説明

ボイラプラントおよびその運転方法

【課題】簡単な構造で効率を向上させるとともに燃焼排ガスの廃熱回収および燃焼用空気の加熱が確実に行えるボイラプラントを提供する。
【解決手段】給水系統の途中から温水が分流された後、給水系統に合流する循環流路33と、循環流路33に設けられ、燃焼用空気と熱交換する温水加熱式空気予熱器37と、温水加熱式空気予熱器37の温水の流れ方向下流側に設けられ、ボイラの燃焼排ガスと熱交換する温水エコノマイザ39と、循環流路33を流れる温水の流量を調節する流量調節手段と、温水加熱式空気予熱器37を出た温水温度を検出する温水温度計45と、温水エコノマイザ39を出た排ガス温度を検出する排ガス温度計47と、温水温度が、第一所定温度よりも低くなるように、かつ、排ガス温度が、第一所定温度よりも高く設定された第二所定温度よりも高くなるように、流量調節手段を調節して温水の流量を制御する制御部49と、が備えられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラプラントおよびその運転方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ボイラでは、熱効率を高めるために燃焼排ガスによって給水を加熱させる排ガスエコノマイザを用いて廃熱を回収している。また、燃焼効率を向上させるために、燃焼用空気は予熱器によって予め加熱されて供給されるようにされている。
この予熱器には、たとえば、特許文献1に示されるように、燃焼用空気を燃焼排ガスとの間で熱交換をし、燃焼用空気の予熱と合わせて、燃焼排ガスの廃熱を回収するようにしたガスエアヒータ(GAH:Gas Air Heater)を用いるもの、特許文献2に示されるように、蒸気等の加熱源を用いて燃焼用空気を加熱するスチームエアヒータ(SAH:Steam Air Heater)がある。また、GAHおよびSAHを組み合わせたものも用いられている。
【0003】
GAHは、排ガスエコノマイザとともに燃焼排ガスの熱量を回収できるので、ボイラ効率を向上させることができる。すなわち、GAHに硫酸腐食防止用の対策、たとえば、下流側の部材にエナメルコーティングを施すことで硫酸腐食による耐食性を上げることが可能となり、GAHの出口での燃焼たとえば、120℃に設定できる。
SAHは、燃焼排ガスの廃熱回収は排ガスエコノマイザのみによるので、GAHに比べてボイラ効率は低くなる。一般に、排ガスエコノマイザは硫酸腐食の観点から出口の燃焼排ガス温度を140℃程度に設定するため、ボイラ効率はGAHに比べて2〜3%程度低くなる。しかしながら、SAHは、構造が簡単であるので、安価であり、かつ、操作性および保守性が良好である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−192202号公報
【特許文献2】特開昭58−123022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、GAHは、ボイラ効率は良好であるが、構造が複雑で、大型となるという課題がある。また、燃焼用空気を加熱する熱量を確保するために、排ガスエコノマイザでの熱吸収を抑える必要があるので、抑えられた熱量の分を給水系統の中で確保するようにされている。すなわち、ボイラへの給水温度を確保するために脱気器の後に、高圧給水加熱器を複数設けた、いわゆる、4段給水再生方式の給水系統とされている。
したがって、ボイラプラントは、複雑な構造となるとともに大型化し、製造コストが高くなり、かつ、操作性および保守性が低下する。
特に、GAHおよび高圧給水加熱器は、高価な部材であるとともにGAHでは、硫酸腐食と煤とにより閉塞の懸念から数年置きに部材の交換が必要とされ、高圧給水加熱器では、その開放・修理に多大な保守費用を要する。
また、SAHでは、比較的構造が簡単で、安価であり、かつ、操作性および保守性が良好であるが、ボイラ効率がGAHに比べて低いという課題がある。
【0006】
さらに、GAHおよびSAHは、ともに出口における燃焼用空気および燃焼排ガスの温度を制御する機能を有していない。
すなわち、GAHでは、これらの温度は、GAH自体の性能、ボイラの負荷、外気温等により決まるので、変動幅が大きく、状況により目論見通りの性能を発揮できないことがある。
SAHでは、これらの温度は、熱交換器の性能、ボイラの負荷、外気温等によって決まるので、変動幅が大きく、状況により所期の性能を発揮できない恐れがある。
たとえば、ボイラ負荷、使用燃料等の状況によっては、燃焼排ガスの出口温度が予期せずに低下し、硫酸腐食が発生するという懸念がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑み、簡単な構造で効率を向上させるとともに燃焼排ガスの廃熱回収および燃焼用空気の加熱が確実に行えるボイラプラントおよびその運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明の第一態様は、ボイラへの給水系統の途中から温水が分流された後、該給水系統に合流する循環流路と、該循環流路に設けられ、燃焼用空気と熱交換する温水加熱式空気予熱器と、該温水加熱式空気予熱器の温水の流れ方向下流側に設けられ、前記ボイラの燃焼排ガスと熱交換する温水加熱器と、前記循環流路を流れる前記温水の流量を調節する流量調節手段と、前記温水加熱式空気予熱器を出た前記温水の温水温度を検出する温水温度検出器と、前記温水加熱器を出た前記燃焼排ガスの排ガス温度を検出する排ガス温度検出器と、前記温水温度が、第一所定温度よりも低くなるように、かつ、前記排ガス温度が、該第一所定温度よりも高く設定された第二所定温度よりも高くなるように、前記流量調節手段を調節して前記温水の流量を制御する制御部と、が備えられているボイラプラントである。
【0009】
給水系統では、復水した水は、低温給水加熱器および脱気器にて加熱されて温水とされている。
本態様では、この温水を循環流路に循環させ、まず、温水加熱式空気予熱器で温水は燃焼用空気と熱交換される。すなわち、温水は燃焼用空気を加熱し、昇温させるとともに燃焼用空気によって冷却される。このときの温水の温度低下は、温水の流量に依存する。すなわち、流量が多ければ温度低下は小さく、少なければ温度低下は大きくなる。
このように、燃焼用空気は、温水加熱式空気予熱器によって昇温させられてボイラに供給されるので、燃料の燃焼効率を向上させることができる。
【0010】
次いで、燃焼用空気によって冷却された温水は、温水加熱器でボイラの燃焼排ガスと熱交換され、燃焼排ガスを冷却し、燃焼排ガスによって昇温される。言い換えると、温水加熱式空気予熱器で燃焼用空気に熱量を与え、温水加熱器で燃焼排ガスから熱量を回収している。このときの燃焼排ガスの温度低下は、温水の流量に依存する。すなわち、流量が多ければより大きく冷却されるので温度低下は大きく、少なければ温度低下は小さくなる。
このように、燃焼排ガスの廃熱は、温水加熱器によって回収されるので、たとえば、排ガスエコノマイザによる回収と合わせて十分に回収することができる。これにより、ボイラプラントの効率を向上させることができる。
また、温水加熱式空気予熱器で供給した熱量を温水加熱器で回収した温水は給水系統に戻される。したがって、給水系統に対する影響を最小限とできる。
温水加熱式空気予熱器および温水加熱器は、液体と気体との熱交換となるので、高い熱貫流率が得られるため、構造が簡単で、小型化することができる。
【0011】
本態様では、制御部は温水の流量を調節して、温水加熱式空気予熱器を出る温水の温水温度が第一所定温度よりも低くなるようにし、かつ、温水加熱器を出る燃焼排ガスの排ガス温度が第二所定温度よりも高くなるようにしている。
第二設定温度は、第一所定温度よりも高く設定されているので、温水加熱器に入る燃焼排ガスの温度は、温水の温度よりも第二所定温度と第一所定温度の差以上に高くなる。したがって、燃焼排ガスと温水との間には、確実に温度差が生じるので、熱交換が成立し温水加熱器にて、温水は確実に燃焼排ガスの廃熱を回収することができる。
第二所定温度の設定を変更することで、たとえば、硫酸腐食の発生が抑えられる程度の温度設定とすることによって、たとえ、硫黄分の多い燃料を用いたとしても硫酸腐食の発生を抑制することができる。
また、温水加熱式空気予熱器を出る温水の温水温度が第一所定温度よりも低くなるようにしているので、燃焼用空気に過度な熱量を与えて必要以上に温度を高くすることを抑制でき、省エネルギにも繋がる。
【0012】
前記態様では、前記流量調節手段は、前記温水の一部を前記給水系統に戻すように構成された三方調整弁とされていてもよい。
制御部は、温水加熱式空気予熱器を出る温水の温水温度が第一所定温度よりも高くなるあるいは温水加熱器を出た燃焼排ガスの排ガス温度が第二所定温度よりも低くなると、三方調整弁を操作して温水の一部を給水系統に戻す。これにより、温水加熱式空気予熱器等へ供給される温水の量が低減されるので、温水の熱量が少なくなり、温水加熱式空気予熱器を出る温水の温水温度が低くなるあるいは温水加熱器を出た燃焼排ガスの排ガス温度が高くなる。
【0013】
前記態様では、前記流量調節手段は、供給能力が可変なポンプと、該ポンプの供給能力を調節するインバータと、で構成されていてもよい。
制御部は、温水加熱式空気予熱器を出る温水の温水温度が第一所定温度よりも高くなるあるいは温水加熱器を出た燃焼排ガスの排ガス温度が第二所定温度よりも低くなると、インバータから制御信号を出して、ポンプの供給能力を低下させる。これにより、温水加熱式空気予熱器等へ供給される温水の量が低減されるので、温水の熱量が少なくなり、温水加熱式空気予熱器を出る温水の温水温度が低くなるあるいは温水加熱器を出た燃焼排ガスの排ガス温度が高くなる。
【0014】
本発明の第二態様は、ボイラへの給水系統の途中から温水が分流された後、該給水系統に合流する循環流路と、該循環流路に設けられ、燃焼用空気と熱交換する温水加熱式空気予熱器と、該温水加熱式空気予熱器の温水の流れ方向下流側に設けられ、前記ボイラの燃焼排ガスと熱交換する温水加熱器と、前記循環流路を流れる前記温水の流量を調節する流量調節手段と、を備えるボイラプラントの運転方法であって、前記温水加熱式空気予熱器を出た前記温水の温水温度および前記温水加熱器を出た前記燃焼排ガスの排ガス温度を検出し、該温水温度が第一所定温度よりも低くなるように、かつ、前記排ガス温度が該第一所定温度よりも高く設定された第二所定温度よりも高くなるように、前記流量調節手段を制御して前記温水の流量を調節するボイラプラントの運転方法である。
【0015】
給水系統では、復水した水は、低温給水加熱器および脱気器にて加熱されて温水とされている。
本態様では、この温水を循環流路に循環させ、まず、温水加熱式空気予熱器で温水は燃焼用空気と熱交換される。すなわち、温水は燃焼用空気を加熱し、昇温させるとともに燃焼用空気によって冷却される。このときの温水の温度低下は、温水の流量に依存する。すなわち、流量が多ければ温度低下は小さく、少なければ温度低下は大きくなる。
このように、燃焼用空気は、温水加熱式空気予熱器によって昇温させられてボイラに供給されるので、燃料の燃焼効率を向上させることができる。
【0016】
次いで、燃焼用空気によって冷却された温水は、温水加熱器でボイラの燃焼排ガスと熱交換され、燃焼排ガスを冷却し、燃焼排ガスによって昇温される。言い換えると、温水加熱式空気予熱器で燃焼用空気に熱量を与え、温水加熱器で燃焼排ガスから熱量を回収している。このときの燃焼排ガスの温度低下は、温水の流量に依存する。すなわち、流量が多ければより大きく冷却されるので温度低下は大きく、少なければ温度低下は小さくなる。
このように、燃焼排ガスの廃熱は、温水加熱器によって回収されるので、たとえば、排ガスエコノマイザによる回収と合わせて十分に回収することができる。これにより、ボイラプラントの効率を向上させることができる。
【0017】
本態様では、温水の流量を調節して、温水加熱式空気予熱器を出る温水の温水温度が第一所定温度よりも低くなるようにし、かつ、温水加熱器を出る燃焼排ガスの排ガス温度が第二所定温度よりも高くなるようにされている。
第二設定温度は、第一所定温度よりも高く設定されているので、温水加熱器に入る燃焼排ガスの温度は、温水の温度よりも第二所定温度と第一所定温度の差以上に高くなる。したがって、燃焼排ガスと温水との間には、確実に温度差が存在するので熱交換が成立し、温水加熱器にて、温水は確実に燃焼排ガスの廃熱を回収することができる。
第二所定温度の設定を変更することで、たとえば、硫酸腐食の発生が抑えられる程度の温度設定とすることによって、たとえ、硫黄分の多い燃料を用いたとしても硫酸腐食の発生を抑制することができる。
また、温水加熱式空気予熱器を出る温水の温水温度が第一所定温度よりも低くなるようにしているので、燃焼用空気に過度な熱量を与えて必要以上に温度を高くすることを抑制でき、省エネルギに繋がる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、空気予熱を行う構造が簡単で、かつ、効率を向上させることができるとともに燃焼排ガスの廃熱回収および燃焼用空気の加熱が確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第一実施形態にかかるボイラプラントの構成を示すブロック図である。
【図2】図1の空気加熱装置の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の第二実施形態にかかるボイラの空気加熱装置を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を、図面を用いて詳細に説明する。
[第一実施形態]
この発明の第一実施形態にかかるボイラプラントについて、図1および図2を参照して説明する。
図1は、本実施形態にかかるボイラプラントの構成を示すブロック図である。図2は、図1の空気加熱装置の構成を示すブロック図である。
ボイラプラント1は、LNG船のタービン主機用として搭載され、LNGを主燃料として用い、かつ、重油焚きも可能とされているものである。
【0021】
ボイラプラント1には、舶用ボイラ(ボイラ)3と、舶用ボイラ3で生成された蒸気を利用して回転されるタービン5と、舶用ボイラ3へ給水する給水系統7と、が備えられている。
タービン5は、蒸気を利用するものとして例示したものであり、これに限定されるものではない。また、図1では、タービン5を1個として図示しているが、これは、たとえば、高圧タービン、中圧タービン、低圧タービンおよび後進用タービンが用いられていてもよく、その構成は適宜とされる。
【0022】
舶用ボイラ5には、図示しないバーナの周囲に燃焼用空気を供給する空気ダクト9が備えられている。バーナは、空気ダクト9を介して導入される燃焼用空気を用いてLNGあるいは重油を燃焼させ、高温の燃焼ガスを生成する。
この燃焼ガスは下流の熱交換器のチューブ内を流れる水等の流体と熱交換して水等を加熱して蒸気とする。生成された蒸気は、たとえば、タービン5に供給され、タービン5に回転動力を与える。
こうして熱交換を終えた燃焼ガスは、燃焼排ガス流路11を通って排気される。
【0023】
給水系統7には、タービン5の排気を冷却して復水する復水器13と、復水器21の復水を必要な圧力まで昇圧する復水昇圧ポンプ15と、タービン5からの抽気で給水を加熱する低圧給水加熱装置17と、タービン5から抽気された蒸気によって給水を直接加熱し、給水中の溶存ガスを物理的に分離除去する脱気器19と、給水の圧力を上げ下流側に押し込む給水ポンプ21と、燃焼排ガス流路11を通る燃焼排ガスによって給水を加熱させる排ガスエコノマイザ23と、が備えられている。
これら復水器13、復水昇圧ポンプ15、低圧給水加熱装置17、脱気器19、給水ポンプ21および排ガスエコノマイザ23は給水配管25により接続されている。
【0024】
ボイラプラント1には、空気ダクト9を通って導入される燃焼用空気を加熱して昇温させる空気加熱装置31が備えられている。
空気加熱装置31には、脱気器19から分流され、空気ダクト9および燃焼排ガス流路11を通って脱気器19に戻るように循環した流路を形成する循環流路33と、脱気器19の温水を循環流路33に沿って循環させる温水循環ポンプ35と、空気ダクト9内を通る循環流路33に設けられ、空気ダクト9を通る燃焼用空気と熱交換を行う温水加熱式空気予熱器37と、燃焼排ガス流路11を通る循環流路33に設けられ、燃焼排ガス流路11を通る燃焼排ガスと熱交換を行う温水エコノマイザ(温水加熱器)39と、が備えられている。温水エコノマイザ39は、排ガスエコノマイザ23の下流側に備えられている。
【0025】
温水循環ポンプ35は、2台が並列されており、1台は予備用として用いられる。
循環流路33には、温水循環ポンプ35と温水加熱式空気予熱器37との間から分岐し、脱気器19に接続される還流流路41が備えられている。
循環流路33と還流流路41との合流部には、三方調節弁43が備えられている。三方調節弁43は、温水循環ポンプ35からの温水を、温水加熱式空気予熱器37へ向かう温水と還流流路41へ向かう温水とを振り分けるとともに振り分ける割合を調節できる機能を有している。したがって、三方調節弁43を調節することによって、温水加熱式空気予熱器37へ向かう温水の流量を調節することができる。還流流路41へ振り分けられた余分な温水は脱気器19に戻されることになる。
【0026】
循環流路33の温水加熱式空気予熱器37の下流側には、内部を通過する温水の温度を検出する温水温度計45が備えられている。温水温度計45は、温水加熱式空気予熱器37を出た温水の温水温度を検出することになる。
燃焼排ガス流路11の温水エコノマイザ39の下流側には、内部を通過する燃焼排ガスの温度を検出する排ガス温度計47が備えられている。排ガス温度計47は、温水加熱器39を出た燃焼排ガスの排ガス温度を検出することになる。
【0027】
空気加熱装置31には、制御部49が備えられている。制御部49は、温水温度が第一所定温度、たとえば、110℃を超えると三方調節弁43を調節して、温水加熱式空気予熱器37へ向かう温水の流量を減少させるように制御する。制御部49は、同時に、排ガス温度が第二所定温度、たとえば、120℃よりも低下すると、三方調節弁43を調節して、温水加熱式空気予熱器37へ向かう温水の流量を減少させるように制御する。
なお、第一所定温度および第二所定温度は例示したものであり、第二所定温度が第一所定温度よりも高く設定されればよく、具体的な値は、状況に応じ適宜に設定される。
【0028】
温水加熱式空気予熱器37は、温水(液体)と燃焼用空気(気体)との熱交換となるので、高い熱貫流率が得られるため、構造が簡単で、小型化することができる。
また、温水エコノマイザ39も、温水(液体)と燃焼排ガス(気体)との熱交換となるので、高い熱貫流率が得られるため、構造が簡単で、小型化することができる。
【0029】
以下、このように構成された本実施形態にかかるボイラプラント1の動作について説明する。
タービン5の排気は、復水器13で冷却されて復水される。復水された水は、低圧給水加熱装置17で、タービン5から抽気された蒸気によって加熱されて、たとえば、約100℃の温水とされる。この温水が、脱気器19で、タービン5から抽気された蒸気によって加熱され、たとえば、約150℃の温水とされてボイラ3に向けて供給される。この温水は、さらに、排ガスエコノマイザ23によって燃焼排ガス流路11を通る燃焼排ガスによって加熱されて、ボイラ3に供給される。
【0030】
このとき、温水循環ポンプ35が作動し、脱気器19内の温水を循環流路33に導入し、循環流路33に沿って循環させている。
この温水は、まず、温水加熱式空気予熱器37を通る際、空気ダクト9を通る燃焼用空気と熱交換される。温水は、導入される外気温の燃焼用空気を加熱し、ボイラ負荷が高いときには、たとえば、120℃まで昇温する。一方、温水は、燃焼用空気によって冷却され、たとえば、100℃まで減温される。
このように、燃焼用空気は、温水加熱式空気予熱器37によって昇温させられてボイラ3に供給されるので、燃料の燃焼効率を向上させることができる。
【0031】
一方、たとえば、ボイラ負荷が低下すると、燃焼用空気の供給量が減少するので、燃焼用空気が温水から吸収する熱量が低減される。吸収される熱量が低減すると、温水の冷却量が低減するので、温水温度計45が検出する温水温度が増加する。温水温度が、110℃を超えると、制御部49は、三方調節弁43を調節して、温水加熱式空気予熱器37へ向かう温水の流量を減少させ、余分な温水は還流流路41を通って脱気器19に戻される。温水の流量が低減されると、温水の熱量が低下するので、温水温度は下降する。
【0032】
温水加熱式空気予熱器37を通って冷却された温水は、温水エコノマイザ39を通る際、燃焼排ガス流路11を通る燃焼排ガスと熱交換される。
ボイラ負荷が高いときには、温水エコノマイザ39を通る温水は、通過する、たとえば、150〜160℃の燃焼排ガスを冷却し、たとえば、120℃まで減温する。一方、温水は、燃焼排ガスによって加熱され、たとえば、120℃まで昇温される。
このように、燃焼排ガスの廃熱は、温水エコノマイザ39および排ガスエコノマイザ23によって十分に回収することができるので、ボイラプラントの効率を向上させることができる。
【0033】
一方、たとえば、ボイラ負荷が低下すると、燃焼排ガスの量が減少する。温水が燃焼排ガスから吸収する熱量はほとんど変わらないので、燃焼排ガスの温度が低減し、排ガス温度計47が検出する排ガス温度が低下する。排ガス温度が、120℃よりも低下すると、制御部49は、三方調節弁43を調節して、温水加熱式空気予熱器37へ向かう、すなわち、温水エコノマイザ39へ向かう温水の流量を減少させ、余分な温水は還流流路41を通って脱気器19に戻される。温水の流量が低減されると、温水の熱量が低下するので、燃焼排ガスから回収する熱量が減少し、排ガス温度は上昇する。
【0034】
このように、制御部49は温水の流量を調節して、温水加熱式空気予熱器37を出る温水の温水温度が110℃よりも低くなるようにし、かつ、温水エコノマイザ39を出る燃焼排ガスの排ガス温度が120℃よりも高くなるようにしているので、温水エコノマイザ39に入る燃焼排ガスの温度は、温水の温度よりも少なくとも10℃以上に高くされている。したがって、温水エコノマイザ39における燃焼排ガスと温水との間には、確実に燃焼排ガスの方が高い温度差が存在するので、温水エコノマイザ39にて、温水は確実に燃焼排ガスの廃熱を回収することができる。
【0035】
第二所定温度として120℃と設定しているので、温水エコノマイザ39の下流側での燃焼排ガスの排ガス温度は120℃以下になることはない。この120℃は、硫酸腐食の発生が抑えられる程度の温度であるので、たとえ、硫黄分の多い重油を燃焼したとしても硫酸腐食の発生を抑制することができる。
また、温水加熱式空気予熱器37を出る温水の温水温度が110℃よりも低くなるようにしているので、燃焼用空気に余分な熱量を与えて過度に温度を高くすることを抑制でき、省エネルギとできるし、燃焼用空気の温度を制御することができる。
【0036】
そして、温水加熱式空気予熱器37で供給した熱量を温水エコノマイザ39で回収した温水は脱気器19に戻される。
上述したように、脱気器19に戻される温水の温度は、脱気器19から導入した温水の温度よりも低くなるので、たとえば、脱気器19に供給される蒸気の熱量を少し増加させて、給水系統7での熱量バランスを設定することが好ましい。
なお、これらの温度は、ボイラプラント1の条件によって変化するので、その条件に合うように適宜設定される。
【0037】
本実施形態では、循環流路33を循環する温水に、脱気器19の温水が用いられているので、温水は、脱気器19で脱気され余分な酸素が溶存していない。循環流路33は完全な閉ループとなっているので、途中で、余分な酸素が吸収されることがない。
したがって、この温水が給水系統7のいずれの部分に戻されても、たとえば、脱気器19以降の給水配管25に戻されたとしても、ボイラ3への給水に余分な酸素が含まれるのを防止することができる。
【0038】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態にかかるボイラプラント1について、図3を用いて説明する。
本実施形態は、空気加熱装置31の構成が第一実施形態のものと異なるので、ここではこの異なる部分について主として説明し、前述した第一実施形態のものと同じ部分については重複した説明を省略する。
なお、第一実施形態と同じ部材には同じ符号を付している。
図3は、本実施形態にかかるボイラの空気加熱装置を示すブロック図である。
【0039】
本実施形態の空気加熱装置31では、温水循環ポンプ35は、供給能力が調節可能とされている。
温水循環ポンプ35の供給能力を調節するインバータ51が備えられている。
制御部49は、インバータ51に温水供給量の制御信号を送り、インバータ51はその制御信号に沿って温水循環ポンプ35の温水供給量を制御するように構成されている。
【0040】
このように構成された本実施形態にかかるボイラプラント1の動作については、基本的に第一実施形態と同様であるので、ここでは重複した説明を省略する。
本実施形態では、温水の供給量を変更する場合、インバータ51が、温水循環ポンプ35の供給能力を調節して行われる。
したがって、温水循環ポンプ35は供給量に応じた能力で運転されるので、第一実施形態のように所定能力で運転され、過度な温水まで供給するものに比べて、温水循環ポンプ35の所要電力を削減することができる。
【0041】
なお、本発明は以上説明した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形を行ってもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 ボイラプラント
3 ボイラ
7 給水系統
33 循環流路
37 温水加熱式空気予熱器
39 温水エコノマイザ
41 還流流路
43 三方調整弁
45 温水温度計
47 排ガス温度計
49 制御部
51 インバータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラへの給水系統の途中から温水が分流された後、該給水系統に合流する循環流路と、
該循環流路に設けられ、燃焼用空気と熱交換する温水加熱式空気予熱器と、
該温水加熱式空気予熱器の温水の流れ方向下流側に設けられ、前記ボイラの燃焼排ガスと熱交換する温水加熱器と、
前記循環流路を流れる前記温水の流量を調節する流量調節手段と、
前記温水加熱式空気予熱器を出た前記温水の温水温度を検出する温水温度検出器と、
前記温水加熱器を出た前記燃焼排ガスの排ガス温度を検出する排ガス温度検出器と、
前記温水温度が、第一所定温度よりも低くなるように、かつ、前記排ガス温度が、該第一所定温度よりも高く設定された第二所定温度よりも高くなるように、前記流量調節手段を調節して前記温水の流量を制御する制御部と、
が備えられていることを特徴とするボイラプラント。
【請求項2】
前記流量調節手段は、前記温水の一部を前記給水系統に戻すように構成された三方調整弁とされていることを特徴とする請求項1に記載のボイラプラント。
【請求項3】
前記流量調節手段は、供給能力が可変なポンプと、該ポンプの供給能力を調節するインバータと、で構成されていることを特徴とする請求項1に記載のボイラプラント。
【請求項4】
ボイラへの給水系統の途中から温水が分流された後、該給水系統に合流する循環流路と、
該循環流路に設けられ、燃焼用空気と熱交換する温水加熱式空気予熱器と、
該温水加熱式空気予熱器の温水の流れ方向下流側に設けられ、前記ボイラの燃焼排ガスと熱交換する温水加熱器と、
前記循環流路を流れる前記温水の流量を調節する流量調節手段と、を備えるボイラプラントの運転方法であって、
前記温水加熱式空気予熱器を出た前記温水の温水温度および前記温水加熱器を出た前記燃焼排ガスの排ガス温度を検出し、
該温水温度が第一所定温度よりも低くなるように、かつ、前記排ガス温度が該第一所定温度よりも高く設定された第二所定温度よりも高くなるように、前記流量調節手段を制御して前記温水の流量を調節することを特徴とするボイラプラントの運転方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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