説明

ホームゲートウェイ装置

【課題】不具合検出処理の結果の誤りを防ぐと共に、ユーザによる迅速な不具合の解決を可能にすることのできるホームゲートウェイ装置を得る。
【解決手段】スループット不具合判定部103は、WAN側通信速度測定部101によるWAN側の通信速度の複数回の測定結果からWAN側のスループットの統計値を得ると共に、LAN側通信速度測定部102によるLAN側の通信速度の複数回の測定結果からLAN側のスループットの統計値を得る。そして、これらスループットの統計値に基づいて、WAN側のスループットに比べてLAN側で所定のスループットが得られていない場合はLAN側に不具合が発生していると判定する。警告表示部104は、スループット不具合判定部103の判定結果が不具合ありであった場合、警告表示を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、WAN側のネットワークとLAN側のネットワークとを相互に接続するホームゲートウェイ装置に関し、特に、その障害検出に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ホームゲートウェイを通過したパケット数を計算すると共に、エンド端末で受信したパケット数を計算し、通過パケット数と受信パケット数とが一致するか否かを比較することでLAN側の不具合を検出するようにしたものがあった(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、WAN側機器の物理層やネットワーク層への接続状態からWAN側の不具合箇所を検出してサポートセンタに通知し、かつ、IP端末に対するネットワーク層への接続情報に基づいてIP端末の不具合箇所を検出してサポートセンタに通知するようにしたものがあった(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−220048号公報
【特許文献2】特開2010−226309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、例えば、特許文献1に記載されたような従来の技術においては、WAN側スループット、LAN側スループットともに1度のみの測定によって得られた結果を用いて不具合検出処理を行うため、LAN側スループットが時間変動する場合、不具合検出処理の結果に誤りが生じる可能性がある、といった問題があった。
【0006】
また、特許文献2に記載されたような従来の技術においては、更に、不具合の原因がLAN側であった場合でも外部のサポートセンタに不具合検出処理の結果を送信することから、不要な外部向けトラフィックが発生する上、LAN側に不具合があることをホームゲートウェイのユーザには通知しないため、ユーザにて不具合の解決が困難になる、といった状況が生じる問題があった。
【0007】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、スループットが時間変動をする場合における不具合検出処理の結果の誤りを防ぐと共に、ユーザによる迅速な不具合の解決を可能にすることのできるホームゲートウェイ装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係るホームゲートウェイ装置は、WAN側データ提供装置とLAN側接続機器とを通信接続するホームゲートウェイ装置において、WAN側の通信速度を測定するWAN側通信速度測定部と、LAN側の通信速度を測定するLAN側通信速度測定部と、WAN側の通信速度の複数回の測定結果からWAN側のスループットの統計値を得ると共に、LAN側の通信速度の複数回の測定結果からLAN側のスループットの統計値を得て、これらスループットの統計値に基づいて、WAN側のスループットに比べてLAN側で所定のスループットが得られていない場合はLAN側に不具合が発生していると判定するスループット不具合判定部と、スループット不具合判定部の判定結果が不具合ありであった場合、警告表示を行う警告表示部とを備えたものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明のホームゲートウェイ装置は、WAN側のスループットの統計値と、LAN側のスループットの統計値に基づいてLAN側の不具合の発生を判定し、不具合ありの場合は警告表示するようにしたので、スループットが時間変動をする場合における不具合検出処理の結果の誤りを防ぐことができると共に、ユーザによる迅速な不具合の解決を可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の実施の形態1によるホームゲートウェイ装置を示す構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1によるホームゲートウェイ装置のデータシーケンスを示す説明図である。
【図3】この発明の実施の形態1によるホームゲートウェイ装置のスループット不具合判定を示すフローチャートである。
【図4】この発明の実施の形態2によるホームゲートウェイ装置のデータシーケンスを示す説明図である。
【図5】この発明の実施の形態3によるホームゲートウェイ装置を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1によるホームゲートウェイ装置を示す構成図である。
図において、ホームゲートウェイ装置100は、WAN側データ提供装置200とLAN側接続機器300との通信接続を行うもので、WAN側通信速度測定部101と、LAN側通信速度測定部102と、スループット不具合判定部103と、警告表示部104とを備えている。WAN側通信速度測定部101は、WAN側データ提供装置200との通信速度を測定する機能部である。LAN側通信速度測定部102は、LAN側接続機器300との通信速度を測定する機能部である。スループット不具合判定部103は、WAN側通信速度測定部101におけるWAN側の通信速度の複数回の測定結果からWAN側のスループットの統計値を得ると共に、LAN側通信速度測定部102におけるLAN側の通信速度の複数回の測定結果からLAN側のスループットの統計値を得て、これらスループットの統計値に基づいて、WAN側のスループットに比べてLAN側で所定のスループットが得られていない場合はLAN側に不具合が発生していると判定するものである。警告表示部104は、ユーザ1が視認可能なLED等を用いた発光装置であり、スループット不具合判定部103で、LAN側の不具合を検出した場合は、LED点灯といったユーザ1への警告表示120を行う。
【0012】
また、WAN側データ提供装置200は、WAN側のネットワークに存在するユーザデータの提供装置であり、LAN側接続機器300は、LAN側のネットワークに存在する機器である。
【0013】
次に、実施の形態1のホームゲートウェイ装置における動作について説明する。
図2は、ホームゲートウェイ装置100とWAN側データ提供装置200とLAN側接続機器300とのデータシーケンスを示す説明図である。
【0014】
ホームゲートウェイ装置100のLAN側通信速度測定部102は、図2に示すように、ホームゲートウェイ装置100とLAN側接続機器300との間を流れる測定用データを用いてスループットを複数回測定し、蓄積する(ステップST100)。尚、本実施の形態におけるスループットとは、単位時間あたりのデータ転送量を意味している。スループット不具合判定部103は、LAN側通信速度測定部102で測定した複数回のスループットの分析を行い、その統計値を得る(ステップST101)。また、スループット不具合判定部103は、WAN側データ提供装置200から流れるユーザデータの流量および受信時間よりWAN側のスループットを複数回計算して分析し、その統計値を得る(ステップST102)。続いて、スループット不具合判定部103は、これら統計値に基づいてスループット不具合判定を行う(ステップST103)。ステップST103による判定の結果、LAN側ネットワークに不具合があることが分かった場合、スループット不具合判定部103は、警告表示部104に対して、警告表示指示110を行う(ステップST104)。これにより警告表示部104は、発光することによってユーザ1に警告を伝える(ステップST105)。
【0015】
図3は、スループット不具合判定部103におけるスループット不具合判定アルゴリズムを示すものである。
図3は、スループット不具合判定のアルゴリズムを示すフローチャートである。
先ず、LAN側接続機器300との通信速度をX1回測定した結果を取得する(ステップST200)。次に、ステップST200の測定結果を踏まえて、過去X2回分のLAN側通信速度の平均(以下、ALと表記する)、および、標準偏差(以下、SLと表記する)を計算する(ステップST201)。また、WAN側データ提供装置200から届いたデータの通信速度をY1回測定する(ステップST202)。次に、ステップST202の測定結果を踏まえて、過去Y2回分のWAN側通信速度の平均(以下、AWと表記する)、および、標準偏差(以下、SWと表記する)を計算する(ステップST203)。尚、X1、X2、Y1、Y2は、それぞれ2以上の整数である。
【0016】
続いて、上記の値であるAL、AW、SL、SWと、定数L、定数Wを用いて、AW+定数W×SW>AL−定数L×SLの条件式を計算する(ステップST204)。この条件式は、WAN側平均通信速度に標準偏差の一定倍を加えたWAN側速度が、LAN側平均速度に標準偏差の一定倍を減じたLAN側速度を上回っているかどうかを判定するための式である。すなわち、通信速度のボトルネックがLAN側に存在するか否かを判定するための式である。尚、定数Lと定数Wは、0を含む正の値であり、一般的にはL≒Wであるが、異なる値であってもよい。これらの値は前もって与えることも可能であり、また、WAN側ネットワークから流れるデータのプロトコルに応じて途中で変更も可能な構成とする。
【0017】
ステップST204の条件式の判定結果を基に、もし、WAN側通信速度がLAN側通信速度を上回っていた場合は、LAN側ネットワークに不具合があると判定し、警告を通知するよう警告表示部104に指示する(図2:ステップST104、図3:ステップST205)。これにより、警告表示部104は、LED発光といった警告表示を行う(図2:ステップST105)。
【0018】
尚、LAN側に不具合がある場合とは、例えば、WAN側とは100Mbpsの速度で通信を始めたが、LAN側に10Mbpsのハブが入っていたためにWAN側のデータが滞留してしまう、といった場合や、LAN側に無線LANを用いたときに、無線LANの速度ばらつきにより、一時的にでもLAN側の通信速度が落ちて、WAN側からのデータが滞留してしまう、といった状態である。すなわち、WAN側からみてLAN側で所定のスループットが得られていない状態である。
【0019】
このように、ユーザ1はホームゲートウェイ装置100を制御する装置を用いることなく警告表示部104によりLAN側スループットに不具合があることを知ることができるため、LAN側ネットワークのスループットが変動する際に、他のデータ通信を止めるなどといった対策をユーザ側にて迅速に行うことが可能となる。
【0020】
以上説明したように、実施の形態1のホームゲートウェイ装置によれば、WAN側データ提供装置とLAN側接続機器とを通信接続するホームゲートウェイ装置において、WAN側の通信速度を測定するWAN側通信速度測定部と、LAN側の通信速度を測定するLAN側通信速度測定部と、WAN側の通信速度の複数回の測定結果からWAN側のスループットの統計値を得ると共に、LAN側の通信速度の複数回の測定結果からLAN側のスループットの統計値を得て、これらスループットの統計値に基づいて、WAN側のスループットに比べてLAN側で所定のスループットが得られていない場合はLAN側に不具合が発生していると判定するスループット不具合判定部と、スループット不具合判定部の判定結果が不具合ありであった場合、警告表示を行う警告表示部とを備えたので、スループットが時間変動をする場合における不具合検出処理の結果の誤りを防ぐことができると共に、ユーザによる迅速な不具合の解決を可能にすることができる。
【0021】
また、実施の形態1のホームゲートウェイ装置によれば、LAN側通信速度測定部は、通信速度の測定として、所定の測定用データを用いてLAN側のスループットを測定するようにしたので、確実にLAN側のスループットを測定することができる。
【0022】
実施の形態2.
実施の形態2は、LAN側の通信速度の測定として、物理回線速度を測定するようにしたものである。図面上の構成は実施の形態1と同様であるため、図1を用いて説明する。
実施の形態2のLAN側通信速度測定部102は、LAN側接続機器300との物理回線の通信速度を複数回測定するよう構成されている。これ以外の構成は実施の形態1と同様である。
【0023】
図4は、実施の形態2におけるホームゲートウェイ装置100とWAN側データ提供装置200とLAN側接続機器300とのデータシーケンスを示す説明図である。
ホームゲートウェイ装置100のLAN側通信速度測定部102は、図4に示すように、ホームゲートウェイ装置100とLAN側接続機器300との間の物理回線速度を複数回測定し、蓄積する(ステップST100a)。具体的には、有線LANを接続したときのハブ等の通信速度(10Mbps,100Mbps,1000Mbps)や、無線LAN接続を行った際のデータレート(11Mbps,54Mbps)といった値を用いる。
【0024】
これにより、スループット不具合判定部103は、実施の形態1と同様に、LAN側の物理回線速度を分析し、その統計値を求める(ステップST101a)。すなわち、実施の形態1では、スループットを直接測定していたが、実施の形態2のスループット不具合判定部103では、物理回線速度(レイヤ1)の計算結果を前もって与えられた変換係数を乗じて上位レイヤのスループットに換算する。これ以降のスループット不具合判定部103におけるWAN側のスループット算出(ステップST102)及びスループット不具合判定(ステップST103)の処理と、警告表示部104の処理(ステップST105)については、実施の形態1と同様である。
【0025】
以上説明したように、実施の形態2のホームゲートウェイ装置によれば、LAN側通信速度測定部は、通信速度の測定として物理回線の速度を測定し、スループット不具合判定部は、物理回線の速度の測定結果をスループットに変換してスループットの統計値を得るようにしたので、速度測定のためにLAN側ネットワークにデータを流す必要が無くなる上、速度測定に要する時間を短縮することができる。
【0026】
実施の形態3.
図5は、実施の形態3のホームゲートウェイ装置を示す構成図である。なお、図5ではWAN側データ提供装置とLAN側接続機器の図示は省略している。
実施の形態3のホームゲートウェイ装置100aは、WAN側通信速度測定部101、LAN側通信速度測定部102、スループット不具合判定部103a、ユーザインタフェース表示制御部105を備えている。スループット不具合判定部103aは、不具合の内容を含めて警告表示指示130を行うよう構成されている。ユーザインタフェース表示制御部105は、外部制御装置400からの表示内容要求140に応じて表示内容応答150を行うユーザインタフェースである。外部制御装置400は、ユーザによって操作され、ユーザが所望する表示内容を要求し表示するためのパーソナルコンピュータ等からなる装置である。
【0027】
このように構成された実施の形態3のホームゲートウェイ装置において、WAN側通信速度測定部101、LAN側通信速度測定部102及びスループット不具合判定部103aにおけるスループット不具合判定は、実施の形態1または実施の形態2と同様である。また、スループット不具合判定部103aは、LAN側の不具合を判定した場合は、その判定内容を含めて警告表示指示130をユーザインタフェース表示制御部105に送信する。
【0028】
一方、ユーザは外部制御装置400を操作し、所望する表示内容要求140をホームゲートウェイ装置100aに対して行う。これにより、ユーザインタフェース表示制御部105は、外部制御装置400からの表示内容要求140に沿った表示内容応答150を送信する。外部制御装置400では、この表示内容応答150を受け取ると、図示しない画面にその内容を表示する。ユーザインターフェースの表示内容としては、例えば、無線LANの電波環境が安定しないことによる通信速度の低下や、LAN側ネットワークに低速度のL2スイッチなどの中継装置を用いていることによる通信速度の低下、といったものが挙げられる。
【0029】
以上説明したように、実施の形態3のホームゲートウェイ装置は、実施の形態1の警告表示部に代えて、受信した表示内容要求に応じて、スループット不具合判定部が判定した不具合の内容を表示内容応答として送信するユーザインタフェース表示制御部を備えたので、警告表示部による警告では表現できないような詳細な警告をユーザに提供することで、ユーザはLAN側ネットワークの通信環境を短時間で改善することが可能となる。
【0030】
尚、本願発明はその発明の範囲内において、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
【符号の説明】
【0031】
1 ユーザ、100,100a ホームゲートウェイ装置、101 WAN側通信速度測定部、102 LAN側通信速度測定部、103,103a スループット不具合判定部、104 警告表示部、105 ユーザインタフェース表示制御部、110,130 警告表示指示、120 警告表示、140 表示内容要求、150 表示内容応答、200 WAN側データ提供装置、300 LAN側接続機器、400 外部制御装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
WAN側データ提供装置とLAN側接続機器とを通信接続するホームゲートウェイ装置において、
WAN側の通信速度を測定するWAN側通信速度測定部と、
LAN側の通信速度を測定するLAN側通信速度測定部と、
前記WAN側の通信速度の複数回の測定結果からWAN側のスループットの統計値を得ると共に、前記LAN側の通信速度の複数回の測定結果からLAN側のスループットの統計値を得て、これらスループットの統計値に基づいて、WAN側のスループットに比べてLAN側で所定のスループットが得られていない場合はLAN側に不具合が発生していると判定するスループット不具合判定部と、
前記スループット不具合判定部の判定結果が不具合ありであった場合、警告表示を行う警告表示部とを備えたホームゲートウェイ装置。
【請求項2】
LAN側通信速度測定部は、通信速度の測定として、所定の測定用データを用いてLAN側のスループットを測定することを特徴とする請求項1記載のホームゲートウェイ装置。
【請求項3】
LAN側通信速度測定部は、通信速度の測定として物理回線の速度を測定し、
スループット不具合判定部は、前記物理回線の速度の測定結果をスループットに変換して当該スループットの統計値を得ることを特徴とする請求項1記載のホームゲートウェイ装置。
【請求項4】
警告表示部に代えて、受信した表示内容要求に応じて、スループット不具合判定部が判定した不具合の内容を表示内容応答として送信するユーザインタフェース表示制御部を備えたことを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか1項記載のホームゲートウェイ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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