説明

ホログラムシート及び印刷媒体

【課題】本発明は、銀行券、パスポート、ブランドプロテクションなどの偽造防止や複製防止が要求される貴重性の高い媒体に関するものである。
【解決手段】ホログラム形成層の一表面上に形成された回折格子の表面上には、潜像画像領域と潜像背景領域から成るホログラム画像領域を有し、前記潜像画像領域には、光透過性部材から成る第1の面積の潜像画像画素と、前記潜像画像画素の背景に形成された光反射性部材から成る第1の光反射領域とを有し、前記潜像背景領域には、光透過性部材から成る第2の面積の潜像背景画素と、前記潜像背景画素の背景に形成された光反射性部材から成る第2の光反射領域とを有し、前記潜像画像画素と前記潜像背景画素の前記面積は、異なることを特徴とするホログラムシートである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホログラムシートとそのホログラムシートを紙などの基材に貼付した印刷媒体に関する。特に、本発明は、銀行券、パスポート、ブランドプロテクションなどの貴重性の高い媒体に利用され、偽造防止や真偽判別が必要な媒体に適用できる。
【背景技術】
【0002】
磁気カードなどのカード媒体や銀行券、諸証券などの紙媒体の表面にホログラムを貼付し、偽造防止のためのセキュリティ機能を高める方法としては、公知になっている。しかし、コピー機やパソコンなどの電子機器の急激な精度向上に伴い、単純なホログラムでは偽造防止として十分な機能を得られていない状況にある。そこで、ホログラムを構成する金属層又は金属蒸着層に、非金属領域を設けて透明層又は透明部分を形成することは、以下の先行発明のとおり開示されている。
【0003】
例えば、ホログラムのマスキング印刷層を洗い流すことで、所望のパターン(ダイヤ・ハート・クローバ・スペード等)の金属反射層を設けて、意匠性の自由度が増し、細かいパターン、複雑なパターンを形成する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ホログラムの金属蒸着層を除去する方法としては、例えば、金属蒸着層をYAGもしくはCO等のレーザビームで照射により非接触にて溶解し、固定情報として印字パターンとする技術が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
また、金属蒸着型熱転写用ホログラムシートにレーザを部分的に照射し、照射部分の金属蒸着層をスリット状又はメッシュ状に蒸発させる技術が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
更に、ホログラムに印刷デザイン形成部と、ホログラムの金属蒸着膜をレーザ加工又はエッチング処理により透かしデザイン形成部を設ける技術が開示されている(例えば、特許文献4参照)。
【0007】
また、基材に孔をあけて、反射状態においては裸眼でそれらのなすパターンが見えないが、透過状態においてパターンが見える安全保管文書の技術が開示されている(例えば、特許文献5参照)。
【0008】
【特許文献1】特開平11−286194号公報
【特許文献2】特開平10−333574号公報
【特許文献3】特開2003−150027号公報
【特許文献4】特開2005−14492号公報
【特許文献5】特表2000−501036号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、先行発明の特開平11−286194号公報は、ホログラムの金属蒸着層内に非金属領域を設けて、所望のパターン(ダイヤ・ハート・クローバ・スペードが開示されている)を形成することから、デザインを作成する上では、任意のパターンが自由に形成できるという利点がある。しかし、偽造防止に関するセキュリティ面から見ると、前記ホログラムによる金属蒸着層内に非金属領域で形成する所望のパターンは、単純な図柄で、且つ、パターン図柄全体を金属蒸着層の有無で形成していることから、複写、複製した場合に模造されやすいため、セキュリティ面では課題があった。そのため、金属蒸着層内に非金属領域を、より効果的な構成にして、偽造抵抗力を高めることが望まれていた。
【0010】
また、先行発明の特開平10−333574号公報は、ホログラムの金属蒸着層をYAGもしくはCO等のレーザビームで照射により非接触にて溶解し、固定情報として印字パターンを形成する。具体的な印字パターンとしては管理番号や文字などが開示されており、目視できる程度の大きさの固定情報を記録することで、本発明の目的や利用としては達成されている。しかし、固定情報を微細な構造体(例えば、微細な線状や点状の集合体)にした場合、線や点は微小であるため、レーザビームの出力のばらつきが生じ、レーザ出力が減少した場合、線や点として形成されず、逆に、レーザ出力が増えた場合、設定幅の線や点よりも大きくなる可能性があることから、微細体を形成するのは不向きである。従って、レーザビームで固定情報を加工する場合、レーザビームの出力のバラツキに対する影響は受けにくい文字などが好適であり、固定情報を微細な構造とした場合には課題があった。
【0011】
また、先行発明の特開2003−150027号公報は、ホログラムシートの金属蒸着層にレーザを部分的に照射し、照射部分の金属蒸着層をスリット状又はメッシュ状に蒸発させるがホログラム形成層は残存させ、擬似的な透明あるいは半透明なホログラムシートを形成する。本発明は、コスト面で多種少量生産に好適であるが、大量生産品では、レーザビームの出力のバラツキが影響し、その結果、金属蒸着層に対してレーザ加工した加工精度(金属蒸着層を除去する精度)もあばれを生じることから、常に同一の加工精度、加工品質が求められる場合は不適であった。一方、精密な加工が可能なレーザビームを有する装置は、レーザによる加熱を制御する機能やスペースが必要となり、装置自体が大きくなることと、装置の価格が高くなり、低コストでは実現できない。
【0012】
また、ホログラムの金属蒸着層をレーザ加工により蒸発させ、スリット状、メッシュ状として、透かして見た時に、あたかも透明(又は半透明)に見えることで擬似透明ホログラムとして機能させている。前記スリット状、前記メッシュ状とする目的は、レーザ加工により金属蒸着層に対して、除去部分と非除去部分を繰り返して形成することにより、肉眼で見た場合、ホログラムに透明(又は半透明)の濃淡を与えるものである。しかし、偽造防止に関するセキュリティ面では、前記ホログラムの真偽を判別する場合、「透明(又は半透明)である」「透明(又は半透明)でない」という濃度を基準とするため、判定する者の個人差により基準が異なり、客観的な判断ができないため、真偽判別手段としては向いていないという課題があり、誰にでも客観的に判断できる真偽判別手段が望まれていた。
【0013】
一方、ホログラムの金属蒸着層をレーザ加工により除去し透かして見える情報としては、具体的には文字や数字が開示されているが、文字の大きさに具体的な記載が無いため、透かしても見えるが、透かさなくても反射状態で文字や数字が目視できてしまうという欠点があり、セキュリティ面の潜像効果としては、より反射状態で目視した時に前記情報が見えない構成が望まれていた。
【0014】
また、先行発明の特開2005−14492号公報は、ホログラムに印刷デザイン形成部と、ホログラムの金属蒸着膜をレーザ加工又はエッチング処理により透かしデザイン形成部を設けているが、具体的に開示されている透かしデザイン形成部は、文字や数字であり、文字の大きさに具体的な記載が無く、透かしても見えるが、一方で、透かさなくても反射状態で文字や数字が目視できてしまうため、セキュリティ面の潜像効果としては、より反射状態で情報が見えない構成が望まれていた。
【0015】
また、先行発明の特表2000−501036号公報は、基材に対して、レーザ光線により孔をあけて、反射状態においては裸眼でそれらのなすパターンが見えないが、透過状態においてパターンが見えるという発明が開示されている。しかし、銀行券のような繰返し利用され且つ、ATMや券売機などで機械処理される場合は、基材自体に孔をあけると、孔をあけた周辺部分の耐久性が低下し、流通適性が損なわれてしまう可能性がある。また、大量生産する場合、レーザ光線により基材に孔をあけるため、レーザ光線の出力のバラツキから安定した大きさの孔か得られない場合がある。さらに、孔によりパターンを形成しているが、透過で見た場合にそのパターンの構成が容易に解明されてしまうため、偽造防止でも前記先行発明には課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、ホログラム形成層を有するホログラムシートであって、前記ホログラム形成層の一表面上に形成された回折格子の表面上には、潜像画像領域と潜像背景領域から成るホログラム画像領域を有し、前記潜像画像領域には、光透過性部材から成る第1の面積の潜像画像画素と、前記潜像画像画素の背景に形成された光反射性部材から成る第1の光反射領域とを有し、前記潜像背景領域には、光透過性部材から成る第2の面積の潜像背景画素と、前記潜像背景画素の背景に形成された光反射性部材から成る第2の光反射領域とを有し、前記潜像画像画素と前記潜像背景画素の前記面積は、異なることを特徴とするホログラムシートである。
【0017】
また、本発明は、ホログラム形成層を有するホログラムシートであって、前記ホログラム形成層の一表面上に形成された回折格子の表面上には、潜像画像領域と潜像背景領域から成るホログラム画像領域を有し、前記潜像画像領域には、光透過性部材から成る第1の面積及び第1の向きから成る潜像画像画素と、前記潜像画像画素の背景に形成された光反射性部材から成る第1の光反射領域とを有し、前記潜像背景領域には、光透過性部材から成る第2の面積及び第2の向きから成る潜像背景画素と、前記潜像背景画素の背景に形成された光反射性部材から成る第2の光反射領域とを有し、前記潜像画像画素と前記潜像背景画素の前記面積は同一であり、且つ、前記潜像画像画素の第1の向きと前記潜像背景画素の第2の向きが異なって形成することを特徴とするホログラムシートである。
である。
【0018】
また、本発明は、ホログラム形成層を有するホログラムシートであって、前記ホログラム形成層の一表面上に形成された回折格子の表面上には、潜像画像領域と潜像背景領域から成るホログラム画像領域を有し、前記潜像画像領域には、光透過性部材から成る第1の面積の潜像画像画素と、前記潜像画像画素の背景に形成された光反射性部材から成る第1の光反射領域とを有し、前記潜像背景領域には、光透過性部材から成る第2の面積の潜像背景画素と、前記潜像背景画素の背景に形成された光反射性部材から成る第2の光反射領域とを有し、前記潜像画像画素と前記潜像背景画素の前記面積は同一であり、且つ、単位あたりの画素密度が、前記潜像画像領域と前記潜像背景領域で異なることを特徴とするホログラムシートである。
【0019】
また、本発明は、ホログラム形成層を有するホログラムシートであって、前記ホログラム形成層の一表面上に形成された回折格子の表面上には、潜像画像領域と潜像背景領域から成るホログラム画像領域を有し、前記潜像画像領域には、光透過性部材から成る潜像画像画素と、前記潜像画像画素の背景に形成された光反射性部材から成る第1の光反射領域とを有し、前記潜像背景領域には、光透過性部材から成る潜像背景線と、前記潜像背景線の背景に形成された光反射性部材から成る第2の光反射領域とを有して、単位あたりの前記潜像画像画素と前記潜像背景線の密度が、前記潜像画像領域と前記潜像背景領域で、同一又は異なることを特徴とするホログラムシートである。
【0020】
また、本発明は、ホログラム形成層を有するホログラムシートであって、前記ホログラム形成層の一表面上に形成された回折格子の表面上には、潜像画像領域と潜像背景領域から成るホログラム画像領域を有し、前記潜像画像領域には、光透過性部材から成る潜像画像線と、前記潜像画像線の背景に形成された光反射性部材から成る第1の光反射領域とを有し、前記潜像背景領域には、光透過性部材から成る潜像背景画素と、前記潜像背景画素の背景に形成された光反射性部材から成る第2の光反射領域とを有して、単位あたりの前記潜像画像線と前記潜像背景画素の密度が、前記潜像画像領域と前記潜像背景領域で、同一又は異なることを特徴とするホログラムシートである。
【0021】
また、本発明は、前記潜像画像画素及び/又は前記潜像背景画素は、マトリックス状に形成することを特徴とするホログラムシートである。
【0022】
また、本発明は、前記潜像画像画素及び/又は前記潜像背景画素の形状が、円、多角形、図形、マーク又は文字のいずれかで形成することを特徴とするホログラムシートである。
【0023】
また、本発明は、前記潜像画像画素及び前記潜像背景画素の形状が、異方性を有する楕円、多角形、図形、マーク又は文字のいずれかで形成することを特徴とするホログラムシートである。
【0024】
また、本発明は、前記潜像画像画素と、前記潜像背景画素とは文字で形成し、同一の書体又は異なる書体で形成することを特徴とするホログラムシートである。
【0025】
また、本発明は、前記ホログラム形成層において、前記ホログラム画像領域の周辺に、光透過性部材から成る透明領域で形成されることを特徴とするホログラムシートである。
【0026】
また、本発明は、ホログラム形成層を接着剤層を介して印刷基材に接着されたことを特徴とする印刷媒体である。
【0027】
また、本発明は、前記印刷媒体が銀行券であることを特徴とする印刷媒体である。
【発明の効果】
【0028】
本発明のホログラムシート及びホログラム形成層を接着剤で貼付した印刷基材のホログラム画像領域は、反射状態で目視した場合、光反射性部材から成る潜像画像領域及び潜像背景領域の光反射領域により、回折光や反射光でホログラム効果が目視できるが、ホログラム画像領域の光透過性部材で形成した潜像画像画素及び潜像背景画素は目視できない。一方、ホログラム画像領域を透過状態で目視した場合は、ホログラム効果は目視できないが、ホログラム画像領域の光透過性部材で透明に形成した潜像画像領域における複数の潜像画像画素と潜像背景領域における複数の潜像背景画素との透過光量の差異や透過光の方向性の差異などにより、潜像画像領域が文字、マーク、図柄として目視できる。この時、前記潜像画像画素及び前記潜像背景画素は、それぞれの1個々の画素としては微細なため目視し難いが、潜像画像領域の複数の潜像画像画素、潜像背景領域の複数の潜像背景画素を備えるため、潜像画像領域及び潜像背景領域を領域(又はエリア)として目視した場合、より多くの透過光を目視することができ、前記領域で形成された情報又はパターン(例えば、文字、マーク、図柄など)が容易に認識できる。従って、反射状態ではホログラム効果、透過状態では潜像効果という2種類の効果を、真偽判別道具などを使用することなく目視で真偽判別できるというメリットを備える。なお、本発明のホログラムシートのホログラム形成層を接着剤によって、紙、フィルム、カードなどの基材に貼り付けても同様な効果を得られ、銀行券や有価証券には好適である。ただし、前記基材は、光を一定以上透過する素材、材料でなければならない。
【0029】
また、ホログラムシートのホログラム画像領域の光反射性部材としては、例えば、アルミニウムなどの光沢性が高い金属材で形成されるため、複写、複製に対する抵抗力が高い。その理由としては、カラーコピー機やスキャナなどの機器は、強い投下光を被複写物や被複製物に当てて入力画像を得るため、光反射性が高いアルミニウムなどの金属材は、投下光の反射率が高いため、正確に再現することが難しい。加えて、本発明では、ホログラム画像領域に光透過性部材(例えば、透明の熱可塑性樹脂)で形成した潜像画像画素及び潜像背景画素は微細であるため、それぞれの1個々の画素は、光反射性部材である光反射領域(例えば、アルミニウム)による反射光や回折格子による回折光により、潜像画像画素及び潜像背景画素は、複写、複製をより困難にする。従って、本発明のホログラムシートは、複写、複製に対して、異なる2種類の防止機能を有することから、2重のセキュリティが付与できる。
【0030】
また、本発明のホログラムシートのホログラム形成層は、基材に貼付しても、透過状態による潜像効果が得られる。例えば、紙などの基材自体に孔をあけて、透過状態で潜像を目視できる技術も開示されているが、この技術では、基材自体に孔をあけるため、孔をあけた領域の耐久性や強度が低下してしまうことは避けられないが、本発明のホログラムシートのホログラム形成層を基材に直接貼り付けた場合は、基材自体の耐久性は低下せず、ATMや券売機などの搬送に対しても悪影響を及ぼさない。
【0031】
また、本発明のホログラムシート及びホログラム形成層を接着剤で貼付した印刷基材は、ホログラム画像領域において、潜像画像領域の潜像画像画素と潜像背景領域の潜像背景画素とを備えているため、反射で目視した場合のカモフラージュ性が高い構成となっている。その理由として、例えば、ホログラム画像領域を潜像画像領域と潜像背景領域に区分けし、一方の領域は、光透過性部材で形成した潜像画素と光反射性部材から成る光反射領域で形成し、もう一方の領域を光反射性部材から成る光反射領域のみで形成した場合、潜像線を備える領域と潜像線を備えない領域では、それぞれの領域ではアルミニウムなどの光反射性部材の面積に大きな差異が生じることから、光反射性や光沢性が異なり、潜像が見やすくなる。正確には、潜像画素が見やすくなる。しかし、本発明のホログラムシートの構成では、それぞれの領域に、光透過性部材から成る潜像画素と光反射性部材から成る光反射領域を備えるため、それぞれの領域では光反射性部材の面積に大きな差異が生じず、光反射性や光沢性の差異が少ないことから、ホログラムシート及びホログラム形成層を接着剤で貼付した印刷基材を反射状態で目視した場合に、より潜像画素を潜像化できるメリットがある。なお、潜像背景領域又は潜像背景領域において、どちらか一方の潜像画素の替わりに線で形成しても、前述と同様のホログラム効果や潜像効果が得られる。なお、ここでいう「画素」とは、潜像画像領域及び潜像背景領域の光透過性部材で形成される一要素であり、画素の面積を変化させれば、透過状態で目視した場合の透過光量も変化する。また、「画素」は印刷業界でいうところの網点と同様である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明の実施形態について図面を用いて説明する。しかしながら、本発明は以下に述べる実施するための最良の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他のいろいろな形態が実施可能である。
【0033】
(ホログラムシートの形態)
図1は、本発明のホログラムシート1の概観図である。ホログラムシート1はロール状に巻き付けられており、ホログラム画像領域6、透明領域6e及び位置決めマーク9で構成されている。ホログラム画像領域6は、光反射性部材から成る第1の光反射領域6a及び第2の光反射領域6cと、光透過性部材から成る第1の潜像画像画素6b及び第2の潜像背景画素6dから成る。光反射領域6a及び光反射領域6cは、反射状態で目視した場合にホログラム効果を有しており、潜像画像画素6b及び潜像背景画素6dは反射状態で目視した場合、それぞれの線は目視できないが(又は潜像化するが)、透過状態で目視すると、それぞれの線が目視できる(又は建像化する)。また、透明領域6eは光透過性部材から成り、前記ホログラム効果は必要としない領域であるため、透明又は半透明にすることが望ましく、潜像画像画素6b及び潜像背景画素6dと同様のホログラム加工層4から成る。一方、位置決めマーク9は光反射性部材から成り、紙やプラスチックなどの基材10に連続的に貼付する場合、貼付機での前記位置決め用マーク9を光学センサーなどで読み取って、ホログラムシート1の最下部に積層された接着剤層8を熱圧着することにより、基材10に対して一定の位置に貼付される。従って、本発明のホログラムシート1を基材10に貼付する場合は、前記位置決めマーク9は基材10に貼付されず、ホログラム画像領域6及びホログラム画像領域6周辺の透明領域6eを貼付することが望ましい。なお、図1のホログラムシート1は、貼付機によって連続的に貼付されるため、ロール状で説明しているが、位置決めマーク9を有しなくても良いし、ホログラム画像領域6をマトリックス状に複数配置したシート状の形態でも構わないし、透明領域6eを有さず光反射性部材のみでホログラムシートを層構成しても良い。また、位置決めマーク9の形状も限定されず、貼付機の機種によって適宜形状を選択すれば良い。
【0034】
本発明で記載する「ホログラム効果」とは、本発明のホログラム画像領域6を、「反射状態」で目視した時に、回折格子の回折光や反射光により、図柄の色彩が虹色に変化したり、画像が他の画像と切り替わるような効果をいい、ホログラムシート1の状態でも、又は、ホログラムシート1のホログラム形成層3を接着剤層8などを用いて基材10に貼付した状態でも、ホログラム効果が得られる。ホログラム形成層3は、ホログラム加工層4に、回折格子又は回折格子パターンとなる微細な凹凸を形成し、この凹凸表面にアルミニウムなどの光沢性が高い光反射性部材を蒸着などで密着させることで作製できる。具体的なホログラム効果としては、日本やユーロなどの銀行券に貼付されているホログラムのように、見る角度で複数の図柄や色彩が変化するなどの効果をいう。また、ホログラム効果は、銀行券のホログラムで見られる効果には限らず、公知のカード、商品券、証明書に貼付されたホログラムの効果でも構わない。また、ここで記載する「潜像効果」とは、本発明のホログラム画像領域6を、「反射状態」で目視した時に、文字、図柄、マークなどの情報は目視できない(又は潜像となる)が、「透過状態」で目視した時(又は透かして見た時)には、前記潜像画像領域が文字、図柄、マークなどの情報として目視できることをいう。
【0035】
図2(a)、(b)は、ホログラムシート1のホログラム形成層3を基材10に貼付した図である。具体的な所定領域とは、ホログラム画像領域6とその周辺の透明領域6eである。また、基材10は紙として、料額、人像、地紋などの必要な情報をオフセット印刷、凹版印刷やスクリーン印刷により施されていることが望ましい。ホログラム画像領域6には、図2(a)に示すように、潜像画像領域と潜像背景領域に領域が分けられている。また、図2(b)に示すように、前記潜像画像領域には、光透過性部材から成る第1の面積の潜像画像画素6bと、前記潜像画像画素6bの背景に形成された光反射性部材から成る第1の光反射領域6aで構成されている。一方、前記潜像背景領域には、光透過性部材から成る第2の面積の潜像背景画素6dと、前記潜像背景画素6dの背景に形成された光反射性部材から成る第2の光反射領域6cで構成されている。前記潜像画像領域と前記潜像背景領域の構成は、逆であっても構わない。
【0036】
(ホログラム形成層の構成)
図3(a)は、本発明のホログラムシート1の構成図であり、ホログラムシート1は、ホログラムシート基材2、ホログラム形成層3及び接着剤層8で形成される。ホログラムシート基材2はシート基材2aと剥離層2bからなり、シート基材2aの一方の面に、塗工機、グラビアコーター、グラビア印刷機やスクリーン印刷機などを利用し、透明又は半透明の剥離層2bを積層する。ホログラム形成層3は、ホログラム加工層4、回折格子5(正確には、光反射性部材を密着した凹凸5aと光透過性部材から成る凸凹5b)、マスク層7で形成され、基材10に貼付する場合はホログラム形成層3が接着剤層8を介して基材10に接着、形成される。ホログラム形成層3の作製方法としては、剥離層2bの表面に光透過性部材である透明又は半透明のホログラム加工層4を積層し、ホログラム効果を発現するために微細な凹凸又は凹凸パターンでなる回折格子5を形成する。前記回折格子5は、図示しない金属製のスタンパーの一表面に形成された回折格子5の凹凸を、ホログラム加工層4表層に熱転写するなどして形成される。正確には、スタンパーに形成された凹凸は、ホログラム加工層4では凹凸の形状が逆になり回折格子5となる。次に、ホログラム加工層4表面にアルミニウムなどの光反射性部材を真空蒸着やスパッタリングした後、グラビア印刷機などでマスク層7を形成し、アルカリ溶液に浸漬することにより、マスク層7で保護されていない前記回折格子5に形成されたアルミニウムは溶解、除去され、光透過性部材から成る透明な凹凸5bを形成する。従って、光透過性部材はホログラム加工層4となる。一方、マスク層7で被覆されている領域のみアルミニウム(図の太線部分)が残存し、アルミニウムが密着した凹凸5aを形成する。具体的には、ホログラム画像領域6のうち、潜像画像領域は、アルミニウムが残存する光反射領域6a(図の太線部分)と、アルミニウムが溶解された光透過領域6bとから成る。また、光透過領域6bは、線状に透明又は半透明として形成され、潜像画像画素6bとなる。一方、潜像背景領域は、アルミニウムが残存する光反射領域6c(図の太線部分)と、アルミニウムが溶解された光透過領域6dとから成る。また、光透過領域6dは、線状に透明又は半透明として形成され、潜像背景画素6dとなる。また、ホログラム画像領域6の周辺の透明領域6eは、ホログラム加工層4に形成した前記回折格子5及び/又は平坦面を備えるが、光透過性部材で透明又は半透明であることが望ましい。更に、マスク層7、潜像画像画素6b、潜像背景画素6d及び透明領域6eの下層に、接着剤層8をホログラムシート1全体の厚みがほぼ均一になるように積層する。なお、ホログラムシート1に光透過性部材から成る透明又は半透明の領域を形成する方法としては、水溶性インキでホログラム加工層4の前記回折格子5にマスク層を形成した後、真空蒸着などで光反射性部材を密着し、前記マスク層を除去し、透明又は半透明に形成する方法でも構わない。なお、図3(a)のホログラム形成層3は、説明の便宜上、相当の厚みがあるように示しているが、実際の構成では極めて薄い層であり、図3(b)及び(c)のホログラム形成層3の厚みは同一である。
【0037】
ホログラムシート基材2のシート基材2aは、透明プラスチックが望ましく、例えば、PETなどの公知の樹脂を使用すれば良い。剥離層2b、ホログラム加工層4、接着剤層8は、熱可塑性や熱硬化性などの公知の樹脂を適宜選択すれば良いが、ホログラム加工層4は光透過性部材である透明又は半透明な樹脂が望ましい。また、前記光反射性部材には、アルミニウム、銅、ニッケル、錫などがあるが、高輝度で経済性に有利なアルミニウムが好適であり、真空蒸着やスパッタリングを利用して形成すれば良い。また、光反射性部材にアルミニウムを使用した場合、100〜2000Åの厚みが望ましい。
【0038】
(ホログラム形成層の貼付方法)
図3(b)は、高温加熱した刻印Sを用いて、前記ホログラムシート1を基材10に押圧することにより、ホログラムシート1の一部であるホログラム形成層3を基材10に貼付した模式図である。この時、接着剤層8は、熱溶解して基材10に固着されるよう、ホットメルト材が望ましい。貼付時には、図1で示す前記位置決めマーク9を光学センサーで読み取って貼付しても構わない。図3(c)は、刻印Sで押圧後、基材10に前記ホログラム形成層3が貼付された図である。従って、基材10に貼付されるホログラム形成層3は、刻印Sで押圧されている領域であり、また、ホログラム形成層3よりも上層に形成されているホログラムシート基材2(シート基材2a及び剥離層2b)は剥離されて基材10には貼付されない。ただし、剥離層2bが透明又は半透明であれば、ホログラム形成層3の表層に残存しても、ホログラム効果を阻害しないため、剥離層2bが多少残っても構わない。基材10は、紙、プラスチック、布、フィルムなどが好適である。
【0039】
(ホログラムシートの厚み)
また、図3(a)〜(c)は模式図であり、実際のホログラムシート1において、シート基材2aの厚みは、0.015mm〜0.025mm、基材10に貼付される前記ホログラム形成層3の厚みは、0.005mm〜0.030mmが望ましく、ホログラム形成層3の厚みは極めて薄くすることが偽造防止は有効である。
【0040】
(回折格子の構成)
ホログラム形成層3の回折格子5の構成としては、公知のレリーフ型ホログラム、レインボー型ホログラムなどの公知である微細な凹凸パターンを形成したホログラムを使用すれば良く、特に制約されるものではない。
【0041】
(潜像画像画素と潜像背景画素の構成)
図4〜図9は、図2で示す基材10に貼付したホログラム形成層3を拡大したものである。また、図4〜図9は、本発明の特徴である光透過性部材による潜像画像画素6b及び潜像背景画素6dを備えた実施形態であり、例えば、ホログラムシート1の一部であるホログラム形成層3を基材10に貼付機などで貼付し、ホログラム形成層3の一部であるホログラム画像領域6とその周辺部の透明領域6eが基材10上に貼付されている。また、本発明によるホログラムシート1は、ホログラムシート1のホログラム画像領域6を潜像画像領域と潜像背景領域に区分けし、潜像画像領域には、光透過性部材から成る複数の潜像画像画素6bと光反射性部材から成る光反射領域6aとを設け、潜像背景領域には、光透過性部材から成る複数の潜像背景画素6dと光反射性部材から成る光反射領域6cとを設けている。図4〜図9は、前述のホログラムシートの層構成は同一であるが、光透過性部材から成る潜像画像画素6b及び潜像背景画素6dの構成が異なっている。
【0042】
図4は、本発明の一実施例であり、ホログラム画像領域6に光透過性部材から成る潜像画像画素6bと潜像背景画素6dを有し、それぞれの画素を円で、且つ、面積が異ならせて形成したホログラム貼付物(正確には、ホログラム形成層3を基材10に貼付したもの)であり、潜像画像領域で「P」の文字を形成している。
【0043】
図5は、本発明の一実施例であり、ホログラム画像領域6に光透過性部材から成る潜像画像画素6bと潜像背景画素6dを有し、それぞれの画素を四角形で、且つ、面積が異ならせて形成したホログラム貼付物であり、潜像画像領域で「P」の文字を形成している。
【0044】
図6は、本発明の一実施例であり、ホログラム画像領域6に光透過性部材から成る潜像画像画素6bと潜像背景画素6dを有し、それぞれの画素を文字で、且つ、面積が異ならせて形成したホログラム貼付物であり、潜像画像領域で「P」の文字を形成している。
【0045】
図7は、本発明の一実施例であり、ホログラム画像領域6に光透過性部材から成る潜像画像画素6bと潜像背景画素6dを有し、それぞれの画素を三角形で、且つ、向き(又は方向)を異ならせて形成したホログラム貼付物であり、潜像画像領域で「P」の文字を形成している。
【0046】
図8は、本発明の一実施例であり、ホログラム画像領域6に光透過性部材から成る潜像画像画素6bと潜像背景画素6dを有し、それぞれの画素を丸で、且つ、単位あたりの画素密度を異ならせて形成したホログラム貼付物であり、潜像画像領域で「P」の文字を形成している。
【0047】
図9は、本発明の一実施例であり、ホログラム画像領域6に光透過性部材から成る潜像画像画素6bと潜像背景線6dを有し、画素を四角、線を直線で、且つ、前記画素と前記線の単位あたりの密度を同一に形成したホログラム貼付物であり、潜像画像領域で「P」の文字を形成している。
【0048】
(ホログラム効果)
前述した図4〜図9のホログラム形成層3で構成した場合、本発明による独自の効果が得られる。すなわち、図10のように、ホログラム形成層3を貼付した基材10の表面(基材10に対してホログラム形成層3を貼付した面)から「反射状態」で目視した場合は、図11のように前記回折格子5による回折光により、観察する角度によって様々なホログラム効果が目視できる。具体的には、観察角度によって、複数の図柄が出現することや、その図柄の色が変化が確認できる。例えば、図11では、(a)は、X方向の所定の角度で観察すると「A」という文字と色彩、(b)は、X方向の所定の角度で観察すると「太陽」の図柄と色彩、(c)は、Y方向の所定の角度で観察すると「星」の図柄と色彩、(d)は、Y方向の所定の角度で観察すると「四角」の図柄と色彩が出現するホログラム効果を示している。しかし、観察角度により出現するホログラム画像の回数やホログラム画像の画像変化(切替、移動、膨張、収縮など)の方法には、特段の制約をなく、ホログラム効果が1つのパターンでも問題はない。一方で、ホログラム画像領域6に光透過性部材から成る前記潜像画像画素6bと前記潜像背景画素6dとは、微細で、且つ、潜像画像領域と潜像背景領域とで構成されているため、隠蔽性(又は潜像化)が高く反射状態では目視できないため、ホログラム効果を目視する時に、前記潜像画像画素6bと前記潜像背景画素6dでホログラム効果を阻害することはない。
【0049】
(潜像効果)
図12は、前述した図4〜図9のホログラム形成層3を貼付した基材10の裏面(基材10に対してホログラム1aを貼付した逆の面)から「透過状態」で目視した場合である。この時、ホログラム効果は目視できないが、図4〜図9で説明した前記潜像画像画素6bと前記潜像背景画素6dは光反射性部材を有さず透明であるため、基材10を通して光を透過する。そのため、潜像画像領域の前記潜像画像画素6bと潜像背景領域の前記潜像背景画素6dは、透過状態で目視できる。また、潜像画像画素6bと潜像背景画素6dとの透過光量の差異や透過光の方向性の差異により、図4〜図9に示した、潜像画像領域でなる「P」という文字が目視できる。なお、前記潜像画像画素6b及び前記潜像背景画素6dは微細なため1個1個では目視し難いが、潜像画像領域及び潜像背景領域に複数の画素を形成することにより、透過光量の差異や透過光の方向性の差異が顕著になり、潜像画像領域でなる「P」という文字情報又は潜像情報などが容易に目視できるようになる。この時、基材10は光を透過する材料や材質で構成する必要がある。また、透過状態で目視する場合、表面(ホログラム形成層3側)から目視しても、同様な潜像効果が得られる。潜像画像領域でなる情報としては、文字、数字、図柄、マークなど適宜選択すれば良い。
【実施例1】
【0050】
図2に示すホログラムシート1の一部であるホログラム形成層3を基材10に貼付機などで貼付する。図4は、図2のホログラム形成層3を拡大した図であり、また、透過状態で目視した概略図でもある。例えば、図4のように、紙などの基材10に対して、ホログラム画像領域6とホログラム画像領域6周辺の透明領域6eを有するホログラム形成層3を貼付する。ホログラム画像領域6には、潜像画像領域と潜像背景領域を有しており、潜像画像領域には、光透過性部材から成る潜像画像画素6bが形成されている。潜像画像画素6bは、反射状態で目視できないように、透明又は半透明で微細な形状とする。潜像画像画素6bは円として、直径W1は0.20mmとするが、0.15mm〜0.25mmの範囲が好ましい。潜像画像画素6bの縦横方向の円ピッチPは、1.00mmでマトリックス状に等間隔で配置するが、0.60mm〜2.00mmの範囲が好ましい。また、潜像画像画素6bの背景には、光反射性部材から成る光反射領域6aを形成する。一方、潜像背景領域は、光透過性部材から成る潜像背景画素6dが形成されている。潜像背景画素6dも、反射状態で目視できないように、透明又は半透明で微細な形成とする。例えば、潜像画像画素6bを円として、直径W2は、0.10mmとするが、0.05mm〜0.15mmの範囲が好ましい。潜像背景画素6dの縦横方向の円ピッチPは、1.00mmでマトリックス状に等間隔で配置するが、0.60mm〜2.00mmの範囲が好ましい。また、潜像背景画素6dの背景には、光反射性部材から成る光反射領域6cを形成する。更に、前記潜像画像画素6bと前記潜像画像背景画素6dは、縦横方向に同一延長線上に形成されており、一方で、光反射領域6aと光反射領域6cは、前記潜像画像領域と前記潜像背景領域の境界部で連続的に形成されている。ただし、潜像画像画素6b及び潜像背景画素6dの直径や円ピッチは、前述の数値に制限されるものではなく、適宜選択すれば良い。ただし、図4には、潜像背景画素6dの横方向の円ピッチPは記載されていないが、縦方向の円ピッチPと同様である。
【0051】
図4のホログラム形成層3は、反射状態で目視した場合、光反射領域6a及び光反射領域6cから成る回折格子5によるホログラム効果が出現する。具体的には、前述の図10及び図11に示すホログラム効果と同様である。しかし、潜像画像画素6b及び潜像背景画素6dは、反射状態では目視できない。また、図4は、ホログラム形成層3を透過状態で目視した場合、潜像画像画素6b(又は、潜像画像画素群)及び潜像背景画素6d(又は、潜像背景画素群)が目視でき、潜像画像領域から成る「P」という文字が目視できる。具体的には、先に説明した図12に示す潜像効果と同様である。従って、図4のホログラム形成層3は、反射状態と透過状態の2通りの方法により目視で真偽判別が可能となる。また、本実施例では、潜像画像画素6bに対して、潜像背景画素6dの直径の方が小さく説明しているが、逆の構成でも本発明における効果は変わらない。更に、潜像画像画素6bと潜像背景画素6dは、必ずしもマトリックス状、規則的である必要はない。なお、光反射性部材にはアルミニウム、光反射性部材となるホログラム加工層4は、透明又は半透明の熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂又は、これらを組合わせて使用することが望ましい。また、本実施例は、潜像画像領域に配置した全ての潜像画像画素6bを、同一の直径、ピッチで示しているが、潜像画像領域に配置した潜像画像画素6bであれば、一部の潜像画像画素6bの直径やピッチを変化させても良く、例えば、前記潜像画像領域と前記潜像背景領域の境界部に近傍した潜像画像画素6bの一部のみの直径やピッチを変化させても良い。
【実施例2】
【0052】
実施例2〜実施例6は、実施例1の基材10に貼付したホログラム形成層3における潜像画像画素6b及び潜像背景画素6dの画素構成は異なっているが、ホログラムの層構成及び効果は同一である。従って、同一な構成の説明は省略し、異なる構成のみを説明する。
【0053】
図5は、実施例1の潜像画像画素6b及び潜像背景画素6dの画素形状を長方形にして、潜像画像画素6bと潜像背景画素6dとの面積が異なる例である。例えば、潜像画像画素6bである長方形の長辺W1は0.60mm、短辺W2は0.20mmとする。隣接する潜像画像画素6bの縦横方向のピッチPは1.00mmでマトリックス状に等間隔で配置する。一方、潜像背景画素6dである長方形の長辺W3は0.60mm、短辺W4は0.10mmとする。隣接する潜像画像画素6bの縦横方向のピッチPは1.00mmでマトリックス状に等間隔で配置する。更に、前記潜像画像画素6bと前記潜像背景画素6dは、縦横方向に同一延長線上に形成されている。ただし、潜像画像画素6b及び潜像背景画素6dの大きさやピッチは、前述の数値に制限されるものではなく、適宜選択すれば良い。本実施例で構成した場合、実施例1と同様のホログラム効果や潜像効果が得られる。
【実施例3】
【0054】
図6は、実施例1の潜像画像画素6b及び潜像背景画素6dの画素形状を文字にして、潜像画像画素6bと潜像背景画素6dとの面積が異なる例である。例えば、潜像画像画素6bである文字の高さW1は0.70mm、文字の線幅は0.15mmとする。隣接する潜像画像画素6bの縦横方向のピッチPは1.50mmでマトリックス状に等間隔で配置する。一方、潜像背景画素6dである文字の高さW2は0.65mm、文字の線幅は0.12mmとする。隣接する潜像背景画素6dの縦横方向のピッチPは1.50mmでマトリックス状に等間隔で配置する。更に、前記潜像画像画素6bと前記潜像背景画素6dは、縦横方向に同一延長線上に形成されている。ただし、潜像画像画素6b及び潜像背景画素6dの文字の高さやピッチは、前述の数値に制限されるものではなく、適宜選択すれば良い。また、潜像画像画素6bと潜像背景画素6dとの文字書体は、ホログラム1aを反射状態で目視した場合に、潜像画像画素6bと潜像背景画素6dを、より潜像化(見えない)したい場合は、文字書体を同一にすることが望ましい。一方、ホログラム形成層3を透過状態で目視した場合に、潜像効果をより向上させたい場合は、文字書体を異ならせることが望ましい。本実施例で構成した場合、実施例1と同様のホログラム効果や潜像効果が得られる。
【実施例4】
【0055】
図7は、実施例1の潜像画像画素6b及び潜像背景画素6dの画素形状を三角形にして、潜像画像画素6bと潜像背景画素6dとの面積が同一で、向き(又は方向)が異なる例である。例えば、潜像画像画素6bと潜像背景画素6dである三角形の高さW1は0.20mm、底辺W2は0.15mmとする。隣接する潜像画像画素6b及び潜像背景画素6dの縦横方向のピッチPは1.00mmでマトリックス状に等間隔で配置する。更に、前記潜像画像画素6bと前記潜像背景画素6dは、縦横方向に同一延長線上に、且つ、潜像画像画素6bは潜像背景画素6dに対して、角度を異ならせて形成されている。具体的な潜像画像画素6b及び潜像背景画素6dの角度は、潜像画像画素6bは、三角形の底辺に対して頂点が左に向くような第1の向きで配置し、潜像背景画素6dは、三角形の底辺に対して頂点が上に向くような第2の向きで配置することから、第1と第2の向きは異なり、異方性を有している。なお、潜像画像画素6b及び潜像背景画素6dの大きさやピッチは、前述の数値に制限されるものではなく、適宜選択すれば良い。
【0056】
本実施例で構成した場合、実施例1と同様のホログラム効果や潜像効果が得られる。ただし、透過状態で目視した場合の潜像効果の出現する原理は、実施例1〜実施例3の画素面積の差(正確には、画素から透過する光量の差)ではなく、画素による縦横方向の方向性の差(正確には、画素から透過する縦横方向の光による方向性の差)によって潜像効果が出現するものである。
【実施例5】
【0057】
図8は、実施例1の潜像画像画素6b及び潜像背景画素6dに、第2の潜像画像画素6fを加え、画素形状を円にして、潜像画像画素6b、潜像画像画素6f及び潜像背景画素6dの円面積を同一とし、且つ、潜像画像領域と潜像背景領域とのそれぞれの単位あたりの円密度が異なる例である。例えば、図8の拡大図に示すように、潜像画像画素6bは、潜像画像領域のうち、上から1列目、3列目、5列目であり、それぞれ横方向に3個配列されている円である。一方、潜像画像画素6fは、潜像画像領域のうち、上から2列目、4列目であり、それぞれ横方向に3個配列されている円である。また、潜像背景画素6dは、潜像背景領域に形成する円である。この時、潜像画像画素6b、潜像画像画素6f及び潜像背景画素6dである円のそれぞれの直径Wは0.15mmとし、前記円のそれぞれのピッチPは、1.00mmである。更に、前記潜像画像画素6bと前記潜像背景画素6dは、縦横方向に同一延長線上にマトリックス状に形成され、また、潜像画像画素6fは、潜像画像画素6bの位置に対して、縦横方向に半ピッチ分ずらして、マトリックス状に形成することが望ましい。ただし、潜像画像画素6b、潜像画像画素6f及び潜像背景画素6dの大きさやピッチは、前述の数値に制限されるものではなく、適宜選択すれば良い。
【0058】
本実施例で構成した場合、実施例1と同様のホログラム効果や潜像効果が得られる。ただし、透過状態で目視した場合の潜像効果の出現する原理は、実施例1〜実施例3と同様で、画素密度の差(正確には、画素から透過する光量の差)を利用しているが、画素の大小ではなく密度であり、単位あたりに画素密度の差(正確には、画素から透過する光量の差)によって潜像効果が出現するものである。
【実施例6】
【0059】
図9は、実施例1の潜像画像画素6bを正方形にして、潜像背景画素6dの代わりに潜像背景線6dとし、潜像画像領域における単位あたりの正方形の面積と潜像背景領域における単位あたりの線面積を同一とする例である。例えば、潜像画像画素6bである正方形の1辺の長さW1は0.20mmとする。隣接する潜像画像画素6bの横方向のピッチP1は0.40mmで、縦方向のピッチP2は1.00mmとする。一方、潜像背景線6dの線幅W2は0.10mmとし、隣接する潜像背景線6dの線ピッチP2は1.00mmとする。更に、前記潜像画像画素6bと前記潜像背景線6dは、横方向に同一延長線上に且つ、潜像画像領域における単位あたりの前記正方形の面積と潜像背景領域における単位あたりの前記線面積を同一で形成されている。また、潜像画像領域における単位あたりの前記正方形の面積と潜像背景領域における単位あたりの前記線面積を異なって形成してもかまわない。ただし、潜像画像画素6b及び潜像背景画素6dの大きさやピッチは、前述の数値に制限されるものではなく、適宜選択すれば良い。なお、前記潜像画像領域と前記潜像背景領域の構成を逆にしても良い。
【0060】
本実施例で構成した場合、実施例1と同様のホログラム効果や潜像効果が得られる。ただし、透過状態で目視した場合の潜像効果の出現する原理は、実施例1〜実施例3の画素密度の差(正確には、画素から透過する光量の差)ではなく、画素や線の形状の差(正確には、画素から透過する光の形状の差)によって潜像効果が出現するものである。
【0061】
また、実施例1〜実施例6では、潜像画像領域(又は潜像画像画素6b)の構成(又は、反射状態で目視できる構成)として「P」という文字で説明しているが、文字に限らず、図柄、マークなどでも構わない。更に、潜像画像画素6bや潜像背景画素6dは、多角形、円、文字のほかに、図形やマークでも構わない。
【0062】
また、実施例1〜実施例6では、反射状態で目視した場合に、潜像画像画素6b及び潜像背景画素6dを、より潜像化、正確には見えなくするため、ホログラム形成層3のホログラム画像領域6に対して、潜像画像画素6b及び潜像背景画素6dは略全域に形成しているが、ホログラム画像領域6の一部の領域、例えば、1/2や1/4の領域で形成しても良い。
【0063】
更に、ホログラム形成層3を反射状態で目視した場合に、より潜像化(又は、カモフラージュ化)するためには、前記光反射性部材に高輝度、高光沢性を有し、より高い回折光を得られる材質にすることが望ましく、例えば、アルミニウムが好適である。また、ホログラム形成層3を貼付する基材10の色彩としては、白又は原色を除いた中間色の基材を用いるか、基材に中間色の印刷を施すなどして潜像化が向上する。
【0064】
なお、実施例では、基材10を紙で説明しているが、透明性を有するプラスチックカード、プラスチックフイルム、ガラス、不織布、布などを利用しても、同様な効果が得られる。なお、実施例1〜実施例6を説明する図4〜図9は、便宜上、潜像画像画素及び潜像背景画素を拡大して示しており、実際の構成は微細であり図示する大きさでは構成されていない。また、潜像画像画素及び潜像背景画素は、前述のとおり反射状態で見えないことが望ましいが、潜像画像画素又は潜像背景画素の一部が、反射状態で若干見える構成であっても、潜像画像領域から成る情報(例えば、実施例1〜6では「P」が認識できず(又は、気づかず)、且つ、ホログラム効果の視認性を著しく阻害しなければ、本発明の技術的思想の範囲内である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明のホログラムシートの斜視図である。
【図2】本発明のホログラム形成層を基材に貼付した時の概要図である。
【図3】本発明のホログラムシートの断面図である。
【図4】本発明におけるホログラム形成層を基材に貼付した時の一実施例の概略図及び透過状態で目視した模式図である。
【図5】本発明におけるホログラム形成層を基材に貼付した時の一実施例の概略図及び透過状態で目視した模式図である。
【図6】本発明におけるホログラム形成層を基材に貼付した時の一実施例の概略図及び透過状態で目視した模式図である。
【図7】本発明におけるホログラム形成層を基材に貼付した時の一実施例の概略図及び透過状態で目視した模式図である。
【図8】本発明におけるホログラム形成層を基材に貼付した時の一実施例の概略図及び透過状態で目視した模式図である。
【図9】本発明におけるホログラム形成層を基材に貼付した時の一実施例の概略図及び透過状態で目視した模式図である。
【図10】本発明におけるホログラム形成層を基材に貼付した時の反射状態で目視する概略図である。
【図11】本発明におけるホログラム形成層を基材に貼付した時の潜像効果を示す概略図である。
【図12】本発明におけるホログラム形成層を基材に貼付した時の透過状態で目視する概略図である。
【符号の説明】
【0066】
1 ホログラムシート
2 ホログラムシート基材
2a シート基材
2b 剥離層
3 ホログラム形成層
4 ホログラム加工層
5 回折格子
5a 光反射性部材を密着した凹凸
5b 光透過性部材から成る凹凸
6 ホログラム画像領域
6a、6c 光反射性部材から成る光反射領域
6b、6d、6f 光透過性部材から成る画素
6e 光透過性部材から成る透明領域
7 マスク層
8 接着剤層
9 位置決めマーク
10 基材
S 刻印
W、W1、W2、W3、W4 画素の大きさ
P、P1、P2 ピッチ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホログラム形成層を有するホログラムシートであって、
前記ホログラム形成層の一表面上に形成された回折格子の表面上には、潜像画像領域と潜像背景領域から成るホログラム画像領域を有し、
前記潜像画像領域には、光透過性部材から成る第1の面積の潜像画像画素と、前記潜像画像画素の背景に形成された光反射性部材から成る第1の光反射領域とを有し、
前記潜像背景領域には、光透過性部材から成る第2の面積の潜像背景画素と、前記潜像背景画素の背景に形成された光反射性部材から成る第2の光反射領域とを有し、
前記潜像画像画素と前記潜像背景画素の前記面積は、異なることを特徴とするホログラムシート。
【請求項2】
ホログラム形成層を有するホログラムシートであって、
前記ホログラム形成層の一表面上に形成された回折格子の表面上には、潜像画像領域と潜像背景領域から成るホログラム画像領域を有し、
前記潜像画像領域には、光透過性部材から成る第1の面積及び第1の向きから成る潜像画像画素と、前記潜像画像画素の背景に形成された光反射性部材から成る第1の光反射領域とを有し、
前記潜像背景領域には、光透過性部材から成る第2の面積及び第2の向きから成る潜像背景画素と、前記潜像背景画素の背景に形成された光反射性部材から成る第2の光反射領域とを有し、
前記潜像画像画素と前記潜像背景画素の前記面積は同一であり、且つ、前記潜像画像画素の第1の向きと前記潜像背景画素の第2の向きが異なって形成することを特徴とするホログラムシート。
【請求項3】
ホログラム形成層を有するホログラムシートであって、
前記ホログラム形成層の一表面上に形成された回折格子の表面上には、潜像画像領域と潜像背景領域から成るホログラム画像領域を有し、
前記潜像画像領域には、光透過性部材から成る第1の面積の潜像画像画素と、前記潜像画像画素の背景に形成された光反射性部材から成る第1の光反射領域とを有し、
前記潜像背景領域には、光透過性部材から成る第2の面積の潜像背景画素と、前記潜像背景画素の背景に形成された光反射性部材から成る第2の光反射領域とを有し、
前記潜像画像画素と前記潜像背景画素の前記面積は同一であり、且つ、単位あたりの画素密度が、前記潜像画像領域と前記潜像背景領域で異なることを特徴とするホログラムシート。
【請求項4】
ホログラム形成層を有するホログラムシートであって、
前記ホログラム形成層の一表面上に形成された回折格子の表面上には、潜像画像領域と潜像背景領域から成るホログラム画像領域を有し、
前記潜像画像領域には、光透過性部材から成る潜像画像画素と、前記潜像画像画素の背景に形成された光反射性部材から成る第1の光反射領域とを有し、
前記潜像背景領域には、光透過性部材から成る潜像背景線と、前記潜像背景線の背景に形成された光反射性部材から成る第2の光反射領域とを有して、
単位あたりの前記潜像画像画素と前記潜像背景線の密度が、前記潜像画像領域と前記潜像背景領域で、同一又は異なることを特徴とするホログラムシート。
【請求項5】
ホログラム形成層を有するホログラムシートであって、
前記ホログラム形成層の一表面上に形成された回折格子の表面上には、潜像画像領域と潜像背景領域から成るホログラム画像領域を有し、
前記潜像画像領域には、光透過性部材から成る潜像画像線と、前記潜像画像線の背景に形成された光反射性部材から成る第1の光反射領域とを有し、
前記潜像背景領域には、光透過性部材から成る潜像背景画素と、前記潜像背景画素の背景に形成された光反射性部材から成る第2の光反射領域とを有して、
単位あたりの前記潜像画像線と前記潜像背景画素の密度が、前記潜像画像領域と前記潜像背景領域で、同一又は異なることを特徴とするホログラムシート。
【請求項6】
前記潜像画像画素及び/又は前記潜像背景画素は、マトリックス状に形成することを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載のホログラムシート。
【請求項7】
前記潜像画像画素及び/又は前記潜像背景画素の形状が、円、多角形、図形、マーク又は文字のいずれかで形成することを特徴とする請求項1、3、4、5又は請求項6のいずれか一項に記載のホログラムシート。
【請求項8】
前記潜像画像画素及び前記潜像背景画素の形状が、異方性を有する楕円、多角形、図形、マーク又は文字のいずれかで形成することを特徴とする請求項2記載のホログラムシート。
【請求項9】
前記潜像画像画素と、前記潜像背景画素とは文字で形成し、同一の書体又は異なる書体で形成することを特徴とする請求項1〜請求項3記載のホログラムシート。
【請求項10】
前記ホログラム形成層において、前記ホログラム画像領域の周辺に、光透過性部材から成る透明領域が形成されることを特徴とする前記請求項1〜請求項9のいずれか一項に記載のホログラムシート。
【請求項11】
前記請求項1〜請求項10のいずれかの一項に記載のホログラム形成層を接着剤層を介して印刷基材に接着されたことを特徴とする印刷媒体。
【請求項12】
前記印刷媒体が銀行券であることを特徴とする前記請求項11記載の印刷媒体。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−240786(P2007−240786A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−61942(P2006−61942)
【出願日】平成18年3月8日(2006.3.8)
【出願人】(303017679)独立行政法人 国立印刷局 (471)
【Fターム(参考)】