説明

ボイラ装置

【課題】ボイラ燃焼停止時の混入空気に起因する、ボイラ再起動時における一時的なアラーム動作が防止されるボイラ装置を提供する。
【解決手段】ボイラ給水は、配管1からボイラ20に供給され、チューブ23内で加熱される。蒸気はボイラ缶22から配管24を介してユースポイントへ送られる。ボイラ缶24には、弁28を有した配管26を介して不活性ガスが導入可能とされている。この配管24の途中から分岐した採取ライン40によって蒸気の一部が分取される。熱交換器50で凝縮した凝縮水は、溶存酸素計71、電気伝導度計72、TOC計73及びpH計74で測定される。凝縮水の温度及び流量が一定となるように弁51,61が制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラ装置に係り、特に蒸気の質を測定することができるよう構成されたボイラ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、製品を加熱ないし殺菌する際、ボイラで発生させた蒸気を熱交換器に導入して製品と間接的に熱交換する手法が多く採用されているが、近年、この蒸気を熱交換器を使用せずに直接製品に吹き込んで製品の加熱や殺菌を行うことが一般化してきた。
【0003】
食品製造工場では、原材料のおいしさや新鮮さをできるだけ維持するために、蒸気を直接食品に吹き込み、殺菌することが行われ始めた。このような状況下では、蒸気に万一異物が含まれると、この蒸気を吹き込んだ食品は品質が維持できないために出荷されず、廃棄されてしまう。従来は、十分に水処理された水を用い、かつ十分に管理されたボイラが使用されているので、このような蒸気の質は殆ど問題になることはなく、最終製品の品質を経験者が試験により判定し、合格品のみを出荷していた。このような状況は、コーンフレークなどのシリアル、レトルト食品や缶詰などの製造工程でも発生する他に、病院におけるガーゼ、包帯などの殺菌などでも発生する。
【0004】
従来のように、蒸気発生源として十分に水処理され水を用い、管理されたボイラを使用する限りは、発生した蒸気の質はさほど問題にならい。しかし、近年、比較的価格が安く、無人運転が可能な小型貫流ボイラが普及してきた。小型貫流ボイラ(JIS B 8223では特殊循環ボイラと定義されている。)においては、経済性が重視され、性能的にあまり優れていない汽水分離機が設けられているために、蒸気に不純物が含まれやすい傾向がある。従って、このような小型貫流ボイラで作った蒸気を製品と直接接触させるような用途に使用するためには、蒸気の質をモニタリングする必要がある。
また、従来においては、十分に水処理された水を用い、かつ十分に管理されたボイラを使用する場合であっても、蒸気への異物の混入を防止するために、ボイラの運転開始初期の蒸気は廃棄し、運転開始から相当な時間が経過のちの蒸気を使用に供しているため、いたずらに廃棄される蒸気量が多く蒸気の無駄を生じていた。蒸気の質を的確に計測することができるならば、このような蒸気の無駄を防止することができる。
【0005】
従来、ボイラの蒸気を凝縮させて、水質を評価することは行われている。例えば、ボイラ復水系用腐食監視装置として、ボイラから蒸気を受け入れて凝縮させる蒸気冷却器と、復水出口を有し、内部にテストピースを装着可能な、透明材料で構成されたテストピースカラムと、蒸気冷却器からの復水をテストピースカラムに供給する配管とを備えてなるボイラ復水系用腐食監視装置が提案されている(特開平8−28803号公報)。しかし、従来の蒸気の冷却装置は、凝縮水の流量制御にスチームトラップを用いているために、蒸気圧力及び温度の変化や、冷媒温度や流量の変化によって、凝縮水流量が不規則に変化していた。また、冷媒の流量制御に手動弁を一定の開度で用いているために、冷媒の送圧の変化及び温度の変化により、冷媒の熱交換容量が変化し、凝縮水の温度が不規則に変化していた。腐食性を調べるためには、蒸気を凝縮水として測定に供すればよいが、この方法で蒸気の質を計測しようとすると、凝縮水の水質の計測結果と、蒸気成分との関係が一定とならず、計測結果の再現性が良好でなくなる。
【0006】
上記従来の問題点を解決し、常に一定の安定した条件で蒸気を凝縮水としてサンプリングし、凝縮水の水質を計測することにより、蒸気の質を正確に判定することができる蒸気質モニタリング装置として、本出願人は、先に「隔壁を隔てて流通する冷媒との熱交換によって蒸気を冷却・液化する蒸気質モニタリング装置において、蒸気が冷却・液化されて凝縮水となって流出する凝縮水出口に流量計を設け、該流量計の計測値信号を元に演算を行い、凝縮水出口に設けた自動弁の開度を制御することにより、凝縮水の流量を所定の値に制御することを特徴とする蒸気質モニタリング装置」を提案した(特願2005−283870)。
【0007】
この蒸気質モニタリング装置によれば、蒸気の凝縮水の水質が計測される流量条件及び/又は温度条件を一定に保つことにより、凝縮水の水質の計測結果と蒸気の質が常に一定の関係となり、凝縮水の水質の計測結果から、蒸気の質を正確に判定することができる。このために、質の低い蒸気を食品、飲料などの製品に誤って直接吹き込んで、不良品を発生させるような事故を未然に防止することができる。また、常時蒸気質をモニタリングできるため、基準内の蒸気をムダに系外に放出することがない。さらに、蒸気を冷却・液化するための熱交換に、必要以上の冷媒を消費することがないために、冷媒の使用量や、冷媒の冷却に要するエネルギーを節約することができる。
【特許文献1】特開平8−28803号公報
【特許文献2】特願2005−283870
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特願2005−283870の蒸気質モニタリング装置では、ボイラの燃焼が停止され、ボイラの上記が凝縮してボイラ缶内の圧力が低下し、その結果、破裂を防止するために、ボイラ缶内に大気が流入する。ボイラの再起動時に、この流入した空気が蒸気と共に蒸気ラインに送り出され、採取ラインに流入し、熱交換器冷却水中の溶存酸素濃度を一時的に高めることになる。実際のボイラでは、この混入空気量は少量であり、蒸気ラインからユースポイントに送られる蒸気の質には問題はないのであるが、この混入空気のために監視装置が異常を検知し、アラームシステムが作動する等の不具合が生じることがある。
【0009】
本発明は、蒸気質監視手段を有したボイラ装置において、このようなボイラ燃焼停止時の混入空気に起因する、ボイラ再起動時における一時的なアラーム動作が防止され、安定運転が継続可能なボイラ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1のボイラ装置は、ボイラ給水を加熱して蒸気を発生させるボイラと、該ボイラからの蒸気の一部を冷却して凝縮させる凝縮手段と、該凝縮手段からの凝縮水の水質を測定する測定手段とを備えてなるボイラ装置において、該ボイラの燃焼停止時にボイラ缶内の圧力が所定圧力以下になったときに該ボイラ缶内に不活性ガスを封入する不活性ガス封入手段を備えたことを特徴とするものである。
【0011】
請求項2のボイラ装置は、請求項1において、前記凝縮手段から流出する凝縮水の流量を制御する流量制御手段を備えたことを特徴とするものである。
【0012】
請求項3のボイラ装置は、請求項1又は2において、前記凝縮手段から流出する凝縮水の温度を制御する温度制御手段を備えたことを特徴とするものである。
【0013】
請求項4のボイラ装置は、請求項3において、前記凝縮手段は、冷媒が隔壁を隔てて蒸気と熱交換する熱交換器であり、前記温度制御手段は、該熱交換器における冷媒の流量を制御して凝縮水の温度を制御するものであることを特徴とするものである。
【0014】
請求項5のボイラ装置は、請求項1ないし4のいずれか1項において、ボイラ給水を窒素ガスと接触させて該ボイラ給水中の溶存酸素を除去する密閉式の窒素式脱酸素装置を備え、該窒素式脱酸素装置から排出される気体を不活性ガスとして前記不活性ガス封入手段によってボイラ缶内に封入するようにしたことを特徴とするものである。
【0015】
請求項6のボイラ装置は、請求項1ないし5のいずれか1項において、前記測定手段は少なくとも溶存酸素を測定するものであることを特徴とするものである。
【0016】
請求項7のボイラ装置は、請求項6において、前記測定手段は、少なくとも溶存酸素とTOCとを測定するものであることを特徴とするものである。
【0017】
請求項8のボイラ装置は、請求項1ないし7のいずれか1項において、前記ボイラ装置は複数のボイラを備えており、各々のボイラは運転制御を独立に行うことが可能となっており、各々のボイラに、前記不活性ガス封入手段を備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明のボイラ装置では、ボイラからの蒸気の一部を凝縮させて水質測定するので、蒸気の質を監視することができる。
【0019】
本発明のボイラ装置によると、ボイラの燃焼停止時にボイラ缶内の圧力が所定圧力以下になると不活性ガスが該ボイラ缶内に封入される。このため、ボイラの再起動時に空気が蒸気に混入することがない。この結果、再起動時に混入空気に起因した異常検知が発生せず、アラームシステムが徒に動作することも防止される。
【0020】
本発明において、請求項2のように凝縮水の流量を制御することにより、また、請求項3のように凝縮水の温度を制御することにより、凝縮水の水質を精度よく監視することができる。なお、流量と温度の双方を制御してもよい。
【0021】
本発明のボイラ装置は、請求項4の通り、ボイラ給水を窒素ガスと接触させて該ボイラ給水中の溶存酸素を除去する密閉式の窒素式脱酸素装置を備え、該窒素式脱酸素装置から排出される気体を不活性ガス封入手段によってボイラ缶内に封入するように構成してもよい。このように構成した場合、ボイラ缶の封入ガスとして別途窒素ガスを用いる必要がなくなり、封入ガスのコストを低減することができる。
【0022】
複数のボイラを備えたボイラ装置にあっては、一部のボイラが燃焼停止状態となる場合が多い。そこで、このようにボイラ装置が複数のボイラを備えたものである場合に、各々のボイラに前記不活性ガス封入手段を設け、燃焼が停止された各々のボイラにのみ不活性ガスを封入できるようにするのが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。図1は実施の形態に係るボイラ装置の系統図である。
【0024】
ボイラ給水は、配管1からボイラ20に供給され、チューブ23内で加熱される。蒸気はボイラ缶22から配管24を介してユースポイントへ送られる。ボイラ缶24には、弁28を有した配管26を介して不活性ガスが導入可能とされている。
【0025】
この配管24の途中から分岐した採取ライン40によって蒸気の一部が分取される。この蒸気は、逆止弁41、圧力計42、開閉弁43を経て熱交換器50に送られ、凝縮する。なお、開閉弁43は、圧力計42によって検出される蒸気圧が所定圧以上の場合に開とされる。
【0026】
熱交換器50には、冷却水が流量調節弁51を有した配管52を介して導入され、熱交換後の冷却水が配管53を介して排出される。この冷却排水は、廃棄されてもよく、ボイラ用水として利用されてもよい。
【0027】
熱交換器50で凝縮した凝縮水は、蒸気トラップ55を経て、温度計56及び流量計57で温度及び流量が測定された後、凝縮水用の流量調節弁61を経て測定部70に送られる。この測定部70には、溶存酸素計71、電気伝導度計72、TOC(全有機炭素)計73及びpH計74が設けられている。凝縮水は、これらの計器71〜74によって測定が行われた後、配管75を介して排出される。
【0028】
この測定部70で測定された溶存酸素濃度、電気伝導度、TOC濃度、pH等のデータが信号線76を介してボイラ制御システムに送信される。
【0029】
この実施の形態では、ボイラ20の燃焼停止時にボイラ缶22内の圧力が所定圧力以下に低下すると、弁28が開とされ、ボイラ缶22内に不活性ガスが封入される。このため、燃焼停止中にボイラ缶内に空気が混入することがなく、ボイラの再起動時に配管24からの蒸気に空気が混入することもない。従って、従来のボイラ装置において発生するおそれがあった再起動時における一時的空気混入に起因したアラーム動作が防止される。なお、本発明において、所定圧力は、大気圧〜蒸気逆止弁の設定圧力未満とする。
【0030】
この実施の形態では、温度計56及び流量計57で検出される凝縮水の温度及び流量が制御装置60に入力されている。この制御装置60は、温度計56で検出される温度が一定となるように、弁51の開度を調節して熱交換器50への冷却水の供給量を制御する。また、この制御装置60は、流量計57で検出される凝縮水流量が一定となるように弁61の開度を制御する。このようにして測定部70に流入する凝縮水の温度及び流量を一定とすることにより、測定部70での測定精度を向上させることができる。
【0031】
これらの測定機器71〜74で分析された測定値は、記録計に記録されてもよい。この記録計は制御装置60に設けられてもよい。また、この測定値をパネルに映し出してもよく、通信回線を介して測定値を遠隔地に送って、集中管理するようにしてもよい。
【0032】
なお、図1では流量調節弁51を冷却水供給側の配管52に設けているが、排出側の配管53に設けてもよい。また、流量調節弁61を流量計57よりも上流側に設けてもよい。
【0033】
上記実施の形態では熱交換器50に冷却水を通水しているが、水以外の冷却媒体を通してもよい。
【0034】
上記実施の形態では測定部70で上記4項目を測定しているが、これらのうちの一部の項目を測定してもよく、これら以外の水質項目を測定してもよい。測定項目は、ボイラ用水の水質、蒸気の使用目的などに応じて適宜選択されるのが好ましい。
【0035】
例えば、蒸気を食品、飲料などの製品に直接吹き込んで加熱、殺菌などを行う場合、蒸気中の不純物の量は、一応水道水の水質基準以内をメドとする。
【0036】
溶存酸素は、水道水の水質基準項目には挙げられていないが、蒸気の質を判定する上で重要な項目である。凝縮水の溶存酸素が多いことは、蒸気の中に酸素が多量に存在することを意味する。酸素含有量の多い高温の蒸気を食品、飲料などの製品に直接吹き込むと、製品が酸化により劣化するおそれがある。また、蒸気配管の腐食の原因となり、腐食した配管から剥離した錆が製品に混入するなどの事故を引き起こす可能性がある。
【0037】
pHは、蒸気に含まれるpH影響成分を検出するために測定される。水質基準には、18種の無機化合物が個別に取り上げられ、それぞれについて基準値が定められている。本発明装置においては、凝縮水の電気伝導率を測定することにより、凝縮水中に存在するイオンの量を総合的に判定し、電気伝導率が所定の値以下であれば、凝縮水中にイオン性物質は少なく、したがって蒸気の中の無機性の不純物も少ないと判定することができる。凝縮水の電気伝導率が上昇した場合には、個別の化合物について原因を追究し、対策を立てることができる。
【0038】
水質基準には、22種の有機化合物が個別に取り上げられ、それぞれについて基準値が定められている。本発明装置においては、凝縮水の有機体炭素を測定することにより、凝縮水中に存在する有機化合物の量を総合的に判定し、有機体炭素が所定の値以下であれば、凝縮水中に有機化合物は少なく、したがって蒸気の中の有機性の不純物も少ないと判定することができる。凝縮水の有機体炭素が上昇した場合には、個別の化合物について原因を追究し、対策を立てることができる。
【0039】
なお、本発明は、再起動時の空気混入を防止して再起動時における測定誤差(ノイズ的データ)の発生を防止するものであるので、空気混入による影響が大きい溶存酸素について測定する場合に好適である。
【0040】
なお、小型貫流ボイラ(JIS B 8223では特殊循環ボイラと定義されている。)においては、経済性が重視され、性能的にあまり優れていない汽水分離機が設けられているために、蒸気に不純物が含まれやすい傾向がある。従って、本発明では、このような小型貫流ボイラで発生させた蒸気を製品と直接接触させるユースポイントに供給するボイラ装置に適用するのに好適である。この製品としては、食品、食材、医療用品などが例示されるが、これに限定されない。
【0041】
本発明のボイラ装置において、熱交換器50から流出する凝縮水の流量は、30〜200mL/minであることが好ましく、50〜150mL/minであることがより好ましい。凝縮水の流量が30mL/min未満であると、凝縮水の水質の計測が不正確になるおそれがある。凝縮水は、流量200mL/min以下で正確な水質の計測が可能であり、通常は200mL/minを超える流量は必要とされない。
【0042】
また、本発明のボイラ装置において、熱交換器50から流出する凝縮水の設定温度は10〜40℃であることが好ましく、20〜30℃であることがより好ましい。凝縮水の設定温度が10℃未満であっても、40℃を超えても、凝縮水出口から計測部までの移送中に凝縮水の温度が変化し、凝縮水の水質の計測が不正確になるおそれがある。
【0043】
凝縮水の流量を上記程度とした場合、逆止弁41〜測定部70で構成される部分の構成を小型で軽量とすることができるので、例えば、キャスターのついたステンレス鋼製などのアングルに組み込んだ装置とし、必要に応じて蒸気を発生させる現場に運び込み、現場において凝縮水の水質を計測し、蒸気の質を判定することができる。
【0044】
本発明のボイラ装置では、ボイラ給水を不活性ガスによって脱酸素処理すると共に、この脱酸素処理に用いた廃不活性ガスをボイラ缶の封入用に利用するように構成してもよい。
【0045】
図2はかかるボイラ装置におけるボイラ及び脱酸素装置部分の構成を示す概略図である。
【0046】
図2において、配管1からのボイラ給水は、窒素置換式脱酸素装置10にて脱酸素処理された後、配管2を経てボイラ20へ給水される。この脱酸素装置10からの廃窒素ガスはチャンバ30に貯えられ、ボイラ20のボイラ缶22a〜22cの不活性ガス封入に利用される。
【0047】
以下、この脱酸素装置10及びボイラ20の構成について詳細に説明する。
【0048】
窒素置換式脱酸素装置10は、給水に窒素ガスを効率よく接触させて、水中の飽和酸素濃度を低下させ、溶存酸素を除去する周知の装置であり、塔上部から充填材に給水を噴霧落下させ、下部から窒素ガスを供給して接触させるものであってもよく、水中に窒素ガスをバブリングするものであってもよい。この窒素置換式脱酸素装置10には、給水を供給するための給水流入配管1と、窒素ガスを供給するための窒素ガス流入配管3が接続されている。また、窒素置換式脱酸素装置10内で窒素置換された給水を抜き出すための給水流出配管2と、窒素置換式脱酸素装置10内のガスを排気する排気配管4が接続されている。この給水流出配管2は、下流側が分岐して配管2a,2b,2cとなっており、各々ボイラユニット20a,20b,20cの下部に接続されている。配管2a,2b,2cの各々には、開閉弁3a,3b,3cが設けられている。
【0049】
ボイラ20は、3個のボイラユニット20a,20b,20cより構成されている。
【0050】
各ボイラユニット20a,20b,20c内には、その上部側に配置されたボイラ缶22a,22b,22cと、上端側が該ボイラ缶の下部に接続され、下端側が各ボイラユニット20a,20b,20cの下部まで延在した複数のチューブ23a,23b,23cとが設けられている。各チューブ23a,23b,23cの下端側は、合流して前記配管2a,2b,2cと接続されている。
【0051】
ボイラ缶22a,22b,22cの各々には、蒸気流出配管24a,24b,24cと、不活性ガス導入配管26a,26b,26cとが接続されている。
【0052】
蒸気流出配管24a,24b,24cには、開閉弁25a,25b,25c及び逆止弁29a,29b,29cが設けられており、その下流側で合流して1本の蒸気流出配管24となっている。逆止弁29a,29b,29cは、ボイラ缶22a,22b,22cから蒸気流出配管24a,24b,24cへの流出を許容するように設けられている。
【0053】
図2には図示は省略するが、この配管24以降の構成は図1の通りとされる。
【0054】
不活性ガス導入配管26a,26b,26cには、各々逆止弁27a,27b,27c及び電磁弁28a,28b,28cが設けられている。これら不活性ガス導入配管26a,26b,26cの他端側は、チャンバ30と接続されている。逆止弁27a,27b,27cは、チャンバ30からボイラ缶22a,22b,22cへの流入を許容するように設けられている。
【0055】
各ボイラ缶22a,22b,22cの上部には、ボイラ缶の圧力を計測する圧力計P,P,Pが設けられている。各圧力計P,P,Pから前記電磁弁28a,28b,28cへ電気信号が送信され、圧力計P,P,Pが所定圧力以下であると、対応する電磁弁28a,28b,28cが閉弁するように構成されている。これら不活性ガス導入配管26a,26b,26cと、電磁弁28a,28b,28cと、圧力計P,P,Pとにより不活性ガス封入手段が構成されている。
【0056】
チャンバ30には、前記排気配管4及び前記不活性ガス導入配管26a,26b,26cが接続されると共に、ベント管31が接続されている。ベント管31には電磁弁31aが設けられている。チャンバ30には圧力計Pが設けられている。圧力計Pから電磁弁31aへ電気信号が送信され、圧力計Pが設定圧力以上であると、電磁弁31aが開弁するように構成されている。なお、この設定圧力は、前記電磁弁28a,28b,28cが開弁する所定圧力よりも高く設定されており、電磁弁28a,28b,28cの開弁時にチャンバ30内の不活性ガスがボイラユニット20a,20b,20c内に流入可能となっている。
【0057】
次に、このように構成されたボイラ装置において、ボイラユニット20a,20b,20cの総てを運転する場合と、その後ボイラユニット20aの燃焼を停止し、ボイラユニット20b,20cのみを運転する場合とを説明する。
【0058】
[ボイラユニット20a,20b,20cの総てを運転する場合]
開閉弁3a,3b,3c及び開閉弁25a,25b,25cの総てを開弁し、給水流入配管1から窒素置換式脱酸素装置10に給水すると共に窒素ガス流入配管3から窒素置換式脱酸素装置10に窒素ガスを導入する。
【0059】
この窒素置換式脱酸素装置10内で給水と窒素ガスとが接触し、給水中の溶存酸素が窒素と置換されて除去される。
【0060】
給水から除去された酸素は窒素ガスと共に排気配管4から排気され、チャンバ30内に送られる。
【0061】
溶存酸素が除去された給水は、給水流出配管2から流出し、配管2a,2b,2cを通って各ボイラユニット20a,20b,20cに送水される。各ボイラユニット20a,20b,20c内に送水された給水は、各チューブ23a,23b,23c内で加熱された後、各ボイラ缶22a,22b,22c内に流入し、気液分離される。気液分離された蒸気は、蒸気流出配管24a,24b,24c及び蒸気流出配管24を通ってボイラ装置の外部に供給される。
【0062】
なお、総てのボイラユニット20a,20b,20cは燃焼運転状態にあり、ユニット20a,20b,20c内は高圧となっていることから、電磁弁28a,28b,28cは閉弁したままとなっている。
【0063】
窒素置換式脱酸素装置10からチャンバ30内に送給された、窒素ガスに若干の酸素が混入した不活性ガスは、チャンバ30内に貯蓄される。該不活性ガスが十分に貯蓄されてチャンバ30内が設定圧力以上になると、電磁弁31aが開弁し、余剰の不活性ガスがベント管31から排気される。これにより、チャンバ30内は設定圧力に保持される。
【0064】
[ボイラユニット20aのみを燃焼停止する場合]
上記の通りボイラユニット20a,20b,20cを運転している状態において、ボイラユニット20aの燃焼を停止する場合、ボイラユニット20aの加熱を停止し、開閉弁3aを閉弁する。蒸気流出配管24内の圧力とボイラユニット20a内の圧力とが等しくなると逆止弁29aが閉となり、ボイラユニット20aへの蒸気の逆流を防止する。
【0065】
これにより、ボイラユニット20a内の温度が徐々に低下し、それに伴い圧力も低下する。ボイラユニット20a内の圧力が所定圧力以下となると、電磁弁28aが開弁し、チャンバ30内の不活性ガスが不活性ガス導入配管26aを通り、ボイラユニット20a内に供給される。これにより、ボイラユニット20a内に不活性ガスが封入され、ボイラユニット20aが保存される。
【0066】
なお、一般に、窒素置換式脱酸素装置10から排気される不活性ガス中の酸素は約0.1〜2.0%程度と極めて低濃度であることから、この不活性ガスはボイラの保存用の封入ガスとして問題なく用いることができる。
【0067】
本実施の形態のボイラ装置は、窒素置換式脱酸素装置10を備え、該窒素置換式脱酸素装置10から排気される気体をボイラ缶22a,22b,22c内に封入するようにしたことから、ボイラ缶22a,22b,22cの封入ガスとして別途窒素ガスを用いる必要がなくなり、封入ガスのコストが低くなり、これによりボイラ缶22a,22b,22cの保存コストが低くなる。
【0068】
この実施の形態では、ボイラ缶22a,22b,22c内が所定圧力以下となったときに開弁してガスを該ボイラ缶内に流入させる電磁弁28a,28b,28cを備えたため、ボイラユニット20a,20b,20cのいずれかの燃焼を停止した場合にあっても、停止したボイラ内が大気圧以下となってボイラ缶、チューブ、ボイラに付属する圧力計等の計装装置が損傷することが確実に防止される。
【0069】
本実施の形態のボイラ装置は、各々のボイラユニット20a,20b,20cに、電磁弁28a,28b,28c、不活性ガス導入配管26a,26b,26c、圧力計P、P、Pよりなる不活性ガス封入手段を備えていることから、各々のボイラユニットを個別に保存することができる。
【実施例】
【0070】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
【0071】
実施例1
図1においてボイラ20として、伝熱面積7.94m、最高圧力0.98MPaの多管式小型貫流ボイラ[(株)サムソン製]を用いた。このボイラを燃焼停止後再起動する際に発生する蒸気について、熱交換器50によって凝縮させ、測定部70において、凝縮水の溶存酸素を計測した。
【0072】
この熱交換器50は、伝熱面積0.13mのコイル式熱交換器であり、熱交換器の冷却水の温度を20℃とし、凝縮水の流量を100mL/min、凝縮水の設定温度を25℃に設定した。ボイラ給水は軟水である。
【0073】
この実施例では、燃焼停止後、ボイラ缶22内の圧力が0MPaになった時点で窒素ガスをボイラ缶22に封入した。
【0074】
再起動時における溶存酸素計71の検出値の経時変化を図3に示す。
【0075】
比較例1
実施例1において、燃焼停止後に窒素ガスの封入を行わなかったこと以外は同様にして再起動した。このときの溶存酸素計71の検出値を図3に示す。
【0076】
図3の通り、本発明によると再起動時の蒸気中には酸素が混入しないが、比較例では一時的に酸素が混入することが認められる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】実施の形態に係るボイラ装置を示す系統図である。
【図2】別の実施の形態に係るボイラ装置のボイラ及び脱酸素装置部分の構成図である。
【図3】実施例及び比較例の結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0078】
20 ボイラ
20a,20b,20c ボイラユニット
22a,22b,22c ボイラ缶
23a,23b,23c チューブ
24,24a,24b,24c 蒸気流出配管
26a,26b,26c 不活性ガス導入配管
28a,28b,28c 電磁弁
30 チャンバ
31 ベント管
40 採取ライン
50 熱交換器
51,81 流量調節弁
70 測定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラ給水を加熱して蒸気を発生させるボイラと、
該ボイラからの蒸気の一部を冷却して凝縮させる凝縮手段と、
該凝縮手段からの凝縮水の水質を測定する測定手段と
を備えてなるボイラ装置において、
該ボイラの燃焼停止時にボイラ缶内の圧力が所定圧力以下になったときに該ボイラ缶内に不活性ガスを封入する不活性ガス封入手段を備えたことを特徴とするボイラ装置。
【請求項2】
請求項1において、前記凝縮手段から流出する凝縮水の流量を制御する流量制御手段を備えたことを特徴とするボイラ装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記凝縮手段から流出する凝縮水の温度を制御する温度制御手段を備えたことを特徴とするボイラ装置。
【請求項4】
請求項3において、前記凝縮手段は、冷媒が隔壁を隔てて蒸気と熱交換する熱交換器であり、
前記温度制御手段は、該熱交換器における冷媒の流量を制御して凝縮水の温度を制御するものであることを特徴とするボイラ装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項において、ボイラ給水を窒素ガスと接触させて該ボイラ給水中の溶存酸素を除去する密閉式の窒素式脱酸素装置を備え、
該窒素式脱酸素装置から排出される気体を不活性ガスとして前記不活性ガス封入手段によってボイラ缶内に封入するようにしたことを特徴とするボイラ装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項において、前記測定手段は少なくとも溶存酸素を測定するものであることを特徴とするボイラ装置。
【請求項7】
請求項6において、前記測定手段は、少なくとも溶存酸素とTOCとを測定するものであることを特徴とするボイラ装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項において、前記ボイラ装置は複数のボイラを備えており、各々のボイラは運転制御を独立に行うことが可能となっており、
各々のボイラに、前記不活性ガス封入手段を備えたことを特徴とするボイラ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−255838(P2007−255838A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−83279(P2006−83279)
【出願日】平成18年3月24日(2006.3.24)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】