説明

ペースト状歯科用アルギン酸塩印象材組成物

【課題】 主材ペーストと硬化材ペーストより成るペースト状歯科用アルギン酸塩印象材を、両ペーストの混合割合を変更して練和物の流動性を変化させるができ、充分な操作余裕時間を確保でき、しかも保管中に主材ペースト中の液分離を発生しないようにする。
【解決手段】 アルギン酸塩1〜20重量%及び水を主成分とした主材ペーストと、硫酸カルシウムと反応しない液状成分及び硫酸カルシウム10〜60重量%を主成分とした硬化材ペーストとから成るペースト状歯科用アルギン酸塩印象材組成物において、主材ペーストは、粉末状の充填材を実質含有せず、遅延材としてナトリウム又はカリウムの炭酸塩を0.01〜5重量%と、特定の1種又は2種以上の多糖類を0.01〜15重量%とを含み、硬化材ペーストは、遅延材としてナトリウム又はカリウムのリン酸塩を0.01〜10重量%と、ポリブテンを0.5〜30重量%とを含む構成にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルギン酸塩及び水を主成分とした主材ペーストと、硫酸カルシウムと反応しない液状成分及び硫酸カルシウムを主成分とした硬化材ペーストとから成る歯科において口腔内の印象を採得するために用いるペースト状歯科用アルギン酸塩印象材組成物に関し、特に主材ペーストと硬化材ペーストとの練和時の混合割合を変化させることにより同じ主材ペーストと硬化材ペーストとを混合した練和物でありながらその流動性を変化させることができ、優れた硬化特性を有しているにも拘らず充分な操作余裕時間を確保でき、硬化時間の遅延も保存中に液分離も生じないペースト状歯科用アルギン酸塩印象材組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
歯科において補綴物作製の際に口腔内の印象を採得する印象材としてはアルギン酸塩を使用した歯科用アルギン酸塩印象材が広く用いられている。この歯科用アルギン酸塩印象材としては、アルギン酸塩,ゲル化反応材,ゲル化調整材及び充填材を主成分とする粉末と水とを混合・練和することにより硬化させるものと、アルギン酸塩,ゲル化調整材、充填材と水を石こうのような粉末状のゲル化反応剤とを混合・練和するものとの他に、主材ペーストと硬化材ペーストとの2種類のペーストを混合・練和することにより硬化させるものとがある。後者のペースト状歯科用アルギン酸塩印象材は、通常は主としてアルギン酸塩を水に溶解させ、そこに付形性や硬さを付与させるため粉末状の充填材を添加した主材ペーストと、アルギン酸塩の硬化材となる硫酸カルシウムと流動パラフィンのような硫酸カルシウムと反応しない液状物質を主成分とした硬化材ペーストとから成っている。
【0003】
これらの歯科用アルギン酸塩印象材のうち最も広く用いられているものは、粉末と水とを混合・練和するタイプの粉末状歯科用アルギン酸塩印象材であり、粉末と水とを計量し、主に手で練和する必要がある。この粉末状歯科用アルギン酸塩印象材は、煩雑さはあるものの、症例或いは術者の好みに合わせて粉末と水との混合割合を変動させることで練和物の流動性を変化させることができる。これは、日常の臨床に頻繁に用いられる使用方法であり、粉末状歯科用アルギン酸塩印象材が広く使用されている理由の一つでもある。
【0004】
一方、ペースト状歯科用アルギン酸塩印象材としては、アルギン酸塩,水,充填材を主成分とする主材ペーストと、硫酸カルシウム,液状成分を主成分とした硬化材ペーストとから成り、主材ペースト中に特定の多糖類が、硬化材ペースト中にポリブテンが所定量含有せしめられているものがある(例えば、特許文献1参照。)。このペースト状歯科用アルギン酸塩印象材組成物は、専用の機械による自動練和が可能なために多く用いられるようになってきている。このペースト状歯科用アルギン酸塩印象材はペースト状であるため練和が容易であるばかりではなく、誰でも一定の品質の練和物を得られるため印象を採得する上で問題が生じ難い大きな利点がある。また、専用の機械により連続的に練和でき、そのまま印象用トレーに押し出されるために歯科医や衛生士への作業負担が少ない。
【0005】
しかしながら、現在使用されているペースト状歯科用アルギン酸塩印象材は、粉末状歯科用アルギン酸塩印象材と異なり、同じ組成物においては主剤ペーストと硬化材ペーストとの混合割合を変化させても練和物の流動性を変化させることができない。そのため、症例に応じた最適の流動性を有した状態にすることができず、その結果として全ての症例に使用できる適応性がなかった。
【0006】
また、このペースト状歯科用アルギン酸塩印象材は操作余裕時間が不足し、印象採得操作に不具合が生じてしまう問題があった。これは、臨床上で充分な操作余裕時間を確保しようとすると、ペースト状歯科用アルギン酸印象材本来の硬化特性が粉末状歯科用アルギン酸塩印象材と比較して緩慢であり、それに連れて口腔内保持時間が長くなり問題となってしまうためである。また、主材ペースト中の充填材が保存中に沈降し液分離が生じる問題が生じていた。この液分離が生じると、練和した際に硬化体の硬さ及び流動性が使用中に変化することになってしまい、結果として不完全な印象となり易かった。
【0007】
【特許文献1】特開2002−87922号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このように現在使用されている主材ペーストと硬化材ペーストより成るペースト状歯科用アルギン酸塩印象材の場合、混合割合を変更しても粉末と水とを混合・練和する粉末状歯科用アルギン酸塩印象材のように練和物の流動性を変化させることができず、その硬化特性に起因して充分な操作余裕時間を確保できず、しかも保管中に主材ペースト中の充填材の沈降により液分離が発生してしまうという問題を解決することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は前記課題を解決するために鋭意検討をした結果、従来のペースト状歯科用アルギン酸塩印象材は、アルギン酸塩と水とを主成分とした主材ペースト中に充填材が含まれていたために保管中に主材ペースト中の充填材の沈降により液分離が発生してしまうことや、主材ペーストと硬化材ペーストとの混合割合を変えても混合練和物の流動性が変化しないことを見出した。そこで、主材ペースト中から充填材を除き、代わりに主材ペースト中に特定の多糖類を所定量加えることで混合練和物の流動性を調整すると、主材ペーストと硬化材ペーストとの混合割合を変化することにより流動性を変化させることができるようになり、充填材が存在しないので充填材の沈降により液分離が発生してしまう問題を解決することができると共に、主材ペースト中に遅延材としてナトリウム又はカリウムの炭酸塩を、硬化材ペースト中に遅延材としてナトリウム又はカリウムのリン酸塩を用いることにより操作余裕時間の問題を解決できることを究明して本発明を完成したのである。
【0010】
即ち本発明は、アルギン酸塩1〜20重量%及び水を主成分とした主材ペーストと、硫酸カルシウムと反応しない液状成分及び硫酸カルシウム10〜60重量%を主成分とした硬化材ペーストとから成るペースト状歯科用アルギン酸塩印象材であって、
主材ペーストは、粉末状の充填材を実質含有せず、遅延材としてナトリウム又はカリウムの炭酸塩を0.01〜5重量%と、カラーギナン,プルラン,ガードラン,キサンタンガム,ジェランガム,ペクチン,コンニャクグルコマンナン,キシログルカン,グァーガム,アラビアガム,ローカストビーンガムより選ばれる1種又は2種以上の多糖類を0.01〜15重量%とを含み、
硬化材ペーストは、遅延材としてナトリウム又はカリウムのリン酸塩を0.01〜10重量%と、ポリブテンを0.5〜30重量%とを含むことを特徴とするペースト状歯科用アルギン酸塩印象材組成物である。
【0011】
そして、主材ペースト中のアルギン酸塩としては、アルギン酸のナトリウム,カリウム,アンモニウム,トリエタノールアミンの塩の1種以上が好ましく、硬化材ペースト中の硫酸カルシウムと反応しない液状成分としては、デカン,ウンデカトン,ドデカン,テトラデカン,ケロシン,1−オクテン,シクロヘプタン,シクロナノン,流動パラフィンから成る炭化水素、1−ヘキサノール,1ーオクタノール,シトロネロール,オレイルアルコールから成る脂肪族アルコール、ベンジルアルコール,メタクレゾールから成る環式アルコール、ヘキサン酸,オクタン酸,オレイン酸,リノール酸から成る脂肪酸,この脂肪酸の塩又はエステル、ポリエチレングリコール又はポリプロピレングリコールから成る非水溶媒から選ばれる群の1種以上であることが好ましく、硬化材ペースト中の硫酸カルシウムとしては、無水石膏、半水石膏、二水石膏の1種以上が好ましく。ポリブテンはその数平均分子量が300〜4000であることが好ましく、主材ペースト中には各種の無機又は有機の着色剤,防腐材,各種消毒剤,香料の1種以上が更に含有されていたり、硬化材ペースト中にはマグネシウムの酸化物,水酸化物等のpH調整材,界面活性剤,フッ化物の1種以上が更に含有されていたりしてもよいことも究明したのである。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るペースト状歯科用アルギン酸塩印象材組成物は、主材ペーストと硬化材ペーストとを混合・練和して使用するものであって、主材ペーストと硬化材ペーストとの混合割合を変えることで流動性を変化させることができ、硬化がシャープでありながら充分な操作余裕時間を確保でき、しかも主材ペースト中に充填材が存在しないので保管中に充填材の沈降による液分離が発生することのない優れたペースト状歯科用アルギン酸塩印象材組成物である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明に係るペースト状歯科用アルギン酸塩印象材組成物の主材ペースト中で用いるアルギン酸塩は、アルギン酸のナトリウム,カリウム,アンモニウム,トリエタノールアミン等の塩のような水に可溶な塩の1種以上が使用でき、その含有量は主材ペースト中の1〜10重量%である。
【0014】
また、主材ペースト中で用いる水は、イオン交換水,蒸留水等が使用でき、また次亜塩素酸ナトリウム等により殺菌処理を行った水を用いてもよい。
【0015】
従来のペースト状歯科用アルギン酸塩印象材に使用されていた主材ペースト中には、練和物の流動性を調整する目的及び硬化体の硬度を適切に保つためにシリカや珪藻土等の充填材が含有されていた。この充填材により練和物の流動性を一定の状態に保つことができるものの、練和物の流動性を変化させるために主材ペーストと硬化材ペーストとの混合割合を変化させても練和物の流動性はほとんど変化しない結果となっていた。そこで主材ペーストと硬化材ペーストとの混合割合を変動させることによって練和物の流動性を変化させるため、主材ペースト中より充填材を除去し、主材ペーストの粘度の調整用としてカラーギナン,プルラン,ガードラン,キサンタンガム,ジェランガム,ペクチン,コンニャクグルコマンナン,キシログルカン,グァーガム,アラビアガム,ローカストビーンガムより選ばれる1種又は2種以上の多糖類を加え、更に遅延材としてナトリウム又はカリウムの炭酸塩を0.01〜5重量%を加えると練和物の流動性を適度に保ち、しかも症例や術者の好みに合わせて同じ組成物において主材ペーストと硬化材ペーストとの混合割合を変動させることにより練和物の流動性を変化させることができるのである。
【0016】
前記の多糖類は、アルギン酸塩水溶液中で安定であり、しかも分解もし難いため主材ペーストの粘度低下が発生し難くなる。この多糖類の中でカラーギナンは海藻多糖類の1種であり硫酸基やアンヒドロ基を含んだガラクトースから成る酸性ポリマーである。また、プルラン,ガードラン,キサンタンガム,ジェランガムは酵母などの微生物が産生する多糖類を分離精製して得られたものである。この中で最も有用なものがキサンタンガムであり、これはキャベツ葉面上から分離された菌が生産する粘質多糖類である。更に、ペクチン,コンニャクグルコマンナン,キシログルカン,グァーガム,アラビアガム,ローカストビーンガムは植物の樹皮,種子,葉茎,地下茎,果実等より抽出される多糖類である。このカラーギナン,プルラン,ガードラン,キサンタンガム,ジェランガム,ペクチン,コンニャクグルコマンナン,キシログルカン,グァーガム,アラビアガム,ローカストビーンガムより選ばれる1種又は2種以上の多糖類は、アルギン酸塩と水とを主成分とする主材ペースト中に0.01〜15重量%含まれていることが必要で、0.01重量%未満であると主材ペーストの粘度が低すぎて印象材として使用できず、15重量%を越えると粘性が高くなりすぎ練和が困難になり印象採得操作に支障を来す。好ましくは0.1〜3重量%である。
【0017】
本発明に係るペースト状歯科用アルギン酸塩印象材組成物の硬化材ペースト中で用いる硫酸カルシウムは、具体的には無水石膏、半水石膏、二水石膏等が用いられる。
【0018】
硬化材ペースト中で用いる硫酸カルシウムと反応しない液状成分としては、炭化水素,脂肪族アルコール,環式アルコール,脂肪酸,この脂肪酸の塩又はそのエステル、非水溶媒が使用できる。具体的には、デカン,ウンデカトン,ドデカン,テトラデカン,ケロシン,1−オクテン,シクロヘプタン,シクロナノン,流動パラフィン等の炭化水素、1−ヘキサノール,1ーオクタノール,シトロネロール,オレイルアルコール等の脂肪族アルコール、ベンジルアルコール,メタクレゾール等の環式アルコール、ヘキサン酸,オクタン酸,オレイン酸,リノール酸等の脂肪酸,この脂肪酸の塩又はそのエステル、ポリエチレングリコール,ポリプロピレングリコール等の非水溶媒が好適に用いられる。
【0019】
硬化材ペースト中で用いるポリブテンは、後述するナトリウム又はカリウムのリン酸塩と共に加えることにより硬化性が改善でき充分な操作余裕を確保できることとなる。更に、このポリブテンは硬化材ペースト中の硫酸カルシウムが沈降して液分離が生じることを防止するので、その結果として硬化性が低下することも防止できる。このポリブテンは、イソブチレンを主体とし若干の1ーブテンが共重合した液状ポリマーであり、通常、数平均分子量:300〜4000のものが使用できる。このポリブテンは硬化材ペースト中に0.5〜30重量%含まれていることが必要であり、0.5重量%未満であると液状成分が分離してしまい、30重量%を越えるとナトリウム又はカリウムのリン酸塩の共存下で著しく硬化時間が遅くなると共に硬化体の強度が低下してしまう。好ましくは0.5〜15重量%である。
【0020】
本発明に係るペースト状歯科用アルギン酸塩印象材組成物は、優れた硬化特性を得るためにアルギン酸塩1〜20重量%及び水を主成分とした主材ペースト中にナトリウム又はカリウムの炭酸塩を0.01〜5重量、硫酸カルシウムと反応しない液状成分及び硫酸カルシウム10〜60重量%を主成分とした硬化材ペースト中にナトリウム又はカリウムのリン酸塩0.01〜10重量%を含む。この組み合わせにより充分な操作余裕時間を得ながらシャープな硬化特性を得ることができ、逆に主材ペースト中にナトリウム又はカリウムのリン酸塩、硬化材ペースト中にナトリウム又はカリウムの炭酸塩を含ませたのではこの効果は得られない。
【0021】
ナトリウム又はカリウムの炭酸塩及びナトリウム又はカリウムのリン酸塩の配合量が各ペーストに対して0.01重量%未満であると硬化時間が短すぎ、ナトリウム又はカリウムの炭酸塩が5重量%を超えたり、ナトリウム又はカリウムのリン酸塩が10重量%を超えると操作余裕時間が長すぎて何れも歯科用印象材として使用できない。
【0022】
本発明に係るペースト状歯科用アルギン酸塩印象材組成物は、その特性を失わない範囲で主材ペースト中に各種の無機又は有機の着色剤,防腐材,各種消毒剤,香料等を含有してもよく、また硬化材ペースト中にマグネシウムの酸化物,水酸化物等のpH調整材,主材ペーストとの混合性向上のための界面活性剤,模型面向上のためのフッ化物等を含有してもよい。
【実施例】
【0023】
次に本発明について実施例を挙げ、詳細に説明するが、本発明はこれ等に限定されるものではない。
【0024】
実施例1
主材ペースト
アルギン酸ナトリウム 13(重量%)
蒸留水 74.98
ローカストビーンガム 12
炭酸ナトリウム 0.02
硬化材ペースト
硫酸カルシウム半水塩 50(重量%)
流動パラフィン 49
ポリブテン(数平均分子量:3900) 0.5
リン酸ナトリウム 0.5
【0025】
上記各ペーストを混合機中で充分に混合してペースト状歯科用アルギン酸塩印象材組成物を得た。上記主材ペーストと硬化材ペーストとを体積比率1:1及び3:1の比率にて練和し、押し出しリング(内径35mm,高さ50mm)内にセロファンを付けた外径が35mmで上方から20mmの位置に基準線を設けた押し出し棒を下方より基準線の位置まで挿入し、次に練和した試料を押し出しリング内に充満させて上面をへらで擦り切って30秒後に押し出しリングを逆転させ押し出し棒によりアクリル板上に垂直に静かに押し出し、ゲル化した時の試料の広がりの最大部と最小部をノギスで測定し、その平均をとって流動性を測定した。次にこの各比率においてISO 1563に従い操作余裕時間及びISO 1563に従い硬化時間(ゲル化時間)を測定した。主材ペーストをアルミパック包材に充填し60℃で1週間放置した後、液分離の程度を目視にて観察した。結果を表1に纏めて示す。
【0026】
実施例2
主材ペースト
アルギン酸ナトリウム 10(重量%)
蒸留水 89.78
コンニャクグルコマンナン 0.02
炭酸カリウム 0.2
硬化材ペースト
硫酸カルシウム半水塩 60(重量%)
流動パラフィン 5
ポリブテン(数平均分子量:390) 28
リン酸カリウム 7
【0027】
上記各ペーストを混合機中で充分に混合してペースト状歯科用アルギン酸塩印象材組成物を得た。実施例1と同様の試験を行い、結果を表1に示した。
【0028】
実施例3
主材ペースト
アルギン酸ナトリウム 7(重量%)
蒸留水 91.3
キサンタンガム 1.5
炭酸ナトリウム 0.2
硬化材ペースト
硫酸カルシウム半水塩 50(重量%)
流動パラフィン 47
ポリブテン(数平均分子量:1400) 1
ピロリン酸ナトリウム 2
【0029】
上記各ペーストを混合機中で充分に混合してペースト状歯科用アルギン酸塩印象材組成物を得た。実施例1と同様の試験を行い結果を表1に示した。
【0030】
実施例4
主材ペースト
アルギン酸ナトリウム 17(重量%)
蒸留水 81.97
キサンタンガム 1
次亜塩素酸ナトリウム 0.01
炭酸ナトリウム 0.02
硬化材ペースト
硫酸カルシウム半水塩 50(重量%)
流動パラフィン 33
ポリブテン(数平均分子量:1400) 2
弗化チタン酸カリウム 5
水酸化マグネシウム 5
ポリオキシエチレンアルキルエーテル 2
ピロリン酸ナトリウム 3
【0031】
上記各ペーストを混合機中で充分に混合してペースト状歯科用アルギン酸塩印象材組成物を得た。実施例1と同様の試験を行い、結果を表1に示した。
【0032】
比較例1
主材ペースト
アルギン酸ナトリウム 10(重量%)
ケイソウ土 20
蒸留水 70
硬化材ペースト
硫酸カルシウム半水塩 50(重量%)
流動パラフィン 50
【0033】
上記各ペーストを混合機中で充分に混合してペースト状歯科用アルギン酸塩印象材組成物を得た。実施例1と同様の試験を行い、結果を表1に示した。
【0034】
比較例2
主材ペースト
アルギン酸ナトリウム 7(重量%)
ケイソウ土 20
蒸留水 71
キサンタンガム 2
硬化材ペースト
硫酸カルシウム半水塩 50(重量%)
流動パラフィン 49.5
ポリブテン(数平均分子量:1400) 0.5
【0035】
上記各ペーストを混合機中で充分に混合してペースト状歯科用アルギン酸塩印象材組成物を得た。実施例1と同様の試験を行い、結果を表1に示した。
【0036】
【表1】

【0037】
上記表1より明らかなように、本発明に係るペースト状歯科用アルギン酸塩印象材組成物はアルギン酸塩及び水を主成分とした主材ペーストと硫酸カルシウムと反応しない液状成分及び硫酸カルシウムを主成分とした硬化材ペーストとを混合・練和して使用するに際し、主材ペーストと硬化材ペーストとの混合割合を変えることで流動性を変化させることができるにも拘らず、硬化時間に大幅な変化は無く、しかも充分な操作余裕時間を確保できると共に、60℃で1週間後においても硬化材ペーストは勿論、主材ペーストにも液分離は発生しないことが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルギン酸塩1〜20重量%及び水を主成分とした主材ペーストと、硫酸カルシウムと反応しない液状成分及び硫酸カルシウム10〜60重量%を主成分とした硬化材ペーストとから成るペースト状アルギン酸塩印象材であって、
主材ペーストは、粉末状の充填材を実質含有せず、遅延材としてナトリウム又はカリウムの炭酸塩を0.01〜5重量%と、カラーギナン,プルラン,ガードラン,キサンタンガム,ジェランガム,ペクチン,コンニャクグルコマンナン,キシログルカン,グァーガム,アラビアガム,ローカストビーンガムより選ばれる1種又は2種以上の多糖類を0.01〜15重量%とを含み、
硬化材ペーストは、遅延材としてナトリウム又はカリウムのリン酸塩を0.01〜10重量%と、ポリブテンを0.5〜30重量%とを含むことを特徴とするペースト状歯科用アルギン酸塩印象材組成物。
【請求項2】
主材ペースト中のアルギン酸塩が、アルギン酸のナトリウム,カリウム,アンモニウム,トリエタノールアミンの塩の1種以上である請求項1に記載のペースト状歯科用アルギン酸塩印象材組成物。
【請求項3】
硬化材ペースト中の硫酸カルシウムと反応しない液状成分が、デカン,ウンデカトン,ドデカン,テトラデカン,ケロシン,1−オクテン,シクロヘプタン,シクロナノン,流動パラフィンから成る炭化水素、1−ヘキサノール,1ーオクタノール,シトロネロール,オレイルアルコールから成る脂肪族アルコール、ベンジルアルコール,メタクレゾールから成る環式アルコール、ヘキサン酸,オクタン酸,オレイン酸,リノール酸から成る脂肪酸,この脂肪酸の塩又はエステル、ポリエチレングリコール又はポリプロピレングリコールから成る非水溶媒から選ばれる群の1種以上である請求項1又は2に記載のペースト状歯科用アルギン酸塩印象材組成物。
【請求項4】
硬化材ペースト中の硫酸カルシウムが、無水石膏、半水石膏、二水石膏の1種以上である請求項1から3までのいずれか1項に記載のペースト状歯科用アルギン酸塩印象材組成物。
【請求項5】
ポリブテンの数平均分子量が300〜4000である請求項1から4までのいずれか1項に記載のペースト状歯科用アルギン酸塩印象材組成物。
【請求項6】
主材ペースト中に各種の無機又は有機の着色剤,防腐材,各種消毒剤,香料の1種以上が更に含有されている請求項1から5までのいずれか1項に記載のペースト状歯科用アルギン酸塩印象材組成物。
【請求項7】
硬化材ペースト中にマグネシウムの酸化物,水酸化物等のpH調整材,界面活性剤,フッ化物の1種以上が更に含有されている請求項1から6までのいずれか1項に記載のペースト状歯科用アルギン酸塩印象材組成物。