説明

ホウ素含有化合物およびこれを用いたリポソーム

【課題】安定した小胞体を形成し、血中滞留性および生体安全性に優れ、リポソーム膜層に高濃度に取り込まれるホウ素含有化合物ならびにこれを用いたリポソームを提供する。
【解決手段】下記式(1):



(式中、RおよびRは同一または異なって、炭素数6〜24のアルキル基またはアルケニル基を有するカルボニル基を示す。)
で表わされる構造を有する化合物またはその塩。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌などの標的細胞・組織を認識しホウ素化合物を選択的に集積させることができ、ドラッグキャリアーとして有用なホウ素含有化合物およびこれを用いたリポソームに関する。
【背景技術】
【0002】
癌の中性子捕捉療法(BNCT)は、ホウ素(ボロン)化合物をがん細胞に集積させ、そこに熱中性子を照射して局所的にがん細胞を破壊する治療法で、その多くはボロカプテイト(BSH:borocaptate sodium)やパラボロノフェニルアラニン(BPA:p−boronophenylalaine)等のボロン化合物をリポソームに内封して行われている。しかし、これらの方法では、ボロン化合物をリポソームに高濃度に内封するという操作が必要であり、効率やコスト面から問題が多いのが実状である。
【0003】
また、リポソームにボロンを内封するよりもリポソームの脂質二重膜内にボロンを取り込むことにより、腫瘍細胞組織へボロンを選択的に集積させることができ、癌の中性子捕捉療法にとって有効であることが知られている(たとえば、非特許文献1、2参照)。
【0004】
先に、下記一般式(A)で表されるボロン化合物が小胞体を作り、また膜構成成分の一部として、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)とリポソーム膜を形成することが知られている(たとえば、非特許文献3〜8参照)。しかしながら、小胞の安定性やリポソーム膜層のボロン濃度が十分ではなかった。
【0005】
【化1】

【0006】
さらに、リポソームの二分子膜へニドカルボランをホウ素源として導入したホウ素イオンクラスター型脂質が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。しかしながら、上記ニドカルボランを用いた場合、人体等の細胞への毒性が問題となりうることが判明した。
【0007】
【非特許文献1】Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1995,92,1367−1370
【非特許文献2】Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1998,95,2531−2534
【非特許文献3】Angew.Chem.,Int.Ed.Engl.1993,32,950−984
【非特許文献4】Chem.Rev.1998,98,1515−1562
【非特許文献5】Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1999,96,238−241
【非特許文献6】J.Med.Chem.1997,40,2825−2830
【非特許文献7】Bull.Chem.Soc.Jpn.2000,73,231−235
【非特許文献8】Chem.Pharm.Bull.2000,48,1034−1038
【特許文献1】特開2005−343858号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明の目的は、安定した小胞体を形成し、血中滞留性および生体安全性に優れ、リポソーム膜層に高濃度に取り込まれるホウ素含有化合物ならびにこれを用いたリポソームを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成すべく、脂質誘導体に着目して鋭意研究を重ねた結果、以下に示すホウ素含有化合物を用いることにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の化合物またはその塩は、下記式(1):
【化2】


(式中、RおよびRは同一または異なって、炭素数6〜24のアルキル基またはアルケニル基を有するカルボニル基を示す。)
で表わされる構造を有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明のリポソームは、上記式(1)で表されるホウ素含有化合物またはその塩を膜構成成分として含有することを特徴とする。
【0012】
本発明によると、実施例の結果に示すように、上述の特定の含ホウ素化合物(含ホウ素脂質)またはその塩を膜構成成分として用いたリポソームは、そのリポソームの脂質二重膜内に高濃度のボロンが取り込まれ、膜安定性、血中滞留性および生体安全性に優れたものとなる。さらに、上記リポソームは、腫瘍細胞組織へボロンを選択的に集積させることができることから、癌中性子捕捉療法剤として特に有用である。
【0013】
また、上記膜構成成分には上記化合物または塩とは異なる他の脂質類を含んでいてもよい。また、他の脂質類を含む場合、上記化合物またはその塩と、前記脂質類との含有量の比率が、1:99〜99:1であることが好ましい。
【0014】
さらに、前記膜構成成分がポリアルキレングリコール修飾されていることが好ましい。かかるリポソームを用いることにより、血中滞留性をより確実に向上させることができる。
【0015】
また、本発明のリポソームにおいては、上記リポソームのホウ素濃度が1〜10000ppmとすることができる。
【0016】
さらに、上記リポソームには薬物等の化合物を適宜内包することができる。特に、このリポソームには抗癌剤や遺伝子類等を内封することもでき、ドラッグキャリアーとしても有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0018】
本発明の化合物またはその塩は、下記式(1):
【化3】


(式中、RおよびRは同一または異なって、炭素数6〜24のアルキル基またはアルケニル基を有するカルボニル基を示す。)
で表わされる構造を有することを特徴とする。
【0019】
上記式(1)中、RおよびRは同一または異なった炭素数6〜24のアルキル基またはアルケニル基を有するカルボニル基を示すが、炭素数8〜22のアルキル基またはアルケニル基を有することが好ましく、炭素数10〜20のアルキル基またはアルケニル基を有することがより好ましい。また、これらのアルキル基およびアルケニル基は分岐していてもよい。
【0020】
上記アルキル基またはアルケニル基としては、たとえば、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−テトラデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、オレイル基等があげられる。
【0021】
また、上記化合物(1)の塩としては、たとえば、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等があげられる。また、これらの塩におけるカチオン種は1種であってもよく、また2種以上を混合して含むものであってもよい。
【0022】
上記化合物(1)の製造は、公知の合成方法により行なうことができ、特に限定されるものではないが、たとえば下記反応式:
【化4】


(i)Bromoacetyl bromide、pyridine、THF、rt、4h、99.5%;
(ii)cat.TsOH、MeOH、rt、30min、38%;
(iii)RCOOH、cat.DMAP、DCC、CHCl、rt、16h、61−75%
【化5】


(iv)CHCN、70−80C、48h、85−87%;
(v)MeNOH、acetone、rt、30min、76−91%
で示す方法でまず化合物(5)を合成し、次いで化合物(1)を合成する手法などがあげられる。以下、上記合成法における各工程についてより具体的に説明する。
【0023】
ブロモエステル(3)は、キラルアルコール(2)の水酸基部位をブロモアセチルブロミドと処理して得られる。上記ブロモエステル化は、たとえば、キラルアルコール(2)をTHF(テトラヒドロフラン)、塩化メチレン、ジエチルエーテル、DMF(ジメチルフォルムアミド)、DMSO(ジメチルスルフォキシド)、ジクロロエタンなどの溶媒に溶解し、ピリジン、トリアチルアミン、炭酸セシウム、ジメチルアミノピリジン、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等の塩基存在下でブロモアセチルブロミドと0〜80℃で1〜72時間反応させることにより行うことができる。
【0024】
ジオール(4)は、ブロモエステル(3)のアセトニドを脱保護して得られる。上記脱保護反応は、たとえば、キラルアルコール(2)をメタノール、エタノール、IPA(イソプロパノール)、水、含水THFなどの溶媒に溶解し、パラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、塩酸、硫酸、酢酸等の酸触媒存在下で0〜80℃で5分〜72時間反応させることにより行うことができる。
【0025】
化合物(5)は、様々な脂肪酸とエステル化反応して得られる。上記エステル化反応は、たとえば、ジオール(4)と脂肪酸を塩化メチレン、THF(テトラヒドロフラン)、ジエチルエーテル、DMF(ジメチルフォルムアミド)、DMSO(ジメチルスルフォキシド)、ジクロロエタンなどの溶媒に溶解し、DMAP(N,N−ジメチルアミノピリジン)、DCC(N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド)等の触媒存在下で0〜80℃で1〜72時間反応させることにより行うことができる。
【0026】
上記脂肪酸としては、炭素数6〜24のアルキル基またはアルケニル基を有するカルボン酸が用いられるが、炭素数8〜22のアルキル基またはアルケニル基を有するカルボン酸であることが好ましく、炭素数10〜20のアルキル基またはアルケニル基を有するカルボン酸であることがより好ましい。また、これらのアルキル基およびアルケニル基は分岐していてもよい。
【0027】
上記アルキル基またはアルケニル基としては、たとえば、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−テトラデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、オレイル基等があげられる。
【0028】
上記脂肪酸としては、具体的には、たとえば、n−ヘキサン酸、n−ヘプタン酸、n−オクタン酸(カプリル酸)、n−ノナン酸(ペラルゴン酸)、n−デカン酸(カプリン酸)、n−ドデカン酸(ラウリン酸)、n−テトラデカン酸(ミリスチン酸)、n−ペンタデカン酸(ペンタデシル酸)、n−ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、n−ヘプタデカン酸(マルガリン酸)、n−オクタデカン酸(ステアリン酸)、n−ノナデカン酸(ツベルクロステリン酸)、n−イコサン酸(アラキジン酸)、n−ドコサン酸(ベヘン酸)、n−テトラコサン酸(リグノセリン酸)、n−ヘキサコサン酸(セロチン酸)、パルミトレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸などがあげられる。これらは単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0029】
化合物(7)は、化合物(5)とBSH化合物(6)とをカップリング反応して得られる。活性型のBSH化合物(6)は文献既知の方法(たとえば、Gabel,D.;Moller,D.;Harfst,S.;Rosler,J.;Ketz,H.Inorg.Chem.1993,32,2276−2278.)にしたがい合成できる。また、ホウ素10エンリッチのBSH化合物も同様の方法で合成できる。上記カップリング反応は、たとえば、化合物(5)とBSH化合物(6)をアセトニトリル、THF、プロピオニトリルなどの溶媒に溶解し、室温〜80℃で還流させ1〜72時間反応させることにより行うことができる。
【0030】
本発明のホウ素含有化合物またはその塩(1)は、化合物(7)をテトラメチルアンモニウムヒドロキシドなどと処理してBSH修飾型ホウ素イオンクラスター脂質である化合物(8)として得られる。上記反応は、たとえば、化合物(7)とテトラメチルアンモニウムヒドロキシドをアセトン、アセトニトリル、プロピオニトリルなどの溶媒に溶解し、0〜50℃で5分〜2時間反応させることにより行うことができる。
【0031】
上記各工程における各生成物の単離精製手段は、洗浄、抽出、再結晶法、各種クロマトグラフィー等を適宜組み合せて行なうことができる。
【0032】
上記各工程におけるより詳細な合成方法は、実施例に記載している。なお、上記反応式において、化合物(2)、BSH等の原料化合物はいずれも入手が容易な化合物である。
【0033】
また、上記メルカプトウンデカハイドロドデカボレート(BSH)は、ホウ素、水素およびイオウ原子から成る20面体のホウ素クラスター構造をとる。BSHは無機低分子化合物であるにもかかわらず、体積はベンゼン環より大きく、3つのホウ素原子が2つの電子を共有するいわゆるスリーセンターボンド構造をとり、電子が局在化した特異な構造をしている。本発明において、BSHは下記式(9)、
【化6】


または下記式(10)
【化7】


で表される。
【0034】
本発明の化合物(1)またはその塩は、単独で小胞体を形成するが、通常のリポソーム形成性脂質類に加え、リポソームの膜構成成分の一部として用いることもできる。
【0035】
リポソームの膜構成成分として他の脂質類を含む場合、上記化合物またはその塩と、前記脂質類との含有量の比率が、1:99〜99:1であることが好ましく、5:95〜75:25であることがより好ましく、10:90〜50:50であることがさらに好ましい。
【0036】
ここで、化合物(1)の他に、リポソームの膜構成成分として用いられる脂質類としては、たとえば、リン脂質、グリセロ糖脂質およびスフィンゴ糖脂質の他、これらの脂質に、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基または第4級アンモニウム基が導入されたカチオン性脂質、これらの脂質にポリアルキレングリコールが導入された脂質、さらに各種細胞、組織等に対するリガンドが結合した脂質類があげられる。これらの脂質類は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0037】
リン脂質としては、たとえば、ホスファチジルコリン(大豆ホスファチジルコリン、卵黄ホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン等)、ホスファチジルエタノールアミン(ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン等)、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、リゾホスファチジルコリン、スフィンゴミエリン、卵黄レシチン、大豆レシチン、水素添加リン脂質等の天然または合成のリン脂質等があげられる。
【0038】
グリセロ糖脂質としては、たとえば、スルホキシリボシルグリセリド、ジグリコシルジグリセリド、ジガラクトシルジグリセリド、ガラクトシルジグリセリド、グリコシルジグリセリド等があげられる。
【0039】
スフィンゴ糖脂質としては、たとえばガラクトシルセレブロシド、ラクトシルセレブロシド、ガングリオシド等があげられる。
【0040】
カチオン性脂質としては、たとえば、上記リン脂質、グリセロ糖脂質またはスフィンゴ糖脂質に、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、トリアルキルアンモニウム基、モノアシルオキシアルキル−ジアルキルアンモニウム基、ジアシルオキシアルキル−モノアルキルアンモニウム基等の第4級アンモニウム基が導入された脂質があげられる。
【0041】
さらに、前記膜構成成分がポリアルキレングリコール修飾されていることが好ましい。かかるリポソームを用いることにより、血中滞留性をより確実に向上させることができる。
【0042】
また、ポリアルキレングリコール修飾脂質としては、たとえば、上記リン脂質、グリセロ糖脂質、スフィンゴ糖脂質に、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が修飾した脂質、たとえばジ−C12−24アシル−グリセロール−ホスファチジルエタノールアミン−N−PEG等があげられる。
【0043】
さらに、必要に応じて、膜安定化剤として、たとえば、コレステロール類、抗酸化剤としてトコフェロール類、ステアリルアミン、ジセチルホスフェート、ガレグリオシドを用いてもよい。
【0044】
リポソームの製造には、公知のリポソームの調製方法を適用することができる。リポソームの調整方法としては、たとえば、バンガム(Bangham)らのリポソーム調製法[ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー(J.Mol.Biol.),13,238(1965)]、エタノール注入法[ジャーナル・オブ・セル・バイオロジー(J.Cell.Biol.),66,621(1975)]、フレンチプレス法[フェブス・レター(FEBS Lett.),99,210(1979)]、凍結融解法[アーカイブス・オブ・バイオケミストリー・アンド・バイオフィジックス(Arch.Biochem.Biophys.),212,186(1981)]、逆相蒸発法[プロシーディング・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ・ユー・エス・エー(Proc.Natl.Acad.Sci.USA),75,4194(1978)]等があげられる。
【0045】
また、本発明のリポソームにおいては、上記リポソームのホウ素濃度が1〜10000ppmとすることができるが、50〜500ppmとすることが好ましい。
【0046】
また、標的細胞、標的組織、標的病巣に対するリガンドとしては、トランスフェリン、葉酸、ヒアルロン酸、ガラクトース、マンノースなどの癌細胞に対するリガンド等があげられる。また、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体もリガンドとして使用できる。
【0047】
本発明のリポソームは、安定で、整体安全性に優れ、かつリポソーム膜上高濃度にボランを含有しているので、癌中性子捕捉療法剤として使用できる。また、本発明のリポソームの内部には、抗癌剤や遺伝子類等の薬物を含有させることもできる。これらの薬物を含有するリポソームは、化学療法剤としても、また癌中性子捕捉療法剤としても適宜使用できる。
【実施例】
【0048】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明する。当業者は本明細書の記載に基づいて容易に本発明に修飾、変更を加えることができ、それらは本発明の技術的範囲に含まれる。
【0049】
下記実施例において、化合物の分析および分離精製には以下の機種を用いて行った。
・NMRスペクトル:VARIAN社製、UNITY−INOVA400、400MHz。特に明記しない限り、内部標準としてTMSを用いた。また、下記ケミカルシフトはδ値で示した。
・カラムクロマトグラフィー:Merck社製、Kieselgel 70−230mesh。
・マススペクトル:エレクトロンスプレーイオン化(ESI)法により測定した。島津製作所社製、LCMS−2010EV。
・IRスペクトル:島津製作所社製、FTIR−8200A。
・ホウ素濃度測定:ICP−AES(誘導結合プラズマ発光分光分析)により測定した。堀場製作所社製、ULTIMA2。
【0050】
〔実施例1〕
(化合物(3)の合成)
(R)−(−)−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノール(0.12mL、10.0mmol)とピリジン(0.97mL、1.2eqiv)をTHF50mLに加えて撹拌した溶液に、ブロモアセチルブロミド(1.04mL、1.2eqiv)を0Cかで加えた。30分間反応温度を0℃に保ち、次いで反応混合物を室温までゆっくり暖めた。その後さらに4時間撹拌した後、セライトによるろ過で固体を除去し、ろ液を減圧下で濃縮し、フラッシュカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:1)で生成物である化合物(3)を精製した。生成物は無色の液状で、収率は99.5%であった。
・TLC:Rf=0.83(酢酸エチル:ヘキサン=1:1)。
・1H NMR(ppm、CDCl)δ:1.38(s、3H、CH)、1.45(s、3H、CH)、3.78(dd、2H、C−H=8.4Hz、C−C−H=6.0Hz、OCHCH)、3.89(s、2H、CHBr)、4.10(dd、2H、C−H=8.4Hz、C−C−H=6.4Hz、OCHCH)、4.19(dd、2H、C−H=11.4Hz、C−C−H=6.4Hz、CHCHOC(=O)CHBr)、4.26(dd、2H、C−H=11.4Hz、C−C−H=4.8Hz、CHCHOC(=O)CHBr)、4.33−4.38(m、1H、CH)。
・13C NMR(ppm、CDCl)δ:25.3、26.6、32.2、66.0、73.2、99.9、167.0。
【0051】
〔実施例2〕
(化合物(4)の合成)
化合物(3)(2.53g、10.0mmol)をメタノール20mlに溶かし、得られたメタノール溶液に触媒量のp−トルエンスルホン酸(0.17g、0.1equiv)を添加した。この反応混合物を室温下で30分間撹拌した。得られた溶液を乾燥するまで濃縮し、残渣を塩化メチレンに溶解した。無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、セライトでろ過した後、ろ液を減圧下で濃縮し、フラッシュカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=2:1)で生成物である化合物(4)を精製した。生成物は無色の液状で、収率は38%であった。
・TLC:Rf=0.47(酢酸エチル:ヘキサン=2:1)。
・1H NMR(ppm、CDCl)δ:3.65(dd、2H、C−H=11.2Hz、C−C−H=6.0Hz、HOCHCH)、3.75(dd、2H、C−H=12.2Hz、C−C−H=4.0Hz、HOCHCH)、3.88(s、2H、CHBr)、3.97−4.03(m、1H、CH)、4.25(dd、2H、C−H=11.4Hz、C−C−H=6.4Hz、CHCHOC(=O)CHBr)、4.31(dd、2H、C−H=11.6Hz、C−C−H=4.4Hz、CHCHOC(=O)CHBr)。
・13C NMR(ppm、CDCl)δ:25.8、63.1、66.6、69.7、167.7。
【0052】
〔実施例3〕
(化合物(5)の合成)
化合物(4)である3−O−ブロモアセチル−sn−グリセロール(0.64g、3.0mmol)およびN,N−ジメチルアミノピリジン(DMAP)(0.07g、0.2equiv)を乾燥した塩化メチレン50mlに添加し、その溶液を0℃下で撹拌した。次いでその溶液にN,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)(1.36g、2.2equiv)とカルボン酸(2.2equiv)を加え、得られた懸濁液を室温下で12時間撹拌した。セライトによるろ過で固体を除去し、ろ液を減圧下で濃縮し、フラッシュカラムクロマトグラフィー(展開溶液は各条件にて)で生成物である化合物(5)を精製した。
【0053】
(化合物(5a):3−O−ブロモアセチル−1,2−O−ジミリストリル−sn−3−グリセロールの合成)
化合物(5a)はカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:20)により精製した。化合物(5a)は白色粉体で、収率は61%であった。
・TLC:Rf=0.15(酢酸エチル:ヘキサン=1:20)。
・1H NMR(ppm、CDCl)δ:0.88(t、6H、C−C−H=6.4Hz、CH)、1.26(s、40H、CH)、1.59−1.63(m、4H、CHCHC(=O))、2.32(td、4H、C−H=8.0Hz、C−C−H=4.0Hz、CHC(=O))、3.84(s、2H、CHBr)、4.17(dd、2H、C−H=11.8Hz、C−C−H=6.0Hz、OCHCH)、4.26(dd、2H、C−H=12.0Hz、C−C−H=6.0Hz、BrCHC(=O)OCHCH)、4.31(dd、2H、C−H=12.0Hz、C−C−H=4.4Hz、OCHCH)、4.41(dd、2H、C−H=11.8Hz、C−C−H=4.4Hz、BrCHC(=O)OCHCH)、5.27−5.34(m、1H、CH)。
・13C NMR(ppm、CDCl)δ:14.1、22.7、24.8、25.2、29.0、29.1、29.2、29.4、29.5、29.6、29.7、31.9、33.9、34.0、61.8、63.9、71.2、166.8、172.9、173.2。
【0054】
(化合物(5b):3−O−ブロモアセチル−1,2−O−ジパルミトイル−sn−3−グリセロールの合成)
化合物(5b)はカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:20)により精製した。化合物(5b)は白色粉体で、収率は73%であった。
・TLC:Rf=0.15(酢酸エチル:ヘキサン=1:20)。
・1H NMR(ppm、CDCl)δ:0.88(t、6H、C−C−H=6.8Hz、CH)、1.26(s、48H、CH)、1.61−1.63(m、4H、CHCHC(=O))、2.32(td、4H、C−H=7.6Hz、C−C−H=4.0Hz、CHC(=O))、3.84(s、2H、CHBr)、4.17(dd、2H、C−H=12.0Hz、C−C−H=6.0Hz、OCHCH)、4.26(dd、2H、C−H=12.0Hz、C−C−H=6.0Hz、BrCHC(=O)OCHCH)、4.31(dd、2H、C−H=12.0Hz、C−H=4.4Hz、OCHCH)、4.41(dd、2H、C−H=11.8Hz、C−C−H=4.4Hz、BrCHC(=O)OCHCH)、5.27−5.32(m、1H、CH)。
・13C NMR(ppm、CDCl)δ:14.1、22.7、24.8、25.2、29.0、29.1、29.2、29.4、29.5、29.6、29.7、31.9、33.9、34.0、34.1、61.8、63.9、71.2、166.8、172.9、173.2。
【0055】
(化合物(5c):3−O−ブロモアセチル−1,2−O−ジステアロイル−sn−3−グリセロールの合成)
化合物(5c)はカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:20)により精製した。化合物(5c)は白色粉体で、収率は75%であった。
・TLC:Rf=0.15(酢酸エチル:ヘキサン=1:20)。
・1H NMR(ppm、CDCl)δ:0.88(t、6H、C−C−H=6.8Hz、CH)、1.26(s、56H、CH)、1.58−1.65(m、4H、CHCHC(=O))、2.32(td、4H、C−H=7.6Hz、C−H=4.0Hz、CHC(=O))、3.84(s、2H、CHBr)、4.17(dd、2H、C−H=11.8Hz、C−C−H=6.0Hz、OCHCH)、4.26(dd、2H、C−H=12.0Hz、C−C−H=6.0Hz、BrCHC(=O)OCHCH)、4.31(dd、2H、C−H=12.0Hz、C−C−H=4.4Hz、OCHCH)、4.41(dd、2H、C−H=12.0Hz、C−C−H=4.0Hz、BrCHC(=O)OCHCH)、5.27−5.32(m、1H、CH)。
・13C NMR(ppm、CDCl)δ:14.1、22.7、24.8、25.2、29.0、29.1、29.2、29.3、29.4、29.5、29.6、29.7、31.9、33.9、34.0、34.1、61.8、63.9、68.5、166.8、172.8、173.2。
【0056】
〔実施例4〕
(化合物(7)の合成)
ホウ素10エンリッチのB1211SCHCHCN・2TMA(2−シアノエチルチオウンデカヒドロドデカボレート・ジテトラメチルアンモニウム)(6)(300mg、0.82mmol)を乾燥したアセトニトリル70mlに加えて得た溶液を室温下で撹拌し、上記溶液に粉末状の3−O−ブロモアセチル−1,2−O−ジアシル−sn−3−グリセロール(5)(1.2equiv)を加えた。次いで得られた懸濁液を70℃で1日撹拌した。反応混合物を減圧下で濃縮し、フラッシュカラムクロマトグラフィー(展開溶液は各条件にて)で生成物である化合物(7)を精製した。
【0057】
(化合物(7a):3−O−101211S(CHCHCN)−アセチル−1,2−O−ジミリストリル−sn−3−グリセロール・テトラエチルアンモニウム塩の合成)
化合物(7a)はカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=5:1)により精製した。化合物(7a)は白色粉体で、収率は75%であった。
・TLC:Rf=0.65(酢酸エチル:ヘキサン=5:1)。
【0058】
(化合物(7b):3−O−101211S(CHCHCN)−アセチル−1,2−O−ジパルミトリル−sn−3−グリセロール・テトラエチルアンモニウム塩の合成)
化合物(7b)はカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=5:1)により精製した。化合物(7b)は白色粉体で、収率は78%であった。
・TLC:Rf=0.67(酢酸エチル:ヘキサン=5:1)。
【0059】
(化合物(7c):3−O−101211S(CHCHCN)−アセチル−1,2−O−ジステアロイル−sn−3−グリセロール・テトラエチルアンモニウム塩の合成)
化合物(7c)はカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=5:1)により精製した。化合物(7c)は白色粉体で、収率は85%であった。
・TLC:Rf=0.68(酢酸エチル:ヘキサン=5:1)。
【0060】
〔実施例5〕
(化合物(8)の合成)
化合物(7)を室温下で最小量のアセトンに溶解した。次いでテトラメチルアンモニウムヒドロキシドのメタノール溶液(25重量%)を当量になるように加えた。化合物(8)を再沈殿させ、ろ別し、乾燥したアセトンで数回洗浄し、減圧下で乾燥した。
【0061】
(化合物(8a):3−O−101211S−アセチル−1,2−O−ジミリストリル−sn−3−グリセロール・2テトラエチルアンモニウム塩の合成)
化合物(8a)は白色粉体で、収率は76%であった。
・MS(ESI、negative):(M/2=358.5)。
・Mp:228−230℃。
・IR(KBr pellet、cm−1):ν(C=O)1734、ν(B−H)2496、ν(C−H)2853、2922、2957。
H NMR(ppm、CDCN)δ:0.88(t、6H、C−C−H=6.8Hz、CH)、1.27(s、40H、CH)、1.52−1.62(m、4H、CHCHC(=O))、1.94(td、4H、C−H=3.6Hz、C−C−H=2.4Hz、CHC(=O))、2.27(dd、2H、C−H=6.4Hz、C−C−H=2.8Hz、OCHCH)、2.31(dd、2H、C−H=7.6Hz、C−C−H=2.8Hz、OCHCH)、3.09(s、24H、NCH)、3.16(s、2H、CHBr)、4.13(dd、2H、C−H=10.6Hz、C−C−H=6.4Hz、BrCHC(=O)OCHCH)、4.29(dd、2H、C−H=12.0Hz、C−C−H=3.6Hz、BrCHC(=O)OCHCH)、5.18−5.22(m、1H、CH)。
13C NMR(ppm、CDCN)δ:14.1、23.1、25.4、29.5、29.7、29.8、30.0、30.1、32.4、34.4、35.4、55.9、56.0、56.1、62.6、62.8、69.7、173.4、173.5、173.7。
【0062】
(化合物(8b):3−O−101211S−アセチル−1,2−O−ジパルミトイル−sn−3−グリセロール・2テトラエチルアンモニウム塩の合成)
化合物(8b)は白色粉体で、収率は81%であった。
・MS(ESI、negative):(M/2=386.4)。
・Mp:219−221℃。
・IR(KBr pellet、cm−1):ν(C=O)1736、ν(B−H)2494、ν(C−H)2851、2920、2957。
H NMR(ppm、CDCN)δ:0.88(t、6H、C−C−H=6.8Hz、CH)、1.27(s、48H、CH)、1.49−1.61(m、4H、CHCHC(=O))、1.94(td、4H、C−H=3.6Hz、C−C−H=2.4Hz、CHC(=O))、2.27(dd、4H、C−H=7.4Hz、C−C−H=2.8Hz、OCHCH)、2.30(dd、2H、C−H=7.4Hz、C−C−H=2.8Hz、OCHCH)、3.10(s、24H、NCH)、3.17(s、2H、CHBr)、4.13(dd、2H、C−H=11.6Hz、C−C−H=6.8Hz、BrCHC(=O)OCHCH)、4.29(dd、2H、C−H=12.2Hz、C−C−H=3.6Hz、BrCHC(=O)OCHCH)、5.17−5.22(m、1H、CH)。
13C NMR(ppm、CDCN)δ:14.1、23.1、25.4、29.4、29.5、29.7、29.8、30.0、30.1、32.4、34.5、35.4、55.9、56.0、56.1、62.6、62.8、69.7、173.4、173.5、173.7。
【0063】
(化合物(8c):3−O−101211S−アセチル−1,2−O−ジステアロイル−sn−3−グリセロール・2テトラエチルアンモニウム塩の合成)
化合物(8c)は白色粉体で、収率は91%であった。
・MS(ESI、negative):(M/2=414.6)。
・Mp:215−217℃。
・IR(KBr pellet、cm−1):ν(C=O)1736、ν(B−H)2494、ν(C−H)2851、2920、2957。
H NMR(ppm、CDCN)δ:0.88(t、6H、C−C−H=6.8Hz、CH)、1.27(s、56H、CH)、1.52−1.61(m、4H、CHCHC(=O))、1.94(td、4H、C−H=3.6Hz、C−C−H=2.4Hz、CHC(=O))、2.27(dd、2H、C−H=5.2Hz、C−C−H=2.4Hz、OCHCH)、2.31(dd、2H、C−H=7.6Hz、C−C−H=2.8Hz、OCHCH)、3.09(s、24H、NCH)、3.16(s、2H、CHBr)、4.13(dd、2H、C−H=11.6Hz、C−C−H=6.4Hz、BrCHC(=O)OCHCH)、4.29(dd、2H、C−H=12.2Hz、C−C−H=3.6Hz、BrCHC(=O)OCHCH)、5.16−5.24(m、1H、CH)。
13C NMR(ppm、CDCN)δ:13.2、22.2、28.6、28.7、28.8、28.9、29.0、31.5、33.5、33.6、55.0、55.1、55.2、61.6、61.7、61.9、68.8、172.5、172.6、172.9。
【0064】
〔実施例6〕
(BSH修飾型ホウ素イオンクラスターリポソームの合成)
DSPC(distearoylphosphatidylchorine;COATSOME MC−8080)、コレステロール、合成したBSH修飾型ホウ素イオンクラスター脂質(8a)を1:1−X:X(X=0、0.25、0.5、0.75、1)の比率で調整し、これら脂質を、クロロホルムとジイソプロピルエーテルの1:1溶液2mLに溶かした。カルセインを加え、得られたエマルジョンを1分間超音波に通した後、減圧下有機溶媒を溜去した。
【0065】
得られた脂質ゲルをエクストルーダーを用いて100nmのポリカーボネート膜を通してサイズを整え、超遠心(200,000xg)20分で精製し、PBS bufferに加え懸濁溶液とした。エクストルーダーによるサイジング前とサイジング後の粒形分布図を示す(図1〜図2)。
【0066】
粒形分布図(図1〜2)から分かるように、X=0.25、0.5ではサイジング前で200〜500nmでリポソームが形成されており、X=0.75では100nmと500nm、X=1では100nmと800nmに粒子系の極大分布が見られた。サイジング後にはすべてにおいて100nmに粒子形が整っていることが分かる。なお、ピークトップの値は、X=0.25の場合は115nm、X=0.5の場合は114nm、X=0.75の場合は114nm、X=1の場合は119nmであった。また、ピークの幅(分布幅)は、X=0.25の場合は42.1nm、X=0.5の場合は32.1nm、X=0.75の場合は40.5nm、X=1の場合は37.8nmであった。
【0067】
〔実施例7〕
(BSH修飾型ホウ素イオンクラスターリポソームの安定性試験)
上記実施例で合成したカルセイン封入ホウ素クラスターリポソームの安定性を調べた。血液中での安定性を調べるためのモデル実験として、血清中における封入されたカルセインの蛍光強度の変化を観測した。血清中に上で得られたカルセイン封入ホウ素クラスターリポソーム溶液を体積比で血清/ベシクル溶液=9/1になるように加え、37℃でマグネチックスターラーを用いて攪拌し、0〜24時間で各時間における蛍光強度(日本分光社製、V−550、測定条件;励起波長=490nm、蛍光測定波長=513nm)を測定した(図3〜4、◆プロット)。また、各時間におけるベシクル溶液の蛍光強度を測定後、Triton X−100でベシクルを破壊し、ベシクルからリリースされたカルセインの蛍光強度を同時に測定した(図3〜4、■プロット)。
【0068】
これらの結果から、BSH修飾型ホウ素イオンクラスター(8a)から調整したリポソームはすべての組成比(X=0〜1)においてリポソームは血清中で安定であることが分かった。また、各組成比のリポソームにおけるカルセインの封入量に関して比較すると、図5に示すようにBSH修飾型ホウ素イオンクラスター(8a)が25%(X=0.25)、50%(X=0.5)含むもので高い封入率が得られることが分かった。
【0069】
〔実施例7〕
(PEG修飾型ホウ素イオンクラスターリポソームの合成)
マクロファージからの貪食から逃れ高い血中滞留性を維持することは、EPR効果をあげる上で、リポソームを用いたドラッグデリバリーには重要である。この目的のため、PEG修飾型リポソームを合成し、その細胞成長阻害について調べた。
【0070】
DMPC(dimyristoylphosphatidylchorine)、コレステロール、合成したBSH修飾型ホウ素イオンクラスター(8b)、DSPE−PEG−OMe(distearoylphosphatidylethanolamine−polyethyleneglycol−OMe;DSPE−020C)、を1:1−X:X:0.11(X=0、0.25、0.5)の比率で調整し、エクストルーダーでサイジング後、得られたホウ素クラスターリポソームをPBS bufferに懸濁した。得られたリポソーム溶液をICP−AESでそのホウ素濃度を測定したところ、それぞれ200ppm(X=0.25;理論値410ppm)、300ppm(X=0.5;理論値780ppm)であった。
【0071】
このリポソーム溶液が最高10%になるように細胞培地を調整した後、順次希釈し96ウェルディッシュにcolon26細胞に72時間接触させ、細胞増殖阻害を検討した。その結果を図6に示す。なお、図6にはn=4の結果(BL25%:BL25−1〜4)と対照(control:BL0%(X=0)のリポソーム)の結果を記載している。ホウ素クラスターリポソーム(X=0.25)は、ホウ素濃度20ppmの濃度で、ほとんど細胞毒性を示さなかった。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明のリポソームの粒径分布図。
【図2】本発明のリポソームの粒径分布図。
【図3】本発明のリポソームを用いたベシクル溶液の蛍光強度のグラフ。
【図4】本発明のリポソームを用いたベシクル溶液の蛍光強度のグラフ。
【図5】本発明のリポソームを用いたベシクル溶液の蛍光強度のグラフ。
【図6】本発明のリポソームを用いた細胞増殖阻害に関するグラフ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1):
【化1】


(式中、RおよびRは同一または異なって、炭素数6〜24のアルキル基またはアルケニル基を有するカルボニル基を示す。)
で表わされる構造を有する化合物またはその塩。
【請求項2】
請求項1記載の化合物またはその塩を膜構成成分として含有するリポソーム。
【請求項3】
さらに脂質類を膜構成成分として含有する請求項2に記載のリポソーム。
【請求項4】
請求項1記載の化合物またはその塩と、前記脂質類との含有量の比率が、1:99〜99:1である請求項3に記載のリポソーム。
【請求項5】
前記膜構成成分がポリアルキレングリコール修飾されている請求項2〜4のいずれかに記載のリポソーム。
【請求項6】
ホウ素濃度が1〜10000ppmである請求項2〜5のいずれかに記載のリポソーム。
【請求項7】
薬物が内封されている請求項2〜6のいずれかに記載のリポソーム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−13498(P2008−13498A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−186907(P2006−186907)
【出願日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(000162847)ステラケミファ株式会社 (81)
【出願人】(507206848)
【Fターム(参考)】