説明

ボイラ缶体への温度計の取付け方法

【課題】 温度応答性がよく、故障時にも容易に交換可能で、灰分の多い燃料も焚けるボイラの缶体過熱検知としても使用できる缶体への温度計の取付け方法を提供する。
【解決方法】 水管と隣り合う水管の間に溶接された縦ヒレ、または、水管の外表面に温度センサー保護管を30〜60°の角度で上向きに溶着し、保護管内に温度センサーを縦ヒレ又は水管にぶつかるまで挿入後、熱伝導のよい充填剤を温度センサー感温部の周りに深さ10〜30mmになる量を投入・充填し、温度センサー感温部が動かないよう保護管入口で温度センサーを固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は木質ペレット焚き蒸気ボイラにおける水管温度を検出する温度センサーの取付け方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多管式貫流ボイラにおいて、何らかの原因でボイラ内の水位が異常に低下し缶体が過熱されるのをそのまま放置すれば、重大な事故につながるおそれがある。このような事故を防止する一手段として、従来は図3に示すような、水管1と隣り合う間にあって軸方向に両水管溶接されている縦ヒレ2に、温度センサー3の検出端を保持できるよう挿入穴を穿ったスタッド7を先端につけたセンサー保護管5を溶着し、そのスタッドに温度センサー検出端4を挿入し縦ヒレ2の温度を常時監視して、缶体の過熱を検知することが行われていた。
【0003】
また、ボイラのコンパクト化にともない、火炉の容積熱負荷が高くなってきたため、温度検知に関する応答性が速い取付け方が工夫され、図6のように縦ヒレの直接センサー感温部を埋設固定する方法や、図4のように縦ヒレ2を貫通してスタッドの先端8を火炉側に突き出して固定する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−337007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明で採用しようとする木質ペレット焚き蒸気ボイラにおいて、図4のように縦ヒレを貫通したスタッドの取り付け方では、燃料中の灰分が突出したスタット部に固着し、対流熱の移動速度が低下する為、応答性を良くするという本来の効果が発揮できない。図6のように埋設した場合はセンサーが故障したとき交換が不可能である。また、図3のようにスタッド先端部を溶着て、その部分にセンサー検出端を単に差し込むだけでは感温部に熱伝達の悪い気体が残るので十分な応答性は得られない。本発明は灰分の多い燃料である木質ペレット焚き蒸気ボイラにおいても十分な応答速度を有し、故障しても容易に交換可能な缶体加熱検知手段を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
図面を参照して前記課題の解決手段を説明する。本発明は水管1と隣り合う水管1の間にあって軸方向に水管1に溶着されている縦ヒレ2の外側(火炉から遠い方の)表面、又は水管1の外表面に温度センサー保護管を水管の軸方向とθの角度もって溶着し、その保護管に温度センサーを縦ヒレ2又は水管1にぶつかるまで挿入する。
【0007】
その後、保護管の中に熱伝導度のよい充填剤6を温度センサーの感温部4が十分漬かる量注入し、温度センサーの位置がずれないよう保護管の入口で温度センサーを固定することにより検知感度のよい缶体過熱検知手段が出来る。
【0008】
温度センサーが故障した場合、固定を外し、温度センサーと熱伝導度のよい物質を保護管から抜き出した後、新しい温度センサーを上述の手順で再度入れればよく、補修も簡単となる。
【発明の効果】
【0009】
本発明で提案する温度計の取付け方で、燃焼時に灰分等の汚れやすいものが多量に排出される貫流形蒸気ボイラにおいても、温度センサーの応答性を落すことなく、また、故障時にも容易に交換が出来る缶体加熱検知となる。
【0010】
蒸気ボイラだけでなく、同様の燃料を焚く温水ボイラ、熱媒ボイラ等の缶体加熱検知として利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の温度計の取付け方を水管の軸方向から見た図である。
【図2】図1を水管の軸と90°となる方向から見た図である。
【図3】スタッドを使用した保護管を縦フレに溶着した例の図である。
【図4】縦ヒレを貫通したスタッドを使用した保護管の使用例の図である。
【図5】温度センサーを直接接着する為、押さえ板を溶接して取付けた例の図である。
【図6】図5を水管の軸方向から示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図2に基づいて説明する。
【0013】
図1は本発明である温度計の取付け方を蒸気ボイラの縦ヒレに行った形態を水管の軸方向から見た図であり、図2はそれを水管の軸に対して90°方向から見た図を示している。
【0014】
水管1と隣り合う水管の間に溶接された縦ヒレ2の火炉側ではない表面(以下外表面と呼ぶ)に温度センサー保護管5を縦ヒレ長手方向とθ角となるよう上向に溶着する。
【0015】
この角度θは30〜60°が、保護管5の長さ、後述する充填剤6の量の観点から好ましい。
即ち角度が30度以下では、保護管を缶体の外装まで引き出すには保護管長さが長くなるため、温度センサー自体も長いものが必要となる。また、60°以上では縦ヒレから外装までの距離が短く、保護管を通じて縦ヒレ2の熱が放出されやすくなるため、温度センサーの感温部の感度が落ちるし、また、感温部の感度を上げる為に充填する充填剤の量が増加するだけでなく、悪くすると放熱を増長するほうに働くこととなる。
【0016】
縦ヒレ2に溶着した保護管5の中に温度センサー3を縦ヒレ2にぶつかるまで挿入する。
ここで使用する温度センサーとしてはシース形の熱電対または白金測温抵抗体が好ましい。
【0017】
温度センサー3を挿入後、熱伝導どのよい充填剤6を温度センサーの感温部4が十分埋まる量を保護管5の中に投入する。使用温度域から充填剤としては銅やアルミニュームのような熱伝導度のよい金属やカーホ゛ランダムや黒鉛のような固体粒子がこのましい。また、充填量としては先端から10〜30mm程度が埋まる量がこのましい。
【0018】
充填剤5を投入後、温度センサーの位置がズレないよう保護管5入り口に取り付けた固定冶具で温度センサーを固定する。本例ではコンプレッションフィティング5aを用い、シース形熱電対を固定した。
【0019】
温度センサー故障時には、センサー交換が容易で、充填剤を抜き出し、再充填するば、初期の設置状態にもどるため、メンテナンスも容易である。
【0020】
これにより、温度センサーによる感度のよい缶体加熱検知手段を提供できる。
【0021】
本例は縦ヒレに温度計を取付ける方法を示しているが、水管1自体の表面にも同様に取り付ければ、同様な機能の缶体加熱検知手段となる。
【符号の説明】
【0022】
1 水管
2 縦ヒレ
3 温度センサー(シース形熱電対)
4 温度センサー感温部
5 保護管
5a コンプレッションフィティング
6 充填剤
7 スタッド
8 頭出しスタッド
9 押さえ板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラの缶体の温度を測る温度計の取付け方法において、水管と隣り合う水管の間に溶接された縦ヒレ、または、水管の外表面に温度センサー保護管を30〜60°の角度で上向きに溶着し、保護管内に温度センサーを縦ヒレ又は水管にぶつかるまで挿入後、熱伝導のよい充填剤を温度センサー感温部の周りに深さ10〜30mmになる量を投入・充填し、温度センサー感温部が動かないよう保護管入口で温度センサーを固定することで、木質ペレットのような燃料に灰分を多量に含む燃料を焚くボイラのおいても缶体加熱検知手段として使用できるボイラ缶体への温度計の取付け方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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