説明

ペースト混練脱泡装置

【課題】公転用回転体の回転バランス調整を容易にかつ確実に行うことができて所期のペースト材料の混練、脱泡処理を確実に行うことのできるペースト混練脱泡装置の提供。
【解決手段】水平面内で回転される公転用回転体上において自転可能に設けられたペースト容器保持体30の、ペースト容器60を保持した状態での重心位置の、公転中心位置に対する反対側の位置であって、当該ペースト容器保持体の重心位置と公転中心位置とを結ぶ直線の延長線を挟んで互いに異なる方向の位置に、それぞれ重心位置が位置された2つのバランス荷重部材36A、36Bと、各々のバランス荷重部材を公転中心軸Aの周りに回動させることにより各々のバランス荷重部材の重心位置と公転中心位置とを結ぶ2つの直線の各々がなす開き角の大きさを調整して公転用回転体の回転バランスを調整する位置調整機構40とよりなる回転バランス調整機構35を備えてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はペースト混練脱泡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、スクリーン印刷機によってプリント回路基板の表面に適用されるソルダーペーストや、例えば導電インキなどの電子産業において用いられるペースト材料や、医療分野におけるぬり薬の調合ペーストなどのペースト材料は、十分に混練、脱泡した状態で使用されることが必要とされており、このような混練、脱泡処理はペースト材料が収容される容器の容量が互いに大きく異なるものであっても、短時間例えば通常数分間程度の時間の間に行われることが望まれている。
【0003】
現在、ペースト材料の混練、脱泡処理を行うためのペースト混練脱泡装置として、種々のタイプのものが提案されており(例えば特許文献1参照)、このようなペースト混練脱泡装置のある種のものは、図5に示すように、ペースト容器60を保持するペースト容器保持体30が、公転用駆動回転軸11の周りに公転されながら、当該公転用駆動回転軸11と斜めに交叉するよう伸びる自転用駆動回転軸20の周りに自転されることにより、ペースト容器60内に収容されたペースト材料が混練、脱泡処理される構成とされている。なお、図5においては、図1に示す本発明に係るペースト混練脱泡装置と同一の構成部材については、便宜上、同一の符号が付してあり、その説明を省略する。また、図5における符号75は公転用回転体である回転バー15の動作制御を行う回転体制御部、76は回転バー15の回転に伴う振動を検出する振動センサ、77は振動センサ76による検出信号を回転体制御部75に送信する光通信部である。
【0004】
このようなペースト混練脱泡装置においては、通常、ペースト容器保持体が設けられた公転用回転体の回転のバランスをとるための回転バランス調整機構が設けられている。
この例における回転バランス調整機構は、駆動モータ10の公転用駆動回転軸11に固定されて水平面内で回転される回転バー15の一端部(図において右端部)に設けられたペースト容器保持体30によって保持されたペースト容器60の重さ(重量)に応じて、回転バー15の公転のバランスをとるための重量バランサー70が回転バー15の他端部に設けられている。
重量バランサー70は、回転バー15の長さ方向に伸びるボールネジ71と、このボールネジ71が貫通する状態で螺合されて、公転中心軸Aからの距離が調整可能に設けられた錘72と、ボールネジ71の頭部の周面に形成されたネジ溝に噛合する駆動ギアを有する電動モータ73と、当該電動モータ73の駆動ための電池74とにより構成されており、回転バー15の回転バランス調整が振動センサ76の検出信号に基づいて自動調整される構成とされている。
【0005】
【特許文献1】特開平6−343913号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
而して、上記構成のペースト混練脱泡装置における公転用回転体の回転バランス調整は、(イ)作業者がペースト容器の重さを測定し、重量バランサーを構成する錘の位置をペースト容器の重さに応じた位置に手動により移動させることにより、あるいは、(ロ)図5に示すペースト混練脱泡装置のように、例えば振動センサ76によって検出される回転バー15の振動の大きさが小さくなるよう、錘72の位置を電動モータ73によって自動的に移動させることにより、行うことができる。
しかしながら、例えば回転バランス調整を自動的に行う場合であっても、錘72に作用する強い遠心力を考慮して、電動モータ73のギア比は大きくとらなければならないため、回転バランス調整時における錘72の移動速度は極めてゆっくりしたものとなるという問題があり、結局、いずれの方法によっても、作業者は、目的とする混練、脱泡処理を行うに際しての回転バランス調整に手間がかかると共に長時間を要し、作業効率が低下するという問題がある。
【0007】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、基本的には、ペースト容器を公転運動させるための公転用回転体を安定して回転させることができて所期のペースト材料の混練、脱泡処理を確実に行うことができ、しかも、公転用回転体の回転バランス調整を容易にかつ確実に行うことのできるペースト混練脱泡装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のペースト混練脱泡装置は、鉛直方向に伸びる公転用駆動回転軸の周りに回転される公転用回転体と、この公転用回転体上における公転用駆動回転軸に対して径方向に離間した位置において、自転可能に設けられたペースト容器保持体と、公転用回転体の回転のバランスをとるための回転バランス調整機構とを備えてなり、
回転バランス調整機構は、混練すべきペースト材料が収容されたペースト容器が保持された状態のペースト容器保持体の重心位置の公転中心位置に対する反対側であって、当該ペースト容器保持体の重心位置と公転中心位置とを結ぶ直線の延長線を基準線として当該基準線を挟んで互いに異なる方向の位置に、それぞれ重心位置が位置されるよう設けられた、公転用回転体の回転に伴って公転用駆動回転軸の周りに回転される2つのバランス荷重部材と、各々のバランス荷重部材の重心位置と公転中心位置とを結ぶ2つの直線の各々がなす開き角の大きさを調整することにより公転用回転体の回転のバランスを調整する位置調整機構とを備えていることを特徴とする。
【0009】
本発明のペースト混練脱泡装置においては、バランス荷重部材の各々は、ロッド状の支持部材の先端に錘が固定された互いに同一の構成を有するものであって、
位置調整機構は、各々、公転用駆動回転軸に対して回転自在に固定された、互いに同一の歯数を有する第1の歯車および第2の歯車と、第1の歯車に噛合されて水平面内で回転される第3の歯車と、第2の歯車および第3の歯車のそれぞれに噛合されて水平面内で回転される、第3の歯車と同一の歯数を有する第4の歯車と、これら4つの歯車のいずれか一の歯車を回転駆動させる駆動源とを備えており、一方のバランス荷重部材における支持部材の基端が第1の歯車に連結固定されていると共に、他方のバランス荷重部材における支持部材の基端が第2の歯車に連結固定された構成とすることができる。
【0010】
また、本発明のペースト混練脱泡装置においては、公転用回転体の回転位相を検出する第1のセンサおよび公転用回転体の振動の方向または位相を検出する第2のセンサが設けられており、第1のセンサの検出信号および第2のセンサの検出信号に基づいて、公転用回転体の回転に伴う振動が最小となる状態が得られるよう、前記開き角の大きさが自動調整される構成とされていることが好ましい。
【0011】
そして、本発明のペースト混練脱泡装置は、無反動性の耐振材を介して設置されることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のペースト混練脱泡装置によれば、2つのバランス荷重部材を、それぞれ、公転用駆動回転軸を中心として円周方向に互いに逆方向に回転させることにより各々のバランス荷重部材の重心位置と公転中心位置とを結ぶ2つの直線の各々がなす開き角の大きさを調整して公転用回転体の回転バランス調整がなされる構成とされていることにより、2つのバランス荷重部材の位置を、理論上、摩擦力以上の大きさの比較的小さな力で、移動させることができるので、公転用回転体の回転が円滑で安定した状態を迅速に実現することができる。
【0013】
また、回転バランス調整機構における位置調整機構が4つの歯車列により構成され、2つのバランス荷重部材が公転用回転体と無関係に支持された構成とされていることにより、例えば支持部材の長さを自由に設定することができるため、前記開き角の大きさを設定するための要素の一である、2つのバランス荷重部材の公転用駆動回転軸を中心とする回動半径の大きさについての制約が実質的になくなり、例えば錘の重さを変更することなく、回転バランス調整を確実に行うことができる。
【0014】
さらに、公転用回転体の回転位相を検出する第1のセンサおよび公転用回転体の振動の方向または位相を検出する第2のセンサの検出信号に基づいて、公転用回転体の回転に伴う振動が最小となる状態が得られるよう、前記開き角の大きさが自動調整される構成とされていることにより、回転バランス調整時において、2つのバランス荷重部材には、互いに逆方向に、同じ大きさの力が作用されることとなるので、開き角の大きさを調整するに際して必要とされる例えばバランス荷重部材位置調整用のモータのトルクを小さくすることができると共に2つのバランス荷重部材の移動を短時間で行うことができることとなり、ペースト混練脱泡装置の動作時や例えば公転用回転体の回転速度の調整時(増速時または減速時)などであっても、公転用回転体の回転がバランスがとられた状態を迅速に実現することができる。
【0015】
さらにまた、架台が無反動性の振動吸収材を介して床面に設置されることにより、ペースト混練脱泡装置以外からの振動の影響を受けることが確実に防止されるので、所期の回転バランス調整動作を確実に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明のペースト混練脱泡装置の一例における構成の概略を示す側面図、図2は、図1に示すペースト混練脱泡装置の平面図である。
このペースト混練脱泡装置は、公転用駆動回転軸11が鉛直方向(図1において上下方向)に伸びる姿勢で配置された駆動モータ10と、この駆動モータ10の公転用駆動回転軸11に固定されて水平面内で回転される平板状の回転バー15と、この回転バー15の一端部(図1において右端部)において、例えばベアリング18を介して回転バー15をその厚み方向に貫通して伸びるよう設けられた自転用駆動回転軸20と、この自転用駆動回転軸20の先端に設けられた、混練脱泡されるべきペーストが収容されたペースト容器60を保持するペースト容器保持体30と、ペースト容器60の重さに応じて回転バー15の回転のバランスをとるための回転バランス調整機構35とを備えており、自転用駆動回転軸20が、例えば、その基端に固定された自転プーリ21と、公転用駆動回転軸11に固定された公転プーリ12と、自転プーリ21および公転プーリ12に張設されたベルト22とからなるベルト伝達機構からなる動力伝達機構を介して公転用駆動回転軸11と連結されている。図1において、符号25は架台であって、例えばスチレン系エラストマーなどよりなる無反動性の振動吸収材28を介して床面FLに設置される。
【0017】
そして、回転バー15の周回によって円運動する一端部は、屈曲プーリ16を介して、回転バー15の長さ方向外方に対して上方に向かって傾斜して伸びる状態とされており、従って、自転中心軸Bが公転中心軸Aと斜めに交叉して伸びる状態とされている。
公転中心軸Aと自転中心軸B(ペースト容器60の中心軸)とがなす角度の大きさは、特に限定されるものではなく、例えば混練すべきペースト材料の種類、回転バー15の回転速度(ペースト容器60の公転速度)、ペースト容器60の軸方向の長さおよび外径、ペースト容器保持体30の回転速度(ペースト容器60の自転速度)およびその他の条件に応じて適宜の範囲において設定することができるが、例えば15〜60度とされていることが好ましい。
【0018】
このペースト混練脱泡装置は、回転バー15の回転位相(回転速度)を検知する、例えば光センサ50よりなる第1のセンサおよびこの光センサ50からの回転位相パルス出力信号に基づいて駆動モータ10の動作制御を行う機能を有する架台制御部55を備えており、架台制御部55から入力される動作指令信号に基づいて、駆動モータ10の回転速度を調整する機能を有する。
【0019】
公転用駆動回転軸11における、公転プーリ12と架台25との間の位置には、電力伝達器52が設けられている。
この電力伝達器52は、例えば架台25に固定された一次(入力)側コイル53Aおよび当該一次(入力)側コイル53Aに対して軸方向に離間して設けられた二次(出力)側コイル53Bの2つのコイルを具えてなり、一次(入力)側コイル53Aに入力された電力を相互誘導により二次(出力)側コイル53Bに出力してバランスモータ48に伝達する構成とされている。
また、電力伝達器52は、後述する回転バランス調整機構35におけるバランスモータ48の電源としての電池49の充電に係る信号と通信制御信号をバランス制御部51に当該出力(通信)する機能を有する。
【0020】
回転バー15の回転速度(ペースト容器60の公転速度)は、例えば400〜2000rpmの範囲内で調整可能とされており、回転バー15の回転によって回転駆動されるペースト容器保持体30の回転速度(ペースト容器60の自転速度は、例えば回転バー15の回転速度に対して1/2〜1/5程度の大きさとなるよう設定されている。ここに、ペースト容器保持体30の回転速度の調整は、動力伝達機構を構成する自転プーリ21と、公転プーリ12との外径比を調整することにより行うことができる。
【0021】
回転バー15の他端部における下面には、架台制御部55との間での例えば光通信による当該架台制御部55からの制御信号に基づいて、回転バランス調整機構35におけるバランスモータ48の動作制御を行う機能を有すると共に、電力伝達器52からの信号に基づいて電池49の充電を行う機能を有するバランス制御部51が設けられている。
【0022】
回転バランス調整機構35は、図4を参照して説明すると、混練すべきペースト材料が収容されたペースト容器60が保持された状態のペースト容器保持体30の重心位置Gpの公転中心軸Aの位置に対する反対側であって、当該ペースト容器保持体30の重心位置Gpと公転中心軸Aの位置とを結ぶ直線の延長線を基準線L0として当該基準線L0を挟んで互いに異なる方向の位置に、重心位置Gb1,Gb2がそれぞれ位置されるよう設けられた2つのバランス荷重部材36A,36Bと、各々のバランス荷重部材36A,36Bの重心位置Gb1,Gb2と公転中心軸Aの位置とを結ぶ2つの直線L1,L2がなす開き角(以下、「2つのバランス荷重部材の開き角」という。)θの大きさを、例えばペースト容器60の重さに応じて調整する位置調整機構40とを備えている。
ここに、2つのバランス荷重部材36A,36Bの各々は、ロッド状の支持部材37の先端に錘38が固定されて構成された、例えば互いに同一の構成を有するものであって、一方のバランス荷重部材36Aの重心位置Gb1と公転中心軸Aの位置とを結ぶ直線L1の、基準線L0に対するなす角θ1と、他方のバランス荷重部材36Bの重心位置Gb2と公転中心軸Aの位置とを結ぶ直線L2の、基準線に対するなす角θ2とが同じ大きさとなるよう設定されている。
【0023】
位置調整機構40は、図3および図4に示すように、各々、公転用駆動回転軸11に対して回転自在に固定された、互いに同一の歯数を有する第1の歯車41および第2の歯車42と、第1の歯車41に噛合されて水平面内で回転される第3の歯車43と、第2の歯車42および第3の歯車43のそれぞれに噛合されて水平面内で回転される、第3の歯車43と同一の歯数を有する第4の歯車44と、これら4つの歯車のうちの1つ例えば第4の歯車44を回転させるバランスモータ48と、このバランスモータ48を駆動させる電池49とを備えており、一方のバランス荷重部材36Aにおける支持部材37の基端が第1の歯車41に連結固定されていると共に、他方のバランス荷重部材36Bにおける支持部材37の基端が第2の歯車42に連結固定されている。なお、図4における符号48Aは、バランスモータ48の駆動軸に固定された駆動歯車である。
【0024】
このペースト混練脱泡装置においては、さらに、回転バー15の回転に伴う架台25の一定方向(例えば図1における左右方向)の振動を検出する、例えば加速度センサ56よりなる第2のセンサを備えており、当該加速度センサ56による振動位相信号および光センサ50からの回転位相パルス出力信号に基づいて設定される、2つのバランス荷重部材36A,36Bの開き角θ(=θ1+θ2)の大きさに係る制御出力が、架台制御部55によって、電力伝達器52を利用して、あるいは、光信号で、バランス制御部51に送信される。ここに、第2のセンサは、振動方向を検出する振動センサにより構成することもできる。
【0025】
上記ペースト混練脱泡装置においては、混練すべきペースト材料が収容されたペースト容器60がペースト容器保持体30内に装着されて保持固定された状態において、駆動モータ10が駆動されると、公転用駆動回転軸11が回転されてこれに固定された回転バー15が水平面内において公転中心軸Aを中心として回転駆動されると共に、回転バー15の回転に伴って、駆動モータ10の動力が動力伝達機構によって自転用駆動回転軸20に伝達されて自転用駆動回転軸20が自転中心軸Bを中心として回転駆動され、これにより、自転用駆動回転軸20に固定されたペースト容器保持体30およびペースト容器60が、公転中心軸Aの周りを公転しながら自転中心軸Bを中心として自転することとなり、従って、ペースト容器60内のペーストは、公転運動による遠心力の作用を受けながら、同時に自転運動による作用を受けることによって、十分な混練、脱泡作用を受けることとなる。
而して、このようなペースト材料の混練、脱泡処理が行われるに際しては、光センサ50からの検知信号に基づいて回転バー15の回転速度が適正な大きさに調整される一方で、回転バー15の回転を円滑で安定なものとするために、回転バランス調整機構35による回転バランス調整動作が行われる。
【0026】
回転バランス調整動作においては、例えば、2つのバランス荷重部材36A,36Bの開き角θの大きさが回転バー15の回転の大体のバランスがとられた大きさに設定された状態において、回転バー15の回転に伴って、回転バー15の回転位相が光センサ50によって検出されると共に架台25の一定方向の振動の大きさが加速度センサ56によって検出され、これにより得られる光センサ50からの回転位相パルス出力信号および加速度センサ56からの振動位相信号に基づいて、回転バー15の回転のバランスをとるために必要とされる2つのバランス荷重部材36A,36Bの開き角θの大きさが架台制御部55によって設定され、その結果に応じて、回転バランス調整機構35によって、2つのバランス荷重部材36A,36Bの開き角θの大きさが、回転バー15の振動が最小となる状態が得られるよう、調整される。
【0027】
具体的には、光センサ50からの回転位相パルス出力信号の位相が、加速度センサ56からの振動信号の正弦波形の90度の位置に近いとき、振動の方向が右方向、つまり、ペースト容器60の重量がより重いことが架台制御部55によって検出(確認)された場合には、回転バランス調整機構35における位置調整機構40が、バランス制御部51からの動作指令信号により、2つのバランス荷重部材36A,36Bの開き角θの大きさが小さくなるよう、駆動される。このとき、一方のバランス荷重部材36Aが連結された第1の歯車41および他方のバランス荷重部材36Bが連結された第2の歯車42は、互いに同一の歯数を有することから、同一の大きさの移動量(θ1=θ2の関係が維持された状態)で、図4に示すように、互いに逆方向に回転される(図4においては、第1の歯車41の回転方向を実線による矢印、第2の歯車42の回転方向を破線による矢印で示してある)。
一方、光センサ50からの回転位相パルス出力信号の位相が、加速度センサ56からの振動信号の正弦波形の270度の位置に近いとき、振動の方向が左方向、つまり、ペースト容器60の重量がより軽いことが架台制御部55によって検出(確認)された場合には、回転バランス調整機構35における位置調整機構40が、バランス制御部51からの動作指令信号により、2つのバランス荷重部材36A,36Bの開き角θの大きさが大きくなるよう、駆動される。
【0028】
而して、上記構成のペースト混練脱泡装置によれば、2つのバランス荷重部材36A,36Bを、それぞれ、公転用駆動回転軸11を中心として円周方向に互いに逆方向に回転させることにより2つのバランス荷重部材36A,36Bの開き角θの大きさを調整して回転バー15の回転バランス調整がなされる構成とされていることにより、2つのバランス荷重部材36A,36Bの位置を、理論上、摩擦力以上の大きさの比較的小さな力で、移動させることができるので、回転バー15の回転が円滑で安定した状態を迅速に実現することができる。
【0029】
また、回転バランス調整機構35における位置調整機構40が4つの歯車列により構成され、2つのバランス荷重部材36A,36Bが回転バー15と無関係に支持された構成とされていることにより、例えば支持部材37の長さを自由に設定することができるため、開き角θの大きさを設定するための要素の一である、2つのバランス荷重部材36A,36Bの公転用駆動回転軸11を中心とする回動半径の大きさについての制約が実質的になくなり、例えば錘38の重さを変更することなく、回転バランス調整を確実に行うことができる。
【0030】
さらに、回転バー15の回転位相を検出する光センサ50および回転体の振動を検出する加速度センサ56の検出信号に基づいて、回転バー15の回転に伴う振動が最小となる状態が得られるよう、2つのバランス荷重部材36A,36Bの開き角θの大きさが自動調整される構成とされていることにより、回転バランス調整時において、2つのバランス荷重部材36A,36Bの各々には、互いに逆方向に、同じ大きさの力が作用されることとなるので、2つのバランス荷重部材36A,36Bの開き角θを調整するに際しての駆動モータ48のトルクを小さくすることができると共に2つのバランス荷重部材36A,36Bの移動を短時間で行うことができることとなり、ペースト混練脱泡装置の動作時や例えば回転バー15の回転速度の調整時(増速時または減速時)などであっても、回転バー15の回転が円滑で安定した状態を迅速に実現することができる。
【0031】
さらにまた、架台25が無反動性の振動吸収材28を介して床面FLに設置されることにより、ペースト混練脱泡装置によるもの以外の振動の影響を受けることが確実に防止されるので、回転バランス調整動作を確実に行うことができる。
【0032】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。
上記実施例においては、公転用回転体の回転バランス調整が例えば光センサおよび加速度センサによる検出信号を利用して自動的に行われる構成のものについて説明したが、2つのバランス荷重部材の開き角θの大きさを手動により調整することにより公転用回転体の回転バランス調整が行われる構成とされていてもよい。
また、各々のバランス荷重部材の具体的な構成は特に限定されるものではなく、例えば互いに異なる構成のものであってもよい。この場合には、支持部材の長さ、錘の重さ、θ1およびθ2の大きさ、並びに、位置調整機構を構成する歯車の構成を適宜に変更すればよい。
【0033】
さらにまた、本発明のペースト混練脱泡装置においては、例えば回転バーの長さ、公転用駆動回転軸と自転用駆動回転軸(ペースト容器の中心軸)とがなす角度の大きさ、回転バーにおけるペースト容器保持体の固定位置等は、特に限定されるものではなく、混練すべきペースト材料の種類およびその他の条件に応じて適宜に変更することができる。
さらに、回転バーの代わりに回転テーブルなどの他の公転用回転体を用いることができ、容器ホルダーを複数個設けることも可能である。
【0034】
本発明は、例えば、半田付け用ソルダーペーストの混練、脱泡処理や、例えば薬局におけるペースト状の薬の調合(混練)等に好適に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明のペースト混練脱泡装置の一例における構成の概略を示す側面図である。
【図2】図1に示すペースト混練脱泡装置の平面図である。
【図3】図1に示すペースト混練脱泡装置における回転バランス調整機構の一構成例を示す側面図である。
【図4】2つのバランス荷重部材の開き角の調整方法を説明するための回転バランス調整機構の概念図である。
【図5】従来のペースト混練脱泡装置の一例における構成の概略を示す側面図である。
【符号の説明】
【0036】
10 駆動モータ
11 公転用駆動回転軸
12 公転プーリ
15 回転バー
16 屈曲プーリ
18 ベアリング
20 自転用駆動回転軸
21 自転プーリ
22 ベルト
25 架台
28 振動吸収材
30 ペースト容器保持体
35 回転バランス調整機構
36A 一方のバランス荷重部材
36B 他方のバランス荷重部材
37 支持部材
38 錘
40 位置調整機構
41 第1の歯車
42 第2の歯車
43 第3の歯車
44 第4の歯車
48 バランスモータ
48A 駆動歯車
49 電池
50 光センサ
51 バランス制御部
52 電力伝達器
53A 一次(入力)側コイル
53B 二次(出力)側コイル
55 架台制御部
56 加速度センサ
60 ペースト容器
70 重量バランサー
71 ボールネジ
72 錘
73 電動モータ
74 電池
75 回転体制御部
76 振動センサ
77 光通信部
A 公転中心軸
B 自転中心軸
FL 床面
Gp ペースト容器保持体の重心位置
Gb1 一方のバランス荷重部材の重心位置
Gb2 他方のバランス荷重部材の重心位置
θ 開き角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直方向に伸びる公転用駆動回転軸の周りに回転される公転用回転体と、この公転用回転体上における公転用駆動回転軸に対して径方向に離間した位置において、自転可能に設けられたペースト容器保持体と、公転用回転体の回転のバランスをとるための回転バランス調整機構とを備えてなり、
回転バランス調整機構は、混練すべきペースト材料が収容されたペースト容器が保持された状態のペースト容器保持体の重心位置の公転中心位置に対する反対側であって、当該ペースト容器保持体の重心位置と公転中心位置とを結ぶ直線の延長線を基準線として当該基準線を挟んで互いに異なる方向の位置に、それぞれ重心位置が位置されるよう設けられた、公転用回転体の回転に伴って公転用駆動回転軸の周りに回転される2つのバランス荷重部材と、各々のバランス荷重部材の重心位置と公転中心位置とを結ぶ2つの直線の各々がなす開き角の大きさを調整することにより公転用回転体の回転のバランスを調整する位置調整機構とを備えていることを特徴とするペースト混練脱泡装置。
【請求項2】
バランス荷重部材の各々は、ロッド状の支持部材の先端に錘が固定された互いに同一の構成を有するものであって、
位置調整機構は、各々、公転用駆動回転軸に対して回転自在に固定された、互いに同一の歯数を有する第1の歯車および第2の歯車と、第1の歯車に噛合されて水平面内で回転される第3の歯車と、第2の歯車および第3の歯車のそれぞれに噛合されて水平面内で回転される、第3の歯車と同一の歯数を有する第4の歯車と、これら4つの歯車のいずれか一の歯車を回転駆動させる駆動源とを備えており、一方のバランス荷重部材における支持部材の基端が第1の歯車に連結固定されていると共に、他方のバランス荷重部材における支持部材の基端が第2の歯車に連結固定されていることを特徴とする請求項1に記載のペースト混練脱泡装置。
【請求項3】
公転用回転体の回転位相を検出する第1のセンサおよび公転用回転体の振動の方向または位相を検出する第2のセンサが設けられており、第1のセンサの検出信号および第2のセンサの検出信号に基づいて、公転用回転体の回転に伴う振動が最小となる状態が得られるよう、前記開き角の大きさが自動調整されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のペースト混練脱泡装置。
【請求項4】
無反動性の耐振材を介して設置されることを特徴とする請求項3に記載のペースト材料混練脱泡装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−69383(P2010−69383A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−237902(P2008−237902)
【出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【出願人】(000137476)株式会社マルコム (15)
【Fターム(参考)】