説明

ホースアッセンブリ

【課題】 ホース内周面に備えられたリップが口元部材に乗り上げることを防止し、ホースの流動抵抗の増加を防止し、異物等の堆積を未然防止する。
【解決手段】 ホースアッセンブリ(A)は、可撓性のホース(2)と口元部材(1)を、一部が重なり合うように一体化して構成される。口元部材(1)は内筒部(13)を備える。ホース(2)はホース本体(2b)とリップ(2r)とを含んで構成され、ホース本体(2b)は内周面に凹溝と凸条を螺旋状に備え、リップ(2r)は凹溝を覆うように螺旋状に設けられている。ホースアッセンブリ(A)では、ホースが口元部材内筒部と重なり合う重合部から、前記重合部を越えて、ホース中央側の所定位置(Z)にわたる第1の領域(X)において、前記リップの両側の側縁が凸条に一体化される一方で、前記所定位置(Z)からホース中央側の第2の領域(Y)では、前記リップの片側の側縁はホースと一体化されていない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は可撓性ホースの端部に口元部材が接続一体化されたホースアッセンブリに関する。特に、ホース本体内周面に螺旋状の凹溝を備え、その凹溝を覆うようなリップを供えるホースを、口元部材と接続一体化したホースアッセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
可撓性ホースは、電気掃除機や吸引器具や排水設備などの多様な用途に使用されている。可撓性ホースのホース本体端部に口元部材を一体化しておくと、口元部材を利用したホースの接続操作が可能となり、便利である。近年、可撓性ホースと口元部材の一体化技術において、いわゆるオーバーモールド成形あるいはインサート成形と呼ばれる射出成形技術により、可撓性ホースのホース本体端部に既製の口元部材を挿入して、ホース端部と口元部材を射出成形金型内部に導入して樹脂の射出成形を行い、射出された樹脂により、ホース本体端部と口元部材とを一体化してホースアッセンブリを得る技術が利用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、螺旋状の凹凸条を有する可撓性ホースに対して上記オーバーモールド成形技術(インサート成形技術)を適用するにあたり、口元部材をインナ部材とアウタ部材で構成して、アウタ部材にホースの凹凸条と螺合する螺旋状の突条を設け、アウタ部材の回転操作によりホース本体端部の軸方向位置を調整して射出成形に供する技術が開示されている。この技術によれば、ホース端部とインナ部材の間に隙間が生ずることを未然に防止でき、インサート成形工程において射出された樹脂がホース内部に漏れ出してしまう不具合が未然防止されることが開示されている。
【0004】
また、例えば電気掃除機用のホースとして、ホース本体をその内周面に螺旋状の凹溝を備えるじゃばら状のホース壁により構成すると共に、その凹溝を覆うようにリップを供えさせるホースも知られている。特許文献2には、そのようなホースのリップの部分をホース本体の部分よりも軟質な樹脂により構成することによって、可撓性と耐つぶれ性に優れ、通気抵抗の低い電気掃除機用ホースが得られることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−250273号公報
【特許文献2】特開2011−055877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発明者らは、特許文献2に開示されたような、ホース内周の螺旋状の凹溝を覆うようなリップ99rを供えるホース99を、口元部材9と一体化する検討を行った。そして、リップ99rを供えるホースを口元部材に一体化すると、口元部材との接合部付近において、ホースの伸縮に伴って、図11に示したように、リップ99rが口元部材9の内筒部分93に乗り上げることがあることを発見した。
【0007】
リップ99rが口元部材9に乗り上げると、乗り上げたリップ99rがホースの通路の断面積を減少させて、内部を通流する流体(例えば空気)の流動抵抗を高めてしまったり、乗り上げたリップ99rの部分に、ホース内部に流れる固体(電気掃除機においてはごみや異物、粒状物搬送ホースにおいては粒状物)が引っかかってしまうという問題がある。
【0008】
従って、本発明は、ホース内周面に備えられたリップが口元部材に乗り上げることを防止し、ホースの流動抵抗の増加を防止し、異物等の堆積を未然防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明者は、鋭意検討の結果、ホース内周面の凹溝を覆うようなリップをホースに設ける場合には、口元部材と接合される部分の近傍領域では、リップの両側縁がホースに一体化されるようにすると、上記課題が解決できることを知見し、本発明を完成させた。
【0010】
本発明は、可撓性のホース(2)と口元部材(1)を、一部が互いに重なり合うように一体化したホースアッセンブリ(A)であって、口元部材(1)はホースの内周に配置される内筒部(13)を備え、ホース(2)はホース本体(2b)とリップ(2r)とを含んで構成され、ホース本体(2b)は、内周面に凹溝と凸条を螺旋状に備え、リップ(2r)は、凹溝を覆うように凸条に一体化されて螺旋状に設けられると共に、ホースが口元部材内筒部と重なり合う重合部から、前記重合部を越えて、ホース中央側の所定位置(Z)にわたる第1の領域(X)においては、前記リップはその両側の側縁が凸条および/またはリップに一体化され、前記所定位置(Z)からホース中央側の第2の領域(Y)では、前記リップの片側の側縁はホースと一体化されていない側縁とされた、ホースアッセンブリ(A)である(第1発明)。
【0011】
第1発明においては、前記重合部を超えて、少なくともホース本体(2b)の凹溝の螺旋の1回転分にわたる領域を前記第1領域(X)とすることが好ましい(第2発明)。また、第1発明において、1つの凹溝に対し、1つのリップ(2r)が設けられるようにしてもよいし(第3発明)、あるいは、1つの凹溝に対し、対をなすリップが設けられ、凹溝の両側の凸条にそれぞれのリップの側縁が一体化され、第1の領域において、対をなすリップ同士が一体化されるようにしても良い(第4発明)。
【発明の効果】
【0012】
本発明のホースアッセンブリ(第1発明)によれば、ホース内周面に備えられたリップが口元部材に乗り上げることが未然に防止され、ホースの流動抵抗の増加を防止し、異物等の堆積を未然防止できる。
【0013】
さらに、第2発明のように、前記重合部を超えて、少なくともホース本体(2b)の凹溝の螺旋の1回転分にわたる領域を前記第1領域(X)とした場合には、より確実にリップの乗り上げを防止できるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係るホースアッセンブリを備える電気掃除機の外観を示す図である。
【図2】本発明の第1実施形態のホースアッセンブリの外観形状を示す斜視図である。
【図3】本発明の第1実施形態のホースアッセンブリの構造を示す一部断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態に使用されるホースの形状を示す一部断面図である。
【図5】本発明の第1実施形態に使用されるホースのホース壁部分の拡大断面図である。
【図6】本発明の第1実施形態に使用されるホースを製造するための樹脂条帯の断面図である。
【図7】本発明の第1実施形態に使用される口元部材の形状を示す斜視図および断面図である。
【図8】本発明の第1実施形態におけるホース端部のリップ一体化処理工程の概要を示す模式図である。
【図9】ホースと口元部材を一体化するインサート成形工程の概要を示す模式図である。
【図10】本発明に使用されるホースの他の形状例を示す一部断面図である。
【図11】比較検討例において、リップが口元部材内筒部に乗り上げた状態を示す一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。本発明は以下に示す個別の実施形態に限定されるものではなく、その形態や用途を変更して実施することもできる。第1の実施の形態として、一例として電気掃除機の可撓性ホース接続部における実施の形態について説明する。図1は電気掃除機の全体の外観を示し、可撓性ホース2は、掃除機本体40に設けられた吸気口に接続管(口元部材)1を介してホース2の一端で接続され、ホース2の他端は手元操作部42に接続され、手元操作部42に連続して延長管43、続いて床用ノズル44が接続されて電気掃除機が構成されている。
【0016】
本実施形態においては、接続管1が口元部材として可撓性ホース2に接続一体化されて、ホース2と口元部材1とによってホースアッセンブリAが構成されている。ここで、口元部材とは、ホースの端部に接続一体化されて他の部材との接続等に供される部材であり、特にホースとの接続部に中空円筒状の部分を有する部材をいう。上記電気掃除機の例で言えば接続管1や、手元操作部の構成部材のうちホースに直接接続される部材が口元部材に該当する。以下、可撓性ホース2や口元部材(接続管)1、及びそれらの接続形態などについて、本発明第1実施形態のホースアッセンブリを詳細に説明する。
【0017】
図2および図3には本実施形態におけるホースアッセンブリの形状および断面構造を示す。これら図においては、口元部材付近のみを図示し、他のホースの部分は省略している。口元部材1の一端側には、ホース2の端部が挿入されて、口元部材1の一部とホース2の一部とが、ホース軸方向の一部の区間で互いに重なり合う状態で、両者が接続一体化され、ホースアッセンブリAが構成される。本実施形態においては、両者の接続一体化は、後述するインサート成形工程により行われており、口元部材1とホース2とは、インサート成形工程において両者の間に射出された樹脂Pによって一体化されている。
【0018】
ホース2の形状を、図4および図5に示す。ホース2は、合成樹脂製(例えば軟質熱可塑性樹脂製)の可撓性ホースである。ホース2はホース本体2bとリップ2rとが一体化されたホースである。ホース本体2bは、その内周面に螺旋状の凹凸条を有するホースである。すなわち、ホース本体2bのホース壁の内周面には、ホース内側から見て凹溝や凸条となるような凹凸条が、螺旋状に備えられている。また、ホース壁はじゃばら状に形成されており、ホース内周の凹溝部分はそのままホース外周面の凸条部分となっている。
【0019】
そして、ホース本体2bの内周面には、内周面に設けられた凹溝を覆うように、リップ2rが、凹溝に沿って螺旋状に設けられている。ホース2が口元部材1に一体化される前のホース単体の状態では、リップ2rは、その片側の側縁が、ホース本体2b内周面の凸条に一体化されており、リップの他の側の側縁(すなわちリップ2rの先端部)は、ホース本体2bとは一体化されておらず、凸条とスライド可能な自由縁とされている。
【0020】
このようなホースは、例えば、図6に示すような略S字状断面を有する樹脂条帯Tを螺旋状に捲回しながら、互いに隣接する条帯側縁部を接着一体化するいわゆるスパイラル法によって製造することができる。以下、条帯Tとホース2の構造およびその製造方法について詳述する。
【0021】
条帯Tは、例えばポリオレフィン系樹脂などの比較的軟質な合成樹脂材料を材料として押出成形によって製作される。ポリオレフィン系樹脂としては、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリエチレン樹脂(PE)、エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)などが例示される。軟質塩化ビニル樹脂(PVC樹脂)、や熱可塑性エラストマ(TPE)などを使用することもできる。条帯Tを構成する樹脂材料として好ましい硬度は、70〜95(JIS ショアA)程度である。
【0022】
ホース2の製造にあたっては、まず、樹脂材料を押出し機に供給して、押出し機から半溶融状態で押出しして条帯Tを作成する。押出された条帯Tはその後冷却されて、その断面形状が固定された後、公知のホース製造装置のガイドシャフトの周囲に螺旋状に捲回される。条帯Tは、内向き側縁部201が先行して捲回された条帯の外向き側縁部205に重なり合うように捲回され、互いに重ね合わせられた内向き側縁部201と外向き側縁部205の間に接着剤30を充填し接着することにより、接合一体化されて、螺旋状の凹凸条を備えるホース本体2bとなって、可撓性ホース2が製造される。
【0023】
接着剤30としては、前記条帯Tと同じ種類の樹脂からなるホットメルト型接着剤などが使用できる。
【0024】
ホース2の構造及び条帯Tの断面形状および両者の関係を、さらに詳細に説明する。図6に示すように、条帯Tはその断面において略S字状をなす部分(以下略S字状部分と称する)を有する。この部分がホース本体2bとなる。略S字状部分の両端部には、条帯Tが螺旋状に捲回された際に互いに重なり合い、接着剤30によって接着一体化される内向き側縁部201と外向き側縁部205が設けられている(図5及び図6においては、図の上側がホースの外側に対応し、図の下側がホースの内側に対応している)。略S字状部分の両端に設けられた内向き側縁部201と外向き側縁部205の間には、捲回された際にホース内周面側を構成する部分(以下内周部)204と、捲回された際にホース外周面側を構成する部分(以下外周部)202と、内周部204と外周部202の間の立上がり部203が設けられている。内周部204と外周部202の断面は、ホースの中心軸線に対し略平行に設けられており、内周部204の方が外周部202よりもホース中心軸の近くに配置されて捲回される。内向き側縁部201と外向き側縁部205及び立上り部203とは、その断面がホース中心軸線に対して、所定の角度(望ましくは45度から90度の角度)をなすように設けられている。即ち、本実施形態においては、条帯Tの略S字状部分は、内向き側縁部201、外周部202、立上り部203、内周部204、外向き側縁部205が連設されて構成され、略S字状部分によって、ホースの内部空間と外部空間とを画成するホース本体2bが構成されている。
【0025】
ホース本体2bにおいて、ホース内周面側を見ると、内周部204の部分は凸条となり、互いに隣接する内周部204,204の間の部分が凹溝となっており、これら凸条と凹溝は、交互に並んで螺旋状に設けられている。
【0026】
さらに、条帯Tには、延長部206が設けられている。条帯Tがホース2に成形されると、延長部206の部分がリップ2rになる。延長部206は、内周部204と外向き側縁部205が接続される接続部204aから、内周部204を延長するように、ホース軸線方向に沿って突設された部分であり、略S字状部分と延長部206は一体に押出成形されて条帯Tを構成している。延長部206がホース内周面側に配置されることによって、ホース本体2bのホース内周面側の凹溝部分が、リップ2rによって覆われた状態となり、ホース内周面が略平滑に構成される。
【0027】
即ち、ホース単体においては、リップ2rは、ホース本体2bの内周面の螺旋状凹溝部分を覆うように、凹溝に沿う螺旋状に配設されると共に、リップ2rの片側の側縁が、ホース本体2bの内周面の凸条に一体化されている。また、リップ2rの他の側の側縁は、隣接する凸条とは、非接着状態で、互いにスライド可能な自由縁とされており、リップ2rが凹凸波型状のホース管壁の伸縮を妨げないようにされている。
【0028】
リップ2rの長さは、リップ2rの先端部が隣接する内周部204(凸条)と重なり合う程度の長さとすることが好ましい。そして、ホースアッセンブリAが電気掃除機に使用される際には、ホース内を流れる空気流が上流側から下流側に向かう方向に向かって、リップ2rが突設されるようにすることが、通気抵抗低減の観点からは好ましい。
【0029】
図7に示すように、本実施形態における口元部材1は、中空円筒状の部材であり、例えば、合成樹脂の射出成形により一体形成される。口元部材1の一端側は、例えば挿入部11とされて電気掃除機本体40や他の部材との接続に供される。こちら側の端部は、必要に応じて任意の形態とすることができる。
【0030】
口元部材の他端側には、収容部12が設けられている。収容部12は、接続されるべきホース2の端部を挿入・収容可能なリング状の空間Sを画定しており、リング状空間Sの部分にホース端部が挿入されて口元部材1とホース2とが互いに接続される。具体的には、収容部12は、内筒部13と外筒部14と立上り部15とを備えて構成されている。内筒部13は、上記リング状空間Sの内周側に位置する中空円筒状の部分であり、内筒部13がホース内周に位置するように、ホース2と口元部材1が組み立てられる。収容部12には、係合等の必要に応じて、突起や爪、突条や、スリット、穴、開口部などを設けても良い。
【0031】
さらに、口元部材の外筒部14には、貫通穴が設けられている。後述するインサート成形工程においては、この貫通穴を通じて収容部12のリング状空間Sに樹脂が射出される。
【0032】
口元部材1を構成する材料としては、ホース2の構成材料と比べ比較的硬質の合成樹脂が使用でき、特に熱可塑性樹脂、例えば、ポリプロピレン樹脂(PP)やポリアミド樹脂(PA)、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂(ABS樹脂)などが好適に使用できるほか、ゴム材料などの熱硬化性樹脂材料やウレタン樹脂などの反応硬化性樹脂材料を使用することもできる。
【0033】
さらに、ホースアセンブリAは、図3に示すように、口元部材付近(近傍)の領域X(第1の領域)と、ホース中央側の領域Y(第2の領域)とで、リップ2rの接合一体化の状態が異なるようにされている。ここで、より具体的には、領域X(第1領域)とは、ホースアッセンブリAにおいて、ホース2が口元部材内筒部13と重なり合う重合部から、前記重合部を越えて、ホース中央側の所定位置Zまでにわたる領域である。本実施形態においては、所定位置Zは、口元部材内筒部13の先端部から、ホース中央側にホース内周面の螺旋状凹溝の約2回転分隔たった位置とされている。
【0034】
そして、領域Y(第2領域)とは、具体的には、ホースアッセンブリAにおいて、領域Xを除いた領域をいい、ホース軸方向で所定位置Zよりもホース中央側の領域のことである。所定位置Zは、口元部材内筒部13の先端部よりも、ホース中央側に設けられる。好ましくは、所定位置Zは、口元部材内筒部13の先端部からホース中央側にホース内周面の螺旋状凹溝の0.3〜5回転程度隔たった位置とされ、より好ましくは、1〜3回転程度隔たった位置とされる。
【0035】
領域Yにおいては、ホース2が単体として製造された状態のまま、ホースのリップ2rは、その片側の側縁がホース内周の凸条に一体化されるとともに、リップ2rの反対側の側縁は、ホースには一体化されずに自由な側縁(すなわち自由縁)となって、自由縁の側では、リップと凸条とは互いにスライド可能とされている。
【0036】
そして、領域Xにおいては、ホースのリップ2rは、その両側の側縁が、ホース内周面の凸条に一体化されている。すなわち、領域Xにおいては、リップ2rにはもはやホースに一体化されていない自由縁はなくなっており、リップ2rとホース内周面の凸条は一体化されてスライドできなくなっている。図3中では、ホース単体では自由縁であったリップの先端部分が、ホース内周の凸条に一体化された部分2rxを、ハッチングして示している。
【0037】
次に、上記口元部材1とホース2から、図3に示すようなホースアッセンブリAを得る製造方法について具体的に説明する。
【0038】
口元部材1とホース2は、それぞれ、公知の方法によりあらかじめ製造しておく。
【0039】
口元部材との一体化に先立ち、ホース2の領域Xとなる部分で、リップ2rの自由縁をホースに一体化する処理を行う。リップの自由縁をホース内周の凸条などに一体化する処理は、接着剤や、熱融着などの方法により行うことができるが、ここでは、熱融着による処理工程の例を説明する。
【0040】
図8に示すように、処理すべきホースの端末を、加熱された処理治具Jに被せるように挿入する(図8(a))。処理治具Jは金属などにより形成され、ホース2の内周に勘合可能な円筒部を有する治具である。処理治具Jの円筒部は、上記領域Xに相当する長さに設けられる。また、処理治具Jには、ホースの過度の挿入を規制可能なリング状のつばが設けられることが好ましい。
【0041】
処理治具Jが、所定の位置までホース内部に入り込むと(図8(b))、処理治具Jの有する熱量により、ホース内周のリップ2rやホース内周の凸条が軟化・溶融して、リップ2rの自由縁であった部分が、ホース内周凸条に融着する。その後、処理治具Jをホース端部から引き抜くと、ホース端部の一部の領域(即ち第1領域X)において、リップの両側の側縁がホースの凸条に一体化され、他のホースの領域では、リップの片側の側縁が自由縁とされたようなホースが得られる(図8(c))。
【0042】
以上のように、リップの処理がなされたホースをインサート成形工程に供し、口元部材と一体化する。
【0043】
図9(a)、(b)に示すように、リップ2rの処理がなされたホース2の端部を、口元部材1の収容部のリング状空間Sに挿入する。ホースと口元部材を確実に接続するために、ホース端部が立上り部15に当接するまでホースを挿入することが好ましい。このとき、ホース端部のリップが処理された領域Xが、口元部材内筒部13とホース2が重なり合う部分を越えて、ホースの中央部側まで広がり、口元部材内筒部13の先端よりもホース軸方向の中央よりの部分にリップ2rの自由縁がホース凸条に融着された部分2rxが存在するようにされる。換言すれば、領域Xのホース軸方向長さが、ホースと口元部材内筒部とが重なり合う部分のホース軸方向長さよりも長くされる。
【0044】
ホース端部を口元部材収容部に挿入した状態で、インサート成形用の金型内部にセットする。インサート成形用の金型Mは、所定のホースアッセンブリ形状(図2に示す)が得られるように、ホース2と口元部材1を収容し、射出した樹脂が充填されるキャビティを形成可能にされた樹脂の射出成形用の金型である。必要に応じて、ホース2や口元部材1の内側に挿入されるコア金型を備えさせても良い。
【0045】
ホース端部と口元部材1を金型Mの内部にセットして型締めして、樹脂の射出が行われる(図9(c))。本実施形態においては、樹脂の射出は、外筒部14に設けられた貫通穴に対して開口するゲートGを通じて行われる。なお、樹脂の射出は、必要に応じ、他の部位から行うようにしても良い。
【0046】
ゲートGから射出された溶融樹脂は、貫通穴を通じて収容部12の内側へと到達し、ホース端部と収容部12の間の隙間に充填され、樹脂Pが固化すると、ホース端部と収容部(口元部材)とが接合一体化される。また、射出された樹脂Pは、収容部12に設けられた貫通穴の部分も埋めるように充填される。
【0047】
射出した樹脂Pの固化が完了した時点で、金型Mを開いて、ホース2と口元部材1とが一体化されたホースアッセンブリAを金型から取り出し(図9(d))、インサート成形工程が完了する。
【0048】
本発明の作用および効果について説明する。本発明によれば、口元部材の近傍の所定の領域Xにおいて、リップがその両側の側縁でホースに一体化されているので、口元部材付近でホースが伸縮しても、口元部材の内筒部13に、ホースのリップ2rが乗り上げることを未然に防止できる。従って、リップの乗り上げに起因するホースの流動抵抗の増加や、固体の引っかかりなどを防止あるいは抑制できる。
【0049】
また、ホースの他の部分(領域Y)ではリップの片側が自由縁とされているので、この領域においては、リップがホースの伸縮性を阻害することは無く、ホースの可撓性が維持できる。
【0050】
口元部材内筒部13へのリップ2rの乗り上げを確実に防止する観点からは、リップの両側がホース本体に一体化される領域Xは、ホースと口元部材が重なり合う重合部を超えて、ホース軸方向の中央側に向かって、少なくとも、ホース本体の凸条や凹溝の螺旋の1回転分にわたるように設けられることが好ましい。即ち、図3における所定位置Zは、口元部材内筒部13の先端から、少なくともホース本体の凹溝の螺旋1回転分以上、ホース軸方向でホース中央側に隔たった位置となるように設けられることが特に好ましい。
【0051】
そのようにすれば、ホース全周にわたって、口元部材内筒部に近接するリップ2rの側縁を、ホース本体に固定されたものとできるので、リップの口元部材内筒部への乗り上げが確実に予防される。
【0052】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の改変をして実施することができる。以下に本発明の他の実施形態について説明するが、以下の説明においては、上記実施形態と異なる部分を中心に説明し、同様である部分についてはその詳細な説明を省略する。また、以下に示す変形の形態は、その一部を互いに組み合わせて、あるいは、その一部を互いに置き換えて実施できる。
【0053】
本発明に使用可能なホースの変形例について説明する。図10には、ホースの変形例におけるホースの断面を示している。図10(a)の例のホース3おいては、ホース本体3bとリップ3rとは、それぞれ別々の樹脂条帯により形成されており、リップ3rの片側の側縁がホース本体3b内周面の凸条に接着一体化されている。また、リップ3rの反対側の側縁は、接着されていない自由縁として、隣接するリップの側縁に重なり合うように設けられている。このホース3を使用しても、ホース末端部で同様のリップの処理を行うようにすれば、上記第1実施形態と同様の効果が得られる。即ち、リップとホース本体の一体化の形態は特に限定されるものではなく、本実施形態のように接着により一体化されるものであっても良い。
【0054】
また、本実施形態において、図8に示したのと同様の処理により、ホース端部の所定の領域でリップの両端の一体化処理を行うと、リップ3rの自由縁であった側の側縁は、隣接するリップの固定縁である側の側縁と一体化されることになる。このように、リップの自由縁が固定される相手は、ホース本体である必要は無く、隣接するリップであっても良く、要するに、領域Xにおいては、リップに自由縁が無くなるように、リップの両側の側縁をホース内周の凸条および/またはリップに接続一体化すればよい。
【0055】
図10(b)の例のホース4おいては、ホース本体4bの構成は第1実施形態と同様であるが、リップ41,42が設けられる形態が異なっている。本実施形態において、リップ41,42は、1つの凹溝に対して2本のリップが対をなすように、互いに対向するように設けられている。そして、それぞれのリップ41,42は、凹溝の両側に隣接する凸条から突出するように一体に設けられている。そして、リップ41,42によって、ホース本体4b内周面の螺旋状凹溝が覆われている。リップ41、42のそれぞれの先端部(自由縁)は互いに重なり合うように設けられている。このホース4を使用しても、ホース末端部で同様のリップの処理を行うようにすれば、上記第1実施形態と同様の効果が得られる。すなわち、リップは、一本の凹溝に対し、対をなす複数本(例えば2本)のリップが設けられるものであっても良い。
【0056】
また、ホース本体の螺旋状の凹溝や凸条の形態も特に限定されるものではなく、例えば、螺旋の条数を、1条あるいは2条、3条とすることも可能である。
【0057】
そして、口元部材近傍の領域Xにおいてリップの自由縁をホースに一体に固定する固定手段も、上記実施形態において説明した熱融着に限定されず、他の方法により行うこともできる。例えば、ホース端部の領域Xとなる部分において、ホース内周面に溶融樹脂や接着剤を塗布する処理によっても、同様の効果が得られる。あるいは、ホース端部の領域Xとなる部分のホース内周面にフィルムを接着するようにしても良い。また、リップの自由縁の固定は、図3に示した第1実施形態のように、連続した螺旋状に一体化する形態であっても良く、リップの自由縁を断続的に固定する形態であっても良い。
【0058】
あるいは、ホース端部の領域Xとなる部分で、ホース本体内周面の凹溝とリップとで囲われた螺旋状空間に、接着剤や溶融樹脂を充填するようにしても良い。このようにしても、領域Xにおいてリップの両側の側縁をホースに一体化できる。
インサート成形を利用して口元部材とホースの一体化を行う場合には、インサート成形で射出される樹脂が、螺旋状空間に入り込むように構成すれば、インサート成形工程とリップの処理を同時に行うことができ、生産効率が高められる。
もちろん、螺旋状空間への接着剤等の充填は、口元部材との一体化工程に先立って行われるものであっても良い。
【0059】
本発明に使用可能な口元部材の変形例について説明する。ホースと一体化された際に、ホース内周面に配置される内筒部を備える限りにおいて、口元部材の具体的形状は特に限定されない。口元部材の内筒部や外筒部、立上り部も、スリットを設けたり係合用の突起等を設けたりするなど、その具体的形態を変更することができる。または、口元部材の外筒部や立上り部を省略することもできる。
【0060】
さらに、上記実施形態の説明では、あらかじめ口元部材を製造しておいて、ホースにインサート成形により一体化したホースアッセンブリの例について説明したが、口元部材をあらかじめ製造することなく、インサート成形を利用して、ホース端部に直接口元部材を成形一体化することもできる。すなわち、本発明では、口元部材がインサート成形工程によって形成されたものであってもよい。
【0061】
また、上記実施形態の説明においては、インサート成形を利用した口元部材とホースの一体化を例として説明したが、他の接続方法によって一体化を行っても良い。他の接続方法としては、例えば、口元部材とホースとを接着剤によって接着したり、熱融着により一体化したり、口元部材をホースにねじ込み等によって機械的に係合させて一体化する方法が例示できる。
【0062】
ホースの両側の端部のそれぞれで本発明の構成となるように口元部材を設け、ホースアッセンブリを構成しても良い。また、ホースの片側の端部のみで本発明の構成となるように口元部材を設け、ホースアッセンブリを構成しても良い。ホースの片側の端部のみにおいて本発明の構成となるようにする場合には、リップ(特にホースの最内周側に位置するリップ)の自由縁側に位置する側(即ちリップが突出する方向に位置する側)のホース端部で、本発明の構成となるようなホースアッセンブリとすることが好ましい。リップが口元部材内周部に乗り上げる課題は、こちらの側のホース端部で発生しやすいからである。
【0063】
また、上記実施形態では電気掃除機に使用されるホースアッセンブリについて説明したが、本発明は電気掃除機以外の他の技術分野、例えば、送風や吸引、給水、スラリ搬送といった可撓性ホースが利用される種々の分野にも応用できる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明にかかるホースアッセンブリは、例えば電気掃除機に使用でき、口元部材により接続操作が簡単になって、産業上の利用価値が高い。
【符号の説明】
【0065】
A ホースアッセンブリ
1 口元部材(接続管)
11 挿入部
12 収容部
S リング状空間
2 ホース
2b ホース本体
2r リップ
T 樹脂条帯
206 延長部
M インサート射出成形金型
P 射出された樹脂
3、4 ホース
3b、4b ホース本体
3r、41,42 リップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性のホース(2)と口元部材(1)を、一部が互いに重なり合うように一体化したホースアッセンブリ(A)であって、
口元部材(1)はホースの内周に配置される内筒部(13)を備え、
ホース(2)はホース本体(2b)とリップ(2r)とを含んで構成され、
ホース本体(2b)は、内周面に凹溝と凸条を螺旋状に備え、
リップ(2r)は、凹溝を覆うように凸条に一体化されて螺旋状に設けられると共に、
ホースが口元部材内筒部と重なり合う重合部から、前記重合部を越えて、ホース中央側の所定位置(Z)にわたる第1の領域(X)においては、前記リップはその両側の側縁が凸条および/またはリップに一体化され、
前記所定位置(Z)からホース中央側の第2の領域(Y)では、前記リップの片側の側縁はホースと一体化されていない側縁とされた、ホースアッセンブリ(A)。
【請求項2】
前記重合部を超えて、少なくともホース本体(2b)の凹溝の螺旋の1回転分にわたる領域を前記第1領域(X)とした請求項1に記載のホースアッセンブリ。
【請求項3】
1つの凹溝に対し、1つのリップ(2r)が設けられた請求項1に記載のホースアッセンブリ。
【請求項4】
1つの凹溝に対し、対をなすリップが設けられ、凹溝の両側の凸条にそれぞれのリップの側縁が一体化され、第1の領域において、対をなすリップ同士が一体化された請求項1に記載のホースアッセンブリ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−255518(P2012−255518A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−130045(P2011−130045)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(000108498)タイガースポリマー株式会社 (187)
【Fターム(参考)】