説明

ボイラ起動装置及び方法

【課題】補助蒸気の供給を必要とせずに、ボイラへの給水の溶存酸素が規定値を満たすようにボイラを起動できるボイラ起動装置を提供することである。
【解決手段】再循環系統運転手段28は脱気器16への補助蒸気があるときは給水ポンプ24の必要最低流量を確保する通常モード運転を行い、脱気器16への補助蒸気の供給がないときは貯水タンク18の水を再循環系統20に循環させて貯水タンク18の水の温度を昇温する昇温モード運転を行い、貯水タンク18の水の温度が溶存酸素濃度の規定値を満たす所定温度になったときは、給水流量調整手段31はボイラ11に給水を開始し、貯水タンク18の水の温度が予め定めた制限値以下とならないように給水流量を調整しながらボイラに給水を供給し、ボイラの水張り及び点火後にボイラ11からの補助蒸気が確立したときは、補助蒸気供給手段34は脱気器16に補助蒸気を供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラへの給水の溶存酸素が規定値を満たすようにボイラを起動するボイラ起動装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気タービンを備えた火力発電所では、ボイラで発生した蒸気を蒸気タービンに導き、蒸気タービンで仕事を終えた蒸気を復水器で復水し、再度ボイラに給水する。その際には、給水に含まれる溶存酸素を除去するようにしている。これは、給水の溶存酸素濃度が高いとボイラチューブの腐食が顕著となるので、それを防止するためである。溶存酸素の除去は、脱気器によるものと、ヒドラジン等の薬剤の投入によるものとがあり、それぞれを組み合わせて行っている。
【0003】
脱気器による溶存酸素の除去は、復水器からの復水に蒸気を接触させて復水の温度を上昇させ脱気する。すなわち、復水器からの復水が脱気器上部にある噴射弁から脱気室に噴射され、細かい水滴となって落下する間に加熱蒸気と接触して温度を上昇させる。そして、下に設置されたトレイを順次降下する間に、復水は飽和温度まで加熱され、復水中の溶存酸素が減少してボイラへの給水となる。
【0004】
このように、脱気器による溶存酸素の除去では脱気のための補助蒸気が必要となる。ボイラの運転中においては、自己のボイラから補助蒸気を供給できるが、ボイラが停止しているときは自己のボイラから補助蒸気の供給を受けることができないので、ボイラを起動する際に、脱気器による溶存酸素の除去を行うには、他のボイラから補助蒸気の供給を受ける必要がある。
【0005】
そこで、補助蒸気を供給するための補助ボイラを備えておくか、複数の発電ユニットを有した発電所では、いずれか一つの発電ユニットは必ず運転状態としておき、これにより補助蒸気を確保できるようにしておくかしている。
【0006】
プラント起動時、他ユニット蒸気あるいは補助ボイラ蒸気の助けを受けずに、ボイラに溶存酸素濃度の少ない給水を送水できるようにしたものとして、脱気器での脱気機能が可能になるまで脱気器への復水送水は行わず、この間にボイラに必要な給水は脱気器貯水タンクの保有水で補うようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
また、脱気器循環ポンプの出口側に夜間停止中の余剰電気を利用する電気ヒータを設け、水を循環管を通して貯水タンクに戻し、貯水温度を一定に保持することにより溶存酸素の増加防止と貯水温度の低下を防止するようにしたものがある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特公昭61−6287号公報
【特許文献2】特開昭61−72903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1のものでは、脱気器貯水タンクの保有水は、発電ユニットが停止してから、ある程度以上の時間が経過すると溶存酸素濃度が増加するので、発電ユニットの停止時間が長い場合にはボイラを起動することができなくなる。また、特許文献2のものでは、電気ヒータで加熱した水を循環管を通して貯水タンクに戻し、貯水温度を一定に保持することにより溶存酸素の増加防止と貯水温度の低下を防止するので、溶存酸素濃度の増加を防ぐことができるが、電気ヒータが必要となるだけでなく、電気ヒータを駆動する電力も必要となる。
【0010】
本発明の目的は、補助蒸気の供給を必要とせずに、ボイラへの給水の溶存酸素が規定値を満たすようにボイラを起動できるボイラ起動装置及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の発明に係るボイラ起動装置は、ボイラの起動指令があったとき脱気器への補助蒸気があるかどうかを判定する補助蒸気判定手段と、前記補助蒸気判定手段により前記脱気器への補助蒸気があると判定されたときは給水ポンプの吐出流量の一部を前記脱気器の再循環系統に循環させて前記給水ポンプの必要最低流量を確保する通常モード運転を行い、前記脱気器への補助蒸気の供給がないと判定されたときは前記脱気器の貯水タンクの水を前記再循環系統に循環させて前記貯水タンクの水の温度を昇温する昇温モード運転を行い、前記ボイラから前記脱気器への補助蒸気が確立すると前記昇温モード運転から前記通常モード運転に切り替える再循環系統運転手段と、前記再循環系統運転手段による昇温モード運転で前記貯水タンクの水の温度が溶存酸素濃度の規定値を満たす所定温度になったときは前記ボイラに給水を開始し前記貯水タンクの水の温度が予め定めた制限値以下とならないように給水流量を調整しながら前記ボイラに給水を供給する給水流量調整手段と、前記ボイラの水張り及び点火後に前記ボイラからの補助蒸気が確立したときは前記脱気器に補助蒸気を供給する補助蒸気供給手段とを備えたことを特徴とするボイラ起動装置。
【0012】
請求項2の発明に係るボイラ起動方法は、ボイラの起動指令があったとき脱気器への補助蒸気があるかどうかを判定し、前記脱気器への補助蒸気があると判定されたときは給水ポンプの吐出流量の一部を前記脱気器の再循環系統に循環させて前記給水ポンプの必要最低流量を確保する通常モード運転を行い、前記脱気器への補助蒸気の供給がないと判定されたときは前記脱気器の貯水タンクの水を前記再循環系統に循環させて前記貯水タンクの水の温度を昇温する昇温モード運転を行い、前記貯水タンクの水の温度が溶存酸素濃度の規定値を満たす所定温度になったときは前記ボイラに給水を開始し、前記貯水タンクの水の温度が予め定めた制限値以下とならないように前記ボイラに供給する給水流量を調整しながら前記ボイラに給水を供給し、前記ボイラの水張り及び点火後に前記ボイラからの補助蒸気が確立したときは前記脱気器に補助蒸気を供給し、前記昇温モード運転から前記通常モード運転に移行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ボイラの起動指令があったとき脱気器への補助蒸気があるかどうかを判定し、脱気器への補助蒸気があるときは通常モード運転を行い、脱気器への補助蒸気の供給がないときは脱気器の貯水タンクの水を再循環系統に循環させて昇温させる昇温モード運転を行い、溶存酸素濃度の規定値を満たす所定温度になったときはボイラに給水を開始し、ボイラの水張り及び点火後にボイラからの補助蒸気が確立したときは、ボイラから脱気器に補助蒸気を供給するので、補助蒸気を供給する補助ボイラや貯水タンクの溶存酸素濃度の増加を防ぐ電気ヒータなどの設備を必要とせずに、ボイラへの給水の溶存酸素が規定値を満たすようにボイラを起動できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態に係るボイラ起動装置を蒸気タービンを有する火力発電所に適用した場合の構成図。
【図2】本発明の実施の形態に係るボイラ起動装置をある火力発電所で起動させたときの貯水タンクの水の温度T及び溶存酸素濃度DOのグラフ。
【図3】本発明の実施の形態に係るボイラ起動方法を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を説明する。図1は本発明の実施の形態に係るボイラ起動装置を蒸気タービンを有する火力発電所に適用した場合の構成図である。
【0016】
ボイラ11で発生した蒸気は、蒸気タービン12に導かれて蒸気タービン12を駆動し、蒸気タービン12に連結された発電機13を回転させる。これにより、発電機13は電力を発生し、図示省略の電力系統に電力を供給する。
【0017】
蒸気タービン11で仕事を終えた蒸気は、復水器14に導かれて復水器14で水に戻される。復水器14で水に戻された復水は、復水ポンプ15により脱気器16の脱気室17に導かれ貯水タンク18に貯水される。脱気器16は脱気室17と貯水タンク18とで構成され、脱気室17は水を上部からスプレーさせ、ボイラ11から補助蒸気圧力制御弁19を介して供給される補助蒸気により直接加熱して水中の溶存酸素ガスを分離除去する。脱気された水は貯水タンク18へ貯水される。なお、ボイラ11が起動していないときは補助蒸気圧力制御弁19を介しての補助蒸気は供給されないので、補助蒸気による水中の溶存酸素ガスの分離除去は行われない。
【0018】
脱気器16には再循環ポンプ21が設けられており、再循環ポンプ21は脱気器16の補助蒸気を生かす際に起動され、脱気器16の器内水を循環させて貯水タンク18の水の温度を均一とするものである。
【0019】
また、脱気器16には貯水タンク18の水を循環させる再循環系統20が設けられ、再循環系統20には再循環流量制御弁22が設けられている。再循環系統20は、給水系統23の給水ポンプ24の必要最低流量を確保するためのものである。給水ポンプ24は必要最低流量以下の運転ができないので、給水制御弁25及び給水止め弁26を介してボイラ11に供給する給水流量が少ないときには、必要最低流量を確保するために給水ポンプ24から吐出される給水流量を再循環系統20に循環させた運転を行う。再循環流量制御弁22はその際の循環流量を調整するものである。
【0020】
ボイラ起動装置27は、ボイラ11の起動時において、脱気器16への補助蒸気の供給があるときは、給水ポンプ24の必要最低流量を確保するために、給水ポンプ24から吐出される給水流量を再循環系統20に循環させた通常モード運転を行う。一方、脱気器16への補助蒸気の供給がないときは、給水ポンプ24により、再循環系統20に貯水タンク18の水を給水ポンプ24により循環させ、貯水タンク18の水の温度が溶存酸素濃度の規定値を満たす所定温度になるように、貯水タンク18の水の温度を昇温させる昇温モード運転を行う。これにより、ボイラ起動装置27は、脱気器への補助蒸気がない場合であっても溶存酸素濃度の規定値を満たす水を得ることができ、その水をボイラ11に供給してボイラ11を起動することができる。
【0021】
ボイラの起動指令は、ボイラ起動装置27の再循環系統運転手段28及び補助蒸気判定手段30に入力される。補助蒸気判定手段30はボイラの起動指令を入力すると、貯水タンク18の水の温度を検出する温度検出器29から貯水タンク18の水の温度を入力し、脱気器16への補助蒸気があるかどうかを判定する。脱気器16への補助蒸気があるかどうかの判定は、貯水タンク18の水の温度が溶存酸素濃度の規定値を満たす所定温度以上であるかどうかで判定される。貯水タンク18の水の温度が溶存酸素濃度の規定値を満たす所定温度以上であるときは、脱気器16への補助蒸気があると判定し、そうでないときは脱気器16への補助蒸気はないと判定する。
【0022】
補助蒸気判定手段30の判定結果は、再循環系統運転手段28に入力される。再循環系統運転手段28はボイラの起動指令を入力すると、補助蒸気判定手段30の判定結果を参照し、脱気器16への補助蒸気があるとの判定結果であるときは通常モード運転を行う。通常モード運転は、ボイラ11に供給する給水流量が少ないときには、給水ポンプ24の吐出流量の一部を脱気器16の再循環系統20に循環させて給水ポンプ24の必要最低流量を確保しつつボイラ11に給水を供給し、ボイラ11に供給する給水流量が増加したときは再循環系統20の循環を停止する運転である。
【0023】
一方、補助蒸気判定手段30の判定結果が脱気器16への補助蒸気がないとの判定結果であるときは、給水系統23の給水制御弁25及び給水止め弁26を全閉、再循環系統20の再循環流量制御弁22を全開として給水ポンプ24を起動し、再循環系統20に貯水タンク18の水を循環させる昇温モード運転を行う。これにより、脱気器11の貯水タンク18の水は再循環系統20に循環することになり、貯水タンク18の水の温度は徐々に昇温する。これは、脱気器11の貯水タンク18の水を再循環系統20に循環させると、水と給水ポンプ24の羽根や配管内面との摩擦熱で循環水が徐々に昇温するからである。
【0024】
次に、給水流量調整手段31は、温度検出器29から貯水タンク18の水の温度を入力し、貯水タンク18の水の温度が溶存酸素濃度の規定値を満たす所定温度になったか否かを判定する。貯水タンク18の水の温度が溶存酸素濃度の規定値を満たす所定温度になったときは、給水止め弁26を開き給水制御弁25の開度を調整してボイラ11に給水を開始する。
【0025】
例えば、貯水タンク18の水の温度が100℃以上となると溶存酸素濃度は50ppb以下であり、溶存酸素濃度の規定値を満たす所定温度である。そこで、安全を見込んで貯水タンク18の水の温度が110℃以上となるとボイラ11に給水を開始する。これにより、ボイラ水張りが行われる。この場合、時間あたりの給水流量が多いと貯水タンク18の水の温度が下がるので、時間あたりの水張り量を通常モード運転の場合よりも減少させた量とする。
【0026】
すなわち、給水流量調整手段31は、貯水タンク18の水の温度を監視しながら、貯水タンク18の水の温度が予め定めた制限値以下とならないように給水流量を調整しながらボイラ11に給水を供給する。例えば、給水温度110℃以上を維持するように、給水流量を調整する。これにより、ボイラ11への給水の溶存酸素濃度は50ppb以下を確保できる。
【0027】
そして、ボイラ11の水張りが完了すると、図示省略のボイラ点火装置によりバーナを点火する。これにより、ボイラ11から蒸気が発生し始める。ボイラ11から補助蒸気管32に供給される補助蒸気の圧力は補助蒸気圧力検出器33で検出され、補助蒸気供給手段34に入力される。
【0028】
補助蒸気供給手段34は、補助蒸気圧力検出器33で検出された補助蒸気の圧力を監視し、ボイラ11から脱気器16に補助蒸気の供給が可能な圧力となったときは、補助蒸気が確立したと判断し、補助蒸気圧力制御弁19を制御して脱気器16に補助蒸気の供給を開始する。それとともに、再循環系統運転手段28に再循環系統20の昇温モード運転の停止指令を出力する。再循環系統運転手段28は補助蒸気供給手段34から昇温モード運転の停止指令を入力すると、通常運転モードに移行し、脱気器16の再循環系統20の再循環流量制御弁19を給水ポンプ24の必要最低流量を確保するための通常の制御に移行する。
【0029】
図2は、本発明の実施の形態に係るボイラ起動装置をある火力発電所で起動させたときの貯水タンク18の水の温度T及び溶存酸素濃度DOのグラフである。図2では、ある火力発電所において時点t1で脱気器16の再循環系統20を起動した場合の特性を示している。
【0030】
脱気器16の再循環系統20を起動した時点t1では、貯水タンク18の水の温度Tは32℃で溶存酸素濃度DOは7400ppbであり、脱気器16の再循環系統20の起動を継続した状態で、約13時間経過後の時点t2では、貯水タンク18の水の温度Tは約150℃で貯水タンク18の水の溶存酸素濃度DOは10ppbとなった。途中の貯水タンク18の水の温度Tが110℃で溶存酸素濃度DOは50ppb以下となることを確認した。
【0031】
この実証結果から約13時間を掛けて脱気器16の再循環系統20にて貯水タンク18の水を循環させると、ボイラ11に供給可能な溶存酸素濃度の規定値を十分に満たすことが分かった。従って、補助蒸気源を必要とせずにボイラ11に供給可能な溶存酸素濃度の給水を得ることができる。また、ヒドラジン等の脱酸素薬品を同時に用いることで、より効果的に溶存酸素濃度を低くすることができる。
【0032】
図3は、本発明の実施の形態に係るボイラ起動方法を示すフローチャートである。まず、ボイラ11の起動指令があるかどうかを判断し(S1)、ボイラ11の起動指令があるときは、補助蒸気があるかどうかを判断する(S2)。補助蒸気があるときは通常モード運転を行う(S3)。すなわち、ボイラ11に供給する給水流量が少ないときには、給水ポンプ24の吐出流量の一部を脱気器16の再循環系統20に循環させて給水ポンプ24の必要最低流量を確保しつつボイラ11に給水を供給し、ボイラ11に供給する給水流量が増加したときは再循環系統20の循環を停止する運転を行う。
【0033】
一方、補助蒸気がないときは、脱気器の再循環系統20に貯水タンク18の水を循環させる昇温モード運転を行う(S4)。そして、貯水タンク18の水の温度は所定温度になったか否かを判断する(S5)。所定温度は貯水タンク18の水の溶存酸素濃度DOがボイラ11に供給可能な溶存酸素濃度の規定値(例えば、50ppb以下)を満たす温度であるかどうかで判断される。例えば、100℃以上となったか否かで判断する。安全を見込んで110℃としてもよいし、150℃としてもよい。
【0034】
そして、貯水タンク18の水の温度が所定温度になったときは、給水止め弁26を開き給水制御弁25の開度を調整してボイラ11に給水を開始する(S6)。その場合、貯水タンク18の水の温度が予め定めた制限値以下とならないように、給水流量を調整しながらボイラ11に給水を供給する(S7)。これは、給水流量を急激に増加させると貯水タンク18の水の温度が下がり、ボイラ11に供給可能な溶存酸素濃度の規定値を満たす温度以下となることを避けるためである。
【0035】
その後に、ボイラ11の水張りが完了するとボイラ点火する(S8)。これにより、ボイラ11から蒸気が発生し始めるので、ボイラ11からの補助蒸気が確立したかどうかを判断し(S9)、補助蒸気が確立して脱気器16に補助蒸気の供給が可能となると、ボイラ11から脱気器16に補助蒸気を供給する(S10)。そして、昇温モード運転から通常モード運転に移行する(S11)。
【0036】
本発明の実施の形態によれば、脱気器16の再循環系統20を用いた昇温モード運転により、脱気器16の貯水タンク18の水を循環させて、給水ポンプ24及び配管内面の抵抗による摩擦熱を利用し、循環水の温度を上昇させる。そして、貯水タンク18の水の温度上昇に伴いその水中の溶存酸素濃度も減少するので、給水温度を上げるための補助蒸気を必要としない。そのため、蒸気源の有無に関わらず溶存酸素濃度の規定値を満たしたボイラ11への給水を得ることができる。その場合、溶存酸素濃度の規定値を満たしたボイラ11への給水を得るための追加の設備を必要としないので、コストダウンを図ることができる。
【符号の説明】
【0037】
11…ボイラ、12…蒸気タービン、13…発電機、14…復水器、15…復水ポンプ、16…脱気器、17…脱気室、18…貯水タンク、19…補助蒸気圧力制御弁、20…再循環系統、21…再循環ポンプ、22…再循環流量制御弁、23…給水系統、24…給水ポンプ、25…給水止め弁、26…給水制御弁、27…ボイラ起動装置、28…再循環系統運転手段、29…温度検出器、30…補助蒸気判定手段、31…給水流量調整手段、32…補助蒸気管、33…補助蒸気圧力検出器、34…補助蒸気供給手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラの起動指令があったとき脱気器への補助蒸気があるかどうかを判定する補助蒸気判定手段と、
前記補助蒸気判定手段により前記脱気器への補助蒸気があると判定されたときは給水ポンプの吐出流量の一部を前記脱気器の再循環系統に循環させて前記給水ポンプの必要最低流量を確保する通常モード運転を行い、前記脱気器への補助蒸気の供給がないと判定されたときは前記脱気器の貯水タンクの水を前記再循環系統に循環させて前記貯水タンクの水の温度を昇温する昇温モード運転を行い、前記ボイラから前記脱気器への補助蒸気が確立すると前記昇温モード運転から前記通常モード運転に切り替える再循環系統運転手段と、
前記再循環系統運転手段による昇温モード運転で前記貯水タンクの水の温度が溶存酸素濃度の規定値を満たす所定温度になったときは前記ボイラに給水を開始し前記貯水タンクの水の温度が予め定めた制限値以下とならないように給水流量を調整しながら前記ボイラに給水を供給する給水流量調整手段と、
前記ボイラの水張り及び点火後に前記ボイラからの補助蒸気が確立したときは前記脱気器に補助蒸気を供給する補助蒸気供給手段とを備えたことを特徴とするボイラ起動装置。
【請求項2】
ボイラの起動指令があったとき脱気器への補助蒸気があるかどうかを判定し、
前記脱気器への補助蒸気があると判定されたときは給水ポンプの吐出流量の一部を前記脱気器の再循環系統に循環させて前記給水ポンプの必要最低流量を確保する通常モード運転を行い、
前記脱気器への補助蒸気の供給がないと判定されたときは前記脱気器の貯水タンクの水を前記再循環系統に循環させて前記貯水タンクの水の温度を昇温する昇温モード運転を行い、
前記貯水タンクの水の温度が溶存酸素濃度の規定値を満たす所定温度になったときは前記ボイラに給水を開始し、
前記貯水タンクの水の温度が予め定めた制限値以下とならないように前記ボイラに供給する給水流量を調整しながら前記ボイラに給水を供給し、
前記ボイラの水張り及び点火後に前記ボイラからの補助蒸気が確立したときは前記脱気器に補助蒸気を供給し、
前記昇温モード運転から前記通常モード運転に移行することを特徴とするボイラ起動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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