説明

ボタン用成形材料およびボタンの製造方法

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、衣服等に取り付けられるカフスボタン、装飾ボタン等のボタンを成形するためのボタン用成形材料およびボタンの製造方法に関するものである。より詳しくは、柄模様を有するボタンを押し出し成形するのに好適なボタン用成形材料および該ボタン用成形材料を用いたボタンの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、衣服等に取り付けられるボタンを成形するためのボタン用成形材料として、例えば、尿素樹脂が用いられている。
【0003】しかしながら、尿素樹脂は、縮合重合によって硬化する熱硬化性樹脂であるため、硬化時に水を生成する。このため、尿素樹脂を硬化させて厚いボタンを成形した場合には、ボタンにクラックが生じるという欠点を有している。また、尿素樹脂は、硬化させた後の尿素樹脂硬化物においても、緩慢ではあるが縮合重合が進行している。このため、尿素樹脂硬化物からなるボタンは、経時変化によって次第に収縮による歪みが生じ、表面にひび割れが生じるという大きな物性上の欠点を有している。
【0004】さらに、尿素樹脂は、一般に、クラックを防止する目的でパルプと混合して使用されるため、得られるボタンの透明感が乏しく、美麗さに劣るという意匠価値的に不利な面を有している。その上、尿素樹脂硬化物は硬く脆いため、切削加工することが出来ない。
【0005】そこで、これらの問題点を解決するために、ボタン用成形材料として、不飽和ポリエステル樹脂が用いられている。
【0006】不飽和ポリエステル樹脂は、通常モノマーとしてスチレンを20〜50重量%含む液状の熱硬化性樹脂であり、付加重合によって副生成物を生じることなく硬化する。従って、硬化物の物性が経時安定性に優れており、切削加工が容易であるため、ボタン用成形材料としての用途に非常に適している。また、ビニルエステル樹脂も、不飽和ポリエステル樹脂と類似の物性を示すボタン用成形材料としての用途に非常に適した素材である。
【0007】これら不飽和ポリエステル樹脂やビニルエステル樹脂は、一般に、注型の一種である遠心成形や棒管成形によって、ボタンに成形される。
【0008】遠心成形の場合、まず、高速で回転させたドラムの内側に液状樹脂を流し込んでゲル化させた後、取り出すことにより均一な厚みの円筒状の成形体を成形する。次いで、円筒状成形体を切断して得たシート状の成形体を、ボタンの形状に応じた型を用いて蜂の巣状にパンチングすることにより、ボタンブランクを作成する。そして、ボタンブランクを切削加工することにより、ボタンが製造される。
【0009】棒管成形の場合、所定形状の断面を有するパイプの内側に液状樹脂を流し込んでゲル化させることにより棒状の成形体を成形した後、該成形体を脱型し、所定の厚みにスライス切断することにより、ボタンブランクを作成する。そして、ボタンブランクを切削加工することにより、ボタンが製造される。
【0010】遠心成形を用いて色分けされた柄模様を有するボタンを作成する場合には、液状樹脂に異なる着色顔料を混合することにより得た互いに色の異なる複数の樹脂組成物を順次流し込むことによって柄組みする。また、棒管成形を用いて色分けされた柄模様を有するボタンを作成する場合には、互いに色の異なる複数の液状樹脂をそれぞれ別個のノズルから同時に模様形成受け皿に給送して、模様形成受け皿上で異なる色の樹脂を積層し、積層された樹脂を樹脂同士が混じり合わないようにしてパイプの中に流し込むことによって柄組みする。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、不飽和ポリエステル樹脂やビニルエステル樹脂は液状であるため、上述の遠心成形や棒管成形のような注型には適用できるものの、取り扱い性(ハンドリング性)に劣り、押し出し成形には不適であるという問題点を有している。
【0012】即ち、押し出し成形では、樹脂組成物をシート状もしくはブロック状に成形して得られたコンパウンドシートもしくはコンパウンドブロックを、断面が所望の柄模様となるように棒状に束ねて柄組みを行い、未硬化の棒状コンパウンドを得る。次いで、上記棒状コンパウンドを、ラム式押し出し成形機にて希望する太さの径に成形し、押し出されてきた未硬化の棒状成形体を所定の厚みにスライス切断し、未硬化の板状成形体を得る。そして、得られた未硬化の板状成形体をボタン成形用金型に注入して加熱プレス成形することにより、柄模様を有するボタンが得られる。
【0013】このように、押し出し成形では、コンパウンドシートもしくはコンパウンドブロックを組み合わせることで、柄模様を作成し、その柄模様がそのまま小さく圧縮されて押し出されてきた棒状成形体を加熱プレスして硬化させる。
【0014】従って、柄模様を有するボタンの押し出し成形に用いる成形材料は、粘着性が少ない、いわゆるタックフリーの固形物である必要がある。このことから、不飽和ポリエステル樹脂やビニルエステル樹脂からなる液状樹脂を押し出し成形に適用したボタン用成形材料にしようとすると、粘着性を減少させて取り扱い性を向上させるために、上記液状樹脂を増粘させることが不可欠となる。また、押し出し成形に用いる成形材料は、成形時および成形後の両方において互いに混ざり合わず、成形前に柄組みした柄模様を維持できることが必要である。さらに、押し出し成形に用いる成形材料は、成形が可能な程度の流動性を備えた固形物であることが必要である。
【0015】なお、遠心成形や棒管成形では、液状樹脂を数回流し込むことによって柄組を行うため、複数の色を有するボタンの作成という点においては比較的容易であるものの、層状模様や波模様、波紋模様、点状模様等の特定の種類の模様を有するボタンしか成形することが出来ないのに対して、押し出し成形では、希望する任意の柄模様を有するボタンを容易に成形することができる。
【0016】従来、押し出し成形に適用したボタン用成形材料としては、尿素樹脂増粘物が知られているが、不飽和ポリエステル樹脂および/またはビニルエステル樹脂を含むボタン用成形材料は知られていない。従って、押し出し成形に適用した不飽和ポリエステル樹脂および/またはビニルエステル樹脂を含むボタン用成形材料が要望されていた。
【0017】従来より、増粘剤によるプリゲル化だけを用いて不飽和ポリエステル樹脂を増粘させた成形材料がボタンの加熱プレス成形に用いられている。例えば、特公昭58−57301号公報には、フィルムに挟んだ状態で加熱プレス成形するためのボタン用成形材料として、ポリエステル樹脂に一種類のパール顔料を添加したものに、アルミニウムアルコキサイドを加え200〜2000ポイズの粘度にプリゲル化した樹脂組成物が開示されている。
【0018】しかしながら、本願発明者らが検討した結果、一般的に不飽和ポリエステル樹脂に用いられている酸化マグネシウムやアルミニウムアルコキサイド等の増粘剤によるプリゲル化だけを用いて不飽和ポリエステル樹脂を増粘させた成形材料は、押し出し成形法に不適である。即ち、上記ボタン用成形材料は、分子量の増大に伴ってゴム弾性が増大しているため、押し出し成形時にバラス効果やメルトフラクチャーと呼ばれる不安定流動を起こす。従って、押し出された棒状物がゴム状に膨れて断面がギザギザとなったり、表面に波状の凹凸が生じたりして、形状が不安定に乱れてしまう。この結果、成形時に柄模様が崩れてしまい、所望の柄模様を有するボタンが得られないという問題が生じる。
【0019】本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、物性に優れたボタンを成形することができ、取り扱い性に優れ、かつ、成形時の流動安定性に優れたボタン用成形材料および該ボタン用成形材料を用いたボタンの製造方法を提供することにある。
【0020】
【課題を解決するための手段】本願発明者等は、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、不飽和ポリエステル樹脂および/またはビニルエステル樹脂からなる熱硬化性樹脂と、上記熱硬化性樹脂の粘着性を減少させるための、三次元化ポリスチレン粉末または不飽和ポリエステル樹脂硬化物粉末からなる粘着防止剤とを含むボタン用成形材料が、物性に優れたボタンを成形することができ、取り扱い性に優れ、かつ、成形時の流動安定性に優れていることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0021】即ち、請求項1記載の発明のボタン用成形材料は、上記の課題を解決するために、不飽和ポリエステル樹脂および/またはビニルエステル樹脂からなる熱硬化性樹脂と、上記熱硬化性樹脂の粘着性を減少させるための、三次元化ポリスチレン粉末または不飽和ポリエステル樹脂硬化物粉末からなる粘着防止剤とを含むことを特徴としている。
【0022】上記構成によれば、粘着防止剤によって熱硬化性樹脂の粘着性を減少させているので、取り扱い性に優れている。従って、例えば、柄模様を有するボタンを押し出し成形するための柄組みが可能となる。また、適度な流動性を有するので、成形が容易である。
【0023】また、上記構成によれば、粘着防止剤によって熱硬化性樹脂の粘着性が減少しているだけでなく、酸化マグネシウム等の増粘剤を熱硬化性樹脂に混合して粘着性を減少させた場合に比べて、ゴム弾性が比較的低い。従って、押し出し成形時のバラス効果やメルトフラクチャーのような成形時の不安定流動を示すことがなく、成形時の流動安定性に優れている。
【0024】さらに、上記構成によれば、不飽和ポリエステル樹脂および/またはビニルエステル樹脂を含んでいるので、物性に優れたボタンを成形することができる。
【0025】また、請求項2記載の発明のボタン用成形材料は、上記の課題を解決するために、請求項1記載のボタン用成形材料において、上記粘着防止剤の屈折率と、上記熱硬化性樹脂の硬化物の屈折率との差が、0.03以内であることを特徴としている。
【0026】上記構成によれば、より一層透明感に優れたボタンを製造することができる。
【0027】さらに、請求項3記載の発明のボタン用成形材料は、請求項1または2に記載のボタン用成形材料において、互いに混ざり合わず、成形前に柄組みした柄模様を成形時に維持できる、互いに色の異なる少なくとも2種以上の樹脂組成物からなり、上記各樹脂組成物が、不飽和ポリエステル樹脂および/またはビニルエステル樹脂からなる熱硬化性樹脂と、上記熱硬化性樹脂の粘着性を減少させるための、三次元化ポリスチレン粉末または不飽和ポリエステル樹脂硬化物粉末からなる粘着防止剤とを含むことを特徴としている。
【0028】上記構成によれば、柄模様を有するボタンを成形することができる。また、成形時の流動安定性に優れているため、成形時の柄崩れが防止され、柄模様保持性が良好となる。請求項4記載の発明のボタンの製造方法は、請求項1〜3項のいずれかに記載されたボタン用成形材料を押し出し成形することを特徴としている。上記の構成によれば、柄模様を有するボタンを押し出し成形することができる。また、上記ボタン用成形材料は、適度な流動性を有するので、成形が容易である。また、上記ボタン用成形材料は、成形時の流動安定性に優れているため、成形時の柄崩れが防止される。
【0029】以下に本発明を詳しく説明する。本発明にかかるボタン用成形材料は、不飽和ポリエステル樹脂および/またはビニルエステル樹脂からなる熱硬化性樹脂(以下、単に熱硬化性樹脂と記す)と、上記熱硬化性樹脂の粘着性を減少させるための、三次元架橋を有する樹脂硬化物からなる粘着防止剤とを含んでいる。
【0030】上記構成によれば、粘着性が低く、取り扱い性に優れた成形材料となる。また、適度な流動性を有するので、成形が容易である。さらに、ゴム弾性が比較的低く、成形時の流動安定性に優れている。その上、物性に優れたボタンを成形することができる。
【0031】本発明にかかる熱硬化性樹脂は、不飽和ポリエステル樹脂および/またはビニルエステル樹脂からなる熱硬化性樹脂(以下、単に熱硬化性樹脂と記す)である。
【0032】上記不飽和ポリエステル樹脂は、不飽和多価カルボン酸と、多価アルコールおよび/またはエポキシ化合物とを常法で縮合して得られた重合性二重結合を有する重合体と、ビニル単量体との混合物である。必要に応じて、不飽和多塩基酸の一部を飽和多塩基酸に置き換えることもできる。
【0033】上記ビニルエステル樹脂は、エポキシ樹脂の末端に、(メタ)アクリル酸のような不飽和モノカルボン酸を反応させて得られた重合性二重結合を有する重合体と、ビニル単量体との混合物である。
【0034】尚、不飽和ポリエステル樹脂および/またはビニルエステル樹脂に用いるビニル単量体としては、例えば、スチレン、スチレン誘導体、メタクリル酸アルキルエステル等を用いることができる。また、不飽和ポリエステル樹脂および/またはビニルエステル樹脂におけるビニル単量体の含有量については、特に限定されるものではないが、20〜50重量%が好適である。
【0035】上記不飽和ポリエステル樹脂および/またはビニルエステル樹脂は、重合体の末端二重結合とビニル単量体とがラジカル重合することによって硬化する熱硬化性樹脂である。従って、ボタン用成形材料には、通常、硬化剤が添加される。上記硬化剤としては、不飽和ポリエステル樹脂またはビニルエステル樹脂に対して一般に用いられている有機過酸化物等を用いることができ、特に限定されるものではない。また、硬化剤の使用量についても、特に限定されるものではない。
【0036】本発明において、粘着防止剤は、上記熱硬化性樹脂中に分散して粘着性を減少させることができ、かつ、上記熱硬化性樹脂に対して不活性なものであればよい。三次元架橋を有する樹脂硬化物からなる粘着防止剤を用いることにより、透明感に優れたボタンを成形することができる。
【0037】
【0038】上記樹脂硬化物としては、付加重合によって硬化してなる樹脂硬化物粉末が好適である。上記構成の樹脂硬化物を用いることにより、耐クラック性等の物性に優れたボタンが得られる。付加重合による三次元架橋を有する樹脂硬化物粉末としては、具体的には、三次元化ポリスチレン粉末不飽和ポリエステル樹脂硬化物粉末、ビニルエステル樹脂硬化物粉末等の熱硬化性樹脂硬化物粉末を用いることができる。
【0039】また、粘着性を減少させるために、粘着防止剤として、上記樹脂硬化物に無機充填剤を併用してもよい。上記無機充填剤としては、具体的には、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウム等の各種金属水酸化物、炭酸カルシウム、タルク、クレー、シリカ、アルミナ、石英、珪酸カルシウム等を用いることができる。上記例示のうち、水酸化アルミニウムが好ましい。上記無機充填剤は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。上記粘着防止剤は、粉末状であればよいが、 1.5μm〜 100μmの範囲内の平均粒子径であることが好ましく、 1.5μm〜50μmの範囲内の平均粒子径であることがより好ましい。
【0040】上記の粘着防止剤として、上記熱硬化性樹脂の硬化物との屈折率の差が0.03以内である樹脂硬化物、または、樹脂硬化物および無機充填剤を用いると、透明感に優れたボタンを製造することができる。
【0041】上記の条件を満たす粘着防止剤としては、上記熱硬化性樹脂を硬化してなる硬化物が特に好適であるが、特に限定されるものではない。例えば、熱硬化性樹脂として、不飽和ポリエステル樹脂(商品名「エポラック RF−9001」、株式会社日本触媒製)を用いた場合には、粘着防止剤として該不飽和ポリエステル樹脂の屈折率とほぼ同等の屈折率(1.59)を有する三次元化ポリスチレン(SGP−150C 綜研化学製)を用いればよい。
【0042】上記粘着防止剤の添加量は、不飽和ポリエステル樹脂100重量部に対して、50〜600重量部の範囲内が好ましく、100重量部〜400重量部の範囲内がより好ましい。粘着防止剤の添加量が50重量部未満の場合には、べた付きが大きくなり、ハンドリング性が低下して柄組み作業を行うことが困難となったり、ボタン用成形材料のゴム弾性を低下させて成形時のバラス効果やメルトフラクチャー等の不安定流動を防止する効果が不十分となるおそれがある。また、粘着防止剤の添加量が600重量部を越える場合には、ボタン用成形材料の粘度が高くなりすぎ、押し出し成形時にピストンにかかる荷重が大きくなり、大がかりな装置が必要となり、設備費がかかりすぎる。
【0043】尚、熱硬化性樹脂100重量部に対する粘着防止剤の添加量が50重量部以上で、ボタン用成形材料の粘度が5万ポイズに達していない場合には、酸化マグネシウム等の増粘剤を用いて粘度が5万ポイズ以上となるように増粘させればよい。
【0044】上記ボタン用成形材料には、さらに粘度を上昇させるために増粘剤を混合してもよい。これにより、粘着性をさらに減少させて作業性を向上させることができる。本発明にかかるボタン用成形材料は、このように増粘剤を混合して粘着性をさらに減少させて作業性を向上させた場合においても、ゴム弾性が比較的低いので、成形時にバラス効果のような不安定流動を示すことがない。
【0045】上記増粘剤は、熱硬化性樹脂との反応によって粘度を上昇させる化学的増粘作用を有する物質である。上記増粘剤としては、具体的には、酸化マグネシウム、アルミニウムアルコキサイド等が挙げられる。増粘剤の使用量は、特に限定されるものではないが、あまり多く使用すると、ボタン用成形材料の成形時の流動安定性が低下するおそれがある。
【0046】増粘剤を用いる場合、増粘作用を十分発揮させるためには、増粘剤を混合して得られた樹脂組成物を、例えば、40℃エアーオーブン中に24〜48時間放置すればよい。
【0047】上記ボタン用成形材料の25℃粘度は、粘着防止剤および増粘剤の量を調節することによって、5万ポイズ以上に調節されることが好ましく、10万〜160万ポイズの範囲内に調節されることがより好ましく、50万〜130万ポイズの範囲内に調節されることがさらに好ましい。これにより、さらに確実に粘着性を低減させることができ、取り扱い性に優れ、柄模様を有するボタンを押し出し成形するために好適な成形材料となる。25℃粘度が5万ポイズより低いと、粘着性が増大してべた付きが大きくなり、ハンドリング性が低下するおそれがある。従って、柄模様を有するボタンを押し出し成形するための柄組み作業を行うことが困難となる。また、25℃粘度が160万ポイズを越えると、成形時に成形装置のピストン等にかかる荷重が大きくなりすぎ、大がかりで高価な成形装置が必要となる。
【0048】尚、ボタン用成形材料の25℃粘度が100ポイズ以下の場合には、遠心成形や棒管成形に用いることが可能である。100ポイズより粘度が高いと流し込むことが困難となり成形できない。ボタン用成形材料の25℃粘度が100ポイズ以下の場合、粘着防止剤の添加量が50重量部未満であると、粘着防止剤が沈降してしまい、均一な硬化物が得られない場合がある。
【0049】ボタン用成形材料は、さらに、必要に応じて、着色剤を含んでいてもよい。これにより、着色したボタン用成形材料となる。上記の着色剤は、不飽和ポリエステル樹脂またはビニルエステル樹脂に対して一般に用いられている有機顔料や無機顔料、例えばカーボンブラック等を用いることができ、特に限定されるものではない。また、着色剤の色は、柄模様を発現するのに適した色であればよく、特に限定されるものではない。さらに、着色剤の使用量についても、特に限定されるものではないが、一般に、1〜10部が好ましい。
【0050】以上のようにして、本発明にかかるボタン用成形材料が得られる。尚、ボタン用成形材料を調製する際における、上記熱硬化性樹脂、硬化剤、粘着防止剤、増粘剤、着色剤等の混合方法や順序等は、特に限定されるものではない。
【0051】本発明にかかるボタン用成形材料は、互いに混ざり合わず、成形前に柄組みした柄模様を成形時に維持できる、互いに色の異なる少なくとも2種以上の樹脂組成物からなり、上記各樹脂組成物が、不飽和ポリエステル樹脂および/またはビニルエステル樹脂からなる熱硬化性樹脂と、上記熱硬化性樹脂の粘着性を減少させるための、三次元架橋を有する樹脂硬化物からなる粘着防止剤とを含んでいてもよい。これにより、色分けされた柄模様を有するボタンを製造することが可能となる。
【0052】そして、樹脂組成物に異なる色を付与するためには、例えば、互いに異なる色の着色剤を含む2種類以上の樹脂組成物を用いればよいが、特に限定されるものではない。尚、2種類以上の樹脂組成物を用いる場合、各樹脂組成物における着色剤以外の成分は、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0053】次に、本発明にかかるボタン用成形材料を用いたボタンの製造方法について、本発明にかかる互いに色の異なる2種の樹脂組成物(以下、樹脂組成物Aおよび樹脂組成物Bと称する)からなるボタン用成形材料を用いて、2色の柄模様を有する円板状のボタンを製造する場合を例に挙げて、以下に説明する。尚、ボタンの「柄模様」とは、ボタンが衣服等の物品に取り付けられたときに該物品表面に垂直な方向から見た模様を指すものとする。
【0054】本発明にかかるボタンは、例えば、図2に示すように、地色部2と、地色部2と色の異なる渦巻状模様部3とによって形成された2色の柄模様を有する円板状のボタン1である。
【0055】地色部2は、着色剤aを含む樹脂組成物Aを硬化して得られる樹脂硬化物A’からなっている。渦巻状模様部3は、着色剤aと色の異なる着色剤bを含む樹脂組成物Bを硬化して得られる樹脂硬化物B’からなっている。
【0056】樹脂組成物Aと樹脂組成物Bとを組み合わせて柄組みを行う方法について、樹脂組成物Aと樹脂組成物Bとをそれぞれシート状に成形し、得られたコンパウンドシートを積層する方法を例に挙げて図1に基づいて説明する。
【0057】まず、樹脂組成物Aを圧縮もしくはローラーがけによりシート状に成形し、コンパウンドシート4を得る。また、樹脂組成物Bを圧縮もしくはローラーがけによりシート状に成形し、コンパウンドシート5を得る。
【0058】柄組みを行う際には、図1に示すような、押し出し成形機の挿入口の内径と等しい内径を有する円筒状パイプを半分に切断した柄組み用型10・10を用いる。
【0059】先ず、各柄組み用型10の内側に、図1に示すように、それぞれコンパウンドシート4およびコンパウンドシート5を、柄組み用型10の長さ方向に垂直な断面が希望する柄模様となるように層状に詰めて、積層コンパウンド6および積層コンパウンド7を得る。
【0060】次いで、柄組み用型10・10を合わせることにより、積層コンパウンド6および積層コンパウンド7を一体化して円柱状コンパウンド(ボタン用成形材料)とした後、柄組み用型10・10から円柱状コンパウンドを取り出す。このようにして柄組みを行うことによって、断面が希望する柄模様、即ち、樹脂組成物Aからなる地色部と樹脂組成物Bからなる渦巻状模様部とによって形成された2色の柄模様となった円柱状コンパウンドが得られる。
【0061】尚、樹脂組成物Aと樹脂組成物Bとを組み合わせて柄組みを行う方法は、上記の方法に限定されるものではない。即ち、例えば、樹脂組成物Aと樹脂組成物Bとを、それぞれ、棒状に成形したものを束ねてもよく、また、ブロック状に成形したものを組み合わせてもよい。
【0062】次に、円柱状コンパウンドを用いて押し出し成形を行う方法について、図3に基づいて説明する。
【0063】まず、押し出し成形に用いる押し出し成形機20について説明する。尚、押し出し成形装置20は、図3に示す構成にのみ限定されるものではない。
【0064】押し出し成形機20は、図3に示すように、所望の径を有する未硬化の円柱状成形体を製造するようになっており、円柱状コンパウンド8を挿入するための挿入口21、円柱状成形体が押し出されるダイ22、円柱状コンパウンド8の径を絞ってダイ22に供給するための傾斜部23、円柱状コンパウンド8を押すためのプランジャ24、押し出された円柱状成形体を受けるための受け部25等を備えている。
【0065】挿入口21の内径は、前述のように、柄組み用型10・10の内径と等しくなっている。この場合、長さ200mm、内径125mmの柄組み用型10・10を用いて柄組みした長さ200mm、直径125mmの円柱状コンパウンド8を用いているので、挿入口21の内径は、125mmとなっている。
【0066】また、ダイ22の内径は、所望の円柱状成形体の直径、即ち、所望のボタン1の直径であり、この場合、25mmとなっている。ダイ22の長さは、得られる円柱状成形体の直径をほぼ均一にすることができる程度の長さがあればよいが、この場合、100mmとなっている。
【0067】さらに、傾斜部23は、挿入口21からの距離が円柱状コンパウンド8の長さより長くなるように設けられており、この場合、挿入口21からの距離は200mmとなっている。また、押し出し方向に沿った傾斜部23の長さは、その傾斜角度が円柱状コンパウンド8の径の絞りを緩やかに行える程度となるように設定されており、この場合、100mmとなっている。
【0068】次に、押し出し成形装置20を用いた押し出し成形の方法について説明する。先ず、挿入口21から円柱状コンパウンド8を挿入して、図3に示すように、押し出し成形装置20内に円柱状コンパウンド8を充填する。次いで、プランジャ24を用いて円柱状コンパウンド8を所定の速度でダイ22の方向へ押し込む。これにより、円柱状コンパウンド8は、傾斜部23にて径が緩やかに絞り込まれてダイ22から押し出される。従って、所定の径(この場合、25mm)を有し、かつ、円柱状コンパウンド8の柄模様が小さく圧縮された柄模様を有する円柱状成形体が受け部25に押し出されることになる。
【0069】その後、押し出されてきた円柱状成形体を、所定の厚みにスライス切断することにより、円板状コンパウンドを得る。そして、得られた円板状コンパウンドをボタン成形用金型に注入し、加熱プレス成形する。これにより、樹脂組成物Aが硬化して地色部2を形成する樹脂硬化物A’となり、樹脂組成物Bが硬化して渦巻状模様部3を形成する樹脂硬化物B’となり、2色の柄模様を有する円板状のボタン1が得られる。そして、得られたボタン1は、必要に応じて、切削加工を行うことにより細部の形状を整えることが可能である。
【0070】尚、本発明にかかるボタン用成形材料を用いて製造されるボタンの模様部の形状や数は任意に選択することができる。従って、例えば、図4に示すように、ボタン1における渦巻状模様部3を線状模様部9…に変更したボタン1’を製造することができる。
【0071】即ち、ボタン1’は、図4に示すように、樹脂硬化物A’からなる地色部2と、樹脂硬化物A’と異なる色調を有する樹脂硬化物B’からなる複数の線状模様部9…とによって形成された柄模様を有している。そして、線状模様部9…は、外周縁と非接触に形成され、かつ、各線状模様部9の長さ方向の両端が互いに離れるように形成されている。また、樹脂硬化物A’および樹脂硬化物B’は、各々、前述のように、不飽和ポリエステル樹脂および/またはビニルエステル樹脂を含む樹脂組成物Aおよび樹脂組成物Bを硬化して得られる。
【0072】上記構成のボタン1’は、不飽和ポリエステル樹脂および/またはビニルエステル樹脂を含む樹脂組成物Aおよび樹脂組成物Bを硬化して得られるため、物性に優れている。その上、ボタン1’は、遠心成形や棒管成形では製造することができない意匠性に優れた柄模様を有している。
【0073】尚、本発明にかかるボタン用成形材料を用いて製造されるボタンの模様部の形状は、線状や渦巻状以外にも、例えば、円状や波状にすることもでき、また、文字の形状にすることもできる。また、線状模様部9…や渦巻状模様部3は、ボタン1の外周縁に非接触に配されているが、外周縁に接触した模様部を有するボタンも製造可能である。
【0074】また、上記の説明では、2色の柄模様を有するボタンを製造する場合を例に挙げたが、互いに異なる色調を有するボタン用成形材料を3種以上組み合わせることにより、3色以上の柄模様を有するボタンを製造することも可能である。従って、本発明にかかるボタン用成形材料を用いて、任意の柄模様を有するボタンを製造することが可能である。
【0075】さらに、上記の説明では、ボタンの形状は、円板状であったが、特に限定されるものでない。即ち、ボタンの形状に応じて、押し出し成形機のダイの形状や加熱プレス成形に用いる金型の形状を変更すればよい。また、細部の形状については、これらの形状を変更しなくても、切削加工を行うことにより変更することができる。
【0076】また、本発明にかかるボタン用成形材料を用いたボタンの製造方法についても、特に限定されるものではない。即ち、柄模様を有するボタンを製造する場合には、押し出し成形を用いる代わりに棒管成形や遠心成形を用いて成形を行うこともできる。また、柄模様を有しないボタンを製造する場合には、例えば、プレス成形で成形を行うこともできる。
【0077】
【実施例】以下、実施例および比較例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。尚、実施例および比較例に記載の「部」は、「重量部」を示す。また、ボタンは、上述した押し出し成形機を用いて製造した。
【0078】ボタン用成形材料の粘度は、以下に示す方法により測定した。また、成形時の柄模様保持性は、以下に示す方法により評価した。さらに、ボタンの透明感および切削加工性は、以下に示す方法により評価した。
【0079】(a)25℃粘度1000ポイズ以下の粘度のボタン用成形材料については、JIS K 6901 4.4.1に規定されている方法により測定した。1000ポイズを超える粘度のボタン用成形材料については、F号スピンドルを備えたヘリパス回転粘度計(HBT DV−II型粘度計、米国ブルックフィールド社製)を用いて、スピンドル回転数 0.5 rpm、温度25℃で測定した。
【0080】(b)柄模様保持性柄模様保持性は、押し出し成形機のダイから押し出された棒状成形体を目視し、バラス効果による棒状成形体の膨れの程度によって、評価した。そして、棒状成形体の膨れが認められず成形前の柄模様を保持している場合には○、棒状成形体の膨れが大で成形前の柄模様が完全に崩れている場合には×として、○、○〜△、△、△〜×、×の五段階で評価した。
【0081】(c)透明感ボタンの透明感は、目視によって評価し、非常に透明感に優れている場合を○、非常に透明感に劣る場合を×として、○、○〜△、△、△〜×、×の五段階で評価した。
【0082】(d)切削加工性切削加工性は、切削加工が可能な場合には○、切削加工時の割れや欠けが生じる場合には×とした。
【0083】〔屈折率〕以下の実施例で用いた熱硬化性樹脂の単独硬化物の屈折率を、表1に示す。尚、熱硬化性樹脂の単独硬化物の屈折率については、JIS K 7105の測定方法を用いて測定した。
【0084】
【表1】


【0085】以下の実施例で用いた粘着防止剤の屈折率を、表2に示す。尚、不飽和ポリエステル樹脂硬化物粉末の屈折率については、JIS K 7105の測定方法を用いて測定した。
【0086】
【表2】


【0087】〔比較例1
まず、熱硬化性樹脂としての不飽和ポリエステル樹脂(商品名「エポラックN−730」;株式会社日本触媒製)100部、粘着防止剤としての水酸化アルミニウム(商品名「ハイジライト H−320」;昭和電工株式会社製)250部、硬化剤(商品名「パーヘキサTMH」;日本油脂株式会社製)0.5部、増粘剤としての酸化マグネシウム1.0部、および、着色剤aとしてのカーボンブラック2部をニーダを用いて均一に混合し、40℃のエアーオーブン中にて24時間放置して増粘剤による増粘を行い、地色部2となるべき黒色の樹脂組成物Aを製造した。
【0088】得られた樹脂組成物Aの25℃粘度は、56万ポイズであった。樹脂組成物Aの組成(着色剤を除く)および増粘剤による増粘の条件を表3に示す。また、樹脂組成物Aの25℃粘度を表4に示す。樹脂組成物Aは、圧縮によりシート状に引き延ばし、コンパウンドシート4とした。
【0089】次に、カーボンブラックの代わりに、着色剤bとしての白色顔料(商品名「TRカラー ホワイト」;東洋インキ製造株式会社製)を用いる以外は、上記樹脂組成物Aを製造する場合と同様の方法で、渦巻状模様部3となるべき白色の樹脂組成物Bを得た。そして、樹脂組成物Bを圧縮によりシート状に引き延ばし、コンパウンドシート5とした。
【0090】次いで、前述の各柄組み用型10の内側に、図1に示すように、それぞれコンパウンドシート4およびコンパウンドシート5を、柄組み用型10の長さ方向に垂直な断面が希望する柄模様となるように層状に詰めて、積層コンパウンド6および積層コンパウンド7を得た。
【0091】続いて、柄組み用型10・10を合わせることにより、積層コンパウンド6および積層コンパウンド7を一体化して円柱状コンパウンドとした後、柄組み用型10・10から円柱状コンパウンドを取り出した。このようにして柄組みを行うことによって、断面が希望する柄模様、即ち、樹脂組成物Aからなる地色部と樹脂組成物Bからなる渦巻状模様部とによって形成された2色の柄模様となった円柱状コンパウンドが得られた。
【0092】次に、前述の押し出し成形装置20を用いて円柱状コンパウンド8を押し出し成形した。即ち、先ず、挿入口21から円柱状コンパウンド8を挿入して、図3に示すように、押し出し成形装置20内に円柱状コンパウンド8を充填した。次いで、プランジャ24を用いて円柱状コンパウンド8を所定の速度でダイ22の方向へ押し込んだ。これにより、円柱状コンパウンド8は、傾斜部23にて径が緩やかに絞り込まれてダイ22から2500mm/minの押し出し速度で押し出された。この結果、円柱状コンパウンド8の柄模様が小さく圧縮された柄模様を有する直径25mmの円柱状成形体が受け部25に押し出された。押し出し成形における柄模様保持性を評価した結果を表4に示す。
【0093】さらに、押し出されてきた円柱状成形体を所定の厚みにスライス切断することにより、円板状のボタン用成形材料を得た。そして、得られた円板状のボタン用成形材料を内径25mmの直圧式ボタン成形用金型に注入し、成形温度135℃、成形時間7分間の条件で加熱プレス成形して、後硬化させた。
【0094】これにより、地色部2と渦巻状模様部3とによって形成された2色の柄模様を有する円板状のボタン1を得た。得られたボタン1の切削加工性を評価した結果を表4に示す。
【0095】次に、押し出し成形における押し出し速度を1250mm/minに変更する以外は、上記と同様の反応・操作等を行い、柄模様保持性を評価した。結果を表4に示す。
【0096】次に、押し出し成形における押し出し速度を500mm/minに変更する以外は、上記と同様の反応・操作等を行い、柄模様保持性を評価した。結果を表4に示す。なお、押し出し成形における押し出し速度とは、ダイ22から押し出されてきた円柱状成形体の移動速度である。
【0097】さらに、樹脂組成物Aから着色剤を省いた樹脂組成物を成形材料として用いて、上記の円板状のボタン用成形材料と同様の加熱プレス成形を行い、着色剤を含まないボタンを得た。得られたボタンの透明感を評価した結果を表4に示す。
【0098】〔比較例2
まず、酸化マグネシウムを使用せず、水酸化アルミニウムの量を250部から350部に変更し、40℃のエアーオーブン中における24時間放置を行わない以外は、比較例1と同様の反応・操作等を行い、樹脂組成物Aおよび樹脂組成物Bを製造した。樹脂組成物Aの組成(着色剤を除く)を表3に示す。また、樹脂組成物Aの25℃粘度を表4に示す。
【0099】さらに、押し出し成形における押し出し速度を2500mm/minとして、比較例1と同様の操作等を行い、ボタン1を得た。押し出し成形における柄模様保持性を評価した結果を、得られたボタン1の切削加工性を評価した結果とともに表4に示す。
【0100】次に、押し出し成形における押し出し速度を1250mm/minに変更する以外は、上記と同様の反応・操作等を行い、柄模様保持性を評価した。結果を表4に示す。
【0101】次に、押し出し成形における押し出し速度を500mm/minに変更する以外は、上記と同様の反応・操作等を行い、柄模様保持性を評価した。結果を表4に示す。
【0102】さらに、樹脂組成物Aから着色剤を省いた樹脂組成物を用いて、比較例1と同様の加熱プレス成形を行い、得られたボタンの透明感を評価した結果を表4に示す。
【0103】〔実施例1
まず、粘着防止剤として、比較例1における水酸化アルミニウム250部の代わりに不飽和ポリエステル樹脂(商品名「エポラック N−730」;株式会社日本触媒製)硬化物粉末100部を用い、酸化マグネシウムの量を1.0部から0.8部に変更する以外は、比較例1と同様の反応・操作等を行い、樹脂組成物Aおよび樹脂組成物Bを製造した。樹脂組成物Aの組成(着色剤を除く)および増粘剤による増粘の条件を表3に示す。また、樹脂組成物Aの25℃粘度を表4に示す。
【0104】さらに、押し出し成形における押し出し速度を2500mm/minとして、比較例1と同様の操作等を行い、ボタン1を得た。押し出し成形における柄模様保持性を評価した結果を、得られたボタン1の切削加工性を評価した結果とともに表4に示す。
【0105】次に、押し出し成形における押し出し速度を1250mm/minに変更する以外は、上記と同様の反応・操作等を行い、柄模様保持性を評価した。結果を表4に示す。
【0106】次に、押し出し成形における押し出し速度を500mm/minに変更する以外は、上記と同様の反応・操作等を行い、柄模様保持性を評価した。結果を表4に示す。
【0107】さらに、樹脂組成物Aから着色剤を省いた樹脂組成物を用いて、比較例1と同様の加熱プレス成形を行い、得られたボタンの透明感を評価した結果を表4に示す。
【0108】〔実施例2
まず、熱硬化性樹脂として、比較例1における不飽和ポリエステル樹脂の代わりにビニルエステル樹脂(商品名「エポラックRF−9001」;株式会社日本触媒製)100部を用い、粘着防止剤として、比較例1における水酸化アルミニウム250部の代わりに三次元化ポリスチレン粉末(綜研化学株式会社製;商品名「SGP−150C」)110部を用い、40℃のエアーオーブン中における24時間放置を行わない以外は、比較例1と同様の反応・操作等を行い、樹脂組成物Aおよび樹脂組成物Bを製造した。樹脂組成物Aの組成(着色剤を除く)を表3に示す。また、樹脂組成物Aの25℃粘度を表4に示す。
【0109】さらに、押し出し成形における押し出し速度を2500mm/minとして、比較例1と同様の操作等を行い、ボタン1を得た。押し出し成形における柄模様保持性を評価した結果を、得られたボタン1の切削加工性を評価した結果とともに表4に示す。
【0110】次に、押し出し成形における押し出し速度を1250mm/minに変更する以外は、上記と同様の反応・操作等を行い、柄模様保持性を評価した。結果を表4に示す。
【0111】次に、押し出し成形における押し出し速度を500mm/minに変更する以外は、上記と同様の反応・操作等を行い、柄模様保持性を評価した。結果を表4に示す。
【0112】さらに、樹脂組成物Aから着色剤を省いた樹脂組成物を用いて、実施例1と同様の加熱プレス成形を行い、得られたボタンの透明感を評価した結果を表4に示す。
【0113】〔比較例3
まず、粘着防止剤として、比較例1における水酸化アルミニウム250部の代わりにタルク(商品名「TARUKAN NHAYASl」;林化成株式会社製)180部を用い、40℃のエアーオーブン中における24時間放置を行わない以外は、比較例1と同様の反応・操作等を行い、樹脂組成物Aおよび樹脂組成物Bを製造した。樹脂組成物Aの組成(着色剤を除く)を表3に示す。また、樹脂組成物Aの25℃粘度を表4に示す。
【0114】さらに、押し出し成形における押し出し速度を2500mm/minとして、比較例1と同様の操作等を行い、ボタン1を得た。押し出し成形における柄模様保持性を評価した結果を、得られたボタン1の切削加工性を評価した結果とともに表4に示す。
【0115】次に、押し出し成形における押し出し速度を1250mm/minに変更する以外は、上記と同様の反応・操作等を行い、柄模様保持性を評価した。結果を表4に示す。
【0116】次に、押し出し成形における押し出し速度を500mm/minに変更する以外は、上記と同様の反応・操作等を行い、柄模様保持性を評価した。結果を表4に示す。
【0117】さらに、樹脂組成物Aから着色剤を省いた樹脂組成物を用いて、比較例1と同様の加熱プレス成形を行い、得られたボタンの透明感を評価した結果を表4に示す。
【0118】〔比較例4
まず、水酸化アルミニウムを使用せず、酸化マグネシウムの量を1.0部から1.2部に変更し、40℃のエアーオーブン中での放置時間を24時間から48時間に変更する以外は、比較例1と同様の反応・操作等を行い、樹脂組成物Aおよび樹脂組成物Bを製造した。樹脂組成物Aの組成(着色剤を除く)および増粘剤による増粘の条件を表3に示す。また、樹脂組成物Aの25℃粘度を表4に示す。
【0119】さらに、押し出し成形における押し出し速度を2500mm/minとして、比較例1と同様の操作等を行い、ボタン1を得た。押し出し成形における柄模様保持性を評価した結果を、得られたボタン1の切削加工性を評価した結果とともに表4に示す。
【0120】次に、押し出し成形における押し出し速度を1250mm/minに変更する以外は、上記と同様の反応・操作等を行い、柄模様保持性を評価した。結果を表4に示す。
【0121】次に、押し出し成形における押し出し速度を500mm/minに変更する以外は、上記と同様の反応・操作等を行い、柄模様保持性を評価した。結果を表4に示す。
【0122】さらに、樹脂組成物Aから着色剤を省いた樹脂組成物を用いて、比較例1と同様の加熱プレス成形を行い、得られたボタンの透明感を評価した結果を表4に示す。
【0123】〔比較例5
まず、尿素樹脂100部とカーボンブラック2部とをニーダを用いて均一に混合し、樹脂組成物Aを製造した。樹脂組成物Aの組成(着色剤を除く)を表3に示す。また、樹脂組成物Aの25℃粘度を表3に示す。
【0124】次に、尿素樹脂100部と白色顔料(商品名「TRカラー ホワイト」;東洋インキ製造株式会社製)2部とをニーダを用いて均一に混合し、樹脂組成物Bを得た。
【0125】さらに、押し出し成形における押し出し速度を2500mm/minとして、比較例1と同様の操作等を行い、ボタン1を得た。押し出し成形における柄模様保持性を評価した結果を、得られたボタン1の切削加工性を評価した結果とともに表4に示す。
【0126】次に、押し出し成形における押し出し速度を1250mm/minに変更する以外は、上記と同様の反応・操作等を行い、柄模様保持性を評価した。結果を表4に示す。
【0127】次に、押し出し成形における押し出し速度を500mm/minに変更する以外は、上記と同様の反応・操作等を行い、柄模様保持性を評価した。結果を表4に示す。
【0128】さらに、樹脂組成物Aから着色剤を省いた樹脂組成物を用いて、比較例1と同様の加熱プレス成形を行い、得られたボタンの透明感を評価した結果を表4に示す。
【0129】
【表3】


【0130】
【表4】


【0131】表4の結果から明らかなように、本発明にかかるボタン用成形材料は、押し出し成形時の柄模様保持性に優れていることが分かる。また、表4の結果から明らかなように、本発明にかかるボタン用成形材料は、透明感および切削加工性に優れていることが分かる。
【0132】〔比較例6
比較用のボタン用成形材料としての不飽和ポリエステル樹脂(商品名「エポラック G−470」;株式会社日本触媒製)の粘度を測定した。結果を表5に示す。
【0133】
【0134】
【0135】
【表5】


【0136】
【発明の効果】本発明の構成によれば、物性に優れたボタンを成形することができ、取り扱い性に優れ、かつ、成形時の流動安定性に優れたボタン用成形材料および該ボタン用成形材料を用いたボタンの製造方法を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のボタン用成形材料の一例の構成を示す斜視図である。
【図2】上記ボタン用成形材料を用いて製造されるボタンの一例の平面図である。
【図3】上記ボタン用成形材料を成形するための押し出し成形機の概略の断面図である。
【図4】上記ボタン用成形材料を用いて製造されるボタンの他の一例の平面図である。
【符号の説明】
1 ボタン
1’ ボタン
2 地色部
3 渦巻状模様部
4 コンパウンドシート
5 コンパウンドシート
6 積層コンパウンド
7 積層コンパウンド
8 円柱状コンパウンド
9 線状模様部
10 柄組み用型

【特許請求の範囲】
【請求項1】不飽和ポリエステル樹脂および/またはビニルエステル樹脂からなる熱硬化性樹脂と、上記熱硬化性樹脂の粘着性を減少させるための、三次元化ポリスチレン粉末または不飽和ポリエステル樹脂硬化物粉末からなる粘着防止剤とを含むことを特徴とするボタン用成形材料。
【請求項2】上記粘着防止剤の屈折率と、上記熱硬化性樹脂の硬化物の屈折率との差が、0.03以内であることを特徴とする請求項1記載のボタン用成形材料
【請求項3】互いに混ざり合わず、成形前に柄組みした柄模様を成形時に維持できる、互いに色の異なる少なくとも2種以上の樹脂組成物からなり、上記各樹脂組成物が、不飽和ポリエステル樹脂および/またはビニルエステル樹脂からなる熱硬化性樹脂と、上記熱硬化性樹脂の粘着性を減少させるための、三次元化ポリスチレン粉末または不飽和ポリエステル樹脂硬化物粉末からなる粘着防止剤とを含むことを特徴とする請求項1または2に記載のボタン用成形材料。
【請求項4】請求項1〜3項のいずれかに記載されたボタン用成形材料を押し出し成形することを特徴とするボタンの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【特許番号】特許第3137903号(P3137903)
【登録日】平成12年12月8日(2000.12.8)
【発行日】平成13年2月26日(2001.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−170321
【出願日】平成8年6月28日(1996.6.28)
【公開番号】特開平10−7812
【公開日】平成10年1月13日(1998.1.13)
【審査請求日】平成10年6月1日(1998.6.1)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【参考文献】
【文献】特開 昭54−119590(JP,A)
【文献】特開 平8−67724(JP,A)
【文献】特開 平5−93070(JP,A)
【文献】特開 昭50−32258(JP,A)
【文献】特開 昭54−131441(JP,A)