説明

ボイラプラント

【課題】酸素を排ガスで希釈した燃焼用ガスで燃料を燃焼させるボイラプラントにおいて、燃焼用ガスラインなどが排ガス中の三酸化硫黄により腐食されるのを抑制する。
【解決手段】石炭を含む炭素含有固体燃料を富酸素の燃焼用ガスにより燃焼させる酸素燃焼式のボイラ1と、ボイラ1から排出される排ガス中の窒素酸化物を除去する脱硝装置7と、脱硝装置7から排出される排ガス中の煤塵を捕集する集塵装置11と、集塵装置11の下流側の排ガスを分岐して酸素供給装置27から供給される酸素を希釈して燃焼用ガスを生成してボイラ1に供給する燃焼用ガスライン21とを備え、燃焼用ガスライン21の流路途中に三酸化硫黄を中和する中和剤を添加して排ガス又は燃焼用ガスの三酸化硫黄を中和する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラプラントに係り、特に、酸素を排ガスで希釈して生成した燃焼用ガスで燃料を燃焼させる酸素燃焼式のボイラを含むボイラプラントに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、石炭、石油などの燃料を富酸素の燃焼用ガスにより燃焼させる酸素燃焼式のボイラが提案されている。同文献は、燃焼用空気に代えて富酸素の燃焼用ガスにより燃料を燃焼させることで、ボイラから排出される排ガスの二酸化炭素濃度を高くして、排ガスから二酸化炭素を効率よく分離回収している。しかし、富酸素の燃焼用ガスをボイラに供給して燃料を燃焼させると、バーナなどの火炎温度が高くなり、ボイラの耐熱性などを確保できないおそれがある。
【0003】
そこで、特許文献1は、ボイラから排出され集塵装置を通過させた排ガスを分岐して、分岐した排ガスを酸素供給装置から供給される酸素に混合して燃焼用ガスを生成してボイラに供給する燃焼用ガスラインを形成している。これによれば、酸素を排ガスで希釈して燃焼用ガスとしてボイラに供給しているから、火炎温度の上昇を低減できる。
【0004】
一方、特許文献2は、廃棄物を燃焼用空気で燃焼させるボイラで発生する窒素酸化物を低減するため、排ガスの一部をボイラの2次燃焼室に循環させている。また、廃棄物を燃焼させると排ガスに塩酸ガスが含まれ、この塩酸ガスにより排ガスを循環させる送風機、ダクトなどが腐食するから、循環させる排ガスに消石灰を添加して塩酸ガスを中和している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−147162号公報
【特許文献2】特開2006−292264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のように、酸素を排ガスで希釈してボイラに供給すると、排ガスに含まれる三酸化硫黄が系内を循環して濃縮されることによる問題については配慮されていない。つまり、排ガス中の三酸化硫黄が濃縮されると排ガス中の三酸化硫黄の酸露点が上がるので、排ガス又は燃焼用ガスの温度が下がると三酸化硫黄が凝縮して、燃焼用ガスラインなどを腐食させるおそれがある。
【0007】
特許文献2には、循環させる排ガス中の塩酸ガスによるダクトなどの腐食を防止することが記載されているが、特許文献2は、酸素燃焼式のボイラではないため、排ガス中の三酸化硫黄が濃縮することに起因する燃焼用ガスラインなどの腐食防止については記載されていない。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、酸素を排ガスで希釈した燃焼用ガスで燃料を燃焼させるボイラプラントにおいて、燃焼用ガスラインなどが排ガス中の三酸化硫黄により腐食されるのを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明のボイラプラントは、石炭を含む炭素含有固体燃料を富酸素の燃焼用ガスにより燃焼させる酸素燃焼式のボイラと、ボイラから排出される排ガス中の窒素酸化物を除去する脱硝装置と、脱硝装置から排出される排ガス中の煤塵を捕集する集塵装置と、集塵装置の下流側の排ガスを分岐して酸素供給装置から供給される酸素を希釈して燃焼用ガスを生成してボイラに供給する燃焼用ガスラインと、燃焼用ガスラインの流路途中に排ガス中の三酸化硫黄を中和する中和剤を添加する添加手段を備えることを特徴とする。
【0010】
これによれば、酸素を希釈する排ガス又は燃焼用ガス中の三酸化硫黄を中和して濃度を下げ三酸化硫黄の酸露点を低くできるから、排ガス又は燃焼用ガスの温度が下がっても三酸化硫黄の凝縮を抑制でき、三酸化硫黄による燃焼用ガスラインなどの腐食を抑制できる。
【0011】
一方、ボイラに供給される燃焼用ガスを分岐し、燃焼用ガスを搬送ガスとして粉砕した炭素含有固体燃料をボイラに搬送することができる。この場合、炭素含有固体燃料、例えば、石炭を粉砕する粉砕手段に燃焼用ガスラインを接続し、この燃焼用ガスラインに中和剤の添加手段を設けることが好ましい。つまり、燃焼用ガスの酸素濃度が高いと、燃焼用ガスにより微粉炭が自然発火するから、燃焼用ガスの温度を下げて微粉炭の搬送ガスとする。そのため、燃焼用ガスが三酸化硫黄の酸露点以下になり粉砕手段などに腐食が生じるので、三酸化硫黄を中和して粉砕手段に供給される燃焼用ガスの酸露点を下げることが好ましい。
【0012】
また、中和剤は、アルカリ性を有するアルカリ金属の塩、例えば、NaCO、NaHCO、NaHSO、NaSO、NaOH、又はアルカリ土類金属の塩、例えば、CaCO、Ca(OH)を使用できる。また、アルカリ性を有するアルカリ金属の塩として、例えば、セスキ炭酸ナトリウム(NaCO・NaHCO・2HO)などの複塩を使用できる。また、中和剤の添加量は、中和剤/SOのモル比が、例えば、モル比0.1〜30、好ましくは、モル比1〜3になるように調整できる。
【0013】
また、燃焼用ガスラインの添加手段の上流側に排ガスを加熱する加熱器を設け、加熱した排ガスに中和剤の水溶液を噴霧して、排ガスの熱で蒸発させることが好ましい。つまり、粉体の中和剤を排ガスに添加するより、中和剤の水溶液を排ガスに噴霧して水分を蒸発させる方が、中和剤を微流化して排ガスに混合できるので、三酸化硫黄の中和率を向上できる。
【0014】
また、燃焼用ガスラインの添加手段の上流側に排ガスを冷却する冷却器を設け、排ガス中の水分を除去することが好ましい。つまり、排ガス中の三酸化硫黄の酸露点は、排ガス中の水分量に相関するので、排ガス中の水分量を下げることで三酸化硫黄の酸露点を下げることができ、三酸化硫黄の凝縮を一層抑制できる。
【0015】
なお、燃焼用ガスラインの添加手段の下流側に集塵装置を設けることができる。これによれば、三酸化硫黄と中和剤との中和反応で生成した生成物を捕集して燃焼用ガスから除去できるので、中和剤を添加することによる燃焼用ガスなどへの悪影響を回避できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、酸素を排ガスで希釈した燃焼用ガスで燃料を燃焼させるボイラプラントにおいて、燃焼用ガスラインなどが排ガス中の三酸化硫黄により腐食されるのを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態1のボイラプラントの概略図である。
【図2】排ガス中の三酸化硫黄濃度と三酸化硫黄の酸露点の関係を、水分濃度別に示した図である。
【図3】三酸化硫黄の除去率と中和剤の添加量の関係を示した図である。
【図4】本発明の実施形態2のボイラプラントの概略図である。
【図5】本発明の実施形態3のボイラプラントの概略図である。
【図6】図5の要部拡大図である。
【図7】本発明の実施形態4のボイラプラントの概略図である。
【図8】本発明の実施形態5のボイラプラントの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施の形態に基づいて説明する。
(実施形態1)
図1に示すように、実施形態1のボイラプラントには、炭素含有固体燃料、例えば、石炭を富酸素の燃焼用ガスにより燃焼させる酸素燃焼式のボイラ1が設けられている。ボイラ1は、石炭を燃焼させて発生した蒸気を図示していない蒸気タービンに供給して、蒸気タービンを駆動するようになっている。ボイラ1のバーナ5には、石炭粉砕機3で製造した微粉炭が後述する燃焼用ガスに同伴されて供給されるようになっている。なお、石炭単独、又は石炭に他の炭素含有固体燃料を混合して燃料とすることができる。
【0019】
ボイラ1の下流側には、排ガス中の窒素酸化物を除去する脱硝装置7が設けられている。脱硝装置7には、排ガスに還元剤を添加する添加手段と、脱硝触媒層が設けられている。脱硝装置7の下流側には、脱硝装置7から排出された排ガスの温度を下げる熱交換器9が設けられている。熱交換器9の下流側には、排ガス中の煤塵を捕集する集塵装置11が設けられている。集塵装置11の下流側には、誘引ファン13が設けられている。誘引ファン13の下流側には、排ガス中の硫黄酸化物を除去する脱硫装置15が設けられている。脱硫装置15は、例えば、排ガスに脱硫剤を噴霧して排ガス中の硫黄酸化物を脱硫剤に吸収させる湿式脱硫装置など、周知の脱硫装置を使用できる。
【0020】
脱硫装置15の下流側には、排ガスに残っている酸性ガスを除去する周知の排ガス洗浄装置17が設けられている。排ガス洗浄装置17の下流側には、排ガス中の二酸化炭素を分離して回収する周知の回収装置19が設けられている。なお、排ガスに残っている酸性ガスにより回収装置19における二酸化炭素の分離回収が妨害されない場合は、排ガス洗浄装置17を省略できる。
【0021】
次に、実施形態1の特徴構成を説明する。集塵装置11の下流側であって脱硫装置15の上流側の排ガス流路には、排ガスを分岐する燃焼用ガスライン21が接続されている。燃焼用ガスライン21には、図示していない誘引ファンなどが設けられ、排ガスを燃焼用ガスライン21に分岐できるようになっている。燃焼用ガスライン21の下流側は、ライン23とライン25に分岐されている。ライン23は、ボイラ1のバーナ5に接続され、流路途中に酸素供給装置27が接続されている。ライン25には、中和剤添加手段29が接続されている。中和剤添加手段29が接続された位置の下流側のライン25には、酸素供給装置27が接続されている。酸素供給装置27の下流側のライン25は、石炭粉砕機3を介してバーナ5に接続されている。
【0022】
酸素供給装置27は、空気中の窒素と酸素を分離して、高濃度の酸素を供給できるようになっている。酸素供給装置27から供給された酸素は、ライン23、25を通流する排ガスにより希釈され、燃焼用ガスが生成されるようになっている。中和剤添加手段29は、ライン25を通流する排ガスに三酸化硫黄を中和する中和剤を添加するようになっている。
【0023】
このように構成される本実施形態の動作を説明する。石炭粉砕機3で粉砕された微粉炭は、ライン25から供給される燃焼用ガスによりボイラ1のバーナ5に供給される。バーナ5に供給された微粉炭は、ライン23、25から供給された富酸素の燃焼用ガスにより燃焼される。富酸素の燃焼用ガスで燃焼することで、排ガス中の二酸化炭素濃度を高めることができる。
【0024】
ボイラ1から排出された排ガスは、脱硝装置7に導入される。脱硝装置7に導入された排ガスには還元剤が添加され、脱硝触媒存在下で排ガス中の窒素酸化物が還元剤により還元されて除去される。脱硝装置7から排出された排ガスは、熱交換器9を通過する際、燃焼用ガスライン21を通流する排ガスとの熱交換により温度が下げられて集塵装置11に導入される。集塵装置11は、排ガス中の煤塵を捕集して排ガスから除去する。集塵装置11から排出された排ガスは、誘引ファン13を介して脱硫装置15に導入される。脱硫装置15は、排ガスに脱硫剤を噴霧して排ガス中の硫黄酸化物を吸収させて排ガスから除去する。脱硫装置15から排出された排ガスは、排ガス洗浄装置17に導入され、排ガス中に残っている酸性ガスを除去される。排ガス洗浄装置17から排出された排ガスは、回収装置19に導入される。回収装置19は、排ガスから二酸化炭素を分離して回収する。これにより、ボイラプラントから排出される排ガスの二酸化炭素を低減できる。
【0025】
次に、実施形態1の特徴動作を説明する。集塵装置11から排出された排ガスの、例えば、10〜40%の排ガスが燃焼用ガスライン21に導かれる。燃焼用ガスライン21に導かれた排ガスは、熱交換器9により、例えば、180℃〜370℃に加熱される。加熱された排ガスは、ライン23とライン25に分岐される。ライン23に導かれた排ガスは、酸素供給装置27から供給される酸素を希釈し燃焼用ガスが生成される。ライン23で生成された燃焼用ガスは、ボイラ1のバーナ5に供給される。
【0026】
一方、ライン25に分岐された排ガスには、中和剤添加手段29から三酸化硫黄を中和できる中和剤の水溶液が噴霧される。噴霧された水溶液の水分は、排ガスの熱により蒸発し、中和剤が微粒化して排ガス中に分散される。この中和剤が三酸化硫黄と接触することにより中和反応が生じ、排ガス中の三酸化硫黄が中和される。三酸化硫黄が中和された排ガスは、酸素供給装置27から供給される酸素に混合されて、酸素を希釈して燃焼用ガスが生成される。この燃焼用ガスは、微粉炭の搬送用ガスとして、石炭粉砕機3に供給され、微粉炭をボイラ1のバーナ5に気流搬送する。なお、燃焼用ガスの酸素濃度が高い場合は、例えば、中和剤の噴霧量を調整して、石炭粉砕機3に供給される燃焼用ガスの温度を微粉炭が自然発火しない温度、例えば、100℃を超えない温度に調整する。
【0027】
これによれば、酸素を希釈する排ガス中の三酸化硫黄を中和して濃度を下げ三酸化硫黄の酸露点を低くできるから、排ガス又は燃焼用ガスの温度が下がっても三酸化硫黄の凝縮を抑制でき、三酸化硫黄による燃焼用ガスライン21などの腐食を抑制できる。また、三酸化硫黄の凝縮を抑制できるので、三酸化硫黄が凝縮することにより微粉炭が詰まることを抑制できる。
【0028】
特に、実施形態1のように、燃焼用ガスを微粉炭の搬送ガスとする場合、燃焼用ガスの酸素濃度が高いと、燃焼用ガスの温度を、例えば、100℃以下に下げるから、三酸化硫黄が凝縮してライン25、石炭粉砕機3などが腐食する。この現象を図2を用いて説明する。図2は、排ガス中の三酸化硫黄(SO)濃度と三酸化硫黄の酸露点の関係を、排ガス中の水分濃度ごとに示した図である。酸素を排ガスで希釈してボイラ1に供給すると、排ガスに含まれる三酸化硫黄及び水分が系内を循環して濃縮される。そのため、例えば、SO濃度が60ppm、水分濃度が30%になることがあり、図2より、酸露点は約180℃となる。この場合、微粉炭の自然発火を防止するため、燃焼用ガスの温度を、例えば、100℃以下に下げると、酸露点以下になるから硫酸ミストの凝縮により腐食が生じる。
【0029】
これに対して、排ガスに三酸化硫黄を中和する中和剤を添加すると、排ガス中の三酸化硫黄が中和され、酸露点を下げることができる。例えば、中和剤として、セスキ炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム(NaCO)、水酸化カルシウム(Ca(OH))をそれぞれ排ガスに添加した場合の、排ガス中のSO除去率を図3に示す。図3の縦軸は、SO除去率であり、横軸は、中和剤/SOとのモル比である。中和剤/SOのモル比が上がるにつれて、SO除去率が上がるので、モル比0.1〜30、好ましくは、モル比1〜3になるように中和剤を添加する。また、モル比=1.5以上でSO除去率が100%に近づき、頭打ちになるから、中和剤/SOのモル比1〜2となるように添加することが望ましい。なお、中和剤を過剰に添加すると、未反応の中和剤が燃焼用ガスに同伴しボイラ1に導入され、ボイラ1内の硫黄酸化物が中和される。例えば、集塵装置11から排出された排ガスの、例えば、10〜40%を燃焼用ガスライン21に導くと、モル比2に対する100%/40%=2.5倍としてモル比5程度、二酸化硫黄の除去も考慮すると、その30倍程度になると予測される。したがって、中和剤/SOのモル比を30と中和剤を過剰に添加することができる。
【0030】
なお、三酸化硫黄を中和する中和剤は、アルカリ性を有するアルカリ金属の塩、例えば、NaCO、NaHCO、NaHSO、NaSO、NaOH、又はアルカリ土類金属の塩、例えば、CaCO、Ca(OH)を使用できる。また、アルカリ性を有するアルカリ金属の塩として、例えば、セスキ炭酸ナトリウム(NaCO・NaHCO・2HO)などの複塩を使用できる。また、中和剤は、粉体状、又は水に溶かして水溶液にして排ガスに添加できる。また、中和剤にNa塩、K塩を使用すると、ボイラ1から排出される排ガスにNa塩、K塩が混じって、脱硝装置7の脱硝触媒を被毒するおそれがある。この場合、CaCO、Ca(OH)などのカルシウム塩を中和剤とすることが好ましい。また、潮解性を有する物質を中和剤とすると、未反応の中和剤が石炭粉砕機3に侵入して、微粉炭が水分を含み詰まるおそれがあるから、潮解性を有しない物質を中和剤とすることが好ましい。
【0031】
また、三酸化硫黄と中和剤との中和反応により生成する生成物が、不燃性の物質となるように中和剤を選択することができる。これによれば、中和反応により生成する不燃性の生成物が微粉炭と混ざって、微粉炭の自然発火が抑制される。
【0032】
また、実施形態1は、石炭粉砕機3に接続されるライン25にのみ中和剤を添加し、バーナ5に接続されるライン23に中和剤を添加していないが、ライン23にも中和剤を添加することができる。また、ライン23を流れる燃焼用ガスは、微粉炭の搬送ガスではなく、微粉炭の自然発火の問題がないから、ライン23に中和剤を添加せず、ライン23を流れる排ガス又は燃焼用ガスを三酸化硫黄の酸露点以上の温度に維持することで、三酸化硫黄による腐食を抑制できる。
【0033】
また、石炭の付着水により、微粉炭が詰まるおそれがある場合は、石炭粉砕機3に供給した燃焼用ガスで石炭又は微粉炭を乾燥させることができる。
【0034】
(実施形態2)
図4を用いて実施形態2のボイラプラントを説明する。実施形態2が実施形態1と相違する点は、燃焼用ガスライン21の熱交換器9の上流側に排ガスを冷却して、排ガス中の水分を除去する冷却器31を設けている点である。また、燃焼用ガスライン21に熱交換器9をバイパスするバイパスライン33を接続している点である。さらに、燃焼用ガスライン21の熱交換器の出口側のガス温度、石炭粉砕機の入口側と出口側のガス温度を計測する計測手段を設け、計測した温度に基づいて、バイパスライン33を通流させるガスの量と中和剤の添加量を調整している点である。その他の構成は実施形態1と同一であるから、同一の符号を付して説明を省略する。
【0035】
次に実施形態2の動作の特徴動作を説明する。集塵装置11から燃焼用ガスライン21に導かれた排ガスは、冷却器31により冷却されて、排ガス中の水蒸気が凝縮される。凝縮された水はドレイン35に排出される。これにより、排ガス中の水分濃度が下がるから、排ガスの酸露点が下げることができる。さらに、水の露点も下がるから、結露による微粉炭の詰まりを抑制できる。
【0036】
一方、冷却器31を通過した排ガスは、熱交換器9に導入されて加熱される。この際、熱交換器9の出口温度T1、石炭粉砕機3の入口側温度T2、出口側温度T3に基づいて、コントローラ37は、バイパスライン33の弁39の開度を調整し、熱交換器9で加熱される排ガス量を調整する。また、コントローラ37は、中和剤添加手段29の中和剤の添加量を調整する。つまり、コントローラ37は、石炭粉砕機3に供給される燃焼用ガスの温度を石炭が自然発火しない温度に維持するため、熱交換器9で加熱される排ガス量と、中和剤の添加量を調整する。例えば、石炭粉砕機3に供給される燃焼用ガスの温度が高い場合は、熱交換器9で加熱される排ガス量を減らし、中和剤の添加量を増やして燃焼用ガスの温度を下げる。これにより、石炭粉砕機3に供給される燃焼用ガスの温度を石炭が自然発火しない温度に維持できる。
【0037】
なお、コントローラ37により、熱交換器9で加熱される排ガス量、又は中和剤の添加量のいずれか一方を調整することができる。
【0038】
(実施形態3)
図5、6を用いて実施形態3のボイラプラントを説明する。実施形態3が実施形態1と相違する点は、集塵装置11の下流側と、脱硫装置15の下流側のそれぞれの排ガスラインに排ガスを分岐する燃焼用ガスラインを接続している点である。また、石炭粉砕機3の入口側の燃焼用ガスの温度T2、出口側の燃焼用ガスの温度T3を計測して、計測して温度に基づいて酸素供給装置27から供給される酸素の量を調整している点である。その他の構成は実施形態1と同一であるから、同一の符号を付して説明を省略する。
【0039】
集塵装置11の下流側には、排ガスを分岐する燃焼用ガスライン41が接続されている。燃焼用ガスライン41の下流側は、ライン43とライン45に分岐されている。ライン43は、ボイラ1の図示していないアフターエアポートに接続されている。ライン45は、ボイラ1のバーナ5に接続されている。ライン45には、酸素供給装置27が接続され、酸素供給装置27から供給された酸素を排ガスで希釈して燃焼用ガスを生成するようになっている。
【0040】
脱硫装置15の下流側には、排ガスを分岐する燃焼用ガスライン47が接続されている。燃焼用ガスライン47は、熱交換器9を介して石炭粉砕機3に接続されている。燃焼用ガスライン47には、中和剤添加手段29が接続され、排ガス中の三酸化硫黄を中和剤で中和するようになっている。中和剤添加手段29の下流側には、酸素供給装置27が接続され、酸素供給装置27から供給された酸素を排ガスで希釈して燃焼用ガスを生成するようになっている。酸素供給装置27には、コントローラ49が接続されている。コントローラ49は、石炭粉砕機3の入口側の燃焼用ガスの温度T2、出口側の燃焼用ガスの温度T3に基づいて、酸素供給装置27から燃焼用ガスライン47に供給される酸素の量を調整するようになっている。
【0041】
次に実施形態3の特徴動作を説明する。集塵装置11から排出された排ガスは燃焼用ガスライン41に導かれ、ライン43とライン45に分岐される。ライン43の排ガスは、二次燃焼用のガスとしてボイラ1のアフターエアポートに供給される。一方、ライン45の排ガスには、酸素供給装置27から供給された酸素が混合され、酸素が排ガスにより希釈され燃焼用ガスが生成する。この燃焼用ガスは、ボイラ1のバーナ5に供給される。
【0042】
一方、脱硫装置15から排出された排ガスは燃焼用ガスライン47に導かれ、熱交換器9により加熱される。加熱された排ガスには、中和剤添加手段29から中和剤の水溶液が噴霧される。これにより、排ガス中の三酸化硫黄が中和されて、排ガスの酸露点が下げられる。この排ガスに酸素供給装置27から酸素が供給され排ガスにより酸素が希釈されて燃焼用ガスが生成される。この際、コントローラ49は、石炭粉砕機3の入口側の燃焼用ガスの温度T2、出口側の燃焼用ガスの温度T3に基づいて、例えば、酸素供給装置27の酸素製造量及び弁53の開度を調整する。つまり、供給される酸素の量を調整して、酸素の顕熱により排ガスの温度を下げ、石炭が自然発火しない温度に燃焼用ガスの温度を維持する。なお、コントローラ49は、ライン43の弁50の開度を調整してアフターエアポートに供給する排ガスの量を調整する。
【0043】
これによれば、排ガス中の三酸化硫黄を脱硫装置15で、例えば、30〜50%除去し、三酸化硫黄が低減された排ガスで燃焼用ガスを生成し搬送ガスとするから、中和剤の添加量を減らすことができる。
【0044】
なお、脱硫装置15を湿式又は半乾式にすると、脱硫装置15から排出される排ガスの温度が、例えば、50℃〜70℃になり、三酸化硫黄の酸露点以下になるおそれがある。この場合、燃焼用ガスライン47の熱交換器9より上流側に三酸化硫黄を中和する中和剤を添加することが好ましい。
【0045】
(実施形態4)
図7を用いて実施形態4のボイラプラントを説明する。実施形態4が実施形態1と相違する点は、集塵装置11の下流側と、脱硫装置15の下流側のそれぞれに、排ガスを分岐する燃焼用ガスラインを接続している点である。また、燃焼用ガスラインの中和剤添加手段の下流側に三酸化硫黄と中和剤との中和反応で生成した生成物を捕集する集塵装置を設けている点である。その他の構成は実施形態1と同一であるから、同一の符号を付して説明を省略する。
【0046】
集塵装置11の下流側には、排ガスを分岐する燃焼用ガスライン55が接続されている。燃焼用ガスライン55には、酸素供給装置27が接続され、燃焼用ガスライン55に導かれた排ガスにより酸素を希釈して燃焼用ガスを生成するようになっている。
【0047】
一方、脱硫装置15の下流側には、排ガスを分岐する燃焼用ガスライン57が接続されている。燃焼用ガスライン57は、熱交換器9を介して石炭粉砕機3に接続されている。燃焼用ガスライン57には、中和剤添加手段29が接続され、排ガス中の三酸化硫黄を中和剤で中和するようになっている。燃焼用ガスライン57の中和剤添加手段29の下流側には、集塵装置59が設けられ、三酸化硫黄と中和剤との中和反応で生成した生成物を捕集して排ガスから除去するようになっている。燃焼用ガスライン57の集塵装置59の下流側には、酸素供給装置27が接続され、排ガスにより酸素を希釈して燃焼用ガスを生成するようになっている。燃焼用ガスライン57の酸素供給装置27が接続された位置の下流側は、石炭粉砕機3を介してボイラ1のバーナ5に接続され、石炭粉砕機3から微粉炭をボイラ1のバーナ5に搬送するようになっている。
【0048】
次に実施形態4の特徴動作を説明する。集塵装置11から排出された排ガスは燃焼用ガスライン55に導かれ、酸素供給装置27から酸素が供給される。これにより、酸素が排ガスにより希釈されて燃焼用ガスが生成される。
【0049】
一方、脱硫装置15から排出された排ガスは、燃焼用ガスライン57に導かれ、熱交換器9により加熱される。加熱された排ガスには、中和剤添加手段29から中和剤の水溶液が噴霧され、排ガス中の三酸化硫黄が中和される。三酸化硫黄と中和剤との中和反応で生成した生成物は、集塵装置59により捕集されて排ガスから除去される。中和反応による生成物が除去された排ガスには、酸素供給装置27から供給された酸素が混合され、酸素が排ガスにより希釈されて燃焼用ガスが生成する。生成した燃焼用ガスは、石炭粉砕機3に供給され、微粉炭の搬送ガスとして石炭粉砕機3内の微粉炭をボイラ1のバーナ5に搬送する。
【0050】
これによれば、中和剤を添加することによる悪影響、例えば、三酸化硫黄と中和剤との中和反応で生成した生成物により、バーナ5から噴出される微粉炭の噴出状況などに与える悪影響を回避できる。
【0051】
(実施形態5)
図8を用いて実施形態5のボイラプラントを説明する。実施形態5が実施形態1と相違する点は、燃焼用ガスライン21のライン23とライン25の分岐部よい上流側に中和剤添加手段29を接続している点である。また、中和剤添加手段の下流側のライン25の流路途中に、三酸化硫黄と中和剤との中和反応で生成した生成物を捕集する集塵装置を設けている点である。その他の構成は実施形態1と同一であるから、同一の符号を付して説明を省略する。
【0052】
これによれば、微粉炭の搬送ガスとして用いる燃焼用ガスに加えて、ボイラ1のバーナ5に直接供給される燃焼用ガス中の三酸化硫黄を中和するから、排ガス又は燃焼用ガスの三酸化硫黄の酸露点を一層下げることができる。また、中和剤を添加することによる悪影響、例えば、三酸化硫黄と中和剤との中和反応で生成した生成物により、バーナ5から噴出される微粉炭の噴出状況などに与える悪影響を回避できる。
【符号の説明】
【0053】
1 ボイラ
3 石炭粉砕機
7 脱硝装置
9 熱交換器
11 集塵装置
21 燃焼用ガスライン
27 酸素供給装置
29 中和剤添加手段
31 冷却器
41 燃焼用ガスライン
47 燃焼用ガスライン
55 燃焼用ガスライン
57 燃焼用ガスライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石炭を含む炭素含有固体燃料を富酸素の燃焼用ガスにより燃焼させる酸素燃焼式のボイラと、該ボイラから排出される排ガス中の窒素酸化物を除去する脱硝装置と、該脱硝装置から排出される排ガス中の煤塵を捕集する集塵装置と、該集塵装置の下流側の排ガスを分岐して酸素供給装置から供給される酸素を希釈して前記燃焼用ガスを生成して前記ボイラに供給する燃焼用ガスラインと、該燃焼用ガスラインの流路途中に排ガス中の三酸化硫黄を中和する中和剤を添加する添加手段を備えてなるボイラプラント。
【請求項2】
請求項1に記載のボイラプラントにおいて、
前記ボイラに供給される炭素含有固体燃料を粉砕する粉砕手段が設けられ、該粉砕手段に前記燃焼用ガスラインが接続され、粉砕された炭素含有固体燃料を前記燃焼用ガスに同伴させて前記ボイラに搬送することを特徴とするボイラプラント。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のボイラプラントにおいて、
前記中和剤は、アルカリ性を有するアルカリ金属の塩、又はアルカリ土類金属の塩の少なくとも一方を含んでなることを特徴とするボイラプラント。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のボイラプラントにおいて、
前記燃焼用ガスラインの前記添加手段の上流側に前記排ガスを加熱する加熱器が設けられ、前記添加手段は、前記中和剤の水溶液を前記排ガスに噴霧することを特徴とするボイラプラント。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のボイラプラントにおいて、
前記燃焼用ガスラインの前記添加手段の上流側に前記排ガスを冷却して前記排ガス中の水分を凝縮させ除去する冷却器が設けられてなることを特徴とするボイラプラント。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載のボイラプラントにおいて、
前記燃焼用ガスラインの前記添加手段の下流側に三酸化硫黄と中和剤との中和反応で生成した生成物を捕集する集塵装置が設けられてなることを特徴とするボイラプラント。




【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−153765(P2011−153765A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−15714(P2010−15714)
【出願日】平成22年1月27日(2010.1.27)
【出願人】(000005441)バブコック日立株式会社 (683)
【Fターム(参考)】