説明

ボイラ供給水精製装置

【課題】ボイラから排出するブローの量を削減することでボイラでの燃料の使用量を低減すること目的とする。
【解決手段】ボイラ6に供給するボイラ供給水を精製するボイラ供給水精製装置である。 処理水を純水に精製する純水装置1と、純水装置1を通過して純水になった処理水を通過させるポリシャー装置2とを備える。上記ポリシャー装置2には、陰イオン交換樹脂21と陽イオン交換樹脂22とが直列に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラに供給するボイラ供給水を精製(改質)するボイラ供給水精製装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ボイラ水のブローを抑制するために、例えば特許文献1に記載のように、ボイラに供給する水の調製を行っている。上記従来技術では、補給水を、ナトリウム型陽イオン交換樹脂を収納した硬水軟化装置、及びクロスフロー型ろ過装置で処理することで軟水化にして、ボイラでのブローの量を抑制することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-180492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らが、ボイラに供給する供給水中のイオン成分を減少させることを目的として、下記のような純水装置に補給水である原水を通すことで製造された純水を、ボイラの供給水としてみた。
ここで、上記純水装置は、不純物を含んだイオン成分をH塔とOH塔のイオン交換樹脂に吸着させ、それと入れ替わりにH+とOH-を抽出して純水を作り出す装置である。
【0005】
しかし、上記純水が供給されたボイラにおいて、純水装置で除去し切れなかったNaやシリカがボイラに供給されていた。これらの不純物がボイラのドラム内で濃縮されることによって、ボイラ水のpH濃度が過剰になりアルカリ腐食によるボイラチューブの腐食やスケールの付着による熱効率の低下を引き起こした。
これに対し、薬注量を変更したり、ボイラの濃縮倍率を下げるために連続的なブローの量を増やすことで不純物を系外へ排出して、上記アルカリ腐食やスケール付着の問題を解決できる。
【0006】
しかし、連続ブローの量を増やすことは、ボイラの保有している熱量を捨てていることになるため、ボイラで使用する燃焼ガス(Bガス、Cガス)が増えてしまうといった問題があった。
本発明は、上記のような点に着目してなされたもので、ボイラから排出するブローの量を削減することで、ボイラでの燃料の使用量を低減すること目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のうち請求項1に記載した発明は、ボイラに供給するボイラ供給水を精製するボイラ供給水精製装置であって、
処理水を純水に精製する純水装置と、純水装置を通過して純水になった処理水を通過させるポリシャー装置とを備え、上記ポリシャー装置には、陰イオン交換樹脂と陽イオン交換樹脂とが直列に配置されていることを特徴とするものである。
【0008】
次に、請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した構成に対し、上記純水装置は、陽イオン交換樹脂を収容したH塔と、陰イオン交換樹脂を収容したOH塔とが直列に接続されて構成されることを特徴とするものである。
次に、請求項3に記載した発明は、請求項1又は請求項2に記載した構成に対し、 上記ポリシャー装置を通過後の処理水の電気伝導率が0.56μS/cm以下であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、純水装置によって純水にした供給水を、さらにポリシャー装置に通すことで、大幅に水質を良くすることが出来る。この結果、ボイラの連続的なブローの量を大幅に削減して、当該ボイラにおける燃料の使用量を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に基づく実施形態に係るボイラ供給水精製装置を説明する概要構成図である。
【図2】純水装置で処理した後の処理水におけるNaイオン濃度と電気伝導率との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係るボイラ供給水精製装置を説明する模式図である。
【0012】
(構成)
本実施形態のボイラ供給水精製装置は、図1に示すように、上流側から純水装置1、及びポリシャー装置2が配置されて構成されている。符号9はろ過装置を示す。
本実施形態の純水装置1は、2床3塔型の純水装置1であって、上流側からH塔3、脱炭酸塔4、OH塔5の順番に配置されている。
【0013】
H塔3内には強酸性陽イオン交換樹脂は充填されている。そのH塔3は、再生剤として塩酸のような鉱酸を用いて上記強酸性陽イオン交換樹脂を再生しながら、供給された水を酸性の処理水に精製する。
【0014】
脱炭酸塔4は、H塔3の処理水中の遊離炭酸を除去した後の処理水をOH塔5に送る。これによって、OH塔5の負担を軽減する。
OH塔5にはOH型陰イオン交換樹脂が充填されている。そのOH塔5は、脱炭酸塔4を介して供給された、H塔3での処理水である鉱酸酸性の処理水を中和して純水に精製する。
【0015】
また、ポリシャー装置2には、陰イオン交換樹脂21と陽イオン交換樹脂22が直列に充填されている。ポリシャー装置2は、純水装置1で精製された処理水である純水を超純水に精製し、その超純水となった処理水をボイラ供給水として、直接若しくは貯蔵タンク(不図示)を介してボイラ6に供給可能となっている。
【0016】
図1では、純水装置1とポリシャー装置2との間の接続路に第1の電導度計7を介装している。また、ポリシャー装置2の出側に第2の電導度計8を介装している。第1の電導度計7の計測値に基づき、純水装置1による処理水の電気伝導率を測定する。また、第2の電導度計8の計測値に基づき、ポリシャー装置2による処理水の電気伝導率を測定する。そして、測定した電気伝導率によってイオン交換樹脂に交換などの保守期間を決定する。
【0017】
(動作や作用効果など)
ボイラ供給水精製装置に供給された原水は、ろ過装置9でろ過された後に純水装置1に供給され、処理によって純水となった処理水が、ポリシャー装置2に供給される。ここで、原水としては、水道水、工業用水、地下水などが例示できる。
【0018】
ポリシャー装置2では、供給された純水である処理水を、陰イオン交換樹脂21及び陽イオン交換樹脂22に通すことで、超純水からなる処理水を精製し、その精製した処理水をボイラ供給水としてボイラ6に供給する。
ここで、上記純水装置1で精製された純水の電気伝導率は、3μS/cm前後の値となっている。図2に、処理水中の電気伝導率とNa濃度との関係を参考までに記載する。
【0019】
そして、上記ポリシャー装置2で処理された超純水からなる処理水の電気伝導率は、充填する陰イオン交換樹脂21及び陽イオン交換樹脂22にもよるが、0.3μS/cm以下の値まで小さくできることを確認している。
ここで、本明細書における超純水は、電気伝導率が0.56μS/cm以下の水と規定する。
【0020】
以上のように、純水装置1で純水に精製した後に、ポリシャー装置2によって更に水質を向上させて、ボイラ6の供給する水の電気伝導率を大幅に小さくする。
これにより、純水中に含まれる不純物を低減できるため、ボイラ6内の水質に悪影響を及ぼすNaやシリカ濃度を下げることができる。Naやシリカ濃度の下げ幅の比率に応じてボイラ6の濃縮倍率を上げるので、上記Naやシリカ濃度を下げることによって、不純物を系外へ排出するための連続的なブローの量が削減して、使用する熱量を回収することが可能となる。この結果、燃焼ガスの使用量の低減を図ることが出来る。
【実施例1】
【0021】
上記実施形態のボイラ供給水精製装置を使用し、ポリシャー装置2の能力を決めるための試験を行った。ポリシャー装置2に充填する陰イオン交換樹脂21と陽イオン交換樹脂22として、H塔3及びOH塔5にそれぞれ充填している陰イオン交換樹脂21と陽イオン交換樹脂22と同じイオン交換樹脂を採用した。
そして、採水初期と採水末期における、上記OH塔5の出側のサンプルと、ポリシャー装置2を通過した後のサンプルとをそれぞれ取得して、各サンプルのNa濃度を測定した。その結果を表1に示す。
【0022】
【表1】

【0023】
この表1から分かるように、ポリシャー装置2を設けることで、ポリシャー装置2を設けない場合と比較して、Na濃度を1/10以下に低減できることが確認できた。
このことは、ボイラ6内に供給される不純物が1/10以下と大幅に低減できることと同義であることから、ボイラ6からの連続ブローの量も1/10以下にすることが可能になると考えられる。なお、上記採水末期のポリシャー装置2出側におけるサンプルのNa濃度は、図2を参照すると、電気伝導率が0.3μS/cmであることが分かる。すなわち、ポリシャー装置2に通して、電気伝導率が、0.3μS/cm以下とすることで、ボイラ6からの連続ブローの量を1/10以下と大幅に減らせることが分かる。
【0024】
また、図示していないが、電気伝導率を0.56μS/cm以下となるように、ポリシャー装置2を調整することで、ボイラ6内に供給される不純物が1/5以下に低減できることを確認した。
以上のことから、ポリシャー装置2を通過後の電気伝導率を0.56μS/cm以下に、好ましくは0.3μS/cm以下に設定することが好ましいことが分かる。
【符号の説明】
【0025】
1 純水装置
2 ポリシャー装置
3 H塔
4 脱炭酸塔
5 OH塔
6 ボイラ
9 ろ過装置
21 陰イオン交換樹脂
22 陽イオン交換樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラに供給するボイラ供給水を精製するボイラ供給水精製装置であって、
処理水を純水に精製する純水装置と、純水装置を通過して純水になった処理水を通過させるポリシャー装置とを備え、上記ポリシャー装置には、陰イオン交換樹脂と陽イオン交換樹脂とが直列に配置されていることを特徴とするボイラ供給水精製装置。
【請求項2】
上記純水装置は、陽イオン交換樹脂を収容したH塔と、陰イオン交換樹脂を収容したOH塔とが直列に接続されて構成されることを特徴とする請求項1に記載したボイラ供給水精製装置。
【請求項3】
上記ポリシャー装置を通過後の処理水の電気伝導率が0.56μS/cm以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載したボイラ供給水精製装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−196613(P2011−196613A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−64146(P2010−64146)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】