説明

ホエータンパク質組成物、方法及び使用

【課題】栄養補助食品又は栄養飲料のための高いレベルのタンパク質含量を有する、室温で長期安定な酸性及び中性のホエー組成物、これらの組成物の製造方法、並びにこのような組成物の使用方法を提供する。
【解決手段】少なくとも8g/100g〜13g/100g又は少なくとも90g/L〜143g/Lのタンパク質含量を有する、中性の室温で長期安定な経腸非ゲル化液体組成物であって、総タンパク質含量が、少なくとも90〜100%の非加水分解無傷ホエータンパク質からなり、少なくとも6.5〜7.5の範囲のpHを有し、少なくとも140kcal/100g超のエネルギー含量を有する組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は、栄養補助食品又は栄養飲料のための高いレベルのタンパク質含量を有する室温で長期安定な酸性及び中性のホエー組成物、これらの組成物の製造方法、並びにこのような組成物の機能性食品の製造における又は病中及び手術前後の栄養補助食品としての使用に関する。本発明は、医療目的だけでなく、スポーツ及び健康に気を使う人にも有用であり、適用できる栄養組成物に更に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]栄養補助食品又は栄養飲料は、十分な栄養素を摂取していない人を栄養的に完全な食餌となるように補助するために開発された。栄養補助食品は、病気により健康を損ねている人、手術又は抗癌治療からの回復期にある人、拒食症患者及び高齢者に提供される。栄養補助食品は、真剣な運動選手及び予防的健康の探求者にも有益で有用である。様々な形態の栄養補助食品が市販されており、これらの補助食品のタンパク質源は、カゼイネート及び大豆タンパク質分離物として、又はカゼインとホエータンパク質源との組合せのいずれかである。
【0003】
[0003]検討した市販の液体配合物製品中のタンパク質源の量は、Caカゼイネート、Naカゼイネート又はKカゼイネートの形態又は乳タンパク質濃縮物(MPC)由来のカゼインに起因する。ホエータンパク質等の他のタンパク質に基づく栄養補助食品も利用できる。実際に、無傷ホエータンパク質に基づく幾つかの室温で長期安定な液体配合物、例えばノバルティスリソース(Novartis'Resource)(登録商標)及びクリニュートレンフルーツ(Clinutren Fruit)(登録商標)が市販されている。
【0004】
[0004]病気、回復期及び拒食症の患者又は高齢者の治療に多くの有益な健康上の利益をもたらす理想的な栄養補助食品を提供するために、最高の生物価(BV−100%)を有する優れていると同時に良質なタンパク質を使用することが重要である。国連食糧農業機関/世界保健機関は、特定のタンパク質が必要な必須アミノ酸がどの程度提供するかを示す、「タンパク質消化吸収率補正アミノ酸スコア(PDCAAS)」と呼ばれるタンパク質の質を特定する優れた手段を提案した。卵タンパク質及び乳タンパク質(ホエータンパク質及びカゼイン)を評価した場合、卵タンパク質及び乳タンパク質は、それらの正味タンパク質利用率(NPU;体内に保留された窒素/消費された窒素)、生物価(BV;体内に保留された窒素/腸に吸収された窒素)及びタンパク質効率比(PER;重量増加/消費された窒素)により示されるように、最高品質のタンパク質であると思われる。しかし、乳タンパク質でも、ホエーは、以下に例示されているように、最高点を有し、優れた品質であることが証明されている。Castellanos、D.等、Nutr.Clin.Practice、21:485−504(2006)参照。
【表1】

【0005】
[0005]滅菌熱処理におけるホエータンパク質の顕著な熱不安定性は、カゼインをタンパク質源として使用する場合には経験しない問題をもたらす。滅菌又は低温殺菌による熱処理には、非冷蔵貯蔵中の細菌安定性が必要とされる。しかし、滅菌に必要とされる高温は、ホエータンパク質の変性、次いで凝集及びゲル化をもたらす。結果的に、天然ホエータンパク質を含む液体の室温で長期安定な配合物は稀であるか、又はホエータンパク質を比較的少量、即ち、通常8%未満含有している。
【0006】
[0006]ホエータンパク質の高栄養のタンパク質品質を考慮して、経腸栄養配合物におけるこのタンパク質源の使用は、非常に望ましいと思われる。しかし、熱誘導ゲル化又は沈殿により、これまでは、このような配合物に、市販の乳タンパク質濃縮物(乳タンパク質濃縮物中で、ホエータンパク質は、総タンパク質の約20%を構成する)中に存在するよりも著しく高い濃度のホエータンパク質を取り込むことはできなかった。
【0007】
[0007]この安定性の問題に対する公知の解決策は、滅菌熱処理を施す組成物に物質を導入する前にプロテアーゼによりホエータンパク質を部分加水分解することである。
【0008】
[0008]部分加水分解ホエータンパク質を40g/L含有する市販の経腸調合乳の例としては、ペプタメン(PEPTAMEN)(登録商標)があり、そのタンパク質は、トリプシンにより部分加水分解されており、それにより滅菌熱処理に対して安定になっている。ホエータンパク質加水分解物とカゼイン加水分解物又はカゼイネートとを合わせて乳児用調合乳のタンパク質ベースを調合することもできる。このような方式の例は、米国特許第5821217号(タンパク質加水分解物を含有する経腸調合乳について記載)又は米国特許第5549905号(加水分解ホエータンパク質の形態で熱量の12%を含有する小児患者用調合乳について記載)に開示されている。
【0009】
[0009]部分加水分解(ホエー)タンパク質の使用は、可能な方式であり得るが、このような使用に固有の欠点は、部分加水分解タンパク質のこのような配合物への取り込みから生じる苦味である。苦味は経管栄養では重大な問題ではないが、経口摂取を対象とする調合乳では深刻な問題となる。
【0010】
[0010]長い非冷蔵貯蔵寿命を有する、無味のホエータンパク質系経腸配合物を製造するために、加水分解以外の方式を見出してタンパク質を滅菌しなければならず、さもないと調合乳の味がよくならないであろう。
【0011】
[0011]2つの最近の進展は、この方向に向かっていると思われるが、ホエータンパク質の公知の酸安定性を利用する、滅菌性及び長い貯蔵寿命の目標を達成していない。EP0486425は、3.5〜3.9の間のpH及び約3.88%(237ml中9.81g)のホエータンパク質含量を有する、ホエータンパク質系調合乳(少なくとも60%のホエータンパク質)の製造について記載している。低pHの調合乳は、クエン酸及びリン酸を加えることにより得られた。調合乳を95.6℃で4.3秒間低温殺菌熱処理した。国際公開第99/56563号パンフレット(米国特許第6475539号に相当)には、高メトキシル化ペクチン(0.6〜1.25%)をタンパク質安定剤として使用する低pH(pH3.0〜4.6)の経腸調合乳が記載されている。酸性飲料調合乳で使用するホエータンパク質濃縮物の量は、記載されているように、0.70g/100g〜0.75g/100gの範囲である。酸性飲料調合乳に加えられるホエータンパク質は、ホエータンパク質濃縮物、ホエータンパク質分離物又は部分加水分解ホエータンパク質の形態であってよい。この調合乳の特定の変形形態は、タンパク質源として無傷ホエータンパク質を含有し、調合乳の最終pHは4.0〜4.35であり、調合乳に施される熱処理は、102〜104℃で18秒間である。
【0012】
[0012]上記の考察に基づき、タンパク質含量の全部又は大部分、即ち約60%〜100%の範囲が、無傷(非加水分解)ホエータンパク質からなる、酸性液体配合物又は中性液体配合物のいずれかの形態の商業的に滅菌された室温で長期安定なホエー液体組成物を製造することが必要とされている。更に、魅力的な官能特性(良好なテクスチャー及び官能的な味、例えば、滑らかでクリーミーで、ざらつかず苦味がない好ましい味)を有する室温で長期安定な経口及び飲用液体ホエータンパク質製品を製造することも必要とされている。更に、優れた良質の「ファスト」タンパク質、例えばこのような治療を必要とする患者に多数の健康上の利益をもたらすことができるホエーを含有する、商業的に滅菌された室温で長期安定なホエー液体組成物を製造することは長年にわたり切実に必要とされている。
【0013】
[0013]上記の必要性各々を実現する方法及び手段は、他と同様に、詳細な説明から明らかになろう。
【発明の概要】
【0014】
[0014]本発明は、高タンパク質含量を有する室温で長期安定な様々なホエー液体又はゲル化組成物、及びこのような組成物を調製する方法を提供する。
【0015】
[0015]この目的のために、本発明は、様々な目的に有益であり適用できる、高ホエータンパク質含量及び3.5〜4.3の間の範囲のpHを有する室温で長期安定な酸性ホエー組成物を提供する。液体形態又はゲル形態のいずれかの本発明による室温で長期安定な酸性ホエー組成物は、(1)約14〜54%の範囲の総エネルギー摂取量を提供する、組成物の全重量に対して約9g/100g〜約13.5g/100gの範囲の総ホエータンパク質含量、及び(2)少なくとも約100〜264kcal/100gの範囲の総エネルギー含量を有することができる。更に、室温で長期安定な酸性ホエー組成物は、少なくとも1種の主要栄養素、例えば少なくとも1種の炭水化物源及び/又は脂肪源若しくは脂質源を含むことができる。脂肪源又は脂質源は、組成物の全重量に対して少なくとも約0〜12g/100g(0〜12%)の範囲であってよく、総エネルギー摂取量の少なくとも約0〜41%を提供する。例えば、脂肪源は、組成物の全重量に対して少なくとも約0、0.25、0.5、0.7、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12g/100gの範囲であってよく、同様に総エネルギー含量の少なくとも約0%、0.5%、0.7%、1.0%、2.5%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、32%、35%、37%、39%、40%又は41%を提供できる。一実施形態において、酸性ホエー組成物の1つにおける脂肪源は0%であってよい。
【0016】
[0016]炭水化物源は、組成物の全重量に対して少なくとも約12〜55g/100gの範囲であってよい。例えば、炭水化物源は、組成物の全重量に対して少なくとも約12〜20、12〜26、15〜30、15〜55g/100gを提供でき、同様に総エネルギー摂取量の少なくとも約39〜85%を提供する。例えば、酸性ホエー組成物における炭水化物源は、少なくとも約39%〜46%、45%〜64%、51%〜70%、57%〜76%又は60%〜85%の範囲のエネルギー含量を提供できる。
【0017】
[0017]室温で長期安定な酸性ホエー組成物は、以下に示すように、組成物に含有される総ホエータンパク質含量及び総エネルギー含量の量に応じて液体又はゲルの形態であってよい。
【0018】
[0018]本発明の組成物は、総タンパク質含量が少なくとも約60〜少なくとも約100%のホエータンパク質からなる、少なくとも約8g/100g〜13.5g/100gのタンパク質含量を提供できる。例えば、総タンパク質含量は、少なくとも約65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は100%のホエータンパク質からなり得る。好ましくは、総タンパク質含量は、少なくとも約80〜100%、85〜100%、90%〜100%又は少なくとも約95%〜100%のホエータンパク質の範囲であってよい。より好ましくは、総タンパク質含量は、少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%のホエータンパク質からなるものであってよい。
【0019】
[0019]ホエータンパク質は、非加水分解又は加水分解ホエータンパク質であってよい。タンパク質含量は、ホエータンパク質濃縮物、ホエータンパク質分離物、ホエータンパク質ミセル及びホエータンパク質加水分解物の形態又はそれらの任意の組合せのいずれかのホエータンパク質の少なくとも約8g/100g、8.5g/100g、9g/100g、9.5g/100g、10g/100g、10.5g/100g、11g/100g、11.5g/100g、12g/100g、12.5g/100g、13g/100g又は13.5g/100gであってよい。ホエータンパク質含量は、少なくとも約8g/100g〜少なくとも約13.5g/100gの範囲であってよい。
【0020】
[0020]一実施形態において、本発明は、少なくとも約100〜264kcal/100gのエネルギー含量、及び総タンパク質含量が少なくとも約90%〜100%のホエータンパク質からなる、少なくとも約13.5g/100gのタンパク質含量を有する、加水分解されていないか又は加水分解された無傷の形態の室温で長期安定な酸性ホエー組成物を提供する。本発明によれば、周囲温度でのこの組成物のpH範囲は、少なくとも約3.5〜約4.3であってよい。pH範囲は、少なくとも約3.9〜約4.1であってもよい。この組成物において、総タンパク質含量は、少なくとも約90%〜100%、少なくとも約95%〜100%、少なくとも約95%又は少なくとも約100%のホエータンパク質からなり得、それらは全て、(1)天然ホエー、例えばホエータンパク質ミセル、ホエータンパク質濃縮物及びホエータンパク質分離物並びに(2)ホエータンパク質加水分解物の形態であってよい。本発明の組成物は、官能特性、即ち滑らかでクリーミーなテクスチャーを有する。組成物は、少なくとも約100kcal/100g〜264kcal/100gの範囲のエネルギー含量を提供できる。例えば、少なくとも約100〜120、120〜130、130〜140、140〜150、150〜160、160〜180、180〜200、200〜220、220〜240、240〜264kcal/100g、好ましくは少なくとも約185kcal/100g又は約260kcal/100gである。更に、組成物中のホエータンパク質加水分解物に対する、ホエータンパク質ミセル、ホエータンパク質濃縮物又はホエータンパク質分離物の比は、少なくとも約40:60〜100:0、40:60〜60:40、50:50〜80:20の範囲であってよく、好ましくは少なくとも約70:30の比である。
【0021】
[0021]本発明によれば、少なくとも約100kcal/100g〜約264kcal/100gの範囲のエネルギー含量及び少なくとも約13.5g/100gのタンパク質含量を有する室温で長期安定な酸性ホエー液体組成物は、(1)全体の総エネルギー摂取量の少なくとも約20〜54%を有するタンパク質源、(2)総エネルギー摂取量の少なくとも約0〜41%を提供する、組成物の全重量に対して少なくとも約0〜12g/100gの脂肪源、並びに(3)総エネルギー摂取量の少なくとも約39〜46%を提供する、組成物の全重量に対して少なくとも約12〜26g/100gの少なくとも1種の炭水化物源を提供する。
【0022】
[0022]別の実施形態において、本発明は、少なくとも約100kcal/100g〜少なくとも約264kcal/100gの総エネルギー含量、少なくとも約3.5〜約4.3のpH範囲及び少なくとも約9g/100gのホエータンパク質含量を提供する室温で長期安定な酸性ホエー組成物を更に提供する。この組成物中の総タンパク質含量は、少なくとも約90%〜100%、少なくとも約95%〜100%、少なくとも約95%又は少なくとも約100%のホエータンパク質からなり得る。本明細書に記載されているこのような組成物は、少なくとも約100kcal/100g〜264kcal/100gの範囲のエネルギー含量を提供できる。例えば、少なくとも約100〜120、120〜130、130〜140、140〜150、150〜160、160〜180、180〜200、200〜220、220〜240、240〜264kcal/100g、好ましくは少なくとも約185kcal/100g又は少なくとも約260kcal/100gである。更に、このような組成物中のホエータンパク質加水分解物に対する、ホエータンパク質分離物、ホエータンパク質濃縮物又はホエータンパク質ミセルの比は、少なくとも約40:60〜100:0、40:60〜60:40、50:50〜80:20の範囲であってよく、好ましくは少なくとも約70:30の比である。
【0023】
[0023]少なくとも約100kcal/100g〜約264kcal/100gのエネルギー含量及び少なくとも約9g/100gのタンパク質含量を有する室温で長期安定な酸性ホエー組成物は、タンパク質源から全体の総エネルギー摂取量の少なくとも約14〜36%を提供し、総エネルギー摂取量の少なくとも約0〜41%を提供する、組成物の全重量に対して少なくとも約0〜12g/100gの1種の脂肪源、及び総エネルギー摂取量の少なくとも約45〜64%を提供する、組成物の全重量に対して少なくとも約16〜30g/100gの少なくとも1種の炭水化物源を提供する。
【0024】
[0024]少なくとも約10g/100gの総ホエータンパク質含量及び少なくとも約100kcal/100g〜約260kcal/100gの範囲の総エネルギー含量を有する室温で長期安定な酸性組成物について、ホエータンパク質加水分解物に対する、ホエータンパク質分離物、ホエータンパク質濃縮物又はホエータンパク質ミセルの比は、少なくとも約40:60〜100:0、40:60〜60:40、50:50〜80:20の範囲であり、好ましくは少なくとも約60:40の比である。タンパク質源により提供される総エネルギー摂取量は、少なくとも約15〜40%である。このような組成物中の炭水化物源の量は、組成物の全重量に対して少なくとも約15〜55g/100gであり、総エネルギー摂取量の少なくとも約60〜85%を提供する。脂肪源又は脂質源は0%であってよい。
【0025】
[0025]液体形態又はゲル形態のいずれかで上記の室温で長期安定な酸性ホエー組成物に至るために、本発明は、少なくとも約9〜13.5g/100gの範囲の総ホエータンパク質含量及び少なくとも約100〜264kcal/100gの範囲の総エネルギー含量を有する様々な室温で長期安定な酸性ホエー組成物を製造するための幾つかの方法も提供する。
【0026】
[0026]一実施形態において、本発明は、総タンパク質含量が少なくとも約90%〜100%のホエータンパク質からなる、少なくとも約9〜13.5g/100gのホエータンパク質含量、及び少なくとも約100〜260kcal/100gの範囲のエネルギー含量を有する室温で長期安定な酸性ホエー組成物を製造する方法であって、
(a)水、少なくとも1種の乳化剤、及び総エネルギー摂取量の少なくとも約14〜54%を有する少なくとも1種のホエータンパク質を少なくとも約30〜55℃の温度範囲で約10分間混合して、第1の混合物を形成するステップと、
(b)第1の混合物と、少なくとも約12〜30%の少なくとも1種の炭水化物源及び少なくとも約0〜12%の少なくとも1種の脂肪源とを混合して、第2の混合物を形成するステップと、
(c)食品等級の酸又はアルカリ溶液を加えることにより、第2の混合物のpHを少なくとも約3.5〜4.3に調整して、酸性ホエー混合物を得るステップと、
(d)前記酸性ホエー混合物を約60〜80℃の温度範囲で約1〜10秒間予熱するステップと、
(e)酸性ホエー混合物を、直接蒸気注入により約120℃の温度範囲で約11秒間、次いで約60〜80℃の温度でのフラッシュにより加熱することにより、室温で長期安定な酸性ホエー組成物を得るステップと、
(f)前記室温で長期安定な酸性ホエー組成物を100〜240barの圧力で均質化するステップと、
(g)場合により、前記室温で長期安定な酸性ホエー組成物を約20℃〜30℃の温度範囲で冷却するステップと、
(h)前記室温で長期安定な酸性ホエー組成物を滅菌容器に移すステップと
を含む方法を提供する。
【0027】
更に別の実施形態において、上に記載した方法で製造される、少なくとも約9g/100g〜少なくとも約13.5g/100gのタンパク質含量を有する室温で長期安定な酸性ホエー組成物が提供される。
【0028】
[0027]更に別の実施形態において、少なくとも約100kcal/100g〜約260kcal/100gの範囲のエネルギー含量、及び総タンパク質含量が少なくとも約90〜100%のホエータンパク質からなる、少なくとも約10g/100gのタンパク質含量を有する室温で長期安定な酸性ホエー組成物が提供される。本明細書で使用するホエータンパク質は、非加水分解又は加水分解無傷ホエータンパク質の形態であってよい。ホエータンパク質源は天然ホエー、例えばホエータンパク質ミセル、ホエータンパク質濃縮物又はホエータンパク質分離物及びホエータンパク質加水分解物由来であってよい。上記の組成物と同様に、室温で長期安定な酸性ホエー液体組成物は、許容される官能特性を有し、少なくとも約100kcal/100g〜少なくとも約260kcal/100g、例えば、少なくとも約100〜120、120〜130、130〜140、140〜150、150〜160、160〜180、180〜200、200〜220、220〜240、240〜264kcal/100gの範囲のエネルギー含量を有する。更に、このような組成物中のホエータンパク質加水分解物に対するホエータンパク質分離物の比は、少なくとも約40:60〜100:0、40:60〜60:40、50:50〜80:20の範囲であってよく、好ましくは少なくとも約70:30の比である。このような組成物中のホエータンパク質源は、総エネルギー摂取量の少なくとも約15〜40%を提供する。利用できる脂肪源又は脂質源は存在しないが、炭水化物源に関しては、組成物の全重量の少なくとも約15〜55g/100gであり、総エネルギー摂取量の約60〜85%を提供する。本発明によれば、周囲温度での組成物のpHは3.5〜4.3の間である。一実施形態において、本明細書に記載の酸性ホエー組成物のpHは少なくとも約3.9〜4.1の範囲であってよい。
【0029】
[0028]組成物の全重量に対して少なくとも約10g/100gの総ホエータンパク質含量及び少なくとも約100kcal/100g〜約260kcal/100gの範囲のエネルギー含量、並びに少なくとも約3.5〜4.3、好ましくは3.9〜4.1の間のpH範囲を有する室温で長期安定な酸性ホエー組成物を調製するために、本発明は、
(a)水と、少なくとも1種の乳化剤及び総エネルギー摂取量の少なくとも約14〜40%を有する少なくとも1種のホエータンパク質とを、少なくとも約30〜55℃の温度範囲、好ましくは約50℃で約10分間混合して、第1の混合物を形成するステップと、
(b)第1の混合物と、約15〜55%の少なくとも1種の炭水化物源とを混合して、第2の混合物を形成するステップと、
(c)食品等級の酸又はアルカリ溶液を加えることにより、第2の混合物のpHを少なくとも約3.5〜4.3に調整して、酸性ホエー混合物を得るステップと、
(d)前記酸性ホエー混合物を約60〜80℃の温度範囲で約1〜10秒間予熱するステップと、
(e)前記酸性ホエー混合物を、直接蒸気注入により約90℃の温度範囲で約11〜15秒間、次いで約60〜80℃の温度でのフラッシュにより加熱し、室温で長期安定な酸性ホエー組成物を得るステップと、
(f)前記室温で長期安定な酸性ホエー組成物を100〜240barの圧力で均質化するステップと、
(g)前記室温で長期安定な酸性ホエー組成物を滅菌容器に移すステップと、
(h)前記室温で長期安定な酸性ホエー組成物を約20℃〜30℃の温度範囲で冷却するステップと
を含む、このような組成物を調製する方法も提供する。
【0030】
[0029]一実施形態において、本発明は上記に考察した方法により製造される、少なくとも約100〜260kcal/100gの範囲のエネルギー含量及び約10g/100gのタンパク質含量を有する室温で長期安定な酸性ホエー液体組成物を提供する。
【0031】
[0030]別の実施形態において、少なくとも1種の追加の成分は、該方法により使用でき、本特許出願の他の部分に記載されているように、ビタミン、微量ミネラル、微量元素、緩衝剤、増粘剤、甘味料、香味剤、着色剤、繊維、デンプン、プレバイオティクス、アミノ酸、ヌクレオシド及び漢方薬、並びに果物及び植物由来の抽出物からなる群から選択できる。
【0032】
[0031]更なる実施形態において、本発明は、総タンパク質含量が少なくとも約60〜100%の非加水分解無傷ホエーからなる、少なくとも約8g/100g〜少なくとも約13.5g/100g又は少なくとも約90g/L〜少なくとも約143g/Lの範囲のタンパク質含量を有する、中性の室温で長期安定な経腸非ゲル化液体組成物を提供する。一実施形態において、総タンパク質含量は、少なくとも約90%〜100%、少なくとも約95%〜100%、少なくとも約95%又は少なくとも約100%の非加水分解無傷ホエーからなり得る。
【0033】
[0032]別の実施形態において、ホエータンパク質源は、非加水分解ホエー、例えばホエータンパク質濃縮物、ホエータンパク質ミセル又はホエータンパク質分離物由来、及びホエータンパク質加水分解物由来である。ホエータンパク質源は、ホエータンパク質濃縮物及びホエータンパク質分離物又はホエータンパク質加水分解物の組合せであってもよい。更に別の実施形態において、ホエータンパク質源は、100%のホエータンパク質濃縮物又は100%のホエータンパク質ミセルからなり得、総タンパク質含量は各々少なくとも約8g/100g〜約10g/100g(ホエータンパク質濃縮物)又は少なくとも約8g/100g〜約13g/100g(ホエータンパク質ミセル)の範囲である。ホエータンパク質ミセルは、液体形態又は粉末形態であってよい。
【0034】
[0033]本発明の利点は、組成物が少なくとも約6.5〜7.5の範囲のpHを有し、ラクトースを含まなくてよいことである。組成物はロイシン、システイン又はアミノ酸を更に含むことができる。組成物は、経口補給、経管栄養又は経腸投与に使用できる。
【0035】
[0034]本発明の別の利点は、組成物が良好なテクスチャー特性及び官能特性を有し、少なくとも20℃以下の温度で200mPa・s未満の粘度を有することである。
【0036】
[0035]更に別の利点は、本発明による中性の室温で長期安定な経腸非ゲル化液体組成物が、少なくとも約110kcal/100g〜少なくとも約200kcal/100gの範囲のエネルギー含量を有することができることである。例えば、少なくとも約110〜120kcal/100g、110〜130kcal/100g、110〜140kcal/100g、120〜140kcal/100g、140〜160kcal/100g、160〜180又は180〜200kcal/100gであり、少なくとも140kcal/100g超又は少なくとも180kcal/100g超であり、好ましくは少なくとも約140〜160kcal/100gの範囲のエネルギー含量である。一実施形態において、中性の室温で長期安定な経腸非ゲル化液体組成物は、少なくとも140kcal/100g超のエネルギー含量を有することができる。
【0037】
[0036]本発明の更なる利点は、中性の室温で長期安定な経腸非ゲル化液体が、少なくとも1種の炭水化物源、脂質源、ビタミン、ミネラル、微量元素、緩衝剤、増粘剤、甘味料、香味剤、着色剤、繊維、デンプン、プレバイオティクス、アミノ酸、ヌクレオシド、漢方薬、並びに果物及び植物由来の抽出物からなる群から選択される少なくとも1種の追加の成分を更に含むことである。ビタミン、ミネラル及び微量元素はFSMP規制による量で全て使用される。
【0038】
[0037]別の実施形態において、少なくとも1種の炭水化物源は、マルトデキストリン並びに/又はスクロース及びラクトースであり、組成物の全重量に対して約10g〜約20g/100gの範囲である。更に、少なくとも1種の脂質源は、コーン油、菜種油及び大豆油からなる群から選択され、少なくとも1種の脂質源は、中性の室温で長期安定な経腸非ゲル化液体組成物の全重量に対して少なくとも約0〜10g/100g又は少なくとも約4〜10g/100gである。
【0039】
[0038]更に別の実施形態において、少なくとも1種の増粘剤は、デンプン及びカラギナンからなる群から選択される。
【0040】
[0039]本発明は、少なくとも約110kcal/100g〜少なくとも約200kcal/100gの範囲のエネルギー含量、及び少なくとも約8g/100g〜少なくとも約13g/100g又は少なくとも約90g/L〜少なくとも約143g/Lの範囲の総タンパク質含量を有する中性の室温で長期安定な経腸非ゲル化液体組成物を製造する方法であって、
(a)少なくとも1種のホエータンパク質源と、少なくとも1種の炭水化物源、脂質源及び乳化剤とを水中で30〜60℃の間の温度範囲、好ましくは35℃で混合して、第1の混合物を形成するステップと、
(b)第1の混合物に、少なくとも1種のミネラル、ビタミン、微量元素及び増粘剤(例えばデンプン)並びに少なくとも1種の追加の成分を加えて、第2の混合物を形成するステップと、
(c)食品等級の酸(例えば、クエン酸又はリン酸)又は塩基(水酸化カリウム又は水酸化ナトリウム)を加えることにより、前記第2の混合物のpHを少なくとも約6.5及び7.5に調整して、ゲル化していない中性液体組成物を得るステップと、
(d)中性非ゲル化液体組成物を(管状熱交換器により)60〜80℃の間の温度、好ましくは65℃で予熱するステップと、
(e)中性非ゲル化液体組成物を、直接蒸気注入(次いで、60〜65℃の間の温度範囲、好ましくは約65℃でのフラッシュを行ってもよい)を用いて140〜145℃の間の温度範囲、好ましくは145℃で滞留時間7秒間の超高温処理下に曝して、中性の室温で長期安定な非ゲル化液体組成物を得るステップと、
(f)中性の室温で長期安定な非ゲル化液体組成物を60〜80℃の間の温度範囲、好ましくは約65℃にて200barの全圧で均質化するステップと、
(g)中性の室温で長期安定な非ゲル化液体組成物を約20℃〜35℃の温度範囲で冷却するステップと、
(h)前記中性の室温で長期安定な非ゲル化液体組成物を経腸使用のために滅菌容器に移すステップと
を含む方法を提供する。
【0041】
[0040]一実施形態において、組成物がラクトースを含まない場合、上記の方法は、ラクターゼを中性の室温で長期安定な経腸非ゲル化液体組成物に無菌的に加えることを更に含む。
【0042】
[0041]別の実施形態において、少なくとも約8g/100g〜少なくとも約13g/100g又は少なくとも約90g/L〜少なくとも約143g/Lの範囲のタンパク質含量を有する中性の室温で長期安定な経腸非ゲル化液体組成物は、上に示された方法に従って製造される。
【0043】
[0042]本発明の更なる利点は、総タンパク質含量が少なくとも約60%〜少なくとも約100%の非加水分解無傷ホエーからなる、少なくとも約8g/100g〜少なくとも約13g/100g又は少なくとも約90g/L〜少なくとも約143g/Lの範囲のタンパク質含量、少なくとも約6.5〜約7.5の範囲のpH、及び少なくとも約110kcal/100g〜少なくとも約200kcal/100gの範囲のエネルギー含量を有する、中性の室温で長期安定な経腸非ゲル化液体組成物を提供することである。
【0044】
[0043]特許請求の範囲において「又は」という用語の使用は、代替物のみを指すことが明確に示されていない限り、又は代替物が相互に排他的でない限り、「及び/又は」を意味するために使用されるが、本開示は、代替物のみ、及び「及び/又は」を指す定義を支持する。
【0045】
[0044]本出願全体で、「約」という用語は、値が、その値を決定するために使用される装置又は方法の誤差の標準偏差を含むことを示すために使用される。
【0046】
[0045]「1つ(a及びan)」という用語が、特許請求の範囲又は本明細書において「含む」という用語と共に使用される場合、明確に示されていない限り、該用語は1つ又は複数を示す。
【0047】
[0046]次に、本発明の実施形態について詳細に言及する。その1つ又は複数の例は以下に示されている。各例は、本発明の説明のために提供されており、本発明を限定するものではない。実際に、本発明の範囲又は趣旨から逸脱することなく本発明に様々な変更及び変形を行うことができることは当業者には明らかであろう。例えば、一実施形態の一部として例示又は記載される特徴は、別の実施形態で使用され、更に更なる実施形態をもたらすことができる。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲及びその等価物の範囲内で生じるようなこのような変更及び変形に対応することが意図される。本発明の他の目的、特徴及び態様は、以下の詳細な説明に開示されており、それにより明白である。当業者であれば、本考察は、例示的実施形態の説明に過ぎず、本発明の広範な態様を限定する意図はないことを理解されよう。
【0048】
[0047]本明細書で使用する場合、「含む(comprise)」という用語、及びその用語の変形形態、例えば「含んでいる(comprising)」、「含む(comprises)」及び「含まれる(comprised)」は、他の付加物、構成要素、整数又はステップを除外する意図はない。
【0049】
[0048]本明細書で使用する場合、哺乳動物という用語は、それだけに限らないが、齧歯類動物、水生哺乳動物、家庭用動物、例えばイヌ及びネコ、農用動物、例えばヒツジ、ブタ、ウシ及びウマ、並びにヒトを含む。哺乳動物という用語を使用する場合、哺乳動物により示されるか、又は示されることが意図される効果について能力がある他の動物にも適用されることが企図される。
【0050】
[0049]本出願における数値範囲についての任意の言及は、その範囲内に特に含有される各数字及びその範囲内に含有される数字の各部分集合の明確な開示内容として解釈されるべきである。更に、この範囲は、その範囲の任意の数又は数の部分集合を対象とする特許請求の範囲を支持するとして解釈されるべきである。例えば、1〜10の開示内容は、2〜8、3〜7、5、6、1〜9、3.6〜4.6、3.5〜9.9、1.1〜9.9等の範囲を支持するとして解釈されるべきである。
【発明を実施するための形態】
【0051】
[0050]本発明は、タンパク質含量の全部又は大部分が、60〜100%、好ましくは100%のホエータンパク質源からなる、高タンパク質含量を有するホエー組成物及びこのようなホエー組成物を調製する方法に関する。これらのホエー組成物は、酸性又は中性の液体配合物の形態であってよい。
【0052】
[0051]一実施形態において、本発明によれば、低エネルギー含量又は高エネルギー含量のいずれかを有する、周囲温度での本発明による室温で長期安定な酸性ホエー液体組成物のpHは、3.5〜4.3の間、好ましくは3.9〜4.1の間であってよい。更に別の実施形態において、無菌室温で長期安定な非ゲル化中性ホエー液体組成物のpHは、約6.5〜7.5の範囲、好ましくは6.8〜7.2の間である。
【0053】
[0052]乳タンパク質は、2つの主要成分、即ちカゼイン及びホエータンパク質を含有している。ホエータンパク質は、チーズの製造で残った乳のカードを含まない部分である。ホエータンパク質は、カゼイン又は大豆タンパク質と比較して健康上の利益を向上させる優れた必須アミノ酸(EAA45%)源である。分岐鎖アミノ酸(BCAA)に関して、ホエータンパク質は、約11〜14%のロイシンを含む比較的高濃度のBCAA(約26%、ロイシン、イソロイシン及びバリンを含む)を含有している。Layman D.K.等、J.Nutr.、134:968S〜973S(2004)。
【0054】
[0053]ホエーは、「ファストタンパク質」であり、除脂肪体重を維持する一助となるロイシンを最大量含有している。ホエーは、糖尿病、体重管理及び満腹感、抗炎症作用、創傷治癒及び皮膚修復、並びに血圧低下等に適しているように、子供、成人又は高齢者において筋肉の発達及び増強、並びに筋肉の維持を増進するその能力に加えて、免疫機能を刺激し、認識機能を改善し、血糖を管理することができる。これらの機能的役割を考慮して、ホエータンパク質系栄養補助食品は、高齢者における血漿アミノ酸に対するタンパク同化作用の耐性に部分的に起因するサルコペニアを軽減できる。報告されているように、ロイシンは、食後の筋タンパク質分解を低下させる際に高齢者に不可欠なアミノ酸である。Dardevet,D.等、Nutr.Res.Rev.、16:61〜70、2003;Combaret,L.等、J.Physiol.、569(Pt2):489〜99(2005).Nutr.2000 Nov;130(11):2630〜5参照。
【0055】
[0054]ホエーをカゼイン(システイン0.3g/タンパク質100g含有)と比較すると、甘味ホエータンパク質は、システインを7倍多く含有しており、酸ホエーは、システインを10倍多く有する。システインは、ストレスの場合、身体の防御で一番重要な機能を有する、グルタミン酸システイン及びグリシンからなるトリペプチドである、グルタチオン(GSH)合成の律速アミノ酸である。これらのアミノ酸の必要性は、ストレスの場合及び高齢者において増加し得る。また、ホエータンパク質を含むグルタチオン経口栄養補助食品は、HIV感染患者の血漿GSHレベルを増加させることが示された(Eur.J.Clin.Invest.2001;31,171〜178)。
【0056】
[0055]本発明によれば、ホエータンパク質源は、非加水分解無傷甘味ホエー、例えば、ホエータンパク質濃縮物(WPC)、ホエータンパク質分離物(WPI)若しくはホエータンパク質ミセル(WPM)及びホエータンパク質加水分解物(WPH)、又はそれらの組み合わせであってよい。一実施形態において、ホエータンパク質源は、ホエータンパク質濃縮物及びホエータンパク質加水分解物又はホエータンパク質分離物の組み合わせであってよい。一実施形態において、本発明の組成物は、少なくとも約60%〜100%の非加水分解無傷ホエータンパク質からなり得、タンパク質含量の全部又は大部分が、100%の非加水分解無傷ホエータンパク質からなることが好ましい。
【0057】
[0056]本組成物において、ホエータンパク質源は、多数の健康及び栄養上の利点をもたらす。運動選手が除脂肪体重を得る一助となり、慢性下痢及び栄養素の吸収不良(悪液質)を患う患者の体重を増加させる。G.Bounous等、Clinical&Investigative Med.、16(3):204〜209(1993年6月)参照。他方では、WPC又はWPI等のホエータンパク質は、低カロリー食と組み合わせた場合、減量するためにも使用できる。
【0058】
[0057]免疫系に対するホエータンパク質源の明白な影響は広範に認識されている。WPC及びWPIは、血清アルブミン及び免疫グロブリンを含む、ある種の「ホエータンパク質画分」の存在により免疫系を高めることができ、免疫調節効果を有する。免疫調節効果は、免疫系の恒常性を維持する作用、即ち、全身に有益である以外に、免疫系を活性化することも、抑制することもない作用を指す。ホエータンパク質濃縮物又はホエータンパク質分離物中の4つの主要タンパク質は、優勢順に以下:βラクトグロブリン、αラクトアルブミン、ウシ血清アルブミン(BSA)及び全体の免疫グロブリン(5つの部類全てを含む)を含み、各々免疫系の重要な部分として知られている。C.V.Morr及びE.Y.Ha、Crit.Rev.in Food Sci. Nutri.、33(6):431〜476(1993)。
【0059】
[0058]WPC及びWPIは、重要な非栄養特性を有し得る幾つかのいわゆる「微量」ホエータンパク質因子も含有している。C.V.Morr及びE.Y.Ha、上記論文;P.F.Fox、Developments in Dairy Chemistry、Fox、P.F.(編)、Elsevier Applied Science、New York(1989)。これらの「微量」ホエータンパク質因子としては、ラクトフェリン、ラクトホリン、ラクトペルオキシダーゼ及びリゾチームを含み、それらは、抗菌機能及び他の生物学的機能を有することも解明されている。B.Reiter、Int.J.Tissue React.、1:87(1983);B.Reiter、Developments in Dairy Chemistry、281、Fox,P.F.(編)、Elsevier Applied Science、New York(1985);C.Kanno,J.Dairy Sc.、72:883(1989)。
【0060】
[0059]「主要」及び「微量」タンパク質に加えて、WPCは、灰分、非タンパク質N化合物(窒素含有化合物)、脂質、ラクトース、リン脂質、並びに微量のナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム及びリンを含む、様々な有益な栄養成分も含有している。C.V.Morr及びE.A.Foegeding、Food Technol.、44:100(1990)。非タンパク質N化合物は、最終的には尿素に変換され、排泄されるタンパク異化の生成物、例えば、腎臓に血流を介して輸送され、排泄される尿素の形態である血中尿素窒素(BUN)を含む。したがって、ホエータンパク質は、ヒト及び動物において決定的に栄養学的に重要であることが知られているビタミン及びミネラルを含む、タンパク質成分及び他の構成要素の宿主を含有している。
【0061】
[0060]上記で考察したホエータンパク質の内、αラクトアルブミンは、総ヒト乳タンパク質の約40重量%を通常構成する。対照的に、αラクトアルブミンは、総タンパク質のわずか4〜5重量%で牛乳中にのみ存在する。αLaは、高含量のアミノ酸、トリプトファン、ビタミンナイアシン前駆体を有する。したがって、そのトリプトファン含量により、αLaは、優れたナイアシン等価物源である。1つのナイアシン等価物は、ナイアシン1mg又はトリプトファン60mgと定義される。ナイアシンは、脂肪合成、組織呼吸及び炭水化物利用を含む、代謝に不可欠な補酵素の一部として機能する。それは、皮膚、神経及び消化管の健康を促進し、消化を補助し、正常な食欲を促進する。処理中のより高い酸性度へのホエーのpH調整により、タンパク質構造が変化し、次いで、αLaの保持率が高まることが報告されている。米国特許第6312755B1号参照。
【0062】
[0061]「乳タンパク質加水分解物」という用語は、任意の種類の加水分解を施した乳タンパク質を指す。したがって、このような乳タンパク質加水分解物は、加水分解を免れた無傷タンパク質、及び加水分解処理により得た任意の画分のタンパク質を含むこともある。
【0063】
[0062]「甘味ホエー」及び「酸ホエー」という用語は、これらの物質が乳タンパク質の酵素加水分解生成物又は酸加水分解生成物であるため、可能な乳タンパク質加水分解物であるとも考えられる。脱脂粉乳が酵素又は酸で処理される場合、甘味ホエー又は酸ホエーは各々凝固カゼインなしで分離される。その場合には、甘味ホエー又は酸ホエーは、無傷のままである、ホエータンパク質加水分解物、更に微量タンパク質を含む。甘味ホエー又は酸ホエーを濃縮し、乾燥させ、発酵させ、脱ラクトース化し、脱ミネラル化し、脱タンパク質化することができる。
【0064】
[0063]しかし、当技術分野で周知のように、ホエーは、無傷タンパク質並びに様々な画分の加水分解タンパク質も含むことができる。
【0065】
[0064]Nestec,S.A.に付与された米国特許第7240320号(「320特許」)及びその対応欧州特許第1314361号(「EP361特許」)は、すぐに使える液体組成物として使用に適した栄養的に完全でカロリー密の調合乳を提供する、組成物及び組成物を調製する方法について記載している。組成物は、タンパク質の少なくとも60%がホエータンパク質である、約20〜90g/Lの高濃度のホエータンパク質を含有している。周囲温度で最大6ヶ月以上の室温で長期安定ながある。しかし、中性ホエー組成物を調製する方法については、320特許及びEP361特許はいずれも、間接UHT(超高温)処理を用いる2段階滅菌法について記載している。比較して、本発明は、1段階滅菌法を使用し、約8g/100g〜約13g/100g又は少なくとも約90g/L〜約143g/Lの範囲の多量のホエータンパク質、並びに少なくとも約110kcal/100g〜約200kcal/100gの範囲のエネルギー含量をもたらす、中性の室温で長期安定な経腸非ゲル化液体組成物を製造する改良法を提供する。本発明のような1段階滅菌法は、より簡単で、より費用対効果がある。
【0066】
[0065]欧州特許第0852468号(EP468特許)、並びにその対応国際出願PCT/US96/14052(国際公開第97/011614号パンフレットとして公表)及び米国特許第5641531号は、本発明のpH(pH3.5〜4.3)よりも低い約2.8〜3.4のpHを有する液体栄養補助食品について記載している。栄養補助食品は、透明な液体であり、薄いテクスチャー及び大いに許容される口当たりを有する。栄養補助食品は、添加脂肪及び主要栄養素が不足している。重量で最大10%のホエータンパク質を含有し、少なくとも1.0kcal/ml(1.20〜1.25kcal/mlの間)のカロリー密度を有するこのような栄養補助食品を製造する具体的な方法についても記載している。対照的に、本発明による室温で長期安定な酸性ホエー組成物は、少なくとも約100kcal/100g〜約260kcal/100gの範囲のエネルギー含量を有する。ホエータンパク質源は、本発明で使用する他のホエータンパク質源の組合せとしてではなく、ホエータンパク質分離物のみに由来する。EP468特許に記載されているように、酸は、炭水化物部分を加える前にpH調整のためにホエータンパク質分離物水溶液に加えられる。発明者等は、「タンパク質/炭水化物のブレンドの酸性化により、許容できないほど高い粘度及び濁った外観を有する完成品になる」ことを発見したため、このステップは決定的なものであると考えた。EP468特許、column 6、paragraph[0032]参照。しかし、タンパク質源は、得られた第2の混合物を調節する前に炭水化物源と混合されるため、この決定的なステップは、室温で長期安定な酸性ホエー液体組成物を製造する本発明にとって重要ではない。
【0067】
[0066]本発明のホエータンパク質ミセルを調製し、使用する様々な方式が、国際公開第2007/110411号パンフレット、国際公開第2007/110421号パンフレット、国際公開第2007/110422号パンフレット、国際公開第2007/110423号パンフレットに記載されており、その開示内容は、参照により本明細書に明確に組み込まれている。
【0068】
[0067]本発明の組成物中のタンパク質含量に関して、タンパク質含量は少なくとも約8g/100g〜少なくとも約13.5g/100gであってよく、総タンパク質含量は、60〜100%のホエーからなる。例えば、総タンパク質含量は、少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は100%のホエータンパク質からなり得る。好ましくは、総タンパク質含量は、少なくとも約80〜100%、85〜100%、90〜100%又は少なくとも約95%〜100%のホエータンパク質の範囲であってよい。より好ましくは、総タンパク質含量は、少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%のホエータンパク質からなり得る。
【0069】
[0068]ホエータンパク質は、非加水分解又は加水分解無傷ホエータンパク質の形態のいずれかであってよい。タンパク質含量は、ホエータンパク質濃縮物、ホエータンパク質分離物、ホエータンパク質ミセル及びホエータンパク質加水分解物の形態又はそれらの任意の組合せのいずれかのホエータンパク質源の少なくとも約8g/100g、8.5g/100g、9g/100g、9.5g/100g、10g/100g、10.5g/100g、11g/100g、11.5g/100g、12g/100g、12.5g/100g、13g/100g又は13.5g/100gであってよい。
【0070】
[0069]本発明の方法に関して、ホエータンパク質は、中性の室温で長期安定な経腸非ゲル化液体組成物については少なくとも約8〜13g/100g又は少なくとも約90〜143g/L、少なくとも約100〜264kcal/100gの範囲のエネルギー含量を有する、室温で長期安定な酸性ホエー組成物については少なくとも約9〜少なくとも約13.5g/100g、少なくとも約100〜264kcal/100gの範囲のエネルギー含量を有する酸性ホエー組成物については少なくとも約10g/100gの量で存在し得、脂肪含量は0%である。
【0071】
[0070]本発明の栄養組成物は、少なくとも約13.5g/100gの総タンパク質、及び少なくとも約50:50〜80:20の範囲、好ましくは少なくとも約70:30のWPI:WPH比を有する室温で長期安定な酸性ホエー配合物については、少なくとも約100〜200kcal/100g、好ましくは少なくとも約185kcal/100gの範囲のエネルギー含量を提供する。別の実施形態において、本発明は、少なくとも10g/100g超の総タンパク質、及び少なくとも約50:50〜70:30の範囲、好ましくは少なくとも約60:40のWPI:WPH比を有する室温で長期安定な酸性ホエー液体配合物については、少なくとも約200〜260kcal/100g、好ましくは245kcal/100gの範囲のエネルギー含量を提供する。
【0072】
[0071]本発明による中性の室温で長期安定な経腸非ゲル化液体組成物に関して、タンパク質含量は100%のWPC又は100%のWPMからなり得る。
【0073】
[0072]室温で長期安定な酸性又は中性のホエー組成物中のタンパク質含量により提供される総エネルギー摂取量は、少なくとも約14〜36%、少なくとも約20〜54%又は少なくとも約15〜40%の範囲であってよい。
【0074】
[0073]好ましくは、少なくとも1種の炭水化物源は、少なくとも約15g/100g〜約51g/100g、約10〜20g/100g、約12〜26g/100g又は約16〜30g/100gの範囲であってよい。栄養組成物は、栄養組成物の総エネルギー摂取量の少なくとも約39〜46%、約45〜64%、約60〜85%又は約40〜70%を提供する、少なくとも1種の炭水化物源を含む。例えば、炭水化物源は、栄養組成物のエネルギーの少なくとも約40%を提供できる。マルトデキストリン、コーンシロップ、コーンスターチ、加工デンプン、スクロース、ラクトース、フルクトース、オリゴフルクトース及びそれらの混合物を含む、幾つかの炭水化物源を使用できる。
【0075】
[0074]更に好ましくは、少なくとも1種の脂質源又は脂肪源は、少なくとも約0.1〜10g/100g、約0〜12g/100g又は約4〜10g/100g、好ましくは少なくとも約0.2〜約7g/100gの範囲であってよい。少なくとも約245kcal/100g又は少なくとも約264kcal/100gのエネルギー含量を有する室温で長期安定な酸性ホエー液体組成物について、脂肪源は、組成物の総脂肪の少なくとも約12g/100gであり、栄養組成物の総エネルギーの少なくとも約41%を提供する。例えば、脂質源は、栄養組成物の総エネルギーの約30%を提供できる。脂質源は、植物源、乳製品源若しくは動物源、又はそれらの組合せ由来の油であってよい。適切な脂質源としては、高オレイン酸ヒマワリ油、高オレイン酸紅花油、ヒマワリ油、紅花油、菜種油、大豆油、オリーブ油、キャノーラ油、落花生油、ぬか油、バター脂肪、ヘーゼルナッツ油、ココナツ油、ルリヂサ油、クロフサスグリ油、月見草油、アマニ油及び構造脂質が挙げられる。脂質源としては、一価不飽和脂肪酸(MUFA)及び多価不飽和脂肪酸(PUFA)に富む中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)を挙げることができる。
【0076】
[0075]本発明の組成物は、室温で長期安定な酸性ホエー組成物については少なくとも約100kcal/100g〜少なくとも約264kcal/100gの範囲のエネルギー含量を提供できる。
【0077】
[0076]例えば、少なくとも約13.5g/100gのホエータンパク質含量を有する室温で長期安定な酸性ホエー組成物について、これらの組成物は、少なくとも約100kcal/100g〜約264kcal/100gの範囲のエネルギー含量を提供できる。例えば、少なくとも約100〜120、120〜130、130〜140、140〜150、150〜160、160〜180、180〜200、200〜220、220〜240、240〜264kcal/100g、好ましくは少なくとも約185kcal/100g又は少なくとも約260kcal/100gである。組成物中のホエータンパク質加水分解物に対する、ホエータンパク質ミセル、ホエータンパク質濃縮物又はホエータンパク質分離物の比は、少なくとも約40:60〜100:0、40:60〜60:40、50:50〜80:20の範囲であってよく、好ましくは少なくとも約70:30の比である。
【0078】
[0077]少なくとも約9g/100gのホエータンパク質含量を有する室温で長期安定な酸性ホエー組成物について、これらの組成物は、少なくとも約100kcal/100g〜264kcal/100gの範囲のエネルギー含量を提供できる。例えば、少なくとも約100〜120、120〜130、130〜140、140〜150、150〜160、160〜180、180〜200、200〜220、220〜240、240〜264kcal/100g、好ましくは少なくとも約185kcal/100g又は少なくとも約260kcal/100gである。このような組成物中のホエータンパク質加水分解物に対する、ホエータンパク質分離物、ホエータンパク質濃縮物又はホエータンパク質ミセルの比は、少なくとも約40:60〜100:0、40:60〜60:40、50:50〜80:20の範囲であってもよく、好ましくは少なくとも約70:30の比である。
【0079】
[0078]少なくとも約10g/100gのタンパク質含量を有する室温で長期安定な酸性ホエー組成物について、これらの組成物は、少なくとも約100kcal/100g〜約260kcal/100g、例えば、少なくとも約100〜120、120〜130、130〜140、140〜150、150〜160、160〜180、180〜200、200〜220、220〜240、240〜264kcal/100gの範囲のエネルギー含量を提供できる。更に、このような組成物中のホエータンパク質加水分解物に対するホエータンパク質分離物の比は、少なくとも約40:60〜100:0、40:60〜60:40、50:50〜80:20の範囲であってよく、好ましくは少なくとも約70:30の比である。
【0080】
[0079]本発明による中性の室温で長期安定な経腸非ゲル化液体組成物について、これらの組成物は、少なくとも約110kcal/100g〜約200kcal/100gの範囲のエネルギー含量を提供できる。例えば、少なくとも約110〜120kcal/100g、110〜130kcal/100g、110〜140kcal/100g、120〜140kcal/100g、140〜160kcal/100g、160〜180kcal/100g若しくは180〜200kcal/100g、又は少なくとも約140kcal/100g、好ましくは少なくとも約140〜160kcal/100gの範囲のエネルギー含量である。一実施形態において、中性の室温で長期安定な経腸非ゲル化液体組成物は、少なくとも140kcal/100g超のエネルギー含量を有することができる。
【0081】
[0080]ホエータンパク質水溶液を加熱する前に、pHは、好ましくは食品等級の酸又はアルカリ溶液のいずれかを加えることにより、一般に調整される。酸の例としては、塩酸、リン酸、酢酸、リンゴ酸、クエン酸、グルコン酸、乳酸、アジピン酸、酒石酸、フマル酸、カルボン酸、グルコノδラクトン酸、アスコルビン酸又はそれらの混合物がある。アルカリ溶液の例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム又は水酸化アンモニウムが挙げられる。
【0082】
[0081]ホエータンパク質ミセル濃縮物(蒸発又は精密濾過による)は、分散液として液体形態で、半固体形態で又は乾燥形態で使用できる。ホエータンパク質ミセル濃縮物は、ホエータンパク質ミセルの用途について上に記載されたような多様な用途に使用できる。
【0083】
[0082]本発明で使用する乳化剤としては、ジグリセリド、モノグリセリド、乳酸モノグリセリド、モノステアリン酸グリセロール、ラクチル酸ナトリウムステアロイル及びそれらの混合物を挙げることができる。
【0084】
[0083]着色剤は、天然又は人工の着色剤であってよく、果実抽出液、植物抽出液、リボフラビン、カロテノイド、ターメリック、リコペン、FD&C染料及びFD&Cレーキ又はそれらの組合せを挙げることができる。
【0085】
[0084]甘味料は、スクロース、フルクトース、グルコース及びそれらの混合物からなる群から選択できる。また、甘味料はノンカロリー甘味料又は低カロリー甘味料であってよい。
【0086】
[0085]ビタミン及びミネラルの米国推奨日常摂取量(USRDI)は、Recommended Daily Dietary Allowance−Food and Nutrition Board、National Academy of Sciences−National Research Councilに定義され、示されている。このようなビタミン及びミネラルの非限定的例としては、カリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガン、クロム、モリブデン、セレン、リン、ヨード、βカロテン、コリン、ビタミンA、ビタミンC、ヨード、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB3、ビタミンB5、ビタミンB6、ビタミンB7、ビタミンB9、ビタミンB12、ビタミンD、ビタミンE及びビタミンKが挙げられる。
【0087】
[0086]本明細書で使用する場合、アミノ酸という用語は、遊離形態又は薬学的若しくは栄養学的に許容される塩の形態のアミノ酸を指す。例えば、必須アミノ酸としては、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、トレオニン、トリプトファン、バリン又はヒスチジンが挙げられる。遊離形態又は薬学的若しくは栄養学的に許容される塩の形態の条件付必須アミノ酸としては、チロシン、システイン、アルギニン又はグルタミンが挙げられる。
【0088】
[0087]本明細書で使用する場合、「可溶性繊維」という用語は、可溶性繊維、例えば、寒天、アルギネート、カルビン、ペクチン、例えば果実及び植物由来のペクチン、例えば柑橘類果実及びリンゴ、並びにその誘導体、βグルカン、例えばオーツβグルカン、カラギナン、特にκカラギナン、λカラギナン及びιカラギナン、フルセララン、イヌリン、アラビノガラクタン、セルロース及びその誘導体、スクレログルカン、サイリウム、例えばサイリウムシードハスク、粘液及びガム、例えば市販の植物ガム、より特にコンニャクガム、キサンタンガム、グアーガム(ガラナガム)、ローカストビーンガム、タラビーンガム、トラガカントガム、アラビアガム、カラヤガム、ガティガム、ジェランガム、並びに他の関連のステルクリアガム、アルファルファ、クローバー、フェヌグリーク、タマリンドの花を指す。天然及び変性、例えば加水分解、可溶性繊維を使用してもよい。
【0089】
[0088]本明細書で使用する場合、「プレバイオティクス」という用語は、プロバイオティクスの増殖及び/又は活性を刺激する非消化性食品成分を指す。本発明のプレバイオティクスとしては、アカシアガム、αグルカン、アラビノガラクタン、βグルカン、デキストラン、フルクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、ガラクトマンナン、ゲンチオオリゴ糖、グルコオリゴ糖、グアーガム、イヌリン、イソマルトオリゴ糖、ラクトスクロース、ラクツロース、レバン、マルトデキストリン、部分加水分解グアーガム、ペクチンオリゴ糖、老化デンプン、大豆オリゴ糖、糖アルコール、キシロオリゴ糖又はそれらの組合せを挙げることができる。
【0090】
[0089]本明細書で使用する場合、「抗酸化剤」という用語は、活性酵素種(ROS)並びに他のラジカル種及び非ラジカル種により促進される酸化又は反応を抑制する、様々な物質(βカロテン(ビタミンA前駆体)、ビタミンC、ビタミンE及びセレン)のいずれか1つ又は複数を含むと理解されることが好ましい。更に、抗酸化剤は、他の分子の酸化を遅延させるか、又は防止することができる分子である。本明細書で使用する場合、抗酸化剤の非限定的例としては、カロテノイド、補酵素Q10(「CoQ10」)、フラボノイド、グルタチオン、ゴジ(ウルフベリー)、ヘスペリジン、ラクトウルフベリー、リグナン、ルテイン、リコペン、ポリフェノール、セレン、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE及びそれらの組合せが挙げられる。本発明の実施形態は抗酸化剤を含む。
【0091】
[0090]本明細書で使用する場合、「完全栄養素」とは、栄養素が投与されるであろう動物にとって唯一の栄養源であるのに十分である、十分な種類及び量の主要栄養素(タンパク質、脂肪及び炭水化物)及び微量栄養素を含有する栄養製品であることが好ましい。本発明の実施形態は、完全栄養組成物であることが意図される。
【0092】
[0091]本明細書で使用する場合、「有効量」とは、欠乏症を予防するか、個人の疾患若しくは医学的状態を治療するか、或いはより一般には、症状を軽減するか、疾患の進行を管理するか、又は個人に栄養学的、生理学的若しくは医学的利益を与える量であることが好ましい。治療は、患者関連又は医師関連であってよい。更に、「個人」及び「患者」という用語は、ヒトを指すために本明細書において使用される場合が多いが、本発明はそれにより限定されない。したがって、「個人」及び「患者」という用語は、治療が有益となり得る医学的状態を有するか、又はその危険性がある任意の動物、哺乳動物又はヒトを指す。
【0093】
[0092]本明細書で使用する場合、「高齢者」とは、65歳以上、より好ましくは75歳以上のヒトであることが好ましい。
【0094】
[0093]本明細書で使用する場合、「不完全栄養素」とは、栄養素が投与されるであろう動物にとって唯一の栄養源であるのに十分である、十分な量の主要栄養素(タンパク質、脂肪及び炭水化物)又は微量栄養素を含有していない栄養製品であることが好ましい。本発明の実施形態は、不完全栄養組成物であることが意図される。
【0095】
[0094]本明細書で使用する場合、「長期投与」とは、6週間超の継続投与であることが好ましい。本発明の実施形態は長期投与を対象とする。
【0096】
[0095]組成物は、例えば、1種又は複数のビタミン、ミネラル、糖、薬学的に許容される担体、添加剤、香味剤又は着色剤を含む追加の成分を幾つでも更に含むと理解されることが好ましい。
【0097】
[0096]本明細書で使用する場合、「肥満」とは、動物、特にヒト及び他の哺乳動物の脂肪組織に蓄えられた天然のエネルギー貯蔵量が、肥満が増加する点まで増加し、それがある種の健康状態又は死亡率の増加と関係している状態であることが好ましい。「肥満体」は、BMIが30を上回る成人と定義される。
【0098】
[0097]本明細書内に含有される全ての用量範囲は、前記範囲内に含有される全ての数、全体又は部分を含むことが意図される。
【0099】
[0098]本明細書で使用する場合、「短期投与」とは、6週間未満の継続投与であることが好ましい。本発明の実施形態は、短期投与を対象とする。
【0100】
[0099]本明細書で使用する場合、「治療」、「治療する」及び「緩和する」という用語とは、予防的又は防止的治療(標的とされる病的状態又は疾患の発現を予防するか、及び/又は遅延させる)と、治癒的、療法的又は疾患修飾的治療の両方であることが好ましく、診断された病的状態若しくは障害を治癒し、遅延し、症状を軽減し、及び/又は進行を停止させる治療的手段、並びに疾患に罹患する危険性があるか、又は疾患に罹患している疑いのある患者、並びに病気であるか、又は疾患若しくは医学的状態に罹患していると診断された患者の治療を含む。「治療」及び「治療する」という用語は、疾患に罹患していないが、窒素不均衡又は筋力低下などの不健康な状態の発生が疑われ得る個人の健康の維持及び/又は促進も指す。「治療」、「治療する」及び「緩和する」という用語は、1種又は複数の主要な予防的又は防止的手段の増強又は他の点では向上を含むことも意図される。「治療」、「治療する」及び「緩和する」という用語は、治療若しくは状態の食事管理、又は治療若しくは状態の予防若しくは防止のための食事管理を含むことが更に意図される。
【0101】
[00100]本明細書で使用する場合、「経管栄養」とは、それだけに限らないが、経鼻胃チューブ、オロガストリックチューブ、胃チューブ、空腸造瘻チューブ(J−tube)、経皮的内視鏡下胃瘻造設(PEG)、ポート、例えば胃、空腸に到達させる胸壁ポート及び他の適切なアクセスポートを含む、経口投与を介する以外で動物の消化器系に投与される、完全又は不完全な栄養製品であることが好ましい。本発明の実施形態は経管栄養投与を対象とする。
【0102】
[00101]本明細書で使用する場合、「ビタミン」という用語は、身体の正常な成長及び活動に微量で必須であり、植物性食品及び動物性食品から天然に得られるか、又は合成的に製造される様々な脂溶性又は水溶性の有機物質(非限定的例としては、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンEが挙げられる)のいずれか、プロビタミン、誘導体、類似体を含むと理解されることが好ましい。
【0103】
[00102]本明細書で使用する場合、プロバイオティクス微生物(以下、「プロバイオティクス」)は、十分な量を投与したとき、宿主に健康上の利益を与えることができる、より具体的には、その腸内の微生物バランスを改善することにより宿主に有益な影響を与え、宿主の健康又は福利に効果をもたらす、微生物(半生存若しくは衰弱を含む生存、及び/又は非複製)、代謝物、微生物細胞調製物又は微生物細胞の構成要素であることが好ましい。(Salminen S、Ouwehand A.Benno Y.等、「Probiotics:how should they be defined」Trends Food Sci.Technol.1999:10 107〜10)。一般に、これらの微生物は、腸管内での病原菌の増殖及び/又は代謝を抑制するか、又は影響を与えると考えられている。プロバイオティクスは、宿主の免疫機能を活性化することもできる。このため、プロバイオティクスを食品に入れる様々な異なる方式が存在している。プロバイオティクスの例としては、Bifidobacterium株及びLactobacillus株、例えば、Bifidobacterium lactis(German Culture Collection:DSM20215)、Bifidobacterium longum(CNCM I−2170)、Lactobacillus paracasei(CNCM I−2116、CNCM I−1292)、Lactobacillus johnsonii(CNCM I−1225)、Lactobacillus salivariusがあり、Aerococcus、Aspergillus、Bacteroides、Bifidobacterium、Candida、Clostridium、Debaromyces、Enterococcus、Fusobacterium、Lactobacillus、Lactococcus、Leuconostoc、Melissococcus、Micrococcus、Mucor、Oenococcus、Pediococcus、Penicillium、Peptostrepococcus、Pichia、Propionibacterium、Pseudocatenulatum、Rhizopus、Saccharomyces、Staphylococcus、Streptococcus、Torulopsis、Weissella又はそれらの組合せが更に挙げられる。
【0104】
[00103]本発明の組成物は、医薬組成物又は栄養組成物の形態の組合せとして使用できる。好ましくは、栄養組成物を使用できる。本発明による組成物は、任意の適切な方式、例えば、経腸的又は経口的、好ましくは液体形態での投与に使用できる。場合により、組成物を、経管栄養液の形態で投与してもよい。
【0105】
[00104]場合により、本発明による組成物は栄養的に完全であってよい。即ち、該組成物は、ビタミン、ミネラル、微量元素、並びに追加の窒素源、炭水化物源及び追加の脂肪酸源を含むことができるので、ビタミン、ミネラル、炭水化物、脂肪酸、タンパク質等の1日必要量全てを本質的に補給する唯一の栄養源として使用できる。したがって、本発明の組成物は、例えば、経口栄養又は経管栄養に適した栄養的にバランスのとれた完全な食事の形態で提供できる。本発明の組成物は経口投与用であることが好ましい。
【実施例】
【0106】
[00105]以下の実施例は、本明細書に開示された方法を例示する目的のために本発明のある種の好ましい実施形態を例示しており、何ら本発明の範囲を限定するものではない。これらの実施例において、別段の指示がない限り、部及びパーセンテージは、重量である。
【0107】
実施例1 ホエータンパク質濃縮物由来の高ホエータンパク質含量(少なくとも約10g/100g又は110g/L)を有する中性ホエー液体非ゲル化組成物
最大100%のホエータンパク質含量(最大10g/100g又は11g/100ml)を有する室温で長期安定な中性ホエー液体非ゲル化組成物を、以下に例示されているフロー図に従って調製した。
【表2】

【0108】
[00106]得られた中性ホエー液体組成物のpH範囲は、約6.8〜約7.2である。中性ホエー液体組成物の他の特性としては、低粘度、好ましい甘味及び最大9ヶ月の室温で長期安定なが挙げられる。
【表3】

【0109】
[00107]任意のタンパク質の感知可能な凝集(ゲル化)なしに本発明の所望の中性ホエー液体組成物を得るために、上記のフロー図に例示されているように幾つかの条件付パラメーターを適用した。全ての成分(乳化剤、ホエータンパク質濃縮物、マルトデキストリン、糖、油、ミネラル及びビタミン)の溶解を、30℃〜60℃の間の温度にて水中で行った。次いで、混合物のpHを、KOH又はクエン酸で少なくとも約6.5〜7.5、好ましくは6.8〜7.2の間に調整した。熱処理操作は、(1)間接熱処理を用いて60〜80℃にて15秒未満予熱するステップ及び(2)直接蒸気注入を用いて140〜145℃にて7秒間滅菌するステップの2つの連続するステップを含む。次いで、滅菌相を20℃〜30℃まで冷却し、滅菌ボトルに無菌充填した。
【0110】
実施例2:ホエータンパク質ミセル由来の高ホエータンパク質含量(少なくとも約13g/100g又は143g/L)を有する中性ホエー液体非ゲル化組成物
最大100%のホエータンパク質含量(少なくとも約13g/100g又は143g/100ml)を有する室温で長期安定な中性ホエー液体非ゲル化組成物を、以下に例示されているフロー図に従って調製した。
【表4】

【0111】
[00108]得られた中性ホエー液体組成物のpH範囲は、約6.8〜約7.2である。中性ホエー液体組成物の他の特性としては、低粘度、好ましい甘味及び室温で長期安定なが挙げられる。
【表5】

【0112】
[00109]任意のタンパク質の感知可能な凝集(ゲル化)なしに本発明の所望の中性ホエー液体組成物を得るために、上記のフロー図に例示されているように、実施例1と同様の条件付パラメーターを適用した。
【0113】
実施例3:少なくとも約100〜185kcal/100gの低エネルギー含量、少なくとも約13.5g/100gの総タンパク質含量、及び少なくとも約70:30のホエー分離物とホエー加水分解物との比を有する酸性ホエー液体組成物
【表6】

【0114】
[00110]低エネルギー含量及び少なくとも約13.5g/100gの総タンパク質含量を有する酸性ホエー液体組成物の主要栄養素の内訳は以下の通りである。
【表7】

【0115】
[00111]以下は、少なくとも約100〜185kcal/100gの低エネルギー含量、少なくとも約13.5g/100gの総タンパク質含量及び少なくとも約70:30のホエー分離物とホエー加水分解物との比を有する上記の酸性ホエー液体組成物を配合物とする方法を例示するフロー図である。
【表8】

【0116】
実施例4 245kcal/100gの「高」エネルギー含量、10g/100gの総タンパク質含量、60:40のホエー分離物とホエー加水分解物との比を有する酸性ホエー液体組成物
【表9】

【0117】
[00112]高エネルギー含量及び10g/100gの総タンパク質含量を有する酸性ホエー液体組成物の主要栄養素の内訳は以下の通りである。
【表10】

【0118】
[00113]以下は、245kcal/100gの「高」エネルギー含量、少なくとも約10g/100gの総タンパク質含量及び少なくとも約60:40のホエー分離物とホエー加水分解物との比を有する上記の酸性ホエー液体組成物を配合物とする方法を例示するフロー図である。
【表11】

【0119】
[00114]別の実施形態において、本出願によるホエー組成物を、ビタミンD、好ましくは1,25ジヒドロキシビタミンD又は好ましくは25ヒドロキシビタミンDと合わせることができる。この組合せは、高齢者の筋骨格の健康を増進し、高齢者の筋骨格の健康の低下の低減を補助し、高齢者の移動性を改善し、病後又は負傷後の高齢者の筋骨格の機能性の回復を補助し、高齢者の骨量の改善を補助するのに特に有用である。
【0120】
[00115]本明細書で使用する「約」という用語は、数字の範囲のいずれの数字も指すことが一般に理解されるべきである。更に、本明細書の全ての数字範囲は、範囲内の各々の全ての整数を含むことが理解されるべきである。
【0121】
[00116]本発明は、本明細書に例示され、記載された正確な構成を限定するものではないことが理解されるべきである。したがって、本明細書に示された開示内容から又は日常的な実験により当業者により容易に達成される全ての適切な変更は、添付の特許請求の範囲に定義される本発明の趣旨及び範囲内であるとみなされる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも約100kcal/100g〜約264kcal/100gの範囲のエネルギー含量及び少なくとも約9g/100gのタンパク質含量を有する、室温で長期安定な酸性ホエー組成物であって、総タンパク質含量が少なくとも約90%〜100%のホエータンパク質からなり、周囲温度で3.5〜4.3の間の範囲のpHを有する、組成物。
【請求項2】
前記総タンパク質含量が、少なくとも約95%〜100%のホエータンパク質からなる、請求項1に記載の室温で長期安定な酸性ホエー組成物。
【請求項3】
前記ホエータンパク質源が、ホエータンパク質ミセル、ホエータンパク質濃縮物、ホエータンパク質分離物及びホエータンパク質加水分解物からなる群から選択される、請求項1に記載の室温で長期安定な酸性ホエー組成物。
【請求項4】
テクスチャーが滑らかでクリーミーである、請求項1に記載の室温で長期安定な酸性ホエー組成物。
【請求項5】
ホエータンパク質加水分解物に対する、ホエータンパク質分離物、ホエータンパク質濃縮物又はホエータンパク質ミセルの比が約40:60〜約100:0の範囲である、請求項4に記載の室温で長期安定な酸性ホエー組成物。
【請求項6】
ホエータンパク質加水分解物に対するホエータンパク質分離物の比が約70:30のである、請求項4に記載の室温で長期安定な酸性ホエー組成物。
【請求項7】
少なくとも1種の脂肪源を更に含み、前記少なくとも1種の脂肪源が、組成物の全重量に対して少なくとも約0〜12g/100gであり、総エネルギー摂取量の少なくとも約0〜41%を提供する、請求項1に記載の室温で長期安定な酸性ホエー組成物。
【請求項8】
少なくとも1種の炭水化物源を更に含み、前記少なくとも1種の炭水化物源が、組成物の全重量に対して少なくとも約12g〜30g/100gであり、総エネルギー摂取量の少なくとも約39〜64%を提供する、請求項1に記載の室温で長期安定な酸性ホエー組成物。
【請求項9】
少なくとも約100kcal/100g〜少なくとも約260kcal/100gの範囲のエネルギー含量及び少なくとも約9g/100gの範囲のタンパク質含量を有する、室温で長期安定な酸性ホエー組成物であって、総タンパク質含量が少なくとも約90%〜100%のホエータンパク質からなる、組成物を製造する方法であって、
(a)水、少なくとも1種の乳化剤及び少なくとも約14〜54%の総エネルギー摂取量を有する少なくとも1種のホエータンパク質源を約30〜50℃の温度範囲で約10分間混合して、第1の混合物を形成するステップと、
(b)前記第1の混合物と、組成物の全重量に対して少なくとも約12〜30%の少なくとも1種の炭水化物源及び少なくとも約0〜12%の少なくとも1種の脂肪源とを混合して、第2の混合物を形成するステップと、
(c)食品等級の酸又はアルカリ溶液を加えることにより、前記第2の混合物のpHを少なくとも約3.5〜4.3に調整して、酸性ホエー混合物を得るステップと、
(d)前記酸性ホエー混合物を約60〜80℃の温度範囲で約1〜10秒間予熱するステップと、
(e)前記酸性ホエー混合物を、直接蒸気注入により約120℃の温度範囲で約11秒間、次いで約60〜80℃の温度でのフラッシュにより加熱して、室温で長期安定な酸性ホエー組成物を得るステップと、
(f)前記室温で長期安定な酸性ホエー組成物を100〜240barの圧力で均質化するステップと、
(g)場合により、前記室温で長期安定な酸性ホエー組成物を約20℃〜30℃の温度範囲で冷却するステップと、
(h)前記室温で長期安定な酸性ホエー組成物を滅菌容器に移すステップと
を含む方法。
【請求項10】
前記総タンパク質含量が、少なくとも約95%〜100%のホエータンパク質からなる、請求項4に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも約8g/100g〜約13g/100g又は少なくとも約90g/L〜約143g/Lのタンパク質含量を有する、中性の室温で長期安定な経腸非ゲル化液体組成物であって、総タンパク質含量が、少なくとも約90〜100%の非加水分解無傷ホエータンパク質からなり、少なくとも約6.5〜約7.5の範囲のpHを有し、少なくとも140kcal/100g超のエネルギー含量を有する組成物。
【請求項12】
前記ホエータンパク質源が、ホエータンパク質濃縮物、ホエータンパク質ミセル、ホエータンパク質分離物及びホエータンパク質加水分解物である、請求項9に記載の中性の室温で長期安定な経腸非ゲル化液体組成物。
【請求項13】
前記総タンパク質含量が、100%のホエータンパク質ミセルからなり、組成物の全重量に対して少なくとも約8g/100g〜約13g/100g又は少なくとも約90g/L〜約143g/Lの範囲である、請求項12に記載の中性の室温で長期安定な経腸非ゲル化液体組成物。
【請求項14】
少なくとも20℃以下の温度で200mPa・s未満の粘度を有する、請求項9に記載の中性の室温で長期安定な経腸非ゲル化液体組成物。
【請求項15】
前記少なくとも1種のビタミン、ミネラル及び微量元素が、FSMP規制による量で使用される、請求項9に記載の中性の室温で長期安定な経腸非ゲル化液体組成物。
【請求項16】
前記少なくとも1種の炭水化物源が、マルトデキストリン並びに/又はスクロース及びラクトースである、請求項9に記載の中性の室温で長期安定な経腸非ゲル化液体組成物。
【請求項17】
少なくとも約110kcal/100g〜約200kcal/100gの範囲のエネルギー含量及び少なくとも約8g/100g〜約13g/100g又は約90g/L〜約143g/Lの範囲のタンパク質含量を有する、中性の室温で長期安定な経腸非ゲル化液体組成物であって、総タンパク質含量が少なくとも約60〜100%の非加水分解無傷ホエータンパク質からなる組成物を製造する方法であって、
(a)少なくとも1種のホエータンパク質源と、少なくとも1種の炭水化物源、脂質源及び乳化剤とを水中で30℃〜60℃の間の温度範囲で混合して、第1の混合物を形成するステップと、
(b)前記第1の混合物に、少なくとも1種のミネラル、ビタミン、微量元素及び増粘剤並びに少なくとも1種の追加の成分を加えて、第2の混合物を形成するステップと、
(c)食品等級の塩基又は酸を加えることにより、前記第2の混合物のpHを6.5〜7.5の間に調整して、ゲル化していない中性液体組成物を得るステップと、
(d)前記中性非ゲル化液体組成物を60〜80℃の間の温度で予熱するステップと、
(e)前記中性非ゲル化液体組成物を、直接蒸気注入を用いて140〜145℃の間の温度範囲で滞留時間7秒間の超高温処理下に曝して、中性の室温で長期安定な非ゲル化液体組成物を得るステップと、
(f)前記中性の室温で長期安定な非ゲル化液体組成物を約60℃〜80℃の温度範囲にて200barの全圧で均質化するステップと、
(g)前記中性の室温で長期安定な非ゲル化液体組成物を約20℃〜35℃の温度範囲で冷却するステップと、
(h)前記中性の室温で長期安定な非ゲル化液体組成物を経腸使用のための滅菌容器に移すステップと
を含む方法。
【請求項18】
前記総タンパク質含量が、少なくとも約95%〜100%の非加水分解ホエータンパク質からなる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
ステップ(a)の前記混合ステップが、30℃〜35℃の温度で行われる、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
少なくとも1種の増粘剤がデンプンである、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
ステップ(c)の前記食品等級の塩基溶液が水酸化カリウム又は水酸化ナトリウムである、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
ステップ(c)の前記食品等級の酸がクエン酸又はリン酸である、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
ステップ(d)の前記予熱が管状熱交換器により65℃以下で行われる、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
ステップ(e)の前記直接蒸気注入に次いで、60℃〜80℃の間の温度範囲又は約65℃でフラッシュが行われる、請求項17に記載の方法。
【請求項25】
ステップ(f)の前記均質化ステップが65℃で行われる、請求項17に記載の方法。
【請求項26】
請求項17に記載の方法により製造される、請求項9〜16のいずれか一項に記載のホエータンパク質を有する、中性の室温で長期安定な経腸非ゲル化液体組成物。
【請求項27】
少なくとも約100kcal/100g〜少なくとも約260kcal/100gの範囲のエネルギー含量及び少なくとも約9g/100gの範囲のタンパク質含量を有する、室温で長期安定な酸性ホエー組成物であって、総タンパク質含量が少なくとも約90%〜100%のホエータンパク質からなる、組成物を製造する方法であって、
(a)水、少なくとも1種の乳化剤及び少なくとも約14〜54%の総エネルギー摂取量を有する少なくとも1種のホエータンパク質源を約30〜50℃の温度範囲で約10分間混合して、第1の混合物を形成するステップと、
(b)前記第1の混合物と、組成物の全重量に対して少なくとも約12〜30%の少なくとも1種の炭水化物源及び少なくとも約0〜12%の少なくとも1種の脂肪源とを混合して、第2の混合物を形成するステップと、
(c)食品等級の酸又はアルカリ溶液を加えることにより、前記第2の混合物のpHを少なくとも約3.5〜4.3に調整して、酸性ホエー混合物を得るステップと、
(d)前記酸性ホエー混合物を約60〜80℃の温度範囲で約1〜10秒間予熱するステップと、
(e)前記酸性ホエー混合物を、直接蒸気注入により約120℃の温度範囲で約11秒間、次いで約60〜80℃の温度でのフラッシュにより加熱して、室温で長期安定な酸性ホエー組成物を得るステップと、
(f)前記室温で長期安定な酸性ホエー組成物を100〜240barの圧力で均質化するステップと、
(g)場合により、前記室温で長期安定な酸性ホエー組成物を約20℃〜30℃の温度範囲で冷却するステップと、
(h)前記室温で長期安定な酸性ホエー組成物を滅菌容器に移すステップと
を含む方法。
【請求項28】
前記総タンパク質含量が、少なくとも約95%〜100%のホエータンパク質からなる、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
請求項27に記載の方法により製造される、少なくとも約9g/100gのホエータンパク質含量を有する、室温で長期安定な酸性ホエー組成物。
【請求項30】
請求項1〜8、11〜16、26及び29に記載されたものからなる群から選択される組成物を、前記投与が有益となり得る人に投与するステップ
を含む使用方法。
【請求項31】
請求項9、10、17〜25、27及び28に記載されたものからなる群から選択される方法により製造される組成物を、前記投与が有益となり得る人に投与するステップ
を含む使用方法。

【公開番号】特開2012−5482(P2012−5482A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−132398(P2011−132398)
【出願日】平成23年6月14日(2011.6.14)
【分割の表示】特願2011−531403(P2011−531403)の分割
【原出願日】平成21年10月16日(2009.10.16)
【出願人】(599132904)ネステク ソシエテ アノニム (637)
【Fターム(参考)】