を演算する位置座標演算手段、
前記位置座標演算手段によって演算された位置座標に基づいて、当該スキャナが前記媒体上を移動した軌跡に応じた距離を演算する距離演算手段
として前記スキャナを機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項11】
地図エリアとコード化パターンとが重ねて印刷された媒体を読み取るスキャナにより実行されるプログラムであって、
前記媒体への接触状態を検出する接触検出手段、
前記接触検出手段によって接触状態が検出されている間、前記コード化パターンを局所的に撮像して、その位置座標を演算する位置座標演算手段、
前記位置座標演算手段によって演算された位置座標に基づいて、当該スキャナが前記地図エリア上を移動した軌跡に対応する、地図上における実際の距離を演算する距離演算手段、
として前記スキャナを機能させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−287565(P2008−287565A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−132780(P2007−132780)
【出願日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】