ボイラ
【課題】燃焼用空気を燃焼室内へ供給する二つの空気路を備えたボイラにおいて、簡易な構成で、全体的な送風量の調整や、各空気路への分配割合の変更を行う。また、低燃焼時におけるバーナの焼損や、燃焼ガスの逆流を防止する。
【解決手段】燃焼用空気は、共通空気路44を介した後、第一空気路39と第二空気路40とに分かれて、燃焼室6へ供給される。共通空気路44には、第一ダンパ41が設けられ、第二空気路40には第二ダンパ42が設けられる。第一ダンパ41は、燃焼室6内へ供給する全体の空気量を調整する。第二ダンパ42は、バーナ5の燃焼中はその燃焼量に拘わらず全閉しないことで、バーナ5の焼損や、燃焼室6からバーナ5への燃焼ガスの逆流を防止する。
【解決手段】燃焼用空気は、共通空気路44を介した後、第一空気路39と第二空気路40とに分かれて、燃焼室6へ供給される。共通空気路44には、第一ダンパ41が設けられ、第二空気路40には第二ダンパ42が設けられる。第一ダンパ41は、燃焼室6内へ供給する全体の空気量を調整する。第二ダンパ42は、バーナ5の燃焼中はその燃焼量に拘わらず全閉しないことで、バーナ5の焼損や、燃焼室6からバーナ5への燃焼ガスの逆流を防止する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼量を変更可能なバーナを備えたボイラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に開示されるように、バーナ(2)が、通常燃焼部(5)と低燃焼用燃焼部(6)とに分けて設けられ、高燃焼と中燃焼とは通常燃焼部(5)で行うが、低燃焼は低燃焼用燃焼部(6)で行うボイラが知られている。このボイラの場合、通常燃焼部(5)へ燃焼用空気を送る通常用送風路(7)と、低燃焼用燃焼部(6)へ燃焼用空気を送る低燃焼用送風路(8)とを備え、通常用送風路(7)にのみダンパ(風量調節装置15)が設けられ、低燃焼時にはダンパが全閉されることで、低燃焼用送風路(8)からのみ燃焼用空気が供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4191359号公報(請求項1、段落番号0010)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1に記載の発明では、通常用送風路(7)にのみ設けたダンパ(風量調節装置15)で、各燃焼部(5,6)へ送る燃焼用空気量を調整するものであり、全体的な送風量の変更や、各送風路(7,8)への分配割合の柔軟な変更はできない。
【0005】
また、低燃焼時には、ダンパ(15)を全閉して低燃焼用燃焼部(6)へのみ燃焼用空気を供給するので、燃焼用空気が供給されない通常燃焼部(5)のバーナが焼損したり、燃焼室(3)内から通常燃焼部(5)へ燃焼ガスが逆流したりするおそれがある。
【0006】
さらに、そもそもバーナ(2)を通常燃焼部(5)と低燃焼用燃焼部(6)とに分けて設けることは、バーナ(2)の構成を複雑にするものである。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、簡易な構成で、全体的な送風量の調整や、各空気路への分配割合の変更ができ、また、低燃焼時におけるバーナの焼損や燃焼ガスの逆流を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、燃焼用空気を燃焼室内へ供給する二つの空気路と、この二つの空気路を介して前記燃焼室内へ供給する全体の空気量を調整する第一ダンパと、前記二つの空気路の内、一方の空気路に設けられ、バーナの燃焼中はその燃焼量に拘わらず全閉しない第二ダンパとを備えることを特徴とするボイラである。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、燃焼用空気を燃焼室内へ供給する二つの空気路を備え、第一ダンパにより全体的な送風量の調整ができる一方、第二ダンパにより各空気路への分配割合の調整ができる。また、第二ダンパは、バーナの燃焼中はその燃焼量に拘わらず全閉しないので、バーナの焼損や燃焼ガスの逆流を防止することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、ノズルパイプの先端部にノズルチップが設けられ、燃料を噴霧するノズルと、このノズルを取り囲むように設けられる円筒状の整流筒と、この整流筒を取り囲むように設けられる円筒状のエアレジスタと、前記整流筒と前記エアレジスタとの円筒状空間に差し込まれる複数の空気パイプと、前記整流筒と前記空気パイプとを介して前記燃焼室内へ燃焼用空気を供給する第一空気路と、前記エアレジスタを介して前記燃焼室内へ燃焼用空気を供給する第二空気路とを備え、送風機からの空気は、共通空気路を介して、前記第一空気路と前記第二空気路とに分岐され、前記共通空気路に、前記第一ダンパが設けられ、前記第二空気路に、前記第二ダンパが設けられることを特徴とする請求項1に記載のボイラである。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、燃焼室へは、整流筒と空気パイプとを介して燃焼用空気を供給できると共に、エアレジスタを介して燃焼用空気を供給できる。そして、これら二つのルートを介して供給する燃焼用空気について、第一ダンパにより全体的な送風量の調整ができる一方、第二ダンパにより分配割合の調整ができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、前記バーナは、高燃焼、低燃焼および停止の三位置で燃焼量を変化させるか、高燃焼、中燃焼、低燃焼および停止の四位置で燃焼量を変化させ、高燃焼時および中燃焼時には、前記第一空気路と前記第二空気路との二つの空気路を介して前記燃焼室内へ燃焼用空気を供給し、低燃焼時には、前記バーナの焼損と前記燃焼室内から前記バーナへの燃焼ガスの逆流とを防止するだけの空気を燃焼室内へ供給する位置に前記第二ダンパを配置した状態で、前記第一空気路を介して前記燃焼室内へ燃焼用空気を供給することを特徴とする請求項2に記載のボイラである。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、三位置制御または四位置制御のボイラにおいて、高燃焼時や中燃焼時には、二つの空気路を介して、必要な燃焼用空気を供給するが、低燃焼時には、基本的には第一空気路を介して燃焼用空気を供給することで、燃焼用空気の流速を確保することができる。但し、第二空気路を介して、微量の空気を供給することで、バーナの焼損と燃焼室内からバーナへの燃焼ガスの逆流とを防止することができる。
【0014】
さらに、請求項4に記載の発明は、前記ノズルとして、燃料の送り路と戻り路とが接続され戻り路の流量を調整して噴霧量を変化させるリターンフローノズルと、このリターンフローノズルに着火させるための着火用ノズルとを備え、前記リターンフローノズルが前記着火用ノズルで着火された後、前記リターンフローノズルのみで燃料を噴霧し、前記リターンフローノズルの噴霧量を調整して、燃焼量を変更することを特徴とする請求項2または請求項3に記載のボイラである。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、リターンフローノズルを用いて燃焼量を変化させるので、高燃焼時に複数のノズルから同時に噴霧することもなく、燃料や火炎の重なりを防止して、局所的な高温部の発生を防止し、燃焼性を改善することができる。また、まずは着火用ノズルに着火し、その火炎をリターンフローノズルへ移して、リターンフローノズルが着火後には、リターンフローノズルのみで燃料を噴霧するので、リターンフローノズルの着火を円滑に行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、燃焼用空気を燃焼室内へ供給する二つの空気路を備えたボイラにおいて、簡易な構成で、全体的な送風量の調整や、各空気路への分配割合の変更ができる。また、低燃焼時におけるバーナの焼損や燃焼ガスの逆流を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明のボイラの一実施例を示す概略縦断面図である。
【図2】図1におけるバーナのノズル先端部の拡大図である。
【図3】図2におけるIII−III断面図である。
【図4】図1のボイラにおいて、各燃焼段階における燃焼用空気の供給量と、各ダンパの位置、および送風機の出力を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明のボイラの一実施例を示す概略縦断面図であり、缶体上部のバーナの箇所を拡大して示している。また、図2は、図1におけるバーナのノズル先端部の拡大図であり、図3は、そのIII−III断面図である。
【0019】
本実施例のボイラ1は、円筒状の缶体2を備えた多管式貫流ボイラである。この缶体2は、周知のとおり(たとえば前記特許文献1や特開2009−92278)、円環状の上部管寄せ3と下部管寄せ(図示省略)との間を、円筒状に配列された多数の水管4,4,…で接続して構成される。そして、円筒状の水管列の径方向中央上部に、バーナ5が下方へ向けて設けられる。バーナ5から噴霧される燃料は、円筒状の水管列の内側で燃焼を図られる。つまり、円筒状の水管列の内側が、燃焼室6として機能する。
【0020】
本実施例のバーナ5は、液体燃料を燃焼させるバーナであり、リターンフローノズル7と着火用ノズル8との二つのノズルを備える。各ノズル7,8は、それぞれ、ノズルパイプ9,10の先端部にノズルチップ11,12が設けられて構成される。
【0021】
各ノズル7,8は、それぞれ、軸線を上下方向へ沿って配置され、近接して並列に設けられる。この際、各ノズル7,8のノズルチップ11,12同士は、近接してほぼ同一高さに配置される。
【0022】
着火用ノズル8には、点火装置13が設けられる(図3)。具体的には、着火用ノズル8に近接して着火碍子が設けられ、その下端部の電極14,14間にスパークを発生させることで、着火用ノズル8からの噴霧燃料に点火することができる。
【0023】
各ノズル7,8には、それぞれ、オイルタンク15からの燃料が、給油路16を介して供給可能とされる。具体的には、オイルタンク15からの給油路16は、燃料ポンプ17と第一燃料元弁18とを介した後、二股に分岐され、一方の給油路19はリターンフローノズル用燃料弁20を介してリターンフローノズル7に接続され、他方の給油路21は着火ノズル用燃料弁22を介して着火用ノズル8に接続される。
【0024】
リターンフローノズル7は、オイルタンク15からの燃料の送り路(給油路16,19)の他、オイルタンク15への燃料の戻り路23も接続される。戻り路23には、リターンフローノズル7の側から順に、流量調整弁24、第二燃料元弁25および逆止弁26が設けられる。
【0025】
各燃料元弁18,25は、ボイラ1の運転時には開放状態に維持される。従って、燃料ポンプ17を作動させた状態で着火ノズル用燃料弁22を開くと、着火用ノズル8へ燃料が供給され、そのノズルチップ12から下方へ燃料が略円錐状に噴霧される。一方、燃料ポンプ17を作動させた状態でリターンフローノズル用燃料弁20を開くと、リターンフローノズル7へ燃料が供給され、そのノズルチップ11から下方へ燃料が略円錐状に噴霧される。この際、流量調整弁24の開度を調整して、戻り路23を介してオイルタンク15へ戻す流量、言い換えれば戻り路23の油圧を調整することにより、リターンフローノズル7からの噴霧量を変化させることができる。
【0026】
バーナ5は、さらに、各ノズル7,8を取り囲むように、整流筒27とエアレジスタ28とを備える。整流筒27とエアレジスタ28とは、それぞれ円筒状であり、その軸線を上下方向へ沿って配置されると共に、同心円筒状に配置される。そして、各ノズル7,8は、整流筒27の径方向中央部において、整流筒27の上部開口から下端部まで差し込まれた状態で保持される。これにより、各ノズル7,8を取り囲むように整流筒27が設けられ、その整流筒27を取り囲むようにエアレジスタ28が設けられる。
【0027】
なお、本実施例では、リターンフローノズル7は、バーナ中心軸Xに沿って配置されるか、着火用ノズル8よりもバーナ中心軸Xに近くなるよう配置されているが、両ノズル7,8間の中点がバーナ中心軸Xに合うように配置されてもよい。ここで、バーナ中心軸Xとは、整流筒27の中心軸であり、また通常、缶体2および燃焼室6の中心軸と一致する。
【0028】
整流筒27の下部開口には、バッフル板29が設けられている。このバッフル板29は、整流筒27の下部開口を塞ぐように設けられる邪魔板であるが、図2および図3に示すように、各ノズルチップ11,12および点火装置13の下端部と対応した箇所に開口30が形成されている。
【0029】
整流筒27とエアレジスタ28との間の円筒状空間の下端部には、所望により空気開口形成板31が設けられる。本実施例では、円環状の板材からなる空気開口形成板31が設けられ、この空気開口形成板31には周方向等間隔に同一形状の複数の開口32,32,…が形成されている。この際、空気開口形成板31に単に開口32を形成するだけでもよいが、本実施例では、空気開口形成板31から下方へ突出して短円筒状の空気ノズル33を設けている。各空気ノズル33は、整流筒27およびエアレジスタ28と同心円状に配置される。
【0030】
このようにして、整流筒27とエアレジスタ28との間の円筒状空間は、周方向等間隔に配置された複数の空気ノズル33の中空穴を介して、下方へ開口する。但し、空気開口形成板31に設ける開口32や空気ノズル33の個数や形状は適宜に変更可能である。また、場合により、空気開口形成板31の設置を省略して、整流筒27とエアレジスタ28との間の円筒状空間の全域を開口させてもよい。
【0031】
さらに、整流筒27とエアレジスタ28との間の円筒状空間には、周方向等間隔に複数の空気パイプ34,34,…が設けられる。各空気パイプ34は、その軸線を上下方向へ沿って配置され、上端部がエアレジスタ28より上方へ延出する一方、下端部がエアレジスタ28よりも下方へ延出し、図示例の場合、空気ノズル33に差し込まれて空気ノズル33の下端部付近まで延出している。
【0032】
整流筒27およびエアレジスタ28の下方には、燃焼筒35が設けられる。燃焼筒35は、整流筒27の周方向に配置された複数の空気ノズル33,33,…を取り囲む大きさの円筒状で、エアレジスタ28と同等の直径を有する短円筒状である。また、燃焼筒35は、整流筒27およびエアレジスタ28と同心に配置され、適宜の取付材(図示省略)によりエアレジスタ28の下端部に保持され、図示例では、各空気ノズル33の下端部が燃焼筒35の上端部とほぼ対応した高さに配置される。
【0033】
バーナ5は、さらに、下方へのみ開口した略円筒状のウィンドボックス36を備える。ウィンドボックス36の下部開口付近に設けた円環状の取付板37に、エアレジスタ28の外周部に設けたフランジ38が保持される。これにより、ウィンドボックス36は、整流筒27の開口、エアレジスタ28の開口(空気ノズル33)、および空気パイプ34を介してのみ、下方へ開口する。
【0034】
ウィンドボックス36の周側壁上部には、送風機(図示省略)からの空気路(第一空気路39、第二空気路40)が接続される。各ノズル7,8から燃料を噴霧して燃焼を図る際には、ダンパ(第一ダンパ41、第二ダンパ42)や送風機を制御して、燃焼量に応じた量の空気が燃焼用空気として燃焼室6内へ送り込まれる。
【0035】
本実施例では、ウィンドボックス36は、仕切板43で上下に仕切られている。そして、送風機からの空気は、共通空気路44を介して、第一空気路39と第二空気路40とに分岐されて、ウィンドボックス36の上下の各空間へ供給される。共通空気路44には、第一ダンパ41が設けられ、第二空気路40には第二ダンパ42が設けられている。
【0036】
ウィンドボックス36の上部空間には、整流筒27と各空気パイプ34の上端部が開口する。このような構成であるから、第一空気路39を介してウィンドボックス36の上部空間に供給された空気は、整流筒27および各空気パイプ34の上部開口へ送り込まれる。そして、その空気は、整流筒27の内側を通りバッフル板29の開口30から吐出されると共に、空気パイプ34の中空穴を通りその下部開口から吐出される。
【0037】
一方、ウィンドボックス36の下部空間には、エアレジスタ28の上端部が開口する。そのため、第二空気路40を介してウィンドボックス36の下部空間に供給された空気は、エアレジスタ28の上部開口へ送り込まれる。そして、その空気は、整流筒27とエアレジスタ28との間の円筒状空間を通りその下部開口(空気ノズル33)から吐出される。
【0038】
本実施例のボイラ1は、まずは点火装置13を用いて着火用ノズル8からの噴霧燃料に点火し、その後、着火用ノズル8からの火炎をリターンフローノズル7からの噴霧燃料に移した後、着火用ノズル8からの燃料の噴霧を停止すればよい。そして、流量調整弁24の開度を調整して、リターンフローノズル7からの噴霧量を調整して、燃焼量が制御される。この燃焼量の制御は、周知のとおり、ボイラ1からの蒸気圧に基づき、蒸気の使用負荷を監視して、圧力センサ(圧力スイッチを含む)により行うことができる。この際、たとえば、高燃焼、低燃焼および停止の三位置で制御してもよいし、高燃焼、中燃焼、低燃焼および停止の四位置で制御してもよい。
【0039】
本実施例のボイラ1によれば、送風機からの燃焼用空気は、第一空気路39と第二空気路40との二つの空気路を介して燃焼室6へ供給されることになる。そして、第一空気路39と第二空気路40とは、上流側で共通空気路44として統一されており、この共通空気路44に設けた第一ダンパ41により、燃焼室6内へ供給する全体の空気量が調整可能とされる。また、これに加えて、送風機の回転速度をインバータで制御して、送風機の出力を変えてもよい。
【0040】
また、第二空気路40には第二ダンパ42を設けているので、第二ダンパ42により、第一空気路39と第二空気路40への分配割合を調整することができる。この第二ダンパ42は、バーナ5の燃焼中(つまり、バーナ5の作動中、バーナ5からの噴霧燃料の燃焼中)はその燃焼量に拘わらず全閉しない構成とされている。そのために、第二ダンパ42は、ボイラ1の停止時にも全閉できない締切性のない構造としてもよいし、ボイラ1の停止時には全閉はできるがバーナ5の燃焼中はその燃焼量に拘わらず全閉しないように回転停止位置を調整する構成としてもよい。いずれにしても、バーナ5の燃焼中はその燃焼量に拘わらず第二ダンパ42を全閉しないことで、バーナ5の焼損や、燃焼室6からバーナ5への燃焼ガスの逆流を防止することができる。
【0041】
図4は、本実施例のボイラ1において、各燃焼段階における燃焼用空気の供給量と、各ダンパ41,42の位置、および送風機の出力を示す図である。具体的には、各燃焼段階における、整流筒27を通過する燃焼用空気量、空気パイプ34を通過する燃焼用空気量、エアレジスタ28を通過する燃焼用空気量、第一ダンパ41の位置、第二ダンパ42の位置、インバータ制御する送風機の周波数(停止時を0とし高燃焼時を100とした出力)を示す概略図である。
【0042】
図4の場合、ボイラ1は、停止、低燃焼状態、中燃焼状態および高燃焼状態の四位置で燃焼量を制御される。ここでは、低燃焼は最大燃焼量(高燃焼)の20%で燃焼させ、中燃焼は最大燃焼量(高燃焼)の60%で燃焼させ、高燃焼は最大燃焼量の100%で燃焼させているが、各燃焼段階における出力(最大燃焼量の何%で燃焼させるか)は適宜に変更可能である。
【0043】
停止状態では、第一ダンパ41および第二ダンパ42が全閉位置にある。前述したように、第二ダンパ42は、第二空気路40を最も閉じた状態でも、第二空気路40を全閉できない締切性のない構造としてもよいが、その場合でも、停止状態では、第一ダンパ41が全閉位置にあるので、第一空気路39および第二空気路40の双方への給気を停止することができる。従って、停止状態では、整流筒27を介した燃焼用空気量a0、空気パイプ34を介した燃焼用空気量b0、エアレジスタ28を介した燃焼用空気量c0は、いずれも0である。
【0044】
低燃焼状態では、第一ダンパ41が低燃焼用風量位置に配置される。第二ダンパ42が全閉可能な構成の場合、低燃焼状態では第二ダンパ42は若干開いた状態とされ、第二ダンパ42が全閉不能な(つまり締切性のない)構成の場合、低燃焼状態ではその締切性のない閉鎖位置に維持される。いずれにしても、第二ダンパ42を介しても、微量の空気が燃焼室6へ供給される。
【0045】
このようにして、低燃焼状態では、第一空気路39を介した燃焼用空気の供給をメインとしつつも、第二空気路40を介した燃焼用空気の供給が微量ながらなされる。言い換えれば、整流筒27を介した燃焼用空気量a20と、空気パイプ34を介した燃焼用空気量b20とにより、必要な燃焼用空気量が確保されるが、エアレジスタ28を介した燃焼用空気量c20も微量ながらある。このエアレジスタ28を介した燃焼用空気量c20は、バーナ5の焼損と燃焼室6内からバーナ5への燃焼ガスの逆流とを防止するだけの空気を燃焼室6内へ供給する量とされる。なお、整流筒27を介した燃焼用空気量a20,a60,a100は、バッフル板29の影響により、燃焼段階に拘わらず常に微量とされ、この整流筒27を介した空気量と、低燃焼状態におけるエアレジスタ28を介した空気量とは大差ない。
【0046】
中燃焼状態では、第一ダンパ41および第二ダンパ42は、それぞれ中燃焼用風量位置に配置される。つまり、第一空気路39と第二空気路40との双方を介して、燃焼用空気が燃焼室6へ供給される。本実施例では、第一ダンパ41は全開位置とされ、第二ダンパ42も全開位置とされるか、第二ダンパ42は全開位置と全閉位置との中途の所定位置とされる。中燃焼状態では、空気パイプ34を介した燃焼用空気量b60およびエアレジスタ28を介した燃焼用空気量c60の双方による給気がメインとなる。
【0047】
高燃焼状態では、第一ダンパ41および第二ダンパ42は、それぞれ高燃焼用風量位置に配置される。つまり、第一空気路39と第二空気路40との双方を介して、燃焼用空気が燃焼室へ供給される。本実施例では、第一ダンパ41は全開位置とされ、第二ダンパ42も全開位置とされる。高燃焼状態では、空気パイプ34を介した燃焼用空気量b100およびエアレジスタ28を介した燃焼用空気量c100の双方による給気がメインとなる。
【0048】
なお、図4において、a20<a60<a100の関係にあるが、a20,a60,a100のいずれも、c20と同様に微量である。また、b20<b60<b100の関係にある。さらに、c20<c60<c100の関係にあるが、c20はバーナ5の焼損と燃焼室6内からバーナ5への燃焼ガスの逆流とを防止するだけの空気を燃焼室6内へ供給する量とされ、c20≪c60の関係にあり、たとえばc20は、c100の数十分の一(1/40〜1/60程度)とされている。
【0049】
いずれにしても、本実施例によれば、燃焼用空気を燃焼室6内へ供給する二つの空気路39,40を備え、第一ダンパ41により全体的な送風量の調整ができる一方、第二ダンパ42により各空気路39,40への分配割合の調整ができる。そして、第二ダンパ42は、バーナ5の燃焼中はその燃焼量に拘わらず全閉しないので、つまり低燃焼時も全閉しないので、バーナ5の焼損や、燃焼室6からバーナ5への燃焼ガスの逆流を防止することができる。しかも、基本的には、低燃焼時には、第一空気路39を介して燃焼用空気を燃焼室6へ供給するので、燃焼用空気の流速は確保することができる。
【0050】
本発明のボイラ1は、前記実施例の構成に限らず適宜変更可能である。たとえば、前記実施例では、第一空気路39の空気は、整流筒27と空気パイプ34とを介して燃焼室6へ供給し、第二空気路40の空気は、エアレジスタ28を介して燃焼室6へ供給したが、各空気路39,40の空気をどのように燃焼室6へ供給するかの具体的構造は適宜に変更可能である。
【0051】
また、前記実施例では、リターンフローノズル7を用いたが、高燃焼用ノズルと低燃焼用ノズルとの二本であってもよい。その際、低燃焼時には、低燃焼用ノズルからのみ燃料を噴霧し、高燃焼時には、低燃焼用ノズルと高燃焼用ノズルの双方から燃料を噴霧するか、高燃焼用ノズルのみから燃料を噴霧する。また、四位置で制御する場合には、さらに中燃焼用ノズルを加えた三本のノズルを備えればよい。
【0052】
さらに、図4では、高燃焼、中燃焼、低燃焼および停止の四位置で制御した例を説明したが、高燃焼、低燃焼および停止の三位置で制御してもよい。つまり、燃焼量を何段階に変化させるかは適宜に変更可能である。また、段階値制御の他、比例制御のボイラであってもよい。比例制御の場合も、バーナからの燃料の燃焼がなされている限りは、第二空気路にも微量の空気を流せばよい。
【符号の説明】
【0053】
1 ボイラ
5 バーナ
6 燃焼室
7 リターンフローノズル
8 着火用ノズル
9,10 ノズルパイプ
11,12 ノズルチップ
16 送り路(給油路)
23 戻り路
27 整流筒
28 エアレジスタ
34 空気パイプ
39 第一空気路
40 第二空気路
41 第一ダンパ
42 第二ダンパ
44 共通空気路
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼量を変更可能なバーナを備えたボイラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に開示されるように、バーナ(2)が、通常燃焼部(5)と低燃焼用燃焼部(6)とに分けて設けられ、高燃焼と中燃焼とは通常燃焼部(5)で行うが、低燃焼は低燃焼用燃焼部(6)で行うボイラが知られている。このボイラの場合、通常燃焼部(5)へ燃焼用空気を送る通常用送風路(7)と、低燃焼用燃焼部(6)へ燃焼用空気を送る低燃焼用送風路(8)とを備え、通常用送風路(7)にのみダンパ(風量調節装置15)が設けられ、低燃焼時にはダンパが全閉されることで、低燃焼用送風路(8)からのみ燃焼用空気が供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4191359号公報(請求項1、段落番号0010)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1に記載の発明では、通常用送風路(7)にのみ設けたダンパ(風量調節装置15)で、各燃焼部(5,6)へ送る燃焼用空気量を調整するものであり、全体的な送風量の変更や、各送風路(7,8)への分配割合の柔軟な変更はできない。
【0005】
また、低燃焼時には、ダンパ(15)を全閉して低燃焼用燃焼部(6)へのみ燃焼用空気を供給するので、燃焼用空気が供給されない通常燃焼部(5)のバーナが焼損したり、燃焼室(3)内から通常燃焼部(5)へ燃焼ガスが逆流したりするおそれがある。
【0006】
さらに、そもそもバーナ(2)を通常燃焼部(5)と低燃焼用燃焼部(6)とに分けて設けることは、バーナ(2)の構成を複雑にするものである。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、簡易な構成で、全体的な送風量の調整や、各空気路への分配割合の変更ができ、また、低燃焼時におけるバーナの焼損や燃焼ガスの逆流を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、燃焼用空気を燃焼室内へ供給する二つの空気路と、この二つの空気路を介して前記燃焼室内へ供給する全体の空気量を調整する第一ダンパと、前記二つの空気路の内、一方の空気路に設けられ、バーナの燃焼中はその燃焼量に拘わらず全閉しない第二ダンパとを備えることを特徴とするボイラである。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、燃焼用空気を燃焼室内へ供給する二つの空気路を備え、第一ダンパにより全体的な送風量の調整ができる一方、第二ダンパにより各空気路への分配割合の調整ができる。また、第二ダンパは、バーナの燃焼中はその燃焼量に拘わらず全閉しないので、バーナの焼損や燃焼ガスの逆流を防止することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、ノズルパイプの先端部にノズルチップが設けられ、燃料を噴霧するノズルと、このノズルを取り囲むように設けられる円筒状の整流筒と、この整流筒を取り囲むように設けられる円筒状のエアレジスタと、前記整流筒と前記エアレジスタとの円筒状空間に差し込まれる複数の空気パイプと、前記整流筒と前記空気パイプとを介して前記燃焼室内へ燃焼用空気を供給する第一空気路と、前記エアレジスタを介して前記燃焼室内へ燃焼用空気を供給する第二空気路とを備え、送風機からの空気は、共通空気路を介して、前記第一空気路と前記第二空気路とに分岐され、前記共通空気路に、前記第一ダンパが設けられ、前記第二空気路に、前記第二ダンパが設けられることを特徴とする請求項1に記載のボイラである。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、燃焼室へは、整流筒と空気パイプとを介して燃焼用空気を供給できると共に、エアレジスタを介して燃焼用空気を供給できる。そして、これら二つのルートを介して供給する燃焼用空気について、第一ダンパにより全体的な送風量の調整ができる一方、第二ダンパにより分配割合の調整ができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、前記バーナは、高燃焼、低燃焼および停止の三位置で燃焼量を変化させるか、高燃焼、中燃焼、低燃焼および停止の四位置で燃焼量を変化させ、高燃焼時および中燃焼時には、前記第一空気路と前記第二空気路との二つの空気路を介して前記燃焼室内へ燃焼用空気を供給し、低燃焼時には、前記バーナの焼損と前記燃焼室内から前記バーナへの燃焼ガスの逆流とを防止するだけの空気を燃焼室内へ供給する位置に前記第二ダンパを配置した状態で、前記第一空気路を介して前記燃焼室内へ燃焼用空気を供給することを特徴とする請求項2に記載のボイラである。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、三位置制御または四位置制御のボイラにおいて、高燃焼時や中燃焼時には、二つの空気路を介して、必要な燃焼用空気を供給するが、低燃焼時には、基本的には第一空気路を介して燃焼用空気を供給することで、燃焼用空気の流速を確保することができる。但し、第二空気路を介して、微量の空気を供給することで、バーナの焼損と燃焼室内からバーナへの燃焼ガスの逆流とを防止することができる。
【0014】
さらに、請求項4に記載の発明は、前記ノズルとして、燃料の送り路と戻り路とが接続され戻り路の流量を調整して噴霧量を変化させるリターンフローノズルと、このリターンフローノズルに着火させるための着火用ノズルとを備え、前記リターンフローノズルが前記着火用ノズルで着火された後、前記リターンフローノズルのみで燃料を噴霧し、前記リターンフローノズルの噴霧量を調整して、燃焼量を変更することを特徴とする請求項2または請求項3に記載のボイラである。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、リターンフローノズルを用いて燃焼量を変化させるので、高燃焼時に複数のノズルから同時に噴霧することもなく、燃料や火炎の重なりを防止して、局所的な高温部の発生を防止し、燃焼性を改善することができる。また、まずは着火用ノズルに着火し、その火炎をリターンフローノズルへ移して、リターンフローノズルが着火後には、リターンフローノズルのみで燃料を噴霧するので、リターンフローノズルの着火を円滑に行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、燃焼用空気を燃焼室内へ供給する二つの空気路を備えたボイラにおいて、簡易な構成で、全体的な送風量の調整や、各空気路への分配割合の変更ができる。また、低燃焼時におけるバーナの焼損や燃焼ガスの逆流を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明のボイラの一実施例を示す概略縦断面図である。
【図2】図1におけるバーナのノズル先端部の拡大図である。
【図3】図2におけるIII−III断面図である。
【図4】図1のボイラにおいて、各燃焼段階における燃焼用空気の供給量と、各ダンパの位置、および送風機の出力を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明のボイラの一実施例を示す概略縦断面図であり、缶体上部のバーナの箇所を拡大して示している。また、図2は、図1におけるバーナのノズル先端部の拡大図であり、図3は、そのIII−III断面図である。
【0019】
本実施例のボイラ1は、円筒状の缶体2を備えた多管式貫流ボイラである。この缶体2は、周知のとおり(たとえば前記特許文献1や特開2009−92278)、円環状の上部管寄せ3と下部管寄せ(図示省略)との間を、円筒状に配列された多数の水管4,4,…で接続して構成される。そして、円筒状の水管列の径方向中央上部に、バーナ5が下方へ向けて設けられる。バーナ5から噴霧される燃料は、円筒状の水管列の内側で燃焼を図られる。つまり、円筒状の水管列の内側が、燃焼室6として機能する。
【0020】
本実施例のバーナ5は、液体燃料を燃焼させるバーナであり、リターンフローノズル7と着火用ノズル8との二つのノズルを備える。各ノズル7,8は、それぞれ、ノズルパイプ9,10の先端部にノズルチップ11,12が設けられて構成される。
【0021】
各ノズル7,8は、それぞれ、軸線を上下方向へ沿って配置され、近接して並列に設けられる。この際、各ノズル7,8のノズルチップ11,12同士は、近接してほぼ同一高さに配置される。
【0022】
着火用ノズル8には、点火装置13が設けられる(図3)。具体的には、着火用ノズル8に近接して着火碍子が設けられ、その下端部の電極14,14間にスパークを発生させることで、着火用ノズル8からの噴霧燃料に点火することができる。
【0023】
各ノズル7,8には、それぞれ、オイルタンク15からの燃料が、給油路16を介して供給可能とされる。具体的には、オイルタンク15からの給油路16は、燃料ポンプ17と第一燃料元弁18とを介した後、二股に分岐され、一方の給油路19はリターンフローノズル用燃料弁20を介してリターンフローノズル7に接続され、他方の給油路21は着火ノズル用燃料弁22を介して着火用ノズル8に接続される。
【0024】
リターンフローノズル7は、オイルタンク15からの燃料の送り路(給油路16,19)の他、オイルタンク15への燃料の戻り路23も接続される。戻り路23には、リターンフローノズル7の側から順に、流量調整弁24、第二燃料元弁25および逆止弁26が設けられる。
【0025】
各燃料元弁18,25は、ボイラ1の運転時には開放状態に維持される。従って、燃料ポンプ17を作動させた状態で着火ノズル用燃料弁22を開くと、着火用ノズル8へ燃料が供給され、そのノズルチップ12から下方へ燃料が略円錐状に噴霧される。一方、燃料ポンプ17を作動させた状態でリターンフローノズル用燃料弁20を開くと、リターンフローノズル7へ燃料が供給され、そのノズルチップ11から下方へ燃料が略円錐状に噴霧される。この際、流量調整弁24の開度を調整して、戻り路23を介してオイルタンク15へ戻す流量、言い換えれば戻り路23の油圧を調整することにより、リターンフローノズル7からの噴霧量を変化させることができる。
【0026】
バーナ5は、さらに、各ノズル7,8を取り囲むように、整流筒27とエアレジスタ28とを備える。整流筒27とエアレジスタ28とは、それぞれ円筒状であり、その軸線を上下方向へ沿って配置されると共に、同心円筒状に配置される。そして、各ノズル7,8は、整流筒27の径方向中央部において、整流筒27の上部開口から下端部まで差し込まれた状態で保持される。これにより、各ノズル7,8を取り囲むように整流筒27が設けられ、その整流筒27を取り囲むようにエアレジスタ28が設けられる。
【0027】
なお、本実施例では、リターンフローノズル7は、バーナ中心軸Xに沿って配置されるか、着火用ノズル8よりもバーナ中心軸Xに近くなるよう配置されているが、両ノズル7,8間の中点がバーナ中心軸Xに合うように配置されてもよい。ここで、バーナ中心軸Xとは、整流筒27の中心軸であり、また通常、缶体2および燃焼室6の中心軸と一致する。
【0028】
整流筒27の下部開口には、バッフル板29が設けられている。このバッフル板29は、整流筒27の下部開口を塞ぐように設けられる邪魔板であるが、図2および図3に示すように、各ノズルチップ11,12および点火装置13の下端部と対応した箇所に開口30が形成されている。
【0029】
整流筒27とエアレジスタ28との間の円筒状空間の下端部には、所望により空気開口形成板31が設けられる。本実施例では、円環状の板材からなる空気開口形成板31が設けられ、この空気開口形成板31には周方向等間隔に同一形状の複数の開口32,32,…が形成されている。この際、空気開口形成板31に単に開口32を形成するだけでもよいが、本実施例では、空気開口形成板31から下方へ突出して短円筒状の空気ノズル33を設けている。各空気ノズル33は、整流筒27およびエアレジスタ28と同心円状に配置される。
【0030】
このようにして、整流筒27とエアレジスタ28との間の円筒状空間は、周方向等間隔に配置された複数の空気ノズル33の中空穴を介して、下方へ開口する。但し、空気開口形成板31に設ける開口32や空気ノズル33の個数や形状は適宜に変更可能である。また、場合により、空気開口形成板31の設置を省略して、整流筒27とエアレジスタ28との間の円筒状空間の全域を開口させてもよい。
【0031】
さらに、整流筒27とエアレジスタ28との間の円筒状空間には、周方向等間隔に複数の空気パイプ34,34,…が設けられる。各空気パイプ34は、その軸線を上下方向へ沿って配置され、上端部がエアレジスタ28より上方へ延出する一方、下端部がエアレジスタ28よりも下方へ延出し、図示例の場合、空気ノズル33に差し込まれて空気ノズル33の下端部付近まで延出している。
【0032】
整流筒27およびエアレジスタ28の下方には、燃焼筒35が設けられる。燃焼筒35は、整流筒27の周方向に配置された複数の空気ノズル33,33,…を取り囲む大きさの円筒状で、エアレジスタ28と同等の直径を有する短円筒状である。また、燃焼筒35は、整流筒27およびエアレジスタ28と同心に配置され、適宜の取付材(図示省略)によりエアレジスタ28の下端部に保持され、図示例では、各空気ノズル33の下端部が燃焼筒35の上端部とほぼ対応した高さに配置される。
【0033】
バーナ5は、さらに、下方へのみ開口した略円筒状のウィンドボックス36を備える。ウィンドボックス36の下部開口付近に設けた円環状の取付板37に、エアレジスタ28の外周部に設けたフランジ38が保持される。これにより、ウィンドボックス36は、整流筒27の開口、エアレジスタ28の開口(空気ノズル33)、および空気パイプ34を介してのみ、下方へ開口する。
【0034】
ウィンドボックス36の周側壁上部には、送風機(図示省略)からの空気路(第一空気路39、第二空気路40)が接続される。各ノズル7,8から燃料を噴霧して燃焼を図る際には、ダンパ(第一ダンパ41、第二ダンパ42)や送風機を制御して、燃焼量に応じた量の空気が燃焼用空気として燃焼室6内へ送り込まれる。
【0035】
本実施例では、ウィンドボックス36は、仕切板43で上下に仕切られている。そして、送風機からの空気は、共通空気路44を介して、第一空気路39と第二空気路40とに分岐されて、ウィンドボックス36の上下の各空間へ供給される。共通空気路44には、第一ダンパ41が設けられ、第二空気路40には第二ダンパ42が設けられている。
【0036】
ウィンドボックス36の上部空間には、整流筒27と各空気パイプ34の上端部が開口する。このような構成であるから、第一空気路39を介してウィンドボックス36の上部空間に供給された空気は、整流筒27および各空気パイプ34の上部開口へ送り込まれる。そして、その空気は、整流筒27の内側を通りバッフル板29の開口30から吐出されると共に、空気パイプ34の中空穴を通りその下部開口から吐出される。
【0037】
一方、ウィンドボックス36の下部空間には、エアレジスタ28の上端部が開口する。そのため、第二空気路40を介してウィンドボックス36の下部空間に供給された空気は、エアレジスタ28の上部開口へ送り込まれる。そして、その空気は、整流筒27とエアレジスタ28との間の円筒状空間を通りその下部開口(空気ノズル33)から吐出される。
【0038】
本実施例のボイラ1は、まずは点火装置13を用いて着火用ノズル8からの噴霧燃料に点火し、その後、着火用ノズル8からの火炎をリターンフローノズル7からの噴霧燃料に移した後、着火用ノズル8からの燃料の噴霧を停止すればよい。そして、流量調整弁24の開度を調整して、リターンフローノズル7からの噴霧量を調整して、燃焼量が制御される。この燃焼量の制御は、周知のとおり、ボイラ1からの蒸気圧に基づき、蒸気の使用負荷を監視して、圧力センサ(圧力スイッチを含む)により行うことができる。この際、たとえば、高燃焼、低燃焼および停止の三位置で制御してもよいし、高燃焼、中燃焼、低燃焼および停止の四位置で制御してもよい。
【0039】
本実施例のボイラ1によれば、送風機からの燃焼用空気は、第一空気路39と第二空気路40との二つの空気路を介して燃焼室6へ供給されることになる。そして、第一空気路39と第二空気路40とは、上流側で共通空気路44として統一されており、この共通空気路44に設けた第一ダンパ41により、燃焼室6内へ供給する全体の空気量が調整可能とされる。また、これに加えて、送風機の回転速度をインバータで制御して、送風機の出力を変えてもよい。
【0040】
また、第二空気路40には第二ダンパ42を設けているので、第二ダンパ42により、第一空気路39と第二空気路40への分配割合を調整することができる。この第二ダンパ42は、バーナ5の燃焼中(つまり、バーナ5の作動中、バーナ5からの噴霧燃料の燃焼中)はその燃焼量に拘わらず全閉しない構成とされている。そのために、第二ダンパ42は、ボイラ1の停止時にも全閉できない締切性のない構造としてもよいし、ボイラ1の停止時には全閉はできるがバーナ5の燃焼中はその燃焼量に拘わらず全閉しないように回転停止位置を調整する構成としてもよい。いずれにしても、バーナ5の燃焼中はその燃焼量に拘わらず第二ダンパ42を全閉しないことで、バーナ5の焼損や、燃焼室6からバーナ5への燃焼ガスの逆流を防止することができる。
【0041】
図4は、本実施例のボイラ1において、各燃焼段階における燃焼用空気の供給量と、各ダンパ41,42の位置、および送風機の出力を示す図である。具体的には、各燃焼段階における、整流筒27を通過する燃焼用空気量、空気パイプ34を通過する燃焼用空気量、エアレジスタ28を通過する燃焼用空気量、第一ダンパ41の位置、第二ダンパ42の位置、インバータ制御する送風機の周波数(停止時を0とし高燃焼時を100とした出力)を示す概略図である。
【0042】
図4の場合、ボイラ1は、停止、低燃焼状態、中燃焼状態および高燃焼状態の四位置で燃焼量を制御される。ここでは、低燃焼は最大燃焼量(高燃焼)の20%で燃焼させ、中燃焼は最大燃焼量(高燃焼)の60%で燃焼させ、高燃焼は最大燃焼量の100%で燃焼させているが、各燃焼段階における出力(最大燃焼量の何%で燃焼させるか)は適宜に変更可能である。
【0043】
停止状態では、第一ダンパ41および第二ダンパ42が全閉位置にある。前述したように、第二ダンパ42は、第二空気路40を最も閉じた状態でも、第二空気路40を全閉できない締切性のない構造としてもよいが、その場合でも、停止状態では、第一ダンパ41が全閉位置にあるので、第一空気路39および第二空気路40の双方への給気を停止することができる。従って、停止状態では、整流筒27を介した燃焼用空気量a0、空気パイプ34を介した燃焼用空気量b0、エアレジスタ28を介した燃焼用空気量c0は、いずれも0である。
【0044】
低燃焼状態では、第一ダンパ41が低燃焼用風量位置に配置される。第二ダンパ42が全閉可能な構成の場合、低燃焼状態では第二ダンパ42は若干開いた状態とされ、第二ダンパ42が全閉不能な(つまり締切性のない)構成の場合、低燃焼状態ではその締切性のない閉鎖位置に維持される。いずれにしても、第二ダンパ42を介しても、微量の空気が燃焼室6へ供給される。
【0045】
このようにして、低燃焼状態では、第一空気路39を介した燃焼用空気の供給をメインとしつつも、第二空気路40を介した燃焼用空気の供給が微量ながらなされる。言い換えれば、整流筒27を介した燃焼用空気量a20と、空気パイプ34を介した燃焼用空気量b20とにより、必要な燃焼用空気量が確保されるが、エアレジスタ28を介した燃焼用空気量c20も微量ながらある。このエアレジスタ28を介した燃焼用空気量c20は、バーナ5の焼損と燃焼室6内からバーナ5への燃焼ガスの逆流とを防止するだけの空気を燃焼室6内へ供給する量とされる。なお、整流筒27を介した燃焼用空気量a20,a60,a100は、バッフル板29の影響により、燃焼段階に拘わらず常に微量とされ、この整流筒27を介した空気量と、低燃焼状態におけるエアレジスタ28を介した空気量とは大差ない。
【0046】
中燃焼状態では、第一ダンパ41および第二ダンパ42は、それぞれ中燃焼用風量位置に配置される。つまり、第一空気路39と第二空気路40との双方を介して、燃焼用空気が燃焼室6へ供給される。本実施例では、第一ダンパ41は全開位置とされ、第二ダンパ42も全開位置とされるか、第二ダンパ42は全開位置と全閉位置との中途の所定位置とされる。中燃焼状態では、空気パイプ34を介した燃焼用空気量b60およびエアレジスタ28を介した燃焼用空気量c60の双方による給気がメインとなる。
【0047】
高燃焼状態では、第一ダンパ41および第二ダンパ42は、それぞれ高燃焼用風量位置に配置される。つまり、第一空気路39と第二空気路40との双方を介して、燃焼用空気が燃焼室へ供給される。本実施例では、第一ダンパ41は全開位置とされ、第二ダンパ42も全開位置とされる。高燃焼状態では、空気パイプ34を介した燃焼用空気量b100およびエアレジスタ28を介した燃焼用空気量c100の双方による給気がメインとなる。
【0048】
なお、図4において、a20<a60<a100の関係にあるが、a20,a60,a100のいずれも、c20と同様に微量である。また、b20<b60<b100の関係にある。さらに、c20<c60<c100の関係にあるが、c20はバーナ5の焼損と燃焼室6内からバーナ5への燃焼ガスの逆流とを防止するだけの空気を燃焼室6内へ供給する量とされ、c20≪c60の関係にあり、たとえばc20は、c100の数十分の一(1/40〜1/60程度)とされている。
【0049】
いずれにしても、本実施例によれば、燃焼用空気を燃焼室6内へ供給する二つの空気路39,40を備え、第一ダンパ41により全体的な送風量の調整ができる一方、第二ダンパ42により各空気路39,40への分配割合の調整ができる。そして、第二ダンパ42は、バーナ5の燃焼中はその燃焼量に拘わらず全閉しないので、つまり低燃焼時も全閉しないので、バーナ5の焼損や、燃焼室6からバーナ5への燃焼ガスの逆流を防止することができる。しかも、基本的には、低燃焼時には、第一空気路39を介して燃焼用空気を燃焼室6へ供給するので、燃焼用空気の流速は確保することができる。
【0050】
本発明のボイラ1は、前記実施例の構成に限らず適宜変更可能である。たとえば、前記実施例では、第一空気路39の空気は、整流筒27と空気パイプ34とを介して燃焼室6へ供給し、第二空気路40の空気は、エアレジスタ28を介して燃焼室6へ供給したが、各空気路39,40の空気をどのように燃焼室6へ供給するかの具体的構造は適宜に変更可能である。
【0051】
また、前記実施例では、リターンフローノズル7を用いたが、高燃焼用ノズルと低燃焼用ノズルとの二本であってもよい。その際、低燃焼時には、低燃焼用ノズルからのみ燃料を噴霧し、高燃焼時には、低燃焼用ノズルと高燃焼用ノズルの双方から燃料を噴霧するか、高燃焼用ノズルのみから燃料を噴霧する。また、四位置で制御する場合には、さらに中燃焼用ノズルを加えた三本のノズルを備えればよい。
【0052】
さらに、図4では、高燃焼、中燃焼、低燃焼および停止の四位置で制御した例を説明したが、高燃焼、低燃焼および停止の三位置で制御してもよい。つまり、燃焼量を何段階に変化させるかは適宜に変更可能である。また、段階値制御の他、比例制御のボイラであってもよい。比例制御の場合も、バーナからの燃料の燃焼がなされている限りは、第二空気路にも微量の空気を流せばよい。
【符号の説明】
【0053】
1 ボイラ
5 バーナ
6 燃焼室
7 リターンフローノズル
8 着火用ノズル
9,10 ノズルパイプ
11,12 ノズルチップ
16 送り路(給油路)
23 戻り路
27 整流筒
28 エアレジスタ
34 空気パイプ
39 第一空気路
40 第二空気路
41 第一ダンパ
42 第二ダンパ
44 共通空気路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼用空気を燃焼室内へ供給する二つの空気路と、
この二つの空気路を介して前記燃焼室内へ供給する全体の空気量を調整する第一ダンパと、
前記二つの空気路の内、一方の空気路に設けられ、バーナの燃焼中はその燃焼量に拘わらず全閉しない第二ダンパと
を備えることを特徴とするボイラ。
【請求項2】
ノズルパイプの先端部にノズルチップが設けられ、燃料を噴霧するノズルと、
このノズルを取り囲むように設けられる円筒状の整流筒と、
この整流筒を取り囲むように設けられる円筒状のエアレジスタと、
前記整流筒と前記エアレジスタとの円筒状空間に差し込まれる複数の空気パイプと、
前記整流筒と前記空気パイプとを介して前記燃焼室内へ燃焼用空気を供給する第一空気路と、
前記エアレジスタを介して前記燃焼室内へ燃焼用空気を供給する第二空気路とを備え、
送風機からの空気は、共通空気路を介して、前記第一空気路と前記第二空気路とに分岐され、
前記共通空気路に、前記第一ダンパが設けられ、
前記第二空気路に、前記第二ダンパが設けられる
ことを特徴とする請求項1に記載のボイラ。
【請求項3】
前記バーナは、高燃焼、低燃焼および停止の三位置で燃焼量を変化させるか、高燃焼、中燃焼、低燃焼および停止の四位置で燃焼量を変化させ、
高燃焼時および中燃焼時には、前記第一空気路と前記第二空気路との二つの空気路を介して前記燃焼室内へ燃焼用空気を供給し、
低燃焼時には、前記バーナの焼損と前記燃焼室内から前記バーナへの燃焼ガスの逆流とを防止するだけの空気を燃焼室内へ供給する位置に前記第二ダンパを配置した状態で、前記第一空気路を介して前記燃焼室内へ燃焼用空気を供給する
ことを特徴とする請求項2に記載のボイラ。
【請求項4】
前記ノズルとして、燃料の送り路と戻り路とが接続され戻り路の流量を調整して噴霧量を変化させるリターンフローノズルと、このリターンフローノズルに着火させるための着火用ノズルとを備え、
前記リターンフローノズルが前記着火用ノズルで着火された後、前記リターンフローノズルのみで燃料を噴霧し、
前記リターンフローノズルの噴霧量を調整して、燃焼量を変更する
ことを特徴とする請求項2または請求項3に記載のボイラ。
【請求項1】
燃焼用空気を燃焼室内へ供給する二つの空気路と、
この二つの空気路を介して前記燃焼室内へ供給する全体の空気量を調整する第一ダンパと、
前記二つの空気路の内、一方の空気路に設けられ、バーナの燃焼中はその燃焼量に拘わらず全閉しない第二ダンパと
を備えることを特徴とするボイラ。
【請求項2】
ノズルパイプの先端部にノズルチップが設けられ、燃料を噴霧するノズルと、
このノズルを取り囲むように設けられる円筒状の整流筒と、
この整流筒を取り囲むように設けられる円筒状のエアレジスタと、
前記整流筒と前記エアレジスタとの円筒状空間に差し込まれる複数の空気パイプと、
前記整流筒と前記空気パイプとを介して前記燃焼室内へ燃焼用空気を供給する第一空気路と、
前記エアレジスタを介して前記燃焼室内へ燃焼用空気を供給する第二空気路とを備え、
送風機からの空気は、共通空気路を介して、前記第一空気路と前記第二空気路とに分岐され、
前記共通空気路に、前記第一ダンパが設けられ、
前記第二空気路に、前記第二ダンパが設けられる
ことを特徴とする請求項1に記載のボイラ。
【請求項3】
前記バーナは、高燃焼、低燃焼および停止の三位置で燃焼量を変化させるか、高燃焼、中燃焼、低燃焼および停止の四位置で燃焼量を変化させ、
高燃焼時および中燃焼時には、前記第一空気路と前記第二空気路との二つの空気路を介して前記燃焼室内へ燃焼用空気を供給し、
低燃焼時には、前記バーナの焼損と前記燃焼室内から前記バーナへの燃焼ガスの逆流とを防止するだけの空気を燃焼室内へ供給する位置に前記第二ダンパを配置した状態で、前記第一空気路を介して前記燃焼室内へ燃焼用空気を供給する
ことを特徴とする請求項2に記載のボイラ。
【請求項4】
前記ノズルとして、燃料の送り路と戻り路とが接続され戻り路の流量を調整して噴霧量を変化させるリターンフローノズルと、このリターンフローノズルに着火させるための着火用ノズルとを備え、
前記リターンフローノズルが前記着火用ノズルで着火された後、前記リターンフローノズルのみで燃料を噴霧し、
前記リターンフローノズルの噴霧量を調整して、燃焼量を変更する
ことを特徴とする請求項2または請求項3に記載のボイラ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図2】
【図3】
【図4】
【公開番号】特開2012−193931(P2012−193931A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−60021(P2011−60021)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【Fターム(参考)】
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