説明

ボタン電話システム

【課題】 利用者の発呼操作に応じて他のボタン電話装置の所望の回線を容易に指定できるようにする。
【解決手段】 ボタン電話装置10Bでは、IP電話端末3Bでの発呼操作:外線2と他のボタン電話装置10Aの回線との対応付けを示す回線管理情報を記憶しておく。そしてIP電話端末3Bでの発呼操作に応じてその回線管理情報から外線2に対応する回線を確認し、その回線を接続する他のボタン電話装置10Aに対して当該回線を用いた発呼を、データ通信網52を介して要求する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボタン電話システムに関し、特に複数のボタン電話装置がデータ通信網を介して接続されたボタン電話システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、複数のボタン電話装置を接続して構成されたボタン電話システムが提案されている(例えば、特許文献1など参照)。図11は従来のボタン電話システムの構成例であり、ここでは、マスタボタン電話装置81とスレーブボタン電話装置85とが信号線89を介して接続されている。マスタボタン電話装置81には、回線91,92が接続されているとともに複数の電話機84が収容されており、マスタボタン電話装置81に制御されるスレーブボタン電話装置85には、回線93が接続されているとともに複数の電話機88が収容されている。
【0003】
マスタボタン電話装置81には、回線91,92と制御部82との間に回線切替用のスイッチ83が設けられているとともに、スレーブ電話装置85には、回線93と制御部86との間に回線切替用のスイッチ87が設けられている。そして、これらスイッチ83,87が回線94〜96により相互に接続されており、スイッチ83,87を切替制御することにより、各回線91〜93がいずれのボタン電話装置81,85でも使用可能な構成となっている。
【0004】
電話機88での発呼操作が制御部86から信号線89を介して通知された場合、制御部82では回線91,92の空きを確認し、回線92が空きの場合には回線92のスイッチ83をスイッチ87側へ切替制御するとともに、信号線89を介してスイッチ87を切替制御して回線95と電話機88とを接続するよう通知する。
これにより、電話機88から回線92を用いた発呼が実現されるものとなっていた。
【0005】
【特許文献1】特開平7−322314号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような従来のボタン電話システムでは、電話機での発呼操作に応じて、マスタボタン電話装置およびスレーブボタン電話装置に接続されている回線のうち空き回線を調べ、その空き回線を利用できるようにスイッチを切替制御するものとなっているため、発呼操作時に利用者が意図する他のボタン電話装置の回線を指定できないという問題点があった。
このようなボタン電話システムでは、各ボタン電話装置を遠隔地に配置するとともにこれら装置間を公衆電話網より通話コストの安いデータ通信網を介して接続し、任意のボタン電話装置から他のボタン電話装置の配置地域に近い相手先へ発呼する際、ボタン電話装置間をデータ通信網を介して形成した通話路を用いて接続することにより、他のボタン電話装置に接続されている回線を利用して、通話コストを削減できる。
【0007】
したがって、このような通話を実現するためには、発呼操作時に他のボタン電話装置の回線を指定する必要があるが、従来のボタン電話システムでは、発呼操作時に他のボタン電話装置の回線を指定する機能はなく、各ボタン電話装置に接続されている各回線のうち空き回線が自動的に選択されるため、上記のような通話コストの削減を実施できないだけでなく、相手先とは異なる遠隔地に配置されたボタン電話装置の回線が選択される可能性もあり、通話コストが増加する場合もありうる。
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、各ボタン電話装置に収容されている回線のうち、利用者の発呼操作に応じて他のボタン電話装置の所望の回線を容易に指定できるボタン電話システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的を達成するために、本発明にかかるボタン電話システムは、1つ以上の電話機と、電話網からの回線を接続するとともに電話機を収容し回線に電話機を交換接続する主装置とをそれぞれ有する複数のボタン電話装置からなり、これらボタン電話装置の主装置で、データ通信網を介して制御データをやり取りすることにより呼制御を行うとともに、音声データをやり取りすることにより通話路を形成し、その通話路を利用することにより他のボタン電話装置の回線を用いた通話を実現するボタン電話システムであって、ボタン電話装置の主装置に、電話機での発呼操作と他のボタン電話装置の回線との対応付けを示す回線管理情報を記憶する記憶手段と、電話機での発呼操作に応じて記憶部の回線管理情報から当該発呼操作に対応する回線を確認し、その回線を接続する他のボタン電話装置に対して当該回線を用いた発呼を、データ通信網を介して要求する制御手段とを設けたものである。
【0009】
また、本発明にかかるボタン電話装置は、1つ以上の電話機と、電話網からの回線を接続するとともに電話機を収容し回線に電話機を交換接続する主装置とをそれぞれ有する複数のボタン電話装置からなるボタン電話システムで用いられ、データ通信網を介して制御データをやり取りすることにより呼制御を行うとともに、音声データをやり取りすることにより通話路を形成し、その通話路を利用することにより他のボタン電話装置の回線を用いた通話を実現するであって、主装置に、電話機での発呼操作と他のボタン電話装置の回線との対応付けを示す回線管理情報を記憶する記憶手段と、電話機での発呼操作に応じて記憶部の回線管理情報から当該発呼操作に対応する回線を確認し、その回線を接続する他のボタン電話装置に対して当該回線を用いた発呼を、データ通信網を介して要求する制御手段とを設けたものである。
【0010】
また、本発明にかかるプログラムは、電話網からの回線を接続するとともに1つ以上の電話機を収容し回線に電話機を交換接続する複数の電話機制御装置からなる電話システムで用いられ、他の電話機制御装置との間で、データ通信網を介して制御データをやり取りすることにより呼制御を行うとともに、音声データをやり取りすることにより通話路を形成し、その通話路を利用することにより他のボタン電話装置の回線を用いた通話を実現する電話機制御装置のコンピュータで、電話機制御装置の記憶手段に予め記憶されている、電話機での発呼操作と他のボタン電話装置の回線との対応付けを示す回線管理情報から、電話機での発呼操作に応じて当該発呼操作に対応する回線を確認するステップと、その回線を接続する他のボタン電話装置に対して当該回線を用いた発呼を、データ通信網を介して要求するステップとを実行させるようにしたものである。
【0011】
これら回線管理情報では、発呼操作に対して、当該発呼に用いる回線候補となる他のボタン電話機の回線を複数対応付けてもよく、あるいは発呼操作に対して、他のボタン電話装置の回線管理情報で設定されている発呼操作を対応付けてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、複数のボタン電話装置間で、データ通信網を介して制御データをやり取りすることにより呼制御を行うとともに、音声データをやり取りすることにより通話路を形成し、その通話路を利用することにより他のボタン電話装置の回線を用いた通話を実現するボタン電話システムで、これらボタン電話装置により、電話機での発呼操作と他のボタン電話装置の回線との対応付けを示す回線管理情報を記憶し、電話機での発呼操作に応じて記憶部の回線管理情報から当該発呼操作に対応する回線を確認し、その回線を接続する他のボタン電話装置に対して当該回線を用いた発呼を、データ通信網を介して要求するようにしたので、発呼の際、利用者が所望する他のボタン電話装置の回線を指定して発呼することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は本発明の第1の実施の形態にかかるボタン電話システムの構成を示すブロック図である。
このボタン電話システムは、複数のボタン電話装置10A,10B〜10Nから構成されている。これらボタン電話装置10A〜10Nは、それぞれ1つ以上のボタン電話機2またはIP電話端末3などの電話機と、公衆電話網やISDN網などの電話網51からの回線を接続するとともにボタン電話機2やIP電話端末3を収容しその回線にこれら電話機を交換接続する主装置1とを有している。
【0014】
また、各ボタン電話装置10A〜10Nの主装置1は、インターネットなどのIPネットワークからなるデータ通信網52を介して相互に接続されており、このデータ通信網52を介して制御データをやり取りすることにより呼制御を行うとともに、音声データをやり取りすることによりVoIP(Voice over IP)などの音声パケット技術を用いて通話を形成し、その通話を利用することにより他のボタン電話装置の回線を用いた通話を実現する。
【0015】
図2にボタン電話装置の構成例を示す。主装置1は、電話回線53を介して電話網51に接続されているとともに、通信回線54を介してデータ通信網52に接続されている。また、内線伝送路20を介してボタン電話機2を収容しているとともに、LANなどのデータ通信路30を介してIP電話端末3を収容している。
主装置1には、電話網接続部11、データ通信網接続部12、IP電話端末接続部13、ボタン電話機接続部14、スイッチ15、データ/音声変換部16、制御部17および記憶部18が設けられている。
【0016】
電話網接続部11は、電話網51からの電話回線53を終端制御する回路部である。データ通信網接続部12は、データ通信網52からの通信回線54を終端制御する回路部である。IP電話端末接続部13は、データ通信路30を介してIP電話端末3を接続する回路部である。ボタン電話機接続部14は、内線伝送路20を介してボタン電話機2を接続する回路部である。スイッチ15は、電話網接続部11、ボタン電話機接続部14、データ/音声変換部16の各パスを相互に交換接続する回路部である。データ/音声変換部16は、データ通信網接続部12側の音声パケットとスイッチ15側の音声データとを相互変換する回路部である。
【0017】
制御部17は、CPUなどのマイクロプロセッサとその周辺回路からなるコンピュータ(ハードウェア資源)を有し、所定のプログラムを実行することにより主装置1の各部を制御する機能部である。記憶部18はボタン電話機2やIP電話端末3での発呼操作とその発呼に用いる回線との対応関係を示す回線管理情報18Aのほか、制御部17の制御に用いる各種データを記憶する回路部である。
制御部17には、機能手段として、ボタン電話機2およびIP電話端末3に関する発呼処理や着呼処理を行う呼制御手段17Aが設けられている。この機能手段は、上記ハードウェア資源とプログラムとを協働させることにより実現されている。
【0018】
記録媒体19は、CD−ROMやフレキシブルディスクなどの記録媒体であり、呼制御手段17Aを含む制御部17での各種処理を実現するプログラムが記録されている。
この記録媒体19に記録されているプログラムは、ボタン電話装置の設置後の初期動作時やメンテナンス時など必要に応じて主装置1で読み込まれて記憶部18へ格納され、制御部17での各種処理を実現する。なお、プログラムは、記録媒体19からではなく、データ通信網52や電話網51を介して受信したものを用いてもよい。この場合、プログラムは、データ通信網接続部12または電話網接続部11を介して制御部17で受信され記憶部18へ格納される。
【0019】
ボタン電話機2が電話網51を介して通話を行う際、制御部17により、スイッチ15を介して電話網接続部11とボタン電話機接続部14とのパスが接続される。そして、電話網51側からの音声信号(音声データ)は、電話網接続部11で音声データへ変換され、スイッチ15、ボタン電話機接続部14および内線伝送路20を介してボタン電話機2へ送信される。また、ボタン電話機2からの音声データは、内線伝送路20、ボタン電話機接続部14およびスイッチ15を介して電話網接続部11へ入力され、ここで音声信号(音声データ)へ変換されて電話網51側へ送信される。
【0020】
一方、IP電話端末3がデータ通信網52を介して通話を行う際、制御部17により、データ通信網接続部12とIP電話端末接続部13とのパスが接続される。そして、データ通信網52側からの音声パケットは、データ通信網接続部12、IP電話端末接続部13およびデータ通信路30を介してIP電話端末3へ送信される。また、IP電話端末3からの音声データは、データ通信路30、IP電話端末接続部13およびデータ通信網接続部12を介してデータ通信網52側へ送信される。
【0021】
なお、ボタン電話機2がデータ通信網52を介して通話を行う際、データ通信網52側からの音声パケットは、データ通信網接続部12を介してデータ/音声変換部16に入力されて音声データへ変換される。そして、その音声データがスイッチ15およびボタン電話機接続部14を介してボタン電話機2へ送信される。また、ボタン電話機2からの音声データは、ボタン電話機接続部14およびスイッチ15を介してデータ/音声変換部16へ入力されて音声パケットへ変換される。そして、データ通信網接続部12からデータ通信網52側へ送信される。
【0022】
これに対して、IP電話端末3が電話網51を介して通話を行う際、電話網51からの音声信号(音声データ)は、電話網接続部11から音声データとして出力され、スイッチ15を介してデータ/音声変換部16へ入力されて音声パケットへ変換される。そして、その音声パケットがIP電話端末接続部13を介してIP電話端末3へ送信される。また、IP電話端末3からの音声パケットは、データ/音声変換部16へ入力されて音声データへ変換される。そして、スイッチ15を介して電話網接続部11へ入力され、音声信号(音声データ)として電話網51側へ送信される。
【0023】
さらに、電話網51の通話とデータ通信網52の通話とを中継接続する際、電話網51からの音声信号(音声データ)は、電話網接続部11から音声データとして出力され、スイッチ15を介してデータ/音声変換部16へ入力されて音声パケットへ変換される。そして、その音声パケットがデータ通信網接続部12からデータ通信網52側へ送信される。また、データ通信網52側からの音声パケットは、データ通信網接続部12を介してデータ/音声変換部16に入力されて音声データへ変換される。そして、その音声データがスイッチ15を介して電話網接続部11へ入力され、音声信号(音声データ)として電話網51側へ送信される。
【0024】
図3はIP電話端末の構成を示すブロック図である。
このIP電話端末3には、データ通信部31、音声処理部32、端末制御部33、表示部34、操作部35、および記憶部36が設けられている。
データ通信部31は、データ通信路30を介して主装置1とパケット通信を行う回路部である。音声処理部32は、データ通信部31でやり取りする音声パケットと音声信号とを相互に変換したり、着信音などの各種信号音を出力する回路部である。端末制御部33は、CPUなどのマイクロプロセッサとその周辺回路からなり、所定のプログラムを読み込んで各部を制御する。
【0025】
表示部34は、LCDやLEDを用いて各種情報を表示する回路部である。操作部35はダイヤルキーや各種機能キーを用いて利用者の操作を検出する回路部である。記憶部36は端末制御部33で実行するプログラムやその処理に必要な各種情報を記憶する回路部である。
また、ボタン電話機2については、データ通信部31に代えて主装置1と内線伝送を行うデータ伝送部を有しているほかは、図3のIP電話端末3と同様の構成をなしており、ここでの詳細な説明は省略する。
【0026】
以上では、電話網51を用いた通話を行うための構成として、電話網接続部11、スイッチ15、データ/音声変換部16、ボタン電話機接続部14、およびボタン電話機2を設けた場合を例として説明したが、通話網51に代えてデータ通信網52を用いた音声パケット通話を行う場合、上記の各構成は必須ではなく、これら構成を持たない構成であってもよい。また、ボタン電話機2でデータ通信網52を用いた通話を行う際には、電話網接続部11を持たない構成としてもよい。
また、本発明は、発呼時に他のボタン電話装置の回線を利用する発呼制御に関するものであり、各ボタン電話装置に1つ以上の電話機、すなわちボタン電話機2またはIP電話端末3を備えていればよい。
【0027】
図4に電話機の外観図を示す。この電話機には、送受器41、画面表示部42および各種ボタンが設けられている。各種ボタンとしては、ダイヤルキー43のほか、外線1〜外線4に対応して設けられた外線ボタン44、内線ボタン45、保留ボタン46がある。特に、外線ボタン44のそれぞれにはLEDなどの外線ランプが設けられており、それぞれの外線の状態が表示される。また、画面表示部42の表示内容を操作するためのカーソルボタン47や、選択決定のための決定ボタン48、さらには表示内容を元に戻すための戻るボタン49が設けられている。
なお、IP電話端末3としては、前述のように通話専用の電話機であってもよく、通話機能を備えたパソコンなどの情報通信端末であってもよい。
【0028】
次に、図5、図6および図7を参照して、第1の実施の形態にかかるボタン電話システムの動作について説明する。図5は各ボタン電話装置における回線管理情報の設定例である。図6は図5の回線管理情報に基づく発呼操作と回線との対応関係を示す説明図、図7は本実施の形態にかかるボタン電話システムの発呼動作を示すシーケンス図である。
以下では、IP電話端末3A,3Bをそれぞれ収容する2つのボタン電話装置10A,10Bのうち、ボタン電話装置10BのIP電話端末3Bからの発呼操作に応じて、ボタン電話装置10Aの回線を利用する場合を例として説明する。
【0029】
なお、電話網51が公衆電話網の場合には、物理的な電話回線ごとに1つの通話路が形成されるが、電話網51がISDN網の場合、物理的な電話回線ごとに2つの通話路(チャネル)が形成される。また、データ通信網52でIP通話を行う場合、物理的な通信回線ごとにその通信帯域に応じて1つ以上の通話路(チャネル)が仮想的に形成される。
本発明では、このような物理的な通話回線や通信回線によって実現されて通話に用いられる通話路を総称して単に回線と呼ぶ。また、ボタン電話機やIP電話端末での発呼操作では、当該ボタン電話システム内のボタン電話機やIP電話端末との内線通話と識別するため、当該ボタン電話システムの外部の電話機との通話に用いる回線を外線と呼び、図4に示したように電話機に外線ボタンとして設けられているものとする。
【0030】
ここでは、各ボタン電話装置10A,10Bに、2つの回線すなわち回線1および回線2と、2つの外線すなわち外線1および外線2とがそれぞれ設けられている。各ボタン電話装置10A,10Bでは、主装置1A,1Bの電話網接続部11で通話回線53を終端制御して、回線1,2を形成する。また各主装置1A,1Bのデータ通信網接続部12では、データ通信網52からの通信回線54を終端制御して1つ以上の回線を形成するとともに、相互に呼制御用の制御データをやり取りする。
【0031】
各ボタン電話装置10A,10Bでは、主装置1A,1Bの記憶部18に、これら外線1,2と回線1,2の対応付けを示す回線管理情報18Aが予め記憶されている。図5の例では、ボタン電話装置10Aの回線管理情報として、外線1に当該ボタン電話装置10Aの回線1,2が対応付けられており、外線2にボタン電話装置10Bの回線1が対応付けられている。また、ボタン電話装置10Bの回線管理情報として、外線1に当該ボタン電話装置10Bの回線1,2が対応付けられており、外線2にボタン電話装置10Aの回線1,2が対応付けられている。なお、1つの外線に複数の回線が対応付けられた場合、それら回線からランダムあるいは所定の優先順位でいずれか1つの空き回線が選択される。
【0032】
このような動作環境において、IP電話端末3Bで外線2を用いた発呼操作が行われた場合、ボタン電話システムは図7のように動作する。
まず、利用者によりIP電話端末3Bの送受器がオフフックされて外線2ボタンが押下された場合、そのオフフック操作が検出されて主装置1Bへ通知されるとともに(ステップ100)、外線2ボタンの押下が検出されて主装置1Bへ通知される(ステップ101)。
これに応じて、主装置1BからIP電話端末3Bへダイヤルトーン(DT)が出力され(ステップ102)、この後の利用者による相手先電話番号のダイヤル操作が検出されて主装置1Bへ通知されて(ステップ103)、外線2の発呼操作が終了する。
【0033】
主装置1Bでは、IP電話端末3Bからの外線2の発呼操作を制御部17の呼制御手段17Aで受け付け、記憶部18の回線管理情報18Aを参照して、その外線2に対応する回線を確認する(ステップ104)。
この場合、図5に示すように、外線2に対して、ボタン電話装置10Aの回線1,2が対応付けられていることから、主装置1Bは、そのボタン電話装置10Aの主装置1Aに対して、回線1,2を指定した発呼要求を送信する(ステップ105)。この発呼要求は、主装置1Bのデータ通信網接続部12からデータ通信網52を介して主装置1Aのデータ通信網接続部12で受信される。
【0034】
主装置1Aでは、制御部17の呼制御手段17Aでその発呼要求を受け付け、その送信元の主装置1Bへ発呼確認を返送し(ステップ106)、その発呼要求で指定された回線1,2のうちから空き回線をランダムあるいは所定の優先順位で選択する(ステップ107)。
ここで、回線2が選択された場合、呼制御手段17Aでは、電話網接続部11を制御して回線2を用いた呼設定メッセージを相手電話機6へ送信し(ステップ108)、相手電話機6からの呼出メッセージに応じて(ステップ109)、主装置1Bへ呼出メッセージを送信する(ステップ110)。これにより主装置1Bの呼制御手段17Aでは、呼出音をIP電話端末3Bへ出力する(ステップ111)。
【0035】
その後、相手電話機6での応答操作に応じて相手電話機6から応答メッセージが送信された場合(ステップ112)、主装置1Aの呼制御手段17Aでは、電話網接続部11を制御して、回線2を用いた相手電話機6との通話を形成するとともに(ステップ113)、主装置1Bへ応答メッセージを送信する(ステップ114)。
主装置1Bでは、この応答メッセージに応じてデータ通信網接続部12を制御して、主装置1Aの回線2を用いた通話に接続される通話(VoIP)を形成するとともに(ステップ115)、その通話をIP電話端末3Bへ接続する(ステップ116)。
これにより、主装置1Aの回線2を利用した、IP電話端末3Bと相手電話機6との通話が確立される。
【0036】
このように、電話機での発呼操作に対して、他のボタン電話装置の回線を回線管理情報で予め対応付けておき、その発呼操作に応じて回線管理情報を参照して対応する回線を確認し、その回線に対応する他のボタン電話装置へその回線を指定した発呼要求を行うようにしたので、発呼の際、利用者が所望する他のボタン電話装置の回線を容易に指定することができる。
これにより、例えば遠隔地に設置された他のボタン電話装置の地域に近い相手先に発呼する際、他のボタン電話装置の回線を指定して容易に発呼することができ、ボタン電話装置間を公衆電話網より安価なインターネットなどの通話路で結ぶことにより通話コストを削減できる。また、このような通話コストに限らず、通話に必要な回線をその回線種別や回線帯域幅で選択することも可能となる。
【0037】
次に、図8、図9および図10を参照して、本発明の第2の実施の形態にかかるボタン電話システムの動作について説明する。図8は各ボタン電話装置における回線管理情報の設定例である。図9は図8の回線管理情報に基づく発呼操作と回線との対応関係を示す説明図、図10は本実施の形態にかかるボタン電話システムの発呼動作を示すシーケンス図である。
前述した第1の実施の形態では、発呼操作に他のボタン電話装置の回線を対応付けた場合について説明した。本実施の形態では、発呼操作に他のボタン電話装置で設定されている発呼操作を対応付ける場合を例として説明する。
【0038】
各ボタン電話装置10A,10Bでは、主装置1A,1Bの記憶部18に、これら外線1,2と回線1,2の対応付けを示す回線管理情報18Aが予め記憶されている。図8の例では、ボタン電話装置10Aの回線管理情報として、外線1に当該ボタン電話装置10Aの回線1,2が対応付けられており、外線2にボタン電話装置10Bの外線1が対応付けられている。また、ボタン電話装置10Bの回線管理情報として、外線1に当該ボタン電話装置10Bの回線1,2が対応付けられており、外線2にボタン電話装置10Aの外線1が対応付けられている。
【0039】
このような動作環境において、IP電話端末3Bで外線2を用いた発呼操作が行われた場合、ボタン電話システムは図10のように動作する。
まず、利用者によりIP電話端末3Bの送受器がオフフックされて外線2ボタンが押下された場合、そのオフフック操作が検出されて主装置1Bへ通知されるとともに(ステップ130)、外線2ボタンの押下が検出されて主装置1Bへ通知される(ステップ131)。
これに応じて、主装置1BからIP電話端末3Bへダイヤルトーン(DT)が出力され(ステップ132)、この後の利用者による相手先電話番号のダイヤル操作が検出されて主装置1Bへ通知される(ステップ133)、外線2の発呼操作が終了する。
【0040】
主装置1Bでは、IP電話端末3Bからの外線2の発呼操作を制御部17の呼制御手段17Aで受け付け、記憶部18の回線管理情報18Aを参照して、その外線2に対応する回線を確認する(ステップ134)
この場合、図5に示すように、外線2に対して、ボタン電話装置10Aの外線1が対応付けられていることから、そのボタン電話装置10Aの主装置1Aに対して、外線1を指定した発呼要求を送信する(ステップ135)。この発呼要求は、主装置1Bのデータ通信網接続部12からデータ通信網52を介して主装置1Aのデータ通信網接続部12で受信される。
【0041】
主装置1Aでは、制御部17の呼制御手段17Aでその発呼要求を受け付け、送信元の主装置1Bへ発呼確認を返送する(ステップ136)。そして、その発呼要求で外線1が指定されていることから、記憶部18の回線管理情報18Aを参照して、対応する回線として当該ボタン電話装置1Aの回線1,2を確認し(ステップ137)、これら回線1,2のうちから空き回線をランダムあるいは所定の優先順位で選択する(ステップ138)。
ここで、回線2が選択された場合、呼制御手段17Aでは、電話網接続部11を制御して回線2を用いた呼設定メッセージを相手電話機6へ送信する(ステップ139)。以降、図7のステップ109〜116と同様の手順で動作し、主装置1Aの回線2を利用した、IP電話端末3Bと相手電話機6との通話が確立される。
【0042】
このように、回線管理情報で、発呼操作に対応して他のボタン電話装置で設定されている発呼操作を対応付けるようにしたので、複数のボタン電話装置間で共通の対応付けを利用でき、共通の回線環境を容易に利用できるとともに、各ボタン電話装置での回線管理情報の設定作業を大幅に削減できる。
例えば、同一利用者が複数のボタン電話装置10A,10Bを併用する場合、ボタン電話装置10Aで利用していた外線1と同じ回線環境を、他のボタン電話装置10Bでも利用したい場合がある。このような場合には、上記のようにボタン電話装置10Bの外線2ボタンに元のボタン電話装置10Aで用いていた外線1ボタンを対応付けることにより、元のボタン電話装置10Aと同じ回線環境が容易に利用でき、回線管理情報の設定作業を大幅に削減できる。
【0043】
また、ボタン電話装置10Aの回線環境が変化した場合、そのボタン電話装置10Aの回線管理情報を変更するだけで、他のボタン電話装置10Bで回線管理情報を変更することなく新たな回線環境を利用でき、回線管理情報の設定作業を大幅に削減できる。
【0044】
なお、以上の各実施の形態では、各ボタン電話装置に収容されている電話網51の電話回線53で形成される通話路(チャネル)を回線として、発呼操作に対応付ける場合を例として説明したが、このとき対応付ける回線については電話回線53で形成される通話路に限定されるものではなく、例えばアナログ電話回線やISDN回線で形成される通話路のほか、データ通信網52の通信回線54でVoIPなどの音声パケット通信技術を用いて仮想的に形成される通話路を発呼操作に対応付けてもよい。
また、以上の各実施の形態では、回線管理情報での各発呼操作と回線との対応付けが、個々のボタン電話装置に収容されている各電話機で共通に使用される場合を例として説明したが、これに限定されるものではなく、各電話機ごとに回線管理情報を設けて個別に設定するようにしてもよく、各利用者の要求に応じたきめ細かなサービスを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の第1の実施の形態にかかるボタン電話システムの構成を示すブロック図である。
【図2】ボタン電話装置の構成を示すブロック図である。
【図3】IP電話端末の構成を示すブロック図である。
【図4】電話機の外観図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態での回線管理情報の設定例である。
【図6】本発明の第1の実施の形態での発呼操作と回線との対応関係を示す説明図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態での発呼動作を示すシーケンス図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態での回線管理情報の設定例である。
【図9】本発明の第2の実施の形態での発呼操作と回線との対応関係を示す説明図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態での発呼動作を示すシーケンス図である。
【図11】従来のボタン電話システムを示す説明図である。
【符号の説明】
【0046】
10A,10B,〜,10N…ボタン電話装置、1…主装置、11…電話網接続部、12…データ通信網接続部、13…IP電話端末接続部、14…ボタン電話機接続部、15…スイッチ、16…データ/音声変換部、17…制御部、17A…呼制御手段、18…記憶部、18A…回線管理情報、19…記録媒体(プログラム)、2…ボタン電話機、20…内線伝送路、30…データ通信路、3…IP電話端末、31…データ通信部、32…音声処理部、33…端末制御部、34…表示部、35…操作部、36…記憶部、41…送受器、42…画面表示部、43…ダイヤルキー、44…外線ボタン、45…内線ボタン、46…保留ボタン、47…カーソルボタン、48…決定ボタン、49…戻るボタン、51…電話網、52…データ通信網、53…電話回線、54…通信回線、6…相手電話機。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の電話機と、電話網からの回線を接続するとともに前記電話機を収容し前記回線に前記電話機を交換接続する主装置とをそれぞれ有する複数のボタン電話装置からなり、これらボタン電話装置の主装置で、データ通信網を介して制御データをやり取りすることにより呼制御を行うとともに、音声データをやり取りすることにより通話路を形成し、その通話路を利用することにより他のボタン電話装置の回線を用いた通話を実現するボタン電話システムであって、
前記ボタン電話装置の主装置は、
前記電話機での発呼操作と他のボタン電話装置の回線との対応付けを示す回線管理情報を記憶する記憶手段と、
前記電話機での発呼操作に応じて前記記憶部の回線管理情報から当該発呼操作に対応する回線を確認し、その回線を接続する他のボタン電話装置に対して当該回線を用いた発呼を、前記データ通信網を介して要求する制御手段とを備えることを特徴とするボタン電話システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−312441(P2007−312441A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−226073(P2007−226073)
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【分割の表示】特願2002−315625(P2002−315625)の分割
【原出願日】平成14年10月30日(2002.10.30)
【出願人】(304020498)サクサ株式会社 (678)
【Fターム(参考)】