ボタン電池の取り外し構造、電子機器及びボタン電池の取り外し用治具
【課題】複数のボタン電池を簡単かつすぐにケース本体から取り出すことが可能な技術を提供する。
【解決手段】ケース本体20に取り付けられる電池カバー21は、ケース本体20からボタン電池10を取り外すための取り外し用治具として機能する。電池カバー21は、複数のボタン電池10を収納するケース本体20と、当該複数のボタン電池10の側面との間の隙間に挿入される複数の係合爪211を有しており、当該複数の係合爪を利用して、複数のボタン電池10をケース本体20から同時に取り外すことが可能である。
【解決手段】ケース本体20に取り付けられる電池カバー21は、ケース本体20からボタン電池10を取り外すための取り外し用治具として機能する。電池カバー21は、複数のボタン電池10を収納するケース本体20と、当該複数のボタン電池10の側面との間の隙間に挿入される複数の係合爪211を有しており、当該複数の係合爪を利用して、複数のボタン電池10をケース本体20から同時に取り外すことが可能である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボタン電池の取り外し構造と、当該取り外し構造を備える電子機器と、ボタン電池の取り外し用治具とに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1にも記載されているように、電子機器から電池を取り外すための方法が従来から提案されている。また、特許文献2には、電池の収納構造に関する技術が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2003−31195号公報
【特許文献2】特開平9−115496号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
さて、電池で駆動する電子機器によっては複数のボタン電池が使用されることがある。このような電子機器に対して電池交換を行う際には、複数のボタン電池をケース本体から取り外す必要があるため、手間を要することになる。
【0005】
そこで、本発明は上記の点に鑑みて成されたものであり、複数のボタン電池を簡単かつすぐにケース本体から取り出すことが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、ボタン電池の取り外し構造であって、複数のボタン電池を収納するケース本体と、前記複数のボタン電池のうち少なくとも二つのボタン電池の側面と前記ケース本体との隙間に挿入される部分を有し、当該部分を利用して当該少なくとも二つのボタン電池を前記ケース本体から同時に取り外すことが可能な取り外し用治具とを備える。
【0007】
また、請求項2の発明は、請求項1に記載のボタン電池の取り外し構造であって、前記取り外し用治具は、前記ケース本体に取り付けられる電池カバーを兼用している。
【0008】
また、請求項3の発明は、電子機器であって、請求項1及び請求項2のいずれか一つに記載のボタン電池の取り外し構造と、前記ケース本体に収納された前記複数のボタン電池とを備える。
【0009】
また、請求項4の発明は、ボタン電池の取り外し用治具であって、複数のボタン電池を収納するケース本体と、当該複数のボタン電池のうち少なくとも二つのボタン電池の側面との隙間に挿入される部分を有し、当該部分を利用して当該少なくとも二つのボタン電池を前記ケース本体から同時に取り外すことが可能である。
【0010】
本発明のボタン電池には、比較的小さく厚みが大きい狭義のボタン電池だけではなく、比較的大きく厚みが小さいコイン電池も含まれる。
【発明の効果】
【0011】
請求項1及び請求項4の発明によれば、取り外し用治具は、ケース本体と、それに収納される複数のボタン電池のうちの少なくとも二つのボタン電池との間の隙間に挿入される部分を有し、当該部分を利用することによって、当該少なくとも二つのボタン電池を同時にケース本体から取り外すことができる。したがって、ケース本体から複数のボタン電池を簡単かつすぐに取り外すことができる。
【0012】
また、請求項2の発明によれば、取り外し用治具が電池カバーを兼用しているため、電池カバーとは別に取り外し用治具を設ける必要が無い。よって、本発明に係るボタン電池の取り外し構造を簡素化できる。
【0013】
また、請求項3の発明によれば、複数のボタン電池で動作する電子機器の電池交換を簡単かつすぐに行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は本発明の実施の形態に係る電子機器1を前面側から示す斜視図である。本実施の形態に係る電子機器1は、例えば、食品等の物品の製造工場などで使用される表示器であって、物品の製造における作業指示等を表示する。本実施の形態に係る電子機器1は、外部装置と通信を行うことによってその表示内容を書き換えることができる。
【0015】
図1に示されるX軸方向及びY軸方向は、電子機器1の表示画面3aの左右方向及び上下方向に沿った方向をそれぞれ示している。また、Y軸のプラス側に向かう方向は、本電子機器1の表示画面3aの上側に近づく方向であって、Y軸のマイナス側に向かう方向は、本電子機器1の表示画面3aの下側に近づく方向である。以後、Y軸のプラス側及びマイナス側をそれぞれ「+Y側」及び「−Y側」と呼ぶ。
【0016】
図1に示されるように、本実施の形態に係る電子機器1は、ケース2と、当該ケース2内に収納されたディスプレイ3とを備えている。ケース2は、前面側の第1ケース本体20aと、背面側の第2ケース本体20bとが組み合わされて構成されたケース本体20を有している。
【0017】
ディスプレイ3は、その表示画面3aが前面側の第1ケース本体20aに設けられた開口部分から露出するようにケース本体20内に収納されている。ディスプレイ3は、ドットマトリクス方式の不揮発性表示部であって、例えば電子ペーパで構成されている。電子ペーパ等の不揮発性表示部では、駆動電力を与えることなく表示内容を保持することができる。ディスプレイ3は、ドットマトリクス方式の表示部であるため、文字、記号、図形などの各種情報を表示することができる。
【0018】
また、本電子機器1の前面には、作業者が当該電子機器1に対して指示を入力するための入力装置4が設けられている。入力装置4は、Y軸方向に沿って並べられた二つの操作ボタン4a,4bを有している。作業者は、操作ボタン4a,4bを操作することによって、電子機器1に対して指示を入力する。
【0019】
さらに、本実施の形態に係る電子機器1は、図示しない制御装置及び通信装置を備えている。制御装置は、CPUやメモリ等で構成されており、ケース本体20の内部に設けられている。操作ボタン4a,4bが操作されると、その操作情報が制御装置に入力される。制御装置は、入力された操作情報に応じて、例えば、ディスプレイ3の表示画面3aの内容を書き換える。通信装置は、例えば電波方式の無線通信を行い、ケース本体20内に収納されている。通信装置は制御装置によって制御される。通信装置が、外部からデータを受信すると、そのデータは制御装置に入力される。制御装置は、入力されたデータに応じて、例えばディスプレイ3の表示画面3aの内容を書き換える。また、制御装置で生成されたデータは、通信装置を介して外部装置に送信される。
【0020】
本電子機器1のケース本体20内には、後述する複数のボタン電池10が設けられており、これらのボタン電池10から供給される電力によって、ディスプレイ3、通信装置及び制御装置は動作を行うことができる。本実施の形態では、複数のボタン電池10はケース2から取り出すことが可能であって、本電子機器1は、複数のボタン電池10を交換できるように構成されている。ここで、本願発明のボタン電池には、比較的小さく厚みが大きい狭義のボタン電池だけではなく、比較的大きく厚みが小さいコイン電池も含まれる。本実施の形態に係るボタン電池10は、例えばリチウムコイン電池である。
【0021】
図2は本実施の形態に係る電子機器1を示す背面図である。図3は図2に示される電池カバー21をケース本体20から取り外した状態での電子機器1を示す背面図である。図2,3に示されるように、ケース本体20の背面には、周辺よりもやや外側に突出し、X軸方向に沿って延在する2つの突起部200が設けられている、二つの突起部200は、背面側の第2ケース本体20bと一体形成されており、ケース本体20の背面のY軸方向における両端部にそれぞれ設けられている。各突起部200内には、本電子機器1を所定箇所に取り付けるための複数のネジ穴200aが外側に向かって開口するように設けられている。各突起部200では、複数のネジ穴200aがX軸方向に沿って所定間隔で配置されている。
【0022】
また、ケース本体20の背面では、図3に示されるように、電池カバー21で覆われる領域201(以後、「カバー取り付け領域201」と呼ぶ)が、周辺よりも電池カバー21の厚みの分だけ少し凹んでいる。したがって、電池カバー21を背面側の第2ケース本体20bに取り付けた際に、電池カバー21とその周辺との間に段差が発生することを抑制することができる。
【0023】
本実施の形態では、例えば4つのボタン電池10がケース本体20内に収納される。電池カバー21は、4つのボタン電池10を覆うカバー本体210と、電池カバー21をケース本体20に固定するためのロック部220とを有している。ケース本体20の背面には、カバー取り付け領域201における+Y側の端部と隣接して、電池カバー21のロック部220が挿入される第1のロック用係合穴202が設けられている。第1のロック用係合穴202によって露出するケース本体20の内側面には、第1のロック用係合穴202と連通する第2のロック用係合穴205が設けられている。この第2のロック用係合穴205には、ロック部220に設けられた後述の突起部225が挿入される。第1のロック用係合穴205の深さ方向はケース本体20の厚み方向となっており、第2のロック用係合穴205の深さ方向は、第1のロック用係合穴205の深さ方向に垂直であって、かつY軸方向に沿った方向となっている。
【0024】
また、ケース本体20の背面では、カバー取り付け領域201を除く、第1のロック用係合穴202の周辺領域203が少し凹んでいる。ロック部220には、電池カバー21をケース本体20から取り外す際に操作される操作片221が設けられており、電池カバー21が第2ケース本体20bに取り付けられた状態では、操作片221が、少し凹んだ周辺領域203上に位置するようになる。その結果、操作片221が、ケース本体20の表面から突出することが無い。
【0025】
ケース本体20内には、カバー取り付け領域201に向かって開口し、4つのボタン電池10をそれぞれ収納する4つの電池収納部15が設けられている。これらの電池収納部15はX軸方向に沿って並んでいる。ボタン電池10は、扁平な略円柱形状を成しており、第1主面11と、それとは反対側の第2主面12(後述の図6で図示)とを備えている。図3に示されるように、ボタン電池10は、第1主面11がケース本体20から露出するように電池収納部15に収納される。ボタン電池10の第2主面12では、周端部を除く部分がやや盛り上がっており、当該部分がマイナス電極となっている。そして、ボタン電池10では、第1主面11と、側面13と、第2主面12の周端部とがプラス電極となっている。カバー取り付け領域201における−Y側の端部には、各電池収納部15の近傍に、電池カバー21に設けられた後述の係合爪211が挿入される取り付け用係合穴206が設けられている。
【0026】
また、ケース本体20内には、カバー取り付け領域201に向かって開口し、電池カバー21に設けられた後述の4つの突起部214がそれぞれ挿入される4つの挿入部16が設けられている。4つの挿入部16は、4つの電池収納部15と一対一で対応しており、各挿入部16は、それに対応する電池収納部15に対して+Y側に位置しており、当該電池収納部15と繋がっている。この挿入部16の存在により、電池収納部15に挿入されたボタン電池10の側面13と、ケース本体20との間には隙間が生じるようになる。
【0027】
<ケース本体とその内部の詳細構造>
次に、ケース本体20とその内部の構造について詳細に説明する。図4,5はそれぞれ本電子機器1を拡大して背面側から示す斜視図及び平面図である。図6は図5に示される構造の矢視A−Aにおける断面を示す図である。図4,5では、ケース本体20の内部構造が理解しやすいように、電池カバー21を取り外した状態の本電子機器1を示している。また図4では、ボタン電池10を収納していない状態の本電子機器1を示している。また図6では、プラス電極端子31及びボタン電池10の断面構造が本来示されるべきだが、プラス電極端子31とボタン電池10との配置関係が明確となるように、これらの要素については側面図として示している。
【0028】
図6に示されるように、前面側の第1ケース本体20a内には、制御部などを構成する各種電子部品が搭載されているプリント基板30が配置されている。プリント基板30上には、ボタン電池10の側面13(プラス電極)と接触するプラス電極端子31と、ボタン電池10の第2主面12における周端部12bを除く部分12a(マイナス電極)と接触するマイナス電極端子32とが実装されている。ボタン電池10の第2主面12では、周端部12bを除く部分12aが周端部12bよりもやや盛り上がっており、当該部分12aと周端部12bとの境界に段差が発生している。
【0029】
ケース本体20の背面には、当該背面に向かって開口する電池収納部15によって略円形の開口28が形成されている。ケース本体20の背面側から見ると、マイナス電極端子32は開口28のほぼ中央に位置しており、プラス電極端子31は、Y軸方向で互いに隣り合う開口28と取り付け用係合穴206との間に位置している。背面側の第2ケース本体20bには、開口28の周縁からプリント基板30に向かって当該プリント基板30に対して垂直に延びる隔壁35が一体形成されている。この隔壁35は、ケース本体20の背面側から見ると、図5に示されるように、開口28の周縁に沿うように形成されている。隔壁35は、平面視上においてマイナス電極端子32を間に挟んでX軸方向で対向配置された隔壁350,351で構成されている。隔壁350は、平面視上で、開口28の周縁の一方側の半分に沿って延在し、隔壁351は、平面視上で、開口28の周縁の他方側の半分に沿って延在している。
【0030】
また、ケース本体20の背面には、当該背面に向かって開口する挿入部16によって開口29が形成されている。開口29は、それとY軸方向で隣り合う開口28と繋がっており、当該開口29の周縁は、当該開口28の周縁から+Y側に突出した円弧となっている。背面側の第2ケース本体20bには、開口29の周縁からプリント基板30に向かって延びる隔壁36が一体形成されている。この隔壁36は、ケース本体20の背面側から見ると、開口29の周縁に沿うように形成されており、当該開口29と繋がった開口28の周縁に沿った隔壁35と繋がっている。これにより、電池収納部15とそれに繋がる挿入部16は、隔壁35,36で取り囲まれるようになる。隔壁35は電池収納部15の周縁を規定し、隔壁36は挿入部16の周縁を規定する。
【0031】
隔壁36における挿入部16側の側面360は、挿入部16の入り口側の三つの湾曲面361〜363と、挿入部16の奥側の、プリント基板30に対して垂直な三つの垂直面364〜366とで構成されている。垂直面364〜366は平面視上でコ字状に配置されている。垂直面364は、隔壁350の電池収納部15側の側面から+Y側に向かって延び、その先から垂直面365がX軸方向に沿って延び、その先から垂直面366が−Y側に向かって延び、その先が隔壁351の電池収納部15側の側面に繋がっている。
【0032】
平面視上で、垂直面364〜366は、開口29の周縁が成す円弧290の内側に位置している。垂直面365は、挿入部16の底部から挿入部16の入り口に向かって垂直に延び、その先から湾曲面362が外側の円弧290における中央の約1/3の部分に向かって凹むようにして延び、その先が当該部分に繋がっている。湾曲面361は、隔壁350の電池収納部15側の側面とそれに繋がった垂直面364とが成す角部400から、外側の円弧290における、隔壁350側の端部を含む約1/3の部分に向かって凹むようにして延び、その先が当該部分に繋がっている。湾曲面363は、隔壁351の電池収納部15側の側面とそれに繋がった垂直面366とが成す角部401から、外側の円弧290における、隔壁351側の端部を含む約1/3の部分に向かって凹むようにして延び、その先が当該部分に繋がっている。
【0033】
このように、挿入部16の周縁を規定する隔壁36の側面360は、挿入部16の奥側ではプリント基板30に対して垂直を成し、その垂直面から挿入部16の入り口に向かうほど外側に広がるように湾曲している。したがって、挿入部16では、奥側よりも入り口側が広くなっている。
【0034】
挿入部16の底部の全領域と、電池収納部15の底部における+Y側の端部には、ボタン電池10が部分的に載置される板状の台座部410が設けられている。台座部410は隔壁35,36と一体形成されており、プリント基板30上に配置されている。
【0035】
ケース本体20は、電池収納部15に収納されたボタン電池10の第1主面11における−Y側の端部上に位置し、当該端部に当接する壁部204を有している。プラス電極端子31はこの壁部204の下方に配置されている。ケース本体20内には、第2ケース本体20bの内側の面からプリント基板30に向かって延びる四角柱状の柱部37が設けられている。この柱部37は、第2ケース本体20bと一体形成されており、プラス電極端子31における、プリント基板30に半田付けされた部分にまで達しており、当該部分をプリント基板30側に押さえつけている。
【0036】
本実施の形態では、プリント基板30と、台座部410と、隔壁35と、プラス電極端子31とで囲まれた部分が電池収納部15となっており、隔壁36と台座部410とで囲まれた部分が挿入部16となっている。
【0037】
次に、プラス電極端子31及びマイナス電極端子32の構造について詳細に説明する。図7はマイナス電極端子32の構造を示す斜視図である。図7に示されるように、マイナス電極端子32は、プリント基板30に固定される固定部320と、ボタン電池10を第2主面12側から支持する一対の支持部321,322とで構成されている。固定部320は略長方形の板状部分であって、その長手方向の両端部がプリント基板30に半田付けされる。
【0038】
支持部321は、固定部320における一方の長辺の中央部分から外側の斜め上方に向かって延びており、その先端部分321aは水平となっている。支持部321では、中央部分から先端にかけて二股に分かれている。そして、支持部321における、二つに分かれた先端部分321aのそれぞれの上面には、ボタン電池10の第2主面12と接触する突起部分321bが設けられている。
【0039】
同様に、支持部322は、固定部320における他方の長辺の中央部分から外側の斜め上方に向かって延びており、その先端部分322aは水平となっている。支持部322では、中央部分から先端にかけて二股に分かれている。そして、支持部322における、二つに分かれた先端部分322aのそれぞれの上面には、ボタン電池10の第2主面12と接触する突起部分322bが設けられている。
【0040】
このような構造を備えるマイナス電極端子32では、突起部分321b,322bがボタン電池10の第2主面12における周端部12bを除く部分12aと接触するように、一対の支持部321,322がボタン電池10を第2主面12側から支持する。電池カバー21がケース本体20に取り付けられる際には、後述するように、電池カバー21に設けられた押圧部212が、ボタン電池10をプリント基板30側に押圧することから、ボタン電池10は、マイナス電極端子32をプリント基板30側に押さえつけるようになる。その結果、マイナス電極端子32では、支持部321と固定部320との境界の屈曲部分と、支持部322と固定部320との境界の屈曲部分とが弾性変形するとともに、支持部321における、水平の先端部分321aとそれに繋がる傾斜部分との境界の屈曲部分と、支持部322における、水平の先端部分322aとそれに繋がる傾斜部分との境界の屈曲部分とが弾性変形して、マイナス電極端子32の上面全体の形状が平面に近づくようになる。
【0041】
図8はプラス電極端子31の構造を示す斜視図であって、図9はプラス電極端子31をプリント基板30に実装した様子を示す側面図である。図8,9に示されるように、プラス電極端子31は、プリント基板30に固定される固定部310と、当該固定部310に繋がった一対の腕部311,312とを備えている。
【0042】
固定部310は、L字に曲げられた板状部分であって、水平部分310aと、当該水平部分310aの端部から立ち上がる立ち上がり部分310bとで構成されている。固定部310では、水平部分310aがプリント基板30に半田付けされる。また上述のケース本体20内に設けられた柱部37は、固定部310の水平部分310aと当接している。
【0043】
板状の腕部311は、固定部310の立ち上がり部分310bにおける横方向の一方の端部から、水平部分310aから離れるように斜め外方向に向かって立ち上がり部分310bと鈍角を成して延びている。腕部311の先端部には、当該腕部311を支持するL字型の脚部313が繋がっている。腕部311の内側の表面には、その中央部よりもやや先端よりに、ボタン電池10の側面13と接触する突起部分311aが設けられている。
【0044】
同様に、板状の腕部312は、固定部310の立ち上がり部分310bにおける横方向の他方の端部から、水平部分310aから離れるように斜め外方向に向かって立ち上がり部分310bと鈍角を成して延びている。腕部312の先端部には、当該腕部312を支持するL字型の脚部314が繋がっている。腕部312の内側の表面には、その中央部よりもやや先端よりに、ボタン電池10の側面13と接触する突起部分312aが設けられている。
【0045】
図9に示されるように、固定部310では、水平部分310aと立ち上がり部分310bとの成す角度θが90°よりもやや大きく設定されている。そのため、プラス電極端子31では、水平部分310aがプリント基板30に半田付けされると、腕部311,312及び脚部313,314が若干マイナス電極端子32側に傾いた状態となる。また、プラス電極端子31をプリント基板30に載せると、水平部分310aの底面のみならず、L字型の脚部313,314の角部分がプリント基板30に接触する。したがって、プラス電極端子31をプリント基板30に自動実装する際には、脚部313,314で腕部311,312をそれぞれ支持することができる。その結果、自動実装時にプラス電極端子31が倒れることを防止することができる。
【0046】
ボタン電池10が電池収納部15に収納される際には、ボタン電池10の側面13が突起部分311a,312aと当接し、一対の腕部311,312が後方に押されるようになる。そうすると、立ち上がり部分310bと腕部311,312との境界の屈曲部分が弾性変形して、立ち上がり部分310bと腕部311,312との成す角度が大きくなるとともに、水平部分310aと立ち上がり部分310bとの境界の屈曲部分が弾性変形して、水平部分310aと立ち上がり部分310bとが成す角度θが約90°となる。これにより、一対の腕部311,312が、ボタン電池10の側面13を挟み込むようになるとともに、ボタン電池10を隔壁35に押しつけるようになり、プラス電極端子31とボタン電池10との間の接触を十分に確保することができる。
【0047】
なお、ボタン電池10の側面13が突起部分311a,312aと当接すると、傾いていた腕部311,312は、脚部313,314がプリント基板30から浮くように起き上がる。したがって、ボタン電池10を電池収納部15に収納する際に脚部313,314がプリント基板30を損傷することは無い。
【0048】
図10はボタン電池10を電池収納部15に収納する様子を示す図である。図10に示されるように、ボタン電池10を電池収納部15に収納する際には、ボタン電池10を傾けながら壁部204の下方に向けて電池収納部15内に入れていく。そして、ボタン電池10の前方の周端部を壁部204の下方に潜り込ませて、ボタン電池10の側面13をプラス電極端子31の腕部311,312に押し当て、立ち上がり部分310bを起こしながらボタン電池10の後方の周端部も電池収納部15に入れて、当該後方の周端部を台座部410上に載置する。これにより、ボタン電池10の電池収納部15への収納が完了する。
【0049】
その後、ボタン電池10に対する外部からの力が解除されると、起こされた立ち上がり部分310bが若干もとに戻って、プラス電極端子31の腕部311,312がボタン電池10を隔壁35に押さえつけるようになる。その結果、ボタン電池10の側面13が、隔壁35における挿入部16に近い部分と当接するようになる。一方で、ボタン電池10の第1主面11の周端部では、プラス電極端子31に近い部分がその上の壁部204と当接している。これにより、電池カバー21が取り付けられていないケース本体20をひっくり返したとしても、各ボタン電池10がケース本体20から外れて飛び出すことは無い。
【0050】
<電池カバーの詳細構造>
次に電池カバー21の構造について詳細に説明する。図11は電池カバー21の構造を示す平面図であって、図12は図11の矢視Bから見た際の電池カバー21の構造を示す側面図である。図11,12に示されるように、横長の板状部分であるカバー本体210は、第1主面22と、当該第1主面22と反対側の第2主面23とを有している。カバー本体210の第2主面23には、電池カバー21がケース本体20に取り付けられた際に、ケース本体20に収納された4つのボタン電池10の第1主面11をそれぞれ押圧する4つの押圧部212が設けられている。4つの押圧部212は、カバー本体210の第2主面23における短手方向SDの中央部において、カバー本体210の長手方向LDに沿って配置されている。各押圧部212は、カバー本体210の第2主面23から、それに垂直な方向に突出する4つの突起部213で構成されている。各押圧部212では4つの突起部213が円形に配置されている。
【0051】
また、カバー本体210の第2主面23には、ケース本体20の背面に設けられた4つの取り付け用係合穴206にそれぞれ挿入される4つの係合爪211が設けられている。4つの係合爪211はカバー本体210の長手方向LDに沿って配置されている。各係合爪211は、カバー本体210から短手方向SDに沿って突出するように、カバー本体210の第2主面23における短手方向SDの一方の端部210aから、カバー本体210の周縁を超えて、カバー本体210の外側に延びている。
【0052】
さらに、カバー本体210の第2主面23には、ケース本体20内に設けられた4つの挿入部16にそれぞれ挿入される4つの突起部214が設けられている。これらの突起部214は、カバー本体210の第2主面23における短手方向SDの他方の端部210bにおいて、カバー本体210の長手方向LDに沿って配置されている。
【0053】
電池カバー21をケース本体20に固定するためのロック部220は、カバー本体210に繋がった板状部分222と、当該板状部分222とV字形状を成す板状部分223とを有している。これらの板状部分222,223はV字ばね224を構成している。V字ばね224では、そのV字の山部分がカバー本体210の第2主面23よりも外側に突出するように、V字方向の一端がカバー本体210の第2主面23の端部210bに繋がり、かつV字方向の他端がカバー本体210の端部210b側の周縁よりも外側に位置している。V字ばね224におけるV字方向の他端には、カバー本体210の短手方向SDに沿って主面が配置されるように板状の操作片221が繋がっている。V字ばね224のV字方向の他端を含んでいる板状部分223の外側の主面には三つの突起部225が設けられている。これらの突起部225は、カバー本体210の長手方向LDに沿って配置されており、ケース本体20の内側面に設けられた第2のロック用係合穴205に挿入される。各突起部225の表面は、ロック部220が第1のロック用係合穴202に挿入される際に、第1のロック用係合穴202の周縁と当接する傾斜面226を有している。傾斜面226は、V字ばね224のV字の山部分と繋がっており、第1のロック用係合穴202に対するロック部220の挿入方向(進入方向)に対して傾斜している。
【0054】
以上のような構造を有する電池カバー21がケース本体20に取り付けられる際には、まず、カバー本体210の第1主面22が外側に向くようにして、電池カバー21の4つの係合爪211が、ケース本体20の背面に設けられた4つの取り付け用係合穴206にそれぞれ挿入される。そして、電池カバー21におけるロック部220のV字ばね224が、そのV字の山部分から、ケース本体20の背面に設けられた第1のロック用係合穴202に挿入される。このとき、V字ばね224に設けられた突起部225が第1のロック用係合穴202の周縁に当接する。そして、V字ばね224は、その突起部225に設けられた傾斜面226が、第1のロック用係合穴202の周縁に対して摺動することによって、そのV字の角度を小さくしながら、第1のロック用係合穴202に進入する。その後、突起部225が、第1のロック用係合穴202と連通する第2のロック用係合穴205に挿入されると、V字ばね224のV字の角度がもとの状態に戻る。このとき、ロック部220の操作片221は、第1のロック用係合穴202の周辺領域203上に位置するようになる。これにより、ロック部220が第1のロック用係合穴202から抜けなくなり、電池カバー21がケース本体20に固定される。
【0055】
電池カバー21がケース本体20に取り付けられた状態では、電池カバー21の押圧部212が、ボタン電池10の第1主面11をプリント基板30側に押圧するため、ボタン電池10と、それを下から支持するマイナス電極端子32との接触を十分に確保することができる。
【0056】
これに対して、電池カバー21がケース本体20から取り外される際には、まず、電池カバー21のロック部220の操作片221が−Y側に向かって押される。そうすると、V字ばね244のV字の角度が小さくなり、V字ばね244の突起部225が第2のロック用係合穴205から退出する。その結果、電池カバー21のロックが解除される。操作片221が押された状態で、電池カバー21に対して、取り付け用係合穴206と係合爪211との係合箇所を支点として電池カバー21を回動させるような力が加えられると、ロック部220が第1のロック用係合穴202から退出する。その後、電池カバー21の係合爪211をケース本体20の取り付け用係合穴206から取り出すと、電池カバー21がケース本体20から取り外される。
【0057】
<ボタン電池の取り外し方法>
次に、ボタン電池10をケース本体20から取り外す方法について説明する。本実施の形態に係る電子機器1では、電池カバー21を使用して、複数のボタン電池10をケース本体20から同時に取り外すことが可能である。つまり、電池カバー21は、ボタン電池10をケース本体20から取り外すための取り外し用治具として機能する。
【0058】
図13〜17はケース本体20からボタン電池10が取り外される様子を順に示す図である。本実施の形態に係る電子機器1では、ケース本体20に設けられた4つの挿入部16には、カバー本体210の第2主面に設けられた4つの突起部214だけではなく、カバー本体210から突出する4つの係合爪211をそれぞれ挿入することができる。そして、これらの係合爪211を利用して、4つのボタン電池10を同時に取り外すことができる。
【0059】
まず、図13に示されるように、ケース本体20から電池カバー21が取り外される。そして、図14に示されるように、カバー本体210の第1主面22がボタン電池10側を向くようにして、カバー本体210に設けられた4つの係合爪211が、ケース本体20に設けられた4つの挿入部16に対してそれぞれほぼ垂直に挿入される。これにより、各係合爪211は、ボタン電池10の側面13とケース本体20との間の隙間に挿入される。上述のように、挿入部16の周縁を規定する隔壁36の側面360は、挿入部16の奥側に垂直面を有し、その垂直面から挿入部16の入り口に向かうほど外側に広がるように湾曲しているため、電池カバー21の係合爪211は挿入部16に対して挿入し易くなっている。
【0060】
次に、カバー本体210のロック部220側の端部(係合爪211に対して遠い側の端部)に対して、カバー本体210がその第2主面23側に倒れるような力が加えられると、図15に示されるように、係合爪211の先端部が、ボタン電池10の第2主面12の周端部12bに当接するとともに、係合爪211におけるボタン電池10とは反対側の主面が、隔壁36の垂直面365と湾曲面362が成す角部に当接するようになる。そして、カバー本体210が第2主面23側にさらに倒されると、垂直面365と湾曲面362が成す角部を支点として、てこの原理により、ボタン電池10の周端部の一部が持ち上がるようになる。そうすると、図16に示されるように、係合爪211によって持ち上げられたボタン電池10の周端部の一部は、電池収納部15から飛び出し、当該周端部の一部がカバー本体210の第1主面22上に載るようになる。これにより、4つのボタン電池10がケース本体20から同時に取り外される。その後、ケース本体20をひっくり返したりすることによって、図17に示されるように、4つのボタン電池10をケース本体20から完全に取り出すことができる。
【0061】
なお、本実施の形態に係る電子機器1では、挿入部16のうち、湾曲面361〜363で囲まれた空間には作業員の指先を挿入することが可能となっている。作業員は、挿入部16に挿入した指先を利用して、電池収納部15内のボタン電池10の周端部における挿入部16に近い部分を持ち上げて、当該ボタン電池10をケース本体20から取り外すことができる。
【0062】
以上のように、本実施の形態に係る電子機器1には、ケース本体20から複数のボタン電池10を取り外すための取り外し構造が設けられている。この取り外し構造においては、ケース本体20からボタン電池10を取り外すための取り外し用治具(電池カバー21)が設けられている。取り外し用治具は、ケース本体20と、それに収納される複数のボタン電池10との間の隙間に挿入される部分(複数の係合爪211)を有し、当該部分を利用して、複数のボタン電池10を同時にケース本体20から取り外すことができる。したがって、取り外し用治具を使用することによって、ケース本体20から複数のボタン電池10を簡単かつすぐに取り外すことができる。よって、複数のボタン電池10で動作する本電子機器1の電池交換を簡単かつすぐに行うことができる。
【0063】
なお、本実施の形態では、複数のボタン電池10を覆う電池カバー21が、ケース本体20からボタン電池10を取り外すための取り外し用治具として機能していたが、言い換えれば、ケース本体20からボタン電池10を取り外すための取り外し用治具が電池カバーを兼用していたが、電池カバーとは別に専用の取り外し用治具を設けても良い。例えば、ボタン電池10の取り外し用治具の形状を、本実施の形態に係る電池カバー21と同様の形状とし、ケース本体20に取り付ける電池カバーの形状を、本実施の形態に係る電池カバー21とは異なる形状としても良い。本実施の形態のように、ボタン電池10の取り外し用治具が電池カバーを兼用する場合には、電池カバーとは別に取り外し用治具を設ける必要が無いことから、電子機器1におけるボタン電池10の取り外し構造を簡素化することができる。
【0064】
また、本実施の形態では、ケース本体20に収納された4つのボタン電池10のすべてを同時にケース本体20から取り外すことが可能な取り外し用治具を設けていたが、このような取り外し治具の代わりに、当該4つのボタン電池10のうち、少なくとも二つのボタン電池10を同時に取り外すことが可能な取り外し用治具を設けても良い。例えば、カバー本体210に係合爪211を二つだけ、あるいは三つだけ設けた電池カバー21を採用しても良い。このような場合であっても、ボタン電池10を一つずつ作業員の指先等で取り外す場合と比べて、ケース本体20内の複数のボタン電池10を簡単かつすぐに取り外すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の実施の形態に係る電子機器を正面側から示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る電子機器を背面側から示す平面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る電子機器を背面側から示す平面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る電子機器を拡大して示す斜視図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る電子機器を拡大して示す平面図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る電子機器を拡大して示す断面図である。
【図7】本発明の実施の形態に係るマイナス電極端子の構造を示す斜視図である。
【図8】本発明の実施の形態に係るプラス電極端子の構造を示す斜視図である。
【図9】本発明の実施の形態に係るプラス電極端子をプリント基板に実装した様子を示す側面図である。
【図10】ボタン電池を電池収納部に収納する様子を示す断面図である。
【図11】本発明の実施の形態に係る電池カバーの構造を示す平面図である。
【図12】本発明の実施の形態に係る電池カバーの構造を示す側面図である。
【図13】ケース本体からボタン電池が取り外される様子を示す図である。
【図14】ケース本体からボタン電池が取り外される様子を示す図である。
【図15】ケース本体からボタン電池が取り外される様子を示す図である。
【図16】ケース本体からボタン電池が取り外される様子を示す図である。
【図17】ケース本体からボタン電池が取り外される様子を示す図である。
【符号の説明】
【0066】
1 電子機器
10 ボタン電池
16 挿入部
20 ケース本体
21 電池カバー
221 係合爪
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボタン電池の取り外し構造と、当該取り外し構造を備える電子機器と、ボタン電池の取り外し用治具とに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1にも記載されているように、電子機器から電池を取り外すための方法が従来から提案されている。また、特許文献2には、電池の収納構造に関する技術が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2003−31195号公報
【特許文献2】特開平9−115496号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
さて、電池で駆動する電子機器によっては複数のボタン電池が使用されることがある。このような電子機器に対して電池交換を行う際には、複数のボタン電池をケース本体から取り外す必要があるため、手間を要することになる。
【0005】
そこで、本発明は上記の点に鑑みて成されたものであり、複数のボタン電池を簡単かつすぐにケース本体から取り出すことが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、ボタン電池の取り外し構造であって、複数のボタン電池を収納するケース本体と、前記複数のボタン電池のうち少なくとも二つのボタン電池の側面と前記ケース本体との隙間に挿入される部分を有し、当該部分を利用して当該少なくとも二つのボタン電池を前記ケース本体から同時に取り外すことが可能な取り外し用治具とを備える。
【0007】
また、請求項2の発明は、請求項1に記載のボタン電池の取り外し構造であって、前記取り外し用治具は、前記ケース本体に取り付けられる電池カバーを兼用している。
【0008】
また、請求項3の発明は、電子機器であって、請求項1及び請求項2のいずれか一つに記載のボタン電池の取り外し構造と、前記ケース本体に収納された前記複数のボタン電池とを備える。
【0009】
また、請求項4の発明は、ボタン電池の取り外し用治具であって、複数のボタン電池を収納するケース本体と、当該複数のボタン電池のうち少なくとも二つのボタン電池の側面との隙間に挿入される部分を有し、当該部分を利用して当該少なくとも二つのボタン電池を前記ケース本体から同時に取り外すことが可能である。
【0010】
本発明のボタン電池には、比較的小さく厚みが大きい狭義のボタン電池だけではなく、比較的大きく厚みが小さいコイン電池も含まれる。
【発明の効果】
【0011】
請求項1及び請求項4の発明によれば、取り外し用治具は、ケース本体と、それに収納される複数のボタン電池のうちの少なくとも二つのボタン電池との間の隙間に挿入される部分を有し、当該部分を利用することによって、当該少なくとも二つのボタン電池を同時にケース本体から取り外すことができる。したがって、ケース本体から複数のボタン電池を簡単かつすぐに取り外すことができる。
【0012】
また、請求項2の発明によれば、取り外し用治具が電池カバーを兼用しているため、電池カバーとは別に取り外し用治具を設ける必要が無い。よって、本発明に係るボタン電池の取り外し構造を簡素化できる。
【0013】
また、請求項3の発明によれば、複数のボタン電池で動作する電子機器の電池交換を簡単かつすぐに行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は本発明の実施の形態に係る電子機器1を前面側から示す斜視図である。本実施の形態に係る電子機器1は、例えば、食品等の物品の製造工場などで使用される表示器であって、物品の製造における作業指示等を表示する。本実施の形態に係る電子機器1は、外部装置と通信を行うことによってその表示内容を書き換えることができる。
【0015】
図1に示されるX軸方向及びY軸方向は、電子機器1の表示画面3aの左右方向及び上下方向に沿った方向をそれぞれ示している。また、Y軸のプラス側に向かう方向は、本電子機器1の表示画面3aの上側に近づく方向であって、Y軸のマイナス側に向かう方向は、本電子機器1の表示画面3aの下側に近づく方向である。以後、Y軸のプラス側及びマイナス側をそれぞれ「+Y側」及び「−Y側」と呼ぶ。
【0016】
図1に示されるように、本実施の形態に係る電子機器1は、ケース2と、当該ケース2内に収納されたディスプレイ3とを備えている。ケース2は、前面側の第1ケース本体20aと、背面側の第2ケース本体20bとが組み合わされて構成されたケース本体20を有している。
【0017】
ディスプレイ3は、その表示画面3aが前面側の第1ケース本体20aに設けられた開口部分から露出するようにケース本体20内に収納されている。ディスプレイ3は、ドットマトリクス方式の不揮発性表示部であって、例えば電子ペーパで構成されている。電子ペーパ等の不揮発性表示部では、駆動電力を与えることなく表示内容を保持することができる。ディスプレイ3は、ドットマトリクス方式の表示部であるため、文字、記号、図形などの各種情報を表示することができる。
【0018】
また、本電子機器1の前面には、作業者が当該電子機器1に対して指示を入力するための入力装置4が設けられている。入力装置4は、Y軸方向に沿って並べられた二つの操作ボタン4a,4bを有している。作業者は、操作ボタン4a,4bを操作することによって、電子機器1に対して指示を入力する。
【0019】
さらに、本実施の形態に係る電子機器1は、図示しない制御装置及び通信装置を備えている。制御装置は、CPUやメモリ等で構成されており、ケース本体20の内部に設けられている。操作ボタン4a,4bが操作されると、その操作情報が制御装置に入力される。制御装置は、入力された操作情報に応じて、例えば、ディスプレイ3の表示画面3aの内容を書き換える。通信装置は、例えば電波方式の無線通信を行い、ケース本体20内に収納されている。通信装置は制御装置によって制御される。通信装置が、外部からデータを受信すると、そのデータは制御装置に入力される。制御装置は、入力されたデータに応じて、例えばディスプレイ3の表示画面3aの内容を書き換える。また、制御装置で生成されたデータは、通信装置を介して外部装置に送信される。
【0020】
本電子機器1のケース本体20内には、後述する複数のボタン電池10が設けられており、これらのボタン電池10から供給される電力によって、ディスプレイ3、通信装置及び制御装置は動作を行うことができる。本実施の形態では、複数のボタン電池10はケース2から取り出すことが可能であって、本電子機器1は、複数のボタン電池10を交換できるように構成されている。ここで、本願発明のボタン電池には、比較的小さく厚みが大きい狭義のボタン電池だけではなく、比較的大きく厚みが小さいコイン電池も含まれる。本実施の形態に係るボタン電池10は、例えばリチウムコイン電池である。
【0021】
図2は本実施の形態に係る電子機器1を示す背面図である。図3は図2に示される電池カバー21をケース本体20から取り外した状態での電子機器1を示す背面図である。図2,3に示されるように、ケース本体20の背面には、周辺よりもやや外側に突出し、X軸方向に沿って延在する2つの突起部200が設けられている、二つの突起部200は、背面側の第2ケース本体20bと一体形成されており、ケース本体20の背面のY軸方向における両端部にそれぞれ設けられている。各突起部200内には、本電子機器1を所定箇所に取り付けるための複数のネジ穴200aが外側に向かって開口するように設けられている。各突起部200では、複数のネジ穴200aがX軸方向に沿って所定間隔で配置されている。
【0022】
また、ケース本体20の背面では、図3に示されるように、電池カバー21で覆われる領域201(以後、「カバー取り付け領域201」と呼ぶ)が、周辺よりも電池カバー21の厚みの分だけ少し凹んでいる。したがって、電池カバー21を背面側の第2ケース本体20bに取り付けた際に、電池カバー21とその周辺との間に段差が発生することを抑制することができる。
【0023】
本実施の形態では、例えば4つのボタン電池10がケース本体20内に収納される。電池カバー21は、4つのボタン電池10を覆うカバー本体210と、電池カバー21をケース本体20に固定するためのロック部220とを有している。ケース本体20の背面には、カバー取り付け領域201における+Y側の端部と隣接して、電池カバー21のロック部220が挿入される第1のロック用係合穴202が設けられている。第1のロック用係合穴202によって露出するケース本体20の内側面には、第1のロック用係合穴202と連通する第2のロック用係合穴205が設けられている。この第2のロック用係合穴205には、ロック部220に設けられた後述の突起部225が挿入される。第1のロック用係合穴205の深さ方向はケース本体20の厚み方向となっており、第2のロック用係合穴205の深さ方向は、第1のロック用係合穴205の深さ方向に垂直であって、かつY軸方向に沿った方向となっている。
【0024】
また、ケース本体20の背面では、カバー取り付け領域201を除く、第1のロック用係合穴202の周辺領域203が少し凹んでいる。ロック部220には、電池カバー21をケース本体20から取り外す際に操作される操作片221が設けられており、電池カバー21が第2ケース本体20bに取り付けられた状態では、操作片221が、少し凹んだ周辺領域203上に位置するようになる。その結果、操作片221が、ケース本体20の表面から突出することが無い。
【0025】
ケース本体20内には、カバー取り付け領域201に向かって開口し、4つのボタン電池10をそれぞれ収納する4つの電池収納部15が設けられている。これらの電池収納部15はX軸方向に沿って並んでいる。ボタン電池10は、扁平な略円柱形状を成しており、第1主面11と、それとは反対側の第2主面12(後述の図6で図示)とを備えている。図3に示されるように、ボタン電池10は、第1主面11がケース本体20から露出するように電池収納部15に収納される。ボタン電池10の第2主面12では、周端部を除く部分がやや盛り上がっており、当該部分がマイナス電極となっている。そして、ボタン電池10では、第1主面11と、側面13と、第2主面12の周端部とがプラス電極となっている。カバー取り付け領域201における−Y側の端部には、各電池収納部15の近傍に、電池カバー21に設けられた後述の係合爪211が挿入される取り付け用係合穴206が設けられている。
【0026】
また、ケース本体20内には、カバー取り付け領域201に向かって開口し、電池カバー21に設けられた後述の4つの突起部214がそれぞれ挿入される4つの挿入部16が設けられている。4つの挿入部16は、4つの電池収納部15と一対一で対応しており、各挿入部16は、それに対応する電池収納部15に対して+Y側に位置しており、当該電池収納部15と繋がっている。この挿入部16の存在により、電池収納部15に挿入されたボタン電池10の側面13と、ケース本体20との間には隙間が生じるようになる。
【0027】
<ケース本体とその内部の詳細構造>
次に、ケース本体20とその内部の構造について詳細に説明する。図4,5はそれぞれ本電子機器1を拡大して背面側から示す斜視図及び平面図である。図6は図5に示される構造の矢視A−Aにおける断面を示す図である。図4,5では、ケース本体20の内部構造が理解しやすいように、電池カバー21を取り外した状態の本電子機器1を示している。また図4では、ボタン電池10を収納していない状態の本電子機器1を示している。また図6では、プラス電極端子31及びボタン電池10の断面構造が本来示されるべきだが、プラス電極端子31とボタン電池10との配置関係が明確となるように、これらの要素については側面図として示している。
【0028】
図6に示されるように、前面側の第1ケース本体20a内には、制御部などを構成する各種電子部品が搭載されているプリント基板30が配置されている。プリント基板30上には、ボタン電池10の側面13(プラス電極)と接触するプラス電極端子31と、ボタン電池10の第2主面12における周端部12bを除く部分12a(マイナス電極)と接触するマイナス電極端子32とが実装されている。ボタン電池10の第2主面12では、周端部12bを除く部分12aが周端部12bよりもやや盛り上がっており、当該部分12aと周端部12bとの境界に段差が発生している。
【0029】
ケース本体20の背面には、当該背面に向かって開口する電池収納部15によって略円形の開口28が形成されている。ケース本体20の背面側から見ると、マイナス電極端子32は開口28のほぼ中央に位置しており、プラス電極端子31は、Y軸方向で互いに隣り合う開口28と取り付け用係合穴206との間に位置している。背面側の第2ケース本体20bには、開口28の周縁からプリント基板30に向かって当該プリント基板30に対して垂直に延びる隔壁35が一体形成されている。この隔壁35は、ケース本体20の背面側から見ると、図5に示されるように、開口28の周縁に沿うように形成されている。隔壁35は、平面視上においてマイナス電極端子32を間に挟んでX軸方向で対向配置された隔壁350,351で構成されている。隔壁350は、平面視上で、開口28の周縁の一方側の半分に沿って延在し、隔壁351は、平面視上で、開口28の周縁の他方側の半分に沿って延在している。
【0030】
また、ケース本体20の背面には、当該背面に向かって開口する挿入部16によって開口29が形成されている。開口29は、それとY軸方向で隣り合う開口28と繋がっており、当該開口29の周縁は、当該開口28の周縁から+Y側に突出した円弧となっている。背面側の第2ケース本体20bには、開口29の周縁からプリント基板30に向かって延びる隔壁36が一体形成されている。この隔壁36は、ケース本体20の背面側から見ると、開口29の周縁に沿うように形成されており、当該開口29と繋がった開口28の周縁に沿った隔壁35と繋がっている。これにより、電池収納部15とそれに繋がる挿入部16は、隔壁35,36で取り囲まれるようになる。隔壁35は電池収納部15の周縁を規定し、隔壁36は挿入部16の周縁を規定する。
【0031】
隔壁36における挿入部16側の側面360は、挿入部16の入り口側の三つの湾曲面361〜363と、挿入部16の奥側の、プリント基板30に対して垂直な三つの垂直面364〜366とで構成されている。垂直面364〜366は平面視上でコ字状に配置されている。垂直面364は、隔壁350の電池収納部15側の側面から+Y側に向かって延び、その先から垂直面365がX軸方向に沿って延び、その先から垂直面366が−Y側に向かって延び、その先が隔壁351の電池収納部15側の側面に繋がっている。
【0032】
平面視上で、垂直面364〜366は、開口29の周縁が成す円弧290の内側に位置している。垂直面365は、挿入部16の底部から挿入部16の入り口に向かって垂直に延び、その先から湾曲面362が外側の円弧290における中央の約1/3の部分に向かって凹むようにして延び、その先が当該部分に繋がっている。湾曲面361は、隔壁350の電池収納部15側の側面とそれに繋がった垂直面364とが成す角部400から、外側の円弧290における、隔壁350側の端部を含む約1/3の部分に向かって凹むようにして延び、その先が当該部分に繋がっている。湾曲面363は、隔壁351の電池収納部15側の側面とそれに繋がった垂直面366とが成す角部401から、外側の円弧290における、隔壁351側の端部を含む約1/3の部分に向かって凹むようにして延び、その先が当該部分に繋がっている。
【0033】
このように、挿入部16の周縁を規定する隔壁36の側面360は、挿入部16の奥側ではプリント基板30に対して垂直を成し、その垂直面から挿入部16の入り口に向かうほど外側に広がるように湾曲している。したがって、挿入部16では、奥側よりも入り口側が広くなっている。
【0034】
挿入部16の底部の全領域と、電池収納部15の底部における+Y側の端部には、ボタン電池10が部分的に載置される板状の台座部410が設けられている。台座部410は隔壁35,36と一体形成されており、プリント基板30上に配置されている。
【0035】
ケース本体20は、電池収納部15に収納されたボタン電池10の第1主面11における−Y側の端部上に位置し、当該端部に当接する壁部204を有している。プラス電極端子31はこの壁部204の下方に配置されている。ケース本体20内には、第2ケース本体20bの内側の面からプリント基板30に向かって延びる四角柱状の柱部37が設けられている。この柱部37は、第2ケース本体20bと一体形成されており、プラス電極端子31における、プリント基板30に半田付けされた部分にまで達しており、当該部分をプリント基板30側に押さえつけている。
【0036】
本実施の形態では、プリント基板30と、台座部410と、隔壁35と、プラス電極端子31とで囲まれた部分が電池収納部15となっており、隔壁36と台座部410とで囲まれた部分が挿入部16となっている。
【0037】
次に、プラス電極端子31及びマイナス電極端子32の構造について詳細に説明する。図7はマイナス電極端子32の構造を示す斜視図である。図7に示されるように、マイナス電極端子32は、プリント基板30に固定される固定部320と、ボタン電池10を第2主面12側から支持する一対の支持部321,322とで構成されている。固定部320は略長方形の板状部分であって、その長手方向の両端部がプリント基板30に半田付けされる。
【0038】
支持部321は、固定部320における一方の長辺の中央部分から外側の斜め上方に向かって延びており、その先端部分321aは水平となっている。支持部321では、中央部分から先端にかけて二股に分かれている。そして、支持部321における、二つに分かれた先端部分321aのそれぞれの上面には、ボタン電池10の第2主面12と接触する突起部分321bが設けられている。
【0039】
同様に、支持部322は、固定部320における他方の長辺の中央部分から外側の斜め上方に向かって延びており、その先端部分322aは水平となっている。支持部322では、中央部分から先端にかけて二股に分かれている。そして、支持部322における、二つに分かれた先端部分322aのそれぞれの上面には、ボタン電池10の第2主面12と接触する突起部分322bが設けられている。
【0040】
このような構造を備えるマイナス電極端子32では、突起部分321b,322bがボタン電池10の第2主面12における周端部12bを除く部分12aと接触するように、一対の支持部321,322がボタン電池10を第2主面12側から支持する。電池カバー21がケース本体20に取り付けられる際には、後述するように、電池カバー21に設けられた押圧部212が、ボタン電池10をプリント基板30側に押圧することから、ボタン電池10は、マイナス電極端子32をプリント基板30側に押さえつけるようになる。その結果、マイナス電極端子32では、支持部321と固定部320との境界の屈曲部分と、支持部322と固定部320との境界の屈曲部分とが弾性変形するとともに、支持部321における、水平の先端部分321aとそれに繋がる傾斜部分との境界の屈曲部分と、支持部322における、水平の先端部分322aとそれに繋がる傾斜部分との境界の屈曲部分とが弾性変形して、マイナス電極端子32の上面全体の形状が平面に近づくようになる。
【0041】
図8はプラス電極端子31の構造を示す斜視図であって、図9はプラス電極端子31をプリント基板30に実装した様子を示す側面図である。図8,9に示されるように、プラス電極端子31は、プリント基板30に固定される固定部310と、当該固定部310に繋がった一対の腕部311,312とを備えている。
【0042】
固定部310は、L字に曲げられた板状部分であって、水平部分310aと、当該水平部分310aの端部から立ち上がる立ち上がり部分310bとで構成されている。固定部310では、水平部分310aがプリント基板30に半田付けされる。また上述のケース本体20内に設けられた柱部37は、固定部310の水平部分310aと当接している。
【0043】
板状の腕部311は、固定部310の立ち上がり部分310bにおける横方向の一方の端部から、水平部分310aから離れるように斜め外方向に向かって立ち上がり部分310bと鈍角を成して延びている。腕部311の先端部には、当該腕部311を支持するL字型の脚部313が繋がっている。腕部311の内側の表面には、その中央部よりもやや先端よりに、ボタン電池10の側面13と接触する突起部分311aが設けられている。
【0044】
同様に、板状の腕部312は、固定部310の立ち上がり部分310bにおける横方向の他方の端部から、水平部分310aから離れるように斜め外方向に向かって立ち上がり部分310bと鈍角を成して延びている。腕部312の先端部には、当該腕部312を支持するL字型の脚部314が繋がっている。腕部312の内側の表面には、その中央部よりもやや先端よりに、ボタン電池10の側面13と接触する突起部分312aが設けられている。
【0045】
図9に示されるように、固定部310では、水平部分310aと立ち上がり部分310bとの成す角度θが90°よりもやや大きく設定されている。そのため、プラス電極端子31では、水平部分310aがプリント基板30に半田付けされると、腕部311,312及び脚部313,314が若干マイナス電極端子32側に傾いた状態となる。また、プラス電極端子31をプリント基板30に載せると、水平部分310aの底面のみならず、L字型の脚部313,314の角部分がプリント基板30に接触する。したがって、プラス電極端子31をプリント基板30に自動実装する際には、脚部313,314で腕部311,312をそれぞれ支持することができる。その結果、自動実装時にプラス電極端子31が倒れることを防止することができる。
【0046】
ボタン電池10が電池収納部15に収納される際には、ボタン電池10の側面13が突起部分311a,312aと当接し、一対の腕部311,312が後方に押されるようになる。そうすると、立ち上がり部分310bと腕部311,312との境界の屈曲部分が弾性変形して、立ち上がり部分310bと腕部311,312との成す角度が大きくなるとともに、水平部分310aと立ち上がり部分310bとの境界の屈曲部分が弾性変形して、水平部分310aと立ち上がり部分310bとが成す角度θが約90°となる。これにより、一対の腕部311,312が、ボタン電池10の側面13を挟み込むようになるとともに、ボタン電池10を隔壁35に押しつけるようになり、プラス電極端子31とボタン電池10との間の接触を十分に確保することができる。
【0047】
なお、ボタン電池10の側面13が突起部分311a,312aと当接すると、傾いていた腕部311,312は、脚部313,314がプリント基板30から浮くように起き上がる。したがって、ボタン電池10を電池収納部15に収納する際に脚部313,314がプリント基板30を損傷することは無い。
【0048】
図10はボタン電池10を電池収納部15に収納する様子を示す図である。図10に示されるように、ボタン電池10を電池収納部15に収納する際には、ボタン電池10を傾けながら壁部204の下方に向けて電池収納部15内に入れていく。そして、ボタン電池10の前方の周端部を壁部204の下方に潜り込ませて、ボタン電池10の側面13をプラス電極端子31の腕部311,312に押し当て、立ち上がり部分310bを起こしながらボタン電池10の後方の周端部も電池収納部15に入れて、当該後方の周端部を台座部410上に載置する。これにより、ボタン電池10の電池収納部15への収納が完了する。
【0049】
その後、ボタン電池10に対する外部からの力が解除されると、起こされた立ち上がり部分310bが若干もとに戻って、プラス電極端子31の腕部311,312がボタン電池10を隔壁35に押さえつけるようになる。その結果、ボタン電池10の側面13が、隔壁35における挿入部16に近い部分と当接するようになる。一方で、ボタン電池10の第1主面11の周端部では、プラス電極端子31に近い部分がその上の壁部204と当接している。これにより、電池カバー21が取り付けられていないケース本体20をひっくり返したとしても、各ボタン電池10がケース本体20から外れて飛び出すことは無い。
【0050】
<電池カバーの詳細構造>
次に電池カバー21の構造について詳細に説明する。図11は電池カバー21の構造を示す平面図であって、図12は図11の矢視Bから見た際の電池カバー21の構造を示す側面図である。図11,12に示されるように、横長の板状部分であるカバー本体210は、第1主面22と、当該第1主面22と反対側の第2主面23とを有している。カバー本体210の第2主面23には、電池カバー21がケース本体20に取り付けられた際に、ケース本体20に収納された4つのボタン電池10の第1主面11をそれぞれ押圧する4つの押圧部212が設けられている。4つの押圧部212は、カバー本体210の第2主面23における短手方向SDの中央部において、カバー本体210の長手方向LDに沿って配置されている。各押圧部212は、カバー本体210の第2主面23から、それに垂直な方向に突出する4つの突起部213で構成されている。各押圧部212では4つの突起部213が円形に配置されている。
【0051】
また、カバー本体210の第2主面23には、ケース本体20の背面に設けられた4つの取り付け用係合穴206にそれぞれ挿入される4つの係合爪211が設けられている。4つの係合爪211はカバー本体210の長手方向LDに沿って配置されている。各係合爪211は、カバー本体210から短手方向SDに沿って突出するように、カバー本体210の第2主面23における短手方向SDの一方の端部210aから、カバー本体210の周縁を超えて、カバー本体210の外側に延びている。
【0052】
さらに、カバー本体210の第2主面23には、ケース本体20内に設けられた4つの挿入部16にそれぞれ挿入される4つの突起部214が設けられている。これらの突起部214は、カバー本体210の第2主面23における短手方向SDの他方の端部210bにおいて、カバー本体210の長手方向LDに沿って配置されている。
【0053】
電池カバー21をケース本体20に固定するためのロック部220は、カバー本体210に繋がった板状部分222と、当該板状部分222とV字形状を成す板状部分223とを有している。これらの板状部分222,223はV字ばね224を構成している。V字ばね224では、そのV字の山部分がカバー本体210の第2主面23よりも外側に突出するように、V字方向の一端がカバー本体210の第2主面23の端部210bに繋がり、かつV字方向の他端がカバー本体210の端部210b側の周縁よりも外側に位置している。V字ばね224におけるV字方向の他端には、カバー本体210の短手方向SDに沿って主面が配置されるように板状の操作片221が繋がっている。V字ばね224のV字方向の他端を含んでいる板状部分223の外側の主面には三つの突起部225が設けられている。これらの突起部225は、カバー本体210の長手方向LDに沿って配置されており、ケース本体20の内側面に設けられた第2のロック用係合穴205に挿入される。各突起部225の表面は、ロック部220が第1のロック用係合穴202に挿入される際に、第1のロック用係合穴202の周縁と当接する傾斜面226を有している。傾斜面226は、V字ばね224のV字の山部分と繋がっており、第1のロック用係合穴202に対するロック部220の挿入方向(進入方向)に対して傾斜している。
【0054】
以上のような構造を有する電池カバー21がケース本体20に取り付けられる際には、まず、カバー本体210の第1主面22が外側に向くようにして、電池カバー21の4つの係合爪211が、ケース本体20の背面に設けられた4つの取り付け用係合穴206にそれぞれ挿入される。そして、電池カバー21におけるロック部220のV字ばね224が、そのV字の山部分から、ケース本体20の背面に設けられた第1のロック用係合穴202に挿入される。このとき、V字ばね224に設けられた突起部225が第1のロック用係合穴202の周縁に当接する。そして、V字ばね224は、その突起部225に設けられた傾斜面226が、第1のロック用係合穴202の周縁に対して摺動することによって、そのV字の角度を小さくしながら、第1のロック用係合穴202に進入する。その後、突起部225が、第1のロック用係合穴202と連通する第2のロック用係合穴205に挿入されると、V字ばね224のV字の角度がもとの状態に戻る。このとき、ロック部220の操作片221は、第1のロック用係合穴202の周辺領域203上に位置するようになる。これにより、ロック部220が第1のロック用係合穴202から抜けなくなり、電池カバー21がケース本体20に固定される。
【0055】
電池カバー21がケース本体20に取り付けられた状態では、電池カバー21の押圧部212が、ボタン電池10の第1主面11をプリント基板30側に押圧するため、ボタン電池10と、それを下から支持するマイナス電極端子32との接触を十分に確保することができる。
【0056】
これに対して、電池カバー21がケース本体20から取り外される際には、まず、電池カバー21のロック部220の操作片221が−Y側に向かって押される。そうすると、V字ばね244のV字の角度が小さくなり、V字ばね244の突起部225が第2のロック用係合穴205から退出する。その結果、電池カバー21のロックが解除される。操作片221が押された状態で、電池カバー21に対して、取り付け用係合穴206と係合爪211との係合箇所を支点として電池カバー21を回動させるような力が加えられると、ロック部220が第1のロック用係合穴202から退出する。その後、電池カバー21の係合爪211をケース本体20の取り付け用係合穴206から取り出すと、電池カバー21がケース本体20から取り外される。
【0057】
<ボタン電池の取り外し方法>
次に、ボタン電池10をケース本体20から取り外す方法について説明する。本実施の形態に係る電子機器1では、電池カバー21を使用して、複数のボタン電池10をケース本体20から同時に取り外すことが可能である。つまり、電池カバー21は、ボタン電池10をケース本体20から取り外すための取り外し用治具として機能する。
【0058】
図13〜17はケース本体20からボタン電池10が取り外される様子を順に示す図である。本実施の形態に係る電子機器1では、ケース本体20に設けられた4つの挿入部16には、カバー本体210の第2主面に設けられた4つの突起部214だけではなく、カバー本体210から突出する4つの係合爪211をそれぞれ挿入することができる。そして、これらの係合爪211を利用して、4つのボタン電池10を同時に取り外すことができる。
【0059】
まず、図13に示されるように、ケース本体20から電池カバー21が取り外される。そして、図14に示されるように、カバー本体210の第1主面22がボタン電池10側を向くようにして、カバー本体210に設けられた4つの係合爪211が、ケース本体20に設けられた4つの挿入部16に対してそれぞれほぼ垂直に挿入される。これにより、各係合爪211は、ボタン電池10の側面13とケース本体20との間の隙間に挿入される。上述のように、挿入部16の周縁を規定する隔壁36の側面360は、挿入部16の奥側に垂直面を有し、その垂直面から挿入部16の入り口に向かうほど外側に広がるように湾曲しているため、電池カバー21の係合爪211は挿入部16に対して挿入し易くなっている。
【0060】
次に、カバー本体210のロック部220側の端部(係合爪211に対して遠い側の端部)に対して、カバー本体210がその第2主面23側に倒れるような力が加えられると、図15に示されるように、係合爪211の先端部が、ボタン電池10の第2主面12の周端部12bに当接するとともに、係合爪211におけるボタン電池10とは反対側の主面が、隔壁36の垂直面365と湾曲面362が成す角部に当接するようになる。そして、カバー本体210が第2主面23側にさらに倒されると、垂直面365と湾曲面362が成す角部を支点として、てこの原理により、ボタン電池10の周端部の一部が持ち上がるようになる。そうすると、図16に示されるように、係合爪211によって持ち上げられたボタン電池10の周端部の一部は、電池収納部15から飛び出し、当該周端部の一部がカバー本体210の第1主面22上に載るようになる。これにより、4つのボタン電池10がケース本体20から同時に取り外される。その後、ケース本体20をひっくり返したりすることによって、図17に示されるように、4つのボタン電池10をケース本体20から完全に取り出すことができる。
【0061】
なお、本実施の形態に係る電子機器1では、挿入部16のうち、湾曲面361〜363で囲まれた空間には作業員の指先を挿入することが可能となっている。作業員は、挿入部16に挿入した指先を利用して、電池収納部15内のボタン電池10の周端部における挿入部16に近い部分を持ち上げて、当該ボタン電池10をケース本体20から取り外すことができる。
【0062】
以上のように、本実施の形態に係る電子機器1には、ケース本体20から複数のボタン電池10を取り外すための取り外し構造が設けられている。この取り外し構造においては、ケース本体20からボタン電池10を取り外すための取り外し用治具(電池カバー21)が設けられている。取り外し用治具は、ケース本体20と、それに収納される複数のボタン電池10との間の隙間に挿入される部分(複数の係合爪211)を有し、当該部分を利用して、複数のボタン電池10を同時にケース本体20から取り外すことができる。したがって、取り外し用治具を使用することによって、ケース本体20から複数のボタン電池10を簡単かつすぐに取り外すことができる。よって、複数のボタン電池10で動作する本電子機器1の電池交換を簡単かつすぐに行うことができる。
【0063】
なお、本実施の形態では、複数のボタン電池10を覆う電池カバー21が、ケース本体20からボタン電池10を取り外すための取り外し用治具として機能していたが、言い換えれば、ケース本体20からボタン電池10を取り外すための取り外し用治具が電池カバーを兼用していたが、電池カバーとは別に専用の取り外し用治具を設けても良い。例えば、ボタン電池10の取り外し用治具の形状を、本実施の形態に係る電池カバー21と同様の形状とし、ケース本体20に取り付ける電池カバーの形状を、本実施の形態に係る電池カバー21とは異なる形状としても良い。本実施の形態のように、ボタン電池10の取り外し用治具が電池カバーを兼用する場合には、電池カバーとは別に取り外し用治具を設ける必要が無いことから、電子機器1におけるボタン電池10の取り外し構造を簡素化することができる。
【0064】
また、本実施の形態では、ケース本体20に収納された4つのボタン電池10のすべてを同時にケース本体20から取り外すことが可能な取り外し用治具を設けていたが、このような取り外し治具の代わりに、当該4つのボタン電池10のうち、少なくとも二つのボタン電池10を同時に取り外すことが可能な取り外し用治具を設けても良い。例えば、カバー本体210に係合爪211を二つだけ、あるいは三つだけ設けた電池カバー21を採用しても良い。このような場合であっても、ボタン電池10を一つずつ作業員の指先等で取り外す場合と比べて、ケース本体20内の複数のボタン電池10を簡単かつすぐに取り外すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の実施の形態に係る電子機器を正面側から示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る電子機器を背面側から示す平面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る電子機器を背面側から示す平面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る電子機器を拡大して示す斜視図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る電子機器を拡大して示す平面図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る電子機器を拡大して示す断面図である。
【図7】本発明の実施の形態に係るマイナス電極端子の構造を示す斜視図である。
【図8】本発明の実施の形態に係るプラス電極端子の構造を示す斜視図である。
【図9】本発明の実施の形態に係るプラス電極端子をプリント基板に実装した様子を示す側面図である。
【図10】ボタン電池を電池収納部に収納する様子を示す断面図である。
【図11】本発明の実施の形態に係る電池カバーの構造を示す平面図である。
【図12】本発明の実施の形態に係る電池カバーの構造を示す側面図である。
【図13】ケース本体からボタン電池が取り外される様子を示す図である。
【図14】ケース本体からボタン電池が取り外される様子を示す図である。
【図15】ケース本体からボタン電池が取り外される様子を示す図である。
【図16】ケース本体からボタン電池が取り外される様子を示す図である。
【図17】ケース本体からボタン電池が取り外される様子を示す図である。
【符号の説明】
【0066】
1 電子機器
10 ボタン電池
16 挿入部
20 ケース本体
21 電池カバー
221 係合爪
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のボタン電池を収納するケース本体と、
前記複数のボタン電池のうち少なくとも二つのボタン電池の側面と前記ケース本体との隙間に挿入される部分を有し、当該部分を利用して当該少なくとも二つのボタン電池を前記ケース本体から同時に取り外すことが可能な取り外し用治具と
を備える、ボタン電池の取り外し構造。
【請求項2】
請求項1に記載のボタン電池の取り外し構造であって、
前記取り外し用治具は、前記ケース本体に取り付けられる電池カバーを兼用している、ボタン電池の取り外し構造。
【請求項3】
請求項1及び請求項2のいずれか一つに記載のボタン電池の取り外し構造と、
前記ケース本体に収納された前記複数のボタン電池と
を備える、電子機器。
【請求項4】
複数のボタン電池を収納するケース本体と、当該複数のボタン電池のうち少なくとも二つのボタン電池の側面との隙間に挿入される部分を有し、当該部分を利用して当該少なくとも二つのボタン電池を前記ケース本体から同時に取り外すことが可能なボタン電池の取り外し用治具。
【請求項1】
複数のボタン電池を収納するケース本体と、
前記複数のボタン電池のうち少なくとも二つのボタン電池の側面と前記ケース本体との隙間に挿入される部分を有し、当該部分を利用して当該少なくとも二つのボタン電池を前記ケース本体から同時に取り外すことが可能な取り外し用治具と
を備える、ボタン電池の取り外し構造。
【請求項2】
請求項1に記載のボタン電池の取り外し構造であって、
前記取り外し用治具は、前記ケース本体に取り付けられる電池カバーを兼用している、ボタン電池の取り外し構造。
【請求項3】
請求項1及び請求項2のいずれか一つに記載のボタン電池の取り外し構造と、
前記ケース本体に収納された前記複数のボタン電池と
を備える、電子機器。
【請求項4】
複数のボタン電池を収納するケース本体と、当該複数のボタン電池のうち少なくとも二つのボタン電池の側面との隙間に挿入される部分を有し、当該部分を利用して当該少なくとも二つのボタン電池を前記ケース本体から同時に取り外すことが可能なボタン電池の取り外し用治具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2009−259666(P2009−259666A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−108560(P2008−108560)
【出願日】平成20年4月18日(2008.4.18)
【出願人】(000147833)株式会社イシダ (859)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月18日(2008.4.18)
【出願人】(000147833)株式会社イシダ (859)
【Fターム(参考)】
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