説明

ホイップクリームおよびその製造方法

【課題】長期間にわたって光照射による風味劣化を抑制できるホイップクリームおよびその製造方法の提供。
【解決手段】本発明のホイップクリームは、トコフェロールと、チャ抽出物と、酵素処理ルチン抽出物、没食子酸、ローズマリー抽出物からなる群より選ばれる1種以上と、0.3〜1.0質量%のゼラチンと、油脂とを含有する。また、本発明のホイップクリームの製造方法は、トコフェロールと、チャ抽出物と、酵素処理ルチン抽出物、没食子酸、ローズマリー抽出物からなる群より選ばれる1種以上と、ゼラチンとを含む安定剤水溶液と、油脂を含む原料液とを別々に殺菌する殺菌工程と、殺菌された原料液をホイップするホイップ工程と、ホイップされた原料液と殺菌された安定剤水溶液とを混合する混合工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホイップクリームおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デザートの多様化を背景に、軽い食感を与える目的で、乳製品や植物油脂などを含むクリームをホイップしたホイップクリームをデコレーションした種々のデザートが開発されている。
しかし、ホイップクリームをデコレーションしたデザートを工業的に製造して製品化し、店頭のショーケースに陳列する場合などにおいて、ショーケースの照明からの光によりホイップクリームの風味が劣化するという問題があった。
【0003】
また、製造したデザートを広域配送する場合には、通常、10℃以下の冷蔵条件で7日以上の賞味期限を持たせる必要があるため、長期間にわたって光照射による風味劣化を抑制することが求められる。
しかし、従来のホイップクリームは、ショーケースの照明からの光に対する耐性が低いため、軽い食感を有するホイップクリームをデコレーションしたデザートとしては、賞味期限が当日〜3日程度と短い製品が多く、広域配送には不向きであった。
【0004】
光照射による風味劣化は酸化反応が原因と考えられ、水分が多い食品はその進行が速く、さらに油脂を含む食品では風味劣化が著しいことが知られている。ホイップクリームは水分と油脂を多く含むために風味劣化の影響が大きい。また、ホイップクリームは流動性が低いため、特定の部位で光が照射されることとなり、結果的に酸化反応を引き起こす過酸化物が生じるおそれが高い。
【0005】
光照射による風味劣化を抑制する方法としては、酸化防止効果のある物質を用いる方法が提案されている。例えば、酸化防止効果のある物質として、トコフェロール、ルチン、チャ抽出物から選ばれる1種以上を用いる方法(特許文献1参照)、トコフェロールとルチンを併用する方法(特許文献2参照)、ビタミンE(トコフェロール)、ザクロ抽出物、カテキン、酵素処理ルチン、エンジュ抽出物、生コーヒー豆抽出物、米ぬか抽出物、ヤマモモ抽出物からなる群より選ばれる1種類以上を用いる方法(特許文献3参照)などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−237354号公報
【特許文献2】特許第4396334号公報
【特許文献3】特許第4260773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、製品化されたデザートを広域配送する場合には、10℃以下の冷蔵条件で7日以上の賞味期限を持たせる必要がある。従って、ホイップクリームをデコレーションしたデザートを、10℃以下の冷蔵条件で7日以上の賞味期限を有する商品に設計するためには、長期間の光耐性が必要である。
しかしながら、特許文献1〜3に記載の方法では、長期間の賞味期限を有するためには酸化防止の効果が必ずしも十分ではなく、さらなる光耐性が必要であった。
【0008】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、長期間にわたって光照射による風味劣化を抑制できるホイップクリームおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく検討を重ねた結果、特定の酸化防止効果のある物質を選択し、これと特定量のゼラチンを組み合わせて用いることで、長期間にわたって酸化による風味劣化防止の効果を維持でき、風味劣化を抑制できることを見出した。
【0010】
ところで、ホイップクリームに用いられるクリームとしては、乳脂肪のみを用いたクリーム、乳脂肪以外の脂肪を用いたクリーム、これら両方のクリームを混合した混合クリームなどが一般的である。
また、上述したように、ホイップクリームをデコレーションしたデザートを広域配送する場合には、7日以上の賞味期限を持たせる必要があるとされている。
しかし、前記一般的なクリームをホイップしたホイップクリームを長期間保存すると、保存中にひび割れ、ダレ、水分の分離による離水などの問題が生じ、気泡維持が難しくなり、デコレーション時の保型性を維持するのが困難となる場合があった。
【0011】
そのため、ホイップクリームには、デコレーション時の保型性を維持するために、ゼラチンや乾燥こんにゃく加工品などの保型性を高める物質を配合する場合がある。
しかし、保型性を高める物質を配合すると、ホイップクリームの製造に一般的に用いられる増粘多糖類を添加した場合、商品特性上、長期間の保型性に必要となる高いオーバーラン(空気の巻き込み)を確保できないという欠点があった。
【0012】
本発明者らはさらに検討を重ねた結果、油脂を含む原料液をホイップした後、これに特定の酸化防止効果のある物質およびゼラチンが溶解した溶液を加えることによって、ホイップクリームの酸化による風味劣化防止の効果がより向上するようになるばかりか、高いオーバーランを確保でき、かつひび割れや離水等が抑制され、組織が均一となり、保型性をも維持できるようになることを見出した。
【0013】
すなわち、本発明は以下の構成を採用した。
[1]トコフェロールと、チャ抽出物と、酵素処理ルチン抽出物、没食子酸、ローズマリー抽出物からなる群より選ばれる1種以上と、ゼラチンと、油脂とを含有し、前記ゼラチンの含有量が0.3〜1.0質量%であるホイップクリーム。
[2]水あめと、寒天および/または発酵セルロースとをさらに含有する[1]に記載のホイップクリーム。
[3]トコフェロールと、チャ抽出物と、酵素処理ルチン抽出物、没食子酸、ローズマリー抽出物からなる群より選ばれる1種以上と、ゼラチンとを含む安定剤水溶液と、油脂を含む原料液とを別々に殺菌する殺菌工程と、殺菌された原料液をホイップするホイップ工程と、ホイップされた原料液と殺菌された安定剤水溶液とを混合する混合工程とを有するホイップクリームの製造方法。
[4]前記安定剤水溶液が、水あめと、寒天および/または発酵セルロースとをさらに含む[3]に記載のホイップクリームの製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明のホイップクリームは、長期間にわたって光照射による風味劣化を抑制できる。
また、本発明のホイップクリームの製造方法によれば、長期間にわたって光照射による風味劣化を抑制できるホイップクリームを工業的に連続製造することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】試験例1の試験No.1と6の試料の光照射前後におけるヘキサナールの分析結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下本発明を詳細に説明する。
本発明のホイップクリームの製品形態としては、ホイップクリーム単独のみならず、プリンやゼリーなどのデザートにトッピングしたものも含む。
なお、本明細書で「クリーム」とは、食品衛生法の乳及び乳製品の成分規格等に関する省令でいう「クリーム」に限定されず、所謂コンパウンドクリーム(乳脂肪以外の脂肪を含む)及びノンデイリークリーム(乳脂肪を含まない)を含めて「クリーム」という。
【0017】
本発明のホイップクリームは、トコフェロールと、チャ抽出物と、酵素処理ルチン抽出物、没食子酸、ローズマリー抽出物からなる群より選ばれる1種以上と、ゼラチンと、油脂とを含有する。
油脂としては、動物性、植物性のいずれでもよい。また、生乳、牛乳等の乳由来の乳脂肪のみを用いたクリームや、合成クリーム(乳脂肪以外の脂肪を用いて脱脂乳等のたん白質原料や乳化剤、香料等を混合して得られるもの)、これらを混合した混合クリームなどを使用してもよい。
【0018】
トコフェロール、チャ抽出物、酵素処理ルチン抽出物、没食子酸、ローズマリー抽出物は、主に酸化防止剤としての役割を果たす。これらは、後述する他の酸化防止剤に比べてホイップクリームの色調や風味に影響を与えにくく、汎用的に使用できる。
本発明のホイップクリームは、トコフェロールおよびチャ抽出物を必須成分とし、さらに酵素処理ルチン抽出物、没食子酸、ローズマリー抽出物からなる群より選ばれる1種以上を含有するので、長期間にわたって酸化による風味劣化防止の効果を維持でき、光照射による風味劣化を抑制できる。
【0019】
トコフェロールは、天然の植物から抽出した精製品でも未精製品でもよく、合成品でもよい。また、太陽化学社、理研ビタミン社などから入手することも可能である。
トコフェロールの含有量は、ホイップクリーム100質量%中、0.005〜0.10質量%が好ましく、0.01〜0.05質量%がより好ましい。トコフェロールの含有量が0.005質量%以上であれば酸化による風味劣化防止の効果が十分に得られ、0.10質量%以下であればホイップクリームの風味を良好に維持できる。
【0020】
チャ抽出物は、緑茶、ウーロン茶、紅茶等の茶葉、またはその加工品の抽出物であり、熱水抽出、エタノール抽出を行って精製したものが望ましい。また、太陽化学社などから入手することも可能である。
チャ抽出物の含有量は、ホイップクリーム100質量%中、0.0001〜0.08質量%が好ましく、0.0005〜0.03質量%がより好ましい。チャ抽出物の含有量が0.0001質量%以上であれば酸化による風味劣化防止の効果が十分に得られ、0.08質量%以下であればホイップクリームの風味を良好に維持できる。
【0021】
酵素処理ルチン抽出物は、エンジュ、アズキより抽出されたルチンを、水に対する溶解度を上げる目的で食品加工用酵素を用いて酵素処理し、抽出を行ったものである。また、酵素処理ルチン抽出物は市販品として入手可能である。例えば三栄源エフ・エフ・アイ社製の「サンメリン」などが挙げられる。
酵素処理ルチン抽出物の含有量は、0.003〜0.10質量%が好ましく、0.004〜0.05質量%がより好ましい。酵素処理ルチン抽出物の含有量が0.003質量%以上であれば酸化による風味劣化防止の効果が十分に得られ、0.10質量%以下であればホイップクリームの風味や色調を良好に維持できる。
【0022】
没食子酸は、太陽化学社、岩手ケミカル社などから入手することが可能である。
没食子酸の含有量は、0.0001〜0.05質量%が好ましく、0.0005〜0.01質量%がより好ましい。没食子酸の含有量が0.0001質量%以上であれば酸化による風味劣化防止の効果が十分に得られ、0.05質量%以下であればホイップクリームの風味を良好に維持できる。
【0023】
ローズマリー抽出物は、市販品として入手可能である。例えば三菱化学フーズ社製の「RMキーパー」などが挙げられる。
ローズマリー抽出物の含有量は、0.001〜0.10質量%が好ましく、0.005〜0.05質量%がより好ましい。ローズマリー抽出物の含有量が0.001質量%以上であれば酸化による風味劣化防止の効果が十分に得られ、0.10質量%以下であればホイップクリームの風味や色調を良好に維持できる。
【0024】
本発明のホイップクリームは、上述した以外の他の酸化防止剤を含有してもよい。
他の酸化防止剤としては、例えばザクロ抽出物、エンジュ抽出物、生コーヒー豆抽出物、米ぬか抽出物、ヤマモモ抽出物、アントシアニン、タンニン、クロロゲン酸、カロチノイドなどが挙げられる。
【0025】
ゼラチンは、主にホイップクリームの保型性を高める目的で用いられるが、上述したトコフェロールと、チャ抽出物と、酵素処理ルチン抽出物、没食子酸、ローズマリー抽出物からなる群より選ばれる1種以上と併用し、かつゼラチンの含有量を特定することで、酸化による風味劣化防止の効果も向上し、長期間にわたって光照射による風味劣化を抑制できる。これは、特定量のゼラチンを含有することにより、ホイップクリームを口に含んだときに風味がすぐに広がるトップノートにおいて、クリームの酸化臭をマスキングする効果があるためと考えられる。
【0026】
ゼラチンは、動物の骨や皮に多く含まれるコラーゲンたん白を分解して作られるたん白質である。ゼラチンの製造法は、酸処理、アルカリ処理の2通りに大別される。本発明ではいずれの方法のゼラチンを使用しても構わないが、ホイップクリームに後述する増粘多糖類を含有させる場合は、アルカリ処理のゼラチンを用いるのが望ましい。また、ゼラチンは市販品として入手可能である。例えば新田ゼラチン社製の「ゼラチン」などが挙げられる。
ゼラチンの含有量は、ホイップクリーム100質量%中、0.3〜1.0質量%であり、0.4〜0.7質量%が好ましい。ゼラチンの含有量が0.3質量%以上であれば酸化による風味劣化防止の効果および保型性付与効果が十分に得られ、1.0質量%以下であればホイップクリームの食感が重くなるのを抑制できる。
【0027】
本発明のホイップクリームは、水あめと、寒天および/または発酵セルロースとをさらに含有するのが好ましい。これら水あめ、寒天、発酵セルロースは、ゼラチンと同様にホイップクリームの保型性を高める目的で主に用いられる。
なお、ゼラチン、水あめ、寒天、発酵セルロースは、後述する他の保型性を高める物質に比べてホイップクリームの風味や食感に影響を与えにくく、汎用的に使用できる。
【0028】
水あめとしては、液体水あめ、粉末水あめのいずれを用いてもよい。また、水あめは市販品として入手可能である。例えば双日食料社製の「シラップ低M」などが挙げられる。
水あめの含有量は、例えば液体水あめ(糖度:Bx75%)を用いる場合、ホイップクリーム100質量%中、0.3〜1.5質量%が好ましく、0.6〜1.2質量%がより好ましい。水あめの含有量が0.3質量%以上であれば十分な保型性の向上効果が得られ、1.5質量%以下であればホイップクリームの風味や食感を良好に維持できる。
【0029】
寒天としては、低ゼリー強度寒天を用いてもよいし、通常の寒天(テングサなどの海草の粘液質を凍結・乾燥したもの)を用いてもよい。また、寒天は市販品として入手可能である。例えば三栄源エフ・エフ・アイ社製の「ウルトラ寒天イーナ」などが挙げられる。
寒天の含有量は、例えば低ゼリー強度寒天を用いる場合、ホイップクリーム100質量%中、0.05〜2.0質量%が好ましく、0.1〜1.0質量%がより好ましい。寒天の含有量が0.05質量%以上であれば十分な保型性の向上効果が得られ、2.0質量%以下であればホイップクリームの風味や食感を良好に維持できる。なお、通常の寒天を用いる場合には、含有量が0.05質量%以下になるのが望ましい。
【0030】
発酵セルロースは、市販品として入手可能である。例えば三栄源エフ・エフ・アイ社製の「サンアーティスト」などが挙げられる。
発酵セルロースの含有量は、ホイップクリーム100質量%中、0.01〜1.0質量%が好ましく、0.02〜0.5質量%がより好ましい。発酵セルロースの含有量が0.01質量%以上であれば十分な保型性の向上効果が得られ、1.0質量%以下であればホイップクリームの風味や食感を良好に維持できる。
【0031】
本発明のホイップクリームは、上述した以外の他の保型性を高める物質を含有してもよい。
他の保型性を高める物質としては、例えばペクチン、ローカストビーンガム、カラギナン、アラビアガム、キサンタンガム、タマリンドガム、微結晶セルロースなどが挙げられる。
【0032】
また、本発明のホイップクリームは、ホイップ性を調整する目的で、でん粉、乳化剤、増粘多糖類などを含有してもよい。また、ホイップクリームの風味や、後述する安定剤水溶液の固形分を調整する目的で、でん粉、糖類、香料、着色料、リキュールなどを含有してもよい。
【0033】
本発明のホイップクリームは、上述した各成分と水とを混合して溶解し、殺菌工程、冷却工程、エージング工程、ホイップ工程を経て製造することができるが、得られるホイップクリームの保型性が向上する点で、以下に示す方法で製造するのが好ましい。
【0034】
まず、水と上述した油脂とを混合して溶解し、原料液を調製する。原料液には、必要に応じてでん粉、乳化剤、増粘多糖類などを添加してもよい。
別途、水と、上述したトコフェロールと、チャ抽出物と、酵素処理ルチン抽出物、没食子酸、ローズマリー抽出物からなる群より選ばれる1種以上と、ゼラチンとを混合して溶解し、安定剤水溶液を調製する。安定剤水溶液には、水あめと、寒天および/または発酵セルロースとを添加するのが好ましい。さらに、必要に応じて他の酸化防止剤や保型性を高める物質、でん粉、糖類、香料、着色料、リキュールなどを添加してもよい。
【0035】
なお、ホイップクリーム(最終製品)のpHは高すぎると中和臭を発し、低すぎると増粘多糖類を含有する場合、加熱などによって増粘多糖類が加水分解して、酸化による風味劣化防止の効果や保型性付与効果が十分に発揮されにくくなる傾向にある。またpHが4.6付近は乳たん白質の等電点付近であるため、凝集が起こりやすくなる。
従って、風味や物性に影響を与えにくい適度なpHのホイップクリームを得るためには、安定剤水溶液のpHを5.0〜7.0程度に調整するのが好ましい。pHを調整する際は、ナトリウム塩などを用いればよい。安定剤水溶液のpHが上記範囲内であれば、詳しくは後述するが、安定剤水溶液と原料液とを混合した際に、物性や風味に影響を与えにくい。
【0036】
ついで、原料液と安定剤水溶液を別々に殺菌する(殺菌工程)。
原料液を殺菌する方法としては、プレート式殺菌機、インジェクション式殺菌機、インフュージョン式殺菌機など、いずれの方法を用いてもよい。
原料液の殺菌条件は、殺菌温度130〜140℃、殺菌時間(保持時間)2〜4秒が好ましい。ここで殺菌温度130〜140℃とは、殺菌機の加熱部において最も高温な部分の温度のことである。殺菌温度が低い場合や保持時間が短い場合は、殺菌効果が不十分となる場合がある。一方、殺菌温度が高い場合や保持時間が長い場合は、ホイップクリームの風味や色調が変化することが懸念される。
【0037】
原料液を殺菌した後、この殺菌された原料液を均質化、冷却、エージングし、ついでホイップする(ホイップ工程)。
原料液の均質化は、2段式圧力ホモジナイザー(APV社製、三丸機械工業社製等)を用い、均質圧力が1段目と2段目の合計として2〜8MPaになるように行うのが好ましい。均質圧力が2MPa以上であれば原料液中の脂肪成分の浮上や凝集を抑制でき、8MPa以下であれば良好なホイップ性が得られると共に、ホイップクリームの風味が変化しにくい。
原料液の冷却は、公知の冷却機を用いればよい。原料液を冷却する際は、原料液を3〜8℃程度まで冷却するのが好ましい。
原料液のエージングは、冷却した状態で11時間以上静置する。エージングは、調製された原料液の物性や風味を安定化する目的がある。エージング時間が短いと、原料液の物性や風味に影響がでることが懸念される。
原料液のホイップは、公知のホイッパーを用いればよい。
【0038】
一方、安定剤水溶液を殺菌する方法としては、プレート式殺菌機、インジェクション式殺菌機、インフュージョン式殺菌機など、いずれの方法を用いてもよい。
安定剤水溶液の殺菌条件は、殺菌温度90〜140℃、殺菌時間(保持時間)2〜300秒が好ましい。ここで殺菌温度90〜140℃とは、殺菌機の加熱部において最も高温な部分の温度のことである。殺菌温度が低い場合や保持時間が短い場合は、殺菌効果が不十分となる場合がある。一方、殺菌温度が高い場合や保持時間が長い場合は、ホイップクリームの風味や色調が変化することが懸念される。
殺菌された安定剤水溶液は、40〜50℃程度まで冷却される。
【0039】
原料液をホイップし、安定剤水溶液を冷却した後、ホイップされた原料液と殺菌された安定剤水溶液とを混合してホイップクリームを得る(混合工程)。
原料液と安定剤水溶液の混合は、公知の混合機を用いればよい。
また、原料液と安定剤水溶液の混合割合は、各液に含まれる成分のホイップクリーム中の含有量が上記範囲内になるように調整すればよい。
【0040】
以上説明したように、本発明のホイップクリームは、トコフェロールと、チャ抽出物と、酵素処理ルチン抽出物、没食子酸、ローズマリー抽出物からなる群より選ばれる1種以上と、特定量のゼラチンを含有するので、酸化による風味劣化防止の効果が向上し、長期間にわたって光照射による風味劣化を抑制できる。
従って、本発明によれば、ホイップクリーム、またはホイップクリームをデコレーションしたデザートなどにおいて、店頭のショーケースの照明による風味劣化を抑制できるので、長期間の賞味期限を有するデザートを提供できる。
【0041】
また、上述した原料液と安定剤水溶液とを別々に殺菌し、ついで殺菌された原料液を単独でホイップした後に、この原料液と殺菌された安定剤水溶液とを混合する方法により製造すれば、高いオーバーランを確保でき、かつひび割れや離水等が抑制され、組織が均一となり、保型性をも維持できるホイップクリームが得られる。
なお、原料液をホイップする前に安定剤水溶液を混合すると、安定剤水溶液に含まれるゼラチンが固化してホイップを阻害する傾向にあり、高いオーバーランが得られにくくなることがある。また、ホイップすることで固化したゼラチンが崩れやすくなり、保型性を維持する効果が発揮されにくくなることがある。従って、高いオーバーランを確保し、かつ保型性を維持するには、殺菌された原料液をホイップした後に、これと殺菌された安定剤水溶液とを混合するのが好ましい。
【実施例】
【0042】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
以下の各例において、「%」は特に記載のない限りは「質量%」である。また、表1、2、5、8、13におけるカッコ内の数値は、ホイップクリームにしたときのホイップクリーム100質量%中の各成分の含有量である。
【0043】
[試験例1]
(1)目的
この試験は、酸化防止剤の種類を検討する目的で実施した。
【0044】
(2)試料の調製
<試験No.1>
まず、表1の配合割合に従って各成分を混合して溶解し、原料液を調製した。ついで、この原料液を70℃に加温した後、冷却部とホモジナイザーを内蔵するプレート式UHT殺菌機(森永乳業社製、「MAU」)で、殺菌温度132℃、保持時間2秒の条件で殺菌した。ついで、冷却部にて80℃まで冷却した後、ホモジナイザーで1段目4.0MPa、2段目1.0MPaの条件で均質化した。その後、冷却部にて5℃まで冷却し、さらに5℃で12時間のエージングを行った。ついで、5℃の条件で卓上ホイッパー(森永乳業社製、「MOホイッパー」)を用いて、オーバーランの値が220%になるまでホイップした。
別途、表2の配合割合に従って各成分を混合して溶解し、安定剤水溶液を調製した。ついで、この安定剤水溶液を90℃に加温して殺菌し、その後、45℃に冷却した。
続いて、先にホイップした原料液と、殺菌して冷却した安定剤水溶液とを、原料液:安定剤水溶液の質量比が85:15になるように混合し、ホイップクリーム(試料)を得た。
【0045】
<試験No.2〜6>
表2の配合割合に従って安定剤水溶液を調製した以外は、試験No.1と同様にして試料を調製した。
【0046】
なお、試験No.1〜6で用いた各成分は以下のものである。
植物油脂A(太陽油脂社製、「ヤシ油、パーム油」)、植物油脂B(花王社製、「パーム油」)、48%乳脂肪クリーム(森永乳業社製、「クリーム」)、脱脂粉乳(森永乳業社製、「脱脂粉乳」)、脱脂練乳(森永乳業社製、「脱脂練乳」)、乳たん白質(森永乳業社製、「TMP」)、加工澱粉(日本澱粉工業社製、「サナス」)、乳化剤A(坂本薬品社製、「SYグリスター」)、乳化剤B(三菱化学社製、「リョートーシュガーエステル」)、クエン酸ナトリウム(三栄源エフ・エフ・アイ社製、「精製クエン酸ナトリウム」)、タマリンドガム(三栄源エフ・エフ・アイ社製、「ビストップ」)、砂糖(双日食料社製、「グラニュー糖」)、スクラロース(三栄源エフ・エフ・アイ社製、「スクラロース」)、ゼラチン(新田ゼラチン社製、「ゼラチン」)、水あめ(双日食料社製、「シラップ低M」)、抽出トコフェロール(理研ビタミン社製、「理研E乳剤」)、チャ抽出物(太陽化学社製、「サンフェノン」)、酵素処理ルチン抽出物(三栄源エフ・エフ・アイ社製、「サンメリン」)、ローズマリー抽出物(三菱化学フーズ社製、「RMキーパー」)、没食子酸(岩手ケミカル社製、「没食子酸」)。
【0047】
(3)測定方法および評価方法
<オーバーランの測定>
オーバーランは下記一般式(1)より求めた。
オーバーラン(%)=(ホイップ後の体積−ホイップ前の体積)/ホイップ前の体積×100 ・・・(1)
【0048】
<風味評価>
(評価1:光照射前(10℃×12時間冷却後))
得られた各試料を透明プラスチックカップ(大日本印刷社製、「PPカップ」)に50g充填し、透明プラスチックフィルム(東洋アルミニウム社製、「PET蓋フィルムロール」)を被せ、ヒートシール装置(サニーパッケージ社製、「オートカップシーラー」)でシールし、冷蔵庫にて10℃で12時間冷却した。冷却後の各試料について、官能評価した。
官能評価は、順位法の検定表を用いる方法(「おいしさを測る−食品官能検査の実際−」、p28、古川秀子著、幸書房、1994年)に基づき、10人の味覚審査員に試料を試食させ、風味のよい順に試料に順位をつけさせ、各試料の順位合計を求め、各試料間の順位合計差の絶対値を求め、その数値から順位法の検定表から有意水準を判定した。結果を表3に示す。
【0049】
(評価2:光照射後)
評価1と同様にして、各試料を冷蔵庫にて10℃で12時間冷却した。
ついで、冷却後の各試料をショーケース(サンヨー電機社製、「SAR-360FLG」)に入れ、4000Lxの照度で7日間、試料の上から連続光照射した。
光照射後の各試料について、官能評価した。官能評価は評価1と同様である。結果を表4に示す。
【0050】
(評価3)
評価1と同様にして、試験No.1と6の試料を冷蔵庫にて10℃で12時間冷却した。
ついで、冷却後の各試料をショーケースに入れ、4000Lxの照度で11日間および14日間、試料の上から連続光照射した。
光照射前と後の各試料について、光照射による風味劣化の指標物質であるヘキサナール(Hexanal)の濃度を液体クロマトグラフィー質量分析法(LCMS、Agilent Technologies社製、「SL」)にて測定し、そのピーク面積を求めた。その際の測定条件は、以下の通りである。また、これらの結果を図1に示す。
【0051】
(a)HPLC
・移動相 A;30mM CHCOONH
B;AcCN
A:B=20:80
・カラム SUPELCO Discovery HS C18
25cm×2.1mm、0.5um
・カラム流速 0.200ml/min
・カラム温度 40.0℃
・試料量 1.0μl
(b)検出器
・検出器 マススペクトロメータ
・イオン化モード API−ES
・極性 (−)
・検出モード SIM
【0052】
【表1】

【0053】
【表2】

【0054】
【表3】

【0055】
【表4】

【0056】
表3より光照射前の官能評価では、風味がよい試験No.の順に、2≦5≦4=1≦3≦6であった。一方、表4より光照射後の官能評価では、風味がよい試験No.の順に、6≦5≦3≦2=4<1であった。
<:記号の左が右より上位で統計的有意差がある。
≦:記号の左が右より上位であるが統計的な有意差はない。
【0057】
表3、4の結果より、ホイップクリームに光を照射する前は各試料に有意差はなかったが、光を照射すると試験No.1と4とで有意差が確認できた。
また、図1より、ヘキサナールのピーク面積は、試験No.1の場合、照射前(照射日数0日)が1692633、11日間照射後が8555622、14日間照射後が10089052であったのに対し、試験No.6の場合、照射前(照射日数0日)が1966778、11日間照射後が5360231、14日間照射後が5931036であった。この結果より、光照射前の試料のヘキサナールのピーク面積は同程度であったが、光を照射すると試験No.6の試料のヘキサナールのピーク面積は試験No.1の試料の50%程度であった。すなわち、試験No.6は試験No.1よりも風味劣化を抑制するという、良好な結果が得られることが認められた。
【0058】
以上より、トコフェロールとチャ抽出物に加え、酵素処理ルチン抽出物、没食子酸、ローズマリー抽出物からなる群より選ばれる1種以上を含むホイップクリーム(試験No.2〜6)は、酵素処理ルチン抽出物、没食子酸、ローズマリー抽出物からなる群より選ばれる1種以上を含まないホイップクリーム(試験No.1)よりも、光酸化による風味劣化防止の効果が高いといえる。
【0059】
[試験例2]
(1)目的
この試験は、ゼラチンの含有量を検討する目的で実施した。
【0060】
(2)試料の調製
<試験No.7〜12>
表5の配合割合に従って安定剤水溶液を調製した以外は、試験No.1と同様にして試料を調製した。
なお、試験No.7〜12で用いた各成分は、試験No.1〜6と同じである。
【0061】
(3)評価方法
試験例1と同様にして、得られた各試料について「風味評価(評価1、2)」を行った。評価1の結果を表6に、評価2の結果を表7にそれぞれ示す。
【0062】
【表5】

【0063】
【表6】

【0064】
【表7】

【0065】
表6より光照射前の官能評価では、風味がよい試験No.の順に、8≦11≦7≦9≦10=12であった。一方、表7より光照射後の官能評価では、風味がよい試験No.の順に、10≦9<12≦8≦7=11であった。
<:記号の左が右より上位で統計的有意差がある。
≦:記号の左が右より上位であるが統計的な有意差はない。
【0066】
表6、7の結果より、ホイップクリームに光を照射する前は各試料に有意差はなかったが、光を照射すると試験No.9と12とで有意差が確認できた。
具体的には、ゼラチンの含有量が少ない試験No.7と8では、光照射によって酸化反応が進行し、風味劣化を感じやすかった。また、ゼラチンの含有量が試験No.11と12では、食感が重く感じられた。
【0067】
以上より、ゼラチンの含有量が0.3〜1.0質量%の範囲内にあるホイップクリーム(試験No.9〜10)は、ゼラチンの含有量が0.3質量%未満のホイップクリーム(試験No.7〜8)、およびゼラチンの含有量が1.0質量%超のホイップクリーム(試験No.11〜12)よりも、光酸化による風味劣化防止の効果が高いといえる。
【0068】
[試験例3]
(1)目的
この試験は、保型性を高める物質の種類を検討する目的で実施した。
【0069】
(2)試料の調製
<試験No.13〜19>
表8の配合割合に従って安定剤水溶液を調製した以外は、試験No.1と同様にして試料を調製した。
なお、試験No.13〜19で用いた各成分は、試験No.1〜6と同じである。また、寒天、発酵セルロース、および乾燥こんにゃく加工品は以下のものである。
寒天(三栄源エフ・エフ・アイ社製、「ウルトラ寒天イーナ」)、発酵セルロース(三栄源エフ・エフ・アイ社製、「サンアーティスト」)、乾燥こんにゃく加工品(三栄源エフ・エフ・アイ社製、「サンスマート」)。
【0070】
(3)評価方法
<外観評価>
(評価3:冷却前(ホイップクリーム調製後))
得られた各試料について、外観を評価した。
外観の評価は、順位法の検定表を用いる方法(「おいしさを測る−食品官能検査の実際−」、p28、古川秀子著、幸書房、1994年)に基づき、10人の審査員に外観のよい順に試料に順位をつけさせ、各試料の順位合計を求め、各試料間の順位合計差の絶対値を求め、その数値から順位法の検定表から有意水準を判定した。結果を表9に示す。
【0071】
(評価4:冷却後(10℃×14日間))
評価1と同様にして、各試料を冷蔵庫にて10℃で冷却した。ただし、冷却時間は14日間とした。冷却後の各試料について、評価3と同様にして外観を評価した。結果を表10に示す。
【0072】
【表8】

【0073】
【表9】

【0074】
【表10】

【0075】
表9より冷却前の外観評価では、外観がよい試験No.の順に、17≦13≦14≦15=16≦19≦18であった。一方、表10より冷却後の外観評価では、外観がよい試験No.の順に、18≦17<19≦15=16≦14≦13であった。
<:記号の左が右より上位で統計的有意差がある。
≦:記号の左が右より上位であるが統計的な有意差はない。
【0076】
表9、10の結果より、ホイップクリームの調製後(冷却前)は各試料に有意差はなかったが、14日間冷却すると試験No.17と19とで有意差が確認できた。
以上より、ゼラチンに加え、水あめと、寒天および/または発酵セルロースとを含むホイップクリーム(試験No.17〜18)は、水あめ、寒天、発酵セルロースのいずれか1つを含むホイップクリーム(試験No.14〜16)や、水あめ、寒天、発酵セルロースを含まないホイップクリーム(試験No.13、19)よりも、保型性付与効果が高いといえる。特に、ゼラチンに加え、水あめと発酵セルロースとを含むホイップクリーム(試験No.18)は、ひび割れの数が最も少ないことが、視覚的に確認できた。
なお、試験No.19は、ゼラチンに加え、保型性を高める物質として汎用的に用いられる乾燥こんにゃく加工品を用いた例であるが、試験No.17〜18で得られたホイップクリームの方が保型性に優れることが分かった。
【0077】
[試験例4]
(1)目的
この試験は、ホイップクリームの製造方法を検討する目的で実施した。なお、試料としては、試験例3の試験No.18で調製した試料と、以下に示す試験No.20で調製した試料とを用いる。
【0078】
(2)試料の調製
<試験No.20>
表11の配合割合に従って各成分を混合して溶解し、混合溶液を調製した。ついで、この混合溶液を70℃に加温した後、冷却部とホモジナイザーを内蔵するプレート式UHT殺菌機(森永乳業社製、「MAU」)で、殺菌温度132℃、保持時間2秒の条件で殺菌した。ついで、冷却部にて80℃まで冷却した後、ホモジナイザーで1段目4.0MPa、2段目1.0MPaの条件で均質化した。その後、冷却部にて5℃まで冷却し、さらに5℃で12時間のエージングを行った。ついで、5℃の条件で卓上ホイッパー(森永乳業社製、「MOホイッパー」)を用いてホイップし、ホイップクリーム(試料)を得た。
なお、試験No.20で用いた各成分は、試験No.1〜6と同じである。また、発酵セルロースは以下のものである。
発酵セルロース(三栄源エフ・エフ・アイ社製、「サンアーティスト」)。
【0079】
(3)測定方法および評価方法
<オーバーランの測定>
試験例1と同様にして、オーバーランの測定を行った。結果を表12に示す。
なお、試験No.18で調製した試料については、オーバーランの値が220%になるのに要した時間を測定した。また、試験No.18は、原料液:安定剤水溶液=85:15の割合で混合するため、オーバーランの値の85%が、ホイップクリーム当たりのオーバーランの値となる。ホイップクリーム当たりのオーバーランの値をカッコ内に示す。
一方、試験No.20で調製した試料については、ホイップが完了するのに要した時間と、そのときのオーバーランの値を測定した。
【0080】
<造花性の評価>
各試料について、市販のホイップクリーム絞り機を用いて花形に造花したときの外観の様子を目視観察し、以下の基準にて評価した。結果を表12に示す。
○:形が崩れず、ツノが立っていた。
×:形が崩れた。
【0081】
【表11】

【0082】
【表12】

【0083】
表12の結果より、試験No.18はホイップクリーム当たりのオーバーランの値が187であり、高いオーバーランを確保できた。また、造花性も良好であった。
一方、試験No.20は試験No.18よりも長い時間ホイップを続けたにもかかわらず、オーバーランの値が140と低かった。なお、試験No.20について6分以上ホイップを行ってみたが、オーバーランの値は変化しなかった。また、造花性にも劣っていた。
【0084】
以上より、原料液と安定剤水溶液とを別々に殺菌し、ついで殺菌された原料液を単独でホイップした後に、この原料液と殺菌された安定剤水溶液とを混合して調製したホイップクリーム(試験No.18)は、全ての成分を一括して混合、殺菌、ホイップして調製したホイップクリーム(試験No.20)よりも、ホイップクリームを造花させるための高いオーバーランを確保できることが確認でき、保型性に優れるといえる。
【0085】
[実施例1、2]
<ホイップクリームの調製>
まず、表1の配合割合に従って各成分を混合して溶解し、原料液を調製し、試験No.1と同様にして原料液をホイップした。ただし、原料液をホイップする際はオーバーランの値が200%になるまでとした。
別途、表13の配合割合に従って各成分を混合して溶解し、安定剤水溶液を調製した。ついで、この安定剤水溶液をプレート式UHT殺菌機(森永乳業社製、「MAU」)で、殺菌温度130℃、保持時間2秒の条件で殺菌し、その後、45℃に冷却した。
続いて、先にホイップした原料液と、殺菌して冷却した安定剤水溶液とを、原料液:安定剤水溶液の質量比が85:15になるように混合し、ホイップクリームを得た。
実施例1で得られたホイップクリームはカスタードプリン用として、実施例2で得られたホイップクリームはコーヒーゼリー用として、それぞれ用いて評価した。
【0086】
なお、実施例1、2で用いた各成分は、試験No.1〜6と同じである。また、発酵セルロース、インスタントコーヒー、アラビアガム、ローカストビーンガム、タマリンド色素、クリームフレーバー、および消泡剤(シリコーン)は以下のものである。
発酵セルロース(三栄源エフ・エフ・アイ社製、「サンアーティスト」)、インスタントコーヒー(味の素ゼネラルフーヅ社製、「インスタントコーヒー」)、アラビアガム(三栄薬品貿易社製、「アラビックコール」)、ローカストビーンガム(太陽化学社製、「ネオソフト」)、タマリンド色素(三栄源エフ・エフ・アイ社製、「サンブラウン」)、クリームフレーバー(三栄源エフ・エフ・アイ社製、「クリームフレーバー」)、消泡剤(信越化学工業社製、「シリコーン」)。
【0087】
<デザートの作製1:カスタードプリン>
表14の配合割合に従って、各成分を混合溶解して調製したカスタードプリン液を、プレート式UHT殺菌機(森永乳業社製、「MAU」)で、殺菌温度130℃、保持時間2秒の条件で殺菌し、その後、60℃に冷却した。
ついで、殺菌および冷却したカスタードプリン液を、カップ充填機(トーワテクノ社製、「MTYパッカー」)を用いて透明プラスチックカップ(大日本印刷社製、「PPカップ」)に100g充填し、冷蔵庫にて10℃で固化させた。
固化したカスタードプリンに、実施例1で得られたホイップクリームを20g充填した。これに透明プラスチックフィルム(東洋アルミニウム社製、「PET蓋フィルムロール」)を被せ、ヒートシール装置(サニーパッケージ社製、「オートカップシーラー」)でシールし、冷蔵庫にて10℃で冷却して、ホイップクリームをデコレーションしたプリン(デザート)を作製した。
【0088】
<デザートの作製2:コーヒーゼリー>
表14の配合割合に従って各成分を混合溶解してコーヒーゼリー液を調製した。このコーヒーゼリー液を、デザートの作製1で調製したカスタードプリン液と同様にして冷蔵庫にて10℃で固化させた。
固化したコーヒーゼリーに、実施例2で得られたホイップクリームを20g充填した以外は、カスタードプリンと同様にして冷蔵庫にて10℃で冷却して、ホイップクリームをデコレーションしたコーヒーゼリー(デザート)を作製した。
【0089】
なお、カスタードプリン液、およびコーヒーゼリー液で用いた各成分は、試験No.1〜6と同じである。また、寒天、エッグソース、インスタントコーヒー、プリンフレーバー、およびコーヒーフレーバーは以下のものである。
寒天(伊那食品工業社製、「寒天」)、エッグソース(太陽化学社製、「エッグソース」)、インスタントコーヒー(味の素ゼネラルフーヅ社製、「インスタントコーヒー」)、プリンフレーバー(小川香料社製、「プリンフレーバー」)、コーヒーフレーバー(長谷川香料社製、「コーヒーフレーバー」)。
【0090】
【表13】

【0091】
【表14】

【0092】
実施例1、2で得られたホイップクリームを充填した各デザートは、ショーケース(サンヨー電機社製、「SAR-360FLG」)に入れ、4000Lxの照度で7日間、デザートの上から連続光照射しても、風味劣化が少なかった。
また、これら各デザートは、10℃の冷蔵庫に14日間保存しても、ホイップクリームのひび割れが少なく、保型性が向上していた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トコフェロールと、チャ抽出物と、酵素処理ルチン抽出物、没食子酸、ローズマリー抽出物からなる群より選ばれる1種以上と、ゼラチンと、油脂とを含有し、
前記ゼラチンの含有量が0.3〜1.0質量%であるホイップクリーム。
【請求項2】
水あめと、寒天および/または発酵セルロースとをさらに含有する請求項1に記載のホイップクリーム。
【請求項3】
トコフェロールと、チャ抽出物と、酵素処理ルチン抽出物、没食子酸、ローズマリー抽出物からなる群より選ばれる1種以上と、ゼラチンとを含む安定剤水溶液と、油脂を含む原料液とを別々に殺菌する殺菌工程と、
殺菌された原料液をホイップするホイップ工程と、
ホイップされた原料液と殺菌された安定剤水溶液とを混合する混合工程とを有するホイップクリームの製造方法。
【請求項4】
前記安定剤水溶液が、水あめと、寒天および/または発酵セルロースとをさらに含む請求項3に記載のホイップクリームの製造方法。


【図1】
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【公開番号】特開2011−152082(P2011−152082A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−15890(P2010−15890)
【出願日】平成22年1月27日(2010.1.27)
【出願人】(000006127)森永乳業株式会社 (269)
【Fターム(参考)】