説明

ホログラムシート

【課題】本発明は、ディメタライズド・ホログラムに従来の機能に加え、複写機による真贋判定機能を付加することを目的とする。
【解決手段】ホログラム形成層を有するホログラムシートであって、前記ホログラム形成層上に形成された回折格子の表面上に、1つ以上の第1の反射パターンを配列した第1表示部と、1つ以上の第2の反射パターンを配列した第2表示部とを有し、前記第1の表示部と前記第2の表示部は隣接しており、前記第1表示部に占める前記第1の反射パターンの面積比率と該第2表示部に占める前記第2の反射パターンの面積比率とが同等またはほぼ同等であることを特徴とするホログラムシートを作製した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機による偽造を防止するホログラムシートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、複写機、特にカラーコピー機の精度向上にしたがって、その普及が著しく、それを利用して株券、債券、商品券等有価証券類や各種証明書類の複写による偽造を容易にしている。
【0003】
上記の複写による偽造を防止する手段として、有価証券類等そのものを複写困難なものとするか、あるいは複写が困難なものを、本物であることの証明として有価証券類等に貼り付ける方法がある。
【0004】
前者の複写を困難にする方法としては、例えば、複写機等の光学機器では解像不可能な細かい文字やパターンの印刷物にしたり、あるいは金属光沢インキや蛍光インキで印刷したりする方法が知られている。
【0005】
しかし、これらの方法では、本物を知らない使用者が本物と偽物を区別して認識することが困難である恐れがあり、偽物を使用し続けるといった問題点があった。
【0006】
そこで、コピー技術の一つとして、潜像領域と非潜像領域を設け、目視で見ると同じように見えるが、コピーをすると複写機の解像度等によりずれが生じ、そのズレにより潜像の付加を確認できる印刷物が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0007】
一方、後者の複写や複製が困難なものを貼り付ける方法としては、例えば、その代表例として、ホログラムを利用する(ホログラム箔を転写する)方法が知られている。
【0008】
ホログラムは、基材やフィルムに、熱と圧力によって微細な凹凸(回折格子)を表面につけ、そこに反射層としてアルミを蒸着することで独特の光沢を再現している。複製の困難さのために偽造防止機能に優れ、各種セキュリティ用途に多く使用されている。
【0009】
セキュリティ用途に用いられるホログラムのひとつに、ディメタライズと呼ばれるものがある。ディメタライズとは、このアルミ蒸着を部分的に除去する技術であり、この技術が使用されたホログラムをディメタライズド・ホログラムと呼んでいる。
【0010】
ディメタライズを行うことにより、ある程度任意の形状に表現することが可能で、通常のホログラムよりも形状等の再現が難しいため偽造が困難となり、セキュリティ商材としてのレベルが一段高くなる。また、文字や模様などを形成することが可能なため、デザイン性の向上付加も特徴のひとつと言える(例えば特許文献2参照)。
【0011】
さらにホログラムはその性質上、特定の角度で見たときのみ画像が確認できるのに対し、ディメタライズド・ホログラムは常に目視で用意に確認が可能であるという特徴もある。
【0012】
しかしながら、ディメタライズド・ホログラム自体には、形状等の再現の難しさから、セキュリティレベルの向上を果たしているが、複写機による真贋判定機能は有していないという点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2006−205625号公報
【特許文献2】特開平11−286194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
そこで本発明は、かかる従来技術の問題点を解決するものであり、その課題とするところは、ディメタライズド・ホログラムに従来の機能に加え、複写機による偽造防止のための真贋判定機能を付加したホログラムシートの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明において上記課題を達成するために、まず請求項1の発明では、ホログラムシート基材上にホログラム加工層、回折格子、マスク層から形成されたホログラム形成層を有するホログラムシートであって、前記ホログラム形成層の一表面上に形成された回折格子の表面上に、1つ以上の第1の反射パターンを配列した第1表示部と、1つ以上の第2の反射パターンを配列した第2表示部とを有し、前記第1表示部に占める前記第1の反射パターンの面積比率と、前記第2表示部に占める前記第2の反射パターンの面積比率が同等またはほぼ同等であることを特徴とするホログラムシートとしたものである。
【0016】
また、請求項2の発明では、前記第1反射パターンと前記第2反射パターンはそれぞれの表示部内を一定のピッチで配列されていることを特徴とする請求項1記載のホログラムシートとしたものである。
【0017】
また、請求項3の発明では、前記第1反射パターンと前記第2反射パターンの形状とが異なることを特徴とする請求項1又は2記載のホログラムシートとしたものである。
【0018】
また、請求項4の発明では、複写により前記第1の表示部が潜像領域となり、前記第2の表示部が非潜像領域となることを特徴とする請求項1乃至3記載のホログラムシートとしたものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明のホログラムシートを用いることで、複写した複写物には、ホログラムシート上では目視によりパターンが視認できなかったホログラムシート内のパターンが複写物に潜像領域として視認される。すなわち本発明のホログラムシートにより、元来ホログラムが持つ複写機による複写牽制機能に加え、真贋判定および、偽造防止効果の向上が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明のホログラムシートの一事例を説明するもので、(a)は、本発明のホログラムシート1の構成図であり、(b)、(c)は、複写前の平面図であり、(d)および(e)は、複写後の第1の表示部または第2の表示部を形成するパターンの平面図である。
【図2】(a)は、本発明の第1の実施例を用いたホログラムシートの複写物を表す平面図であり、(b)は、第1の表示部の拡大図であり、(c)は、第2の表示部の拡大図である。
【図3】(a)は、本発明の第2の実施例を用いたホログラムシートの複写物を表す平面図であり、(b)は、第1の表示部の拡大図であり、(c)は、第2の表示部の拡大図である。
【図4】(a)は、本発明の第3の実施例を用いたホログラムシートの複写物を表す平面図であり、(b)は、第1の表示部の拡大図であり、(c)は、第2の表示部の拡大図である。
【図5】(a)は、本発明の第4の実施例を用いたホログラムシートの複写物を表す平面図であり、(b)は、第1の表示部の拡大図であり、(c)は、第2の表示部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態について図面を用いて説明する。しかしながら、本発明は以下に述べる実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。
【0022】
(ホログラム形成層の構成)
図1(a)は、本発明のホログラムシート1の構成図であり、ホログラムシート1は、ホログラムシート基材2、ホログラム形成層3及び接着剤層8で形成される。ホログラムシート基材2はシート基材2aと剥離層2bからなり、シート基材2aの一方の面に、塗工機、グラビアコーター、グラビア印刷機やスクリーン印刷機などを利用し、透明又は半透明の剥離層2bを積層する。ホログラム形成層3は、ホログラム加工層4、回折格子5、マスク層7で形成され、基材10に貼付する場合はホログラム形成層3が接着剤層8を介して基材10に接着、形成される。ホログラム形成層3の作製方法としては、剥離層2bの表面に光透過性部材である透明又は半透明のホログラム加工層4を積層し、ホログラム効果を発現するために微細な凹凸又は凹凸パターンでなる回折格子5を形成する。
【0023】
前記回折格子5は、図示しない金属製のスタンパーの一表面に形成された回折格子5の凹凸を、ホログラム加工層4表層に熱転写するなどして形成される。正確には、スタンパーに形成された凹凸は、ホログラム加工層4では凹凸の形状が逆になり回折格子5となる。
【0024】
次に、ホログラム加工層4表面にアルミニウムなどの光反射性部材を真空蒸着やスパッタリングした後、グラビア印刷機などでマスク層7を形成し、アルカリ溶液に浸漬することにより、マスク層7で保護されていない前記回折格子5に形成されたアルミニウムは溶解、除去され、透明な光透過性部材からなる凹凸5bを形成する。従って、光透過性部材はホログラム加工層4となる。
【0025】
一方、マスク層7で被覆されている領域のみアルミニウム(図の太線部分)が残存し、アルミニウムが密着した凹凸である、光反射性部材を密着した凹凸5aを形成する。具体的には、ホログラム画像領域6のうち、第1の表示部61には、アルミニウムが残存する第1の反射パターン6a(図の太線部分)が形成される。また、第2の表示部62には、アルミニウムが残存する第2の反射パターン6b(図の太線部分)が形成される。また、ホログラム画像領域6の周辺の透明領域6cは、ホログラム加工層4に形成した前記回折格子5及び/又は平坦面を備えるが、光透過性部材で透明又は半透明であることが望ましい。更に、マスク層7、第1の反射パターン6a、第2の反射パターン6b及び透明領域6cの下層に、接着剤層8をホログラムシート1全体の厚みがほぼ均一になるように積層する。
【0026】
なお、ホログラムシート1に光透過性部材から成る透明又は半透明の領域を形成する方法としては、水溶性インキでホログラム加工層4の前記回折格子5にマスク層を形成した後、真空蒸着などで光反射性部材を密着し、前記マスク層を除去し、透明又は半透明に形成する方法でも構わない。なお、図1(a)のホログラム形成層3は、説明の便宜上、相当の厚みがあるように示しているが、実際の構成では極めて薄い層である。また、反射パターン6a、6bにはアルミニウム、ホログラム加工層4 は、透明又は半透明の熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂又は、これらを組み合わせて使用することが望ましい。
【0027】
ホログラムシート基材2のシート基材2aは、透明プラスチックが望ましく、例えば、PETなどの公知の樹脂を使用すれば良い。剥離層2b、ホログラム加工層4、接着剤層8は、熱可塑性や熱硬化性などの公知の樹脂を適宜選択すれば良いが、ホログラム加工層4は光透過性部材である透明又は半透明な樹脂が望ましい。また、前記光反射性部材には、アルミニウム、銅、ニッケル、錫などがあるが、高輝度で経済性に有利なアルミニウムが好適であり、真空蒸着やスパッタリングを利用して形成すれば良い。また、光反射性部材にアルミニウムを使用した場合、100〜2000Åの厚みが望ましい。
【0028】
(ホログラムシートの厚み)
また、図1(a)は模式図であり、実際のホログラムシート1において、シート基材2aの厚みは、0.015mm〜0.025mm、基材10に貼付される前記ホログラム形成層3の厚みは、0.005mm〜0.030mmが望ましく、ホログラム形成層3の厚みは極めて薄くすることが偽造防止には有効である。
【0029】
(回折格子の構成)
ホログラム形成層3の回折格子5の構成としては、公知のレリーフ型ホログラム、レインボー型ホログラムなどの公知である微細な凹凸パターンを形成したホログラムを使用すれば良く、特に制約されるものではない。
【0030】
図1(b)、(c)は、ホログラムシート1のホログラム形成層3を基材10に貼付した一例を示した平面図である。ホログラムシート1には、第1の表示部61と第2の表示部が設けられている。図1(b)では、第1の表示部61は、「COPY」という文字としているが、本来は目視では判断できない状態であるため、説明上視認可能なように点線で表記してある。一方、第2の表示部62は第1の表示部61を囲むように図柄や「SAMPLE」という文字を形成している。なお、基材10は紙として、料額、人像、地紋などの必要な情報をオフセット印刷、凹版印刷やスクリーン印刷により施されていることが望ましい。
【0031】
また、図1(c)は、第2の表示部62は、「COPY」という文字としているが、本来は目視では判断できない状態であるが、説明上視認可能なように点線で表記してある。一方、第1の表示部61は第2の表示部62を囲むように図柄や「SAMPLE」という文字を形成している。なお、基材10は紙として、料額、人像、地紋などの必要な情報をオフセット印刷、凹版印刷やスクリーン印刷により施されていることが望ましい。
【0032】
図1(d)、(e)は、図1(b)記載のホログラムシートを複写してできた複写物の平面図である。図1(d)は、複写すると第1の表示部61が一つの面として捉えられる潜像領域となって、第1の表示部61が「COPY」という文字となって浮かび上がり、本物を知らない使用者でも明確に複写物であることが認識されるようになる。
【0033】
一方、図1(e)は、複写すると第1の表示部61が一つの面として捉えられる潜像領域となって、第1の表示部61が「COPY」の周囲の図柄が浮かび上がることで、「COPY」という文字を視認できるようになり、本物を知らない使用者でも明確に複写物であることが認識されるようになる。
【0034】
なお、第1の表示部61および第2の表示部62でなる情報としては、文字、数字、図柄、マークなど適宜選択すれば良いし、その組み合わせでも良い。また、第1の反射パターン6aおよび第2の反射パターン6bの形状は特に限定するものではなく、円、多角形、図形、マーク、文字、異方性を有する楕円、数字などを適宜選択すれば良いし、その組み合わせでも良い。また複写で用いる複写機は特に限定されるものではなく、市販されている製品を適宜選択すれば良い。
【実施例1】
【0035】
図2(a)は、第1の表示部61と第2の表示部62のパターンを形成したホログラムシートを複写した複写物の平面図である(説明上第1の表示部61の「COPY」を斜線で示す)。
【0036】
図2(b)に示すように、第1の表示部61には第1の反射パターン6aを配列する。本実施例では、十字パターン6aを用いる。十字形状パターン6aの縦辺W1は0.15mm、横辺W2は0.15mmとし、縦辺W3は0.245mmとし、横辺W4は0.245mmである。隣接する第1の表示パターン6aとのピッチP1、P2は0.245mmで、第1の表示部61内を等間隔に配列する。第1の表示部61内の第1の反射パターン6aの面積比率が約77%となるように調整する。なお、縦辺W1および横辺W2は、0.135mm〜0.165mmの範囲内が好ましく、縦辺W1および横辺W2の長さが等しいほうがさらに好ましい。また、第1の表示部61の面積比率が75%〜85%の範囲内となるのが好ましい。
【0037】
一方、図2(c)に示すように、第2の表示部62には第2の反射パターン6bを配列する。本実施例では長方形パターン6bを用いる。長方形パターン6bの縦辺W1は0.125mm、横辺W2は0.245mmとする。隣接する第2の表示パターン6bとのピッチP1は0.162mm、P2は0.245mmで、第2の表示部62内を等間隔に配列する。第2の表示部2内の第2の反射パターン6bの面積比率が約77%となるように調整する。なお、縦辺W1は、0.110mm〜0.140mmの範囲内が好ましく、第2の表示部62の面積比率が75%〜85%の範囲内となるのが好ましい。
【0038】
このように第1の表示部61と第2の表示部62の面積比率が同等となるように各反射パターンを形成してホログラムシートを作成する。
【0039】
作成したホログラムシートを目視で確認したところ、目視では潜像の付加が認識できなかった。また、複写機でホログラムシートを複写してできた複写物を目視で確認したところ、第1の表示部61である「COPY」というパターンに潜像の付加が確認されて、第2の表示部62である、「COPY」以外の周辺絵柄には潜像の付加が確認されなかった。これにより第1の表示部61である、「COPY」という文字が視認できるようになり、複写機による複写物であることが確認できた。
【実施例2】
【0040】
実施例2〜実施例4は、実施例1の基材10に貼付したホログラム形成層3における第1の反射パターン6aおよび、第2の反射パターン6bの形状は異なっているが、ホログラムの層構成及び効果は同一である。従って、同一な構成の説明は省略し、異なる構成のみを説明する。
【0041】
図3(a)は、第1の表示部61と第2の表示部62のパターンを形成したホログラムシートを複写した複写物の平面図である(説明上第1の表示部61の「COPY」を斜線で示す)。
【0042】
図3(b)に示すように、第1の表示部61には第1の反射パターン6aを配列する。本実施例では、長方形パターン6aを用いる。長方形パターン6aの縦辺W1は0.125mm、横辺W2は0.189mmとする。隣接する第1の表示パターン6aとのピッチP1、P2は0.189mmで、第1の表示部61内を等間隔に配列する。第1の表示部61内の第1の反射パターンの面積比率が約66%となるよう調整する。なお、縦辺W1は、0.110mm〜0.140mmの範囲内が好ましく、面積比率が60%〜70%の範囲内となるのが好ましい。
【0043】
一方、図3(c)に示すように、第2の表示部62には、第2の反射パターン6bを配列する。本実施例では十字パターン6bを用いる。十字形状パターン6bの縦辺W1は0.125mm、横辺W2は0.125mmとし、縦辺W3は0.300mmとし、横辺W4は0.300mmとした。隣接する第2の表示パターン6bのピッチP1、P2は0.300mmで、第2の表示部62内を等間隔に配列する。第2の表示部62内の第2の反射パターン6bの面積比率が約66%となるように調整する。なお、縦辺W1および横辺W2の長さは、異なっていてもかまわないが、0.135mm〜0.165mmの範囲内が好ましく、縦辺W1および横辺W2の長さが等しいほうがさらに好ましい。また、面積比率が60%〜70%の範囲内となるのが好ましい。
【0044】
このように第1の表示部61と第2の表示部62の面積比率が同等となるように各反射パターンを形成してホログラムシートを作成した。
【0045】
作成したホログラムシートを目視で確認したところ、目視では潜像の付加が認識できなかった。また、複写機でホログラムシートを複写してできた複写物を目視で確認したところ、第1の表示部61である「COPY」というパターンに潜像の付加が確認されて、第2の表示部62である、「COPY」以外の周辺絵柄には潜像の付加が確認されなかった。これにより第1の表示部61である、「COPY」という文字が視認できるようになり、複写機による複写物であることが確認できた。
【実施例3】
【0046】
図4(a)は、第1の表示部61と第2の表示部62のパターンを形成したホログラムシートを複写した複写物の平面図である(説明上第1の表示部61の「COPY」を斜線で示す)。
【0047】
図4(b)に示すように、第1の表示部61には第1の反射パターン6aを配列する。本実施例では円パターン6aを用いた。円パターン6aの直径W1は0.150mmとする。隣接する第1の表示パターン6aとのピッチP1、P2は0.180mmで、第1の表示部61内を等間隔に配列する。第1の表示部61内の第1の反射パターンの面積比率が約54%となるように調整する。なお、直径W1は、0.135mm〜0.165mmの範囲内が好ましく、円の形状は楕円でも良いが、正円がより好ましい。また、面積比率が45%〜55%の範囲内となるのが好ましい。
【0048】
一方、図4(c)に示すように、第2の表示部62には第2の反射パターン6bを配列する。本実施例では十字パターン6bを用いる。十字形状パターン6bの縦辺W1は0.150mm、横辺W2は0.150mmとし、縦辺W3は0.450mmとし、横辺W4は0.450mmとした。隣接する第2の表示パターン6bのピッチP1、P2は0.450mmで、第2の反射パターン6bを等間隔に配列する。そして、第2の表示部62内の第2の反射パターン62の面積比率が約55%となるようにした。なお、縦辺W1および横辺W2の長さは、異なっていてもかまわないが、0.135mm〜0.165mmの範囲内が好ましく、縦辺W1および横辺W2の長さが等しいほうがさらに好ましい。また、面積比率が45%〜55%の範囲内となるのが好ましい。
【0049】
このように第1の表示部61と第2の表示部62の面積比率が同等となるように各反射パターンを形成してホログラムシートを作成した。
【0050】
作成したホログラムシートを目視で確認したところ、目視では潜像の付加が認識できなかった。また、複写機でホログラムシートを複写してできた複写物を目視で確認したところ、第1の表示部61である「COPY」というパターンに潜像の付加が確認されて、第2の表示部62である、「COPY」以外の周辺絵柄には潜像の付加が確認されなかった。これにより第1の表示部61である、「COPY」という文字が視認できるようになり、複写機による複写物であることが確認できた。
【実施例4】
【0051】
図5(a)は、第1の表示部61と第2の表示部62のパターンを形成したホログラムシートを複写した複写物の平面図である(説明上第1の表示部61の「COPY」の周辺パターンを斜線で示す)。本実施例は、実施例1の表示部61と第2の表示部62の各反射パターンとを入れ替えたものであり、第1の表示部61が第2の表示部62である「COPY」を囲むように配列した。
【0052】
作成したホログラムシートを目視で確認したところ、目視では潜像の付加が認識できなかった。しかし、複写機でホログラムシートを複写してできた複写物を目視で確認したところ、第1の表示部61である「COPY」以外の周辺絵柄に潜像の付加が確認されて、第2の表示部62である「COPY」は潜像の付加が確認されなかった。これにより第2の表示部62である、「COPY」という文字が視認できるようになり、複写機による複写物であることが確認できた。
【0053】
このように第1の表示部61と第2の表示部62の配置を入れ替えても良いし、その配置は特に限定するものではないが、好ましくは、第1の表示部61と第2の表示部62が隣接して配置されると良い。このことにより、潜像領域と非潜像領域の境界部が明確になるため、複写後の複写部での潜像領域の視認性が向上する。なお、第1の表示部61および第2の表示部62でなる情報としては、文字、数字、図柄、マークなど適宜選択すれば良いし、その組み合わせでも良い。
【0054】
また、第1の反射パターン6aおよび第2の反射パターン6bの形状は特に限定するものではなく、円、多角形、図形、マーク、文字、異方性を有する楕円、数字などを適宜選択すれば良いし、その組み合わせでも良いが、好ましくは、十字パターンや長方形、網点形状であると良い。これらの組み合わせにより、目視による判別がより困難となるだけでなく、複写後の潜像領域がより明確となり、視認性が高まる効果がある。また複写で用いる複写機は特に限定されるものではなく、市販されている製品を適宜選択すれば良い。
【0055】
また、図示はしないが、第1の表示部61と第2の表示部62以外にも、複写後に潜像領域となる第3の表示部や、複写後に非潜像領域となる第4の表示部を設けても良い。このように複写後に潜像領域や非潜像領域となる表示部は、1種類である必要はなく、それぞれ2種類以上設けても良い。ただし、潜像領域となる各表示部の面積比率および、潜像領域となる各表示部の面積比率が同等、もしくはほぼ同等でなければならない。これにより、複写後の複写物のデザイン性に自由度が向上する。
【0056】
このように本発明では、目視による潜像の付加がさらに認識しづらくすることができる効果があるだけでなく、デザイン的にも自由度を向上させ、偽造防止を求める用途をもさらに広げることのできるホログラムシートを提供できる効果がある。また、ホログラムのデザインの一部として盛り込むことができ、デザイン性の自由度も高いので違和感無く真贋判定機能を付加することができる。また、本願発明の製造方法については、一般的なディメタライズド・ホログラム製造工程で作成できるので、特殊な追加加工を必要としない。さらに、真贋判定時に特殊な真贋判定機器を必要とせず、複写機による複写物から目視での真贋判定が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明のホログラムシートは、従来のホログラムの機能に加え、複写機による真贋判定機能を付加することができた。さらに、債券、商品券、ギフトカード等有価証券類、印鑑登録証等証明書類、カード、その他ゴミ処理券、等に利用することができ、優れた実用上の効果を発揮する技術である。
【符号の説明】
【0058】
1 ホログラムシート
2 ホログラムシート基材
2a シート基材
2b 剥離層
3 ホログラム形成層
4 ホログラム加工層
5 回折格子
5a 光反射性部材を密着した凹凸
5b 光透過性部材から成る凹凸
6 ホログラム画像領域
6a 第1の反射パターン
6b 第2の反射パターン
6c 光透過性部材から成る透明領域
7 マスク層
8 接着剤層
10 基材
61 第1の表示部
62 第2の表示部
W、W1、W2、W3、W4 反射パターンの大きさ
P、P1、P2 ピッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホログラムシート基材上にホログラム加工層、回折格子、マスク層から形成されたホログラム形成層を有するホログラムシートであって、
前記ホログラム形成層上に形成された回折格子の表面上に、
1つ以上の第1の反射パターンを配列した第1表示部と、
1つ以上の第2の反射パターンを配列した第2表示部とを有し、
前記第1の表示部と前記第2の表示部は隣接しており、
前記第1表示部に占める前記第1の反射パターンの面積比率と該第2表示部に占める前記第2の反射パターンの面積比率が同等またはほぼ同等であること、
を特徴とするホログラムシート。
【請求項2】
前記第1反射パターンと前記第2反射パターンとはそれぞれの表示部内を一定のピッチで配列されていることを特徴とする請求項1記載のホログラムシート
【請求項3】
前記第1反射パターン形状と前記第2反射パターン形状とが異なること
を特徴とする請求項1又は2に記載のホログラムシート。
【請求項4】
複写により前記第1の表示部が潜像領域となり、前記第2の表示部が非潜像領域となること、
を特徴とする請求項1乃至3記載のホログラムシート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−197666(P2010−197666A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−42018(P2009−42018)
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】