説明

ホイップクリーム

【課題】耐酸性及び耐冷凍性に優れ、ホイップ状態のキメが細かく、保形性、保水性及び口溶けにも優れているホイップクリームを提供すること。
【解決手段】糖類9質量%以上40質量%以下、油脂20質量%以上35質量%以下、豆乳5質量%以上9質量%以下、レシチン0.13質量%以上0.20質量%以下、HLB10以上12以下のショ糖脂肪酸エステル0.04質量%以上0.40質量%以下及び水を含むホイップクリームである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホイップクリームに関する。
【背景技術】
【0002】
ホイップクリームは、菓子類やパン類などのトッピングやフィリングとして使用されているが嗜好の多様化によりホイップクリーム自体に酸味を付与することやヨールグトなどの酸味のある食材と共に使用されることがあり耐酸性のあるホイップクリームが求められている。
耐酸性を高めたホイップクリームの製造方法として、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びキトサンを含有する酸性ホイップドクリームの製造方法が知られている(例えば特許文献1参照)。
また、蛋白質1重量%以上10重量%以下を含有するホイップクリームであって、必須成分として水溶性ヘミセルロースを含有して成るホイップクリームが知られている(例えば特許文献2参照)。
また、取扱いの面では冷凍耐性のあるホイップクリームが求められており、油脂35重量%以上50重量%以下、ポリデキストロース2重量%以上20重量%以下、無脂乳固形分1重量%以上10重量%以下、及び乳化剤0.3重量%以上2重量%以下を含有することを特徴とする起泡性水中油型乳化組成物が知られている(例えば特許文献3参照)。
一方、ホイップクリームの原料として豆乳を使用することが知られており、(a)大豆無脂固形分を豆乳中に1.5重量%以上5重量%重量%以上含む豆乳50重量%以上70重量%以下と(b)乳化剤を油脂に対し、0.5重量%以上5重量%以下を含むところの融点が20℃以上40℃以下で固体脂肪数値が20以上65以下(10℃)、0以上30以下(30℃)である油脂50重量%以上30重量%以下とを混合、均質化してなる豆乳ホイップクリームが知られている(例えば特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−144660号公報
【特許文献2】特開平6−78704号公報
【特許文献3】特開平4−287654号公報
【特許文献4】特開昭60−153757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、耐酸性及び耐冷凍性に優れたホイップクリームを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は前記の目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、糖類、油脂、豆乳を特定量含み、乳化剤としてレシチン、ショ糖脂肪酸エステルを特定量含むホイップクリームは耐酸性及び耐冷凍性に優れ、ホイップ状態のキメが細かく、保形性、保水性及び口溶けにも優れていることを見出し、本発明を完成するに至った。
従って、本発明は、糖類9質量%以上40質量%以下、油脂20質量%以上35質量%以下、豆乳5質量%以上9質量%以下、レシチン0.13質量%以上0.20質量%以下、HLB10以上12以下のショ糖脂肪酸エステル0.04質量%以上0.40質量%以下及び水を含むホイップクリームである。
【発明の効果】
【0006】
本発明のホイップクリームは、耐酸性及び耐冷凍性に優れ、ホイップ状態のキメが細かく、保形性、保水性及び口溶けにも優れている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は最適な硬さ・状態(ソフトピーク)のホイップ状態を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において使用する糖類は、従来ホイップクリームに使用されていた糖類であれば種類は特に限定されず、例えば、ショ糖、果糖、ブドウ糖、ソルビトール、乳糖又は麦芽糖などが使用できる。
オリゴ糖など二糖類よりも分子量の大きな物は凝固点降下作用が低下し冷凍耐性が劣るので好ましくない。
本発明において使用する糖類の配合量は、9質量%以上40質量%以下である。
糖類の配合量が9質量%未満では、解凍時に油脂及び油溶性成分と水及び水溶性成分が分離を起こし、それがホイップ前原液の場合、ホイップ不可能となり、またホイップ後の場合、分離した油脂及び油溶性成分により食感が悪くなる。
糖類の配合量が40質量%を超えると、甘みが強くなりすぎ、好ましい食味のホイップとならない。
【0009】
本発明において使用する油脂は、従来ホイップクリームに使用されていた油脂であれば種類は特に限定されず、例えば、ヤシ油、パーム油、パーム核油が使用できる。
ホイップ後のホイップクリームの食味、保形性の面で融点が38℃以上のパーム核油が好ましい。
油脂の配合量は20質量%以上35質量%以下である。
油脂の配合量が20質量%未満では、乳化が安定しない。
油脂の配合量が35質量%を超えると、乳化が安定しない他、粘度が高くなり製造が困難になる。
【0010】
本発明において使用する豆乳の配合量は5質量%以上9質量%以下である。
本発明のホイップクリームには豆乳以外の蛋白質、例えば乳由来の蛋白は耐酸性が低く使用できず、豆乳の代わりに粉末大豆蛋白を使用した場合は、ホイップした製品の離水が多くなり本発明の効果を得ることができない。
豆乳の配合量が5質量%未満ではホイップした後の保形性が悪く、無添加とすると乳化が安定せず製造困難となる。
豆乳の配合量が9質量%を超えると、粘度が上昇し製造困難となる。
【0011】
本発明では乳化を安定させるため、水相、油相それぞれに乳化剤を添加する。
本発明において使用する乳化剤はレシチン及びHLB10以上12以下のショ糖脂肪酸エステルでありこれ以外の乳化剤の組み合わせは本発明の効果を十分得ることができず使用できない。
本発明において使用するレシチンの配合量は0.13質量%以上0.20質量%以下である。
レシチンの配合量が0.13質量%未満では、乳化が安定せず、レシチンの配合量が9質量%を超えると、ホイップした後の保形性が悪くなる。
本発明において使用するHLB10以上12以下のショ糖脂肪酸エステルの配合量は0.04質量%以上0.40質量%以下である。
HLB10以上12以下のショ糖脂肪酸エステルの配合量が0.04質量%未満では、乳化が安定せず、HLB10以上12以下のショ糖脂肪酸エステルの配合量が0.40質量%を超えると、ホイップした後の保形性が悪くなる。
【0012】
本発明のホイップクリームには、必要に応じて塩、香料、安定剤など従来のホイップクリームに使用されている副資材を配合して使用することができる。
【0013】
本発明のホイップクリームは、水溶性の原料と油溶性の成分を別々に60〜65℃程度の温度で加熱溶解し、これを混合攪拌して予備乳化を行ったあと加熱殺菌しホモジナイザー処理を行うことで得ることができる。
得られたホイップクリームは10℃以下を目安に冷却し5℃程度でエージングを行い容器に充填し、冷蔵又は冷凍して保管、流通することができる。
【0014】
本発明のホイップクリームは、従来のホイップクリームと同様に使用でき、例えば、菓子類やパン類などのトッピングやフィリングとして使用することができる。
耐酸性があるので酸味のある食材を混合して使用することが出来、さらにそれを冷凍保管することができる。
【実施例】
【0015】
以下本発明を実施例により具体的に説明する。
[実施例1〜3、比較例1〜2]糖配合量
表1に示す配合割合で、水、D−ソルビトール水溶液(糖含有量70質量%)、豆乳(又は粉末大豆蛋白)、アルギン酸ナトリウム、ショ糖脂肪酸エステル(HLB11)及び塩とパーム核油(融点38℃)及びレシチンを別々に加熱溶解し、それぞれが60℃となったところで混合し、香料を加えた後、さらに85℃まで加熱し、圧力式ホモジナイザー(圧力100kg/cm)を使用して乳化し、直ちに10℃までプレート式熱交換器にて冷却した後、凍結庫(温度マイナス18℃)で凍結保管しホイップクリームを得た。
1日後、7℃で解凍し、ホイッパー付き卓上ミキサーにてホイップした。
ホイップ終了は目視にてボールからホイッパーを引き抜いた時に角がしっかりとし、あまり尾を引かない状態を基準として最適な硬さ・状態(ソフトピーク)を判断して決めた。
ホイップ終了状態を図1に示す。
ホイップした後、pH2のクエン酸水溶液をホイップクリーム100質量部に対し10質量部スプーンで混合して加えマイナス18℃の凍結庫内にて冷凍し、1日後、25℃で解凍し、その後38℃、相対湿度80%で4時間保管した後、以下の基準で10人のパネラーにより評価を行った。
保形性、保水性
5点 形を保ち、水分の分離がほとんど無く非常に良い
4点 ほぼ形を保ち、水分の分離がかなり少なく良い
3点 やや形が崩れ、若干水分の分離が認められ普通
2点 形が崩れ、水分の分離が認められて劣る
1点 原型を留めないほど崩れ、多くの水分の分離が認められて非常に劣る
食感
5点 甘みも適度かつ、なめらかで口溶けが良く、非常に良い
4点 甘みが若干強いが、なめらかで口溶けが良く、良い。
3点 甘みがやや強いが、なめらかで口溶けが良く、普通
2点 甘みが強すぎる、または口溶けが悪く、劣る
1点 甘みが非常に強い、または口溶けが非常に悪く、非常に劣る
得られた評価結果(パネラーによる評価の合計点)を表1に示す。
【0016】
【表1】

【0017】
糖配合量が9質量%より少ないと保形性、保水性及び食感ともに悪かった。
また、糖配合量が40質量%より多いと保形性、保水性は優れていたが甘みが強すぎて食感が悪かった。
【0018】
[実施例4〜6、比較例3〜4]油脂配合量
実施例1において、配合割合を表2に示す配合割合に変更し評価基準を以下のとおり変更した以外は実施例1と同様にして評価を行った。
保形性、保水性
5点 形を保ち、水分の分離がほとんど無く非常に良い
4点 ほぼ形を保ち、水分の分離がかなり少なく良い
3点 やや形が崩れ、若干水分の分離が認められ普通
2点 形が崩れ、水分の分離が認められて劣る
1点 原型を留めないほど崩れ、多くの水分の分離が認められて非常に劣る
食感
5点 なめらかで口溶けが良く、非常に良い
4点 ややなめらかで口溶けが良く、良い 。
3点 口溶けが良く、普通
2点 口溶けが悪く劣る
1点 口溶けが悪く非常に劣る
得られた評価結果(パネラーによる評価の合計点)を表2に示す。
【0019】
【表2】

【0020】
油脂配合量が20質量%より少ないと食感が悪く、保形性、保水性も悪かった。
また、油脂配合量が35質量%より多いと食感が悪く、保形性、保水性も悪かった。
【0021】
[実施例7〜8、比較例5〜8]豆乳配合量
実施例4において、配合割合を表3に示す配合割合に変更した以外は実施例4と同様にして評価を行った。
得られた評価結果(パネラーによる評価の合計点)を表3に示す。
【0022】
【表3】

【0023】
豆乳配合量が5質量%より少ないと保形性、保水性及び食感ともに悪かった。
また、豆乳配合量が9質量%より多くても保形性、保水性が悪く食感ともに悪かった。
粉末大豆たん白は保形性、保水性及び食感とも悪かった。
【0024】
[実施例9〜11、比較例9〜10]レシチン配合量
実施例4において、配合割合を表4に示す配合割合に変更した以外は実施例4と同様にして評価を行った。
得られた評価結果(パネラーによる評価の合計点)を表4に示す。
【0025】
【表4】

【0026】
レシチン配合量が0.13質量%より少ないと保形性、保水性及び食感ともにやや悪かった。
また、レシチン配合量が0.20質量%より多いと食感は優れているが保形性、保水性が悪かった。
【0027】
[実施例12〜14、比較例11〜12]ショ糖脂肪酸エステル配合量
実施例4において、配合割合を表5に示す配合割合に変更した以外は実施例4と同様にして評価を行った。
得られた評価結果(パネラーによる評価の合計点)を表5に示す。
【0028】
【表5】

【0029】
ショ糖脂肪酸エステル配合量が0.04質量%より少ないと保形性、保水性は普通だが食感がやや悪かった。
また、ショ糖脂肪酸エステル配合量が0.40質量%より多くても保形性、保水性及び食感ともにわずかに悪かった。
【0030】
[実施例15、比較例13〜32]乳化剤
実施例1において、レシチンを表6に示す低HLB乳化剤、ショ糖脂肪酸エステルを表6に示す高HLB乳化剤に変更した以外は実施例1と同様にしてホイップクリームを得て、1日後、7℃で解凍し、ホイッパー付き卓上ミキサーにてホイップしホイップ状態を以下の基準で評価した。
*1 ホイップするがソフトピークが現れず、コシが弱く不適。
*2 ホイップ後一時的にソフトピークが現れたが、数時間でダレてしまい不適。
*3 良好なホイップ
*4 ホイップ後数時間で離水が発生し不適。
得られた結果を表6に示す。
【0031】
【表6】

【0032】
大豆レシチン(HLB3.5)とショ糖脂肪酸エステル(HLB11)の組み合わせが好ましいホイップとなった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
糖類9質量%以上40質量%以下、油脂20質量%以上35質量%以下、豆乳5質量%以上9質量%以下、レシチン0.13質量%以上0.20質量%以下、HLB10以上12以下のショ糖脂肪酸エステル0.04質量%以上0.40質量%以下及び水を含むホイップクリーム。

【図1】
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【公開番号】特開2011−83205(P2011−83205A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−236854(P2009−236854)
【出願日】平成21年10月14日(2009.10.14)
【出願人】(000231637)日本製粉株式会社 (144)
【Fターム(参考)】