説明

ホース巻取装置

【課題】ホース巻取時のホースリールの自動停止において、ホースに付着した泥水等による作動不良を防止することができるホース巻取装置を提供する。
【解決手段】このホース巻取装置は、ホース22には、膨出部材22Aが設けられ、ホースガイド部30は、支持部31と、この支持部31の上部に摺動可能に設けられた摺動部32と、電磁クラッチ222を入り切りする巻取停止用スイッチ66と、ホース22の巻取時に、膨出部材22Aの摺動部32への当接により摺動部32が一方へ摺動するのに伴って一方に回動し、巻取停止用スイッチ66を切りにするとともに、摺動部の他方への摺動により他方に回動し、巻取停止用スイッチ66を入りにするリンク71とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力噴霧機等に用いられるホース巻取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
動力噴霧機のホース巻取装置としては、例えば、エンジンからの動力をプーリとベルト等による動力伝達機構を介して、ホースリールに伝達するとともに、動力伝達機構に電磁クラッチ等のクラッチを介在させ、ラジコン送信機からの信号によりこの電磁クラッチの入り切りの操作をして、ホースリールへの動力伝達の断接を行うものが知られている。このようなホース巻取装置においては、電磁クラッチを入りにすると、ホースリールにエンジンからの動力が伝達されてホースリールが回転駆動されて、ホースリールにホースが巻き取られる。
【0003】
この動力噴霧機のホース巻取装置において、ホース巻き取りの終わり間際まで電磁クラッチを入りにしてしまうと、ホースまたはホースの先端部に取り付けたノズルを持っている作業者が巻取装置に巻き込まれたりする虞や、あるいは巻取装置に損傷を与える虞があるため、そのようになる前に電磁スイッチを切り、ホースリールの回転駆動を停止させる自動停止装置(安全装置)が設けられているものが知られている。
【0004】
従来、このような動力噴霧機のホース巻取装置としては、例えば、特許文献1に記載のものがある。これは、ホース巻取時に、うっかりして停止操作が遅れても、掛止体(係止体)がガイド先を押し、圧縮ばねを押しながら、ガイド支持棒が支持穴の中を後方へ移動し、それによってガイド支持棒の後端に固定されたドックがスイッチを押し、電磁クラッチが切りとなるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−286570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような動力噴霧機のホース巻取装置にあっては、ホースリールの回転駆動を停止させる自動停止装置の構造として、ガイド支持棒が支持穴の中を往復移動して、ドッグがスイッチを押したり、離れたりして、電磁クラッチを入り切りするので、ガイド支持棒と支持穴との間にホースに付着した泥水が侵入して固着すると、ガイド支持棒の往復移動の抵抗となり、最悪の場合には作動しなくなる虞がある。
【0007】
本発明は、前記事情に鑑みて為されたもので、ホース巻取時のホースリールの自動停止において、ホースに付着した泥水等による作動不良を防止することができるホース巻取装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、請求項1に記載のホース巻取装置は、
ホース(22)が巻回されるホースリール(20)と、回転駆動手段(15)から前記ホースリール(20)への動力伝達経路に介装され動力を入切可能なクラッチ(222)と、前記ホース(22)が前記ホースリール(20)から出入りするのを案内するホースガイド部(30)とを備えているホース巻取装置であって、
前記ホース(22)には、係止部(22A)が設けられ、
前記ホースガイド部(30)は、支持部(31)と、この支持部(31)の上部に摺動可能に設けられた摺動部(32)と、前記クラッチ(222)を入り切りするスイッチ(66)と、前記ホース(22)の巻取時に、前記係止部(22A)の前記摺動部(32)への当接により前記摺動部(32)が一方に摺動するのに伴って一方に回動し、前記スイッチ(66)を切りにするとともに、前記摺動部(32)が他方に摺動するのに伴って他方に回動し、前記スイッチ(66)を入りにする回動部材(71)とを備えていることを特徴とする。
【0009】
請求項1に記載の発明においては、ホースの巻取時に、係止部の摺動部への当接により摺動部が一方に(ホースの引き込み側に)摺動するのに伴って回動部材が一方に回動して、スイッチを切りにすることにより、クラッチを切りにし、これによりホースリールの回転を停止させることができる。このように、本発明においては、回動部材が回動してスイッチを入り切りするので、ホースに付着した泥水等による固着による作動不良をなくなり、信頼性の高い安全装置になる。
【0010】
また、請求項2に記載のホース巻取装置は、請求項1に記載の発明において、前記支持部(31)の上端部に設けられた平面部を、前記摺動部(32)の下端部に設けられた平面部が摺動することにより、前記支持部(31)に対して前記摺動部(32)が摺動し、前記回動部材(71)は、前記支持部(31)と前記摺動部(32)と間に回動自在に設けられたリンク(71)であることを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明においては、支持部の上端部に設けられた平面部を摺動部の下端部に設けられた平面部が摺動することにより、支持部に対して摺動部が摺動するので、摺動部の摺動を安定的に行うことができる。しかも、この安定して摺動する摺動部と支持部との間に設けられたリンクがスイッチを入り切りするため、スイッチを確実に動作させることができる。このため、作動不良のない、信頼性のより高いものにすることができる。
【0012】
また、請求項3に記載のホース巻取装置は、請求項1または請求項2に記載の発明において、前記ホースガイド部(30)には、前記回動部材(71)が前記スイッチ(66)を切りにした状態を維持する維持手段(80)が設けられていることを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載の発明においては、回動部材がスイッチを切りにした状態を維持する維持手段が設けられているので、不用意にスイッチが入りの状態になるのを防止することができる。
【0014】
なお、上記における括弧内の符号は、図面において対応する要素を便宜的に表記したものであり、したがって本発明は図面上の記載に限定されるものではない。これは、「特許請求の範囲」の記載についても同様である。
【発明の効果】
【0015】
本発明のホース巻取装置によれば、ホース巻取時のホースリールの自動停止する際に、ホースに付着した泥水等による作動不良を防止することができる
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態に係るホース巻取装置を備えた動力噴霧機を示す図であって、左側面図である。
【図2】同、右側面図である。
【図3】同、ホースガイド部の右側面図である。
【図4】同、ホースガイド部の左側面図である。
【図5】同、動力伝達系統図である。
【図6】同、電気配線図である。
【図7】同、ホース巻き取り停止時のホースガイド部の右側面図である。
【図8】同、ホース巻き取り停止時のホースガイド部の左側面図である。
【図9】同、ホース引き出し時のホースガイド部の右側面図である。
【図10】同、ホース引き出し時のホースガイド部の左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態に図面を参照しつつ説明する。
図1から図10は、本発明の実施の形態に係るホース巻取装置を備えた動力噴霧機を示す図である。
図1および図2に示すように、この動力噴霧機においては、機体フレーム11に、前輪として駆動輪12、後輪としてキャスタ13が取り付けられ、駆動輪12の駆動回転により自立走行可能となっている。機体フレーム11の後端側上部にはハンドル14が形成されており、作業者がハンドル14を把持してキャスタ13の操舵角を変えることにより動力噴霧機の操舵を行うことができるようになっている。ハンドル14には、走行レバー14Aおよびブレーキレバー14Bが取り付けられている。機体フレーム11の前後方向前半部には、エンジン(回転駆動手段;駆動源)15とポンプ16が設置されている。なお、図1、図2において、符号11A、11B、11C,11Dはそれぞれ、カバーである。
【0018】
機体フレーム11の前後方向後半部には、ホースリール20がこのホースリール20の両端部に固定された円筒状の回転軸21を中心に回転可能に設置されており、このホースリール20には、ホース22が巻回されている。回転軸21は、機体フレーム11に回転可能に支持されている。ホース22の先端部には、ノズル(図示せず)が取り付けられ、このノズルから所要距離離れた位置に略紡錘形の膨出部材(膨出部;係止部)22Aが固定されている。
【0019】
機体フレーム11の上部には、ホースリール20の前後方向の少し後側の位置に、往復移動体23が設置されており、この往復移動体23は、ホース22がホースリール20に整列巻されるように、機体フレーム11の左右方向に回転可能に設けられた螺旋軸(ナピア螺旋軸)24によって機体フレーム11の左右方向(ホースリール20の軸線方向)に往復移動するようになっている。すなわち、往復移動体23には、爪部25が設けられており、この爪部25が螺旋軸24の溝部に係合されることにより、螺旋軸24の回転に伴って往復移動するようになっている。往復移動体23は、螺旋軸24と、この螺旋軸24に平行に固定された支持軸26によって、機体フレーム1の左右方向に往復移動可能に支持されている。螺旋軸24および支持軸26の両端部はそれぞれ、機体フレーム11の上部の左右に設置された左右一対のステー(支持部材)11Eに支持されている。
往復移動体23の中央部には、一対のガイドローラ27が設けられており、これらのガイドローラ27の間を通ってホース22がホースリール20から上方に移動するようになっている。
【0020】
往復移動体23の上部には、上方に延びる円筒状の筒部28が設けられており、この筒部28にホースガイド部30が鉛直軸周りに回動可能に設けられている。このホースガイド部30は、鉛直軸周りに回動可能な支持部31と、この支持部31に前後方向に摺動可能に設けられた摺動部32とを備えている。支持部31は、鉛直軸周りに回動可能な基部41と、この基部41に揺動可能に設けられた揺動部42とを備えている。
【0021】
図3および図4は、ホースガイド部30を示す図である。
なお、このホースガイド部30においては、後述する大径のローラ94が設置されている側(ホース22がホースガイド部30から出て行く側(引き出し側))を前側と記載する。
【0022】
図3および図4に示すように、支持部31の基部41は、円筒状の筒部43と、筒部43の上端部の外側に嵌合されて固定された基部板部44とを備えている。基部板部44は、正面視においてコ字状に形成されている。筒部43は、上端部分に形成された外径が大きい大径部45とそれより下側の部分に形成された小径部46とを備えている。基部板部44の各側板部47はそれぞれ、略中央部を境に高さが異なっている。筒部43の小径部46が往復移動体23の筒部28の内側に鉛直軸周りに回動可能に嵌入され、そして大径部45の下端面が筒部28の上端面に当接されており、これにより往復移動体23の上部に、ホースガイド部30が鉛直軸周りに回動可能に支持されている。
【0023】
揺動部42は、間隔をおいて平行に立設された左右一対の揺動板(支持板)51を備えている。両揺動板51は、これらの間の配置されたパイプ52およびステー53の両端部にそれぞれ固定されており、これにより一体的に揺動するようになっている。両揺動板51の下端部が基部41の基部板部44内に挿入されている。そして、基部板部44の両側板部47の間に配置されたカラー(図示せず)の両端部の外側に、両揺動板51の下端部の略中央部に形成された各貫通孔が挿入され、さらにカラーの内側および両側板部47の高い板部分の上端部でかつ側板部47の中央寄りに形成された各貫通孔に、ボルト55が挿入されて、このボルト55とナット56が締め付けられることにより、ボルト(揺動軸)55を中心に揺動部42が揺動するようになっている。両側板部47の内側のカラーの部分の外側には、小径のローラ57が回転可能に挿入されている。また、両側板部47の低い板部分には、側板部47の端部の位置に、貫通孔が形成されており、各貫通孔にボルト58が挿入され、このボルト58がナット59により両側板部47に固定されている。
【0024】
両揺動板51の下端は、後端部分(ボルト58側部分)が水平に形成され、この水平部の前端から前側に向かうにつれて漸次上側に傾斜する曲面に形成されている。
また、両揺動板51の上端は、前側から後側に向かうにつれて漸次下側に傾斜する傾斜面に形成されている。各揺動板51の上端の前側部分および後側部分はそれぞれ、外側の側方に略90度折り曲げられている。これらの各折り曲げ部61の上面は、前側から後側に向かうにつれて漸次下側に傾斜する傾斜面となっており、前側部分および後側部分の各折り曲げ部61は、途中が欠落した一連の傾斜面を形成している。各折り曲げ部61の上面にはそれぞれ、摩擦係数の小さい材料からなる平板上の摺動プレート62がリベット63により固定されている。各摺動プレート62の上面は、摺動面としての平面部となっている。
【0025】
また、一方の揺動板51の外側側面には、中央部の少し上側の位置に、スイッチ調整板64がビス65により取り付けられ、このスイッチ調整板64に巻取停止用スイッチ(スイッチ)66がビス67により取り付けられている。スイッチ調整板64には、長穴が形成されており、スイッチ調整板64の取付位置を調整することにより、このスイッチ調整板64に固定された巻取停止用スイッチ66の取付位置を調整できるようになっている。巻き取り停止用スイッチ66は、揺動板51にビス68により取り付けられたカバー69により覆われている。
【0026】
また、一方の揺動板51の外側側面には、巻取停止用スイッチ66の前側に、リンク(回動部材)71が回動可能に設けられている。すなわち、一方の揺動板51の外側側面の上端部の前後方向の中央部から少し前側の位置に軸72が水平に延びるように設けられ、この軸72にリンク71の中央部に設けられた筒部が回動可能に挿入され、これによりリンク71が軸(回動軸)72を中心に回動するようになっている。軸72からのリンク71の抜け止めのために、軸72の先端部に形成された雄ネジに袋ナット73が螺合されている。リンク71の下端部は、巻取停止用スイッチ66側に曲折しており、リンク71が反時計方向に回動したときに、巻取停止用スイッチ66の作動片を押して巻取停止用スイッチ66が入り(ON)になるようになっている。
【0027】
また、他方の揺動板51の外側側面には、リンク75が回動可能に設けられている。すなわち、他方の揺動板51の外側側面には、軸72と同軸となる位置に軸76が水平に延びるように設けられ、この軸76にリンク75の下端部に設けられた筒部が回動可能に挿入され、これによりリンク75が軸(回動軸)76を中心に回動するようになっている。軸76からのリンク75の抜け止めのために、軸76の先端部に形成された雄ネジに袋ナット77が螺合されている。リンク71の上端部は、外側側方に曲折しており、この曲折部78の前方側端部と、軸76の少し下側の他方の揺動板51に螺合されて水平に延びるように設けられたボルト79との間には、引張コイルばね(付勢手段;維持手段)80が設けられている。
【0028】
前記ステー53は、L字状に形成され、両揺動板51の上端部の前後方向後端部に設けられており、その水平部81が両揺動板51の後端から後方に突出している。この水平部81の先端部に、ボルト58との間に引張コイルばね(付勢手段)82が設けられており、これにより両揺動板51したがって揺動部42が後方に付勢されている。
また、ステー53の水平部81の先端部の切欠に、ブレーキワイヤ(ブレーキ解除手段)83のアウタ84の一端部が固定されるとともに、ボルト58にインナ85の一端部が固定されている。
【0029】
前記摺動部32は、間隔をおいて平行に設けられた一対の摺動板86を備えている。両摺動板86の上端は、前側から後側に向かうにつれて漸次下側に傾斜する傾斜面に形成されている。各摺動板86の下端の前側部分および後側部分はそれぞれ、外側の側方に略90度折り曲げられている。これらの各折り曲げ部87の下面は、前側から後側に向かうにつれて漸次下側に傾斜する傾斜面となっており、前側部分および後側部分の各折り曲げ部87は、途中が欠落した一連の傾斜面を形成している。前後の各折り曲げ部87の下面はそれぞれ、前後の各折り曲げ部61の前後の摺動プレート62の上面に摺動可能に接している。各折り曲げ部87の下面は、摺動面としての平面部となっている。折り曲げ部87の下面の傾斜角度と折り曲げ部61の上面の傾斜角度は、同じに形成されている。
【0030】
一方の揺動板51の外側側面に設けられたリンク71は、前後の両折り曲げ部61の間の隙間および前後の両折り曲げ部87の間を、上方に延びている。リンク71の上端部は、一方の揺動板51と同じ側の摺動板86の外側側面に回動可能に取り付けられている。すなわち、この摺動板86の外側側面の中央部に軸88が水平に延びるように設けられ、この軸88にリンク71の上端部に設けられた筒部が回動可能に挿入され、これによりこの摺動板86が前後に摺動すると、リンク71が軸72を中心に回動するようになっている。軸88からのリンク71の抜け止めのために、軸88の先端部に形成された雄ネジに袋ナット89が螺合されている。
【0031】
また、他方の揺動板51の外側側面に設けられたリンク75は、前後の両折り曲げ部61の間の隙間および前後の両折り曲げ部87の間を、上方に延びている。リンク75の上端部は、他方の揺動板51と同じ側の摺動板86の外側側面に回動可能に取り付けられている。すなわち、この摺動板86の外側側面の中央部には、軸88と同軸となる位置に軸91が水平に延びるように設けられ、この軸91にリンク75の上端部に設けられた筒部が回動可能に挿入され、これによりこの摺動板86が前後に摺動すると、リンク75が軸76を中心に回動するようになっている。軸91からのリンク75の抜け止めのために、軸91の先端部に形成された雄ネジに袋ナット92が螺合されている。
【0032】
両摺動板86の間には、前端部の位置に、支持軸93が固定されており、この支持軸93には、大径のローラ94が回転可能に固定されている。このローラ94は、略後半分が両摺動板86の間および両揺動板51の間に位置し、略前半分がこれらの両摺動板86および両揺動板51から前方に突出している。
【0033】
また、両摺動板86の間には、巻取ストッパ95が支持軸93に支持されて取り付けられている。巻取ストッパ95は、前側から下側にかけて開口した箱状に形成されており、巻取ストッパ95は、ローラ94の上側から後側にかけて略4分の1程度を覆うように設けられている。巻取ストッパ95の前側は、上側に向かうにつれて漸次後側に向かうように傾斜している。巻取ストッパ95の後端部の両側壁はそれぞれ、両摺動板86に固定されている。巻取ストッパ95の前側における巻取ストッパ95とローラ94との間の開口は、ホース22に設けられた膨出部材22Aが通過できない大きさになっており、ホース22の巻取時に、巻取ストッパ95に当接し、巻取ストッパ95が押されるようになっている。
【0034】
ホース22は、基部41の筒部43内を通って、揺動部42の両揺動板51の間および摺動部32の両摺動板86の間をローラ57およびローラ94に案内されつつ通過し、巻取ストッパ95とローラ94との間を通過する。
【0035】
図5は、動力伝達系統図である。
同図に示すように、エンジン15の出力軸201に装着されたプーリ202とポンプ16の駆動軸203に装着されたプーリ204との間には、ベルト205が巻回され、エンジン15の出力軸201からポンプ16の駆動軸203に回転動力を伝達する。ベルト205には、このベルト205の緊張状態および弛緩状態を切替えるテンションクラッチ206が設けられており、エンジン15からポンプ16への回転動力の伝達の入りおよび切りを行う。テンションクラッチ206の操作は、ポンプクラッチレバー206Aで行われる(図1参照)。
【0036】
また、エンジン15の出力軸201に装着されたプーリ207と中間軸208に装着されたプーリ209との間には、ベルト211が巻回され、さらに中間軸208に装着された歯車212と車軸(駆動軸)213に装着された歯車214とが噛み合わされ、これによりエンジン15の出力軸201から車軸213に装着された左右の駆動輪12に回転動力を伝達する。ベルト211には、このベルト211の緊張状態および弛緩状態を切替えるテンションクラッチ215が設けられており、エンジン15から左右の駆動輪12への回転動力の伝達の入りおよび切りを行う。車軸213の両端部にはそれぞれ、走行ブレーキ216が装着されている。テンションクラッチ215および走行ブレーキ216の操作はそれぞれ、ハンドル14に設けられた走行レバー14Aおよびブレーキレバー14Bで行われる。
【0037】
図1にも示すように、ポンプ16の駆動軸203の他の端部に装着されたプーリ217と中間軸218に装着されたプーリ219との間には、ベルト221が巻回されている。この中間軸218には、巻取用電磁クラッチ(クラッチ)222が装着されている。巻取用電磁クラッチ222のスプロケット223とホースリール20の回転軸21に装着されたスプロケット224との間には、チェーン225が巻回されている。これにより、ポンプ16の駆動軸203の回転動力はホースリール20の回転軸21に伝達される。巻取用電磁クラッチ222は、ポンプ16の駆動軸203からホースリール20の回転軸21への回転動力の伝達の入りおよび切りを行う。
【0038】
回転軸21に装着されたスプロケット226と螺旋軸24の端部に装着されたスプロケット227との間には、チェーン228が巻回されており、ホースリール20の回転軸21の回転と連動して螺旋軸24が回転し、この螺旋軸24に爪部25で係合されたホースガイド部30が機体フレーム11の左右方向に延びる螺旋軸24に沿って往復動するようになっており、これによりホース22がホースリール20に整列に巻き取られるようになっている。
【0039】
また、回転軸21には、ブレーキドラム(ブレーキ)231が装着されており、このブレーキドラム231は、ブレーキアーム232を、このブレーキアーム232とホースガイド部30とを連結しているブレーキワイヤ83のインナ85により操作することにより、作動される。このブレーキドラム231は、通常は、ブレーキアーム232と機体フレーム11との間に設けられた引張コイルばね(付勢手段)241によりブレーキ入りになるように付勢されており、ブレーキワイヤ83のインナ85で引張コイルばね241の付勢力に抗してブレーキアーム232を引張コイルばね241の付勢方向と逆に引っ張ることにより、ブレーキ切りの状態になるようになっている(図1参照)。
【0040】
図6は、電気配線図である。
同図に示すように、送信機付きリモコン251は、作業者が携帯し、動力噴霧機から離れた場所へ移動して操作される。送信機付きリモコン251には、巻取ボタン252およびエンジン停止ボタン253が設けられている。受信機255は、機体フレーム11に設置されている。
【0041】
この受信機255は、リモコン251の巻取ボタン252を押すと、巻取用電磁クラッチ222を入り(ON)にして、エンジン15の回転動力をホールリール20の回転軸21に伝達するようになっている。巻取用電磁クラッチ222は、機体フレーム11に設置された手動式の巻取スイッチ256でも入り切りできるようになっている(図1参照)。巻取用電磁クラッチ222と受信機255および手動式の巻取スイッチ256との間には、ホースガイド部30に設けられた巻取停止用スイッチ66が介在されており、巻取停止用スイッチ66が切りになると、巻取用電磁クラッチ222を切り(OFF)にして、エンジン15からホールリール20の回転軸21への回転動力の伝達を遮断するようになっている。
【0042】
また、受信機255は、リモコン251のエンジン停止ボタンを押すと、エンジン15のエンジン停止ユニット(ESSユニット)257を作動させてエンジン停止スイッチ258を入り(ON)にし、エンジン15を停止させるようになっている。
【0043】
このホース巻取装置を備えた動力噴霧機において、ホース22をホースリール20に巻き取っている時に、巻き取りが終わりに近づくと、通常は、作業者がリモコン251の巻取ボタン252または手動式の巻取スイッチ256を切りにして、巻取用電磁クラッチ222を切りにし、ホース22の巻き取りを停止する。
【0044】
しかし、ホース巻き取りの停止操作が遅れたり、あるいは故障により巻き取りが停止しないなどの場合には、図7および図8に示すように、ホースガイド部30の摺動部32の巻取ストッパ95にホース22に設けられた膨出部材22Aが当接し、この巻取ストッパ95後方に押す。巻取ストッパ95が後方に押されると、揺動部42の両揺動板51の前側部分および後側部分の各折り曲げ部61の各摺動プレート62上を、両摺動板86の前側部分および後側部分の各折り曲げ部87が摺動して後方に移動し、これにより摺動部32が揺動部42に対して後方に移動する。
【0045】
この摺動部32の後方への移動に伴って、左右のリンク75およびリンク71がそれぞれ、引張コイルばね80の付勢力に抗して、軸76および軸72を中心に各摺動板86の外側側面に向かって見て反時計方向および時計方向に回動し、リンク71の下方の端部が巻取停止用スイッチ66の作動片から離れて巻取停止用スイッチ66が切りになり、これにより巻取用電磁クラッチ222を切りになって、ホース22の巻き取りが停止する。
【0046】
この場合、引張コイルばね80の付勢力が軸76、72より前側から後側に移動するので、左右のリンク75およびリンク71が巻取停止用スイッチ66の作動片から離れた状態に維持され、これにより巻取停止用スイッチ66が切りの状態(巻取用電磁クラッチ222が切りの状態)に維持されるとともに、摺動部32が後方の位置に維持される。
【0047】
また、揺動部42の両揺動板51が引張コイルばね82の付勢力によりボルト55を中心に後方に揺動し(回動し)、基部41の基部板部4の底板部に、両揺動板51の下端の水平部(後端部分)が当接する。そうすると、図1にも示すように、ブレーキワイヤ83のインナ85がブレーキアーム232を引っ張らなくなるので、引張コイルばね241の付勢力によりブレーキアーム232の先端部が下側(逆方向)に付勢され、これによりブレーキドラム231が作動し、ブレーキ入りとなり、ホースリール20の回転軸21が制動される。巻取用電磁クラッチ222を切りになって、ホース22の巻き取りが停止しても、ホースリール20は慣性により回転しようとするが、ブレーキドラム231により回転軸21が制動させることにより、ホースリール20の回転が停止する。
【0048】
この図7および図8の巻取停止状態を解除するためには、図9および図10に示すように、ホース22を手で引き出す。そうすると、ホース22がローラ94を前方に引っ張る。ローラ94が前方に引っ張られると、揺動部42の両揺動板51の前側部分および後側部分の各折り曲げ部61の各摺動プレート62上を、両摺動板86の前側部分および後側部分の各折り曲げ部87が摺動して前方に移動し、これにより摺動部32が揺動部42に対して前方に移動する。
【0049】
この摺動部32の前方への移動に伴って、左右のリンク75およびリンク71がそれぞれ、引張コイルばね80の付勢力に抗して、軸76および軸72を中心に各摺動板86の外側側面に向かって見て時計方向および反時計方向に回動し、リンク71の下方の端部が巻取停止用スイッチ66の作動片を押して巻取停止用スイッチ66が入りになり、これにより巻取用電磁クラッチ222を入りになって、ホース22の巻き取りが可能な状態になる。
【0050】
この場合、引張コイルばね80の付勢力が軸76、72より後側から前側に移動するので、左右のリンク75およびリンク71が巻取停止用スイッチ66の作動片を押した状態に維持され、これにより巻取停止用スイッチ66が入りの状態に維持されるとともに、摺動部32が前方の位置に維持される。
【0051】
また、揺動部42の両揺動板51が引張コイルばね82の付勢力に抗してボルト55を中心に前方に揺動し(回動し)、基部41の基部板部4の底板部に、両揺動板51の前端部が当接する。そうすると、図1にも示すように、引張コイルばね241の付勢力に抗して、ブレーキワイヤ83のインナ85がブレーキアーム232を上側に引っ張るので、ブレーキアーム232の先端部が上側に引っ張られ、これによりブレーキドラム231が作動しなくなり、ブレーキ切りとなり、ホースリール20の回転軸21が自由に回転できるようになる。
【0052】
ホース22を引き出すのを止めると、揺動部42の両揺動板51が引張コイルばね82の付勢力によりボルト55を中心に後方に揺動し(回動し)、基部41の基部板部44の底板部に、両揺動板51の下端の水平部(後端部分)が当接する。これにより、引張コイルばね241の付勢力によりブレーキアーム232の先端部が下側(逆方向)に付勢されて、ブレーキドラム231が作動し、ブレーキ入りとなり、ホースリール20の回転軸21が制動される。
【0053】
しかし、引張コイルばね80の付勢力が軸76、72より後側から前側に移動しているので、左右のリンク75およびリンク71が巻取停止用スイッチ66の作動片を押した状態に維持されて、巻取停止用スイッチ66が入りの状態に維持されるとともに、摺動部32が前方の位置に維持される。したがって、この状態で、作業者は、リモコン251の巻取ボタン252または手動式の巻取スイッチ256を入りにして、巻取用電磁クラッチ222を入りにし、ホース22を巻き取ることができる。
【0054】
このように構成されたホース巻取装置を備えた動力噴霧機にあっては、ホース22の巻取時に、膨出部材22Aの摺動部32の巻取ストッパ95への当接により摺動部32が後方に(ホースの引き込み側に)摺動するのに伴ってリンク71が一方に回動して、巻取停止用スイッチ66を切りにすることにより、電磁クラッチ222を切りにし、これによりホースリール20の回転を停止させることができる。このように、本実施の形態においては、リンク71が回動して巻取停止用スイッチ66を入り切りするので、ホース22に付着した泥水等による固着による作動不良をなくなり、信頼性の高い安全装置にすることができる。
【0055】
さらに、支持部31の上端部に設けられた各摺動プレート62の上面が平面部となっているとともに、摺動部32の下端部に設けられた各折り曲げ部87の下面が平面部になっており、支持部31のこれらの平面部上を摺動部32の平面部が摺動することにより、支持部31に対して摺動部32が摺動するので、摺動部の摺動を安定的に行うことができる。しかも、この安定して摺動する摺動部32と支持部31との間に設けられたリンク71が巻取停止用スイッチ66を入り切りするので、巻取停止用スイッチ66を確実に動作させることができる。このため、作動不良のない、信頼性のより高いものにすることができる。
【0056】
また、リンク71が巻取停止用スイッチ66を切りにした状態を維持する引張コイルばね80が設けられているので、不用意に巻取停止用スイッチ66が入りの状態になるのを防止することができる。
【0057】
さらには、ホース22を引き出すと、摺動部32が前方に(ホースの引き出し側に)摺動するのに伴ってリンク71が他方に回動して巻取停止用スイッチ66を入りにすることにより、電磁クラッチを入り状態にするので、ホース22の巻き取りが可能な状態になる。また、ホース22を引き出すと、揺動部42がホース22の引き出し側に揺動するのに伴ってブレーキワイヤ83がブレーキドラム231を解除するので、ホースリール20が回転可能になる。このように、本実施の形態においては、ホース22を引き出すという簡易な動作で、ブレーキドラム231の制動状態にあり不用意なホースリール20の回転を防止されている巻き取り停止状態から巻き取り可能な状態に、簡単に復帰することができる。
【0058】
なお、上述の実施の形態では、係止部としての膨出部材22Aに略紡錘形のものを用いたが、これに代えて略球形その他の形状のものを用いることもできる。膨出部材22A(係止部)は、要は巻取ストッパ95に当接し、巻取ストッパ95が押されるようになっていれば良い。
【0059】
また、上述の実施の形態では、折り曲げ部61の上面に摩擦係数の小さい材料からなる摺動プレート62を設けるようにしたが、折り曲げ部87の下面に摺動プレート62を設けるようにしてもよいし、あるいは上下面の両方に摺動プレート62を設けるようにしてもよい。
【0060】
また、上述の実施の形態では、クラッチとして電磁クラッチ222を用いたが、油圧クラッチ等の他のクラッチを用いるようにしてもよい。
また、上述の実施の形態では、揺動部42がホース22の引き出し側に揺動するのに伴ってブレーキドラム231の制動状態を解除するのに、ブレーキワイヤ83を用いたが、これに限らず、ブレーキ解除手段として電磁ブレーキとスイッチ等を用いて構成するようにしても良い。
【0061】
また、上述の実施の形態では、動力によるホース送り出し機構を備えていないホース巻取装置について説明したが、動力によるホース送り出し機構を備えてホース送り出しも動力で行うような場合にも、本発明を適用することができる。
【0062】
さらに、上述の実施の形態では、本発明に係るホース巻取装置を動力噴霧機に用いた場合について説明したが、これに限らず、本発明は、カーペットスプレーヤ等のホース巻取装置や、さらには給油装置等可撓性管材や線材を巻き取る他の機器にも適用することができる。
【符号の説明】
【0063】
20 ホースリール
22 ホース
22A 膨出部材(膨出部;係止部)
30 ホースガイド部
31 支持部
32 摺動部
66 巻取停止用スイッチ(スイッチ)
71 リンク(回動部材)
80 引張コイルばね(付勢手段;維持手段)
222 電磁クラッチ(クラッチ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホース(22)が巻回されるホースリール(20)と、回転駆動手段(15)から前記ホースリール(20)への動力伝達経路に介装され動力を入切可能なクラッチ(222)と、前記ホース(22)が前記ホースリール(20)から出入りするのを案内するホースガイド部(30)とを備えているホース巻取装置であって、
前記ホース(22)には、係止部(22A)が設けられ、
前記ホースガイド部(30)は、支持部(31)と、この支持部(31)の上部に摺動可能に設けられた摺動部(32)と、前記クラッチ(222)を入り切りするスイッチ(66)と、前記ホース(22)の巻取時に、前記係止部(22A)の前記摺動部(32)への当接により前記摺動部(32)が一方に摺動するのに伴って一方に回動し、前記スイッチ(66)を切りにするとともに、前記摺動部(32)が他方に摺動するのに伴って他方に回動し、前記スイッチ(66)を入りにする回動部材(71)とを備えていることを特徴とするホース巻取装置。
【請求項2】
前記支持部(31)の上端部に設けられた平面部を、前記摺動部(32)の下端部に設けられた平面部が摺動することにより、前記支持部(31)に対して前記摺動部(32)が摺動し、
前記回動部材(71)は、前記支持部(31)と前記摺動部(32)と間に回動自在に設けられたリンク(71)であることを特徴とする請求項1に記載のホース巻取装置。
【請求項3】
前記ホースガイド部(30)には、前記回動部材(71)が前記スイッチ(66)を切りにした状態を維持する維持手段(80)が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のホース巻取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−76882(P2012−76882A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−223663(P2010−223663)
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【出願人】(000141174)株式会社丸山製作所 (134)
【Fターム(参考)】