説明

ホットメルト接着剤

【課題】本発明は、生理用ナプキン等の吸収性物品の位置がずれることなく、下着等の衣類に保持することができ、かつ、かかる吸収性物品を衣類から剥がす際に、衣類に接着剤が残らず、更に塗工適性にも優れるホットメルト接着剤を提供することを目的とする。
【解決手段】(A)ビニル系芳香族炭化水素と共役ジエン化合物との共重合体である熱可塑性ブロック共重合体及び(B)α−メチルスチレン系樹脂を有し、50℃で、角速度10rad/sでの貯蔵弾性率G’が8.0×10Pa〜5.0×10Paであるホットメルト接着剤である。このホットメルト接着剤は、剥離強度に優れ、衣類に接着剤が残らず、塗工適性が良好であるので、生理用ナプキン等の吸収性物品の生産効率を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホットメルト接着剤に関する。本発明は、更に、生理用ナプキン等の吸収性物品をパンティー等の衣服に固定するために好適なホットメルト接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
吸収性物品とは、例えば、経血、おりもの、尿及び汗等の体から発生する体液を吸収させるために、例えば下着やシャツ等の衣類に固定して用いる物品であって、体液が衣類に付着すること等によって生ずる不快感及び非衛生性を防止するために使用される物品をいう。吸収性物品として、例えば、生理用ナプキン、尿取りライナー、産褥ショーツ、母乳パッド、汗脇パッド、紙おむつ、ペットシート、病院用ガウン及び手術用白衣等が知られている。従って、そのような吸収性物品を、上述の衣類に固定して、その位置がずれないようにするための位置決め用接着剤も開発されている。
【0003】
多くの吸収性物品は、一般に肌に当接する透湿性トップシートと、下着に当接する不透液性バックシートの間に吸収体を有する。位置決め用接着剤は、一般に、剥離基材に塗工された後に、バックシートに転写される。転写された位置決め用接着剤を下着に接触させることで、吸収性物品が下着に保持されることになる。
【0004】
位置決め接着剤の性能が不十分であると、吸収性物品が下着に保持されずに、体液が衣類に付着することがある。従って、近年では、位置決め用接着剤の更なる性能改良が求められている。
【0005】
例えば、特許文献1は、位置決め用接着剤として、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)等の水素添加型ブロック共重合体を用いたホットメルト接着剤を開示する(特許文献1特許請求の範囲等参照)。しかし、特許文献1のホットメルト接着剤は、剥離強度が十分でないため、吸収性物品が下着からずれることがある。吸収性物品のずれを完全に防止するために、バックシートにより多くのホットメルト接着剤を塗工する必要がある。
【0006】
例えば、特許文献2は、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)を含有する非水素添加型ホットメルト接着剤が、おむつ及び女性用ナプキンに有用であることを開示する(特許文献2特許請求の範囲等参照)。しかし、この非水素添加型ホットメルト接着剤を吸収性物品に用いると、吸収性物品を下着から剥がす際に、下着面に接着剤が残ることがある。尚、下着面に接着剤が残ることを、「糊残り」ともいう。
【0007】
例えば、特許文献3は、高分子量ポリマーのホットメルト接着剤によって、直接、人体に固定される生理用ナプキンに言及する(特許文献3[0010]及び[0026]等参照)。このホットメルト接着剤は、高分子量ポリマーを含むので粘度が高く、塗工パターンが不均一になることがあるので好ましくない。ホットメルト接着剤の粘度を下げるために塗工温度を高くすると、ホットメルト接着剤が劣化し、剥離強度が低下し得る。
【0008】
近年、消費者から、生理用ナプキン等の吸収性物品に対して、より高い性能が要求されており、下着等に僅かに接着剤が残ることも許されない。更に、生理用ナプキン等の下着に付着して使用する吸収性物品に対して、それを剥がす際に下着に接着剤が残らないことに加え、下着に取り付けた生理用ナプキン等の位置がずれることなく保持されることも要求される。
【0009】
一般的に、吸収性物品を下着にしっかりと保持させるために、位置決め用接着剤としてのホットメルト接着剤の剥離強度を高くすると、吸収性物品を下着から剥がす際、接着剤が下着に残り易くなる。即ち、糊残りを生じやすくなる。
従って、近年では、生理用ナプキンの位置がずれることなく下着に保持され、かつ、生理用ナプキンを下着から剥がす際に下着に接着剤が残らないホットメルト接着剤の開発が急務である。更に、生理用ナプキン等の吸収性物品を製造する際、使い易いように、ホットメルト接着剤自身の塗工適性が良好であることも求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−297441号公報
【特許文献2】特表2010−506005号公報
【特許文献3】特表2001−517488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、生理用ナプキン等の吸収性物品の位置がずれることなく、下着等の衣類に保持することができ、かつ、かかる吸収性物品を衣類から剥がす際に、衣類に接着剤が残らず、更に塗工適性にも優れるホットメルト接着剤を提供することを目的とする。
更に、かかるホットメルト接着剤を有する吸収性物品を製造する際、特に非肌当接面であるバックシートにホットメルト接着剤を直接塗工して吸収性物品を製造したとしても、又はホットメルト接着剤を離型基材に塗工後、離型基材からバックシートに転写して吸収性物品を製造したとしても、衣類に接着剤が残らない生理用ナプキン等の吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は、鋭意検討を行った結果、熱可塑性ブロック共重合体とα−メチルスチレン系樹脂とを配合し、配合物の貯蔵弾性率を特定範囲にすると、塗工適性および剥離強度に優れ、糊残りが殆どなく、吸収性物品の位置決め用接着剤として優れたホットメルト接着剤が得られることを見出し、本発明を完成させるに至ったものである。
【0013】
すなわち、本発明は、一の要旨において、(A)ビニル系芳香族炭化水素と共役ジエン化合物との共重合体である熱可塑性ブロック共重合体及び(B)α−メチルスチレン系樹脂を含むホットメルト接着剤であって、50℃で、10Rad/sでの貯蔵弾性率G’が、8.0×10Pa〜5.0×10Paであるホットメルト接着剤を提供する。
【0014】
本発明の一の態様において、(A)熱可塑性ブロック共重合体は、重量平均分子量7.5×10〜1.0×10のトリブロック共重合体を含んでなるホットメルト接着剤を提供する。
50℃で、10Rad/sでの貯蔵弾性率G’は、1.0×10Pa〜2.0×10Paであることが好ましい。
【0015】
本発明の好ましい態様では、トリブロック共重合体がスチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー(SBS)及びスチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー(SIS)から選択される少なくとも1種を含むホットメルト接着剤を提供する。
本発明の他の好ましい態様において、ガラス転移温度が10℃以下であるホットメルト接着剤を提供する。
【0016】
本発明の更に好ましい態様として、吸収性物品を製造するために使用されるホットメルト接着剤を提供する。
本発明は、他の要旨において、上記ホットメルト接着剤が塗工された吸収性物品を提供する。
【0017】
本発明において「吸収性物品」とは、一般に吸収性物品とされるものをいうが、より具体的には、体から発生する体液を吸収させるために、衣類に固定して用いる物品であって、体液が衣類に付着すること等によって生ずる不快感及び非衛生性を防止するために使用される物品をいい、具体的には、例えば、生理用ナプキン、尿取りライナー、産褥ショーツ、母乳パッド、汗脇パッド、紙おむつ、ペットシート、病院用ガウン及び手術用白衣等を例示できる。
【0018】
これら吸収性物品の中でも、本発明では、挿入式吸収性物品、いわゆる、下着の内部に挿入して使用する吸収性物品を好ましく提供する。吸収性物品の中でも、特に、肌当接面であるトップシート、及び非肌当接面(又は下着当接面)であるバックシートとの間に介在する吸収体を有し、バックシートがポリオレフィンフィルムである生理用ナプキンが好適である。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るホットメルト接着剤は、(A)ビニル系芳香族炭化水素と共役ジエン化合物との共重合体である熱可塑性ブロック共重合体及び(B)α−メチルスチレン系樹脂を有し、50℃で、10Rad/sでの貯蔵弾性率G’が8.0×10Pa〜5.0×10Paであるので、剥離強度に優れ、且つ、衣類に接着剤が残らず、塗工適性が良好である。従って、このホットメルト接着剤は、生理用ナプキン等の吸収性物品の生産効率を向上させることができる。
【0020】
本発明に係るホットメルト接着剤を剥離基材に塗工した後、バックシートへ転写して、吸収性物品を製造し、その吸収性物品を下着に貼り付けた場合、ホットメルト接着剤の凝集力がある程度大きいので、バックシートとホットメルト接着剤との接着性も大きくなる。従って、本発明に係るホットメルト接着剤を使用した生理ナプキン等の吸収性物品を下着等から剥がしたとしても、バックシートからホットメルト接着剤が剥がれることはなく、下着に接着剤は残らない。また、下着等との剥離強度も高く維持されるので、下着等に貼り付けた生理用ナプキン等の吸収性物品の位置がずれることもない。
【0021】
(A)熱可塑性ブロック共重合体が重量平均分子量7.5×10〜1.0×10のトリブロック共重合体を含む場合、塗工性が更に良好となるので、ムラのない均一な塗工が可能となる。塗工温度を高く設定しなくても良いので、ホットメルト接着剤は劣化し難く、剥離強度に優れたものとなる。従って、よりいっそう、吸収性物品を下着に保持できるようになる。
【0022】
ホットメルト接着剤の50℃、10Rad/sでの貯蔵弾性率G’が1.0×10Pa〜2.0×10Paである場合、表面に凹凸がある基材にも吸収性物品を容易に貼り付けることが可能となり、例えば、下着等の衣類表面がフラットでなくても、吸収性物品をしっかり保持できるようになる。さらに、吸収性物品を下着から剥がす際、接着剤が残ることを防止できる。
【0023】
トリブロック共重合体がスチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー(SBS)及びスチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー(SIS)から選択される少なくとも1種を含む場合、本発明のホットメルト接着剤は、剥離強度により優れるので、吸収性物品を下着等の衣類によりしっかり保持できる。ホットメルト接着剤の剥離強度の向上は、非水素添加型ブロック共重合体(例えば、SBS、SIS)が、水素添加型ブロック共重合体(例えば、SEBS)よりも強度的に優れるためである。
【0024】
本発明のホットメルト接着剤のガラス転移温度が10℃以下である場合、ホットメルト接着剤が硬くなりすぎることがなく、吸収性物品を衣類により貼り付け易くなる。特に、寒冷地域では、本発明のホットメルト接着剤は、よりいっそう、吸収性物品用途に適する。
【0025】
本発明に係るホットメルト接着剤は、剥離強度に優れ、糊残りがなく、塗工性に優れるので、吸収性物品を製造するための接着剤としてより好適である。
【0026】
本発明の吸収性物品は、前記ホットメルト接着剤が塗工されているので、衣類に貼り付けられた場合、その貼り付けられた位置がずれることがなく、衣類にしっかり保持され、かつ、衣類から剥がすときに、接着剤は残ることもない。さらに、このホットメルト接着剤は塗工性に優れるので、吸収性物品に均一により低温で塗工することができる。吸収性物品は、バックシートが熱に弱いポリオレフィンフィルムや、表面に凹凸がある基材の場合でも、容易に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明に係るホットメルト接着剤は、(A)ビニル系芳香族炭化水素と共役ジエン化合物との共重合体である熱可塑性ブロック共重合体及び(B)αメチルスチレン系樹脂を有し、50℃、10Rad/sでの貯蔵弾性率G’が8.0×10Pa〜5.0×10Paである。
【0028】
「貯蔵弾性率G’」とは、弾性に相当する特性値である。本発明における、貯蔵弾性率G’は、バックシートにホットメルト接着剤が短時間で拡散する性質と相関がある。吸収性物品の使用を想定すると、ホットメルト接着剤には体温による加熱、さらには荷重、振動等の低周波数の応力が与えられる。体温と周波数の温度換算側を考慮すると、ホットメルト接着剤の50℃の貯蔵弾性率G’が吸収性物品を使用する場合の指標になる。
【0029】
本発明において、「(A)熱可塑性ブロック共重合体」とは、ビニル系芳香族炭化水素と共役ジエン化合物とをブロック共重合することによって、得られるブロック共重合体をいう。本発明の目的とするホットメルト接着剤を得ることができるものであれば、特に制限されるものではない。
【0030】
ここで、「ビニル系芳香族炭化水素」とは、ビニル基を有する芳香族炭化水素化合物を意味し、具体的には、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、1,3−ジメチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、及びビニルアントラセン等を例示できる。特にスチレンが好ましい。これらのビニル系芳香族炭化水素は、単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0031】
「共役ジエン化合物」とは、少なくとも一対の共役二重結合を有するジオレフィン化合物を意味する。「共役ジエン化合物」として、具体的には、例えば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(又はイソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンを例示することができる。1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエンが特に好ましい。これらの共役ジエン化合物は、単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0032】
本発明に係る(A)熱可塑性ブロック共重合体は、非水素添加型であっても、水素添加型であってもよい。
「(A)非水素添加型の熱可塑性ブロック共重合体」とは、具体的には、ビニル系芳香族炭化水素と共役ジエン化合物とをブロック共重合した後、ブロック共重合体の共役ジエン化合物に基づくブロックが水素添加されていないブロック共重合体を例示できる。
また、「(A)水素添加型の熱可塑性ブロック共重合体」とは、具体的には、ビニル系芳香族炭化水素と共役ジエン化合物とをブロック共重合した後、共役ジエン化合物に基づくブロックの全部、若しくは一部が水素添加されたブロック共重合体を例示できる。
【0033】
「(A)水素添加型の熱可塑性ブロック共重合体」について、水素添加された割合は、「水素添加率」で示される。「(A)水素添加型の熱可塑性ブロック共重合体」の「水素添加率」とは、水素添加前の共役ジエン化合物に基づくブロックに含まれる全脂肪族二重結合を基準とし、その中で、水素添加後に水素添加されて飽和炭化水素結合に転換された二重結合の割合をいう。この「水素添加率」は、赤外分光光度計及び核磁器共鳴装置等によって測定することができる。
【0034】
「(A)非水素添加型の熱可塑性ブロック共重合体」として、具体的には、例えばスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(「SIS」ともいう)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(「SBS」ともいう)を例示できる。「(A)水素添加型の熱可塑性ブロック共重合体」として、具体的には、例えば水素添加されたスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(即ち、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレンブロック共重合体「SEPS」ともいう)及び水素添加されたスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(即ち、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体「SEBS」ともいう)を例示できる。
【0035】
本発明では、(A)熱可塑性ブロック共重合体は、SBS及びSISの双方を含むか、SBS及びSISのいずれかを含むことが好ましい。本発明のホットメルト接着剤は、SBS及び/又はSISを含むことで、剥離強度が向上し、吸収性物品の位置決め用接着剤として優れる。
【0036】
本発明では、(A)熱可塑性ブロック共重合体は、重量平均分子量(Mw)7.5×10〜1.0×10のトリブロック共重合体を含んでなることが好ましい。Mwが上記範囲内にあることで、本発明のホットメルト接着剤は、塗工性に優れ、且つ、剥離強度にも優れる。
【0037】
本明細書において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定される。より具体的には、重量平均分子量は、下記のGPC装置及びGPC測定方法を用いて測定された値をいう。
GPC装置として東ソー社製のHLC−8220GPC、検出器としてRI、GPCカラムとして、東ソー社製のTSKgel SuperMultipore HZ-M(商品名)を用いた。試料をテトラヒドロフランに溶解して、溶媒であるテトラヒドロフランを流速を0.35ml/min、カラム温度を40℃にて流した。標準物質としての単分散分子量のポリスチレンを使用した検量線を用いて分子量の換算を行い、ダイブロック共重合体とトリブロック共重合体の分離後、トリブロック共重合体のMwを求めた。
【0038】
本発明では(A)熱可塑性ブロック共重合体として、市販品を用いることができる。例えば、旭化成工業(株)製のタフプレンT125(商品名)、タフテックL518X(商品名)、タフテックH1053(商品名);JSR(株)製のTR2000(商品名);TSRC社製のタイポール4202(商品名);クレイトンポリマー社製のKraton D1162PT(商品名)、G1650M(商品名);を例示できる。
これらの市販品は、各々単独で又は組み合わせて使用することができる。本発明においては、これら市販品の中で、特に、タフプレンT125、Kraton D1162PTが(A)熱可塑性ブロック共重合体として好ましい。
【0039】
本発明において、(B)α−メチルスチレン系樹脂は、α−メチルスチレン重合体又はスチレン−α−メチルスチレン共重合体が用いられる。本発明の態様として、(B)α−メチルスチレン系樹脂は、スチレン−α−メチルスチレン共重合体がより好ましく、特に軟化点85〜120℃(JIS K2207に規定する環球法で測定)のものがより好ましい。具体的には、イーストマンケミカル社製のクリスタレックス3085(商品名)、クリスタレックス3100(商品名)、クリスタレックス1120(商品名)、クリスタレックス5140(商品名)、三井化学社製のFTR-2120(商品名)等の市販品を例示できる。
(B)α−メチルスチレン系樹脂は、(A)と(B)との総重量100重量部に対し、5〜40重量部配合されることが好ましく、更に5〜20重量部配合されることがより好ましく、10〜20重量部配合されることが特に好ましい。
【0040】
本発明のホットメルト接着剤は、更に粘着付与樹脂を含んでも良い。「粘着付与樹脂」は、ホットメルト接着剤に通常使用されるものであって、本発明が目的とするホットメルト接着剤を得ることができるものであれば、特に限定されることはない。
【0041】
粘着付与樹脂として、例えば、天然ロジン、変性ロジン、水添ロジン、天然ロジンのグリセロールエステル、変性ロジンのグリセロールエステル、天然ロジンのペンタエリスリトールエステル、変性ロジンのペンタエリスリトールエステル、水添ロジンのペンタエリスリトールエステル、天然テルペンのコポリマー、天然テルペンの3次元ポリマー、水添テルペンのコポリマーの水素化誘導体、ポリテルペン樹脂、フェノール系変性テルペン樹脂の水素化誘導体、脂肪族石油炭化水素樹脂、脂肪族石油炭化水素樹脂の水素化誘導体、芳香族石油炭化水素樹脂、芳香族石油炭化水素樹脂の水素化誘導体、環状脂肪族石油炭化水素樹脂、環状脂肪族石油炭化水素樹脂の水素化誘導体を例示することができる。これらの粘着付与樹脂は、単独で、又は組み合わせて使用することができる。粘着付与樹脂は、色調が無色〜淡黄色であって、臭気が実質的に無く熱安定性が良好なものであれば、液状タイプの粘着付与樹脂も使用できる。これらの特性を総合的に考慮すると、粘着付与樹脂として、樹脂等の水素化誘導体が好ましい。
【0042】
粘着付与樹脂として、市販品を用いることができる。そのような市販品として、例えば、丸善石油化学社製のマルカクリヤーH(商品名)、安原化学社製のクリアロンK100(商品名)、荒川化学社製のアルコンM100(商品名)、出光石油化学社製のアイマーブS100(商品名)、安原化学社製のクリアロンK4090(商品名)及びクリアロンK4100、エクソンモービル社製のECR5380(商品名)、ECR179EX(商品名)、ECR5400(商品名)、ECR5600(商品名)、イーストマンケミカル社製のリガライトR7100(商品名)を例示することができる。これらの市販の粘着付与樹脂は、単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0043】
更に本発明において、ホットメルト接着剤は、可塑剤を含んでも差し支えない。「可塑剤」は、ホットメルト接着剤の溶融粘度低下、柔軟性の付与、被着体への濡れ向上を目的として配合され、ブロック共重合体に相溶し、本発明が目的とするホットメルト接着剤を得ることができるものであれば、特に限定されるものではない。
【0044】
可塑剤として、例えばパラフィン系オイル、ナフテン系オイル及び芳香族系オイルを例示することができる。特にパラフィン系オイル及び/又はナフテン系オイルが好ましく、無色、無臭であるパラフィン系オイルが最も好ましい。
【0045】
可塑剤の市販品の一例として、例えば、Kukdong Oil&Chem社製のWhite Oil Broom350(商品名)、出光興産社製のダイアナフレシアS−32(商品名)、ダイアナプロセスオイルPW−90(商品名)、ダフニ−オイルKP−68(商品名)、BPケミカルズ社製のEnerperM1930(商品名)、Crompton社製のKaydol(商品名)、エクソン社製のPrimol352(商品名)、出光興産社製のプロセスオイルNS−100(商品名)を例示することができる。これらは、単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0046】
本発明に係るホットメルト接着剤は、必要に応じて、更に各種添加剤を含んでもよい。そのような各種添加剤として、例えば、安定化剤、ワックス、及び微粒子充填剤を例示することができる。
【0047】
「安定化剤」とは、ホットメルト接着剤の熱による分子量低下、ゲル化、着色、臭気の発生等を防止して、ホットメルト接着剤の安定性を向上するために配合されるものであり、本発明が目的とするホットメルト接着剤を得ることができるものであれば、特に制限されるものではない。「安定化剤」として、例えば酸化防止剤及び紫外線吸収剤を例示することができる。
【0048】
「紫外線吸収剤」は、ホットメルト接着剤の耐光性を改善するために使用される。「酸化防止剤」は、ホットメルト接着剤の酸化劣化を防止するために使用される。酸化防止剤及び紫外線吸収剤は、一般的に使い捨て製品に使用されるものであって、後述する目的とする使い捨て製品を得ることができるものであれば使用することができ、特に制限されるものではない。
【0049】
酸化防止剤として、例えばフェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、リン系酸化防止剤を例示できる。紫外線吸収剤として、例えばベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤を例示できる。更に、ラクトン系安定剤を添加することもできる。これらは単独又は組み合わせて使用することができる。酸化防止剤の市販品として、以下の製品を使用することができる。
【0050】
具体的には、住友化学工業(株)製のスミライザーGM(商品名)、スミライザーTPD(商品名)及びスミライザーTPS(商品名)、チバスペシャルティーケミカルズ社製のイルガノックス1010(商品名)、イルガノックスHP2225FF(商品名)、イルガフォス168(商品名)及びイルガノックス1520(商品名)、チヌビンP、城北化学社製のJF77(商品名)、エーピーアイコーポレーション製のトミノックスTT(商品名)を例示することができる。これら安定化剤は、単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0051】
「ワックス」とは、ホットメルト接着剤に一般的に用いられるワックスであって、本発明が目的とするホットメルト接着剤を得ることができるものであれば、特に限定されるものではない。具体的には、フィッシャートロプシュワックス、ポリオレフィンワックス(ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス)等の合成ワックス系;パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスなどの石油ワックス;カスターワックスなどの天然ワックス;等を例示できる。
【0052】
本発明のホットメルト接着剤は、更に、微粒子充填剤を含むことができる。微粒子充填剤は、一般に使用されているものであれば良く、本発明が目的とするホットメルト接着剤を得ることができる限り特に限定されることはない。「微粒子充填剤」として、例えば雲母、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、酸化チタン、ケイソウ土、尿素系樹脂、スチレンビーズ、焼成クレー、澱粉等を例示できる。これらの形状は、好ましくは球状であり、その寸法(球状の場合は直径)については特に限定されるものではない。
【0053】
本発明に係るホットメルト接着剤は、一般的に知られているホットメルト接着剤の製造方法を用いて、(A)及び(B)、更に必要に応じて各種添加剤を配合して製造することができる。例えば、上述の成分を所定量配合し、加熱溶融して製造することができる。目的とするホットメルト接着剤を得ることができる限り、各成分を加える順序、加熱方法等は、特に制限されるものではない。
【0054】
本発明に係るホットメルト接着剤は、50℃、10Rad/sでの貯蔵弾性率G’が8.0×10Pa〜5.0×10Paであることが好ましく、1.0×10Pa〜2.0×10Paであることが特に好ましい。貯蔵弾性率G’が上記範囲に設定されることで、ホットメルト接着剤は、剥離強度に優れ、且つ、糊残りが生じ難く、更に、凹凸のある基材にも容易に貼り付くようになる。
【0055】
貯蔵弾性率G‘が8.0×10Pa未満である場合、ホットメルト接着剤の拡散が過剰になり、剥離強度が過剰に上昇し、糊残りが発生する。一方、貯蔵弾性率G’が5.0×10を超えると、ホットメルト接着剤の基材への拡散が不足するため、充分な接着強度が得られない。さらに、溶融粘度も高くなり、塗工適性が低下する。
本発明では、動的粘弾性測定装置を用いて、各速度を10Rad/sに固定し、温度スィープモードにて、5℃/分の昇温速度で、−25℃〜150℃でスキャンし、50℃のスキャン値を本発明の貯蔵弾性率G’とした。貯蔵弾性率G’は弾性に相当する特性値であるが、粘性に相当する特性値として損失弾性率G”が知られている。動的粘弾性装置でG’を測定すると、G”も同時に測定されるので、損失弾性率G”と貯蔵弾性率G’との比(G”/G’)で示される損失正接(tanδ)も同時に得ることができる。
【0056】
本発明に係るホットメルト接着剤は、ガラス転移温度(Tg)が10℃以下であることが好ましく、−8℃〜10℃であることがより好ましく、−5℃〜5℃であることが最も望ましい。ホットメルト接着剤は、ガラス転移温度(Tg)が上記範囲内にあることで、硬くなりすぎず、寒冷地域でも吸収性物品を下着へしっかり保持できる。吸収性物品の使用環境温度と比べ、ホットメルト接着剤のTgが高いと、ホットメルト接着剤がガラス状態となり、吸収性物品をホットメルト接着剤で下着に保持し難くなる。寒冷地域での吸収性物品の使用を考慮すると、ホットメルト接着剤のTgは上記範囲が好ましい。
【0057】
本明細書においてガラス転移温度(Tg)とは、上述の動的粘弾性測定装置で周波数を10Rad/sに固定して行われる貯蔵弾性率G’の測定と同時に測定される損失正接(tanδ)を温度に対してプロットして、得られるピークの、ピークトップを示す温度をいう。
【0058】
本発明のさらなる好ましい態様として、ホットメルト接着剤は、130℃での粘度(又は溶融粘度)が15000mPa・s以下であることが好ましく、6000mPa・s未満であることが特に好ましい。ホットメルト接着剤を均一に塗工できる粘度は、15000mPa・s以下であり、均一な塗工を容易に行える粘度は、6000mPa・s未満である。粘度が15000mPa・sを超えると、塗工が困難になる。本明細書の130℃での粘度(又は溶融粘度)とは、27番ローターを用い、ブルックフィールド粘度計で測定された値を意味する。
【0059】
バックシートがポリオレフィンフィルムである生理用ナプキンにホットメルト接着剤を塗工する場合、130℃での粘度が6000mPa・s未満の場合、ホットメルト接着剤を直接、ポリオレフィンフィルムに容易に塗工することができる。130℃でホットメルト接着剤をフィルムへ容易に均一に塗工できるので、ホットメルト接着剤の劣化もなく、生理用ナプキンは下着にしっかり保持され、下着から剥がされる際、糊残りが下着に発生することもない。
【0060】
本発明に係るホットメルト接着剤は、紙加工、製本、使い捨て製品等、幅広く利用されるが、吸収性物品に特に有効に利用される。「吸収性物品」とは、いわゆる衛生材料であれば、特に限定されるものではない。具体的には生理用ナプキン、尿取りライナー、産褥ショーツ、母乳パッド、汗脇パッド、紙おむつ、ペットシート、病院用ガウン及び手術用白衣等を例示できる。
【0061】
吸収性物品は、織布、不織布、ゴム、樹脂、紙類、ポリオレフィンフィルムからなる群から選択される少なくとも一種の部材に本発明に係るホットメルト接着剤を塗工することで構成される。尚、ポリオレフィンフィルムは、耐久性及びコスト等の理由からポリエチレンフィルムが好ましい。
【0062】
本発明に係るホットメルト接着剤は、生理用ナプキンに好適である。一般的に生理用ナプキンは、例えば、トップシートとバックシートとの間に吸収体を有し、トップシートが肌に当接し、バックシートが下着等に当接する。本発明に係るホットメルト接着剤は、生理ナプキンの非肌当接面であるバックシートがポリオレフィンフィルムである場合、特に効果を発揮する。
【0063】
ホットメルト接着剤が塗工されたポリオレフィンと下着との剥離強度を強くすることによって、生理用ナプキンが下着からずれなくなる。本発明では、ポリオレフィンフィルムにホットメルト接着剤を直接塗工するか、離型フィルムに塗工されたホットメルト接着剤をポリオレフィンフィルムに転写することで、下着からのズレを防止するだけでなく、下着への糊残りの発生をも防止することが可能となる。
【0064】
吸収性物品の製造ラインでは、一般に使い捨て製品の各種部材(例えば、剥離紙、ティッシュ、コットン、不織布、ポリオレフィンフィルム等)にホットメルト接着剤を塗工する。塗工の際、ホットメルト接着剤を、種々の噴出機から噴出して使用してよい。
【0065】
ホットメルト接着剤を塗工する方法は、目的とする吸収性物品を得ることができる限り、特に制限されるものではない。そのような塗工方法は、接触塗工、非接触塗工に大別される。「接触塗工」とは、ホットメルト接着剤を塗工する際、噴出機を部材やフィルムに接触させる塗工方法をいい、「非接触塗工」とは、ホットメルト接着剤を塗工する際、噴出機を部材やフィルムに接触させない塗工方法をいう。接触塗工方法として、例えば、スロットコーター塗工及びロールコーター塗工等を例示でき、非接触塗工方法として、例えば、螺旋状に塗工できるスパイラル塗工、波状に塗工できるオメガ塗工やコントロールシーム塗工、面状に塗工できるスロットスプレー塗工やカーテンスプレー塗工、点状に塗工できるドット塗工などを例示できる。
【0066】
上記塗工方法でホットメルト接着剤を塗工し、吸収性物品を製造する。吸収性物品としては、例えば、生理用ナプキン、尿取りライナー、産褥ショーツ、母乳パッド、汗脇パッド、紙おむつ、ペットシート、病院用ガウン及び手術用白衣等を例示できるが、バックシートがポリオレフィンフィルムである生理用ナプキンが本発明では効果を最も発揮できる。
【0067】
本発明の主な態様を以下に示す。
1.(A)ビニル系芳香族炭化水素と共役ジエン化合物との共重合体である熱可塑性ブロック共重合体及び
(B)α−メチルスチレン系樹脂を有するホットメルト接着剤であって、
50℃で、10rad/sでの貯蔵弾性率G’が8.0×10Pa〜5.0×10Paであるホットメルト接着剤。
2.(A)熱可塑性ブロック共重合体は、重量平均分子量7.5×10〜1.0×10のトリブロック共重合体を含んでなる上記1に記載のホットメルト接着剤。
3.50℃で、10Rad/sでの貯蔵弾性率G’が1.0×10Pa〜2.0×10Paである上記2に記載のホットメルト接着剤。
4.前記トリブロック共重合体が、スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー(SBS)及びスチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー(SIS)から選択された少なくとも1種を含んでなる上記2又は3に記載のホットメルト接着剤。
5.ガラス転移温度が10℃以下である上記1〜4のいずれかに記載のホットメルト接着剤。
6.吸収性物品を製造するために使用される上記1〜5のいずれかに記載のホットメルト接着剤。
7.上記1〜6のいずれかに記載のホットメルト接着剤が塗工された吸収性物品。
【実施例】
【0068】
以下、本発明を更に詳細に、かつ、より具体的に説明することを目的として、実施例を用いて本発明を説明する。これらの実施例は、本発明を説明するためのものであり、本発明を何ら制限するものではない。
【0069】
ホットメルト接着剤を配合するための成分を以下に示す。
(A)ビニル系芳香族炭化水素と共役ジエン化合物との共重合体である熱可塑性ブロック共重合体
(A1)スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、トリブロックの重量平均分子量8.5×10(旭化成社製のタフプレン T125(商品名))
(A2)スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、トリブロックの重量平均分子量9.4×10(JSR社製のJSR TR2000(商品名))
(A3)スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、トリブロックの重量平均分子量8.1×10(クレイトンポリマー社製のKraton D1162PT(商品名)
(A4)スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、トリブロックの重量平均分子量10.6×10(旭化成社製のアサプレン T420(商品名))
(A5)スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、トリブロックの重量平均分子量12.9×10(旭化成社製のアサプレン T438(商品名))
(A6)スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、トリブロックの重量平均分子量30.8×10(日本ゼオン社製のクインタック3520(商品名))
【0070】
(B)α−メチルスチレン系樹脂
(B1)スチレン−α−メチルスチレン共重合体(イーストマンケミカル社製のクリスタレックス3100(商品名))
(B2)スチレン−α−メチルスチレン共重合体(イーストマンケミカル社製のクリスタレックス3085(商品名))
(B3)スチレン−α−メチルスチレン共重合体(三井化学社製のFTR−2120(商品名))
【0071】
(C)粘着付与樹脂
(C1)芳香族石油炭化水素樹脂の水素化誘導体(荒川化学社製のアルコンM100(商品名))
(C2)環状脂肪族石油炭化水素樹脂の水素化誘導体(エクソンモービル社製のECR179EX(商品名))
(C3)環状脂肪族石油炭化水素樹脂の水素化誘導体(エクソンモービル社製のECR5400(商品名))
【0072】
(D)可塑剤
(D1)パラフィン系オイル(出光興産社製のダイアナフレシアS−32(商品名))
(D2)パラフィン系オイル(Kukdon Oil&Chem社製のWHITE OIL BROOM350(商品名))
(D3)ナフテン系オイル出光興産社製のプロセスオイルNS−100(商品名))
【0073】
(E)酸化防止剤
(E1)ヒンダードフェノール系酸化防止剤(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製のイルガノックス1010(商品名))
(E2)ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(城北化学社製のJF77(商品名))
【0074】
(A)熱可塑性ブロック共重合体に含まれるトリブロックの重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(東ソー社製のHLC-8220(商品名)GPC装置に、TSK−GEL SuperMultipore HZ-M(商品名)を取り付けた)を用いて分析を行った。試料をテトラヒドロフランに溶解して、40℃のカラム温度で、溶媒であるテトラヒドロフランを、0.35ml/minの流速で流した。標準物質として単分散分子量のポリスチレンを使用して作成した検量線を用いて分子量の換算を行い、Mwを求めた。ダイブロックを有する試料は、クロマトグラムの波形処理を行い、ダイブロックとトリブロックを分離後、トリブロックの重量平均分子量(Mw)を求めた。
【0075】
(A)〜(E)成分を、表1〜3に示す割合で配合し、約140℃で2時間かけて万能攪拌機を用いて溶融混合し、実施例1〜9および比較例1〜5のホットメルト接着剤を製造した。表1〜3に示されるホットメルト接着剤の組成(配合)に関する数値は、全て重量部である。
【0076】
ホットメルト接着剤の貯蔵弾性率(G’)及びガラス転移温度(Tg)は、以下の方法で測定した。
<貯蔵弾性率(G’)>
動的粘弾性測定装置(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製のレオメーターAR−G2(商品名))を用いて、動的粘弾性を測定した。ホットメルト接着剤を装置の冶具にて加温して、直径25mmφ×厚さ1500μmの円盤状に成形した。測定は、ステンレス製のパラレルプレートを用いて行い、角速度を10rad/sに固定して、温度スィープモードを用いて、5℃/分の速度で、−25〜150℃の範囲で昇温して行なった。貯蔵弾性率(G’)の数値として、50℃±1℃の範囲での値を読み取り、採用した。
【0077】
<ガラス転移温度(Tg)>
上記粘弾性測定において、軟化点以下の温度範囲で、損失弾性率(G”)と貯蔵弾性率(G’)の比で示される損失正接Tanδ(G”/G’)が測定される。その損失正接Tanδを温度に対してプロットして、得られたピークのピークトップを示す温度を読み取り、ガラス転移温度として採用した。
【0078】
実施例および比較例の各々のホットメルト接着剤について、塗工適性、保持力、糊残りを評価した。以下、各評価の概要について説明する。
<塗工適性(130℃での溶融粘度)>
JAI7−1991に記載されたB法に基づき、各々のホットメルト接着剤の130℃の粘度を測定した。測定は、ブルックフィールド粘度計を使用し、27番のローターを用いた。
一般にホットメルト接着剤の溶融粘度が6000mPa・s未満の場合、基材フィルムに容易に均一に塗工可能であり、溶融粘度が6000mPa・s〜15000mPa・sの場合、均一に塗工可能である、溶融粘度が15000mPa・sを超えた場合、塗工が困難になる。
更に、ポリエチレンフィルムの収縮や熱による破断を生ずることなく、直接塗工可能な温度は、一般に130℃以下である。
従って、ホットメルト接着剤の塗工適性を以下のように評価した。
◎・・・130℃における溶融粘度が6000mPa・s未満
○・・・130℃における溶融粘度が6000〜15000mPa・s
×・・・130℃における溶融粘度が15000mPa・sより大きい
【0079】
<保持力(剥離強度)>
厚さ50μmのPETフィルムに、各ホットメルト接着剤を塗工し、厚さ50μmの接着層を形成し、これを25mm幅に成形して試験体とした。
一方、JIS染色堅ろう度試験用(JIS L 0803準拠)の絹を織り目方向に30×60mmに切り出し、貼り合わせ用の基材とした。
試験体と貼り合わせ用基材を23℃の環境で30分以上養生した後、600gローラーで150mm/minの速度で貼りあわせた。貼り合わせ後、速やかに万能型引っ張り試験機を用い、300mm/minの速度で180°剥離試験を行った。ホットメルト接着剤(実施例および比較例)の各々について、少なくとも3個の試料を測定して、平均値を求めて、剥離強度の値とした。剥離強度は、以下の基準で評価した
◎・・・剥離強度 500g/25mmを超える
○・・・剥離強度 300〜500g/25mm
×・・・剥離強度 300g/25mm未満
【0080】
<糊残り>
剥離強度を測定した後、速やかに貼り合わせ基材の剥離面を指蝕により確認し、糊残りの有無を評価した。最も糊残りが顕著である貼り合せ基材は絹であったため、糊残りの評価として絹を基材として用いた。糊残りは、以下の基準で評価した。
◎(糊残りなし) ・・・指蝕で粘着なし
○(僅かに糊残りあり) ・・・僅かに指触で粘着を感じる
×(明らかな糊残りあり)・・・明らかに指蝕で粘着を感じる
【0081】
【表1】

【0082】
【表2】

【0083】
【表3】

【0084】
表1〜2に示されるように、実施例1〜9のホットメルト接着剤は、(A)成分を含み(要件1)、さらに(B)成分を含み(要件2)、且つ、50℃、10rad/sでの貯蔵弾性率G’が、8.0×10Pa〜5.0×10Paの範囲に含まれる(要件3)。このような実施例1〜9は、塗工適性(低粘度)、保持力(高剥離強度)に優れ、且つ、糊残りを発生させることもない。
【0085】
これに対し、表3に示されるように、比較例1〜5のホットメルト接着剤は、上記要件1〜3のいずれかを満たさない。比較例1〜5は、要件1〜3のいずれかを満たさないので、塗工適性、保持力、糊残りのいずれかが劣り、いずれかの評価が×である。
【0086】
130℃での粘度、剥離試験、糊残り試験の結果から明らかなように、ホットメルト接着剤は、要件1〜3の全てを充足することで、塗工適性(低粘度)、保持力(高剥離強度)に優れ、且つ、糊残りの発生を防止でき、吸収性物品の位置決め用接着剤として非常に有用となる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明は、ホットメルト接着剤、及びそのホットメルト接着剤が塗工された吸収性物品を提供できる。本発明に係る吸収性物品は、非肌当接面であるバックシートがポリオレフィンフィルムである生理用ナプキンとして特に有効である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ビニル系芳香族炭化水素と共役ジエン化合物との共重合体である熱可塑性ブロック共重合体及び
(B)α−メチルスチレン系樹脂を有するホットメルト接着剤であって、
50℃で、角速度10rad/sでの貯蔵弾性率G’が8.0×10Pa〜5.0×10Paであるホットメルト接着剤。
【請求項2】
(A)熱可塑性ブロック共重合体は、重量平均分子量7.5×10〜1.0×10のトリブロック共重合体を含んでなる請求項1に記載のホットメルト接着剤。
【請求項3】
ガラス転移温度が10℃以下である請求項1又は2に記載のホットメルト接着剤。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のホットメルト接着剤が塗工された吸収性物品。

【公開番号】特開2012−12437(P2012−12437A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−147983(P2010−147983)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(391047558)ヘンケルジャパン株式会社 (43)
【Fターム(参考)】