説明

ホワイトソース用添加剤及び該添加剤を使用した食品

【課題】ホワイトソースに添加するだけで、該ホワイトソースを使用した食品を、よりクリーミーで濃厚感あるものに仕上げることができる添加剤を提供する。
【解決手段】下記の(a)酵母エキス及び(b)メイラード反応型調味料の2種類の組成物を含有したホワイトソース用添加剤。
(a)GMP及びIMPをそれぞれ3重量%以上含有した酵母エキス。
(b)5’−ヌクレオチドを20重量%以上含有した酵母エキス、グルタチオンを3重量部以上含有した酵母エキス、単糖類、デキストリン及び食塩を含有した水溶液又は水懸濁液を90〜120℃で加熱処理したメイラード反応型の調味料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穀類、油脂、牛乳などからつくられるホワイトソースを使用した食品に、クリーミーで濃厚感を与えるホワイトソース用添加剤及び該添加剤を使用した食品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ホワイトソースは、小麦粉、コーンスターチ、米紛等の穀類に、バター、マーガリン、サラダ油等の油脂を添加して炒めルウを作成し、これを牛乳や水を加えてのばし、必要により調味料等を添加することによってつくられている。近年、食の嗜好が高度なものとなり、従来のものに比べて、よりクリーミーで濃厚感を与えるものが望まれてきた。
かかる要望に応えるために、例えば、穀類としては、架橋澱粉、米澱粉等を用い、適度なボディ感を有するホワイトソース(特許文献1)や、油脂あるいは乳化剤として、ナタネ水添油脂、ポリグリセリン脂肪酸酸エステル、脂肪酸モノグリセリド、ショ糖脂肪酸エステル等が添加されたなめらかな食感を持つホワイトソース(特許文献2)が、更に、タンパク分解物、アミラーゼ、大豆の発酵物等を添加したクリーミーな口溶け、のど越の良い食感をもつホワイトソース(特許文献3)、等が、報告されている。
これら方法により、一定の効果は認められるものの、より簡便に製造することができ、用いた食品により高級感のある、クリーミーで濃厚感を与えるホワイトソースが求められていた。
【特許文献1】特開平9−262077号公報、特開2006−115744号公報
【特許文献2】特開平10−337166号公報、特開2001−157566号公報、同2002−223698号公報、同2002−272428号公報、同2003−310155号公報
【特許文献3】特開2002−223731号公報、同2002−136275号公報、同2005−95150号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、添加するだけで、用いた食品にクリーミーで濃厚感を与えるホワイトソース用添加剤及び該添加剤を使用した食品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、鋭意研究の結果、特定の酵母エキスと調味料を混合したものを用いることにより課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち本発明は、
(1)下記の(a)酵母エキス及び(b)メイラード反応型調味料の2種類の組成物を含有したホワイトソース用添加剤、
(a)5’−グアニル酸ナトリウム(以下、GMPともいう。)及び5’−イノシン酸ナトリウム(以下、IMPともいう。)をそれぞれ3重量%以上含有した酵母エキス。
(b)5’−ヌクレオチドを20重量%以上含有した酵母エキス、グルタチオンを3重量部以上含有した酵母エキス、単糖類、デキストリン及び食塩を含有した水溶液又は水懸濁液を90〜120℃で加熱処理したメイラード反応型の調味料。
(2)上記(a)と(b)の混合比(重量比)が、(a):(b)=6〜8:4〜2である、上記(1)記載のホワイトソース用添加剤、
(3)上記(1)乃至(2)記載のホワイトソース用添加剤を使用した食品、
(4)食品がコハク酸及びその塩を含有したものである、上記(3)記載の食品、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明の添加物は、ホワイトソースに添加するだけで、該ホワイトソースを使用した食品を、よりクリーミーで濃厚感あるものに仕上げることができる。
また、食品がコハク酸あるいはその塩を使用したものである場合は、コハク酸等によるエグ味を和らげる効果も有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のホワイトソース用添加物は、(a)酵母エキス及び(b)メイラード反応型の調味料を混合したものである。
用いられる(a)酵母エキスは、GMP及びIMPをそれぞれ3重量%以上含有した酵母エキスであり、例えば、特開2002−101846号公報に開示された方法等により、具体的には、酵母を熱水で抽出した抽出物、あるいは酵母にタンパク質分解酵素、細胞壁溶解酵素などを添加して得られた抽出物を、核酸分解酵素、アデニル酸分解酵素を作用させることにより容易に製造できる。
【0007】
一方、(b)メイラード反応型の調味料としては、例えば、特開2003−169627号公報に開示された方法等により、具体的には、5’−ヌクレオチドを20重量%以上含有した酵母エキス5〜30重量部、グルタチオンを3重量部以上含有した酵母エキス20〜70重量部、単糖類2〜10重量部、デキストリン5〜20重量部、食塩10〜50重量部が添加された水溶液又は水懸濁液を90〜120℃で加熱処理することにより、容易に製造することができる。
【0008】
本発明のホワイトソース用添加剤は、上記(a)と(b)を混合したものである。両者の混合割合は任意であるが、(a):(b)=6〜8:4〜2(重量比)であることが、特に高級感を付与する点で好ましい。
【0009】
本発明のホワイトソース用添加剤は、ホワイトソースが用いられる食品にもよるが、ホワイトソース100重量部に対して0.001〜0.5重量部、好ましくは0.01〜0.1重量部添加することが好ましい。添加量がこれより少ないと十分にクリーミーで濃厚な感じを与えることができず、一方、これを越えて用いると、味が濃くなる場合があり好ましくない。
なお、添加剤が添加されるホワイトソースは、従来のホワイトソース、例えば、穀類あるいは穀粉を可食性動植物油脂、油脂加工食品で炒め、乳、あるいは乳タンパク質を含む乳製品等でのばしたもの、必要に応じて各種調味料、香辛料等を添加したもの、が制限なく利用できる。
【0010】
本発明のホワイトソース用添加剤が添加されたホワイトソースを用いる食品としては、例えば、シチュウ、グラタン、クリームソース、コーンスープ、ポタージュスープ、クラムチャウダー、パスタソース、クリームコロッケ、あるいはカスタードクリームなどのクリーム類及びこれを利用した食品、等を例示することができる。
また、食品として、有機酸、例えば、コハク酸あるいはその塩を含むような食品、例えばクラムチャウダー等に用いると、有機酸(コハク酸)由来のエグ味が改善される。
【実施例】
【0011】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。
なお、実施例における官能評価は、下記の方法により行った。
すなわち、パネラー10名により、「うま味」、「濃厚感」、「クリーミー感」、クラムチャウダーでは更に「エグ味のマスキング」について、それぞれ5段階で採点し、その平均点を示した(四捨五入)。
なお、5段階の基準は、以下の通りである。
+2:かなり強い
+1:やや強い
0:基準(対照区)と差がない
−1:やや弱い
−2:かなり弱い
【0012】
製造例1
特開2002−101846号公報の記載に準じ、5’−グアニル酸ナトリウム及び5’−イノシン酸ナトリウムをそれぞれ3重量%以上含有した酵母エキスを製造した。
すなわち、キャンディダ・ウチルスKJS−0582(FERM P−7396株)の10%菌体懸濁液1000mlを10N硫酸でpH3.5に調整し、60℃30分間処理した後、遠心分離で菌体を回収し、十分に水洗した。
本菌体を水で10%濃度に調整・懸濁し、90℃30分間加熱することにより菌体内酵素を失活させ、次いで、40℃とし、pH7.0に調整、細胞壁溶解酵素(ツニカーゼ、大和化成製)0.5gを加え、4時間反応し、遠心分離によりエキス分を抽出した。
得られたエキス分に、常法により、リボヌクレアーゼアマノD(天野エンザイム製)、デアミナーゼ(天野エンザイム製)を用い順次酵素反応し、濃縮、スプレードライし、酵母エキス30gを得た。
本酵母エキス中のGMP及びIMPの含有量は、それぞれ5.5重量%、5.5重量%であった。
【0013】
製造例2
特開2003−169627号公報の記載に準じて調味料を製造した。
すなわち、5’−ヌクレオチド含有酵母エキス(興人製アロマイルド、5’−ヌクレオチド含有量36重量%)7重量部、グルタチオン含有酵母エキス(興人製アロマイルドU、グルタチオン含有量8重量%)19重量部、液糖4.1重量部、粉末デキストリン7重量部及び食塩14.5重量部を水48.4重量部に加え、105℃55分間加熱した。
反応終了後、反応液をスプレードライし、調味料を得た。
【0014】
実施例1
製造例1で得た酵母エキス及び製造例2で得た調味料を、酵母エキス:調味料=7:3(重量比)で混合し、本発明のホワイトソース用調味料を得た。
【0015】
実施例2
表1に示す原材料を用いホワイトソースを作成した。すなわち、バターで小麦粉を5分間炒め、これに牛乳その他の材料を加え、ダマにならないように溶かした。全ての材料がよく溶けたら6分間煮込み、5等分した。
5等分したソースに、MSG、製造例1で製造した酵母エキス、製造例2で作成した調味料、実施例1で作成した本発明のホワイトソース用調味料を、それぞれ表2に記載した割合で加え、ホワイトソースを作成した。
【0016】
【表1】

【0017】
【表2】

【0018】
実施例3
実施例2で作成したホワイトソースを用い、表3の材料でグラタンを作成した(オーブン、180℃20分間)。
官能評価の結果を表4に示す。
調味料を入れていない[1]に対して、[2]〜[4]はうま味の付与についてはかなりの効果がみられたが、濃厚感、クリーミー感は満足できるものではなかった。一方、本発明の添加剤が加えられた[5]は、うま味の付与と共に、濃厚感、クリーミー感が増し、なめらかなホワイトソースであった。
【0019】
【表3】

【0020】
【表4】

【0021】
実施例4
実施例2で作成したホワイトソース[1]及び[5]を用い、表5の材料でコーンクリームコロッケを作成した。
すなわち、具材を全て混合した後、30〜40gを丸形の容器に入れ一晩冷凍庫で成形した後、バター、パン粉をつけ、揚げ油を用いて、170℃、6分間油ちょうし、コーンクリームコロッケを作成した。
官能評価結果を表6に示す。
本発明の添加剤を添加したホワイトソースを用いた方が、濃厚感、クリーミー感が強く、風味がよいものであった。
【0022】
【表5】

【0023】
【表6】

【0024】
実施例5
実施例2で作成したホワイトソース[1]、[2]及び[5]を用い、表7の材料でクラムチャウダーを作成した。
すなわち、沸騰した湯に、1cm角に切ったたまねぎ、ジャガイモ、ニンジンを加え、柔らかくなるまで煮た。次いで、ホワイトソース、あさり、ベーコンを加え、一煮立ちしたら、塩、コショウで味を調え、クラムチャウダーを作成した。
官能評価結果を表8に示す。
MSGの添加ではうま味は非常に強くなるものの濃厚感、クリーミー感の付与効果はほとんどなく、また、貝特有のエグ味も対照区とほほ同様であった。一方、本発明の添加剤が加えられたホワイトソースを用いたものは、うま味もあり、濃厚でクリーミーであり、かつ、特有のコハクさんによるエグ味もマスキングされており、飲みやすく高級感を感じさせるものであった。
【0025】
【表7】

【0026】
【表8】

【産業上の利用可能性】
【0027】
以上説明してきたように、本発明によると、ホワイトソースに添加するだけで、該ホワイトソースを使用した食品を、よりクリーミーで濃厚感あるものに仕上げることができる添加剤が提供されるため、ホワイトソースを使用する各種食品に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(a)酵母エキス及び(b)メイラード反応型調味料の2種類の組成物を含有したホワイトソース用添加剤。
(a)5’−グアニル酸ナトリウム及び5’−イノシン酸ナトリウムをそれぞれ3重量%以上含有した酵母エキス。
(b)5’−ヌクレオチドを20重量%以上含有した酵母エキス、グルタチオンを3重量部以上含有した酵母エキス、単糖類、デキストリン及び食塩を含有した水溶液又は水懸濁液を90〜120℃で加熱処理したメイラード反応型の調味料。
【請求項2】
上記(a)と(b)の混合比(重量比)が、(a):(b)=6〜8:4〜2である、請求項1記載のホワイトソース用添加剤。
【請求項3】
請求項1乃至2記載のホワイトソース用添加剤を使用した食品。
【請求項4】
食品がコハク酸及びその塩を含有したものである、請求項3記載の食品。