説明

ペースト評価装置,ペースト評価方法,および電極板の製造方法

【課題】ペーストの,塗工工程の生産性に影響する品質をインラインで検査できるペースト評価装置,ペースト評価方法,および,その評価を行いつつ電極板を製造する方法を提供すること。
【解決手段】本発明のペースト評価装置は,ペースト供給部1から塗工機(ペースト供給先)3へのペースト供給経路2と,ペースト供給経路2の途中に設けられ,ペーストの流路の断面が長方形である超音波測定部(長方形部)6と,制御部(判定部)19とを有している。超音波測定部6は,流路内のペーストに対して断面の長方形の短辺方向および長辺方向の2方向に超音波を印加してそれぞれの方向での反射波または透過波を測定する箇所である。制御部19では,超音波測定部6による2方向での測定結果に基づいて,ペーストの良否を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,ペーストの良否判定に関する。さらに詳細には,例えば電池の製造における塗工工程で使用する電極活物質のペーストのような,固形物を溶媒とともに混練してなるペーストの,生産性に関わる品質を評価できるペースト評価装置,ペースト評価方法,および,その評価を行い電極板を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から,リチウムイオン2次電池等の電池では,正負の電極板を使用している。電極板は通常,金属箔である電極集電板の表面上に電極活物質の層を形成したものである。このため電池の製造プロセスの一環では,電極活物質の粉末を溶媒等とともに混練したペースト(以下,「活物質ペースト」という)を電極集電板に塗工することが行われている。これにより電極集電板が製造される。なお本稿では,「ペースト」と「スラリー」とを特に区別せずにどちらも「ペースト」ということとする。この種のペーストを用いる塗工工程では当然,ペーストの良否により塗工の生産性や塗工結果の良否が左右される。これによりさらには電池性能にも影響が及ぶことがある。このため従来から,ペーストの性状検査が行われている。
【0003】
例えば特許文献1の技術では,活物質ペースト中にミクロゲルが生じることに着目してペーストの検査を行うこととしている。すなわち,活物質ペースト中には一般的に,粘度を増加させる増粘材(負極活物質の場合には例えばカルボキシルメチルセルロース(CMC))も配合される。この増粘材に起因してペースト中にミクロゲルが生じることがある。粒径の大きなミクロゲルがペースト中に含まれていると,出来上がる活物質層が電極集電板から剥離しやすいものとなりがちだからである。そこで特許文献1の技術では,ペースト中のミクロゲルの指標粒径を調査し(わかりやすくいえば粒径を測定し),これがあらかじめ定めた基準粒径より大きければそのペーストを不良と判定し,基準粒径以内であればそのペーストを良と判定するのである。
【0004】
関連する先行技術には他に,特許文献2〜4もある。特許文献2では,計測部の流路中に,間隔の広いところと狭いところとを設け,それら両方の箇所で流体中の音速を測定するようにしている。そのため計測部の流路を途中で狭くしている。特許文献3は,流体中の気泡等の不均一性を,超音波の反射や屈折により検出する技術を開示している。そのため,流路中に円形断面の部分を設けている。特許文献4は,粉体の品質をインピーダンス特性で評価する技術を開示するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−252398号公報
【特許文献2】特開2008−304282号公報
【特許文献3】特許第4124490号公報
【特許文献4】特開2008−250225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら前記した特許文献1の技術では,ミクロゲルの粒径という観点でしかペーストの良否判定ができなかった。一方でペーストには,剥離しにくいことばかりでなく,狙い通りの厚さの塗工層を高い生産性で得るための,適切な密度等の生産性指標も求められる。よってペーストについては,ミクロゲル以外の要因に起因する不良もあり得る。また,生産性という観点から,検査をインラインでできることも求められる。特許文献2〜4を持ってしても,こういう要求には応えられていなかった。このため,前記従来技術による検査では必ずしも十分ではなかった。
【0007】
本発明は,前記した従来の技術が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,ペーストの,塗工工程の生産性に影響する品質をインラインで検査できるペースト評価装置,ペースト評価方法,および,その評価を行いつつ電極板を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題の解決を目的としてなされた本発明のペースト評価装置は,ペースト供給部からペースト供給先へのペースト供給経路と,ペースト供給経路の途中に設けられ,ペーストの流路の断面が長方形であるとともに,ペーストに対して断面の長方形の短辺方向および長辺方向の2方向に超音波を印加してそれぞれの方向での反射波または透過波を測定する超音波測定部と,超音波測定部の測定結果に基づいてペーストの良否を判定する判定部とを有している。
【0009】
また,本発明のペースト評価方法では,ペースト供給部からペースト供給先へペースト供給経路によりペーストを供給するに当たり,ペースト供給経路として,ペーストの流路の断面が長方形である長方形部を有するものを用い,長方形部の位置にて,断面の長方形の短辺方向および長辺方向の2方向に超音波を印加してその反射波または透過波を測定し,反射波または透過波の測定結果に基づいてペーストの良否を判定する。
【0010】
また,本発明の電極板の製造方法では,ペースト供給部から塗工部へペースト供給経路により活物質ペーストを供給して塗工部で活物質ペーストを電極集電板に塗工して電極板とするに当り,ペースト供給経路として,活物質ペーストの流路の断面が長方形である長方形部を有するものを用い,長方形部の位置にて,断面の長方形の短辺方向および長辺方向の2方向に超音波を印加してその反射波または透過波を測定し,反射波または透過波の測定結果に基づいて活物質ペーストの良否を判定しつつ,塗工部での塗工を行う。
【0011】
本発明では,超音波測定部(長方形部)にて,ペースト(活物質ペースト)に対して2方向で超音波測定を行う。これによりペースト(活物質ペースト)の,ペースト供給先(塗工部)での作業の生産性に関わる品質の良否が判定される。
【0012】
本発明では,超音波測定部(長方形部)の流路断面積が,ペースト供給経路における超音波測定部(長方形部)以外の箇所の流路断面積と同じ(±10%以内の範囲内)であることが望ましい。そうであれば,ペースト(活物質ペースト)の流速を変化させることなく超音波測定を行うことができ,高い測定精度が期待できるからである。
【0013】
本発明では,前記判定を,超音波検出部(長方形部)での2方向での測定結果からそれぞれ,ペースト中における超音波の音速,もしくはペーストの密度を算出し,いずれの方向についての算出結果とも,その算出結果についてあらかじめ定められた良好範囲内である場合にペースト(活物質ペースト)を良と判定し,それ以外の場合にペースト(活物質ペースト)を不良と判定することで行うことが望ましい。これにより,ペースト中の固形分の分散の程度の良否が分かるからである。
【0014】
本発明における前記判定では,前記2方向の算出結果に加えてさらに,2方向の算出結果の差が当該差についてあらかじめ定められた上限値以内である場合に限り,ペーストを良と判定することがより望ましい。
【0015】
本発明のペースト評価装置はさらに,ペースト供給経路の途中の位置から分岐してペーストの一部を取り出す分岐路と,分岐路内のペーストのインピーダンスを測定するインピーダンス測定部と,ペースト供給経路における分岐路への分岐口より上流の位置に設けられ,内部に攪拌形状部が形成されている攪拌部とを有し,判定部は,超音波測定部の測定結果に加えてインピーダンス測定部の測定結果にも基づいてペーストの良否を判定するものであり,攪拌部の流路断面積が,ペースト供給経路における超音波測定部および攪拌部以外の箇所の流路断面積に対して±10%以内の範囲内にあることが望ましい。
【0016】
同様に本発明のペースト評価方法および電極板の製造方法では,ペースト供給経路として,内部に攪拌形状部が形成されている攪拌部を有するとともに,攪拌部の流路断面積が,ペースト供給経路における長方形部および攪拌部以外の箇所の流路断面積に対して±10%以内の範囲内にあるものを用い,ペースト供給経路における攪拌部より下流の位置から分岐してペーストの一部を取り出し,取り出したペーストのインピーダンスを測定し,前記判定では,超音波の測定結果に加えてインピーダンスの測定結果にも基づいてペーストの良否を判定することが望ましい。
【0017】
これにより,ペースト(活物質ペースト)の,ペースト供給先(塗工部)での作業の生産性に関わる品質ばかりでなく,ペースト供給先(塗工部)で製造される製造物(電極板)の電気的性質の良否を併せて判定することができる。
【0018】
この場合にはさらに,超音波測定部(長方形部)が,攪拌部の下流側に設けられていることが望ましい。超音波測定部(長方形部)でも,攪拌部で攪拌されたペースト(活物質ペースト)を測定対象とすることができるからである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば,ペーストの密度や電気的特性を検査できるペースト評価装置,ペースト評価方法,および,その評価を行いつつ電極板を製造する方法が提供されている。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施の形態に係るシステムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】実施の形態に係るシステムの要部を示す構成図である。
【図3】超音波測定部における流路の断面形状を示す図である。
【図4】インピーダンス測定部で測定される応答時間を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下,本発明を具体化した実施の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は,ペースト供給部から塗工部へ活物質ペーストを供給し,塗工部で活物質ペーストを電極集電板に塗工して電極板を製造する工程に本発明を適用したものである。本形態では,例として,リチウムイオン2次電池の負極板を製造する場合を挙げて説明する。
【0022】
本形態に係る製造工程は,図1のブロック図に示すシステムにより実施される。図1のシステムは,ペースト供給部1と,ペースト供給経路2と,塗工機3とにより構成されている。ペースト供給部1は,活物質ペーストの原料(活物質粉末や溶剤等)を混練する混練機,あるいは,混練された活物質ペーストを収容するバッファタンクである。塗工機3は,供給された活物質ペーストを電極集電板(金属箔)に塗工する装置である。ペースト供給部1から塗工機3へ,ペースト供給経路2を経由して活物質ペーストが供給されるようになっている。
【0023】
本形態では活物質ペーストとして,例えば次の各材料の混練物を用いるものとする。
・活物質:
グラファイト等のカーボン粒子
・増粘材:
有機溶剤に不溶性で水には溶解し,水に溶解すると粘性を発揮するポリマー
例えば,カルボキシルメチルセルロース(CMC),メチルセルロース(MC),酢酸フタル酸セルロース(CAP),ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)等
・結着剤:
有機溶剤に不溶性または難溶性で水には微粒子状態で安定的に分散するポリマー
例えば,ポリテトラフルオロエチレン(PTFE),テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA),テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP),エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)等のフッ素系樹脂
あるいは,酢酸ビニル共重合体,スチレンブタジエンゴム(SBR),アクリル酸変性SBR樹脂(SBR系ラテックス),アラビアゴム等のゴム類
・水系溶媒:
水,または,水を主体とする混合溶媒(水が80質量%以上)
水と混合される溶媒としては,水と均一に混合しうる有機溶剤(低級アルコール,低級ケトン等)の一種または二種以上
【0024】
また,電極集電板としては,導電性の良好な金属の箔を用いる。典型的には銅箔,もしくは,銅を主成分とする合金の箔を用いる。
【0025】
図1に示す本形態のシステムでは,ペースト供給経路2の途中の図中「4」で示す範囲内に,図2に示す構成が設けられている。図2に示すのは,ペースト供給経路2の途中に設けられた攪拌部5と,その下流側に設けられた超音波測定部6である。攪拌部5は,ペースト供給経路2内を搬送される活物質ペーストを攪拌する部分である。超音波測定部6は,ペースト供給経路2内を搬送される活物質ペーストについての超音波測定を行う部分である。
【0026】
さらに,攪拌部5と超音波測定部6との間に,インピーダンス測定部7が設けられている。インピーダンス測定部7は,ペースト供給経路2内の活物質ペーストの一部を取り出して,取り出した活物質ペーストの電気的インピーダンスを測定する部分である。そのため,ペースト供給経路2における攪拌部5と超音波測定部6との間に,分岐口8が形成されている。ペースト供給経路2は基本的に,いずれの場所でも,ポリエチレンやポリプロピレン等の合成樹脂のパイプで構成されている。
【0027】
攪拌部5についてさらに説明する。攪拌部5におけるペースト供給経路2の内壁面には,螺旋状のスパイラルフィン9が設けられている。すなわち攪拌部5は,内面にスパイラルフィンが形成されたスパイラルフィンパイプとなっている。これにより,ペースト供給経路2の中を搬送される活物質ペーストが,攪拌部5を通過するときに自然に攪拌されることとなる。すなわちスパイラルフィン9は,攪拌部5を通過する活物質ペーストを攪拌する攪拌形状部である。したがって,攪拌部5より下流にある超音波測定部6には,攪拌部5で攪拌された活物質ペーストのみが流入することになる。
【0028】
ペースト供給経路2の流路の断面積は,攪拌部5とそれ以外とでほぼ同じになるようにされている。つまりペースト供給経路2の内部空間の断面積は,スパイラルフィン9のある箇所でもない箇所でも同じである。これは,ペースト供給経路2を流れる活物質ペーストの流速が,攪拌部5とそれ以外の所とで同じとなるようにするためである。スパイラルフィン9の高さは例えば,流路の直径が25mm程度であるとすれば,8mm程度が適切である。
【0029】
超音波測定部6についてさらに説明する。超音波測定部6における流路は,その断面形状が図3に示すように長方形状である長方形部となっている。ただし四隅のコーナー部分Cは,活物質ペーストの滞留を防ぐため,5mm径程度の曲面とするのがよい。超音波測定部6の流路の壁面のうち,コーナー部分Cの曲面以外の部分は,4枚の平面P1〜P4で構成されている。このうちP1,P3が短面で,これらは互いに向き合っている。またP2,P4が長面で,これらも互いに向き合っている。本発明における「長方形」には,このようにコーナー部分が丸いものも含まれる。
【0030】
この超音波測定部6においても,流路の断面積は,ペースト供給経路2における他の部分と同じくらいとされている。このため図1のシステムでは,ペースト供給部1を出てから塗工機3に至るまで,ペースト供給経路2のいずれの箇所においても,活物質ペーストの流速は一定である。前述のようにペースト供給経路2の他部分の内径が25mm程度であるとすれば,超音波測定部6の断面形状のサイズは例えば,次の範囲内で断面積がペースト供給経路2の他部分と同じくらいになるようにすればよい。
長径L(短面P1,P3間の間隔):25〜30mm
短径S(長面P2,P4間の間隔):15〜20mm
図3の例は,上記の範囲内で,長径Lが短径Sの2倍となるようにしたものである。
【0031】
超音波測定部6は,超音波測定により,活物質ペーストの密度を評価する部分である。そのため,図2に示されるように,超音波測定部6には2対の超音波送受信器A1,A2,B1,B2が設けられている。超音波送受信器A1は長面P2に,超音波送受信器A2は長面P4に,それぞれ設けられており,これらは互いに対面している。また,超音波送受信器B1は短面P1に,超音波送受信器B2は短面P3に,それぞれ設けられており,これらも互いに対面している。これにより,流路内の活物質ペーストに対して,直交する2方向での超音波測定ができるようになっている。
【0032】
インピーダンス測定部7についてさらに説明する。インピーダンス測定部7には,分岐口8を基点とする分岐路である副流管16が設けられている。副流管16には,上流側から順に,3方電磁弁10,第1液面センサ11,インピーダンスセンサ12,第2液面センサ13,吸い込みポンプ14,電磁弁15が設けられている。このうちのインピーダンスセンサ12は,副流管16の中の活物質ペーストに電界を印加する電極対17,18を有している。電極対17,18の間隔は,1mm程度である。インピーダンスセンサ12は,電極対17,18にステップ状に電圧(10mV程度)を印加したときのインディシャル応答の応答時間(図4参照)により,活物質ペーストのインピーダンスを測定するものである。インピーダンスが大きいほど,応答時間が長いからである。
【0033】
3方電磁弁10は,ペースト供給経路2と副流管16とが連通する連通状態と,連通しない非連通状態とを切り替えるものである。3方電磁弁10は,非連通状態においては,副流管16の内部を大気に開放するようになっている。電磁弁15は,副流管16の末端の開口を開放する開放状態と,開放しない閉塞状態とを切り替えるものである。吸い込みポンプ14は,ペースト供給経路2内の活物質ペーストを,副流管16に引き込むためのものである。第1液面センサ11および第2液面センサ13は,それぞれの位置で副流管16が活物質ペーストで充填されているか否かを検知するものである。
【0034】
図2に示すように,本形態の超音波測定部6およびインピーダンス測定部7に対して,制御部19が設けられている。制御部19は,超音波測定部6に対しては,超音波送受信器A1,A2,B1,B2への発信指令と,受信データの取得とを行う。また,インピーダンス測定部7に対しては,3方電磁弁10,吸い込みポンプ14,および電磁弁15の操作,第1液面センサ11および第2液面センサ13の検知状況の取得,電極対17,18への電圧印加およびその際の応答状況の取得,を行う。そしてこれらの結果に基づき,後述する判定を行う。
【0035】
上記のように構成された本形態のシステムは,以下のように動作する。本形態のシステムの基本動作は,図1中のペースト供給部1からペースト供給経路2を経由して塗工機3へ,活物質ペーストを搬送しつつ,塗工機3で塗工を行うことである。通常は,インピーダンス測定部7の3方電磁弁10を非連通状態として塗工を行う。すなわち,副流管16に活物質ペーストを流すことなく塗工を行う。
【0036】
このとき活物質ペーストは,ペースト供給経路2の途中にある攪拌部5や超音波測定部6をも経由する。活物質ペーストは,攪拌部5を通ることで,前述のようにスパイラルフィン9により攪拌された状態で塗工機3へ供給されることとなる。超音波測定部6は,単に通常の塗工動作を行うだけであるなら,特段の役割を奏しない。ここで,攪拌部5や超音波測定部6の存在が特段の流路抵抗となることはない。前述のように攪拌部5,超音波測定部6とも,その内部の流路断面積がペースト供給経路2自体の流路断面積とほぼ等しいからである。概ね,攪拌部5や超音波測定部6の流路断面積がペースト供給経路2の流路断面積の±10%以内であれば問題ない。
【0037】
本形態のシステムにおいては,塗工機3へ搬送される活物質ペーストの品質評価を行うことができる。以下,この品質評価について説明する。本形態のシステムにおいては,次の2通りの品質評価が可能である。
1.超音波測定部6による生産性評価
この評価は,活物質ペーストの特性のうち,塗工機3における塗工工程の生産性に影響する事項についての評価である。
2.インピーダンス測定部7によるインピーダンス評価
この評価は,活物質ペーストの特性のうち,出来上がる電池の性能に関わる事項についての評価である。
【0038】
「1.」の超音波測定部6による生産性評価について説明する。超音波測定部6では,超音波送受信器A1,A2,B1,B2による超音波測定を行い,これにより活物質ペーストを評価する。より具体的には,活物質ペーストにおける超音波の音速を測定する。音速の測定は,直交する2方向で行う。そして,測定された音速の程度により,活物質ペーストの密度を評価する。2方向での音速測定のために超音波測定部6の断面が長方形状になっているのである。すなわち,超音波送受信器B1,B2により長径Lの方向に音速測定を行い,超音波送受信器A1,A2により短径Sの方向に音速測定を行う。
【0039】
長径方向の音速測定に当たっては,超音波送受信器B1,B2の一方から超音波のパルスを発信し,もう一方で受信する。発信する超音波の周波数は,例えば10MHz程度である。そして次式のように,発信時と受信時との時間差Tで,長径Lを除算することにより,長径方向の音速V1を得る。
V1 = L/T
【0040】
あるいは,超音波送受信器B1,B2の一方のみを用いて,反射法により音速V1を得てもよい。その場合には,発信側にて超音波がパイプから活物質ペーストに進入するときの反射波と,発信側の反対側にて超音波がパイプに到達するときの反射波とを用いるとよい。そして,上記と同様のことを超音波送受信器A1,A2を用いて行うことにより,短径方向の音速V2を得る。こうして測定される音速は,現に超音波測定部6の内部に存在している活物質ペーストにおける音速である。なお,上記の音速測定は,塗工機3による塗工作業を一旦停止した状態でもできるが,塗工作業を続行しながらでも可能である。つまり,インラインでの評価が可能である。
【0041】
活物質ペースト中での音速は,活物質ペーストの密度と関係がある。すなわち,高密度の活物質ペーストでは音速が小さく,低密度の活物質ペーストでは音速が大きい。一方,活物質ペーストの密度は,ペースト全体に対して固形分(活物質や結着剤)の占める比率に左右され,固形分が濃い活物質ペーストは高密度である。よって,活物質ペーストにおける固形分の濃さにムラがあれば,測定される音速が変動することとなる。また,活物質ペーストにおける固形分の分散状況により,音速に異方性が出現することがある。すなわち,固形分が溶媒に対して良好に分散していれば異方性はほとんど無いが,分散の程度が不十分だと異方性が現れうる。
【0042】
ペースト供給部1内の活物質ペーストが混練不十分なものであったりすると,分散が不十分な状態であり得る。よって,音速の変動や異方性を検知することにより,活物質ペーストにおける固形分の分散が十分か否かを判定できる。活物質ペーストが混練不十分で固形分の分布にムラがあるような状況では当然,塗工の生産性はよくない。超音波測定部6での超音波測定により,現にペースト供給部1から塗工機3へ送られている活物質ペーストの品質ムラを検知できるのである。
【0043】
本形態では,長径方向の音速V1,短径方向の音速V2それぞれに,適正と認められる範囲をあらかじめ設定しておく。すなわち,音速V1には下限値V1minと上限値V1maxとが定められている。むろん,V1min<V1maxである。音速V1についての活物質ペーストの配合により定まる標準値は,下限値V1minと上限値V1maxとの間の範囲内にある。下限値V1minおよび上限値V1maxについては概ね,標準値の±20%程度に設定すればよい。そして,測定された音速V1が次の式1を満たせば,長径方向の測定に関しては,活物質ペーストの品質に問題がないと判断できる。
V1min ≦ V1 ≦ V1max ……(式1)
【0044】
同様に,音速V2についても下限値V2minと上限値V2maxとが定められている。これにより次の式2により,短径方向の測定に関しての判断ができる。
V2min ≦ V2 ≦ V2max ……(式2)
式1と式2とがともに満たされていれば,その時点での活物質ペーストは,混練不十分なものではないと判定できる。そして,ペースト供給部1から塗工機3へ活物質ペーストを送っている状況で,式1および式2が安定して満たされていれば,活物質ペーストには生産性を悪くするような品質ムラはないものと判定できる。逆に,式1と式2との少なくとも一方が満たされない場合には,品質ムラがあるものと判定することとなる。
【0045】
ここで,音速V1の標準値と音速V2の標準値とは同じであるが,下限値V1minと下限値V2minとは,同じでもよいし異なっていてもよい。同様に上限値V1maxと上限値V2maxとも,同じでもよいし異なっていてもよい。さらに,上記の式1と式2の他に第3の条件をも付加してもよい。すなわち,音速V1と音速V2との差に上限値Vdmaxを設けるのである。これにより,前述の式1および式2に加えて次の式3をも満たしたときに限り,活物質ペーストの品質ムラがないものと判定するのである。
|V1−V2| ≦ Vdmax ……(式3)
【0046】
上記において,下限値V1min,V2minや上限値V1max,V2maxについては,制御部19に記憶させておけばよい。式1,式2の判断も制御部19で行う。差の上限値Vdmaxや式3の判断についても同様である。
【0047】
上記と同様のことを,活物質ペースト中での音速の替わりに活物質ペーストの密度で判断してもよい。その場合の密度も,超音波測定部6で測定できる。すなわち,超音波送受信器から発信した超音波の減衰の程度を測定することで密度を算出できる。減衰の測定に当たっては,短径方向に超音波送受信器A1,A2の一方から超音波を発信し,もう一方で受信する。そして,発信側で発信強度C1を測定し,受信側で受信強度C2を測定する。このとき,発信強度C1と受信強度C2との間には次の式4の関係が成り立つ。
C2/C1 = 4*Z1*Z2*exp(α*S)/{(Z1+Z2)2
……(式4)
ここで,Z1,Z2,αの意味は,次の通りである。このうちZ2の値は,パイプの材質が決まっていれば既知である。あるいはあらかじめ測定しておくことにより実質的に既知とすることができる。
Z1:活物質ペーストの音響インピーダンス
Z2:ペースト供給経路2のパイプの材質の音響インピーダンス
α:活物質ペーストの減衰定数
【0048】
また,超音波送受信器B1,B2によって長径方向にも同様に測定を行い,発信強度C3と受信強度C4とを測定する。このとき,発信強度C3と受信強度C4との間には次の式5の関係が成り立つ。
C4/C3 = 4*Z1*Z2*exp(α*L)/{(Z1+Z2)2
……(式5)
【0049】
式4と式5とから,次の関係が得られる。
(C4/C3)/(C2/C1) = exp(α*L)/exp(α*S)
……(式6)
LとSとはともに既知であり,かつ異なる(L>S)から,L=S*R(R>1)とおけば式6は,
(C4/C3)/(C2/C1) = exp{(α*(R−1)*S)}
……(式7)
となり,上記の設例ではR=2であるから,
(C4/C3)/(C2/C1) = exp(α*S) ……(式8)
となる。ここで,送受信強度C1〜C4はすべて測定値であり既知であるから,「exp(α*S)」の値が既知となる。さらにZ2も既知であるから,式4中で既知でないのはZ1だけである。よって,式4をZ1について解くことでZ1の値を算出できる。つまり活物質ペーストの音響インピーダンスが導き出される。SとLとの比,すなわちRも既知であるから,式5に基づいてZ1を算出することもできる。
【0050】
一方,流体の密度は,その流体の音響インピーダンスを,その流体中の音速で除して得られることが分かっている(特許文献2の[0051]を参照)。これを上記に当てはめると,活物質ペーストの音響インピーダンスZ1と音速V1,V2とがいずれも導出されているので,次の式9または式10により活物質ペーストの密度(ρ1またはρ2)を算出できる。
ρ1 = Z1/V1 ……(式9)
ρ2 = Z1/V2 ……(式10)
【0051】
ρ1とρ2との違いは,短径方向の測定によるものか長径方向の測定によるものかという違いである。密度自体に方向による違いがあるはずがないが,上記の測定方法でρ1とρ2とに違いがあったとすれば,活物質ペーストにおける固形分の分散状況の異方性による影響と考えられる。よって,活物質ペーストにおける固形分の分散状況が良好であれば両者間の違いは些少である。よって,ρ1,ρ2について良好と判断されるべき範囲をあらかじめ定めておけばよい。あるいはさらに,ρ1とρ2との差について良好と判断されるべき上限値をあらかじめ定めておけばよい。これにより,上記の式1〜式3の辺りで述べたのと同様にして,生産性に関わる活物質ペーストの品質を評価できる。
【0052】
上記の超音波測定部6による超音波測定には,以下の2つの利点がある。まず,測定誤差が少なく高精度であることが挙げられる。その理由は次の2点である。第1に,活物質ペーストの流速を変化させることなく測定していることが挙げられる。前述のように活物質ペーストの流路断面積がどこでも一定だからである。このため,誤差の発生原因となる活物質ペーストの密度変化がない状態で測定できるからである。特許文献2のように流路の途中で流路断面積を変化させる構成であると,流速の変化による誤差が不可避である。これに対し本形態では流速が一定である点で高精度なのである。
【0053】
測定誤差が少ないことのもう1つの理由は,超音波測定部6のところでの流路の断面が,図3に示したように基本的に長方形状であることである。このため,測定される超音波は,発信元の送受信器から発信されて直進している超音波か,あるいは,平面で正反射された超音波だけである。曲面で反射あるいは屈折された超音波はほとんど存在していない。このため,超音波の伝わり方が非常に均一な状況で測定される。このために高精度なのである。特許文献3のように円形断面の箇所で測定を行うと,様々な方向への拡散波が存在する中での測定となる。このために誤差が大きいこととなる。これに対し本形態では曲面での拡散を利用しない点で高精度なのである。
【0054】
超音波測定部6による超音波測定の第2の利点は,インラインで測定ができることである。すなわち,ペースト供給部1を出てから塗工機3へ,ペースト供給経路2を経由して現に供給され塗工工程に供される活物質ペーストそのものを測定対象とすることができる。特許文献4のようなものではどうしてもオフラインでの測定となるため,本形態のものはその点で有利である。
【0055】
続いて,「2.」のインピーダンス測定部7によるインピーダンス評価について説明する。なお,インピーダンス測定部7で評価する「インピーダンス」とは,前出の音響インピーダンスではなく電気的インピーダンスである。インピーダンス測定部7でインピーダンス測定をする場合には,電磁弁15を閉じ,3方電磁弁10を連通状態とする。そして,吸い込みポンプ14を作動させて,ペースト供給経路2から副流管16へ活物質ペーストを引き込む。これにより,第1液面センサ11と第2液面センサ13とをいずれもオンさせて,吸い込みポンプ14を停止させる。その状態で,インピーダンスセンサ12によるインピーダンス測定を行う。これにより,ペースト供給経路2から取り出した活物質ペーストについて,その電気的特性を検査することができる。
【0056】
ここで,インピーダンス測定部7によるインピーダンス評価に供される活物質ペーストは,ペースト供給経路2中を搬送される活物質ペーストの全部ではなく,一部を取り出したものである。しかしながら,ペースト供給経路2から活物質ペーストを取り出す分岐口8は,前述のように,攪拌部5より下流にある。よって,当該取り出された活物質ペーストは,ペースト供給経路2中を搬送される活物質ペーストの全体をかなりよく代表していると考えてよい。
【0057】
すなわち,インピーダンスについても,先に述べた音速と同様に適正範囲が定められている。測定されたインピーダンスがその適正範囲内にあれば,十分な性能を持つ電池が製造されると期待できる。しかし,測定されたインピーダンスが適正範囲から逸脱していれば,不十分な性能しか持たない電池が製造されてしまうおそれがある。インピーダンスが低すぎれば正負の電極板間が短絡気味であることになるし,逆にインピーダンスが高すぎれば,活物質層内での電荷移動が不十分で発電性能が低いことになるからである。これより,測定されたインピーダンスをZe,その適正範囲の下限値をZemin,上限値をZemaxとして,次式の関係が満たされればよい。
Zemin ≦ Ze ≦ Zemax ……(式11)
これらの上下限値については,制御部19に記憶させておけばよい。式11の判断も制御部19で行えばよい。
【0058】
実際には,先の超音波測による生産性評価の結果と併せて評価する。すなわち,式1,式2,式11の3つの条件のすべてを満たしている場合に,活物質ペーストの品質に問題がないと判断できる。あるいは,さらに式3の条件をも満たしている場合に,問題がないと判断することとしてもよい。
【0059】
インピーダンス測定が終了したら,電磁弁15を開いて,副流管16中の活物質ペーストを排出する。つまりその活物質ペーストは塗工には使用しない。副流管16に引き込まれた活物質ペーストは,電極対17,18に接触しその表面上を流動することになる。その際の摩擦により活物質ペーストに電極の摩耗粉が混入するおそれがあるからである。金属性である摩耗分が混入した活物質ペーストを塗工に用いると,電池において極板間の短絡の原因となるからである。
【0060】
このインピーダンス測定も,超音波測定と同様に,塗工作業を続行しながらでも可能である。ただし測定頻度に関しては実際上,インピーダンス測定は,超音波測定ほど頻繁に行う必要はない。つまり,インピーダンス測定は,ある程度の時間間隔で周期的に行えば十分である。なお,インピーダンス測定の都度いちいちインピーダンス測定部7を洗浄する必要はないが,図1のシステム自体を休止するようなタイミングではインピーダンス測定部7を洗浄することが望ましい。
【0061】
以上詳細に説明したように本実施の形態によれば,ペースト供給部1からペースト供給経路2へのペースト供給経路2の途中に超音波測定部6を設けている。そして,超音波測定部6で活物質ペーストの音速または密度を測定することとしている。これにより活物質ペーストの,塗工工程の生産性に影響する品質を,インラインで測定できるようにしている。さらに,超音波測定部6の断面を長方形状とすることで,流路断面積を流路の途中で変えることなく,2方向での測定ができるようにしている。これにより高い測定精度を得ている。
【0062】
本形態ではさらに,超音波測定部6より上流に攪拌部5を設けている。これにより,超音波測定部6での測定に先立ち,活物質ペーストが攪拌部5で攪拌されるようにしている。そして,攪拌部5と超音波測定部6とそれ以外のところとでいずれも流路断面積が同じになるようにしている。これにより,活物質ペーストに流速の変化を起こさせることなく,超音波測定がなされるようにしている。このことも測定精度の高さに貢献している。本形態ではさらに,インピーダンス測定部7を設けている。これにより,攪拌部5で攪拌された活物質ペーストの一部を取り出してインピーダンス測定を行うようにしている。こうして,生産性と電池性能とを効率よく高精度に測定できるようにしている。
【0063】
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,本形態では測定対象のペーストとして,リチウムイオン2次電池の負極板を製造するための活物質ペーストを挙げたが,これに限らず,正極板用の活物質ペーストや,他の種類の電池のための活物質ペースト,あるいは活物質ペースト以外のペーストにも適用できる。また,本形態では超音波測定部6の位置を攪拌部5の下流側としたが,このことは必須ではない。超音波測定部6を攪拌部5の上流側に置くことも考えられる。さらには,攪拌部5自体,絶対に必要なもの,というわけではない。ただし攪拌部5は,あった方がよりよいし,超音波測定部6の上流側に位置していた方がよりよい。
【符号の説明】
【0064】
1 ペースト供給部
2 ペースト供給経路
3 塗工機(ペースト供給先)
5 攪拌部
6 超音波測定部(長方形部)
7 インピーダンス測定部
8 分岐口
9 スパイラルフィン
19 制御部(判定部)
A1,A2,B1,B2 超音波送受信器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペースト供給部からペースト供給先へのペースト供給経路と,
前記ペースト供給経路の途中に設けられ,ペーストの流路の断面が長方形であるとともに,ペーストに対して断面の長方形の短辺方向および長辺方向の2方向に超音波を印加してそれぞれの方向での反射波または透過波を測定する超音波測定部と,
前記超音波測定部の測定結果に基づいてペーストの良否を判定する判定部とを有することを特徴とするペースト評価装置。
【請求項2】
請求項1に記載のペースト評価装置において,
前記超音波測定部の流路断面積が,前記ペースト供給経路における前記超音波測定部以外の箇所の流路断面積に対して±10%以内の範囲内にあることを特徴とするペースト評価装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のペースト評価装置において,前記判定部は,
前記超音波測定部での2方向での測定結果からそれぞれ,ペースト中における超音波の音速,もしくはペーストの密度を算出し,
いずれの方向についての算出結果とも,その算出結果についてあらかじめ定められた良好範囲内である場合にペーストを良と判定し,それ以外の場合にペーストを不良と判定するものであることを特徴とするペースト評価装置。
【請求項4】
請求項3に記載のペースト評価装置において,前記判定部は,
前記2方向の算出結果に加えてさらに,2方向の算出結果の差が当該差についてあらかじめ定められた上限値以内である場合に限り,ペーストを良と判定するものであることを特徴とするペースト評価装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1つに記載のペースト評価装置において,
前記ペースト供給経路の途中の位置から分岐してペーストの一部を取り出す分岐路と, 前記分岐路内のペーストのインピーダンスを測定するインピーダンス測定部と,
前記ペースト供給経路における前記分岐路への分岐口より上流の位置に設けられ,内部に攪拌形状部が形成されている攪拌部とを有し,
前記判定部は,前記超音波測定部の測定結果に加えて前記インピーダンス測定部の測定結果にも基づいてペーストの良否を判定するものであり,
前記攪拌部の流路断面積が,前記ペースト供給経路における前記超音波測定部および前記攪拌部以外の箇所の流路断面積に対して±10%以内の範囲内にあることを特徴とするペースト評価装置。
【請求項6】
請求項5に記載のペースト評価装置において,
前記超音波測定部が,前記攪拌部の下流側に設けられていることを特徴とするペースト評価装置。
【請求項7】
ペースト供給部からペースト供給先へペースト供給経路によりペーストを供給するに当たり,
前記ペースト供給経路として,ペーストの流路の断面が長方形である長方形部を有するものを用い,
前記長方形部の位置にて,断面の長方形の短辺方向および長辺方向の2方向に超音波を印加してその反射波または透過波を測定し,
前記反射波または透過波の測定結果に基づいてペーストの良否を判定することを特徴とするペースト評価方法。
【請求項8】
請求項7に記載のペースト評価方法において,
前記長方形部の流路断面積が,前記ペースト供給経路における前記長方形部以外の箇所の流路断面積に対して±10%以内の範囲内にあることを特徴とするペースト評価方法。
【請求項9】
請求項7または請求項8に記載のペースト評価方法において,前記判定では,
前記長方形部での2方向での超音波の測定結果からそれぞれ,ペースト中における超音波の音速,もしくはペーストの密度を算出し,
いずれの方向についての算出結果とも,その算出結果についてあらかじめ定められた良好範囲内である場合にペーストを良と判定し,それ以外の場合にペーストを不良と判定することを特徴とするペースト評価方法。
【請求項10】
請求項7から請求項9までのいずれか1つに記載のペースト評価方法において,
前記ペースト供給経路として,
内部に攪拌形状部が形成されている攪拌部を有するとともに,
前記攪拌部の流路断面積が,前記ペースト供給経路における前記長方形部および前記攪拌部以外の箇所の流路断面積に対して±10%以内の範囲内にあるものを用い,
前記ペースト供給経路における前記攪拌部より下流の位置から分岐してペーストの一部を取り出し,
取り出したペーストのインピーダンスを測定し,
前記判定では,前記超音波の測定結果に加えて前記インピーダンスの測定結果にも基づいてペーストの良否を判定することを特徴とするペースト評価方法。
【請求項11】
ペースト供給部から塗工部へペースト供給経路により活物質ペーストを供給して前記塗工部で活物質ペーストを電極集電板に塗工して電極板とする電極板の製造方法において, 前記ペースト供給経路として,活物質ペーストの流路の断面が長方形である長方形部を有するものを用い,
前記長方形部の位置にて,断面の長方形の短辺方向および長辺方向の2方向に超音波を印加してその反射波または透過波を測定し,
前記反射波または透過波の測定結果に基づいて活物質ペーストの良否を判定しつつ,前記塗工部での塗工を行うことを特徴とする電極板の製造方法。
【請求項12】
請求項11に記載の電極板の製造方法において,
前記長方形部の流路断面積が,前記ペースト供給経路における前記長方形部以外の箇所の流路断面積に対して±10%以内の範囲内にあることを特徴とする電極板の製造方法。
【請求項13】
請求項11または請求項12に記載の電極板の製造方法において,前記判定では,
前記長方形部での2方向での超音波の測定結果からそれぞれ,ペースト中における超音波の音速,もしくはペーストの密度を算出し,
いずれの方向についての算出結果とも,その算出結果についてあらかじめ定められた良好範囲内である場合にペーストを良と判定し,それ以外の場合にペーストを不良と判定することを特徴とする電極板の製造方法。
【請求項14】
請求項13に記載の電極板の製造方法において,前記判定では,
前記2方向の算出結果に加えてさらに,2方向の算出結果の差が当該差についてあらかじめ定められた上限値以内である場合に限り,ペーストを良と判定することを特徴とする電極板の製造方法。
【請求項15】
請求項11から請求項14までのいずれか1つに記載の電極板の製造方法において,
前記ペースト供給経路として,
内部に攪拌形状部が形成されている攪拌部を有するとともに,
前記攪拌部の流路断面積が,前記ペースト供給経路における前記長方形部および前記攪拌部以外の箇所の流路断面積に対して±10%以内の範囲内にあるものを用い,
前記ペースト供給経路における前記攪拌部より下流の位置から分岐してペーストの一部を取り出し,
取り出したペーストのインピーダンスを測定し,
前記判定では,前記超音波の測定結果に加えて前記インピーダンスの測定結果にも基づいてペーストの良否を判定することを特徴とする電極板の製造方法。
【請求項16】
請求項15に記載の電極板の製造方法において,
前記ペースト供給経路として,前記長方形部が,前記攪拌部の下流側に設けられているものを用いることを特徴とする電極板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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