説明

ホース及びホース巻取り装置

【課題】 少なくとも二つの流路を有するとともに引張り力への耐性の大きいホースを提供する。
【解決手段】 流体送り用の第一の内側チューブ2と、流体送り用の第二の内側チューブ3と、前記第一及び第二の内側チューブ2,3を共に被覆するとともに該内側チューブ2,3よりも引張り力への耐性が大きい外側チューブ4と、を備えるホース1とする。流体は前記第一及び第二の内側チューブ2,3で送られる。一方、ホース1の引出し時や巻取り時の引張り力はすべて、引張り力への耐性の大きい前記外側チューブ4にかかり、内側チューブには引張り力はかからない。このため、内側チューブ2,3は、引張り力への耐性が小さいものでも破断の心配がない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホースとホース巻取り装置に関するものである。本発明に係るホース及びホース巻取り装置は、特に、ホースの引出し時や巻取り時にホースに対して大きな引張り力が作用する状況での使用に適するホース及びホース巻取り装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、ゴム製品用のポット式トランスファー成形機においては、ポット型内の仕込み材が成形前に加硫反応を起こしてしまわないように、仕込み材を金型のキャビティ内に供給するための前記ポット型を温水で冷却する必要がある。このため、ポット型内には冷却水(温水)の流路があらかじめ形成され、この流路の入口と出口には、冷却水供給用ホースと冷却水回収用ホースがそれぞれ接続される。
【0003】
ところで、成形後、金型を分離させる際には、清掃のため、金型とともに前記ポット型も成形機内から金型分解装置へと移動させることが好ましい。この場合、前記ポット型の移動により前記各ホースも移動するので、各ホースの引出し及び巻取りを可能にするため、ホース巻取り装置を設ける必要がある。
【0004】
しかし、前記ホース巻取り装置を前記各ホース毎に設けるのは不経済であるし、ホース巻取り装置を配設するためのスペースも広く必要となってしまい好ましくない。そこで、前記二本のホースを一台のホース巻取り装置で同時に巻き取ることが考えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記二本のホースを一台のホース巻取り装置で同時に巻き取るようにすると、各ホースに不自然な大きな負荷がかかり、ホースが切れてしまう等の問題がある。特に、前記各ホースを流れる温水の温度は高いので、ホースは引張り力を受けると元々破断しやすい環境にある。
【0006】
本発明は、前記のような事情に鑑みてなされたもので、少なくとも二つの流路を有するとともに引張り力への耐性の大きいホースと、該ホースの巻取り装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明に係るホースは、流体送り用の第一の内側チューブと、流体送り用の第二の内側チューブと、前記第一及び第二の内側チューブを共に被覆するとともに該内側チューブよりも引張り力への耐性が大きい外側チューブと、を備えることを特徴とする(請求項1)。
【0008】
本発明によれば、流体は前記第一及び第二の内側チューブで送られる。一方、ホースの引出し時や巻取り時の引張り力はすべて、引張り力への耐性の大きい前記外側チューブにかかり、内側チューブには引張り力はかからない。このため、内側チューブは、引張り力への耐性が小さいものでも破断の心配がない。
【0009】
限定はされないが、本発明に係るホースは、前記第一の内側チューブを流体送り出し用の流路とし、前記第二の内側チューブを流体戻し用の流路として、流体を循環させる必要がある場合に使用すると好適である。
【0010】
なお、前記外側チューブとしては、既存の油圧ホースを用いると、強度上もコスト上も好適である。
【0011】
本発明に係るホース巻取り装置は、前記ホースの前記外側チューブの一端部が固定されるとともに前記ホースが巻き付けられるドラムと、該ドラムと一体とされたドラム支軸と、該ドラム支軸を回動自在に支持するフレームと、該フレームと前記ドラムとの間に架設されて前記ホースの引出し時の前記ドラムの回転によって蓄力される巻取り用バネと、前記ドラム支軸上に配設されるとともに前記第一及び第二の内側チューブがそれぞれ連結される第一及び第二のチューブジョイントと、前記ドラム支軸内に形成されるとともに前記第一及び第二のチューブジョイントにそれぞれ連通する第一及び第二の軸内流路と、前記ドラム支軸の両端部に連結されるとともに前記第一及び第二の軸内流路とそれぞれ連通する第一及び第二の流体出入口を有する第一及び第二の回動ジョイントと、を備える(請求項2)。
【0012】
本発明に係るホース巻取り装置は、前記ホースの引出し先端部の前記外側チューブを、流体の供給及び回収が必要なポット型等の移動体に連結し、前記ホースの引出し先端部の前記第一及び第二の内側チューブを、前記移動体の流体入口と流体出口にそれぞれ連結して使用する。前記移動体が移動すると、前記ホースの前記引出し先端部が引張られる。これにより、前記ドラム支軸及び前記ドラムが前記フレーム上で遊転しながら前記ホースが引出され、同時に、前記巻取り用バネに巻取り力が蓄積される。引出される前記ホースには、前記巻取り用バネの働きにより引張り力が作用するが、この引張り力はすべて前記外側チューブにかかるので、前記内側チューブに破損は生じない。前記移動体が元の位置に向かって移動すると、前記巻取り用バネの作用で前記ホースが巻き戻される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の一形態に係るホースの断面図である。
【図2】本発明の実施の一形態に係るホース巻取り装置の一部破断正面図である。
【図3】図1のホース巻取り装置の左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の一形態について説明する。
図1に示すように、本発明の実施の一形態に係るホース1は、流体送り用の第一の内側チューブ2と、流体送り用の第二の内側チューブ3と、前記第一及び第二の内側チューブ2,3を共に被覆するとともに該内側チューブ2,3よりも引張り力への耐性が大きい外側チューブ4と、を備える。前記ホース1において、流体は前記第一及び第二の内側チューブ2,3で送られる。一方、前記ホース1を、図2に示すようなホース巻取り装置に装備して使用する場合において、前記ホース1の引出し時や巻取り時の引張り力はすべて、引張り力への耐性の大きい前記外側チューブ4にかかり、内側チューブ2,3には引張り力はかからない。このため、内側チューブ2,3は、引張り力への耐性が小さいものでも破断の心配がない。
【0015】
なお、前記外側チューブ4としては、それ自体が布等の補強材を有する既存の油圧ホースを用いると、強度上もコスト上も好適である。また、前記ホース1で送られる流体は、液体とすることも気体とすることもできる。前記内側チューブ2,3としては、プラスチックチューブを用いることができ、具体的には、流体の種類に応じた適切なプラスチックチューブを用いればよい。
【0016】
限定はされないが、前記ホース1は、前記第一の内側チューブ2を流体送り出し用の流路とし、前記第二の内側チューブ3を流体戻し用の流路として、流体を循環させる必要がある場合に使用すると好適である。
【0017】
前記ホース1の具体的な使用方法としては、例えば、前記背景技術の項で説明したように、ゴム製品用のポット式トランスファー成形機において、ポット型内に冷却水(温水)を循環させるためのホースとして用いることができる。
【0018】
図2に示すように、本発明の実施の一形態に係るホース巻取り装置5は、ゴム製品用のポット式トランスファー成形機において、ポット型内に冷却水(温水)を循環させるためのホースを巻き取るのに好適な巻取り装置である。
【0019】
図2のホース巻取り装置5は、前記ホース1が巻き付けられるドラム6と、該ドラム6と一体とされたドラム支軸7と、該ドラム支軸7を回動自在に支持するフレーム8と、該フレーム8と前記ドラム6との間に架設されて前記ホース1の引出し時の前記ドラム6の回転によって蓄力される巻取り用バネ9と、前記ドラム支軸7上に配設されるとともに前記第一及び第二の内側チューブ2,3がそれぞれ連結される第一及び第二のチューブジョイント10,11と、前記ドラム支軸7内に形成されるとともに前記第一及び第二のチューブジョイント10,11にそれぞれ連通する第一及び第二の軸内流路12,13と、前記ドラム支軸7の両端部に連結されるとともに前記第一及び第二の軸内流路12,13とそれぞれ連通する第一及び第二の流体出入口14,15を有する第一及び第二の回動ジョイント16,17と、を備える。
【0020】
前記フレーム8は、左側板8Lと右側板8Rを備え、前記ドラム支軸7を回動自在に支持する左軸受板18Lと右軸受板18Rが、前記左側板8Lと前記右側板8Rにそれぞれ固定されている。前記ドラム支軸7の両端部は前記左側板8Lと前記右側板8Rから外方へ突出しており、これらの突出した端部に、前記第一及び第二の回動ジョイント16,17がそれぞれ連結されている。これらの回動ジョイント16,17の前記第一及び第二の流体出入口14,15には、それぞれ、冷却水供給用ホース19と冷却水回収用ホース20が接続される。
【0021】
前記ホース1は、外側チューブ4の基端部4aが前記ドラム6に固定され、外側チューブ4の前記基端部4aから延び出した第一及び第二の内側チューブ2,3が、それぞれ、前記第一及び第二のチューブジョイント10,11に接続されて、ドラム6上に整列するように前記ドラム6に巻き付けられる。
【0022】
前記巻取り用バネ9は、一端部9aが前記ドラム6側に連結され、他端部9bが前記ドラム6の左側開口を横切って前記右軸受板18Rに連結される。そして、該右軸受板18Rに等角度間隔で取り付けられた四本のバネ力調整レバー21で前記右軸受板18Rを回転させ、前記巻取り用バネ9に予め適度な巻取り力を与えた状態で、前記右軸受板18Rが前記右側板8Rにボルト22で固定される。
【0023】
前記左側板8Lと前記右側板8Rの上部同士の間には、前記ドラム支軸7と平行な一対のガイドローラ23,24が架設されている。該ガイドローラ23,24は、図3に示すように、前記ホース1の引出し時及び巻戻し時にホース1を案内する。
【0024】
図3に示すように、前記ホース1の引出し先端部は、前記ガイドローラ23,24の間を通して引出され、外側チューブ4の先端部4bが、移動体としてのポット型25の側面に連結される。そして、外側チューブ4の前記先端部4aから延び出した第一及び第二の内側チューブ2,3が、前記ポット型25に予め形成されている冷却水(温水)の入口25aと出口25bに接続される。これにより、前記冷却水供給用ホース19で供給される冷却水は、前記第一の回動ジョイント16、前記ホース支軸7内の前記第一の軸内流路12、前記ホース1の前記第一の内側チューブ2の順に流れて、前記ポット型25の前記冷却水入口25aから前記ポット型25内の冷却水流路に流入する。冷却水は、該冷却水流路を流れつつ、前記ポット型25を冷却する。前記ポット型25との熱交換により当初よりも高温となった冷却水は、前記ポット型25の前記冷却水出口25bから出て、前記ホース1の前記第二の内側チューブ3、前記ホース支軸7内の前記第二の軸内流路13、前記第二の回動ジョイント17の順に流れて、前記冷却水回収用ホース20を通して回収される。
【0025】
成形工程終了後に、移動体としての前記ポット型25が移動すると、前記ホース1の外側チューブ4の先端部4bが引張られる。これにより、前記ドラム支軸7及び前記ドラム6が前記フレーム8上で遊転しながら前記ホース1が引出され、同時に、前記巻取り用バネ9に巻取り力が蓄積される。引出される前記ホース1には、前記巻取り用バネ9の働き等により引張り力が作用するが、この引張り力はすべて引張り力への耐性の大きい前記外側チューブ4が負担するので、前記内側チューブ2,3に破損は生じない。
【0026】
なお、前記ポット型25以外の移動体として、該ポット型と対にして使用されて上下動するプランジャ(押し型)を挙げることもできる。
【符号の説明】
【0027】
1 ホース
2 第一の内側チューブ
3 第二の内側チューブ
4 外側チューブ
6 ドラム
7 ドラム支軸
8 フレーム
9 巻取り用バネ
10 第一のチューブジョイント
11 第二のチューブジョイント
12 第一の軸内流路
13 第二の軸内流路
14 第一の流体出入口
15 第二の流体出入口
16 第一の回動ジョイント
17 第二の回動ジョイント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体送り用の第一の内側チューブと、流体送り用の第二の内側チューブと、前記第一及び第二の内側チューブを被覆するとともに該内側チューブよりも引張り力への耐性が大きい外側チューブと、を備える、ホース。
【請求項2】
請求項1に記載の前記ホースの前記外側チューブの一端部が固定されるとともに前記ホースが巻き付けられるドラムと、該ドラムと一体とされたドラム支軸と、該ドラム支軸を回動自在に支持するフレームと、該フレームと前記ドラムとの間に架設されて前記ホースの引出し時の前記ドラムの回転によって蓄力される巻取り用バネと、前記ドラム支軸上に配設されるとともに前記第一及び第二の内側チューブがそれぞれ連結される第一及び第二のチューブジョイントと、前記ドラム支軸内に形成されるとともに前記第一及び第二のチューブジョイントにそれぞれ連通する第一及び第二の軸内流路と、前記ドラム支軸の両端部に連結されるとともに前記第一及び第二の軸内流路とそれぞれ連通する第一及び第二の流体出入口を有する第一及び第二の回動ジョイントと、を備える、ホース巻取り装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−106582(P2011−106582A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−262750(P2009−262750)
【出願日】平成21年11月18日(2009.11.18)
【出願人】(509319111)株式会社ショージ (2)
【Fターム(参考)】