説明

ホログラフィック記録媒体、ホログラフィック記録媒体の記録方法、及びホログラフィック記録媒体の記録再生方法

【課題】カートリッジを必要とすることなく、記録および再生光強度が低くても良好にホログラフィック記録再生が行なえ、かつ外来光に対する遮光性が高くシェルフライフに優れたホログラフィック記録媒体を提供する。
【解決手段】記録信号光及び記録参照光を照射して得た干渉縞を記録情報として記録するためのホログラフィック記録層と、前記ホログラフィック記録層と隣接するようにして設けられた、第1の最大透過軸を有する第1の偏光吸収層、磁気偏光可変層及び前記第1の最大透過軸と直交する第2の最大透過軸を有する第2の偏光吸収層が積層されてなるシャッター部と、を具えるようにして、ホログラフィック記録媒体を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホログラフィ技術を利用して情報を記録再生する際に用いるホログラフィック記録媒体、並びにその記録方法及び記録再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ホログラフィック記録媒体への記録は、イメージ情報を持った信号光と参照光とを記録層に照射して、干渉縞として情報を記録媒体に記録することにより行われる。ホログラフィック記録媒体からの再生は、上記したイメージ情報が記録された記録層に参照光を照射して、イメージ情報を読み出すことによって行われる。
【0003】
ホログラフィック記録は、上記イメージ情報を1ページとして、ページ単位で一括記録、再生でき、かつ、媒体の同一箇所にページを多重記録できることから、従来のCD、DVD、ブルーレイディスクで用いられるビット・バイ・ビットの記録方式に替わる高速かつ大容量の光記録方式として期待される技術である。
【0004】
ところでホログラフィック記録は、光感光性の記録材料からなる記録層を有するホログラフィック記録媒体に、信号光と参照光との干渉光を照射することによって記録層内で生じる光学特性変化を利用してなされる。すなわち、この記録層には、フォトンモード記録が可能であることが好ましく、かつ、データ転送速度の高速化のためには、微弱な光でも感光する高感度であることが望ましい。
【0005】
しかしながら、このような高感度な記録層は、外来光、例えば屋外の太陽光、室内の蛍光灯などからの光でも感光し、光学特性の変化を生じ得る。そのため、ホログラフィック記録前に外来光にさらされることに起因して、十分なシェルフライフが得られない。
【0006】
十分なシェルフライフは、例えば、個々のホログラフィック記録媒体を遮光性カートリッジに収納することにより実現可能である。しかしながら、カートリッジの使用は、収納性や携帯性などを著しく低下させるばかりでなく、カートリッジ製造、収納のため媒体の製造工程が煩雑化し、それによって製造コスト高にもつながる。
【0007】
上記課題を解決する方法として、特許文献1、特許文献2には、閾値以上の光強度に対して透過率が高くなる主に色素層からなる遮光層を設けたホログラフィック記録媒体が提案されている。
【0008】
しかしながら、これらの媒体にホログラフィック記録する場合、閾値以上の光強度を有する信号光と参照光を照射しなければならない。例えば特許文献1の図5によれば、数W/cm2という大きな光強度が必要である。このため記録再生装置には高出力のレーザを搭載する必要があり、装置が大掛かりかつ高コストになる。普及型のレーザを光源として使用することを考慮すると、100mW/cm2以下の光強度でホログラフィック記録できることが望ましい。
【0009】
また、前述のように、データ転送速度の高速化のためには、高感度な記録層を用いて弱い光強度でもホログラフィック記録できることが望ましい。このため、特許文献1、2に開示の技術において、遮光層の閾値を下げればよいと考えられるが、そうすると、外来光によっても遮光層の透過率が高くなってしまう危険性が増し、遮光性が損なわれるという問題が生じる。
【0010】
さらに、特許文献1,2に開示の技術においても、遮光状態での透過率が十分に低いとは言えず、3〜4%の透過率を有する(例えば特許文献1の図5)。このため太陽光のような強い外来光が照射された場合、ホログラフィック記録材料が感光してしまう危険性がある。遮光性をより高めるためには、外来光を1%以下に遮光することが望ましい。
【0011】
一方、特許文献3には、電気的に動作する液晶シャッター層を設けたホログラムメモリーカードが提案されている。しかし液晶シャッター層を駆動させるための透明電極層設けなければならず、かつそこに電圧を印加する機構を設けなければならない。このように動作駆動が煩雑なことから、用途としては記録媒体を静止させた状態で使用できるカード型に限定され、光ディスクのように媒体を回転させて記録再生を行なう形態には不向きである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2004−279942号
【特許文献2】特開2004−354712号
【特許文献3】特開平10−24478号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、カートリッジを必要とすることなく、記録および再生光強度が低くても良好にホログラフィック記録再生が行なえ、かつ外来光に対する遮光性が高くシェルフライフに優れたホログラフィック記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成すべく、本発明は、
記録信号光及び記録参照光を照射して得た干渉縞を記録情報として記録するためのホログラフィック記録層と、
前記ホログラフィック記録層と隣接するようにして設けられた、第1の最大透過軸を有する第1の偏光吸収層、磁気偏光可変層及び前記第1の最大透過軸と直交する第2の最大透過軸を有する第2の偏光吸収層が積層されてなるシャッター部と、
を具えることを特徴とする、ホログラフィック記録媒体に関する。
【0015】
なお、本発明における“最大透過軸”とは、文言どおり光透過率が最大となる軸であって、吸収軸と相反する概念である。一方、一般に最大透過軸と吸収軸とは互いに直交する関係にあることから、上述した第1の偏光吸収層の最大透過軸と第2の偏光吸収層の最大透過軸との関係は、第1の偏光吸収層の吸収軸と第2の偏光吸収層の吸収軸との関係に置き換えることができる。
【0016】
本発明のホログラフィック記録媒体によれば、非使用時(媒体保存時)においては、シャッター部において外来光を遮蔽する。例えば、第1の偏光吸収層、磁気偏光可変層及び第2の偏光吸収層がこの順に積層され、第1の偏光吸収層が外方に位置するとする。このとき、第1の偏光吸収層は第1の最大透過軸を有し、第2の偏光吸収層が第2の最大透過軸を有し、第1の最大透過軸と第2の最大透過軸とは互いに直交しクロスニコルとなっている。
【0017】
したがって、例えば第1の最大透過軸と平行な第1の偏光状態の外来光がホログラフィック記録媒体に対して入射した場合においても、前記外来光は、第2の最大透過軸を有する第2の偏光吸収層によって遮蔽されるようになる。なお、第2の最大透過軸と平行な第2の偏光状態の外来光の場合は、当初から第1の偏光吸収層で遮蔽されることになる。
【0018】
このように、外来光の遮蔽は、第1の偏光吸収層の第1の最大透過軸と第2の偏光吸収層の第2の最大透過軸とのクロスニコルによって実現されるので、外来光の遮光率は極めて高くなり、透過率は1%以下となる。したがって、ホログラフィック記録媒体が、非使用時(媒体保存時)において、外来光によって感光されるのを効果的に防止することができる。
【0019】
一方、ホログラフィック記録媒体に対して記録再生を行なう場合は、媒体の記録再生位置に磁界を印加することにより、磁気偏光可変層の状態を変化させ、シャッター部を透過状態にしてホログラフィック記録層に記録/再生光を照射することができる。具体的には、磁気偏光可変層をファラデー効果を有する材料から構成し、上述した磁界印加によって記録/再生光の偏光面を90度回転するように設定しておけば、例えば前記記録/再生光が第1の最大透過軸と平行な第1の偏光状態の場合においても、前記記録/再生光は磁気偏光可変層において、その偏光面が90度回転させられて第2の最大透過軸と平行な第2の偏光状態となるので、第2の最大透過軸を有する第2の偏光吸収層を透過することができるようになる。したがって、上記ホログラフィック記録媒体に対して記録再生を行うことができる。
【0020】
なお、実際に記録再生を行うに際して、本発明のホログラフィック記録媒体が反射型のホログラフィック媒体を構成する場合は、前記ホログラフィック記録層の、前記シャッター部が隣接する側と相対向する側において、前記ホログラフィック記録層の前記記録情報を再生する際に照射する再生参照光を反射させて、前記記録情報に関する再生信号光を、前記記録信号光及び前記記録参照光の前記入射側において得るための反射層を具える。
【0021】
また、本発明のホログラフィック記録媒体が透過型のホログラフィック媒体を構成する場合は、前記ホログラフィック記録層の、前記シャッター部が隣接する側と相対向する側において、前記ホログラフィック記録層と隣接するようにして設けられた、前記第1の偏光吸収層、前記磁気偏光吸収層及び前記第2の偏光吸収層が積層されてなる追加のシャッター部を具える。
【0022】
透過型のホログラフィック記録媒体の場合は、前記ホログラフィック記録層の、前記シャッター部が隣接する側と相対向する側において再生参照光を受光するので、前記相対向する側には、例えばガラス基板等が設けられることによって、光を透過するように構成されている。したがって、透過型のホログラフィック記録媒体においては、前記相対向する側からも外来光が進入し、上記ホログラフィック記録層を感光してしまうことになる。このため、透過型のホログラフィック記録媒体においては、上述のように、前記相対向する側において上記追加のシャッター部を設ける必要がある。
【0023】
なお、反射型のホログラフィック記録媒体の場合は、前記相対向する側には反射層が設けられており、この反射層は一般に金属材料から構成されているため、反射層によって外来光を十分に遮蔽することができるようになる。したがって、透過型のホログラフィック記録媒体のように、追加のシャッター部を設ける必要がない。
【0024】
また、シャッター部の動作は、特許文献1、特許文献2に示されるような光強度に対して透過率が変化する機構を用いていないので、いかなる感度のホログラフィック記録層であっても使用することができ、データ転送速度の高速化と遮光性とのトレードオフはなく、両者を成立させることが可能である。
【0025】
さらに、シャッター部の動作は、磁界を印加することを用いるので、特許文献3に示されるような透明電極層の形成及びそこに電圧を印加する機構を設ける必要がない簡単な機構で実現可能なので、用途としては記録媒体を静止させた状態で使用するカード型のみならず、光ディスクのように媒体を回転させて記録再生を行なう形態にも適用可能である。
【発明の効果】
【0026】
以上、本発明によれば、カートリッジを必要とすることなく、記録および再生光強度が低くても良好にホログラフィック記録再生が行なえ、かつ外来光に対する遮光性が高くシェルフライフに優れたホログラフィック記録媒体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】第1の実施形態のホログラフィック記録媒体の、媒体構成を示す図である。
【図2】図1に示すホログラフィック記録媒体における外来光の遮蔽操作を説明するための図である。
【図3】図1に示すホログラフィック記録媒体への記録再生操作を説明するための図である。
【図4】第2の実施形態のホログラフィック記録媒体の、媒体構成を示す図である。
【図5】図4に示すホログラフィック記録媒体における外来光の遮蔽操作を説明するための図である。
【図6】図4に示すホログラフィック記録媒体への記録再生操作を説明するための図である。
【図7】第3の本実施形態におけるホログラフィック記録媒体の概略構成を示す図である。
【図8】実施例におけるホログラフィック記録媒体の、媒体構成を示す図である。
【図9】外来光の露光エネルギーと、記録後のホログラフィック記録媒体の最大回折効率との関係を示すグラフである。
【図10】外来光の露光エネルギーと、記録後のホログラフィック記録媒体のM#(エムナンバー)との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の詳細、並びにその他の特徴及び利点について、図面を参照しながら説明する。
【0029】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態のホログラフィック記録媒体の、媒体構成を示す図であり、図2は、図1に示すホログラフィック記録媒体における外来光の遮蔽操作を説明するための図であり、図3は、図1に示すホログラフィック記録媒体への記録再生操作を説明するための図である。なお、各図面において、層の右側に示されている符号

は、層の最大透過軸が紙面に垂直であることを意味し、符号

は、層の最大透過軸が紙面に平行であることを意味している。また、本実施形態では、記録信号光、記録参照光及び再生参照光は、直線偏光とする。
【0030】
図1に示すように、本実施形態におけるホログラフィック記録媒体10は、光入射側から順次にシャッター部12、ホログラフィック記録層11及び反射層13が積層されたような構成を呈し、いわゆる反射型のホログラフィック記録媒体を構成している。シャッター部12は、光入射側から順次に第1の偏光吸収層121、磁気偏光可変層122及び第2の偏光吸収層123が積層されたような構成を呈している。なお、第1の偏光吸収層121及び第2の偏光吸収層123の積層順序は、これらの間に磁気偏光可変層122が位置する限りにおいて逆転させることができる。なお、本実施形態の作用効果を損なわない限りにおいて、製造上要求されるガラス基板等を含んでいてもよい。
【0031】
ホログラフィック記録層11は、信号光と参照光との干渉によって生じる光の明部と暗部とで、屈折率、透過率、反射率といった何らかの光学定数が変化しうる材料で、例えばフォトポリマー、フォトリフラクティブ結晶、フォトリフラクティブポリマー、カルコゲナイド化合物、フォトクロミック材料、サーモクロミック材料などから構成することができる。
【0032】
シャッター部12を構成する第1の偏光吸収層121及び第2の偏光吸収層123は、特定の方向の直線偏光成分のみを透過させ、それと直交する成分を吸収する直線偏光層である。材質としては、例えば、ヨウ素もしくはその他塗料を吸着させたPVA(ポリビニルアルコール)などであり、必要に応じて保護層として、PET(ポリエチレンテレフタレート)やTAC(トリアセチルセルロース)等のフィルムで挟むことができる。
【0033】
また、シャッター部12を構成する磁気偏光可変層122は、入射光に対する出射光(透過光)の偏光状態を磁気的手段によって切り替えることが可能な層である。例えば、Tb酸化物を含む磁性ガラスや希土類-鉄磁性ガーネットに代表されるファラデー効果を発現する層を用いることができる。中でも、YIG(イットリウム鉄ガーネット)はファラデー効果が大きく、更に、BiもしくはGa置換型のYIGは更に大きなファラデー効果を示し、かつ透過率が高いので好ましい。
【0034】
これらはいずれも、外部から印加する磁界を制御することで偏光状態を切り替えることが可能であり、ファラデー回転角は印加磁界、ファラデー回転層の材質、膜質および厚みに依存するので、所望のファラデー回転角が得られるように各々適宜調整される。特に入射した直線偏光に対して90度変換できることが好ましい。これは、以下に説明するシャッター部12での外来光の遮光性をより向上させるためである。
【0035】
また上記希土類-鉄磁性ガーネットは、MOD法(有機金属塗布分解法)やLPE(液相エピタキシャル)法を用いて作製される。
【0036】
反射層14は、ホログラフィック再生を行う際に使用する参照光に対して高い反射率、好ましくは50%以上の反射率を示す材料から構成する。例えば、金属ではAlもしくはAgもしくはこれらを主成分とする合金は特に反射率が高く好ましい。
【0037】
また、参照光の波長に対して選択的に50%以上の反射率を示す屈折率の異なる層を互いに積層させた波長選択多層膜であってもよい。
【0038】
次に、図1に示すホログラフィック記録媒体10における外来光の遮蔽操作を説明する。図2から明らかなように、本実施形態では、シャッター部12の第1の偏光吸収層121は、紙面に垂直な第1の最大透過軸を有しており、第2の偏光吸収層123は、紙面に平行な第2の最大透過軸を有している。したがって、第1の最大透過軸と第2の最大透過軸とは互いに直交している。
【0039】
図2に示すように、非使用時(媒体保存時)においては、ホログラフィック記録媒体10には磁界が印加されていないので、磁気偏光可変層122はファラデー効果を発現しておらず、磁気偏光可変層122内で偏光面の回転は生じない。したがって、例えば第1の最大透過軸と平行な第1の偏光状態の外来光がホログラフィック記録媒体10に対して入射した場合、外来光は、第1の最大透過軸を有する第1の偏光吸収層121及び磁気偏光可変層122は透過するようになるが、第2の最大透過軸を有する第2の偏光吸収層123によって吸収され遮蔽されるようになる。なお、第2の最大透過軸と平行な第2の偏光状態の外来光の場合は、当初から第1の偏光吸収層121で遮蔽されることになる。
【0040】
このように、本実施形態のホログラフィック記録媒体10は、ホログラフィック記録層11の光入射側において、第1の偏光吸収層121、磁気偏光可変層122及び第2の偏光吸収層123からなるシャッター部12を設けているので、ホログラフィック記録媒体10の非使用時(媒体保存時)における外来光を遮光することができる。
【0041】
また、本実施形態では、第1の最大透過軸と第2の最大透過軸とはクロスニコルとなっているので、外来光の遮光率は極めて高くなり、透過率は1%以下となる。したがって、ホログラフィック記録媒体10が、非使用時(媒体保存時)の場合の、外来光による感光を効果的に防止することができる。
【0042】
次に、図1に示すホログラフィック記録媒体10に対する記録再生操作を説明する。なお、本説明では、シャッター部12の磁気偏光可変層122は、そのファラデー回転角を90度に設定している場合を想定して説明する。
【0043】
ホログラフィック記録媒体10に対して記録を行なう場合は、図3に示すように、媒体の記録再生位置に、例えば永久磁石や電磁石等を配置することによって、シャッター部12の磁気偏光可変層122に対して磁界を印加する。すると、磁気偏光可変層122はファラデー効果を発現し、磁気偏光可変層122を透過する光の偏光面を90度回転させることになる。
【0044】
したがって、例えばホログラフィック記録媒体10の非使用時(媒体保存時)において遮蔽されるべき、第1の最大透過軸と平行な偏光状態の記録信号光及び記録参照光を入射させる場合において、これら記録信号光及び記録参照光は、シャッター部12の第1の偏光吸収層121を透過するとともに、シャッター部12の磁気偏光可変層122においてそれらの偏光面が90度回転させられることになる。この結果、第1の最大透過軸と平行な偏光状態の記録信号光及び記録参照光は、第2の最大透過軸と平行な偏光状態の記録信号光及び記録参照光に変換されることになる。
【0045】
第2の最大透過軸と平行な偏光状態の記録信号光及び記録参照光は、シャッター部12の、同じ第2の最大透過軸を有する第2の偏光吸収層123を透過することができるので、これらの光はホログラフィック記録層11に達し、このホログラフィック記録層11に対して記録操作を行うことができるようになる。
【0046】
同様に、ホログラフィック記録媒体10の非使用時(媒体保存時)において遮蔽されるべき、第1の最大透過軸と平行な偏光状態の再生参照光を入射させる場合において、この再生参照光は、シャッター部12の第1の偏光吸収層121を透過するとともに、シャッター部12の磁気偏光可変層122においてそれらの偏光面が90度回転させられることになる。この結果、第1の最大透過軸と平行な偏光状態の再生参照光は、第2の最大透過軸と平行な再生参照光に変換されることになる。
【0047】
第2の最大透過軸と平行な再生参照光は、シャッター部12の、同じ第2の最大透過軸を有する第2の偏光吸収層123を透過することができるので、これらの光はホログラフィック記録層11に達するとともに、反射層13で反射させることによって、ホログラフィック記録層11における記録情報に関する再生信号光を、前記記録信号光及び前記記録参照光の前記入射側において得、これによって、ホログラフィック記録媒体10に対して再生操作を行うことができるようになる。
【0048】
このように、本実施形態のホログラフィック記録媒体10においては、ホログラフィック記録媒体10に対して磁界を印加しない状態では、シャッター部12において外来光を遮蔽することができるとともに、磁界を印加した状態では、シャッター部12の磁気偏光可変層122において、記録信号光及び記録参照光、並びに再生参照光の偏光状態を変化(回転)させて、シャッター部12を透過させ、ホログラフィック記録層11に対する記録再生を可能ならしめるようにしている。
【0049】
換言すれば、第1の最大透過軸を有する第1の偏光吸収層121、磁気偏光可変層122及び第1の最大透過軸と直交する第2の最大透過軸を有する第2の偏光吸収層123からなるシャッター部12を設け、さらにこのシャッター部12に対する磁界の印加の有無という極めて簡易な構成及び簡易な操作によって、ホログラフィック記録媒体10の非使用時(媒体保存時)には外来光を遮蔽できるとともに、記録再生操作をも行うことができる。
【0050】
したがって、特許文献1、特許文献2に示されるような光強度に対して透過率が変化する機構を用いていないので、いかなる感度のホログラフィック記録層であっても使用することができ、データ転送速度の高速化と遮光性とのトレードオフはなく、両者を成立させることが可能である。
【0051】
さらに、シャッター部の動作は、磁界を印加することを用いるので、特許文献3に示されるような透明電極層の形成及びそこに電圧を印加する機構を設ける必要がない簡単な機構で実現可能なので、用途としては記録媒体を静止させた状態で使用するカード型のみならず、光ディスクのように媒体を回転させて記録再生を行なう形態にも適用可能である。
【0052】
(第2の実施形態)
図4は、本実施形態のホログラフィック記録媒体の、媒体構成を示す図であり、図5は、図4に示すホログラフィック記録媒体における外来光の遮蔽操作を説明するための図であり、図6は、図4に示すホログラフィック記録媒体への記録再生操作を説明するための図である。なお、各図面において、層の右側に示されている符号

は、層の最大透過軸が紙面に垂直であることを意味し、符号

は、層の最大透過軸が紙面に平行であることを意味している。また、本実施形態では、記録信号光、記録参照光及び再生参照光は、直線偏光とする。
【0053】
図4に示すように、本実施形態におけるホログラフィック記録媒体20は、光入射側から順次にシャッター部22、ホログラフィック記録層21及び追加のシャッター部24が積層されたような構成を呈し、いわゆる透過型のホログラフィック記録媒体を構成している。シャッター部22は、外来光入射側から順次に第1の偏光吸収層221、磁気偏光可変層222及び第2の偏光吸収層223が積層されたような構成を呈している。また、追加のシャッター部24は、外来光入射側から順次に第1の偏光吸収層241、磁気偏光可変層242及び第2の偏光吸収層243が積層されたような構成を呈している。
【0054】
なお、第1の偏光吸収層221及び第2の偏光吸収層223、並びに第1の偏光吸収層241及び第2の偏光吸収層243の積層順序は、これらの間にそれぞれ磁気偏光可変層222及び242が位置する限りにおいて逆転させることができる。
【0055】
なお、本実施形態におけるホログラフィック記録媒体20を構成する各層の材料種類は第1の実施形態におけるホログラフィック記録媒体10を構成する各層の材料種類と同様であるので、説明を省略する。
【0056】
次に、図4に示すホログラフィック記録媒体20における外来光の遮蔽操作を説明するが、本実施形態では、追加のシャッター部24が付加された点を除き、外来光の遮蔽操作は基本的には第1の実施形態におけるホログラフィック記録媒体10における外来光の遮蔽操作と同様である。
【0057】
図5から明らかなように、本実施形態では、シャッター部22の第1の偏光吸収層221は、紙面に垂直な第1の最大透過軸を有しており、第2の偏光吸収層223は、紙面に平行な第2の最大透過軸を有している。同様に、追加のシャッター部24の第1の偏光吸収層241は、紙面に垂直な第1の最大透過軸を有しており、第2の偏光吸収層243は、紙面に平行な第2の最大透過軸を有している。すなわち、シャッター部22において、第1の最大透過軸及び第2の最大透過軸は互いに直交するとともに、追加のシャッター部24においても、第1の最大透過軸及び第2の最大透過軸は互いに直交している。
【0058】
図5に示すように、非使用時(媒体保存時)においては、ホログラフィック記録媒体20には磁界が印加されていないので、シャッター部22及び24の、磁気偏光可変層222及び242はファラデー効果を発現しておらず、磁気偏光可変層222及び242内で偏光面の回転は生じない。
【0059】
したがって、例えば第1の最大透過軸と平行な第1の偏光状態の外来光がホログラフィック記録媒体20に対して入射した場合、外来光は、シャッター部22の、第1の最大透過軸を有する第1の偏光吸収層221及び磁気偏光可変層222は透過するようになるが、第2の最大透過軸を有する第2の偏光吸収層223によって吸収され遮蔽されるようになる。同様に、追加のシャッター部24の、第1の最大透過軸を有する第1の偏光吸収層241及び磁気偏光可変層242は透過するようになるが、第2の最大透過軸を有する第2の偏光吸収層243によって吸収され遮蔽されるようになる。
【0060】
なお、第2の最大透過軸と平行な第2の偏光状態の外来光の場合は、当初から第1の偏光吸収層221及び241で遮蔽されることになる。
【0061】
このように、本実施形態のホログラフィック記録媒体20は、ホログラフィック記録層11の外来光入射側において、第1の偏光吸収層121、磁気偏光可変層122及び第2の偏光吸収層123からなるシャッター部22、並びに第1の偏光吸収層241、磁気偏光可変層242及び第2の偏光吸収層243からなる追加のシャッター部24を設けているので、ホログラフィック記録媒体20の非使用時(媒体保存時)における外来光を遮光することができる。
【0062】
また、本実施形態では、第1の最大透過軸と第2の最大透過軸とはクロスニコルとなっているので、外来光の遮光率は極めて高くなり、透過率は1%以下となる。したがって、ホログラフィック記録媒体20が、非使用時(媒体保存時)の場合の、外来光による感光を効果的に防止することができる。
【0063】
次に、図4に示すホログラフィック記録媒体20に対する記録再生操作を説明する。なお、本説明では、シャッター部12の磁気偏光可変層222及び追加のシャッター部24の磁気偏光可変層242は、そのファラデー回転角を90度に設定している場合を想定して説明する。
【0064】
ホログラフィック記録媒体20に対して記録を行なう場合は、図6に示すように、媒体の記録再生位置に、例えば永久磁石や電磁石等を配置することによって、シャッター部22の磁気偏光可変層222及び追加のシャッター部24の磁気偏光可変層242に対して磁界を印加する。すると、磁気偏光可変層222及び242はファラデー効果を発現し、磁気偏光可変層222及び242を透過する光の偏光面を90度回転させることになる。
【0065】
したがって、例えばホログラフィック記録媒体20の非使用時(媒体保存時)において遮蔽されるべき、第1の最大透過軸と平行な偏光状態の記録信号光及び記録参照光を入射させる場合において、これら記録信号光及び記録参照光は、シャッター部22の第1の偏光吸収層221を透過するとともに、シャッター部22の磁気偏光可変層222においてそれらの偏光面が90度回転させられることになる。この結果、第1の最大透過軸と平行な偏光状態の記録信号光及び記録参照光は、第2の最大透過軸と平行な偏光状態の記録信号光及び記録参照光に変換されることになる。
【0066】
第2の最大透過軸と平行な偏光状態の記録信号光及び記録参照光は、シャッター部22の、同じ第2の最大透過軸を有する第2の偏光吸収層223を透過することができるので、これらの光はホログラフィック記録層21に達し、このホログラフィック記録層21に対して記録操作を行うことができるようになる。
【0067】
ホログラフィック記録層21に対して記録操作を行った後、第2の最大透過軸と平行な偏光状態の記録信号光及び記録参照光は、追加のシャッター部24の同じ第2の最大透過軸を有する第2の偏光吸収層243を透過した後、磁気偏光可変層242においてそれらの偏光面が90度回転させられ、第1の最大透過軸と平行な偏光状態の記録信号光及び記録参照光に変換されることになる。この第1の最大透過軸と平行な偏光状態の記録信号光及び記録参照光は、追加のシャッター部24の、同じ第1の最大透過軸を有する第1の偏光吸収層241を透過することができるので、ホログラフィック記録媒体20の、信号記録光及び参照記録光の入射側と、相対向する側から外方に放出されることになる。
【0068】
同様に、ホログラフィック記録媒体10の非使用時(媒体保存時)において遮蔽されるべき、第1の最大透過軸と平行な偏光状態の再生参照光を入射させる場合において、この再生参照光は、シャッター部22の第1の偏光吸収層121を透過するとともに、シャッター部22の磁気偏光可変層222においてそれらの偏光面が90度回転させられることになる。この結果、第1の最大透過軸と平行な偏光状態の再生参照光は、第2の最大透過軸と平行な再生参照光に変換されることになる。
【0069】
第2の最大透過軸と平行な再生参照光は、シャッター部22の、同じ第2の最大透過軸を有する第2の偏光吸収層223を透過することができるので、これらの光はホログラフィック記録層21に達する。一方、第2の最大透過軸と平行な再生参照光は、追加のシャッター部24の、同じ第2の最大透過軸を有する第2の偏光吸収層243を透過した後、磁気偏光可変層242においてその偏光面が90度回転させられ、第1の最大透過軸と平行な偏光状態の再生参照光に変換されることになる。
【0070】
この第1の最大透過軸と平行な偏光状態の再生参照光は、追加のシャッター部24の、同じ第1の最大透過軸を有する第1の偏光吸収層241を透過することができるので、ホログラフィック記録媒体20の、信号記録光及び参照記録光の入射側と、相対向する側から外方に放出され、図示しない再生光学系によって受光され、ホログラフィック記録層21に記録された記録情報を再生することができる。
【0071】
このように、本実施形態のホログラフィック記録媒体20においても、ホログラフィック記録媒体20に対して磁界を印加しない状態では、シャッター部22及び追加のシャッター部24において外来光を遮蔽することができるとともに、磁界を印加した状態では、シャッター部22の磁気偏光可変層222及び追加のシャッター部24の磁気偏光可変層242において、記録信号光及び記録参照光、並びに再生参照光の偏光状態を変化(回転)させて、シャッター部22及び追加のシャッター部24を透過させ、ホログラフィック記録層21に対する記録再生を可能ならしめるようにしている。
【0072】
換言すれば、第1の最大透過軸を有する第1の偏光吸収層221、磁気偏光可変層222及び第1の最大透過軸と直交する第2の最大透過軸を有する第2の偏光吸収層223からなるシャッター部22、並びに第1の最大透過軸を有する第1の偏光吸収層241、磁気偏光可変層242及び第1の最大透過軸と直交する第2の最大透過軸を有する第2の偏光吸収層243からなる追加のシャッター部24を設け、さらにこのシャッター部22及び追加のシャッター部24に対する磁界の印加の有無という極めて簡易な構成及び簡易な操作によって、ホログラフィック記録媒体20の非使用時(媒体保存時)には外来光を遮蔽できるとともに、記録再生操作をも行うことができる。
【0073】
したがって、特許文献1、特許文献2に示されるような光強度に対して透過率が変化する機構を用いていないので、いかなる感度のホログラフィック記録層であっても使用することができ、データ転送速度の高速化と遮光性とのトレードオフはなく、両者を成立させることが可能である。
【0074】
さらに、シャッター部の動作は、磁界を印加することを用いるので、光磁気記録を用いた光学ドライブ(MO、MDなど)で用いられている磁界印加機構が使用でき、特許文献3に示されるような透明電極層の形成及びそこに電圧を印加する機構を設ける必要がない簡単な機構で実現可能なので、用途としては記録媒体を静止させた状態で使用するカード型のみならず、光ディスクのように媒体を回転させて記録再生を行なう形態にも適用可能である。
【0075】
(第3の実施形態)
図7は、本実施形態におけるホログラフィック記録媒体の概略構成を示す図である。本実施形態では、本発明のホログラフィック記録媒体をディスク状に形成した場合を示している。この場合、記録再生に使用する光を方向性のない光、例えば円偏光とすることにより、シャッター部12等における第1の偏光吸収層121及び第2の偏光吸収層123等の最大透過軸(吸収軸)をディスクの半径方向もしくは同心円方向に向ける必要はなく、図7に示すように、ディスク全面に亘って同一方向に形成することもできる。
【0076】
ディスク状のホログラフィックであって、かつシャッター部12等における第1の偏光吸収層121及び第2の偏光吸収層123等の最大透過軸(吸収軸)をディスク全面に亘って同一方向に形成した場合、ホログラフィック記録媒体30が回転して領域Bが領域Aの箇所に来ると、第1の偏光吸収層121等の最大透過軸及び吸収軸の位置が入れ替わり、領域Bの最大透過軸の方向が領域Aの吸収軸の方向と一致し、領域Bの吸収軸の方向が領域Aの最大透過軸の方向と一致するようになる。したがって、当初、記録及び再生に用いていた直線偏光は第1の偏光吸収層121等を透過することができなくなり、ディスク状のホログラフィック記録媒体30に対して記録再生を行うことができなくなってしまう。
【0077】
一方、記録信号光を円偏光とした場合は、第1の偏光吸収層121等の最大透過軸と平行な方向に偏光面を有する直線偏光を任意に抽出することができる。この結果、ホログラフィック記録媒体30が回転して領域Bが領域Aの箇所に来た際においても、その際の最大透過軸と平行な偏光面を有する直線偏光が抽出されて、第1の偏光吸収層121等を透過するようになるので、ディスク状のホログラフィック記録媒体30に対して、第1の実施形態及び第2の実施形態で説明したような方法で記録再生を行うことができるようになる。
【0078】
なお、この場合、ホログラフィック記録媒体30に対する遮光に関しても、第1の実施形態及び第2の実施形態と同様にして実施することができる。
【実施例】
【0079】
<ホログラフィック記録媒体の作製>
本発明の有効性を検証するための実験に用いたホログラフィック記録媒体の構成を図8に示す。
【0080】
30mm x 30mm、厚さ0.6mmの第1のガラス基板424上に、MOD法を用いて、Bi置換型のYIG層を約50μm形成し、ファラデー回転層から成る磁気偏光可変層422とした。この偏光可変層を形成した状態で532nmのレーザ光を透過させた場合、偏光状態がほとんど変化していないことを確認した。
【0081】
次いで、上記の両面に、粘着剤が塗布されたTAC / PVA / TACの3層構造から成る一軸性(光吸収軸が一方向)の偏光フィルムを貼り付け、第1及び第2の偏光吸収層421及び423を形成し、シャッター部42を得た。このとき、第1および第2の偏光吸収層421及び423の最大透過軸が互いに直交するように形成した。その結果、磁界を印加しない状態での800nm以下の光に対するシャッター部透過率は約0.5%以下であった。
【0082】
次いで、上記シャッター部42の第1のガラス基板424と同サイズの第2のガラス基板45を準備し、これらの間に、ホログラフィック記録層41として、フォトポリマーを0.5mmの厚さに形成して、記録前のホログラフィック記録媒体とした。
【0083】
フォトポリマーの組成は以下のとおりとした。
ヘキサメチレンジイソシアネート(東京化成工業(株)製)30.8重量部、ポリエーテルトリオール((株)ADEKA製、G−400、平均分子量409)48.1重量部、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物(新日鐵化学(株)製、ASF−400)4.0重量部、ジブチルスズジラウレート(東京化成工業(株)製)0.03重量部、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製、イルガキュア784)1.2重量部、アセナフチレン(新日鐵化学(株)製)4.0重量部、O−アセチルクエン酸トリブチル(東京化成工業(株)製)11.8重量部。
【0084】
比較用として、シャッター部を設けずに、第1、第2のガラス基板の間に、上記と同様のホログラフィック記録層を設けた媒体を用意した。
【0085】
なお両媒体とも、ホログラフィック記録、後露光(フォトポリマーの定着)後に、光照射と反対側の基板(本実施例の場合は第2のガラス基板45側)に、反射層43としてAlを約100nmスパッタ法により成膜した。
【0086】
<外来光照射>
外来光を想定して、中心波長が520nmのLEDを用い、ホログラフィック記録前に、上記媒体の片側から一定時間照射した。本実施例による媒体の場合、照射方向はシャッター部を設けた側である。媒体位置での光強度は17mW/cm2とした。
【0087】
<ホログラフィック記録再生>
上記媒体の一部に、2光束干渉法によって平面波のホログラフィック記録を行なった。光学系は特許文献4(WO2010/008064号)の図6に示される構成を用いた。光源は波長532nmのYAGレーザである。ただし平面波とするため、レンズ51は使用せず、SLM49を全反射状態(all white)とした。参照光の入射角度を20度から70度まで0.5度ステップで多重度101の角度多重を行なった。スケジューリングはフラットとし、各ページの記録露光エネルギーは、30mJ/cm2とした。
【0088】
シャッター部42部を「開」状態とするために、裏面側(第2のガラス基板45側)に永久磁石を設置し、媒体の記録再生位置での媒体面に対して垂直方向の磁界の強さが約8x104 A/mになるようにした。これによって、磁気偏光可変層422のファラデー回転角は約90度となり、シャッター部が「開」状態となった。このとき、媒体の透過率は約70%であった。なお上記磁石は、電磁石としてもよい。その場合は、電流によって偏光可変層のファラデー回転角をコントロールすることができる。
【0089】
ホログラフィック記録の後、上記LEDを用いて記録位置に約1時間照射し、フォトポリマーを定着させた。
【0090】
再生は特許文献4(WO2010/008064号)の図8に示される構成の光学系を用いて行なったが、イメージセンサ55の代りにフォトディデクター(PD)を設置した。また、同文献に示されるように、記録位置に対してペリストロフィック方向に180度回転させ、位相共役再生とした。また記録時と同様、シャッター部を「開」状態とするために、裏面側(第2のガラス基板45側)に永久磁石を設置した。この結果、媒体の反射率は約50%であった。
【0091】
図9、図10に、ホログラフィック記録前に、外来光として上記LED光を照射したエネルギーに対して、ホログラフィック再生したときの回折効率ηmax(101多重記録した中の最大値)、M#の結果を示す。
【0092】
M#(エムナンバー)は、i多重目の回折効率をηiとして、次式で定義される。
【数1】

【0093】
図9、図10から分かるとおり、本発明によるシャッター部を設けた媒体では、50J/cm2以上の外来光を照射してもシャッター部の遮光効果によりηmax、M#の劣化が少ないのに対し、シャッター部の無い媒体においては、外来光を照射するに従いηmax、M#が大きく劣化しており、外来光によってホログラフィック記録層が感光して感度が低下している。以上より、シャッター部の明確な遮光効果が確認された。
【0094】
なお実施例は30mm x 30mmのクーポン状の媒体で行なったが、ディスク状の媒体でも適用可能である。
【0095】
以上、本発明を上記具体例に基づいて詳細に説明したが、本発明は上記具体例に限定されるものではなく、本発明の範疇を逸脱しない限りにおいてあらゆる変形や変更が可能である。
【符号の説明】
【0096】
10,20,30,40 ホログラフィック記録媒体
11,21,41 ホログラフィック記録層
12,22,42 シャッター部
13,43 反射層
121,221,421,241 第1の偏光吸収層
122,222,242,422 磁気偏光可変層
123,223,243,423 第2の偏光吸収層
424 第1のガラス基板
45 第2のガラス基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録信号光及び記録参照光を照射して得た干渉縞を記録情報として記録するためのホログラフィック記録層と、
前記ホログラフィック記録層と隣接するようにして設けられた、第1の最大透過軸を有する第1の偏光吸収層、磁気偏光可変層及び前記第1の最大透過軸と直交する第2の最大透過軸を有する第2の偏光吸収層が積層されてなるシャッター部と、
を具えることを特徴とする、ホログラフィック記録媒体。
【請求項2】
前記ホログラフィック記録層の、前記シャッター部が隣接する側と相対向する側において、前記ホログラフィック記録層と隣接するようにして設けられた、前記第1の偏光吸収層、前記磁気偏光吸収層及び前記第2の偏光吸収層が積層されてなる追加のシャッター部を具えることを特徴とする、請求項1に記載のホログラフィック記録媒体。
【請求項3】
前記ホログラフィック記録層の、前記シャッター部が隣接する側と相対向する側において、前記ホログラフィック記録層の前記記録情報を再生する際に照射する再生参照光を反射させて、前記記録情報に関する再生信号光を、前記記録信号光及び前記記録参照光の前記入射側において得るための反射層を具えることを特徴とする、請求項1に記載のホログラフィック記録媒体。
【請求項4】
前記磁気偏光可変層は、ファラデー効果を有する層であって、磁場印加時において、前記第1の最大透過軸又は前記第2の最大透過軸と平行な偏光状態の光を形成することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一に記載のホログラフィック記録媒体。
【請求項5】
前記記録信号光、前記記録参照光及び前記再生参照光は直線偏光であり、前記第1の偏光吸収層及び前記第2の偏光吸収層は、それぞれ直線偏光吸収層であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一に記載のホログラフィック記録媒体。
【請求項6】
前記記録信号光、前記記録参照光及び前記再生参照光は円偏光であり、前記第1の偏光吸収層及び前記第2の偏光吸収層は、それぞれ直線偏光吸収層であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一に記載のホログラフィック記録媒体。
【請求項7】
前記ホログラフィック記録媒体はディスク状の記録媒体であり、前記第1の偏光吸収層の前記第1の最大透過軸及び前記第2の偏光吸収層の前記第2の最大透過軸は、前記記録媒体の全面に亘って同一方向に形成されていることを特徴とする、請求項6に記載のホログラフィック記録媒体。
【請求項8】
記録信号光及び記録参照光を照射して得た干渉縞を記録情報として記録するためのホログラフィック記録層と隣接するようにして、第1の最大透過軸を有する第1の偏光吸収層、磁気偏光可変層及び前記第1の最大透過軸と直交する第2の最大透過軸を有する第2の偏光吸収層が積層されてなるシャッター部を設け、このシャッター部において外来光を遮蔽するステップと、
前記磁気偏光可変層において、磁気的手段により、前記記録信号光及び前記記録参照光を、前記第1の最大透過軸又は前記第2の最大透過軸と平行な偏光状態とし、前記シャッター部において前記記録信号光及び前記記録参照光を透過させ、前記ホログラフィック記録媒体に対して記録操作を行うステップと、
を具えることを特徴とする、ホログラフィック記録媒体の記録方法。
【請求項9】
前記磁気偏光可変層は、ファラデー効果を有する層であって、前記記録信号光及び前記記録参照光を、磁場印加時において、前記第1の最大透過軸又は前記第2の最大透過軸と平行な偏光状態とすることを特徴とする、請求項8に記載のホログラフィック記録媒体の記録方法。
【請求項10】
前記記録信号光、前記記録参照光及び前記再生参照光を直線偏光とし、前記第1の偏光吸収層及び前記第2の偏光吸収層を、それぞれ直線偏光吸収層としたことを特徴とする、請求項8又は9に記載のホログラフィック記録媒体の記録方法。
【請求項11】
前記記録信号光、前記記録参照光及び前記再生参照光を円偏光とし、前記第1の偏光吸収層及び前記第2の偏光吸収層を、それぞれ直線偏光吸収層としたことを特徴とする、請求項8又は9に記載のホログラフィック記録媒体の記録方法。
【請求項12】
前記ホログラフィック記録媒体はディスク状の記録媒体とし、前記第1の偏光吸収層の前記第1の偏光状態及び前記第2の偏光吸収層の前記第2の偏光状態を、前記記録媒体の全面に亘って同一方向に形成することを特徴とする、請求項11に記載のホログラフィック記録媒体の記録方法。
【請求項13】
記録信号光及び記録参照光を照射して得た干渉縞を記録情報として記録するためのホログラフィック記録層と隣接するようにして、第1の最大透過軸を有する第1の偏光吸収層、磁気偏光可変層及び前記第1の最大透過軸と直交する第2の最大透過軸を有する第2の偏光吸収層が積層されてなるシャッター部を設け、外来光を遮蔽するステップと、
前記ホログラフィック記録層の、前記シャッター部が隣接する側と相対向する側において、前記ホログラフィック記録層と隣接するようにして設けられた、前記第1の偏光吸収層、前記磁気偏光吸収層及び前記第2の偏光吸収層が積層されてなる追加のシャッター部を設け、前記外来光を遮蔽するステップと、
前記磁気偏光可変層において、磁気的手段により、前記記録信号光及び前記記録参照光を、前記第1の最大透過軸又は前記第2の最大透過軸と平行な偏光状態とし、前記シャッター部において前記記録信号光及び前記記録参照光を透過させ、前記ホログラフィック記録媒体に対して記録操作を行うステップと、
前記磁気偏光可変層において、前記磁気的手段によって、再生参照光を、前記第1の最大透過軸又は前記第2の最大透過軸と平行な偏光状態とし、前記追加のシャッター部を透過させ、前記ホログラフィック記録媒体に対して再生操作を行うステップと、
を具えることを特徴とする、ホログラフィック記録媒体の記録再生方法。
【請求項14】
記録信号光及び記録参照光を照射して得た干渉縞を記録情報として記録するためのホログラフィック記録層と隣接するようにして、第1の最大透過軸を有する第1の偏光吸収層、磁気偏光可変層及び前記第1の最大透過軸と直交する第2の最大透過軸を有する第2の偏光吸収層が積層されてなるシャッター部を設け、このシャッター部において外来光を遮蔽するステップと、
前記磁気偏光可変層において、磁気的手段により、前記記録信号光及び前記記録参照光を、前記第1の最大透過軸又は前記第2の最大透過軸と平行な偏光状態とし、前記シャッター部において前記記録信号光及び前記記録参照光を透過させ、前記ホログラフィック記録媒体に対して記録操作を行うステップと、
前記ホログラフィック記録層の、前記シャッター部が隣接する側と相対向する側において反射層を設け、前記磁気偏光可変層において、磁気的手段により、再生参照光を、前記第1の最大透過軸又は前記第2の最大透過軸に平行な偏光状態とし、前記シャッター部において前記再生参照光を透過させるとともに、前記反射層で反射させて、前記記録情報に関する再生信号光を、前記記録信号光及び前記記録参照光の前記入射側において得、前記ホログラフィック記録媒体に対して再生操作を行うステップと、
を具えることを特徴とする、ホログラフィック記録媒体の記録再生方法。
【請求項15】
前記磁気偏光可変層は、ファラデー効果を有する層であって、前記記録信号光及び前記記録参照光を、磁場印加時において、前記第1の最大透過軸又は前記第2の最大透過軸と平行な偏光状態とすることを特徴とする、請求項13又は14に記載のホログラフィック記録媒体の記録再生方法。
【請求項16】
前記記録信号光、前記記録参照光及び前記再生参照光を直線偏光とし、前記第1の偏光吸収層及び前記第2の偏光吸収層を、それぞれ直線偏光吸収層としたことを特徴とする、請求項13〜15のいずれか一に記載のホログラフィック記録媒体の記録再生方法。
【請求項17】
前記記録信号光、前記記録参照光及び前記再生参照光を円偏光とし、前記第1の偏光吸収層及び前記第2の偏光吸収層を、それぞれ直線偏光吸収層としたことを特徴とする、請求項13〜15のいずれか一に記載のホログラフィック記録媒体の記録再生方法。
【請求項18】
前記ホログラフィック記録媒体はディスク状の記録媒体とし、前記第1の偏光吸収層の前記第1の偏光状態及び前記第2の偏光吸収層の前記第2の偏光状態を、前記記録媒体の全面に亘って同一方向に形成することを特徴とする、請求項17に記載のホログラフィック記録媒体の記録再生方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−197476(P2011−197476A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−65104(P2010−65104)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000006644)新日鐵化学株式会社 (747)
【Fターム(参考)】