説明

ホスト有機体に生物学的活性分子を作る方法

【課題】ホスト有機体に生物学的活性分子を作る方法を提供することにある。
【解決手段】かかる方法は、a.バルク部分及び気孔を有する生物学的適合性封じ込めカプセル、気孔は生物学的に望ましい速度で,封じ込めカプセルの内側の細胞、組織、又は薬物組成物によって作られる生物学的活性分子の拡散を許すが、前記封じ込めカプセルの外側に位置した免疫分子の通過を阻止し、b.前記生物学的活性分子を作ることのできる細胞、組織、又は薬物組成物を前記封じ込めカプセルに充填し、c.前記カプセル内に収容された前記細胞、組織、又は薬物組成物を前記ホスト有機体に投与することからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的には、バルク支持体を有する微小加工多孔質膜に関し、特に、バルク支持体が、膜を製作する基板の未エッチング部分である、微小加工多孔質膜に関する。
【背景技術】
【0002】
多孔質膜は、絶対粒子フィルター、免疫バリヤーカプセル、およびタイムリリース拡散バリヤーとして使用される。多孔質膜を有する装置は製作及び使用中日頃の取り扱いに耐えるほどの機械的強さを有していなければならない。これらの装置はまた意図した用途に固有の機械的応力に耐えることができなければならない。
【0003】
濾過装置は、例えば、今日の健康管理テクノロジー、特にバイオテクノロジーの不可欠な必需品である。健康管理産業内で、正確な濾過装置を必要とする領域の例は患者及び血液生成物の保護、診断、及び製薬、バイオテクノロジー、及び血液分裂技術を含むバイオ処理の分野である。これらの領域内のいくつかの適用について、フィルターの要求される特徴は孔径及び分布の制御、及び相対拡散速度の制御、ナノメートル範囲程の絶対孔径、高い耐久性、及び生物化学的及び機械的抵抗を含む。或る既存の商業的に重要なフィルター技術はポリマー膜を採用し、列挙された適用領域の種々の要望に本気で取りかかることができない。
【0004】
有機フィルター、無機フィルターのいずれについても、50オングストローム乃至100オングストロームの範囲内にフィルター孔径を正確に制御することにより、例えば、生物学的に重要な分子を、孔径に基づいて機械的に分離させる。
【0005】
当該技術の現在の状態では、写真平版印刷法の0.35ミクロンの解像限度よりも大変小さい孔径を有するフィルターの大変限られた選択がある。この範囲内の孔径を有する従来知られた或るフィルターはポリカーボネート膜フィルター、焼結フィルター、ゼオライト、及びバルク微小加工構造の微小加工フィルターの1つの例を含む。
【0006】
500オングストローム乃至3500オングストロームの孔径が必要とされる場合にポリカーボネート膜フィルター(核気孔フィルター)が使用される。しかしながら、これらのフィルターは、高温で、強い有機溶剤には使用すすることができず、或いは、抽出されたオリゴマーに耐性がない場合には使用することができない。そのような訳で、単位面積当たり十分大きい気孔数を有することと、部分的に重なり合った気孔のあまりにも多い例を有することとの間には妥協がある。部分的に重なり合った気孔は、フィルターの中に、フィルターの定格カットオフ孔径よりも直径が大きい粒子を通過させる通路を作る。
【0007】
金属又はセラミックのような他の材料で入手できるフィルターはバラバラの粒子を一緒に焼結することによって作られる。この技術は、比較的大きなデッド容積をもち、且つ輸送が不可能である厳密なカットオフ孔径を有しない無秩序な構造体を得る。
【0008】
大きなチャンネルをもった結晶構造を有するゼオライトのような材料は焼く5オングストローム乃至50オングストロームの限られた範囲の分子ふるいとして使用することができる。ゼオライトは薄い膜としての製作に改めちれない。
【0009】
バルク微小加工構造をもつ微小加工フイルターは「センサー及びアクチエータ」A21−A23(1990年)904乃至907頁にキテイアイスランドによって説明されている。この設計は、シリコンがボロンで十分にドープされたとき或いはエッチング剤に耐えるようになるというシリコンの特殊な性質を使用する。このフィルターの気孔長さは、単結晶シリコンー熱酸化物界面での正面源からのボロンの横方向拡散によって決定される。周知のように、かかる横方向拡散は表面源から離れる、表面源の平面での拡散である。この技術の使用は気孔長さを正確に制御することを大変困難にする。また、このフィルターの製作方法はシリコン以外の材料には適用することができない。
【0010】
かくして、現在、種々の材料で製造することができ、制御された壁形状、及び焼く3500オングストロームよりも小さい孔径をもち、重なりの可能性を許さない正確なパターンに配列された気孔を有するフィルターの要望があることがわかる。
【0011】
このような孔径はまた免疫隔離用の微小被包に必要である。医薬研究者は、免疫隔離をもたらす微小被包の概念が有効であるこたとを証明した。哺乳動物のインシュリン、並びに、他の器官によるグルコースの新陳代謝を制御するホルモンを作るランゲルハンス島が異なる種間に移植された。例えば、豚のランゲルハンス島がグルコースの新陳代謝を制御するために糖尿病の犬に移植された。しかしながら、それらの保護されてないランゲルハンス島は短時間機能するに過ぎず、その後ホストの免疫系がドナーの細胞を殺した。
【0012】
ランゲルハンス島を免疫系巨大分子から保護するためにランゲルハンス島の被包はドナー細胞の生存を長くすることを示した。種々被包手段を使用することによって、豚のランゲルハンス島からのインシュリン産出が犬では100日間維持された。今日までの被包方法は、半透過性非晶有機ポリマー膜、焼結粒子、かみ合ったセラミック針を使用することを含む。しかしながら、重大な問題に遭遇し、それらのカプセルの有効寿命を100日以下に制限する。
【0013】
上記のカプセルの2つの主な問題は不適当な機械的強さ、及び孔径及び気孔分布の不十分な制御である。特に、有機膜カプセル壁の厚さを、所要の機械的強さをもたらすように増すと、分子は、要求されたとき、適切な生理学的応答をもたらすのに十分急速にカプセル壁を通して拡散することができない。その上、焼結粒子又は非晶ポリマー膜の場合のように、気孔の孔径及び分布を制御することができなければ、免疫巨大分子がカプセルに入る程大きい開口部を作る大き過ぎた気孔又は重なり合った気孔の確立が高い。
【0014】
カプセルが、機械的強さと、免疫グロビン及び組織適合性(MHC)抗原のような大きな分子の通過を阻止しながら、酸素、水、二酸化炭素、及びグルコースのような小さい分子の自由な拡散を許す能力とを組み合わせることが望ましい。
【0015】
また、ドナー細胞によって作られるインシュリンのような中間的な大きさの分子生成物は必要とされる新陳代謝の機能をもたらすのに十分な速度でホストに拡散させることができなければならない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従って、本発明の目的は、機械的強さとナノメートルの範囲までの一定な孔径とを組み合わせた構造体を提供することにある。
【0017】
本発明の他の目的は、簡単な加工技術を使って得られる、かかる構造体を提供することにある。
【0018】
本発明の追加の目的及び利点は以下に続く説明に記載され、これは一部が説明から明らかであり、或いは、本発明の実施によって知ることができる。本発明の目的及び利点は請求の範囲に特に指摘された手段及び組み合わせによって実現され且つ得られる。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明はバルク支持体を有する微小加工多孔質膜及びそれらの製作方法を提供する。
【0020】
本発明の方法の1つの実施形態は、第1所定エッチング工程を使用してエッチングできるバルク基板を準備すること、バルク基板の第1表面の第1領域に薄い皮膜エッチング停止部を形成することを含む。エッチング停止部は第2所定エッチング工程を使用してエッチングでき、第1所定エッチング工程を使用してエッチングできない。次に、本方法は第1領域の少なくとも一部分を含む、第1表面の第2領域にフィルター構造体の少なくとも一部を形成することを伴う。薄い皮膜エッチング停止部の下の、バルク基板の一部分は、バルク基板の第2表面で始まる第1所定エッチング工程を使用してエッチングされ、薄い皮膜エッチング停止部の少なくとも一部分は第2所定エッチング工程を使用してエッチングされる。
【0021】
本発明の方法の第2の実施形態は、所定エッチング工程を使用してエッチングできるバルク基板を準備すること、バルク基板の第1表面の領域にフィルター構造体の少なくとも一部を形成することを含む。フィルター構造体の形成は、所定エッチング工程を使用してエッチングできない層を第1表面に成形することを含む。この層の厚さはフィルター構造体の気孔の長さの少なくとも一部を定める。
【0022】
第1表面の領域の下の、バルク基板の一部分は、バルク基板の第2表面で始まる、所定エッチング工程を使用してエッチングされる。
【0023】
本発明によれば、ホスト有機体に生物学的活性分子を作る方法であって、
a.バルク部分及び気孔を有する生物学的適合性封じ込めカプセル、気孔は生物学的に望ましい速度で,封じ込めカプセルの内側の細胞、組織、又は薬物組成物によって作られる生物学的活性分子の拡散を許すが、前記封じ込めカプセルの外側に位置した免疫分子の通過を阻止し、
b.前記生物学的活性分子を作ることのできる細胞、組織、又は薬物組成物を前記封じ込めカプセルに充填し、
c.前記カプセル内に収容された前記細胞、組織、又は薬物組成物を前記ホスト有機体に投与する、上記方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
明細書の一部に組み込まれ且つそれを構成する添付図面は発明の好ましい実施形態を概略的に示し、上記の一般的な説明及び下記の好ましい実施形態の詳細な説明と一緒に、発明の原理を説明するのに役立つ。
【0025】
本発明をいくつかの好ましい実施形態について説明する。好ましい実施形態は微小加工粒子フィルター及び収容カプセル並びにそれらの製造方法である。本発明によるフィルター100を図1に示す。
【0026】
フィルター100はバルク基板106のキャビティの開口部を横切って延びる多孔質膜102aを有する。バルク基板106は単結晶シリコンであるのがよく、また膜102aは薄い皮膜ポリシリコンで構成されるのがよい。気孔107の流れ経路を矢印108aで指示する。流れは矢印108aの方向と反対方向にも起こることを気づくべきである。矢印108aの流れ方向について、気孔は入口110a及び出口112aを有する。入口110aの幅W1は平版印刷法の解像限度によって許される寸法(写真平版印刷法の約0.35ミクロンよりも大きい)のものであり、出口112aの幅W2は数ナノメートル程度に狭い。この意味では、開示した装置は血液細分化及び他の生物医学工学領域に必要とされるもののような多孔径逐次濾過装置を提供する。フィルター10又はそのパーツは特別な要望に従って、無機材料又は有機材料の追加のコーテイング(図示せず)によって被覆されるのがよい。特に、タンパク質吸着を最小にするためにアルミニウム、鉄、タンタル、又はステンレス鋼を採用するのがよい。
【0027】
上記のフィルターの製作はバルク基板106を構成するシリコンウエーハで始まる。図2に示すように、二酸化シリコンの薄い皮膜又は層114及び116を基板の表面及び背面に、当該技術で知られているように約0.58ミクロンの厚さまで熱的に成長させる。この酸化にとって典型的な加工パラメータは1000℃で純粋酸素中での2時間湿式酸化である。
【0028】
次いで、ポリシリコンの層118及び120を図3に示すように、基板の表面及び背面で成長させる。層118及び120を当該技術で知られているように、化学蒸着法(CVD)によって数ミクロンの厚さまで成長させるのがよい。層の典型的な厚さは3ミクロンである。次いで、図4に示すように、層118を、開口部122を形成するように写真平版印刷法を使ってパターン付けし、開口部の壁は以下の続く加工説明から分かるように、濾過チャンネルの出口112aを構成する。このパターン付けは、当該技術でよく知られているように、プラズマエッチング法を使って行われるのがよい。典型的な製作パラメータは塩素化学を使用する250ワットの電力である。使用されるエッチング法に応じて、層118がパターン付けされるときに、或いは別のやり方として、引き続くエッチング段階で、層120をエッチングで除去する。
【0029】
次いで、ウエーハ全体を純粋(乾燥)酸素環境の中で酸化させる。露出したポリシリコン表面全体を酸化させ、ポリシリコン表面は二酸化シリコンコーティングを成長させ、その厚さは当該技術で知られているように、酸化温度及び酸化時間のような酸化パラメータを変化させることによって正確に制御することができる。例えば、200オングストロームの厚さが900℃の温度で1時間の酸化で得られる。この酸化段階に続く形態を図5に示す。即ち、ポリシリコン118は酸化物124で被覆される。この酸化段階の目的は数ナノメートル程度の良く制御された厚さの薄い層をつくることである。周知のように、この層の引き続くエッチングは上記の特許出願第08/207,457号の教示に従って、気孔出口112aのような装置の気孔107aの狭い部分を作る。この特許出願の開示を援用する。
【0030】
次いで、引き続くポリシリコン層のアンカー領域を作るために、普通の写真平版印刷法を使用してポリシリコン層118の選択領域126から薄い二酸化シリコン124を除去する。
【0031】
次に、ポリシリコン層の第2層128を、層118について上で説明したように付着させる。同時に、ウエーハの背面側にポリシリコン層130を成長させる。層128はウエーハの表面を一致して覆い、かくして、図7に示すように、ウエーハ表面の開口部122(図4)を埋める。
【0032】
この時点で、層128はパターン付けされ、孔132が図8に示すように普通の写真平版印刷法で作られる。これらの孔は下に位置した酸化物層を露出させたままにし、気孔入口110a(図1)を構成する。かくして、エッチングが好ましくは薄い二酸化シリコン124及びその下に位置したポリシリコン層118をエッチングしないように選択的である方法でなされる。層118をエッチングするのに使用される同じ方法を使用してもよい。孔132は必ずしもそれ自体濾過ポートではないが、むしろ、酸化物124を除去する、かくして、濾過チャンネルを作るエッチング剤の侵入用通路として用いられる。使用されるエッチング法に応じて、層130は、層128をパターン付けするときに、或いは別のやり方として、引き続くエッチング段階でエッチングで除かれる。
【0033】
単結晶シリコンをエッチングするのに使用される化学薬品はまたポリシリコンを浸食する。従って、キャビティ104(図1)を作る基板106のエッチング中ウエーハの表面を保護する処理段階が必要である。バリヤーコーティングを作るための都合の良い方法は低温酸化物付着(LTO)である。図9に示すように、ウエーハの正面に層134を被覆し、背面に層136(下記のパターン付け段階後図9に示す)を被覆するためにLTOはCVDで置き替えられる。今では、酸化物層116及び138(図9)に背面側エッチング窓138を構成するのに普通の写真平版印刷技術を使用することができる。
【0034】
次に、マスクとして層116及び138を使用して基板106にキャビティ104(図1、10)をエッチングする。厚い基板のエッチング中の低アンダーカット及びエッチトップ酸化物層114に関する高い選択性のために、当該技術で知られているように、単結シリコン基板には異方性湿式エッチングを使用してもよい。例えば、EDPエッチング剤を使用してもよい。周知のように、EDPは、例えば、エチレンジアミン1000g、水320g、ピロカテコール320g及びピラジン6gの組み合わせからなる。
【0035】
基板エッチング処理は、二酸化シリコンがEDPで著しく浸食されないから、二酸化シリコンのエッチング停止層114で自動的に停止する。この時点で、装置は最終処理段階、即ち、エッチング停止層134、114、116、及び136の除去及び気孔構成犠牲層124の除去の準備が整う。
【0036】
この除去はフッ化水素酸(HF)で湿式エッチングによって達成しうる。出来た構造は図1の上記構造である。
【0037】
本発明によるフィルターの真っ直ぐな貫通気孔についての第2実施形態は図11のフィルター138である。フィルター138はまたバルク基板106のキャビティ104の開口部を横切って延びる多孔質膜を有する。バルク基板106は単結晶シリコンであるのがよく、また膜102bは薄い皮膜ポリシリコンで構成されるのがよい。気孔107bの流れ経路を矢印108bで指示する。流れは矢印108bの方向と反対方向にも起こることを気づくべきである。真っ直ぐな貫通気孔の幅W3は数ナノメートル程狭い。フィルター100におけるように、フィルター138又はそのパーツは、タンパク質吸着のために、アルミニウム、鉄、タンタル、又はステンレス鋼のような追加のコーティングによって被覆されるのがよい。
【0038】
図12に示すように、フィルター138の製作は二酸化シリコン層144及び146で被覆された単結晶シリコンウエーハ106の両側に両側整合マーク140及び142を付けることで始まる。両側整合マークを作るのに使用されるあらゆる工程は微小電子加工の分野における普通の手順である。
【0039】
次いで、図13に示すように、マークとして酸化物層144を使用してウエーハ106の表面側に数ミクロンの凹部148を生じさせる。シリコン異方性湿式エッチングを使用してフィルター100のキャビティ104のエッチングについて上記したようにこの凹部を作ることができる。〈100〉方向に沿うシリコンエッチング速度が〈111〉方向に沿うよりも大変早いから、図13でわかるように、シリコン表面に関して54.74°の角度を生じさせる。
【0040】
図14に示すように、凹部148の底に二酸化シリコンエッチング停止パッド150を生じさせるために、ウエーハを更に熱的に酸化させ、且つ出来た酸化物をパターン付けする。
【0041】
図15乃至19に示す処理段階は図3乃至7に示す処理段階と同様である。図15に示すように、ポリシリコンの第1層152を付着させる。次いで、図16に示すように、層152を開口部154でパターン付けする。開口部154の壁はフィルターの気孔の一次コイルを確立する。次いで、ポリシリコン層152お薄い犠牲二酸化シリコン層156を成長させる(図17)。犠牲層156の厚さは最終気孔幅を決定する。図18に示すように、写真平版印刷法を使用して凹部148の側、パターン付け層152の一部、及びウエーハ106のトップの層152の部分の二酸化シリコン156を除去する。二酸化シリコン156のこの除去の目的は次のポリシリコン付着のためのアンカー窓を開くことにある。次いで、第2ポリシリコン層158を付着させてポリシリコン層152に固定する(図19)。
【0042】
機械的ラップ及び研磨盤を使用して図19に示す点線160の直ぐ上の望まないシリコン材料を除去することができるので真っ直ぐな貫通気孔が得られる。ポリシリコン層152、158の限られた厚さのために、かかる薄い層を均一にラップ掛けし且つ研磨することが容易である。ウエーハの数ミクロンの深さの凹部が微小フィルター構造体に作業する前にラップ仕上げ及び研磨のための余分の作業空間をもたらす事実によって凹部148の形成に若干動機を与える。出来た構造体を図20に示す。
【0043】
次いで、研磨したウエーハのトップにLTO層160を付け、対応するLTO層162を、シリコン基板の異方性エッチングに先立って、図21に示すようにウエーハの底面に同時に付ける。
【0044】
次いで、普通の写真平版印刷法を使用して背面側エッチング窓を構成する。次いで、ウエーハを上記のようにシリコン異方性エッチング法でエッチングして図22及び11に示すようにキャビティ104を作る。最後に、湿式HFエッチングを使用してエッチング停止層及び気孔の二酸化シリコンを除去し、その結果、図11に示す仕上げフィルターになる。
【0045】
エチリンジアミン ピロカテコール(EDP)のような或る異方性エッチング剤でのシリコンに対するエッチング速度は、シリコンにボロンを充分にドープさせれば、劇的に減少し、エッチング停止を定めるための所謂「P+エッチング停止」技術を引き起こす。この技術は下記の2つの実施形態に教示されているように本発明の状況に有利に使用される。
【0046】
本発明の第3実施形態は図23に示すフィルター164である。フィルター164は、多孔質膜102cにボロンを充分にドープさせ、多孔質膜102cが補強リブ166を有する事実を除いてフィルター100と同様である。多孔質膜102cはバルク基板106のキャビティ104の開口部を横切って延びる。バルク基板106は単結晶シリコンである。気孔は入口110c及び出口112cを有する。気孔入口110cは気孔出口110cよりも広い。入口110cの幅W4は平版印刷法の解像限度によって許される寸法(写真平版印刷法の約0.35ミクロンよりも大きい)のものであり、出口112cの幅W5は数ナノメートル程度に狭い。かくして、フィルター164は上で説明したように多孔径逐次濾過装置を提供する。また上で開示したように、フィルター164又はそのパーツはアルミニウム、鉄、タンタル、又はステンレス鋼のような追加のコーテイングによって被覆されるのがよい。
【0047】
図24はフィルター164の膜102cのレイアウトの平面図である。気孔入口110c及び出口112cの水平位置に加えて、アンカー領域168の水平位置をも示す。
フィルター164の製作は図25に示すように、酸化物マスクを使用して六角形の補強トレンチ170をウエーハ106にエッチングして始まる。これらのトレンチを製作の後の段階でポリシリコンで満たして濾過ユニットの垂直方向の機械的強度を増す。典型的なトレンチ幅W6及び深さDはそれぞれ約4ミクロン及び5ミクロンである。
【0048】
次いで、ウエーハを当該技術で知られているように、洗浄し、湿式酸化して図26に示すように、3800オングストロームの二酸化シリコンを得る。この段階は追加のエッチング停止並びにボロン拡散バリヤーを作ることにある。
【0049】
次いで、ウエーハの背面側の酸化物を除去する。図27に示すように、厚さ3ミクロンのポリシリコン皮膜174を付着させ、引き続いて、固体ボロン源を使用してポリシリコン皮膜174にロンを充分にドープさせる。ポリシリコン中のボロンの濃度は立方センチメートル当たり5×1019を上回る。層174にさらに写真平版印刷法でパターン付けをし、当該技術で知られているように、プラズマでエッチングして長方形の開口部176を開け(図28)、その壁はフィルターの気孔出口を構成する。ウエーハの背面側のポリシリコンを除去する。
【0050】
ウエーハを再び洗浄し、比較的低温(900℃)の乾式酸化工程を使用して200オングストロームの薄い酸化物層178をポリシリコン層174の上に発生させる(図29)。
【0051】
次いで、アンカー開口部168を図30に示すように酸化物層178にエッチングする。これらの開口部を使用して引き続くポリシリコン層をポリシリコン層に固定する。
次に、第2ポリシリコン層180を図31で分かるように付着させ、そして、これにボロンを充分にドープさせる。図32に示すように、ポリシリコン層180に孔182をエッチングしてその下に位置する酸化物178を露出させる。
【0052】
LTO182の保護層を図33に示すようにウエーハの両側に付着させ、背面側にパターン付けをして図34に示すようにシリコンエッチング窓184を開ける。
次いで、EDPのような異方性シリコンエッチング剤を使用して基板106をエッチングし、図35に示すように、キャビティ104を作る。
【0053】
最後に、LTOの保護層182、気孔を構成する熱酸化物層178及びエッチング停止熱酸化物層172をHFを使ってエッチングで除いて図23のフィルターを得る。
EDPでのP+シリコンのエッチング停止特性を使用して、エッチング停止酸化物層172の付着及び第1ポリシリコン層174の付着を除去することによって上記の加工段階の数をへらすことも可能である。下記の方法で補強リブを作ることが出来ないから、トレンチ170のエッチングも除去する。図36に示す、出来たフィルター184は、補強リブ166がないけれども 図23のフィルターと同様である。
【0054】
図36のフィルターを得るために、図37に示すように、固体ボロン源を使用して洗浄したシリコンウエーハにボロンを充分にドープさせてエッチング停止層186を得る。温度及び拡散時間はエッチング停止186がどのくらいの深さであるかで決まる。エッチング停止の深さの典型的な値は1−10ミクロンである。このドープしたP+シリコンの機能は図23−35の実施形態における層174の機能と同様であり、それはフイルター構造の一部、並びに薄い二酸化シリコン層を発生させるように反応する材料を作ることにある。次いで、このドープしたP+シリコンにパターン付けをし、図38に示すようにプラズマでエッチングして開口部188を生じさせる。エッチング深さは、フィルター気孔が層186を完全に通るようにP+層を貫通するに充分深くなければならない。開口部188の壁は仕上げフィルターにフィルター気孔出口を構成する。
【0055】
ウエーハを洗浄し、比較的低温(900℃)の乾式酸化を使用して200オングストロームの薄い酸化物層190をエッチング停止層186及び基板106の上に発生させる(図39)。
【0056】
次いで、アンカー開口部192を図40に示すように酸化物層190にエッチングする。これらの開口部を使用して引き続くポリシリコン層をエッチング停止層186に固定する。
【0057】
次に、第2ポリシリコン層194を図41で分かるように付着させ、そして、これにボロンを充分にドープさせる。図42に示すように、ポリシリコン層194に孔182をエッチングしてその下に位置する酸化物190を露出させる。
【0058】
LTO198の保護層を図43に示すようにウエーハの両側に付着させ、背面側にパターン付けをして図44に示すようにシリコンエッチング窓200を開ける。
【0059】
次いで、EDPのような異方性シリコンエッチング剤を使用して基板106をエッチングし、図45に示すように、キャビティ104を作る。
【0060】
最後に、LTOの保護層198、気孔を構成する熱酸化物層190をHFを使ってエッチングで除いて図36のフィルターを得る。
【0061】
上記のフィルターを追加のフィルター又は非多孔質基板と組み合わせて例えば、細胞移植の免疫隔離に使用できる封じ込めカプセルを作ることができる。このようなカプセル204は図1のフィルター100のようなフィルター又は基板に集積させた複数のかかるフィルターを、図46に示すように、フィルターの背面側で第2のウエーハ202に接合したときに得られる。同様なカプセルを図11のフィルター138で、或いは図47に示すように、図23のフィルター164で得ることができる。接合方法はカプセルに収容された材料と適合できなければならない。冷間プレス及びPMMA(ポリメチル メタクリレート)又はポリエチレンベースのアタチメントを使用しても良く、これは生体分子、細胞又は組織のような、カプセルに収容された生物材料を損傷させない。同様に、これらの方法は薬物化合物の封入に適している。共融金結合は優れたシリコン接合方法を提供するが、伴われる温度がカプセルの中身を損傷させなければ使用できるにすぎない。カプセルに生きた細胞を充填する方法は上記の特許出願第08/254,330号に開示されており、その開示は援用されている。
【0062】
フィルターに接合されたウエーハは図46及び47に示すように、加工されなくてもよいし、或いは需要に応じて,バルク加工されてもよい。例えば、第2のウエーハをある程度までエッチングしてフィルターウエーハの背面側のキャビティと同様なキャビティをその表面側に作ってもよい。
【0063】
例えば、ジグを使用することによる2つのウエーハの正確な整合及び接合により容積の大きい微小カプセルができる。第2のウエーハはまた上記のフィルターの製作について説明したようにバルク及び表面加工されて第1のウエーハの虚像をもたらす。図36のフィルター184について図48に示すように、正確な整合及び接合が両側に濾過ユニットを設けたカプセル208を得る。両側の濾過ユニットは同じ気孔径を有する必要はない。このような場合には、多バリヤーをもったフィルターができ、その各々は異なる大きさの粒子を解放する。
【0064】
要するに、バルク支持体をもった多孔質膜及びその製作方法を開示した。図示したように、たたる装置はフィルター及び封じ込めカプセルとして有用である。
【0065】
開示したフィルターは上記の出願第08/207,457号及び第08/254,330号に開示された微小加工粒子フィルター及び微小カプセルから由来する。しかしながら、上記のバルク微小加工補強構造と関連して他の多孔質膜を採用してもよい。写真平版印刷法によって構成された気孔を使用することは或る適用には充分ですらある。その上、装置を同じ基板上の他の微小加工装置と一体にしてもよい。
【0066】
本発明を多数の好ましい実施形態によって説明した。しかしながら、本発明は示し且つ説明した実施形態に限られない。むしろ、発明の範囲は添付の請求の範囲で定められる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明によるフィルターの概略断面図である。
【図2】図1のフィルターの製作における段階を示す概略断面図である。
【図3】図1のフィルターの製作における段階を示す概略断面図である。
【図4】図1のフィルターの製作における段階を示す概略断面図である。
【図5】図1のフィルターの製作における段階を示す概略断面図である。
【図6】図1のフィルターの製作における段階を示す概略断面図である。
【図7】図1のフィルターの製作における段階を示す概略断面図である。
【図8】図1のフィルターの製作における段階を示す概略断面図である。
【図9】図1のフィルターの製作における段階を示す概略断面図である。
【図10】図1のフィルターの製作における段階を示す概略断面図である。
【図11】本発明によるフィルターの他の実施形態の概略断面図である。
【図12】図11のフィルターの製作における段階を示す概略断面図である。
【図13】図11のフィルターの製作における段階を示す概略断面図である。
【図14】図11のフィルターの製作における段階を示す概略断面図である。
【図15】図11のフィルターの製作における段階を示す概略断面図である。
【図16】図11のフィルターの製作における段階を示す概略断面図である。
【図17】図11のフィルターの製作における段階を示す概略断面図である。
【図18】図11のフィルターの製作における段階を示す概略断面図である。
【図19】図11のフィルターの製作における段階を示す概略断面図である。
【図20】図11のフィルターの製作における段階を示す概略断面図である。
【図21】図11のフィルターの製作における段階を示す概略断面図である。
【図22】図11のフィルターの製作における段階を示す概略断面図である。
【図23】本発明によるフィルターの更に他の実施形態の概略断面図である。
【図24】図23のレイアウトを示す平面図である。
【図25】図23のフィルターの製作における段階を示す概略断面図である。
【図26】図23のフィルターの製作における段階を示す概略断面図である。
【図27】図23のフィルターの製作における段階を示す概略断面図である。
【図28】図23のフィルターの製作における段階を示す概略断面図である。
【図29】図23のフィルターの製作における段階を示す概略断面図である。
【図30】図23のフィルターの製作における段階を示す概略断面図である。
【図31】図23のフィルターの製作における段階を示す概略断面図である。
【図32】図23のフィルターの製作における段階を示す概略断面図である。
【図33】図23のフィルターの製作における段階を示す概略断面図である。
【図34】図23のフィルターの製作における段階を示す概略断面図である。
【図35】図23のフィルターの製作における段階を示す概略断面図である。
【図36】本発明によるフィルターの更に他の実施形態の概略断面図である。
【図37】図36のフィルターの製作における段階を示す概略断面図である。
【図38】図36のフィルターの製作における段階を示す概略断面図である。
【図39】図36のフィルターの製作における段階を示す概略断面図である。
【図40】図36のフィルターの製作における段階を示す概略断面図である。
【図41】図36のフィルターの製作における段階を示す概略断面図である。
【図42】図36のフィルターの製作における段階を示す概略断面図である。
【図43】図36のフィルターの製作における段階を示す概略断面図である。
【図44】図36のフィルターの製作における段階を示す概略断面図である。
【図45】図36のフィルターの製作における段階を示す概略断面図である。
【図46】図1のフィルターの構造体を使用して形成された封じ込めカプセルの概略断面図である。
【図47】図23のフィルターの構造体を使用して形成された封じ込めカプセルの概略断面図である。
【図48】図36のフィルターの構造体を使用して形成された封じ込めカプセルの概略断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホスト有機体に生物学的活性分子を作る方法であって、
a.バルク部分及び気孔を有する生物学的適合性封じ込めカプセル、気孔は生物学的に望ましい速度で,封じ込めカプセルの内側の細胞、組織、又は薬物組成物によって作られる生物学的活性分子の拡散を許すが、前記封じ込めカプセルの外側に位置した免疫分子の通過を阻止し、
b.前記生物学的活性分子を作ることのできる細胞、組織、又は薬物組成物を前記封じ込めカプセルに充填し、
c.前記カプセル内に収容された前記細胞、組織、又は薬物組成物を前記ホスト有機体に投与する、上記方法。
【請求項2】
前記有機体は動物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記動物は哺乳動物である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記哺乳動物は人間である、請求項3に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【公開番号】特開2007−91752(P2007−91752A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−323954(P2006−323954)
【出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【分割の表示】特願平9−500657の分割
【原出願日】平成8年5月21日(1996.5.21)
【出願人】(500205611)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (3)
【Fターム(参考)】