説明

ボイラ台数制御装置

【課題】多缶燃焼制御システムにおいて、台数制御対象外のボイラが制御対象に復旧した時に蒸気圧の変動が大きくなる。
【解決手段】多缶設置システムのボイラ台数制御装置において、台数制御対象外のボイラが台数制御装置による制御に復旧したときに、復旧処理手段は該復旧時の各ボイラの状態をそのまま前回指示として、ボイラ決定手段に通知する。そして、ボイラ決定手段は、少なくとも、全ボイラの燃焼段階と、優先順位および要求負荷に対応する必要燃焼量とに基づいて、燃焼段階を変更するボイラを決定するようになっている。このとき、前記ボイラ決定手段は、台数制御対象外のボイラが台数制御装置による制御に復旧したときには、前記前回指示ボイラの内、前回燃焼指示ボイラを前回待機指示ボイラよりも優先的に燃焼段階を変更するボイラに決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はボイラの台数制御装置に関し、特に、複数のボイラを要求負荷に応じて燃焼させる多缶設置システムにおけるボイラ台数制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
効率良く蒸気を供給できるボイラとして、複数台のボイラにより蒸気を生成する多缶設置システムが周知となっている。
【0003】
すなわち、各ボイラで生成された蒸気を供給する蒸気供給配管に接続されたスチームヘッダに圧力検出器を設けて負荷の状態を把握し、台数制御装置が、この負荷に応じて予め各ボイラに対して設定しておいた優先順位に従い、各ボイラを順次燃焼へ移行させ、また、負荷の変動があればこの負荷変動に合わせて各ボイラを燃焼または停止させることにより、変動する負荷に追随させるようになっている(特許文献1参照)。
【0004】
一方、各ボイラには各ボイラの状態の維持変更を抑制するローカル制御装置が設けられ、前記台数制御装置からの信号をローカル制御装置で受けて、各ボイラを制御するとともに、前記台数制御装置に各ボイラの燃焼段階(3位置制御の場合、待機、低燃、高燃の各段階)を通知するようになっている。
【0005】
図6は、前記台数制御装置の処理をブロック図として現したものである。燃焼量演算手段202には前記圧力検出装置の出力と、制御目標となる設定値が入力されており、両者の値から、必要燃焼量が演算される。
【0006】
当該必要燃焼量は、スチームヘッダ圧力に対応する燃焼量であり、待機、低燃、高燃の段階を持つ3位置制御の場合、高燃状態のボイラ1台分の燃焼量を1とすれば、高燃のときの燃焼量が低燃のときの燃焼量の倍であるボイラでは、待機と低燃、又は低燃と高燃の燃焼量差は0.5と表すことができる。従って、必要燃焼量が1であれば、高燃のボイラ1台である場合と、低燃のボイラ2台である場合がある。また必要燃焼量が1.5であれば、高燃のボイラ1台と低燃のボイラ1台である場合と低燃のボイラ3台である場合がある。
【0007】
ボイラ決定手段203は、前記の必要燃焼量、各ボイラに与えられた優先順位から、各ボイラの燃焼段階を決定する。ここで、上記優先順位と各ボイラの関係には、システム固有の所定のパターンがあり、必ずしも共通ではない。すなわち、待機を−、低燃をL、高燃をHとし、3台のボイラを制御する場合を考察する。必要燃焼量が増加する場合を示すと、「−−−」「L−−」「LL−」「LLL」「HLL」・・「HHH」とするパターン、「−−−」「L−−」「H−−」「HL−」「HH−」・・「HHH」とするパターン等がある。前記ボイラ決定手段203はこのパターンに従って各ボイラの燃焼段階を決定することになる。
【0008】
上記ボイラ決定手段203の決定内容は指示手段204によって各ボイラに指示されるとともに、前回指示として前回指示テーブル207に記憶される。ここで前回指示には燃焼指示と待機指示があり、燃焼指示には、更に、前記3位置制御の場合、高燃指示と低燃指示がある。
【0009】
また、前記前回指示テーブル207には、燃焼段階検出手段201が検出した各ボイラの現実の燃焼段階も書き込まれるようになっており、これと前記前回指示とを比較することによって、前記ボイラ決定手段203からの指示が実行された否かが確認できることになる。
【0010】
ところで、当該システムの保守点検時は、点検対象ボイラを1台又は複数台休止して行うことになるが、このとき休止したボイラのローカル制御装置は台数制御装置の制御対象からは外れることになる。あるいは、前記のローカル制御装置と台数制御装置の接続が何らかの原因で、一部あるいは全部不通となり、台数制御装置の制御から外れることがある。このように台数制御装置による制御から外れたボイラは、独自で前記ローカル制御装置により制御される。
【0011】
このように全部のボイラが、あるいは一部のボイラが台数制御装置の制御から外れて独自に稼動している状態(自己燃焼状態)から、台数制御装置の制御対象に復旧したとき、台数制御装置は各ボイラの優先順位に従って各ボイラを起動し稼動が再開することになる。
【0012】
尚、前記ローカル制御装置は、現実に各ボイラの位置に設置されている場合、あるいは台数制御装置に組込まれている場合のいずれもある。
【特許文献1】特開2003−130303号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
前記のように、台数制御対象から外れていたボイラが台数制御装置の制御対象に復旧し、優先順位に従った稼動を再開すると、以下のような問題が発生する。
【0014】
図7は、従来の復旧処理の手順を示すフロー図である。制御対象に復旧した直後の当該台数制御装置における前記前回指示テーブル207に記憶する、前回指示と現実の燃焼段階との遷移を示している。
【0015】
図中、丸印中の数字は各ボイラに与えられた優先順位を表す。更に、各ボイラに対応する記憶領域である矩形枠の上段は指示手段204の前回の指示(ボイラ決定手段203の決定内容)を書き込んだ前回指示欄207a、下段は現実の燃焼段階(燃焼段階検出手段201の検出内容)を書き込んだ燃焼段階欄207bを表している。ここでは、図7(a)に示すように、ボイラ数は5、優先順位は1〜5号機の順に5,3,4,2,1(数値が低い程優先順位は高い)の順となり、各ボイラは待機、低燃、高燃の3つの燃焼段階に切り替え可能であり、待機から高燃への移行は必ず低燃の燃焼段階を経るようになっている。
【0016】
尚、高燃を100%の燃焼量とすると低燃はこの50%の燃焼量となる。また、現在1号機、4号機が低燃段階、3号機が高燃段階で燃焼量2の状態で稼動している(低燃×2+高燃=燃焼量2)状態とする。また、台数制御装置の制御を外れたボイラはローカル制御装置がそのことを検出して、自己燃焼を開始させ、台数制御装置は前回指示テーブル207の上段の前回指示欄207aに「自己燃焼」を書き込み、下段の燃焼段階欄207bはリセットさせる。
【0017】
そして、図7(a)に示すように、台数制御装置の制御が復旧すると、まず、燃焼段階検出手段201は、各ボイラの燃焼段階を検出し、前記前回指示テーブル207の燃焼段階欄207bに検出した内容を書き込む。次いで、設定値と圧力検出装置からの圧力に基づいて燃焼量演算手段202が必要燃焼量を演算する。次いで、各ボイラに与えられた優先順位と前記必要燃焼量等に従って、各ローカル制御装置に燃焼指示(低燃指示、高燃指示)あるいは待機指示が出されることになる。
【0018】
復旧時の必要燃焼量が3(高燃状態のボイラ3台分の燃焼量)である場合を考察すると以下のようになる。
【0019】
図7(b)に示すように、前記優先順位から5号機、4号機、2号機に対して高燃指示が出され、前記高燃段階であった3号機、低燃段階にあった1号機には待機指示が出される。従って、今まで燃焼中であった、前記1号機と3号機は待機段階に移行する。前記のように指示が出された5号機、2号機は時間が経過すると4号機とともに台数制御装置の要求する蒸気圧を発生することになるが、指示が出されてから通常の稼動状態に至るまでの間は、一時的に4号機のみが実質的に稼動した状態となり、蒸気圧の低下は免れない。
【0020】
次いで、復旧時の必要燃焼量が1である場合を考察すると以下のようになる。
【0021】
図7(c)に示すように、前記優先順位から5号機に対して高燃指示が出され、前記高燃段階であった3号機、低燃段階にあった1号機と4号機には待機指示が出される。従って、今まで燃焼中であった、前記1号機、3号機、4号機は待機段階に移行する。前記のように高燃指示が出された5号機は、時間が経過すると台数制御装置の要求する蒸気圧を発生することになるが、高燃指示が出されてから通常の稼動状態に至るまでの間は、台数制御装置が要求する蒸気圧を得ることはできない。従って、一時的に蒸気圧の低下は免れないことになる。
【0022】
次に、図8は、優先順位の最も低い1号機のみが台数制御装置の制御を外れた場合の復旧の手順を示すフロー図であり、保守点検時にしばしば見られる現象である。
【0023】
図8Iに示すように、2号機から5号機が台数制御装置の制御の下で正常に作動しているが、1号機が台数制御装置の制御を外れてローカル制御装置の制御下で作動している状態を想定している。
【0024】
ここで、台数制御装置の燃焼量演算手段202は、設定値を上限P2とし、それより低い圧力を下限P1とした所定の制御幅の間にスチームヘッダ4の圧力が位置するように、各ボイラの燃焼を制御している。すなわち、図9に示すように、ヘッダ圧力が下限値P1の付近では、全ボイラが燃焼する必要があるが、上限P2に近くなるとそれ以上の燃焼量は不要(燃焼台数ゼロ)となる。
【0025】
いま、1号機が台数制御装置の制御対象外から制御対象に復旧し、要求負荷の変動により必要燃焼量が2.0から2.5となったとすると、図8II(a)に示す
ように台数制御装置は4号機、5号機に次いで優先順位の高い2号機に低燃指示を出すとともに、それまでローカル制御装置の制御下にあった1号機に待機指示を出す。この結果、図8II(b)に示すように1号機は高燃段階から待機段階に、また、2号機はパージ状態を経て低燃段階に移行することになる。
【0026】
これによって、所定の時間が経過すると、台数制御装置の要求する2.5台分の必要燃焼量を確保することができることになるが、1号機が待機段階に移行するのであるから、2号機が必要な圧力の蒸気を供給できる状態になるまでは、2台分の燃焼量しか確保できないことになる。
【0027】
本発明は前記従来の事情に鑑みて提案されたものであって、台数制御装置による制御への復旧時であっても圧力変動が少ない状態で目的とする蒸気圧を得ることができる台数制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明は前記目的を達成するために以下の手段を採用している。
【0029】
本発明は、待機段階を含む複数の燃焼段階を有するボイラを複数台備え、負荷の要求に応じて前記燃焼段階の変更を指示する多缶設置システムのボイラ台数制御装置を前提としている。
【0030】
前記ボイラ台数制御装置において、台数制御対象外のボイラが台数制御装置による制御に復旧したときに、復旧処理手段は該復旧時の各ボイラの状態をそのまま前回指示として、ボイラ決定手段に通知する。そして、ボイラ決定手段は、少なくとも、全ボイラの燃焼段階と、優先順位および要求負荷に対応する必要燃焼量とに基づいて、燃焼段階を変更するボイラを決定するようになっている。
【0031】
前記の構成において、前記ボイラ決定手段は、台数制御対象外のボイラが台数制御装置による制御に復旧したときには、前記前回指示ボイラの内、前回燃焼指示ボイラを前回待機指示ボイラよりも優先的に燃焼段階を変更するボイラに決定する。すなわち、前記前回燃焼指示ボイラの燃焼量が前記必要燃焼量より過剰な場合、前回燃焼指示ボイラの内で優先順位の低いボイラから順に燃焼段階引き下げボイラとするようになっている。
【0032】
更に、台数制御対象外のボイラが台数制御装置による制御に復旧した時にパージ状態にあるボイラについては、前記復旧処理手段が、前回燃焼指示ボイラとする。そして、前記前回燃焼指示ボイラの燃焼量が前記必要燃焼量に満たない場合、前記パージ状態にあったボイラを優先的に燃焼指示ボイラとし、前記前回燃焼指示ボイラの燃焼量が前記必要燃焼量より過剰な場合、前記パージ状態にあったボイラを優先的に待機指示ボイラとする。
【0033】
前記の処理が終了すると次の処理として、前記ボイラ決定手段は、全ボイラの優先順位に基づいて燃焼段階を変更するボイラを決定することを順次繰り返すことになる。
【発明の効果】
【0034】
前記の構成により、台数制御に復旧したときの各ボイラの燃焼段階を基準にしてこの後の燃焼制御をすることができるので、前記蒸気圧の変動が小さくなる効果がある。また、パージ状態も考慮して前記復旧時の燃焼段階を決定することによって、パージ処理を無駄にすることがなくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
図1は本発明が適用される燃焼システムの1例を示すものである。図1に示すように、各ボイラ1からの蒸気配管6をスチームヘッダ4に接続しておき、スチームヘッダ4には当該スチームヘッダ4の圧力を検出する圧力検出装置3が設けられている。また、各ボイラ1には各ボイラ1に対する制御を行うローカル制御装置5が備えられ、各ローカル制御装置5は台数制御装置2と接続されている。
【0036】
図2は台数制御装置の更に詳しい機能ブロック図を示すものである。尚、以下に説明する各機能はCPUとROM等に記憶されたプログラムとが協働して作動する構成であってもよいし、また、ハードウェアで構成されたものであってもよい。
【0037】
従来と同様、燃焼量演算手段202には前記圧力検出装置3の出力が入力され、また、制御目標となる設定値(設定圧力値)が設定値テーブル205から入力されて、この2つの値から必要燃焼量を求める。次いで、このようにして得られた必要燃焼量と、各ボイラに与えられた優先順位、更に、各ボイラに対する前回の指示内容がボイラ決定手段203に入力されており、これにより、当該ボイラ決定手段203は各ボイラの燃焼段階を決定する。この決定を受けて指示手段204が、燃焼指示(低燃指示、高燃指示)、待機指示を各ボイラに出すようになっている。尚、前記優先順位は優先順位テーブル206に、また、前記指示手段204の出す各ボイラへの指示は前回指示として前回指示テーブル207に記憶されている。
【0038】
この構成において、通常時(全ボイラが台数制御装置2による制御下にあるとき)、要求負荷が増加し、蒸気圧力値が低下すると、優先順位の高いボイラから順に燃焼段階を引き上げ、要求負荷が減少し蒸気圧力値が上昇すると、優先順位の低いボイラから順に燃焼段階を引き下げることで、必要燃焼量に応じた台数制御を行う。
【0039】
尚、ボイラごとに燃焼時間の積算値を算出し、燃焼時間が少ないものほど稼動優先順位を高くするように前記優先順位の変更を行う。これによって、特定のボイラが過度に消耗することを防止できる。また、前記各ボイラ1はこの例では、待機、低燃、高燃の3つの燃焼段階を取り,待機段階からいきなり高燃段階に移行することはできず、必ず低燃段階を経てから高燃段階に移行するようになっている。
【0040】
(実施の形態1)
前記構成において、前記ローカル制御装置5と台数制御装置2との間で何らかの原因で通信ができなくなることがある。このとき、当然一部あるいは全部のボイラ1のローカル制御装置5が台数制御装置2による制御が不可能な状態となるが、図2では全部のボイラ1が台数制御装置2からの制御から外れる場合を想定して記述する。
【0041】
このように全部のボイラが台数制御から外れたとき、各ボイラ1はローカル制御装置5に設定されている上下限の間の圧力で、当該ローカル制御装置5によって独自に制御されることになる。また、前記前回指示テーブル207に記憶されている前回指示は全部のボイラ1が台数制御装置2による制御から外れたとき“自己燃焼”、燃焼段階は“リセット”となっている。この状態でボイラ決定手段203が作動すると、前記したように、発生する蒸気圧に一時的な変動が発生することから、本発明では、前記構成に加えて台数制御装置2に復旧処理手段208が設けられ、以下の手順でボイラ1の燃焼を制御するようになっている。
【0042】
まず、従来同様、燃焼段階検出手段201は前記台数制御装置2による制御が復旧したときに復旧時の自己燃焼ボイラを含む各ボイラの燃焼段階を検出する。次いで復旧処理手段208は、前記燃焼段階検出手段201が検出した復旧時の燃焼段階を前回指示として、当該前回指示テーブル207に書き込むようになっている。これによって、ボイラ決定手段203は前回指示内容を入手することができる。
【0043】
そこでボイラ決定手段203は、全ボイラの燃焼段階と、全ボイラの優先順位とともに、燃焼量演算手段202の決定した必要燃焼量(要求負荷)に従って、以下の基準に従って、各ボイラの燃焼段階を決定し、指示手段204はこの旨を各ボイラに指示するとともに、これを前回指示として前回指示テーブル207に書き込むことになる。
【0044】
前記ボイラ決定手段203でのボイラの決定基準は以下のようになる。
【0045】
決定基準(1):前回燃焼指示ボイラを前回待機指示ボイラよりも優先的に燃焼段階を変更するボイラに決定する。
【0046】
決定基準(2):前回燃焼指示ボイラの燃焼量が前記必要燃焼量に満たない場合であって、前回燃焼指示ボイラに燃焼量引き上げ余裕がある場合、前回燃焼指示ボイラについてその優先順位に従って燃焼段階引き上げボイラを決定する。
【0047】
決定基準(3):前回燃焼指示ボイラの燃焼量が前記必要燃焼量に満たない場合であって、前回燃焼指示ボイラに燃焼量引き上げ余裕がない場合、前回待機指示ボイラについて優先順位に従って燃焼段階引き上げボイラを決定する。
【0048】
決定基準(4):前記前回燃焼指示ボイラの燃焼量が前記必要燃焼量より過剰な場合、前回燃焼指示ボイラの内で優先順位の低いボイラから順に燃焼量引き下げボイラを決定する。
【0049】
決定基準(5):台数制御手段による制御が復旧した後の2回目からのボイラ決定処理においての、燃焼段階を変更するボイラについては、全ボイラの優先順位に基づいて決定する。
【0050】
以下具体例を参照して更に詳しく説明する。
【0051】
図3は本発明の復旧処理の手順を示すフロー図である。図7に示した場合と同様、制御対象外のボイラが制御対象に復旧した直後の台数制御装置2における前記前回指示テーブル207に記憶する、前回指示と現実の燃焼段階との遷移を示している。
【0052】
図3(a)に示すように、ボイラ数は5、優先順位は1〜5号機の順に5,3,4,2,1(数値が低い程優先順位は高い)の順である。前回指示テーブル207の各ボイラに対応する記憶エリアである枠内の上段が前回指示を記憶する前回指示欄207a、下段は燃焼段階を記憶する燃焼段階欄207bである。
【0053】
前記したように、台数制御装置2と各ローカル制御装置間は不通となっているので、各ボイラ1はローカル制御装置5で制御されており、現状では1号機、4号機が低燃段階、3号機が高燃段階、2号機と5号機が待機段階である。ここで、燃焼量演算手段202で演算された必要燃焼量が3である場合を考察すると以下のようになる。
【0054】
図3(a)に示すように、台数制御装置2による制御が復旧すると、前記したように燃焼段階検出手段201が復旧時の各ボイラの燃焼段階を検出し、前記前回指示テーブル207の燃焼段階欄207bに書き込む。ここでは前記したように、1号機、4号機が低燃段階、3号機が高燃段階、2号機と5号機が待機段階である。次いで、図3(b1)に示すように、復旧処理手段208は、前記燃焼段階をそのまま前回指示として、前記前回指示テーブル207の前回指示欄207aに書き込む。
【0055】
ボイラ決定手段203は、全ボイラの燃焼段階と、全ボイラの優先順位、さらに、必要燃焼量を参照して、図3(c1)に示すように、前回燃焼指示ボイラの内で燃焼段階に引き上げ余裕があるボイラを優先順位の高い順に抽出し、ここでは4号機と1号機を現状の低燃段階から高燃段階に引き上げるように決定し(決定基準(1)、(2)参照)、指示手段204はこの指示をそれぞれのボイラに出す。指示手段204は優先順位の高い4号機が高燃に移行したことを確認した後、1号機を現状の低燃段階から高燃段階に引き上げる指示を出す。
【0056】
前記の指示に基づいて1号機、4号機が高燃段階に移行すると、必要燃焼量3に対して、3の燃焼量が確保されたことになる。
【0057】
この後、必要燃焼量の増加要求があると、その増加分については全ボイラに与えられた優先順位に従って燃焼段階引き上げボイラが決定される(決定基準(5)参照)。すなわち、必要燃焼量が3.5になれば、増加要求燃焼量0.5について、優先順位の最も高い5号機に低燃指示が出され、低燃段階に移行し3.5の必要燃焼量を満たすようになる。
【0058】
この燃焼段階から更に、必要燃焼量4.0の増加要求(増加要求燃焼量0.5)があると、優先順位の高い5号機が高燃に移行する。
【0059】
仮に、この燃焼段階から、必要燃焼量が減少すると、当該減少分については燃焼状態にあるボイラで最も優先順位の低い1号機(当該1号機が前回燃焼指示ボイラであるか否かは問われない)が待機段階に移行するという手順で順次燃焼するボイラ1が遷移し、定常的には優先順位と必要燃焼量に従った通常の制御に移行することになる(決定基準(5)参照)。
【0060】
次いで燃焼量演算手段202で演算された必要燃焼量が1である場合を考察すると以下のようになる。
【0061】
前記例と同様、台数制御装置2による制御が復旧すると、台数制御装置の燃焼段階検出手段201が当該復旧時の燃焼段階を検出し、前記前回指示テーブル207の燃焼段階欄207bに書き込む。ここでは図3(a)に示すように、1号機、4号機が低燃段階、3号機が高燃段階、2号機、5号機が待機段階である。
【0062】
次いで、復旧処理手段208が図3(b2)に示すように、前記燃焼段階を前回指示に置き換えて前回指示テーブル207の前回指示欄207aに書き込む。これによって、前回指示を受け取ったボイラ決定手段203が、前記前回燃焼指示ボイラと、当該前回燃焼指示ボイラの優先順位と、更に必要燃焼量を参照して、以下のように燃焼段階を変更するボイラを決定し、指示手段204が変更された内容の指示を出す。
【0063】
すなわち、図3(c2)に示すように、前回燃焼指示ボイラで最も優先順位の低い1号機を待機に引き下げるボイラに決定し、次に優先順位の低い3号機を現状の高燃段階から低燃段階に引き下げるボイラに決定する(決定基準(1)、(4)参照)。指示手段207はこの決定内容を各ボイラに指示する。これによって、1号機が待機、3号機が低燃段階に移行すると、合計で燃焼量1(3号機の低燃+4号機の低燃)となる。
【0064】
この後は、要求される負荷が増加すると、優先順位の最も高い5号機が低燃、あるいは高燃に移行し、この燃焼段階から、必要燃焼量が減ると、燃焼状態にあるボイラの内で優先順位の最も低い3号機が待機に移行するという手順で順次定常状態に移行することになる(決定基準(5)参照)。
【0065】
(実施の形態2)
図4は、本発明の別の実施形態を示すフロー図である。図3に示した場合と同様、制御対象に復旧した直後の当該台数制御装置2における前記前回指示テーブル207に記憶する、前回指示と現実の燃焼段階との遷移を示している。
【0066】
図4(a)に示すように、ボイラ数は5、優先順位は1〜5号機の順に5,3,4,2,1の順である。また、前記したように、各ローカル制御装置5が台数制御装置2の制御から外れた状態が発生した際は、各ボイラ1はローカル制御装置5の制御に基づいて制御されており、現状では1号機、4号機が低燃段階、3号機が高燃段階であり、2号機は待機段階、5号機はパージ状態である。
【0067】
図4(a)に示すように、ローカル制御装置5が台数制御装置2の制御下におかれる状態が復旧すると、前記したように燃焼段階検出手段201が当該復旧時の各ボイラの燃焼段階を検出し、前記前回指示テーブル207の燃焼段階欄207bに書き込む。
【0068】
次いで、復旧処理手段208は、前記の実施の形態と同様、各燃焼段階をそのまま、前回指示欄207aに前回指示として書き込むとともに、パージ状態のボイラについては前回指示として低燃を書き込む。ついで、ボイラ決定手段205は以下の基準に従って、燃焼段階を変更するボイラを決定する。
【0069】
決定基準(6)前記前回燃焼指示ボイラの燃焼量が前記必要燃焼量に満たない場合(増加要求がある場合)、前記パージ状態にあったボイラを、燃焼指示の内で最も燃焼段階の低い燃焼指示ボイラとする。
【0070】
決定基準(7)前記前回燃焼指示ボイラの燃焼量が前記必要燃焼量より過剰な場合(削減要求がある場合)、前記パージ状態にあったボイラを優先的に待機指示ボイラとする。
【0071】
ここで、燃焼量演算手段202で演算される必要燃焼量が3である場合を考察すると以下のようになる。
【0072】
台数制御装置2による制御が復旧すると台数制御装置2の燃焼段階検出手段201が当該復旧時の各ボイラ1の燃焼段階を検出し、この燃焼段階を前回指示テーブル207の燃焼段階欄207bに書き込む。ここでは前記したように、1号機、4号機が低燃段階、3号機が高燃段階、2号機が待機段階、5号機はパージ状態である。次いで、図4(b1)に示すように、復旧処理手段208は、燃焼段階欄207bに書き込まれた燃焼段階を、5号機を除いてそのまま前回指示として前回指示テーブル207の前回指示欄207aに書き込むとともに、パージ状態にある5号機については低燃として、前回指示欄207aに書き込む。
【0073】
次いで、ボイラ決定手段203は、前記書き込んだ前回燃焼指示ボイラを含む全ボイラの燃焼段階と、全ボイラの優先順位、さらに、必要燃焼量(ここでは3)を参照して、図4(c1)に示すように、前回燃焼指示ボイラの内で優先順位の最も高い5号機を高燃指示ボイラに決定する(決定基準(6)参照)。他の前回指示ボイラを含む全ボイラに対する指示は前回指示と同じ内容、すなわち、1号機、4号機は低燃、3号機は高燃、2号機は待機段階とし、これを受けて指示手段204は各ボイラに前記決定内容の指示を出す。5号機が高燃段階に移行すれば燃焼量演算手段202の要求する燃焼量3が満足されたことになる。前記において、例えば4号機が最も優先順位が高いときは、前記5号機は低燃指示ボイラ、4号機は高燃指示ボイラと決定される。
【0074】
この状態から、必要燃焼量が減ると、最も優先順位の低い1号機が待機段階に移行する、という手順で順次燃焼するボイラ1が遷移し、定常的には優先順位と必要燃焼量に従った通常の制御に移行することになる(決定基準(5)参照)。
【0075】
次いで必要燃焼量が1.5である場合を考察すると以下のようになる。
【0076】
前記例と同様、台数制御装置2による制御が復旧すると燃焼段階検出手段201が当該復旧時の各ボイラ1の燃焼段階を検出し、この燃焼段階を前回指示テーブル207の燃焼段階欄207bに書き込む。ここでは前記したように、1号機、4号機が低燃段階、3号機が高燃段階、2号機が待機段階、5号機がパージ状態である。
【0077】
次いで、復旧処理手段208が図4(b2)に示すように、5号機以外の各ボイラの燃焼段階を前回指示に置き換えるとともに、前記パージ状態の5号機は低燃として、前記前回指示テーブル207の前回指示欄207aに書き込む。
【0078】
これによって、ボイラ決定手段203が、必要燃焼量と、前回燃焼指示ボイラとこの優先順位を参照して、以下の指示を出す。すなわち、図4(c2)に示すように、前記パージ状態の5号機を優先的に待機ボイラと決定し(決定基準(7))、更に、優先順位の最も低い1号機を待機段階にすることを決定する(決定基準(4)参照)。次いで、指示手段204がこの旨を各ボイラに指示する。1号機が待機段階に移行すれば、合計で燃焼量1.5が実現できることになる。
【0079】
この後は、要求される負荷が増加すると、優先順位の最も高い5号機が低燃に移行し、この状態から、必要燃焼量が減ると、最も優先順位の低い3号機が待機段階を引き下げるという手順で順次定常状態に移行することになる(決定基準(5)参照)。
【0080】
(実施の形態3)
保守点検は1台あるいは複数台のボイラを停止することによって行われ、このとき、停止されたボイラのローカル制御装置5は台数制御装置2の制御から外れることになる。
【0081】
図5は本実施の形態の復旧手順を示すフロー図であり、この実施の形態では、最も優先順位の低い1号機のみが台数制御装置2の制御から外れ、他の4台のボイラは台数制御装置2の制御下で正常に作動している状態を想定している。前記の実施形態と同様、ボイラ数は5、優先順位は1〜5号機の順に5,3,4,2,1の順である。
【0082】
図5Iに示すように、1号機のみが台数制御装置2の制御から外れると当該1号機はローカル制御装置5の制御下で作動し、台数制御装置2は1号機に対応する前回指示テーブル207の前回指示欄207aに「自己燃焼」を書き込み、燃焼段階欄207bに「リセット」を書き込む。
【0083】
このとき、必要燃焼量が2.0であれば制御対象ボイラ群の内で4号機と5号機が高燃となる。また、ローカル制御装置5で制御されているボイラである1号機は、ローカル制御装置5に設定された上下限の圧力範囲内で、待機段階、低燃、高燃のいずれかの燃焼段階をとるが、ここでは台数制御装置2の制御に復旧したとき高燃段階にあるものとする。
【0084】
前記1号機が台数制御装置2の制御に復旧し、必要燃焼量が2.5に変動したとすると、図5II(a)に示すように、燃焼段階検出手段201が復旧時の各ボイラの燃焼段階を検出し、前記前回指示テーブル207の燃焼段階欄207bに書き込む。ここでは、前記したように、1号機、4号機、5号機が高燃段階、2号機3号機が待機段階となる。
【0085】
次いで、図5II(b)に示すように、復旧処理手段208は、前記燃焼段階をそのまま前回指示として、前記前回指示テーブル207の前回指示欄207aに書き込む。
【0086】
ここで、要求されている必要燃焼量は2.5であり、復旧時には3の燃焼量があるので、ボイラ決定手段203は、全ボイラの燃焼段階と、全ボイラの優先順位、さらに、必要燃焼量を参照して、図5II(c)に示すように、前記決定基準(4)に従って、復旧時に前回燃焼指示ボイラの内最も優先順位の低い1号機に低燃指示を出し、優先順位の高い4号機と5号機には高燃指示を出し、更に、2号機と3号機には待機指示を出すことになる。
【0087】
これによって、1号機が高燃段階から低燃段階移行し、必要燃焼量2.5が、燃焼量の大きな変動を伴わずに実現できたことになる。
【0088】
この後、必要燃焼量が増えると全ボイラの内、4号機、5号機に次いで優先順位の高い2号機が低燃段階に移行し、この状態から、必要燃焼量が減ると、優先順位が最も低い1号機が待機段階に移行するという手順を経て、4台に定常状態に移行することになる。
【0089】
(その他の実施の形態)
前記各実施の形態においては、前回燃焼指示ボイラの燃焼量が必要燃焼量の範囲内である場合について説明したが、前回燃焼指示ボイラがすべて高燃であって(すなわち、前回燃焼指示ボイラに増加余裕はない)必要燃焼量がそれ以上である場合は、更に、待機中(前回燃焼指示以外)のボイラの優先順位が最も高いボイラに低燃指示(燃焼段階引き上げ指示)が出されることになる(決定基準(1)、(4)参照)。
【0090】
また、待機、低燃、高燃の3燃焼段階の状態を持つボイラについて説明したが、より多段の状態を持つボイラを備えたシステムであっても適用できることはもちろんである。
【0091】
更に、台数制御装置2の制御から外れたローカル制御装置5については、前記前回テーブル207の前回指示欄207aに「自己燃焼」の指示を書き込むこととしたが、台数制御装置側からボイラの状態が把握できるときは、現在の当該ボイラの燃焼段階を書き込むことでもよい。
【0092】
更に、前記説明では、前記前回指示テーブル207bの燃焼段階、前記各ボイラの優先順位、必要燃焼量とに基づいて、燃焼段階引き上げボイラを決定することとしたが、状況に応じて他の条件を用いることを排除するものではない。
【0093】
以上説明したように、本発明は台数制御装置の制御から外れたローカル制御装置が台数制御装置の制御下に復旧した時の各ボイラの燃焼段階を前回指示として前回指示テーブルに書き込むようにしているので、ボイラ決定手段は前記前回指示に基づいて燃焼量の増減対象となるボイラを決定することができ、復旧時の前記圧の変動が少なくなる利点がある。また、復旧時にパージ状態にあるボイラの該パージ処理を無駄にすることも少なくなる。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明はボイラ台数制御装置において、台数制御装置の制御から外れたローカル制御装置が台数制御装置の制御下に復旧した時に蒸気圧の変動が少なくなるように構成され、更に、復旧時のパージ状態をもできるだけ無駄にしないようになっているので、多缶燃焼システムを効率よく運転することができ、産業上の利用可能性が大きい。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明が適用される多缶燃焼システムの概要図である。
【図2】本発明のボイラ台数制御装置の機能ブロック図である。
【図3】本発明のボイラ台数制御装置の作動手順を示すフロー図である。
【図4】本発明のボイラ台数制御装置の別の作動手順を示すフロー図である。
【図5】本発明のボイラ台数制御装置の更に別の作動手順を示すフロー図である。
【図6】従来のボイラ台数制御装置の機能ブロック図である。
【図7】従来のボイラ台数制御装置の作動手順を示すフロー図である。
【図8】従来のボイラ台数制御装置の別の作動手順を示すフロー図である。
【図9】台数制御装置による必要燃焼量と制御幅の関係を示す図である。
【符号の説明】
【0096】
201 燃焼段階検出手段
202 燃焼量演算手段
203 ボイラ決定手段
204 指示手段
205 設定値テーブル
206 優先順位テーブル
207 前回指示テーブル
208 復旧処理手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
待機段階を含む複数の燃焼段階を有するボイラを複数台備え、負荷の要求に応じて前記燃焼段階の変更を行う多缶設置システムのボイラ台数制御装置において、
台数制御対象外のボイラが制御対象に復旧したときに、該復旧時の自己燃焼状態のボイラを含む各ボイラの燃焼状態をそのまま前回指示としてボイラ決定手段に通知する復旧処理手段と、
少なくとも、前記復旧処理手段より通知を受けたボイラを含む全ボイラの燃焼段階、優先順位および要求負荷に対応する必要燃焼量に基づいて、燃焼段階を変更するボイラを決定するボイラ決定手段と
を備えたことを特徴とするボイラ台数制御装置。
【請求項2】
前記ボイラ決定手段が、前記復旧時に、前回指示ボイラの内、前回燃焼指示ボイラを前回待機指示ボイラよりも優先的に燃焼段階を変更するボイラに決定する請求項1に記載のボイラ台数制御装置。
【請求項3】
前記ボイラ決定手段が、前記前回燃焼指示ボイラの燃焼量が前記必要燃焼量より過剰な場合、前記前回燃焼指示ボイラの内で優先順位の低いボイラから順に燃焼段階引き下げボイラとする請求項2に記載のボイラ台数制御装置。
【請求項4】
前記ボイラ決定手段が、前記前回燃焼指示ボイラの燃焼量が前記必要燃焼量に満たない場合、前記復旧時に、パージ状態にあったボイラを燃焼指示ボイラに決定する請求項1に記載のボイラ台数制御装置。
【請求項5】
前記ボイラ決定手段が、前記前回燃焼指示ボイラの燃焼量が前記必要燃焼量より過剰な場合、前記復旧時に、パージ状態にあったボイラを待機指示ボイラに決定する請求項1に記載のボイラ台数制御装置。
【請求項6】
前記ボイラ決定手段が、次に、全ボイラの優先順位に基づいて燃焼段階を変更するボイラを決定することを順次繰り返す請求項2〜5のいずれかに記載のボイラ台数制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−58168(P2009−58168A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−225125(P2007−225125)
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【出願人】(504143522)株式会社三浦プロテック (488)
【Fターム(参考)】