説明

ボイラプラント

【課題】空気予熱を行う構造が簡単で、かつ、効率を向上させることができるボイラプラントを提供する。
【解決手段】ボイラ3への給水系統7の脱気器19から分流された後、脱気器19に合流し、脱気器19の温水を循環させる循環流路33と、循環流路33に設けられ、温水によって燃焼用空気を加熱する温水加熱式空気予熱器37と、温水加熱式空気予熱器37から出た温水をボイラ3の燃焼排ガスによって加熱する温水エコノマイザ39と、が備えられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラプラントに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ボイラでは、熱効率を高めるために燃焼排ガスによって給水を加熱させる排ガスエコノマイザを用いて廃熱を回収している。また、燃焼効率を向上させるために、燃焼用空気は予熱器によって予め加熱されて供給されるようにされている。
この予熱器には、たとえば、特許文献1に示されるように、燃焼用空気を燃焼排ガスとの間で熱交換をし、燃焼用空気の予熱と合わせて、燃焼排ガスの廃熱を回収するようにしたガスエアヒータ(GAH:Gas Air Heater)を用いるもの、特許文献2に示されるように、蒸気等の加熱源を用いて燃焼用空気を加熱するスチームエアヒータ(SAH:Steam Air Heater)がある。また、GAHおよびSAHを組み合わせたものも用いられている。
【0003】
GAHは、排ガスエコノマイザとともに燃焼排ガスの熱量を回収できるので、ボイラ効率を向上させることができる。すなわち、GAHに硫酸腐食防止用の対策、たとえば、下流側の部材にエナメルコーティングを施すことでGAHの出口での燃焼排ガス温度を排ガス中の硫黄分と水分とが結合して出来る硫酸の露点以下、たとえば、120℃に設定できる。
SAHは、燃焼排ガスの廃熱回収は排ガスエコノマイザのみによるので、GAHに比べてボイラ効率は低くなる。一般に、排ガスエコノマイザは硫酸腐食の観点から出口の燃焼排ガス温度を140℃程度に設定するため、ボイラ効率はGAHに比べて2〜3%程度低くなる。しかしながら、SAHは、構造が簡単であるので、安価であり、かつ、操作性および保守性が良好である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−192202号公報
【特許文献2】特開昭58−123022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、GAHは、ボイラ効率は良好であるが、構造が複雑で、大型となるという課題がある。また、燃焼用空気を加熱する熱量を確保するために、排ガスエコノマイザでの熱吸収を抑える必要があるので、抑えられた熱量の分を給水系統統の中で確保するようにされている。すなわち、ボイラへの給水温度を確保するために脱気器の後に、高圧給水加熱器を複数設けた、いわゆる、4段給水再生方式の給水系統とされている。
したがって、プラントとしては、複雑な構造となるとともに製造コストが高くなり、かつ、操作性および保守性が低下する。
特に、GAHおよび高圧給水加熱器は、高価な部材であるとともにGAHでは、硫酸腐食と煤とにより閉塞の懸念から数年置きに部材の交換が必要とされ、高圧給水加熱器では、その開放・修理に多大な保守費用を要する。
【0006】
また、SAHでは、比較的構造が簡単で、安価であり、かつ、操作性および保守性が良好であるが、ボイラ効率がGAHに比べて低いという課題がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑み、空気予熱を行う構造が簡単で、かつ、効率を向上させることができるボイラプラントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明の一態様は、ボイラへの給水系統の途中から分流された後、該給水系統に合流し、該給水系統の温水を循環させる循環流路と、該循環流路に設けられ、前記温水によって燃焼用空気を加熱する温水加熱式空気予熱器と、該温水加熱式空気予熱器から出た温水を前記ボイラの燃焼排ガスによって加熱する温水加熱器と、が備えられているボイラプラントである。
【0009】
給水系統では、復水した水は、低温給水加熱器および脱気器にて加熱されて温水とされている。
本態様では、この温水を循環流路に循環させ、まず、温水加熱式空気予熱器で温水は燃焼用空気と熱交換される。すなわち、温水は燃焼用空気を加熱し、昇温させるとともに燃焼用空気によって冷却される。このように、燃焼用空気は、温水加熱式空気予熱器によって昇温させられてボイラに供給されるので、燃料の燃焼効率を向上させることができる。
【0010】
次いで、冷却された温水は、ボイラの燃焼排ガスと熱交換され、燃焼排ガスを冷却し、燃焼排ガスによって昇温される。言い換えると、温水加熱式空気予熱器で燃焼用空気に熱量を与え、温水加熱器で燃焼排ガスから熱量を回収している。
このように、燃焼排ガスの廃熱は、温水加熱器によって回収されるので、たとえば、排ガスエコノマイザによる回収と合わせて十分に回収することができる。これにより、ボイラプラントの効率を向上させることができる。
【0011】
また、温水加熱式空気予熱器で供給した熱量を温水加熱器で回収した温水は給水系統に戻される。したがって、給水系統に対する影響を最小限とできる。
温水加熱式空気予熱器および温水加熱器は、液体と気体との熱交換となるので、高い熱貫流率が得られるため、構造が簡単で、小型化することができる。
【0012】
前記態様では、前記循環流路は、脱気器から分流されているのが好適である。
【0013】
このようにすると、循環流路に導入される温水には、脱気され余分な酸素が溶存していないので、それが循環されて、たとえば、脱気器以降の給水系統に戻されたとしても、ボイラへの給水に余分な酸素が含まれるのを防止することができる。
【0014】
前記態様では、前記循環流路には、前記温水加熱器をバイバスするバイパス流路が備えられていてもよい。
【0015】
このようにすると、たとえば、ボイラプラントの負荷が低減されて、燃焼排ガスの温度が温水加熱式空気予熱器から出る温水の温度よりも低くなった場合、温水をバイパス流路に通し、温水加熱器をバイパスするようにする。
これにより、温水加熱式空気予熱器で冷却された温水が、温水加熱器で無駄に冷却されることを防止でき、ボイラへ供給される給水に対する影響を低減することができる。
【0016】
前記態様では、燃焼用空気供給経路には、前記温水加熱式空気予熱器の上流側に、燃焼用空気が蒸気により加熱される蒸気加熱式空気加熱器が備えられていてもよい。
【0017】
このようにすると、燃焼用空気に対する加熱量が増加するので、低負荷で温水の温度が大きくない場合、あるいは、寒冷地で空気温度が低い場合でも、燃焼用空気の加熱を確実に行うことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、給水系統の温水によって燃焼用空気を加熱し、それに伴う熱量損失を燃焼排ガスから回収するようにしているので、空気予熱を行う構造が簡単で、かつ、効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第一実施形態にかかるボイラプラントの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第二実施形態にかかるボイラプラントの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を、図面を用いて詳細に説明する。
[第一実施形態]
この発明の第一実施形態にかかるボイラプラントについて、図1を参照して説明する。
図1は、本実施形態にかかるボイラプラントの構成を示すブロック図である。ボイラプラント1は、LNG船に主機として搭載され、LNGを燃料として用いるものである。
【0021】
ボイラプラント1には、舶用ボイラ(ボイラ)3と、舶用ボイラ3で生成された蒸気を利用して回転されるタービン5と、舶用ボイラ3へ給水する給水系統7と、が備えられている。
タービン5は、蒸気を利用するものとして例示したものであり、これに限定されるものではない。また、図1では、タービン5を1個として図示しているが、これは、たとえば、高圧タービン、中圧タービン、低圧タービンおよび後進用タービンが用いられていてもよく、その構成は適宜とされる。
【0022】
舶用ボイラ5には、図示しないバーナの周囲に燃焼用空気を供給する空気配管9が備えられている。バーナは、空気配管9を介して導入される燃焼用空気を用いてLNGを燃焼させ、高温の燃焼ガスを生成する。
燃焼ガスは下流の熱交換器のチューブ内を流れる水等の流体と熱交換して水等を加熱して蒸気とする。蒸気は、たとえば、タービン5に供給され、タービン5に回転動力を与える。
こうして熱交換を終えた燃焼ガスは、燃焼排ガス流路11を通って排気される。
【0023】
給水系統7には、タービン5の排気を冷却して復水する復水器13と、復水器21の復水を必要な圧力まで昇圧する復水昇圧ポンプ15と、タービン5からの抽気で給水を加熱する低圧給水加熱装置17と、タービン5から抽気された蒸気によって給水を直接加熱し、給水中の溶存ガスを物理的に分離除去する脱気器19と、給水の圧力を上げ下流側に押し込む給水ポンプ21と、燃焼排ガス流路11を通る燃焼排ガスによって給水を加熱させる排ガスエコノマイザ23と、が備えられている。
これら復水器13、復水昇圧ポンプ15、低圧給水加熱装置17、脱気器19、給水ポンプ21および排ガスエコノマイザ23は給水配管25により接続されている。
【0024】
ボイラプラント1には、空気配管9を通って導入される燃焼用空気を加熱して昇温させる空気加熱装置31が備えられている。
空気加熱装置31には、脱気器19から分流され、空気配管9および燃焼排ガス流路11を通って脱気器19に戻るように循環した流路を形成する循環流路33と、脱気器19の温水を循環流路33に沿って循環させる温水循環ポンプ35と、空気配管9内を通る循環流路33に設けられ、空気配管9を通る燃焼用空気と熱交換を行う温水加熱式空気予熱器37と、燃焼排ガス流路11を通る循環流路33に設けられ、燃焼排ガス流路11を通る燃焼排ガスと熱交換を行う温水エコノマイザ(温水加熱器)39と、が備えられている。温水エコノマイザ39は、排ガスエコノマイザ23の下流側に備えられている。
【0025】
循環流路33には、温水エコノマイザ39をバイバスするバイパス流路41が備えられている。バイパス流路41には、開閉弁43が、バイパスされる循環流路33には、開閉弁45が備えられている。
開閉弁43,45の開閉を調節することにより、温水は、温水エコノマイザ39を通過して循環することと、温水エコノマイザ39を通過しないで循環することとを選択できるようにされている。
【0026】
温水加熱式空気予熱器37は、温水(液体)と燃焼用空気(気体)との熱交換となるので、高い熱貫流率が得られるため、構造が簡単で、小型化することができる。
また、温水エコノマイザ39も、温水(液体)と燃焼排ガス(気体)との熱交換となるので、高い熱貫流率が得られるため、構造が簡単で、小型化することができる。
【0027】
以下、このように構成された本実施形態にかかるボイラプラント1の動作について説明する。
タービン5の排気は、復水器13で冷却されて復水される。復水された水は、低圧給水加熱装置17で、タービン5から抽気された蒸気によって加熱されて、たとえば、約100℃の温水とされる。この温水が、脱気器19で、タービン5から抽気された蒸気によって加熱され、たとえば、約150℃の温水とされてボイラ3に向けて供給される。この温水は、さらに、排ガスエコノマイザ23によって燃焼排ガス流路11を通る燃焼排ガスによって加熱されて、ボイラ3に供給される。
【0028】
このとき、温水循環ポンプ35が作動し、脱気器19内の温水を循環流路33に導入し、循環流路33に沿って循環させている。
この温水は、まず、温水加熱式空気予熱器37を通る際、空気配管9を通る燃焼用空気と熱交換される。温水は、導入される外気温の燃焼用空気を加熱し、たとえば、120℃まで昇温する。一方、温水は、燃焼用空気によって冷却され、たとえば、100℃まで減温される。
このように、燃焼用空気は、温水加熱式空気予熱器37によって昇温させられてボイラ3に供給されるので、燃料の燃焼効率を向上させることができる。
【0029】
温水加熱式空気予熱器37を通って冷却された温水は、温水エコノマイザ39を通る際、燃焼排ガス流路11を通る燃焼排ガスと熱交換される。ボイラ3は、LNG焚きであるので、燃焼排ガスに含まれる硫黄分は少なく、硫酸腐食の可能性は低くなり、温水エコノマイザ39を出る燃焼排ガスの温度を、たとえば、GAHと同様に120℃程度に設定することができる。
温水エコノマイザ39を通る温水は、通過する、たとえば、150〜160℃の燃焼排ガスを冷却し、たとえば、120℃まで減温する。一方、温水は、燃焼排ガスによって加熱され、たとえば、120℃まで昇温される。
【0030】
このように、燃焼排ガスの廃熱は、温水エコノマイザ39および排ガスエコノマイザ23によって十分に回収することができるので、ボイラプラントの効率を向上させることができる。
特に、硫酸腐食の可能性が少ないLNG焚きの場合には、GAH程度の効率とすることができる。
【0031】
そして、温水加熱式空気予熱器37で供給した熱量を温水エコノマイザ39で回収した温水は脱気器19に戻される。
上述したように、脱気器19に戻される温水の温度は、脱気器19から導入した温水の温度よりも低くなるので、たとえば、脱気器19に供給される蒸気の熱量を少し増加させて、給水系統7での熱量バランスを設定することが好ましい。
なお、これらの温度は、ボイラプラント1の条件によって変化するので、その条件に合うように適宜設定される。
【0032】
本実施形態では、循環流路33を循環する温水に、脱気器19の温水が用いられているので、温水は、脱気器19で脱気され余分な酸素が溶存していない。循環流路33は完全な閉ループとなっているので、途中で、余分な酸素が吸収されることがない。
したがって、この温水が給水系統7のいずれの部分に戻されても、たとえば、脱気器19以降の給水配管25に戻されたとしても、ボイラ3への給水に余分な酸素が含まれるのを防止することができる。
【0033】
たとえば、ボイラ3の負荷が低減されて、燃焼排ガスの温度が温水加熱式空気予熱器37から出る温水の温度よりも低くなった場合、開閉弁43を開くとともに開閉弁45を閉じ、温水加熱式空気予熱器37から出た温水をバイパス流路41に通すようにする。
これにより、温水加熱式空気予熱器37で冷却された温水が、温水エコノマイザ39をバイパスするので、温水エコノマイザ39で無駄に冷却されることを防止でき、ボイラ3へ供給される給水に対する影響を低減することができる。
なお、バイパス流路41は、場合によって省略してもよい。
【0034】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態にかかるボイラプラント1について、図2を用いて説明する。
本実施形態は、空気加熱装置31の構成が第一実施形態のものと異なるので、ここではこの異なる部分について主として説明し、前述した第一実施形態のものと同じ部分については重複した説明を省略する。
なお、第一実施形態と同じ部材には同じ符号を付している。
図2は、本実施形態にかかるボイラプラントの構成を示すブロック図である。
【0035】
本実施形態の空気加熱装置31では、空気配管9における温水加熱式空気予熱器37の上流側に、タービン5からの抽気で加熱される蒸気加熱式空気予熱器47が備えられている。蒸気加熱式空気予熱器47に供給される蒸気は、タービン5の抽気に限定されるものではなく、適宜な蒸気源から供給されてよい。
蒸気加熱式空気予熱器47への蒸気供給は、常時ではなく、必要に応じて行われるようにされている。
図2では、バイパス流路41が示されていないが、これを備えてもよいし、備えなくともよい。
【0036】
このようにすると、低負荷で温水の温度が大きくない場合、あるいは、寒冷地で空気配管9に導入される燃焼用空気の温度が低い場合に、蒸気加熱式空気予熱器47に蒸気を導入するようにする。
これにより、燃焼用空気は、蒸気加熱式空気予熱器47および温水加熱式空気予熱器37によって加熱されるので、燃焼用空気に対する加熱量が増加し、燃焼用空気の加熱を確実に行うことができる。
【0037】
なお、本発明は以上説明した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形を行ってもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 ボイラプラント
3 ボイラ
7 給水系統
19 脱気器
33 循環流路
37 温水加熱式空気予熱器
39 温水エコノマイザ
41 バイパス流路
47 蒸気加熱式空気予熱器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラへの給水系統の途中から分流された後、該給水系統に合流し、該給水系統の温水を循環させる循環流路と、
該循環流路に設けられ、前記温水によって燃焼用空気を加熱する温水加熱式空気予熱器と、
該温水加熱式空気予熱器から出た温水を前記ボイラの燃焼排ガスによって加熱する温水加熱器と、
が備えられていることを特徴とするボイラプラント。
【請求項2】
前記循環流路は、脱気器から分流されていることを特徴とする請求項1に記載のボイラプラント。
【請求項3】
前記循環流路には、前記温水加熱器をバイバスするバイパス流路が備えられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のボイラプラント。
【請求項4】
燃焼用空気供給経路には、前記温水加熱式空気予熱器の上流側に、燃焼用空気が蒸気により加熱される蒸気加熱式空気加熱器が備えられていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のボイラプラント。



【図1】
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【図2】
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