ホログラムシート及び印刷媒体
【課題】本発明は、銀行券、パスポート、ブランドプロテクションなどの偽造防止や複製防止が要求される貴重性の高い媒体に関するものである。
【解決手段】前記ホログラム形成層の一表面上に形成された回折格子の表面上には、潜像画像領域と潜像背景領域から成るホログラム画像領域を有し、前記潜像画像領域には、光透過性部材から成る潜像画像線又は潜像画像画素と、前記潜像画像線又は潜像画像画素の背景に形成された光反射性部材から成る光反射領域とを有し、前記潜像背景領域には、光反射性部材から成る光反射領域を有してなることを特徴とするホログラムシートである。
【解決手段】前記ホログラム形成層の一表面上に形成された回折格子の表面上には、潜像画像領域と潜像背景領域から成るホログラム画像領域を有し、前記潜像画像領域には、光透過性部材から成る潜像画像線又は潜像画像画素と、前記潜像画像線又は潜像画像画素の背景に形成された光反射性部材から成る光反射領域とを有し、前記潜像背景領域には、光反射性部材から成る光反射領域を有してなることを特徴とするホログラムシートである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホログラムシートとそのホログラムシートを紙などの基材に貼付した印刷媒体に関する。特に、本発明は、銀行券、パスポート、ブランドプロテクションなどの貴重性の高い媒体に利用され、偽造防止や真偽判別が必要な媒体に適用できる。
【背景技術】
【0002】
磁気カードなどのカード媒体や銀行券、諸証券などの紙媒体の表面にホログラムを貼付し、偽造防止のためのセキュリティ機能を高める方法としては、公知になっている。しかし、コピー機やパソコンなどの電子機器の急激な精度向上に伴い、単純なホログラムでは偽造防止として十分な機能を得られていない状況にある。そこで、ホログラムを構成する金属層又は金属蒸着層に、非金属領域を設けて透明層又は透明部分を形成することは、以下の先行発明のとおり開示されている。
【0003】
例えば、ホログラムのマスキング印刷層を洗い流すことで、所望のパターン(ダイヤ・ハート・クローバ・スペード等)の金属反射層を設けて、意匠性の自由度が増し、細かいパターン、複雑なパターンを形成する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ホログラムの金属蒸着層を除去する方法としては、例えば、金属蒸着層をYAGもしくはCO2等のレーザビームで照射により非接触にて溶解し、固定情報として印字パターンとする技術が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
また、金属蒸着型熱転写用ホログラムシートにレーザを部分的に照射し、照射部分の金属蒸着層をスリット状又はメッシュ状に蒸発させる技術が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
更に、ホログラムに印刷デザイン形成部と、ホログラムの金属蒸着膜をレーザ加工又はエッチング処理により透かしデザイン形成部を設ける技術が開示されている(例えば、特許文献4参照)。
【0007】
【特許文献1】特開平11−286194号公報
【特許文献2】特開平10−333574号公報
【特許文献3】特開2003−150027号公報
【特許文献4】特開2005−14492号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、先行発明の特開平11−286194号公報は、ホログラムの金属蒸着層内に非金属領域を設けて、所望のパターン(ダイヤ・ハート・クローバ・スペードが開示されている)を形成することから、デザインを作成する上では、任意のパターンが自由に形成できるという利点がある。しかし、偽造防止に関するセキュリティ面から見ると、前記ホログラムによる金属蒸着層内に非金属領域で形成する所望のパターンは、単純な図柄で、且つ、パターン図柄全体を金属蒸着層の有無で形成していることから、複写、複製した場合に模造されやすいため、セキュリティ面では課題があった。そのため、金属蒸着層内に非金属領域を、より効果的な構成にして、偽造抵抗力を高めることが望まれていた。
【0009】
また、先行発明の特開平10−333574号公報は、ホログラムの金属蒸着層をYAGもしくはCO2等のレーザビームで照射により非接触にて溶解し、固定情報として印字パターンを形成する。具体的な印字パターンとしては管理番号や文字などが開示されており、視認できる程度の大きさの固定情報を記録することで、本発明の目的や利用としては達成されている。しかし、固定情報を微細な構造体(例えば、微細な線状や点状の集合体)にした場合、線や点は微小であるため、レーザビームの出力のばらつきが生じ、レーザ出力が減少した場合、線や点として形成されず、逆に、レーザ出力が増えた場合、設定幅の線や点よりも大きくなる可能性があることから、微細体を形成するのは不向きである。従って、レーザビームで固定情報を加工する場合、レーザビームの出力のバラツキに対する影響は受けにくい文字などが好適であり、固定情報を微細な構造とした場合には課題があった。
【0010】
また、先行発明の特開2003−150027号公報は、ホログラムシートの金属層蒸着層にレーザを部分的に照射し、照射部分の金属蒸着層をスリット状又はメッシュ状に蒸発させるがホログラム形成層は残存させ、擬似的な透明あるいは半透明なホログラムシートを形成する。本発明は、コスト面で多種少量生産に好適であるが、大量生産品では、レーザビームの出力のバラツキが影響し、その結果、金属蒸着層に対してレーザ加工した加工精度(金属蒸着層を除去する精度)もあばれを生じることから、常に同一の加工精度、加工品質が求められる場合は不適であった。一方、精密な加工が可能なレーザビームを有する装置は、レーザによる加熱を制御する機能やスペースが必要となり、装置自体が大きくなることと、装置の価格が高くなり、低コストでは実現できない。
【0011】
また、ホログラムの金属蒸着層をレーザ加工により蒸発させ、スリット状、メッシュ状として、透かして見た時に、あたかも透明(又は半透明)に見えることで擬似透明ホログラムとして機能させている。前記スリット状、前記メッシュ状とする目的は、レーザ加工により金属蒸着層に対して、除去部分と非除去部分を繰り返して形成することにより、肉眼で見た場合、ホログラムに透明(又は半透明)の濃淡を与えるものである。しかし、偽造防止に関するセキュリティ面では、前記ホログラムの真偽を判別する場合、「透明(又は半透明)である」「透明(又は半透明)でない」という濃度を基準とするため、判定する者の個人差により基準が異なり、客観的な判断ができないため、真偽判別手段としては向いていないという課題があり、誰にでも客観的に判断できる真偽判別手段が望まれていた。
【0012】
一方、ホログラムの金属蒸着層をレーザ加工により除去し透かして見える情報としては、具体的には文字や数字が開示されているが、文字の大きさに具体的な記載が無いため、透かしても見えるが、透かさなくても反射状態で文字や数字が視認できてしまうという欠点があり、セキュリティ面の潜像効果としては、より反射状態で視認した時に前記情報が見えない構成が望まれていた。
【0013】
また、先行発明の特開2005−14492号公報は、ホログラムに印刷デザイン形成部と、ホログラムの金属蒸着膜をレーザ加工又はエッチング処理により透かしデザイン形成部を設けているが、具体的に開示されている透かしデザイン形成部は、文字や数字であり、文字の大きさに具体的な記載が無く、透かしても見えるが、一方で、透かさなくても反射状態で文字や数字が視認できてしまうため、セキュリティ面の潜像効果としては、より反射状態で情報が見えない構成が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、ホログラム形成層を有するホログラムシートであって、前記ホログラム形成層の一表面上に形成された回折格子の表面上には、潜像画像領域と潜像背景領域から成るホログラム画像領域を有し、前記潜像画像領域には、光透過性部材から成る潜像画像線又は潜像画像画素と、前記潜像画像線又は潜像画像画素の背景に形成された光反射性部材から成る光反射領域とを有し、前記潜像背景領域には、光反射性部材から成る光反射領域を有してなることを特徴とするホログラムシートである。
【0015】
また、ホログラム形成層を有するホログラムシートであって、前記ホログラム形成層の一表面上に形成された回折格子の表面上には、潜像画像領域と潜像背景領域から成るホログラム画像領域を有し、前記潜像画像領域には、光反射性部材から成る光反射領域を有し、前記潜像背景領域には、光透過性部材から成る潜像背景線又は潜像背景画素と、前記潜像背景線又は潜像背景画素の背景に形成された光反射性部材から成る光反射領域とを有して成ることを特徴とするホログラムシートである。
【0016】
また、本発明は、前記潜像画像線又は前記潜像背景線が、格子状に形成していることを特徴とするホログラムシートである。
【0017】
また、本発明は、前記潜像画像線又は前記潜像背景線の線幅が、0.08mm〜0.16mmで形成していることを特徴とするホログラムシートである。
【0018】
また、本発明は、前記潜像画像領域において、前記潜像画像線が輪郭線に沿って、等ピッチでn回(n=1以上の整数)収縮して形成することを特徴とするホログラムシートである。
【0019】
また、本発明は、前記潜像画像線は、前記輪郭線の中心部を基準として成ることを特徴とするホログラムシートである。
【0020】
また、本発明は、前記潜像画像画素又は潜像背景画素は、規則的に、且つ、マトリックス状に形成していることを特徴とするホログラムシートである。
【0021】
また、本発明は、前記潜像画像画素又は潜像背景画素の形状が、円、多角形、文字又はマークのいずれか一つで形成することを特徴とするホログラムシートである。
【0022】
また、本発明は、前記潜像画像領域は、彩紋、模様、図柄、マーク、文字のいずれか一つを形成することを特徴とするホログラムシートである。
【0023】
また、本発明は、前記ホログラム形成層において、前記ホログラム画像領域の周辺に、光透過性部材から成る透明領域が形成されることを特徴とするホログラムシートである。
【0024】
また、本発明は、ホログラム形成層を接着剤層を介して基材に接着されたことを特徴とする印刷媒体である。
【0025】
また、本発明は、前記印刷媒体が銀行券であることを特徴とする印刷媒体である。
【発明の効果】
【0026】
本発明のホログラムシート及びホログラム形成層を接着剤で貼付した印刷基材のホログラム画像領域は、反射状態で目視した場合、光反射性部材から成る潜像画像領域及び潜像背景領域の光反射領域により、回折光や反射光でホログラム効果が目視できるが、ホログラム画像領域の光透過性部材で形成した潜像画像線(又は潜像画像画素)は目視できない。一方、ホログラム画像領域を透過状態で目視した場合は、ホログラム効果は目視できないが、ホログラム画像領域の光透過性部材で透明に形成した複数の潜像画像線(又は潜像画像画素)の透過光により、潜像画像領域が文字、マーク、図柄として目視できる。この時、前記潜像画像線(又は潜像画像画素)は、1本1本の線としては微細なため目視し難いが、潜像画像領域におけて複数の潜像画像線(又は潜像画像画素)を備えるため、潜像画像領域を領域(又はエリア)として目視した場合、前記領域で形成された情報又はパターン(例えば、文字、マーク、図柄など)が容易に認識できる。従って、反射状態ではホログラム効果、透過状態では潜像効果という2種類の効果を、真偽判別道具などを使用することなく目視で真偽判別できるというメリットを備える。なお、本発明のホログラム形成層を接着剤によって、紙、フィルム、カードなどの基材に貼り付けても同様な効果を得られ、銀行券や有価証券には好適である。ただし、前記基材は、光を一定以上透過する素材、材料でなければならない。なお、前述の説明では、潜像画像領域に潜像画像線(又は潜像画像画素)を備える構成で説明しているが、潜像背景領域に潜像背景線又は潜像背景画素を備える構成でも構わない。
【0027】
また、ホログラムシートのホログラム画像領域の光反射性部材としては、例えば、アルミニウムなどの光沢性が高い金属材で形成されるため、複写、複製に対する抵抗力が高い。その理由としては、カラーコピー機やスキャナなどの機器は、強い投下光を被複写物や被複製物に当てて入力画像を得るため、光反射性が高いアルミニウムは、投下光の反射率が高いため、正確に再現することが難しい。加えて、本発明では、ホログラム画像領域に光透過性部材(例えば、透明の熱可塑性樹脂)で形成した潜像画像線(又は潜像画像画素)が微細であるため、それぞれの1本1本の線は、光反射性部材である光反射領域(例えば、アルミニウム)による反射光や回折格子による回折光により、潜像画像線(又は潜像画像画素)は、複写、複製をより困難にする。従って、本発明のホログラムシートは、複写、複製に対して、異なる2種類の防止機能を有することから、2重のセキュリティが付与できる。
【0028】
また、本発明のホログラムシートのホログラム形成層は、基材に貼付しても、透過状態による潜像効果が得られる。例えば、紙などの基材自体に孔をあけて、透過状態で潜像を目視できる技術も開示されているが、この技術では、基材自体に孔をあけるため、孔をあけた領域の耐久性や強度が低下してしまうことは避けられないが、本発明のホログラムシートのホログラム形成層を基材に直接貼り付けた場合は、基材自体の耐久性は低下せず、ATMや券売機などの搬送に対しても悪影響を及ぼさない。なお、ここでいう「画素」とは、潜像画像領域又は潜像背景領域の光透過性部材で形成される一要素であり、画素の面積を変化させれば、透過状態で目視した場合の透過光量も変化する。また、「画素」は印刷業界でいうところの網点と同様である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明の実施形態について図面を用いて説明する。しかしながら、本発明は以下に述べる実施するための最良の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他のいろいろな形態が実施可能である。
【0030】
(ホログラムシートの形態)
図1は、本発明のホログラムシート1の概観図である。ホログラムシート1はロール状に巻き付けられており、ホログラム画像領域6、透明領域6e及び位置決めマーク9で構成されている。ホログラム画像領域6は、光反射性部材から成る光反射領域6a及び光反射領域6cと、光透過性部材から成る潜像画像線6b(又は潜像画像画素6b)から成る。光反射領域6a及び光反射領域6cは、反射状態で目視した場合にホログラム効果を有しており、潜像画像線6b(又は潜像画像画素6b)は反射状態で目視した場合、線は目視できないが(又は潜像化するが)、透過状態で目視すると、線が目視できる(又は建像化する)。また、透明領域6eは光透過性部材から成り、前記ホログラム効果は必要としない領域であるため、透明又は半透明にすることが望ましく、潜像画像線6b(又は潜像画像画素6b)と同様のホログラム加工層4から成る。一方、位置決めマーク9は光反射性部材からなり、紙やプラスチックなどの基材10に連続的に貼付する場合、貼付機での前記位置決め用マーク9を光学センサーなどで読み取って、ホログラムシート1の最下部に積層された接着剤層8を熱圧着することにより、基材10に対して一定の位置に貼付される。従って、本発明のホログラムシート1を基材10に貼付する場合は、前記位置決めマーク9は基材10に貼付されず、ホログラム画像領域6及びホログラム画像領域6周辺の透明領域6eを貼付することが望ましい。なお、図1のホログラムシート1は、貼付機によって連続的に貼付されるため、ロール状で説明しているが、位置決めマーク9を有しなくても良いし、ホログラム画像領域6をマトリックス状に複数配置したシート状の形態でも構わないし、透明領域6eを有さず光反射性部材のみでホログラムシートを層構成しても良い。また、位置決めマーク9の形状も限定されず、貼付機の機種によって適宜形状を選択すれば良い。
【0031】
本発明で記載する「ホログラム効果」とは、本発明のホログラム画像領域6を、「反射状態」で目視した時に、回折格子の回折光や反射光により、図柄の色彩が虹色に変化したり、画像が他の画像と切り替わるような効果をいい、ホログラムシート1の状態でも、又は、ホログラムシート1のホログラム形成層3を接着剤層8などを用いて基材10に貼付した状態でも、ホログラム効果が得られる。ホログラム形成層3は、ホログラム加工層4に、回折格子又は回折格子パターンとなる微細な凹凸を形成し、この凹凸表面にアルミニウムなどの光沢性が高い光反射性部材を蒸着などで密着させることで作製できる。具体的なホログラム効果としては、日本やユーロなどの銀行券に貼付されているホログラムのように、見る角度で複数の図柄や色彩が変化するなどの効果をいう。また、ホログラム効果は、銀行券のホログラムで見られる効果には限らず、公知のカード、商品券、証明書に貼付されたホログラムの効果でも構わない。また、ここで記載する「潜像効果」とは、本発明のホログラム画像領域6を、「反射状態」で目視した時に、文字、図柄及びマークなどの情報は目視できない(又は潜像となる)が、「透過状態」で目視した時(又は透かして見た時)には、前記潜像画像領域が文字、図柄及びマークなどの情報として目視できることをいう。
【0032】
図2(a)及び(b)は、ホログラムシート1のホログラム形成層3を基材10に貼付した図である。具体的な所定領域とは、ホログラム画像領域6とその周辺の透明領域6eである。また、基材10は紙として、料額、人像、地紋などの必要な情報をオフセット印刷、凹版印刷やスクリーン印刷により施されていることが望ましい。ホログラム画像領域6には、図2(a)に示すように、潜像画像領域と潜像背景領域に領域が分けられている。また、図2(b)に示すように、前記潜像画像領域には、光透過性部材から成る潜像画像線6b(又は潜像画像画素6b)と、前記潜像画像線6b(又は潜像画像画素6b)の背景に形成された光反射性部材から成る光反射領域6aで構成されている。一方、前記潜像背景領域には、光反射性部材から成る光反射領域6cで構成されている。前記潜像画像領域と前記潜像背景領域の構成は、逆であっても構わない。
【0033】
(ホログラム形成層の構成)
図3(a)は、本発明のホログラムシート1の構成図であり、ホログラムシート1は、ホログラムシート基材2、ホログラム形成層3及び接着剤層8で形成される。ホログラムシート基材2はシート基材2aと剥離層2bから成り、シート基材2aの一方の面に、塗工機、グラビアコーター、グラビア印刷機やスクリーン印刷機などを利用し、透明又は半透明の剥離層2bを積層する。ホログラム形成層3は、ホログラム加工層4、回折格子5(正確には、光反射性部材を密着した凹凸5aと光透過性部材から成る凸凹5b)、マスク層7で形成され、基材10に貼付する場合はホログラム形成層3が接着剤層8を介して基材10に接着、形成される。ホログラム形成層3の作製方法としては、剥離層2bの表面に光透過部材である透明又は半透明のホログラム加工層4を積層し、ホログラム効果を発現するために微細な凹凸又は凹凸パターンで成る回折格子5を形成する。前記回折格子5は、図示しない金属製のスタンパーの一表面に形成された回折格子5の凹凸を、ホログラム形成層4表層に熱転写するなどして形成される。正確には、スタンパーに形成された凹凸は、ホログラム加工層4では凹凸の形状が逆になり回折格子5となる。次に、ホログラム加工層4表面にアルミニウムなどの光反射性部材を真空蒸着やスパッタリングした後、グラビア印刷機などでマスク層7を形成し、アルカリ溶液に浸漬することにより、マスク層7で保護されていない前記回折格子5に形成されたアルミニウムは溶解、除去され、光透過性部材から成る透明な凹凸5bを形成する。従って、光透過性部材はホログラム加工層4となる。一方、マスク層7で被覆されている領域のみアルミニウム(図の太線部分)が残存し、アルミニウムが密着した凹凸5aを形成する。具体的には、ホログラム画像領域6のうち、潜像画像領域は、アルミニウムが残存する光反射領域6a(図の太線部分)と、アルミニウムが溶解された光透過領域6bとから成り、光透過領域6bは、線状や画素状に透明又は半透明として形成され、潜像画像線6b(又は潜像画像画素6b)となる。一方、潜像背景領域は、アルミニウムが残存する光反射領域6c(図の太線部分)から成る。また、ホログラム画像領域6の周辺の透明領域6eは、ホログラム形成層4の前記回折格子5及び/又は平坦面を備えるが、光透過性部材で透明又は半透明であることが望ましい。更に、マスク層7と潜像画像線6b(又は潜像画像画素6b)及び透明領域6eの下層に、接着剤層8をホログラムシート1全体の厚みがほぼ均一になるように積層する。なお、ホログラムシート1に光透過性部材から成る透明又は半透明の領域を形成する方法としては、水溶性インキでホログラム加工層4の前記回折格子5にマスク層を形成した後、真空蒸着などで光反射性部材を密着し、前記マスク層を除去し、透明又は半透明に形成する方法でも構わない。なお、図3(a)のホログラム形成層3は、説明の便宜上、相当の厚みがあるように示しているが、実際の構成では極めて薄い層であり、図3(b)及び(c)とのホログラム形成層3の厚みとも実際の構成では同一の厚みとなる。
【0034】
ホログラムシート基材2のシート基材2aは、透明プラスチックが望ましく、例えば、PETなどの公知の樹脂を使用すれば良い。剥離層2b、ホログラム加工層4、接着剤層8は、熱可塑性や熱硬化性などの公知の樹脂を適宜選択すれば良いが、ホログラム加工層4は光透過性部材である透明又は半透明な樹脂が望ましい。また、光反射性部材には、アルミニウム、銅、ニッケル、錫などがあるが、高輝度で経済性に有利なアルミニウムが好適であり、真空蒸着やスパッタリングを利用して形成すれば良い。また、光反射性部材にアルミニウムを使用した場合、100〜2000Åの厚みが望ましい。
【0035】
(ホログラム形成層の貼付方法)
図3(b)は、高温加熱した刻印Sを用いて、前記ホログラムシート1を基材10に押圧することにより、ホログラムシート1の一部である形成層3を基材10に貼付した模式図である。接着剤層8は、熱溶解して基材10に固着されるがホットメルト材が望ましい。貼付時には、図1で示す前記位置決めマーク9を光学センサーで読み取って貼付しても構わない。図3(c)は、刻印Sで押圧後、基材10にホログラム形成層3が貼付された図である。従って、基材10に貼付されるホログラム形成層3は、刻印Sで押圧されている領域で、且つ、ホログラム形成層4から下部に積層されている部分であり、ホログラム形成層3よりも上層に形成されているホログラムシート基材2(シート基材2a及び剥離層2b)は剥離されて基材10には貼付されない。ただし、剥離層2bが透明又は半透明であれば、ホログラム形成層3の表層に残存しても、ホログラム効果を阻害しないため、剥離層2bが多少残っても構わない。基材10は、紙、プラスチック、布、フィルムなどが好適である。
【0036】
(ホログラムシートの厚み)
また、図3(a)〜(c)は模式図であり、実際のホログラムシート1において、シート基材2aの厚みは、0.015mm〜0.025mm、基材10に貼付されるホログラム形成層3の厚みは、0.005mm〜0.030mmが望ましく、ホログラム形成層3の厚みは極めて薄くすることが偽造防止は有効である。
【0037】
(回折格子の構成)
ホログラム形成層3の回折格子5の構成としては、公知のレリーフ型ホログラム、レインボー型ホログラムなどの公知である微細な凹凸パターンを形成したホログラムを使用すれば良く、特に制約されるものではない。
【0038】
(潜像画像線の構成)
図4〜図8は、図2で示す基材10に貼付したホログラム形成層3を拡大したものである。また、図4、6、7及び8は、本発明の特徴である光透過性部材による潜像画像線6b(又は潜像画像画素6b)を備えた実施形態であり、例えば、ホログラムシート1の一部であるホログラム形成層3を基材10に貼付機などで貼付し、ホログラム形成層3の一部であるホログラム画像領域6とその周辺部の透明領域6eが基材10上に貼付されている。また、本発明によるホログラムシート1は、ホログラムシート1のホログラム画像領域6を潜像画像領域と潜像背景領域に区分けし、潜像画像領域には、光透過性部材から成る複数の潜像画像線6b(又は潜像画像画素6b)と光反射性部材から成る光反射領域6aとを設け、潜像背景領域には、光反射性部材から成る光反射領域6cとを設けている。図4、6、7及び8は、前述のホログラムシートの層構成は同一であるが、光透過性部材から成る潜像画像線6b(又は潜像画像画素6b)の構成が異なっている。ただし、図5は、潜像画像領域を光反射性部材から成る光反射領域6aで、潜像背景領域を光透過性部材から成る潜像背景線6dと光反射性部材から成る光反射領域6cで形成しており、図4、6、7及び8とは逆の構成となっている。
【0039】
図4は、本発明の一実施例であり、ホログラム画像領域6の潜像画像領域に光透過性部材から成る潜像画像線6bを形成したホログラム貼付物(正確には、ホログラム形成層3を基材10に貼付したもの)であり、潜像画像領域で「5」の文字を形成している。
【0040】
図5は、本発明の一実施例であり、ホログラム画像領域6の潜像背景領域に光透過性部材から成る潜像背景線6dを形成したホログラム貼付物であり、潜像画像領域で「5」の文字を形成している。
【0041】
図6は、本発明の一実施例であり、ホログラム画像領域6の潜像画像領域に光透過性部材から成る潜像画像線6bを形成したホログラム貼付物であり、潜像画像領域で「彩紋」を形成している。なお、ここでいう「彩紋」とは、直線、曲線、波状線、弧又は円などを組み合わせた幾何学的な模様をいう。
【0042】
図7は、本発明の一実施例であり、ホログラム画像領域6の潜像画像領域に光透過性部材から成る潜像画像線6bを形成したホログラム貼付物であり、潜像画像領域で「彩紋」を形成している。
【0043】
図8は、本発明の一実施例であり、ホログラム画像領域6の潜像画像領域に光透過性部材から成る潜像画像画素6bを形成したホログラム貼付物であり、潜像画像領域で「鳳凰」のマークを形成している。
【0044】
(ホログラム効果)
前述した図4〜図8のホログラム形成層3で構成した場合、本発明による独自の効果が得られる。すなわち、図9のように、ホログラム形成層3を貼付した基材10の表面(基材10に対してホログラム形成層3を貼付した面)から「反射状態」で目視した場合は、図10のように前記回折格子5による回折光により、観察する角度によって様々なホログラム効果が目視できる。具体的には、観察角度によって、複数の図柄が出現することや、その図柄の色変化が確認できる。例えば、図10では、(a)は、X方向の所定の角度で観察すると「A」という文字と色彩、(b)は、X方向の所定の角度で観察すると「太陽」の図柄と色彩、(c)は、Y方向の所定の角度で観察すると「星」の図柄と色彩、(d)は、Y方向の所定の角度で観察すると「四角」の図柄と色彩が出現するホログラム効果を示している。しかし、観察角度により出現するホログラム画像の回数やホログラム画像の画像変化(切替、移動、膨張、収縮など)の方法には、特段の制約をなく、ホログラム効果が一つのパターンでも問題はない。一方で、ホログラム画像領域6に光透過性部材から成る前記潜像画像線6b(又は前記潜像画像画素6b)は、微細に構成されているため、隠蔽性(又は潜像化)が高く反射状態では目視できず、ホログラム効果を目視する時に、前記潜像画像線6b(又は前記潜像画像画素6b)は、ホログラム効果を阻害することはない。
【0045】
(潜像効果)
図11は、前述した図4〜図8のホログラム形成層3を貼付した基材10の裏面(基材10に対してホログラム1aを貼付した逆の面)から「透過状態」で目視した場合である。この時、ホログラム効果は目視できないが、図4、6、7、8で説明した前記潜像画像領域における前記潜像画像線6b(又は前記潜像画像画素6b)は光反射性部材を有さず透明であるため、基材10を通して光を透過する。一方、前記潜像背景領域における光反射領域6cは、光反射性部材(例えば、金属材)を有するため、基材10を通しても光を透過しない。従って、透過状態で視認した場合、前記潜像画像領域と前記潜像背景領域とでは、光の透過量が異なり、目視では濃度差として認識できる。その結果、潜像画像領域の前記潜像画像線6b(又は前記潜像画像画素6b)は、透過状態で目視できるため、潜像画像領域でなる潜像情報が目視できる。なお、前記潜像画像線6b(又は前記潜像画像画素6b)は微細なため1本1本では目視し難いが、潜像画像領域に複数の線(又は画素)を形成することにより、透過光の光量が顕著になり、潜像画像領域では潜像情報などが容易に目視できるようになる。この時、基材10は光を透過する材料や材質で構成する必要がある。また、透過状態で目視する場合、表面(ホログラム形成層3側)から目視しても、同様な潜像効果が得られる。潜像画像領域での情報としては、文字、数字、図柄又はマークなど適宜選択すれば良い。なお、図5で示すとおり、潜像背景領域に光透過性部材から成る潜像背景線(又は潜像背景画素)と光反射領域を形成し、潜像画像領域に光反射領域のみを形成する構成でも、透過状態で目視した時に、潜像背景領域と潜像画像領域では、光の透過量が異なり、目視では濃度差として認識できたため、逆の構成でも、前述と同様の潜像効果が得られる。
【実施例1】
【0046】
図2に示すホログラムシート1の一部であるホログラム形成層3を基材10に貼付機などで貼付する。図4は、図2のホログラム形成層3を拡大した図であり、また、透過状態で目視した概略図でもある。例えば、紙などの基材10に対して、ホログラム画像領域6とホログラム画像領域6周辺の透明領域6eを有するホログラム形成層3を貼付する。ホログラム画像領域6には、潜像画像領域と潜像背景領域を有しており、拡大図に示すように、潜像画像領域には、光透過性部材から成る潜像画像線6bが斜め方向で格子状に形成されている。潜像画像線6bは、反射状態で目視できないように、透明又は半透明で微細な形状とする。例えば、潜像画像線6bの線幅Wは0.10mmとするが、0.05mm〜0.15mmの範囲が好ましい。潜像画像線6bの線ピッチPは、1.00mmとし規則的に配置するが、0.60mm〜2.00mmの範囲が好ましい。また、潜像画像線6bの背景には、光反射性部材から成る光反射領域6aを形成する。一方、潜像背景領域には、光反射性部材から成る光反射領域6cを形成する。また、潜像画像領域と潜像背景領域の境界部の境界線(又は、図4で示す「5」の輪郭線)は、反射状態でホログラム形成層3を目視した時に、「5」の文字の輪郭線が強調して見えてしまい、潜像となる「5」の文字が目視しやすくなる可能性があるので、前記潜像として文字やマークを形成する場合は、前記境界線は形成しないことが望ましい。ただし、潜像画像線6bの線幅Wや線ピッチPは、前述の数値に制限されるものではなく、適宜選択すれば良い。
【0047】
図4のホログラム形成層3は、反射状態で目視した場合、光反射領域6a及び光反射領域6cから成る回折格子5によるホログラム効果が出現する。具体的には、前述の図9及び図10に示すホログラム効果と同様である。しかし、潜像画像線6bは、反射状態では目視できない。また、図4は、ホログラム形成層3を透過状態で目視した場合、潜像画像領域の複数の潜像画像線6bが目視でき、その結果、「5」という文字が目視できる。具体的には、先に説明した図11に示す潜像効果と同様である。従って、図4のホログラム形成層3は、反射状態と透過状態の2通りの方法により目視で真偽判別が可能となる。また、潜像画像線6bは、必ずしも規則的、連続的である必要はない。なお、光反射性部材にはアルミニウム、光透過性部材となるホログラム加工層4は、透明又は半透明の熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂又は、これらを組合わせて使用することが望ましい。
【実施例2】
【0048】
実施例2〜実施例5は、実施例1の基材10に貼付したホログラム形成層3における潜像画像線6bの構成は異なっているが、ホログラムの層構成としては同一である。従って、同一な構成の説明は省略し、異なる構成のみを説明する。
【0049】
図5に示すように、潜像画像領域には、アルミニウムなどの光反射性部材から成る光反射領域6aを形成する。一方、潜像背景領域には、光透過性部材から成る潜像背景線6dが斜め方向で格子状に形成されている。例えば、潜像背景線6dの線幅Wは0.10mmとするが、0.05mm〜0.15mmの範囲が好ましい。潜像背景線6dの線ピッチPは、1.00mmとし規則的に配置するが、0.60mm〜2.00mmの範囲が好ましい。ただし、潜像背景線6dの線幅Wや線ピッチPは、前述の数値に制限されるものではなく、適宜選択すれば良い。本実施例2の構成によると、実施例1と同様のホログラム効果及び潜像効果を得ることができる。ただし、実施例1の潜像効果は、前記潜像画像領域に光反射性部材を有さない潜像画像線6bと光反射性部材を有する光反射領域6aを形成し、前記潜像背景領域に光反射性部材を有する光反射領域6cを形成しているため、透過状態で目視した場合に、潜像画像領域が光を透過し明るく見え、潜像背景領域は光を透過しないため暗く見えるため、「5」の数字が認識でき、本発明では、このような構成を「ポジ方式」という。一方、実施例2では、実施例1と潜像画像領域と潜像背景領域が逆の構成で形成されているため、透過状態で目視した場合に、潜像画像領域が光を透過しないため暗く見え、潜像背景領域は光を透過するため明るく見えるため、「5」の数字が認識でき、本発明では、このような構成を「ネガ方式」という。従って、潜像の形成方法(又は透過状態での見え方)としては、実施例1では「ポジ方式」、実施例2では「ネガ方式」で実施していることが異なっている。なお、実施例3〜実施例5は、ポジ方式で形成している。
【実施例3】
【0050】
図6に示すように、潜像画像領域には、光透過性部材から成る潜像画像線6bと光反射性部材から成る光反射領域6aから成る。この時、潜像画像線6bは彩紋を構成する線として形成する。正確には、前記彩紋の潜像画像線6bは、彩紋の最外部の輪郭線に沿って、線ピッチPを等ピッチとし、2回収縮して形成している。一方、潜像背景領域には、光反射性部材から成る光反射領域6cを形成する。例えば、潜像画像線6bの線幅Wは0.10mmとするが、0.05mm〜0.15mmの範囲が好ましい。潜像画像線6bの線ピッチPは、1.00mmとし規則的に配置するが、0.60mm〜2.00mmの範囲が好ましい。本実施例3の構成によると、実施例1と同様のホログラム効果及び潜像効果を得ることができる。ただし、彩紋の図柄、線ピッチ又は収縮回数は、本実施例に制約されるものではなく、図柄も適宜選択すれば良いし、線ピッチを可変にしても構わない。
【実施例4】
【0051】
図7に示すように、潜像画像領域には、光透過性部材から成る潜像画像線6bと光反射性部材から成る光反射領域6aから成る。この時、潜像画像線6bは彩紋を構成する線として形成する。正確には、前記彩紋の潜像画像線6bは、彩紋の最外部の輪郭線に沿って、且つ、彩紋の中心部を基点とし、線ピッチPを等ピッチとし、5回収縮して形成している。一方、潜像背景領域には、光反射性部材から成る光反射領域6cを形成する。例えば、潜像画像線6bの線幅Wは0.10mmとするが、0.05mm〜0.15mmの範囲が好ましい。潜像画像線6bの線ピッチPは、1.00mmとし規則的に配置するが、0.60mm〜2.00mmの範囲が好ましい。ただし、彩紋の図柄、線ピッチ又は収縮回数は、本実施例に制約されるものではなく、図柄も適宜選択すれば良いし、線ピッチを可変にしても構わない。
【実施例5】
【0052】
図8に示すように、潜像画像領域には、光透過性部材から成る潜像画像画素6bと光反射性部材から成る光反射領域6aから成る。この時、潜像画像画素6bは菱形に形成する。一方、潜像背景領域には、光反射性部材から成る光反射領域6cを形成する。例えば、潜像画像画素6bの対角線の長さWを0.15mmとするが、0.10mm〜0.20mmの範囲が好ましい。潜像画像画素6bの縦横方向の画素ピッチPは、1.00mmとしマトリックス状に配置するが、0.60mm〜2.00mmの範囲が好ましい。このような構成で実施した場合、実施例1と同様のホログラム効果や潜像効果が得られる。ただし、潜像画像画素6bの形状、画素の大きさ、画素ピッチは、本実施例に制約されるものではない。潜像画像画素6bには、円、多角形、文字又はマークなどを適宜選択すれば良いし、実施例2のように、潜像画像領域と潜像背景領域の構成を逆にしても良い。また、図5は、ポジタイプの構成で示したが、ネガタイプの構成にしても構わない。
【0053】
また、実施例1〜実施例5では、潜像画像領域の構成として「5」、「彩紋」又は「鳳凰」で説明しているが、本実施例に制限されるものではない。更に、潜像画像線6bや潜像背景線6dは、一本の連続した直線的な線で説明しているが、二重線、三重線、点線、破線などの分断線(又は分断線)や波線、曲線などの如何なる線形状で構成しても本発明の技術思想に含まれ、その効果も同様である。また、潜像画像線6bや潜像背景線6dは、線という表現で本発明は説明しているが、線を集合させた万線という表現に置き換えても構わない。
【0054】
更に、ホログラム形成層3を反射状態で目視した場合に、より潜像化(又はカモフラージュ化)するためには、前記光反射性部材に高輝度、高光沢性を有し、より高い回折光を得られる材質にすることが望ましく、例えば、アルミニウムが好適である。また、ホログラム形成層3を貼付する基材10の色彩としては、白又は原色を除いた中間色の基材を用いるか、基材に中間色の印刷を施すなどにより潜像化が向上する。
【0055】
なお、実施例では、基材を紙で説明しているが、透明性を有するプラスチックカード、プラスチックフイルム、ガラス、不織布、布などを利用しても、同様な効果が得られる。なお、実施例1〜実施例5を説明する図4〜図8は、便宜上、潜像画像線、潜像背景線又は潜像画像画素を拡大して示しており、実際の構成は微細である。また、潜像画像線、潜像背景線又は潜像画像画素は、前述のとおり反射状態で見えないことが望ましいが、線又は画素の一部が、反射状態で若干見える構成であっても、透過状態で目視できる潜像画像領域から成る情報(例えば、実施例1、2では「5」、実施例3、4では「彩紋」、実施例5では「鳳凰」)が認識できず(又は、気づかず)、且つ、ホログラム効果の視認性を著しく阻害しなければ、本発明の技術的思想の範囲内である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明のホログラムシートの斜視図である。
【図2】本発明のホログラム形成層を基材に貼付した時の概要図である。
【図3】本発明のホログラムシートの構成図である。
【図4】本発明におけるホログラム形成層を基材に貼付した時の一実施例の概略図及び透過状態で目視した模式図である。
【図5】本発明におけるホログラム形成層を基材に貼付した時の一実施例の概略図及び透過状態で目視した模式図である。
【図6】本発明におけるホログラム形成層を基材に貼付した時の一実施例の概略図及び透過状態で目視した模式図である。
【図7】本発明におけるホログラム形成層を基材に貼付した時の一実施例の概略図及び透過状態で目視した模式図である。
【図8】本発明におけるホログラム形成層を基材に貼付した時の一実施例の概略図及び透過状態で目視した模式図である。
【図9】本発明におけるホログラムシートを反射状態で目視する概略図である。
【図10】本発明におけるホログラムシート潜像効果を示す概略図である。
【図11】本発明におけるホログラムシートを透過状態で目視する概略図である。
【符号の説明】
【0057】
1 ホログラムシート
2 ホログラムシート基材
2a シート基材
2b 剥離層
3 ホログラム形成層
4 ホログラム加工層
5 回折格子
5a 光反射性部材を密着した凹凸
5b 光透過性部材から成る透明な凹凸
6 ホログラム画像領域
6a、6c 光反射性部材からなら光反射領域
6b、6d 光透過性部材から成る線又は画素
6e 光透過性部材から成る透明領域
7 マスク層
8 接着剤層
9 位置決めマーク
10 基材
S 刻印
W 線又は画素の幅
P 線又は画素のピッチ
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホログラムシートとそのホログラムシートを紙などの基材に貼付した印刷媒体に関する。特に、本発明は、銀行券、パスポート、ブランドプロテクションなどの貴重性の高い媒体に利用され、偽造防止や真偽判別が必要な媒体に適用できる。
【背景技術】
【0002】
磁気カードなどのカード媒体や銀行券、諸証券などの紙媒体の表面にホログラムを貼付し、偽造防止のためのセキュリティ機能を高める方法としては、公知になっている。しかし、コピー機やパソコンなどの電子機器の急激な精度向上に伴い、単純なホログラムでは偽造防止として十分な機能を得られていない状況にある。そこで、ホログラムを構成する金属層又は金属蒸着層に、非金属領域を設けて透明層又は透明部分を形成することは、以下の先行発明のとおり開示されている。
【0003】
例えば、ホログラムのマスキング印刷層を洗い流すことで、所望のパターン(ダイヤ・ハート・クローバ・スペード等)の金属反射層を設けて、意匠性の自由度が増し、細かいパターン、複雑なパターンを形成する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ホログラムの金属蒸着層を除去する方法としては、例えば、金属蒸着層をYAGもしくはCO2等のレーザビームで照射により非接触にて溶解し、固定情報として印字パターンとする技術が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
また、金属蒸着型熱転写用ホログラムシートにレーザを部分的に照射し、照射部分の金属蒸着層をスリット状又はメッシュ状に蒸発させる技術が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
更に、ホログラムに印刷デザイン形成部と、ホログラムの金属蒸着膜をレーザ加工又はエッチング処理により透かしデザイン形成部を設ける技術が開示されている(例えば、特許文献4参照)。
【0007】
【特許文献1】特開平11−286194号公報
【特許文献2】特開平10−333574号公報
【特許文献3】特開2003−150027号公報
【特許文献4】特開2005−14492号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、先行発明の特開平11−286194号公報は、ホログラムの金属蒸着層内に非金属領域を設けて、所望のパターン(ダイヤ・ハート・クローバ・スペードが開示されている)を形成することから、デザインを作成する上では、任意のパターンが自由に形成できるという利点がある。しかし、偽造防止に関するセキュリティ面から見ると、前記ホログラムによる金属蒸着層内に非金属領域で形成する所望のパターンは、単純な図柄で、且つ、パターン図柄全体を金属蒸着層の有無で形成していることから、複写、複製した場合に模造されやすいため、セキュリティ面では課題があった。そのため、金属蒸着層内に非金属領域を、より効果的な構成にして、偽造抵抗力を高めることが望まれていた。
【0009】
また、先行発明の特開平10−333574号公報は、ホログラムの金属蒸着層をYAGもしくはCO2等のレーザビームで照射により非接触にて溶解し、固定情報として印字パターンを形成する。具体的な印字パターンとしては管理番号や文字などが開示されており、視認できる程度の大きさの固定情報を記録することで、本発明の目的や利用としては達成されている。しかし、固定情報を微細な構造体(例えば、微細な線状や点状の集合体)にした場合、線や点は微小であるため、レーザビームの出力のばらつきが生じ、レーザ出力が減少した場合、線や点として形成されず、逆に、レーザ出力が増えた場合、設定幅の線や点よりも大きくなる可能性があることから、微細体を形成するのは不向きである。従って、レーザビームで固定情報を加工する場合、レーザビームの出力のバラツキに対する影響は受けにくい文字などが好適であり、固定情報を微細な構造とした場合には課題があった。
【0010】
また、先行発明の特開2003−150027号公報は、ホログラムシートの金属層蒸着層にレーザを部分的に照射し、照射部分の金属蒸着層をスリット状又はメッシュ状に蒸発させるがホログラム形成層は残存させ、擬似的な透明あるいは半透明なホログラムシートを形成する。本発明は、コスト面で多種少量生産に好適であるが、大量生産品では、レーザビームの出力のバラツキが影響し、その結果、金属蒸着層に対してレーザ加工した加工精度(金属蒸着層を除去する精度)もあばれを生じることから、常に同一の加工精度、加工品質が求められる場合は不適であった。一方、精密な加工が可能なレーザビームを有する装置は、レーザによる加熱を制御する機能やスペースが必要となり、装置自体が大きくなることと、装置の価格が高くなり、低コストでは実現できない。
【0011】
また、ホログラムの金属蒸着層をレーザ加工により蒸発させ、スリット状、メッシュ状として、透かして見た時に、あたかも透明(又は半透明)に見えることで擬似透明ホログラムとして機能させている。前記スリット状、前記メッシュ状とする目的は、レーザ加工により金属蒸着層に対して、除去部分と非除去部分を繰り返して形成することにより、肉眼で見た場合、ホログラムに透明(又は半透明)の濃淡を与えるものである。しかし、偽造防止に関するセキュリティ面では、前記ホログラムの真偽を判別する場合、「透明(又は半透明)である」「透明(又は半透明)でない」という濃度を基準とするため、判定する者の個人差により基準が異なり、客観的な判断ができないため、真偽判別手段としては向いていないという課題があり、誰にでも客観的に判断できる真偽判別手段が望まれていた。
【0012】
一方、ホログラムの金属蒸着層をレーザ加工により除去し透かして見える情報としては、具体的には文字や数字が開示されているが、文字の大きさに具体的な記載が無いため、透かしても見えるが、透かさなくても反射状態で文字や数字が視認できてしまうという欠点があり、セキュリティ面の潜像効果としては、より反射状態で視認した時に前記情報が見えない構成が望まれていた。
【0013】
また、先行発明の特開2005−14492号公報は、ホログラムに印刷デザイン形成部と、ホログラムの金属蒸着膜をレーザ加工又はエッチング処理により透かしデザイン形成部を設けているが、具体的に開示されている透かしデザイン形成部は、文字や数字であり、文字の大きさに具体的な記載が無く、透かしても見えるが、一方で、透かさなくても反射状態で文字や数字が視認できてしまうため、セキュリティ面の潜像効果としては、より反射状態で情報が見えない構成が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、ホログラム形成層を有するホログラムシートであって、前記ホログラム形成層の一表面上に形成された回折格子の表面上には、潜像画像領域と潜像背景領域から成るホログラム画像領域を有し、前記潜像画像領域には、光透過性部材から成る潜像画像線又は潜像画像画素と、前記潜像画像線又は潜像画像画素の背景に形成された光反射性部材から成る光反射領域とを有し、前記潜像背景領域には、光反射性部材から成る光反射領域を有してなることを特徴とするホログラムシートである。
【0015】
また、ホログラム形成層を有するホログラムシートであって、前記ホログラム形成層の一表面上に形成された回折格子の表面上には、潜像画像領域と潜像背景領域から成るホログラム画像領域を有し、前記潜像画像領域には、光反射性部材から成る光反射領域を有し、前記潜像背景領域には、光透過性部材から成る潜像背景線又は潜像背景画素と、前記潜像背景線又は潜像背景画素の背景に形成された光反射性部材から成る光反射領域とを有して成ることを特徴とするホログラムシートである。
【0016】
また、本発明は、前記潜像画像線又は前記潜像背景線が、格子状に形成していることを特徴とするホログラムシートである。
【0017】
また、本発明は、前記潜像画像線又は前記潜像背景線の線幅が、0.08mm〜0.16mmで形成していることを特徴とするホログラムシートである。
【0018】
また、本発明は、前記潜像画像領域において、前記潜像画像線が輪郭線に沿って、等ピッチでn回(n=1以上の整数)収縮して形成することを特徴とするホログラムシートである。
【0019】
また、本発明は、前記潜像画像線は、前記輪郭線の中心部を基準として成ることを特徴とするホログラムシートである。
【0020】
また、本発明は、前記潜像画像画素又は潜像背景画素は、規則的に、且つ、マトリックス状に形成していることを特徴とするホログラムシートである。
【0021】
また、本発明は、前記潜像画像画素又は潜像背景画素の形状が、円、多角形、文字又はマークのいずれか一つで形成することを特徴とするホログラムシートである。
【0022】
また、本発明は、前記潜像画像領域は、彩紋、模様、図柄、マーク、文字のいずれか一つを形成することを特徴とするホログラムシートである。
【0023】
また、本発明は、前記ホログラム形成層において、前記ホログラム画像領域の周辺に、光透過性部材から成る透明領域が形成されることを特徴とするホログラムシートである。
【0024】
また、本発明は、ホログラム形成層を接着剤層を介して基材に接着されたことを特徴とする印刷媒体である。
【0025】
また、本発明は、前記印刷媒体が銀行券であることを特徴とする印刷媒体である。
【発明の効果】
【0026】
本発明のホログラムシート及びホログラム形成層を接着剤で貼付した印刷基材のホログラム画像領域は、反射状態で目視した場合、光反射性部材から成る潜像画像領域及び潜像背景領域の光反射領域により、回折光や反射光でホログラム効果が目視できるが、ホログラム画像領域の光透過性部材で形成した潜像画像線(又は潜像画像画素)は目視できない。一方、ホログラム画像領域を透過状態で目視した場合は、ホログラム効果は目視できないが、ホログラム画像領域の光透過性部材で透明に形成した複数の潜像画像線(又は潜像画像画素)の透過光により、潜像画像領域が文字、マーク、図柄として目視できる。この時、前記潜像画像線(又は潜像画像画素)は、1本1本の線としては微細なため目視し難いが、潜像画像領域におけて複数の潜像画像線(又は潜像画像画素)を備えるため、潜像画像領域を領域(又はエリア)として目視した場合、前記領域で形成された情報又はパターン(例えば、文字、マーク、図柄など)が容易に認識できる。従って、反射状態ではホログラム効果、透過状態では潜像効果という2種類の効果を、真偽判別道具などを使用することなく目視で真偽判別できるというメリットを備える。なお、本発明のホログラム形成層を接着剤によって、紙、フィルム、カードなどの基材に貼り付けても同様な効果を得られ、銀行券や有価証券には好適である。ただし、前記基材は、光を一定以上透過する素材、材料でなければならない。なお、前述の説明では、潜像画像領域に潜像画像線(又は潜像画像画素)を備える構成で説明しているが、潜像背景領域に潜像背景線又は潜像背景画素を備える構成でも構わない。
【0027】
また、ホログラムシートのホログラム画像領域の光反射性部材としては、例えば、アルミニウムなどの光沢性が高い金属材で形成されるため、複写、複製に対する抵抗力が高い。その理由としては、カラーコピー機やスキャナなどの機器は、強い投下光を被複写物や被複製物に当てて入力画像を得るため、光反射性が高いアルミニウムは、投下光の反射率が高いため、正確に再現することが難しい。加えて、本発明では、ホログラム画像領域に光透過性部材(例えば、透明の熱可塑性樹脂)で形成した潜像画像線(又は潜像画像画素)が微細であるため、それぞれの1本1本の線は、光反射性部材である光反射領域(例えば、アルミニウム)による反射光や回折格子による回折光により、潜像画像線(又は潜像画像画素)は、複写、複製をより困難にする。従って、本発明のホログラムシートは、複写、複製に対して、異なる2種類の防止機能を有することから、2重のセキュリティが付与できる。
【0028】
また、本発明のホログラムシートのホログラム形成層は、基材に貼付しても、透過状態による潜像効果が得られる。例えば、紙などの基材自体に孔をあけて、透過状態で潜像を目視できる技術も開示されているが、この技術では、基材自体に孔をあけるため、孔をあけた領域の耐久性や強度が低下してしまうことは避けられないが、本発明のホログラムシートのホログラム形成層を基材に直接貼り付けた場合は、基材自体の耐久性は低下せず、ATMや券売機などの搬送に対しても悪影響を及ぼさない。なお、ここでいう「画素」とは、潜像画像領域又は潜像背景領域の光透過性部材で形成される一要素であり、画素の面積を変化させれば、透過状態で目視した場合の透過光量も変化する。また、「画素」は印刷業界でいうところの網点と同様である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明の実施形態について図面を用いて説明する。しかしながら、本発明は以下に述べる実施するための最良の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他のいろいろな形態が実施可能である。
【0030】
(ホログラムシートの形態)
図1は、本発明のホログラムシート1の概観図である。ホログラムシート1はロール状に巻き付けられており、ホログラム画像領域6、透明領域6e及び位置決めマーク9で構成されている。ホログラム画像領域6は、光反射性部材から成る光反射領域6a及び光反射領域6cと、光透過性部材から成る潜像画像線6b(又は潜像画像画素6b)から成る。光反射領域6a及び光反射領域6cは、反射状態で目視した場合にホログラム効果を有しており、潜像画像線6b(又は潜像画像画素6b)は反射状態で目視した場合、線は目視できないが(又は潜像化するが)、透過状態で目視すると、線が目視できる(又は建像化する)。また、透明領域6eは光透過性部材から成り、前記ホログラム効果は必要としない領域であるため、透明又は半透明にすることが望ましく、潜像画像線6b(又は潜像画像画素6b)と同様のホログラム加工層4から成る。一方、位置決めマーク9は光反射性部材からなり、紙やプラスチックなどの基材10に連続的に貼付する場合、貼付機での前記位置決め用マーク9を光学センサーなどで読み取って、ホログラムシート1の最下部に積層された接着剤層8を熱圧着することにより、基材10に対して一定の位置に貼付される。従って、本発明のホログラムシート1を基材10に貼付する場合は、前記位置決めマーク9は基材10に貼付されず、ホログラム画像領域6及びホログラム画像領域6周辺の透明領域6eを貼付することが望ましい。なお、図1のホログラムシート1は、貼付機によって連続的に貼付されるため、ロール状で説明しているが、位置決めマーク9を有しなくても良いし、ホログラム画像領域6をマトリックス状に複数配置したシート状の形態でも構わないし、透明領域6eを有さず光反射性部材のみでホログラムシートを層構成しても良い。また、位置決めマーク9の形状も限定されず、貼付機の機種によって適宜形状を選択すれば良い。
【0031】
本発明で記載する「ホログラム効果」とは、本発明のホログラム画像領域6を、「反射状態」で目視した時に、回折格子の回折光や反射光により、図柄の色彩が虹色に変化したり、画像が他の画像と切り替わるような効果をいい、ホログラムシート1の状態でも、又は、ホログラムシート1のホログラム形成層3を接着剤層8などを用いて基材10に貼付した状態でも、ホログラム効果が得られる。ホログラム形成層3は、ホログラム加工層4に、回折格子又は回折格子パターンとなる微細な凹凸を形成し、この凹凸表面にアルミニウムなどの光沢性が高い光反射性部材を蒸着などで密着させることで作製できる。具体的なホログラム効果としては、日本やユーロなどの銀行券に貼付されているホログラムのように、見る角度で複数の図柄や色彩が変化するなどの効果をいう。また、ホログラム効果は、銀行券のホログラムで見られる効果には限らず、公知のカード、商品券、証明書に貼付されたホログラムの効果でも構わない。また、ここで記載する「潜像効果」とは、本発明のホログラム画像領域6を、「反射状態」で目視した時に、文字、図柄及びマークなどの情報は目視できない(又は潜像となる)が、「透過状態」で目視した時(又は透かして見た時)には、前記潜像画像領域が文字、図柄及びマークなどの情報として目視できることをいう。
【0032】
図2(a)及び(b)は、ホログラムシート1のホログラム形成層3を基材10に貼付した図である。具体的な所定領域とは、ホログラム画像領域6とその周辺の透明領域6eである。また、基材10は紙として、料額、人像、地紋などの必要な情報をオフセット印刷、凹版印刷やスクリーン印刷により施されていることが望ましい。ホログラム画像領域6には、図2(a)に示すように、潜像画像領域と潜像背景領域に領域が分けられている。また、図2(b)に示すように、前記潜像画像領域には、光透過性部材から成る潜像画像線6b(又は潜像画像画素6b)と、前記潜像画像線6b(又は潜像画像画素6b)の背景に形成された光反射性部材から成る光反射領域6aで構成されている。一方、前記潜像背景領域には、光反射性部材から成る光反射領域6cで構成されている。前記潜像画像領域と前記潜像背景領域の構成は、逆であっても構わない。
【0033】
(ホログラム形成層の構成)
図3(a)は、本発明のホログラムシート1の構成図であり、ホログラムシート1は、ホログラムシート基材2、ホログラム形成層3及び接着剤層8で形成される。ホログラムシート基材2はシート基材2aと剥離層2bから成り、シート基材2aの一方の面に、塗工機、グラビアコーター、グラビア印刷機やスクリーン印刷機などを利用し、透明又は半透明の剥離層2bを積層する。ホログラム形成層3は、ホログラム加工層4、回折格子5(正確には、光反射性部材を密着した凹凸5aと光透過性部材から成る凸凹5b)、マスク層7で形成され、基材10に貼付する場合はホログラム形成層3が接着剤層8を介して基材10に接着、形成される。ホログラム形成層3の作製方法としては、剥離層2bの表面に光透過部材である透明又は半透明のホログラム加工層4を積層し、ホログラム効果を発現するために微細な凹凸又は凹凸パターンで成る回折格子5を形成する。前記回折格子5は、図示しない金属製のスタンパーの一表面に形成された回折格子5の凹凸を、ホログラム形成層4表層に熱転写するなどして形成される。正確には、スタンパーに形成された凹凸は、ホログラム加工層4では凹凸の形状が逆になり回折格子5となる。次に、ホログラム加工層4表面にアルミニウムなどの光反射性部材を真空蒸着やスパッタリングした後、グラビア印刷機などでマスク層7を形成し、アルカリ溶液に浸漬することにより、マスク層7で保護されていない前記回折格子5に形成されたアルミニウムは溶解、除去され、光透過性部材から成る透明な凹凸5bを形成する。従って、光透過性部材はホログラム加工層4となる。一方、マスク層7で被覆されている領域のみアルミニウム(図の太線部分)が残存し、アルミニウムが密着した凹凸5aを形成する。具体的には、ホログラム画像領域6のうち、潜像画像領域は、アルミニウムが残存する光反射領域6a(図の太線部分)と、アルミニウムが溶解された光透過領域6bとから成り、光透過領域6bは、線状や画素状に透明又は半透明として形成され、潜像画像線6b(又は潜像画像画素6b)となる。一方、潜像背景領域は、アルミニウムが残存する光反射領域6c(図の太線部分)から成る。また、ホログラム画像領域6の周辺の透明領域6eは、ホログラム形成層4の前記回折格子5及び/又は平坦面を備えるが、光透過性部材で透明又は半透明であることが望ましい。更に、マスク層7と潜像画像線6b(又は潜像画像画素6b)及び透明領域6eの下層に、接着剤層8をホログラムシート1全体の厚みがほぼ均一になるように積層する。なお、ホログラムシート1に光透過性部材から成る透明又は半透明の領域を形成する方法としては、水溶性インキでホログラム加工層4の前記回折格子5にマスク層を形成した後、真空蒸着などで光反射性部材を密着し、前記マスク層を除去し、透明又は半透明に形成する方法でも構わない。なお、図3(a)のホログラム形成層3は、説明の便宜上、相当の厚みがあるように示しているが、実際の構成では極めて薄い層であり、図3(b)及び(c)とのホログラム形成層3の厚みとも実際の構成では同一の厚みとなる。
【0034】
ホログラムシート基材2のシート基材2aは、透明プラスチックが望ましく、例えば、PETなどの公知の樹脂を使用すれば良い。剥離層2b、ホログラム加工層4、接着剤層8は、熱可塑性や熱硬化性などの公知の樹脂を適宜選択すれば良いが、ホログラム加工層4は光透過性部材である透明又は半透明な樹脂が望ましい。また、光反射性部材には、アルミニウム、銅、ニッケル、錫などがあるが、高輝度で経済性に有利なアルミニウムが好適であり、真空蒸着やスパッタリングを利用して形成すれば良い。また、光反射性部材にアルミニウムを使用した場合、100〜2000Åの厚みが望ましい。
【0035】
(ホログラム形成層の貼付方法)
図3(b)は、高温加熱した刻印Sを用いて、前記ホログラムシート1を基材10に押圧することにより、ホログラムシート1の一部である形成層3を基材10に貼付した模式図である。接着剤層8は、熱溶解して基材10に固着されるがホットメルト材が望ましい。貼付時には、図1で示す前記位置決めマーク9を光学センサーで読み取って貼付しても構わない。図3(c)は、刻印Sで押圧後、基材10にホログラム形成層3が貼付された図である。従って、基材10に貼付されるホログラム形成層3は、刻印Sで押圧されている領域で、且つ、ホログラム形成層4から下部に積層されている部分であり、ホログラム形成層3よりも上層に形成されているホログラムシート基材2(シート基材2a及び剥離層2b)は剥離されて基材10には貼付されない。ただし、剥離層2bが透明又は半透明であれば、ホログラム形成層3の表層に残存しても、ホログラム効果を阻害しないため、剥離層2bが多少残っても構わない。基材10は、紙、プラスチック、布、フィルムなどが好適である。
【0036】
(ホログラムシートの厚み)
また、図3(a)〜(c)は模式図であり、実際のホログラムシート1において、シート基材2aの厚みは、0.015mm〜0.025mm、基材10に貼付されるホログラム形成層3の厚みは、0.005mm〜0.030mmが望ましく、ホログラム形成層3の厚みは極めて薄くすることが偽造防止は有効である。
【0037】
(回折格子の構成)
ホログラム形成層3の回折格子5の構成としては、公知のレリーフ型ホログラム、レインボー型ホログラムなどの公知である微細な凹凸パターンを形成したホログラムを使用すれば良く、特に制約されるものではない。
【0038】
(潜像画像線の構成)
図4〜図8は、図2で示す基材10に貼付したホログラム形成層3を拡大したものである。また、図4、6、7及び8は、本発明の特徴である光透過性部材による潜像画像線6b(又は潜像画像画素6b)を備えた実施形態であり、例えば、ホログラムシート1の一部であるホログラム形成層3を基材10に貼付機などで貼付し、ホログラム形成層3の一部であるホログラム画像領域6とその周辺部の透明領域6eが基材10上に貼付されている。また、本発明によるホログラムシート1は、ホログラムシート1のホログラム画像領域6を潜像画像領域と潜像背景領域に区分けし、潜像画像領域には、光透過性部材から成る複数の潜像画像線6b(又は潜像画像画素6b)と光反射性部材から成る光反射領域6aとを設け、潜像背景領域には、光反射性部材から成る光反射領域6cとを設けている。図4、6、7及び8は、前述のホログラムシートの層構成は同一であるが、光透過性部材から成る潜像画像線6b(又は潜像画像画素6b)の構成が異なっている。ただし、図5は、潜像画像領域を光反射性部材から成る光反射領域6aで、潜像背景領域を光透過性部材から成る潜像背景線6dと光反射性部材から成る光反射領域6cで形成しており、図4、6、7及び8とは逆の構成となっている。
【0039】
図4は、本発明の一実施例であり、ホログラム画像領域6の潜像画像領域に光透過性部材から成る潜像画像線6bを形成したホログラム貼付物(正確には、ホログラム形成層3を基材10に貼付したもの)であり、潜像画像領域で「5」の文字を形成している。
【0040】
図5は、本発明の一実施例であり、ホログラム画像領域6の潜像背景領域に光透過性部材から成る潜像背景線6dを形成したホログラム貼付物であり、潜像画像領域で「5」の文字を形成している。
【0041】
図6は、本発明の一実施例であり、ホログラム画像領域6の潜像画像領域に光透過性部材から成る潜像画像線6bを形成したホログラム貼付物であり、潜像画像領域で「彩紋」を形成している。なお、ここでいう「彩紋」とは、直線、曲線、波状線、弧又は円などを組み合わせた幾何学的な模様をいう。
【0042】
図7は、本発明の一実施例であり、ホログラム画像領域6の潜像画像領域に光透過性部材から成る潜像画像線6bを形成したホログラム貼付物であり、潜像画像領域で「彩紋」を形成している。
【0043】
図8は、本発明の一実施例であり、ホログラム画像領域6の潜像画像領域に光透過性部材から成る潜像画像画素6bを形成したホログラム貼付物であり、潜像画像領域で「鳳凰」のマークを形成している。
【0044】
(ホログラム効果)
前述した図4〜図8のホログラム形成層3で構成した場合、本発明による独自の効果が得られる。すなわち、図9のように、ホログラム形成層3を貼付した基材10の表面(基材10に対してホログラム形成層3を貼付した面)から「反射状態」で目視した場合は、図10のように前記回折格子5による回折光により、観察する角度によって様々なホログラム効果が目視できる。具体的には、観察角度によって、複数の図柄が出現することや、その図柄の色変化が確認できる。例えば、図10では、(a)は、X方向の所定の角度で観察すると「A」という文字と色彩、(b)は、X方向の所定の角度で観察すると「太陽」の図柄と色彩、(c)は、Y方向の所定の角度で観察すると「星」の図柄と色彩、(d)は、Y方向の所定の角度で観察すると「四角」の図柄と色彩が出現するホログラム効果を示している。しかし、観察角度により出現するホログラム画像の回数やホログラム画像の画像変化(切替、移動、膨張、収縮など)の方法には、特段の制約をなく、ホログラム効果が一つのパターンでも問題はない。一方で、ホログラム画像領域6に光透過性部材から成る前記潜像画像線6b(又は前記潜像画像画素6b)は、微細に構成されているため、隠蔽性(又は潜像化)が高く反射状態では目視できず、ホログラム効果を目視する時に、前記潜像画像線6b(又は前記潜像画像画素6b)は、ホログラム効果を阻害することはない。
【0045】
(潜像効果)
図11は、前述した図4〜図8のホログラム形成層3を貼付した基材10の裏面(基材10に対してホログラム1aを貼付した逆の面)から「透過状態」で目視した場合である。この時、ホログラム効果は目視できないが、図4、6、7、8で説明した前記潜像画像領域における前記潜像画像線6b(又は前記潜像画像画素6b)は光反射性部材を有さず透明であるため、基材10を通して光を透過する。一方、前記潜像背景領域における光反射領域6cは、光反射性部材(例えば、金属材)を有するため、基材10を通しても光を透過しない。従って、透過状態で視認した場合、前記潜像画像領域と前記潜像背景領域とでは、光の透過量が異なり、目視では濃度差として認識できる。その結果、潜像画像領域の前記潜像画像線6b(又は前記潜像画像画素6b)は、透過状態で目視できるため、潜像画像領域でなる潜像情報が目視できる。なお、前記潜像画像線6b(又は前記潜像画像画素6b)は微細なため1本1本では目視し難いが、潜像画像領域に複数の線(又は画素)を形成することにより、透過光の光量が顕著になり、潜像画像領域では潜像情報などが容易に目視できるようになる。この時、基材10は光を透過する材料や材質で構成する必要がある。また、透過状態で目視する場合、表面(ホログラム形成層3側)から目視しても、同様な潜像効果が得られる。潜像画像領域での情報としては、文字、数字、図柄又はマークなど適宜選択すれば良い。なお、図5で示すとおり、潜像背景領域に光透過性部材から成る潜像背景線(又は潜像背景画素)と光反射領域を形成し、潜像画像領域に光反射領域のみを形成する構成でも、透過状態で目視した時に、潜像背景領域と潜像画像領域では、光の透過量が異なり、目視では濃度差として認識できたため、逆の構成でも、前述と同様の潜像効果が得られる。
【実施例1】
【0046】
図2に示すホログラムシート1の一部であるホログラム形成層3を基材10に貼付機などで貼付する。図4は、図2のホログラム形成層3を拡大した図であり、また、透過状態で目視した概略図でもある。例えば、紙などの基材10に対して、ホログラム画像領域6とホログラム画像領域6周辺の透明領域6eを有するホログラム形成層3を貼付する。ホログラム画像領域6には、潜像画像領域と潜像背景領域を有しており、拡大図に示すように、潜像画像領域には、光透過性部材から成る潜像画像線6bが斜め方向で格子状に形成されている。潜像画像線6bは、反射状態で目視できないように、透明又は半透明で微細な形状とする。例えば、潜像画像線6bの線幅Wは0.10mmとするが、0.05mm〜0.15mmの範囲が好ましい。潜像画像線6bの線ピッチPは、1.00mmとし規則的に配置するが、0.60mm〜2.00mmの範囲が好ましい。また、潜像画像線6bの背景には、光反射性部材から成る光反射領域6aを形成する。一方、潜像背景領域には、光反射性部材から成る光反射領域6cを形成する。また、潜像画像領域と潜像背景領域の境界部の境界線(又は、図4で示す「5」の輪郭線)は、反射状態でホログラム形成層3を目視した時に、「5」の文字の輪郭線が強調して見えてしまい、潜像となる「5」の文字が目視しやすくなる可能性があるので、前記潜像として文字やマークを形成する場合は、前記境界線は形成しないことが望ましい。ただし、潜像画像線6bの線幅Wや線ピッチPは、前述の数値に制限されるものではなく、適宜選択すれば良い。
【0047】
図4のホログラム形成層3は、反射状態で目視した場合、光反射領域6a及び光反射領域6cから成る回折格子5によるホログラム効果が出現する。具体的には、前述の図9及び図10に示すホログラム効果と同様である。しかし、潜像画像線6bは、反射状態では目視できない。また、図4は、ホログラム形成層3を透過状態で目視した場合、潜像画像領域の複数の潜像画像線6bが目視でき、その結果、「5」という文字が目視できる。具体的には、先に説明した図11に示す潜像効果と同様である。従って、図4のホログラム形成層3は、反射状態と透過状態の2通りの方法により目視で真偽判別が可能となる。また、潜像画像線6bは、必ずしも規則的、連続的である必要はない。なお、光反射性部材にはアルミニウム、光透過性部材となるホログラム加工層4は、透明又は半透明の熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂又は、これらを組合わせて使用することが望ましい。
【実施例2】
【0048】
実施例2〜実施例5は、実施例1の基材10に貼付したホログラム形成層3における潜像画像線6bの構成は異なっているが、ホログラムの層構成としては同一である。従って、同一な構成の説明は省略し、異なる構成のみを説明する。
【0049】
図5に示すように、潜像画像領域には、アルミニウムなどの光反射性部材から成る光反射領域6aを形成する。一方、潜像背景領域には、光透過性部材から成る潜像背景線6dが斜め方向で格子状に形成されている。例えば、潜像背景線6dの線幅Wは0.10mmとするが、0.05mm〜0.15mmの範囲が好ましい。潜像背景線6dの線ピッチPは、1.00mmとし規則的に配置するが、0.60mm〜2.00mmの範囲が好ましい。ただし、潜像背景線6dの線幅Wや線ピッチPは、前述の数値に制限されるものではなく、適宜選択すれば良い。本実施例2の構成によると、実施例1と同様のホログラム効果及び潜像効果を得ることができる。ただし、実施例1の潜像効果は、前記潜像画像領域に光反射性部材を有さない潜像画像線6bと光反射性部材を有する光反射領域6aを形成し、前記潜像背景領域に光反射性部材を有する光反射領域6cを形成しているため、透過状態で目視した場合に、潜像画像領域が光を透過し明るく見え、潜像背景領域は光を透過しないため暗く見えるため、「5」の数字が認識でき、本発明では、このような構成を「ポジ方式」という。一方、実施例2では、実施例1と潜像画像領域と潜像背景領域が逆の構成で形成されているため、透過状態で目視した場合に、潜像画像領域が光を透過しないため暗く見え、潜像背景領域は光を透過するため明るく見えるため、「5」の数字が認識でき、本発明では、このような構成を「ネガ方式」という。従って、潜像の形成方法(又は透過状態での見え方)としては、実施例1では「ポジ方式」、実施例2では「ネガ方式」で実施していることが異なっている。なお、実施例3〜実施例5は、ポジ方式で形成している。
【実施例3】
【0050】
図6に示すように、潜像画像領域には、光透過性部材から成る潜像画像線6bと光反射性部材から成る光反射領域6aから成る。この時、潜像画像線6bは彩紋を構成する線として形成する。正確には、前記彩紋の潜像画像線6bは、彩紋の最外部の輪郭線に沿って、線ピッチPを等ピッチとし、2回収縮して形成している。一方、潜像背景領域には、光反射性部材から成る光反射領域6cを形成する。例えば、潜像画像線6bの線幅Wは0.10mmとするが、0.05mm〜0.15mmの範囲が好ましい。潜像画像線6bの線ピッチPは、1.00mmとし規則的に配置するが、0.60mm〜2.00mmの範囲が好ましい。本実施例3の構成によると、実施例1と同様のホログラム効果及び潜像効果を得ることができる。ただし、彩紋の図柄、線ピッチ又は収縮回数は、本実施例に制約されるものではなく、図柄も適宜選択すれば良いし、線ピッチを可変にしても構わない。
【実施例4】
【0051】
図7に示すように、潜像画像領域には、光透過性部材から成る潜像画像線6bと光反射性部材から成る光反射領域6aから成る。この時、潜像画像線6bは彩紋を構成する線として形成する。正確には、前記彩紋の潜像画像線6bは、彩紋の最外部の輪郭線に沿って、且つ、彩紋の中心部を基点とし、線ピッチPを等ピッチとし、5回収縮して形成している。一方、潜像背景領域には、光反射性部材から成る光反射領域6cを形成する。例えば、潜像画像線6bの線幅Wは0.10mmとするが、0.05mm〜0.15mmの範囲が好ましい。潜像画像線6bの線ピッチPは、1.00mmとし規則的に配置するが、0.60mm〜2.00mmの範囲が好ましい。ただし、彩紋の図柄、線ピッチ又は収縮回数は、本実施例に制約されるものではなく、図柄も適宜選択すれば良いし、線ピッチを可変にしても構わない。
【実施例5】
【0052】
図8に示すように、潜像画像領域には、光透過性部材から成る潜像画像画素6bと光反射性部材から成る光反射領域6aから成る。この時、潜像画像画素6bは菱形に形成する。一方、潜像背景領域には、光反射性部材から成る光反射領域6cを形成する。例えば、潜像画像画素6bの対角線の長さWを0.15mmとするが、0.10mm〜0.20mmの範囲が好ましい。潜像画像画素6bの縦横方向の画素ピッチPは、1.00mmとしマトリックス状に配置するが、0.60mm〜2.00mmの範囲が好ましい。このような構成で実施した場合、実施例1と同様のホログラム効果や潜像効果が得られる。ただし、潜像画像画素6bの形状、画素の大きさ、画素ピッチは、本実施例に制約されるものではない。潜像画像画素6bには、円、多角形、文字又はマークなどを適宜選択すれば良いし、実施例2のように、潜像画像領域と潜像背景領域の構成を逆にしても良い。また、図5は、ポジタイプの構成で示したが、ネガタイプの構成にしても構わない。
【0053】
また、実施例1〜実施例5では、潜像画像領域の構成として「5」、「彩紋」又は「鳳凰」で説明しているが、本実施例に制限されるものではない。更に、潜像画像線6bや潜像背景線6dは、一本の連続した直線的な線で説明しているが、二重線、三重線、点線、破線などの分断線(又は分断線)や波線、曲線などの如何なる線形状で構成しても本発明の技術思想に含まれ、その効果も同様である。また、潜像画像線6bや潜像背景線6dは、線という表現で本発明は説明しているが、線を集合させた万線という表現に置き換えても構わない。
【0054】
更に、ホログラム形成層3を反射状態で目視した場合に、より潜像化(又はカモフラージュ化)するためには、前記光反射性部材に高輝度、高光沢性を有し、より高い回折光を得られる材質にすることが望ましく、例えば、アルミニウムが好適である。また、ホログラム形成層3を貼付する基材10の色彩としては、白又は原色を除いた中間色の基材を用いるか、基材に中間色の印刷を施すなどにより潜像化が向上する。
【0055】
なお、実施例では、基材を紙で説明しているが、透明性を有するプラスチックカード、プラスチックフイルム、ガラス、不織布、布などを利用しても、同様な効果が得られる。なお、実施例1〜実施例5を説明する図4〜図8は、便宜上、潜像画像線、潜像背景線又は潜像画像画素を拡大して示しており、実際の構成は微細である。また、潜像画像線、潜像背景線又は潜像画像画素は、前述のとおり反射状態で見えないことが望ましいが、線又は画素の一部が、反射状態で若干見える構成であっても、透過状態で目視できる潜像画像領域から成る情報(例えば、実施例1、2では「5」、実施例3、4では「彩紋」、実施例5では「鳳凰」)が認識できず(又は、気づかず)、且つ、ホログラム効果の視認性を著しく阻害しなければ、本発明の技術的思想の範囲内である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明のホログラムシートの斜視図である。
【図2】本発明のホログラム形成層を基材に貼付した時の概要図である。
【図3】本発明のホログラムシートの構成図である。
【図4】本発明におけるホログラム形成層を基材に貼付した時の一実施例の概略図及び透過状態で目視した模式図である。
【図5】本発明におけるホログラム形成層を基材に貼付した時の一実施例の概略図及び透過状態で目視した模式図である。
【図6】本発明におけるホログラム形成層を基材に貼付した時の一実施例の概略図及び透過状態で目視した模式図である。
【図7】本発明におけるホログラム形成層を基材に貼付した時の一実施例の概略図及び透過状態で目視した模式図である。
【図8】本発明におけるホログラム形成層を基材に貼付した時の一実施例の概略図及び透過状態で目視した模式図である。
【図9】本発明におけるホログラムシートを反射状態で目視する概略図である。
【図10】本発明におけるホログラムシート潜像効果を示す概略図である。
【図11】本発明におけるホログラムシートを透過状態で目視する概略図である。
【符号の説明】
【0057】
1 ホログラムシート
2 ホログラムシート基材
2a シート基材
2b 剥離層
3 ホログラム形成層
4 ホログラム加工層
5 回折格子
5a 光反射性部材を密着した凹凸
5b 光透過性部材から成る透明な凹凸
6 ホログラム画像領域
6a、6c 光反射性部材からなら光反射領域
6b、6d 光透過性部材から成る線又は画素
6e 光透過性部材から成る透明領域
7 マスク層
8 接着剤層
9 位置決めマーク
10 基材
S 刻印
W 線又は画素の幅
P 線又は画素のピッチ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホログラム形成層を有するホログラムシートであって、
前記ホログラム形成層の一表面上に形成された回折格子の表面上には、潜像画像領域と潜像背景領域から成るホログラム画像領域を有し、
前記潜像画像領域には、光透過性部材から成る潜像画像線又は潜像画像画素と、前記潜像画像線又は潜像画像画素の背景に形成された光反射性部材から成る光反射領域とを有し、
前記潜像背景領域には、光反射性部材から成る光反射領域を有して成ることを特徴とするホログラムシート。
【請求項2】
ホログラム形成層を有するホログラムシートであって、
前記ホログラム形成層の一表面上に形成された回折格子の表面上には、潜像画像領域と潜像背景領域から成るホログラム画像領域を有し、
前記潜像画像領域には、光反射性部材から成る光反射領域を有し、
前記潜像背景領域には、光透過性部材から成る潜像背景線又は潜像背景画素と、前記潜像背景線又は潜像背景画素の背景に形成された光反射性部材から成る光反射領域とを有して成ることを特徴とするホログラムシート。
【請求項3】
前記潜像画像線又は前記潜像背景線が、格子状に形成していることを特徴とする前記請求項1又は前記請求項2記載のホログラムシート。
【請求項4】
前記潜像画像線又は前記潜像背景線の線幅が、0.08mm〜0.16mmで形成していることを特徴とする前記請求項1〜前記請求項3記載のホログラムシート。
【請求項5】
前記潜像画像領域において、前記潜像画像線が輪郭線に沿って、等ピッチでn回(n=1以上の整数)収縮して形成することを特徴とする前記請求項1又は前記請求項4記載のホログラムシート。
【請求項6】
前記潜像画像線は、前記輪郭線の中心部を基準として成ることを特徴とする前記請求項5記載のホログラムシート。
【請求項7】
前記潜像画像画素又は潜像背景画素は、規則的に且つ、マトリックス状に形成していることを特徴とする前記請求項1又は前記請求項2記載のホログラムシート。
【請求項8】
前記潜像画像画素又は潜像背景画素の形状が、円、多角形、文字又はマークの何れか一つで形成することを特徴とする前記請求項1、2又は7のいずれか一項に記載のホログラムシート。
【請求項9】
前記潜像画像領域は、彩紋、模様、図柄、マーク、文字の何れか一つを形成することを特徴とする前記請求項1〜前記請求項8の何れか一項に記載のホログラムシート。
【請求項10】
前記ホログラム形成層において、前記ホログラム画像領域の周辺に、光透過性部材から成る透明領域が形成されることを特徴とする前記請求項1〜前記請求項9のいずれか一項に記載のホログラムシート。
【請求項11】
前記請求項1〜請求項10のいずれかの一項に記載のホログラム形成層を接着剤層を介して基材に接着されたことを特徴とする印刷媒体。
【請求項12】
前記印刷媒体が銀行券であることを特徴とする前記請求項11記載の印刷媒体。
【請求項1】
ホログラム形成層を有するホログラムシートであって、
前記ホログラム形成層の一表面上に形成された回折格子の表面上には、潜像画像領域と潜像背景領域から成るホログラム画像領域を有し、
前記潜像画像領域には、光透過性部材から成る潜像画像線又は潜像画像画素と、前記潜像画像線又は潜像画像画素の背景に形成された光反射性部材から成る光反射領域とを有し、
前記潜像背景領域には、光反射性部材から成る光反射領域を有して成ることを特徴とするホログラムシート。
【請求項2】
ホログラム形成層を有するホログラムシートであって、
前記ホログラム形成層の一表面上に形成された回折格子の表面上には、潜像画像領域と潜像背景領域から成るホログラム画像領域を有し、
前記潜像画像領域には、光反射性部材から成る光反射領域を有し、
前記潜像背景領域には、光透過性部材から成る潜像背景線又は潜像背景画素と、前記潜像背景線又は潜像背景画素の背景に形成された光反射性部材から成る光反射領域とを有して成ることを特徴とするホログラムシート。
【請求項3】
前記潜像画像線又は前記潜像背景線が、格子状に形成していることを特徴とする前記請求項1又は前記請求項2記載のホログラムシート。
【請求項4】
前記潜像画像線又は前記潜像背景線の線幅が、0.08mm〜0.16mmで形成していることを特徴とする前記請求項1〜前記請求項3記載のホログラムシート。
【請求項5】
前記潜像画像領域において、前記潜像画像線が輪郭線に沿って、等ピッチでn回(n=1以上の整数)収縮して形成することを特徴とする前記請求項1又は前記請求項4記載のホログラムシート。
【請求項6】
前記潜像画像線は、前記輪郭線の中心部を基準として成ることを特徴とする前記請求項5記載のホログラムシート。
【請求項7】
前記潜像画像画素又は潜像背景画素は、規則的に且つ、マトリックス状に形成していることを特徴とする前記請求項1又は前記請求項2記載のホログラムシート。
【請求項8】
前記潜像画像画素又は潜像背景画素の形状が、円、多角形、文字又はマークの何れか一つで形成することを特徴とする前記請求項1、2又は7のいずれか一項に記載のホログラムシート。
【請求項9】
前記潜像画像領域は、彩紋、模様、図柄、マーク、文字の何れか一つを形成することを特徴とする前記請求項1〜前記請求項8の何れか一項に記載のホログラムシート。
【請求項10】
前記ホログラム形成層において、前記ホログラム画像領域の周辺に、光透過性部材から成る透明領域が形成されることを特徴とする前記請求項1〜前記請求項9のいずれか一項に記載のホログラムシート。
【請求項11】
前記請求項1〜請求項10のいずれかの一項に記載のホログラム形成層を接着剤層を介して基材に接着されたことを特徴とする印刷媒体。
【請求項12】
前記印刷媒体が銀行券であることを特徴とする前記請求項11記載の印刷媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−240787(P2007−240787A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−61943(P2006−61943)
【出願日】平成18年3月8日(2006.3.8)
【出願人】(303017679)独立行政法人 国立印刷局 (471)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月8日(2006.3.8)
【出願人】(303017679)独立行政法人 国立印刷局 (471)
【Fターム(参考)】
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