説明

ホワイトアスパラの栽培方法とそれに用いる被覆フィルム

【課題】本発明の課題は、アスパラの慣行栽培圃場に遮光反躯機能を有すフィルムを被覆するだけで、品種に拘らず周年ホワイトアスパラを栽培できる被覆資材とその栽培方法を提供することにある。
【解決手段】本発明のホワイトアスパラ栽培用フィルムは、可視光反射率70%以上を有するフィルムと、カーボンブラック、酸化チタンやアルミニウム等の隠蔽材を用いた遮蔽層を積層して形成したフィルムの、最内面に不織布をラミネート或いは接着し、最内外面の少なくもいずれかに防曇材を塗布或いは混練りしたものであって、3万ルックス下で15ルックス以下の光線透過を備えるものとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はハウスで行うホワイトアスパラの栽培方法とそれに用いる被覆フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ホワイトアスパラを一般的に栽培するには、ネギの軟白栽培同様土寄せし、たけのこ栽培同様土の表面が地割れしたのを目視して掘り取り器具を土に入れて収穫していた。このため収穫作業中に収穫できるホワイトアスパラのみでなく、近い将来収穫可能な若芽や根株を誤って切り取ることも多く、多大の労力と経験を要し、安定した収穫ができない欠点があった。更に、土寄せが不均一になり易く、特に一定の長さを持つホワイトアスパラを収穫できないという問題があった。また、陽のある時間帯に収穫するので、収穫したアスパラが光に晒される場面も多く、このため収穫したアスパラがピンク色になったり、黄色味を帯びたりし、商品価値を低下させる問題があった。又暖かになるとアスパラの発芽が旺盛になり、地表から発芽すると緑色になるため一日に2から3回の収穫が必要になり、収穫作業時間が長くなるなど労働負担の問題を生じる。これらの諸問題を解決するために、昭和38年頃から48年にかけて東洋食品短期大学や北海道大学などで遮光フィルム(シルーポリトウ)を被覆するトンネル被覆にて栽培する試験が行われた。3万ルックス下で20ルックスの光線透過するフィルム(遮光率99.99984%)を被覆したものであったが、わずかな光の漏れで、薄いピンク色になったり、薄いエンジ色やピンク色の筋があるアスパラになったり、被覆内室温が40℃以上の高温になりすぎてアスパラの頭部が開いたり、高温の影響で薄茶色になったり、苦味が出たりする等品質上の問題が発生した。特に晩春から夏季にかけての高温期の栽培技術の確立ができず今日に至っている。
【0003】
特許文献1には、取扱いが容易で、ホワイトアスパラガスやうど等の野菜の軟白栽培に適した、ほぼ完全遮光が可能であり、かつ被覆した内部が高温多湿となったり結露せず植物の生育に悪影響を及ぼさない十分な通気性を有する農園芸用カバーシートとそれを使用した野菜類の軟白栽培方法を提供することを目的とした「農園芸用シート及び野菜類の製造方法」が開示されている。この発明は「通気度1cc/cm/sec以上の多孔性シートからなり、遮光率が95%以上である農園芸用シートであり、また、当該シートで茎葉の少なくとも一部を覆って野菜類を軟白栽培する」ことを要旨とするものである。この発明は、植物の生育に十分な通気性を有し、また、軟白栽培するのに十分な遮光性を有するため、植物の生育に悪影響を与えずに軟白栽培が可能となる。完全遮光を必要としない場合にも下部を少し持ち上げるなどの方法により遮光率を任意に設定することができ、応用範囲が広い。ホワイトアスパラガス、ウド、ニラなどの野菜の軟白栽培が容易となり、労力を軽減することができる効果があると述べられている。しかし、この農園芸用シートの遮光率は95%以上とされており、わずかな光の漏れで、薄いピンク色を帯びてしまうホワイトアスパラガスには十分な遮光率とはいえないし、その使い方も畝植えのアスパラを両側から挟み込んで十分な通気性を確保しつつ軟白栽培するのに十分な遮光を行うものであって、園芸ハウス用のものではない。
【0004】
また、特許文献2にはホワイトアスパラガス等の周年安定生産方法を提供することを目的としたものであって、「(1)軟白野菜類の株を所定の箱体容器に収容し、(2)上記株を所定の温度及び暗闇条件の栽培施設内に伏せ込み、軟白野菜類を萌芽させ、(3)上記株を伏せ込む時期を調節することにより、栽培施設における萌芽状況を制御し、(4)上記(1)〜(3)により、周年安定した軟白野菜類の萌芽を実現するステップを踏む軟白野菜類の生産方法」が開示されている。この明細書では所定の温度及び暗闇条件を有する施設の好ましい温度条件は15〜20℃、及び湿度90%前後の気相中であることが記載されているものの、好ましい暗闇条件については所定の箱体容器に収容すると記載されているだけでその具体的条件が開示されていない。この発明は遮光率よりも温度と湿度の管理が重要であるとしたものと解される。
【特許文献1】特開平5−304836号公報 「農園芸用シート及び野菜類の製造方法」 平成5年11月19日公開
【特許文献2】特開2004−201680号公報 「ホワイトアスパラガス等の周年安定生産方法」 平成16年7月22日公開
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、アスパラの慣行栽培圃場に遮光反躯機能を有すフィルムを被覆するだけで、品種に拘らず周年ホワイトアスパラを栽培できる被覆資材とその栽培方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のホワイトアスパラ栽培用フィルムは、可視光反射率70%以上を有するフィルムと、カーボンブラック、酸化チタンやアルミニウム等の隠蔽材を用いた遮蔽層を積層して形成したフィルムの、最内外面の少なくもいずれかに防曇材を塗布或いは混練りしたものであって、3万ルックス下で15ルックス(光透過率:99.95333%)以下の光線透過を備えるものとした。
また、本発明のホワイトアスパラ栽培用フィルムは、可視光反射率70%以上を有するフィルムと、カーボンブラック、酸化チタンやアルミニウム等の隠蔽材を用いた遮蔽層を積層して形成したフィルムの、最内面に不織布をラミネート或いは接着し、最内外面の少なくもいずれかに防曇材を塗布或いは混練りしたものであって、3万ルックス下で15ルックス(光透過率:99.95333%)以下の光線透過を備えるものとした。
また、本発明のホワイトアスパラ栽培用フィルムの1形態では、フィルムの両側面位置に、水袋チューブを固着した構造をとるものとした。
また、本発明のホワイトアスパラ栽培用フィルムの1形態では、適宜の穴が開けられた灌水チューブを最外面に固着した構造をとるものとした。
また、本発明のホワイトアスパラ栽培用フィルムの1形態では、磁石又は面ファスナー等で密封/開口できる蓋付の覗き穴を設けた構造をとるものとした。
【0007】
本発明のホワイトアスパラ被覆栽培用ハウスは、少なくともアスパラ2畝以上を覆い、収穫時立って歩ける程度の適当な大きさを有すフレームにアスパラの倒伏防止支柱を直結した構造体に、請求項1乃至5のいずれかに記載の反射遮光機能付フィルムを被覆すると共に、入り口内側位置に請求項1又は2に記載の反射遮光機能付フィルムで出入できる間仕切りを設けるようにした。
本発明のホワイトアスパラを収穫する栽培方法は、請求項1乃至5のいずれかに記載の反射遮光機能付フィルムを被覆して行うホワイトアスパラ栽培において、春芽を収穫した後、除覆して適当な期間アスパラの株養成を図った後、再度上記の反射遮光機能付フィルムを被覆して年2回以上収穫できるようにした。
【発明の効果】
【0008】
本発明のホワイトアスパラ栽培用フィルムは、可視光反射率70%以上を有するフィルムと、カーボンブラック、酸化チタンやアルミニウム等の隠蔽材を用いた遮蔽層を積層して形成したフィルムの、最内外面の少なくもいずれかに防曇材を塗布或いは混練りしたものであって、3万ルックス下で15ルックス以下の光線透過を備えるものであるから、慣行栽培条件下でこのフィルムを被覆するだけで、真っ白なホワイトアスパラが栽培できる。また、ホワイトアスパラの栽培が、アスパラ栽培できるところであれば、地域を選ぶことなく周年栽培できる。更に、高品質で太りのよい、ホワイトアスパラが短期間に栽培でき、目視して収穫できる。そして、圃場が暗闇状態におかれるため雑草が生えることが無く、除草作業が不要になる。
また、最内面に不織布をラミネート或いは接着した構成を採用した本発明のホワイトアスパラ栽培用フィルムは、反射遮光フィルムに付着した結露水が当該不織布に吸収され、不織布の繊維を通してフレーム側面に流れ落ちるので、反射遮光フィルム被覆内面の過湿が防げるとともに風による被覆フィルムの揺れによる水滴の落下が無くなり、更に反射遮光フィルムの熱伝導の緩衝効果もあり、特に反射遮光フィルムに直接ラミネートしたものより二重に被覆したものの方が空気層ができやすく、緩衝性能が高まりフィルム単用より高温化を防ぐ効果がある。
【0009】
フィルムの両側面位置に、水袋チューブを固着した構造をとるものとした本発明のホワイトアスパラ栽培用フィルムは、そのチューブに水を入れて被覆すると側面が風によってまくれ上がったりして、被覆内に光を入れたりすることがなくなる。又、水の重みで押さえるので、土のでこぼこに関係なく、密閉度は増し、遮光の安定が容易にはかることができる。又不要時に水を抜けば、汚れが少なく、再利用でき、経済的であり、脱着を簡単に行うことができ、大雨でフィルム押さえの土が雨で流れたりすることがなく、どんな条件下でもフィルムの押さえが完壁で安定した遮光密閉を簡便に作り出すことができる。
また、磁石又は面ファスナー等で密封/開口できる蓋付の覗き穴を設けた構造をとるものとした本発明のホワイトアスパラ栽培用フィルムは、被覆内に入ることなく上記覗き穴から遮光環境チェックや収穫適期を室外から確認できる。
また、適宜の穴が開けられた灌水チューブを最外面に固着した構造をとるものとした本発明のホワイトアスパラ栽培用フィルムは、適宜の穴が開けられた灌水チューブから散水できるので、フィルムに蓄熱した熱を散水による気化熱で取りさることによってフレーム被覆内の室温を外気温度より低くできる。
【0010】
本発明のホワイトアスパラ被覆栽培用ハウスは、少なくともアスパラ2畝以上を覆い、収穫時立って歩ける程度の適当な大きさを有すフレームにアスパラの倒伏防止支柱を直結した構造体に、本発明に係る反射遮光機能付フィルムを被覆すると共に、入り口内側位置に本発明に係る反射遮光機能付フィルムで出入できる間仕切りを設けるようにしたので、室内栽培圃場に光を入れることなく出入ができる。また、収穫したアスパラの品質を根直射日光や高温に晒して、必要以上に低下させることなく収穫できる栽培環境ができる。また、室内を歩いて収穫作業ができ、アスパラガスの根を直接踏み固めることなく収穫作業ができる。そしてこのハウスは黄ニラやウド栽培に利用できる。
本発明のホワイトアスパラを収穫する栽培方法は、本発明に係る反射遮光機能付フィルムを被覆して行うホワイトアスパラ栽培において、春芽を収穫した後、除覆して適当な期間アスパラの株養成を図った後、再度上記の反射遮光機能付フィルムを被覆して栽培する手法を採用したので、年2回以上収穫でき、反収が大幅に増える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明が提示するホワイトアスパラを栽培する環境条件について、以下に説明する。以下の遮光条件と被覆内室温条件が整えば、慣行のアスパラ栽培をしているところであればどこでも栽培ができる。
まず、第1に遮光環境について詳細に説明する。遮光率99.9995%であっても栽培条件によってアスパラに若干の赤みを帯びることはある。過去において遮光率99.9997%であってもピンク色になったことがあるが、着色現象はアスパラの種類と温度環境によって差が生じるとの知見を得、過去の試験結果を総合判断して、遮光率99.9995%をホワイトアスパラ栽培の着色限界と仮認定した。遮光フィルムを除覆後アスパラの株養成を行う際に、ピンク色や黄緑色に薄く着色したアスパラは遮光フィルムを除覆7日経っても新しく伸張した所のみ緑色になり、太りが悪く、倒伏し易いアスパラになり慣行アスパラ栽培に比べて株養成時の生育が遅延した。99.9999984%の遮光フィルムを使用したときにはアスパラは真っ白になり、遮光フィルムを除覆後は短時間で緑色になり、1ケ月後には慣行と変わらない程度に生育した。これらの結果よりホワイトアスパラ栽培の遮光には、遮光率99.9995%以上が適していると判断できた。
【0012】
この遮光率は、適当なポリオレフィン系樹脂を用いた積層構造のフィルムの内面又は中間層にカーボンブラック又はアルミニウムの粒子を単独使用若しくはカーボンブラックと酸化チタンを適量混合すると容易に達成できる。又、中間層及び内層に、内層のみに適当な防曇剤を混入或いは塗布すると、被覆内面の結露がなくなり、結露による水滴のアスパラヘの付着がなくなりフィルム被覆が要因になって引き起こす病気の発生を未然に紡ぐことができる。又収穫時に、収穫作業者が結露水でずぶぬれになることが無く、快適な収穫作業ができるようになる。図1に示したものは、酸化チタン又はアルミニウムを混練り或いはアルミ蒸着又はステンレス蒸着かスパッタリングを施した可視光反射層1と、カーボンブラックを混練りした遮光層2、その表面に防曇剤を混練り若しくは塗布した層3からなる積層フィルム構造のものである。図2に示したものは、酸化チタン混練りの可視光反射層1と、カーボンブラックを混練りした層2aとアルミニウムを混練りした層2bが積層された遮光層2と、更にその表面に防曇剤を混練り若しくは塗布した層3からなる積層フィルム構造のものである。図3に示したものは、酸化チタンを混練りした可視光反射層1と、カーボンブラックを混練りした遮光層2、その表面に防曇剤を混練り若しくは塗布した層3からなる積層フィルム構造のものである。図4に示したものは、酸化チタンを混練りした可視光反射層1と、酸化チタンとカーボンブラックを混練りした遮光層2、その表面に防曇剤を混練り若しくは塗布した層3からなる積層フィルム構造のものである。
【0013】
不織布を反射遮光フィルムの内面に被覆し、特に不織布に防曇処理を行っていると、反射遮光フィルムに付着した結露水が不織布に吸収され、不織布の繊維を通してフレーム側面に流れ落ちるので、反射遮光フィルム被覆内面の過湿が防げるとともに風による被覆フィルムの揺れによる水滴の落下が無くなり、更に反射遮光フィルムの熱伝導の緩衝効果もあり、特に反射遮光フィルムに直接ラミネートしたものより二重に被覆したものの方が空気層ができやすく、緩衝性能が高まリフィルム単用より高温化を防ぐ効果もあり望ましい。又、被覆作業面からは、側面或いは反射遮光フィルムの適当な位置に長さ方向に適当に接着してあり、重ねてあれば、被覆作業が一回で済み尚好都合で望ましい。図5の(1)に示したものは、可視光反射層1と遮光層2に不織布層4を積層したものである。図5の(2)に示したものは、可視光反射層1と遮光層2が積層されたフィルムに不織布層4を局所接着したものである。
【0014】
次に被覆内室温環境について詳細に説明する。アスパラ栽培の生育温度範囲は5〜38℃といわれ、特に40℃以上では病気の発生、発育不良といった高温障害が起こり、生育が最も旺盛になる温度は20〜30℃で、この温度条件に近づけるフィルムを用いること又は被覆方法が効率の良いアスパラ栽培ということになる。密閉被覆した反射遮光機能を有すフィルムは、表1に示される様に反射率と室温の間には密接な関係があり、反射率が高い程室温の上昇が少ない傾向にあり、可視光反射率84%の室内では最高外気温27〜32.9℃で平均+3.8℃、70%の可視光反射率の室内では平均+5.4℃であった。可視光反射率70%のフィルムを用いた場合、最高気温が27℃程度で室内温度が32℃となるので、福島県では7月上旬程度まで栽培可能と判断し、本発明においては可視光反射率70%以上とした。
【表1】

アスパラ栽培は、12月〜翌年4月の低温時はハウスで栽培し、5月中旬以降は露地で栽培しており、ハウス栽培時は反射遮光フィルムを内張りカーテンとして使用し、ホワイトアスパラを栽培する。この場合外気温度は低くてもハウス内の室温は25℃程度に達しているので、反射遮光フィルム内の室温は最高30℃近くに達しており、反射率70%以下のフィルムを使用した場合アスパラ栽培の限界温度40℃以上になる可能性が高い。ハウス栽培における室温の高低は天候、特に日照量の多寡に左右される欠点を有している。露地栽培では後述の新たなフレーム支柱導入を要すが、外気温30℃以上で栽培する時は、可視光反射率80%以上のフィルムを使用し、フィルム上に適当な時間灌水すれば、フレーム被覆内の室温が外気温度より低くなる。
【0015】
このために本発明では図6に示す灌水機能を備えた反射遮光フィルムを提示する。図の(1)に示すものは本発明に係る反射遮光機能付フィルム10の幅方向中央部分に穴が適宜の間隔で開けられた灌水チューブ5が配置され、その灌水チューブ5を固定するように被覆フィルム6が被せられ、該被覆フィルム6の両サイドを長手方向に間歇的に熱溶着したものである。灌水チューブ5の穴を介して供給される水は前記被覆フィルム6の非熱溶着領域から流れ出し、反射遮光機能付フィルム10上を流下してこれを冷却する。図の(2)に示すものは本発明に係る反射遮光機能付フィルム10の幅方向中央部分に穴が適宜の間隔で開けられた灌水チューブ5が配置され、その灌水チューブ5を不織布又はネット7で固定するようにしたものである。灌水チューブ5の穴を介して供給される水は前記固定用の不織布又はネット7を介して流れ出し、反射遮光機能付フィルム10上を流下してこれを冷却する。また、図の(3)に示すものは本発明に係る反射遮光機能付フィルム10の幅方向中央部分に穴が適宜の間隔で開けられた灌水チューブ5が配置され、その灌水チューブ5を接着剤若しくは熱溶着して固定したものである。灌水チューブ5の穴から噴出する水は図の(3)に示すように反射遮光機能付フィルム10上を流下してこれを冷却する。
福島県いわき市にてこの灌水機能を備えた反射遮光フィルムをハウスに被覆して調査した結果、表2に示されるように外気温32.9℃の時に被覆内温度が30℃以下になった。フィルムに蓄熱した熱を散水による気化熱で取りさることによって室温が低下したものと考えられる。
【表2】

フィルム内に、酸化チタン3wt%以上混練り又はアルミ蒸着或いはステンレススパッタリングを行えば可視光反射率70%以上を容易に達成する。使用場面では高反射面を低温時以外は、外面に使用することが望ましい。
【0016】
又、本発明では反射遮光機能付フィルム10の両側面に、チューブ内に水を注入できるチューブ8を固着したものを提示する。作物を被覆した状態でチューブ8に水を入れて水袋にすると側面が風によってまくれ上がったりして、被覆内に光を入れたりすることがなくなる。又、水の重みで押さえるので、土のでこぼこに関係なく、密閉度は増し、遮光の安定が容易にはかることができる。又不要時には水を抜くことができ、そのようにして用いれば、汚れが少なく、再利用でき、経済的であり、脱着の作業を容易に行うことができ、大雨でフィルム押さえの土が雨で流れたりすることがないなど、どんな条件下でもフィルムの押さえが完壁で安定した遮光密閉を簡便に作り出すことができる。図7の(1)に示すように本発明に係る反射遮光機能付フィルム10の幅方向両側端部に水を注入できるチューブ8を固着する。このフィルムの使用形態は図の(2)に示すようにトンネルハウスの構造体に被覆し、地面に接触するチューブ8内に水を注入すると、これが水袋となって凹凸のある地面であっても隙間無く密封する。
【0017】
次に被覆フレームの形態について詳細に説明する。基本構造は図8に示されるように畝長手方向に所定間隔で配置されるアーチフレーム11とその頂点を連結固定する梁フレーム12、そして、適当な間隔でアーチフレーム11に配置された倒伏支柱13とからなる。被覆フレーム支柱のアーチフレーム11は、アスパラを最低二畝被覆できる幅と中央部を人が立って歩ける程度の高さがあるものがよい。このような被覆フレーム支柱は、フレームの強度が増し、倒れにくく、株養成時の倒伏防止を簡便に補強でき、ホワイトアスパラを栽培するために特別にフレーム支柱を設置する必要はなく、遮光反射フィルム10を除覆した後、株養成のために倒伏防止支柱を新たに設置する必要がなくなって作業上効率的である。又、アーチフレーム11に倒伏防止支柱13が直結しているので強い風にも倒伏防止ができ、その上反射遮光機能付フィルム10に無理が掛からないので構造的に強度が増し、フレーム間隔を従来の2倍程度に広げることができるなど、経済的でかつ設置作業労力が軽減される利点がある。人が立ってフレーム内のホワイトアスパラを懐中電灯やカンテラで目視して収穫できるので効率の良い収穫作業ができ、本発明によれば土寄せ作業を必要としないため、1日に2から3回の収穫作業が1回で済む。更に収穫したホワイトアスパラを直射光に晒すことがないので黄色や茶色に変色させることがなく、高品質を維持できる環境が提供できる。
【0018】
本発明では被覆フレームへの反射遮光フィルム被覆にあたっては、入り口付近に本発明に係る反射遮光機能付フィルム10による開閉できる間仕切りを設ける形態を提示する。このように出入り口の仕切を二重構造とすることにより、フレーム内への人の出入時に於ける光の漏れを防ぐようにしたものである。このようにすると、作業員のフレームへの出入りによる栽培中のホワイトアスパラの着色をなくすことができる。
又、本発明では被覆した本発明に係る反射遮光機能付フィルム10の適当な位置に図9に示すような適当な大きさの覗き穴9を設けると共に、その周辺とこれを塞ぐ蓋9bにプラスチック磁石又は面ファスナー9aを設け、前記覗き穴を容易に開けたり密閉したりできる機能を備えるものを提示する。必要時に覗き窓を開け、被覆内の暗黒の確認とホワイトアスパラの生長を暗黒フレーム内に入ることなく観察することができるためのものである。
【0019】
上記した遮光条件と被覆内室温条件を備えた反射遮光フィルムで上記のフレーム形態の要件を備えたフレームで遮光被覆を行うと、以下の効果がある。
1)暗黒なので雑草が生えることが無くその除草が不要になる。
2)太陽光に晒されないので土壌水分の蒸散が少なく、灌水量を少なくして栽培できる。
3)土壌をふみ固めることなく作業でき、又雨水による肥料の流乏がなくアスパラにとって良い土壌環境ができる。
このため本発明に係る反射遮光機能付フィルム10を用いたホワイトアスパラ栽培は生育が早く、太く高品質のものが栽培できる。特に夏の高温時、反射遮光機能付フィルム10に直接散水したり、本発明に係る灌水チューブ5を直着けした反射遮光機能付フィルム10で散水すれば、被覆内面の室温が外気温度より低くなり、一枚のフィルム被覆で夏の高温を回避することができ、より安価で簡便なホワイトアスパラ栽培が簡便にできる。
【0020】
次に、ホワイトアスパラを年2回以上栽培する本発明のホワイトアスパラ栽培方法について説明する。春芽のでる時期に反射遮光機能付フィルムを被覆しホワイトアスパラを収穫後、前記の反射遮光機能付フィルムを除覆して適当に株養成を図った後、夏に再度反射遮光機能付フィルムを被覆すると最低2回ホワイトアスパラが収穫できる。特に2回目は初夏になるため、反射遮光フィルム内の高温化が課題であり、東北以北では反射率84%以上のフィルムを用いれば一枚のフィルムを使用することで栽培可能だが、東北以南では、そのフィルム上に散水することが必要になる。
【0021】
以下に、試験農園で本発明を実験的に実施した結果を示す。
[実験例1]平成17年5月福島県のアスパラハウスに、アスパラを収穫している最中に、3畝栽培の内中央部1畝に、3万ルックス下で0.1〜0.4ルックスの光線を透過(光透過率99.999967%〜99.998667%)し可観光反射率85%の白面と裏面に灰色面の表裏反射率の異なる0.08mm厚のフィルムを幅5mでハウス内張り彼覆を行ない、被覆裾面に土袋で押さえを行った。この結果は、被覆5日で、ホワイトアスパラが栽培できた。(写真参照−1)
【0022】
[実験例2]平成17年6月福島県の慣行露地栽培でグリーンアスパラガスの春芽収穫終了し、株養成中のアスパラに幅1.2m奥行き3mの高さ1.5mのトンネルハウスを作り、3万ルックス下で12〜14ルックス透過(光透過率99.960000%〜99.953333%)する可視光反射率70%のフィルムAと、3万ルックス下で0.1〜0.06ルックス透過(光透過率99.999967%〜99.999800%)する可視光反射率85%のフィルムBをそれぞれ被覆してホワイトアスパラ栽培を行った。その時、妻面に20cm四方の不要の場合密閉できる覗き窓9を設け被覆内面を観察した結果、フィルムAのハウスではフィルム越しに淡い光の漏れが見受けられた。被覆して1週間後調査した結果、アスパラの土際部がほんのりのピンク色を帯びていた。又、外が8万ルックスの時に、被覆内は1200ルックスの条件下(遮光率99.985%)でアスパラを覗き穴9を少し開けて観察した結果、アスパラの頭部は薄い黄緑色になっていた。
フィルムBのハウスでは被覆内面の室温が12〜30℃で、生育適温範囲内の温度条件を満たし、真っ白なホワイトアスパラが栽培できた。覗き窓から覗くと被覆した直後は、被覆内は暗黒であった。また収穫直前に覗くとホワイトアスパラが白く浮き上がって見え、覗き窓があると、圃場に入ることなく生育観察ができることが確認できた。アスパラの変色は、試験終了後、8万ルックス下でホワイトになったアスパラを太陽光に1時間放置したが変色しなかった。収穫1ヶ月後のアスパラを調査した結果、真っ白になったホワイトアスパラの株は直射日光に晒したままにしておくと慣行の株になっていたが、黄緑色やピンク色をしたアスパラの株は慣行の株のように緑色になかなかならず、倒伏し易い株になり、正常な株養成ができず、株養成が10日程度遅延した。栽培期間が15日と短かったが、2回目を収穫できることと、慣行グリーンアスパラ栽培の様に収穫後も同程度の株になることを確認した。
以上の結果より、昭和45から49年にかけて北海道でトンネル被覆にてホワイトアスパラ栽培した条件(遮光率99.99934%)と重ね合わせると、真っ白なホワイトアスパラを栽培する最低遮光率は99.9995%以上が必要という結果であり、実用新案に書かれている95%遮光ではホワイトアスパラにはならないことがわかった。
【0023】
[実験例3]平成17年8月福島県いわき市の弊社実験農場圃場にて、可視光反躯率84%白面で遮光率99.9999984%以上のフィルムを図7の(4)に示した形態で被覆して評価試験を行った結果、ポリエチレン製の灌水チューブを紫外線カットフィルムで覆いその覆ったフィルムを適当な間隔で熱溶着して直接反射遮光フィルムに固着し、11時20分から11時50分まで30分間灌水した結果表3のように外気温が32.7℃時、地上50cmの位置の室温が34.3℃から29.4℃に下り、外気温より下がることが確認できた。
【表3】

この結果から可視光反射率85%白面で遮光率99.9999984%以上のフィルムを被覆し、外気温35℃以下の条件であれば、散水と併用すればホワイトアスパラを栽培できる環境条件を得ることが確認できた。又外気温度が30℃以下であれば、可視光反射率85%白面で遮光率99.9999984%以上のフィルム単用で栽培できる結果であった。
【0024】
[実験例4]平成17年6月から8月の2ヶ月間福島県いわき市の弊社実験農場にて実験した結果、間口2.7m奥行き10mのハウスに反射遮光フィルムを被覆し、裾面上にたれた反射遮光フィルムの両側面上に幅20cmフィルム厚0.15mmのポリエチレン製チューブを設け、そのチューブに水を入れた結果土寄せすることなく、フィルムの密閉度が完壁になった。又除去する時は、水を抜けば簡単に被覆遮光反射フィルムが撤去でき、土を寄せる労力、地面のでこぼこによる土寄せの調整なく、風でフィルムが飛んだり外れたりすることなく重み付けとして活用できることが実証できた。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の反射遮光機能付フィルムの積層構造を示す図である。
【図2】本発明の反射遮光機能付フィルムの異なる積層構造を示す図である。
【図3】本発明の反射遮光機能付フィルムの他の積層構造を示す図である。
【図4】本発明の反射遮光機能付フィルムの更に異なる積層構造を示す図である。
【図5】不織布を内張した本発明の反射遮光機能付フィルムの積層構造を示す図である。
【図6】灌水チューブを配置した反射遮光機能付フィルムの積層構造例とハウスでの散水形態を示す図である。
【図7】水袋となるチューブを配置した本発明の反射遮光機能付フィルムの積層構造を示す図である。
【図8】本発明の反射遮光機能付フィルムを被覆する倒伏防止支柱付アーチフレームを説明する図である。
【図9】覗き窓を設けた本発明の反射遮光機能付フィルムを説明する図である。
【符号の説明】
【0026】
1 可視光反射層 2 遮光層
2a カーボンブラックを混練した遮光層 2b アルミニウムを混練りした遮光層
3 防曇剤処理層 4 不織布
5 灌水チューブ 6 被覆フィルム
7 固定用不織布又はネット 8 水袋用チューブ
9 覗き穴 9a プラスチック磁石又はファスナー
9b 蓋 10 反射遮光機能付フィルム
11 アーチフレーム 12 梁フレーム
13 倒伏防止支柱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可視光反射率70%以上を有するフィルムと、カーボンブラック、酸化チタンやアルミニウム等の隠蔽材を用いた遮蔽層を積層して形成したフィルムの、最内外面の少なくもいずれかに防曇材を塗布或いは混練りしたものであって、3万ルックス下で15ルックス(光透過率:99.95333%)以下の光線透過を備えた、ホワイトアスパラ栽培用フィルム。
【請求項2】
可視光反射率70%以上を有するフィルムと、カーボンブラック、酸化チタンやアルミニウム等の隠蔽材を用いた遮蔽層を積層して形成したフィルムの、最内面に不織布をラミネート或いは接着し、最内外面の少なくもいずれかに防曇材を塗布或いは混練りしたものであって、3万ルックス下で15ルックス(光透過率:99.95333%)以下の光線透過を備えた、ホワイトアスパラ栽培用フィルム。
【請求項3】
フィルムの両側面位置に、水袋チューブを固着した構造であって、当該水袋チューブに水を入れフィルム押さえとして機能させることができることを特徴とした請求項1又は2に記載のホワイトアスパラ栽培フィルム。
【請求項4】
適宜の穴が開けられた灌水チューブを最外面に固着した構造であって、当該灌水チューブからの散水によって温度上昇を防止する機能を備えたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のホワイトアスパラ栽培フィルム。
【請求項5】
磁石又は面ファスナー等で密封/開口できる蓋付の覗き穴を設けた構造であって、内部観察が必要な際に当該覗き穴を開けて観察可能とする機能を備えたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のホワイトアスパラ栽培フィルム。
【請求項6】
少なくともアスパラ2畝以上を覆い、収穫時立って歩ける程度の適当な大きさを有すフレームにアスパラの倒伏防止支柱を直結した構造体に、請求項1乃至5のいずれかに記載の反射遮光機能付フィルムを被覆すると共に、入り口内側位置に請求項1又は2に記載の反射遮光機能付フィルムで出入できる間仕切りを設けるようにしたホワイトアスパラ被覆栽培用ハウス。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれかに記載の反射遮光機能付フィルムを被覆して行うホワイトアスパラ栽培であって、春芽を収穫した後、除覆して適当な期間アスパラの株養成を図った後、再度上記の反射遮光機能付フィルムを被覆して年2回以上ホワイトアスパラを収穫する栽培方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−330121(P2007−330121A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−163790(P2006−163790)
【出願日】平成18年6月13日(2006.6.13)
【出願人】(000223193)東罐興業株式会社 (90)
【Fターム(参考)】