説明

ボックスカルバートの移送工法およびこれに用いる移動台車

【課題】 施工地域の上空を高架線が走る場合や、民有地が多い場所で施工する場合等、高さおよび周辺のスペースに余裕がない場所でもボックスカルバートを移送配置する。
【解決手段】 据付予定地に沿ってレール2を配置し、レール2上に、ボックスカルバート110を吊り上げるチェーンブロック35を備えた移動台車3を載置して、移動台車3でボックスカルバート110を吊り上げ、所定位置まで移動台車3を移動させてからボックスカルバート110を降ろす。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ボックスカルバートの移送工法およびこれに用いる移動台車に係り、詳細には、高さおよび周辺のスペースに余裕がない場所でも簡易にボックスカルバートを移送して据付を行えるボックスカルバートの移送工法およびこれに用いる移動台車に関する。
【0002】
【従来の技術】線路の下を横断する道路を構築する場合など、ボックスカルバートは様々な構造物の施工に利用されている。このボックスカルバートの移送工法としては、クレーンを用いて所定の位置に移送する工法や、特開平11−222400号公報に開示された工法がある。特開平11−222400号公報に開示された工法は、設置予定地近傍にレールを2本敷設し、ボックスカルバートをレール上に沿って移送させる工法において、オイルポンプに連結されたオイルジャッキをボックスカルバートと反力受け部との間に設置し、且つ該反力受け部をレールに対して移送及び固定自在に装着し、上記オイルジャッキの押し棒の突出により、反力受け部がレールに固定され、コンクリート部材をレール上で押圧して滑動させる工法である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、施工地域の上空を高架線が走る場合や、民有地が多い場所で施工する場合等クレーン用の作業ヤードを確保しにくい場合など、周辺環境からクレーンを用いることが難しい場合があった。また、特開平11−222400号公報に開示された工法では、台車等にボックスカルバートを安定した状態に載置する必要があり、その分作業負荷が多くなっていた。さらに、移送した後にレールから降ろす必要があり、それにクレーン等を用いる必要があった。
【0004】本発明の課題は、高さおよび周辺のスペースに余裕がない場所でもボックスカルバートを簡易に移送据付することができるボックスカルバートの移送工法およびこれに用いる移動台車を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】以上の課題を解決するため、請求項1記載の発明は、ボックスカルバート(110)を連続して据付するために移送する方法であって、据付予定地(1)に沿ってレール(2)を配置し、このレール上に、ボックスカルバートを吊り上げる吊り上げ手段(例えばチェーンブロック35)を備えた移動台車(3)を載置し、前記移動台車を、ボックスカルバートを吊り上げた状態で所定位置まで前記移動台車を移動させてから、ボックスカルバートを降ろすことを特徴とする。
【0006】請求項1記載の発明によれば、ボックスカルバートを移送するための設備は、レールおよび移動台車である。レールは据付予定地に沿って配置され、周辺に作業用のヤードを確保する必要はない。また、移動台車の幅及び高さはボックスカルバートよりやや大きい程度でよい。従って、ボックスカルバートを移送するために必要なスペース及び高さは格段に小さくなる。さらに、ボックスカルバートは移動台車の吊り上げ手段によって吊り上げられるため、移動台車に載置し、また吊り降ろす等の作業を行う必要もなく、作業は簡易に行える。従って、高架線等の障害物や作業ヤードを別個に確保できない場所でもボックスカルバートの移送が簡易に行える。
【0007】請求項2記載の発明は、請求項1記載のボックスカルバートの移送工法に用いる移動台車(3)であって、下部に前記レールに対応した車輪(31a)を備え、上部に前記吊り上げ手段(例えばチェーンブロック35)を備えた枠体(例えば側枠31)と、この枠体に取り付けられ、前記吊り上げ手段によって吊り上げられたボックスカルバートの水平方向の移動を抑える防揺手段(例えばリボルバージャッキ37およびレバーブロック38)と、を備えることを特徴とする。
【0008】請求項2記載の発明によれば、移動台車は、防揺手段を備えるため、揺れを抑えながらボックスカルバートを移送できる。また、据付予定地が斜面であってもボックスカルバートは防揺手段の働きにより水平方向に揺れたりずり落ちたりはしない。すなわち、安定した状態で移送される。従って、ボックスカルバートの移送をより容易に行える。
【0009】請求項3記載の発明は、請求項1に記載のボックスカルバートの移送工法に用いる移動台車(3)であって、下部に前記レールに対応した車輪(31a)を備えた枠体(例えば側枠31)と、前記吊り上げ手段(例えばチェーンブロック35)を保持しており、前記レールに交わる方向に移動可能に前記枠体に組み付けられた保持手段(例えばギアードトロリー34)と、を備えることを特徴とする。
【0010】請求項3記載の発明によれば、ボックスカルバートの移送先は、レールに交わる方向においては保持手段を移動させることで調整可能であり、レール方向においては移動台車を移動させることで調整可能である。従って、クレーンを用いる場合と比べて簡易にボックスカルバートを正確な位置に移送することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、図を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1に示すように、本実施の形態に係る移送システムは、斜面を含む据付予定地1に沿ってボックスカルバート110を直列配置するものであり、施工場所の上空には高架線120が走っている。ここで、据付予定地1の近傍には民有地が広がっており、クレーンを配置する作業ヤードを周囲に確保できない環境にある。
【0012】まず、構成について説明する。移送システムは、図1〜図4に示すように、据付予定地1に沿って互いに平行に配置された二本のレール2(図2及び図3では不図示)と、レール2の上に載置される移動台車3と、それぞれのレール2に沿って据付予定地1の両端間に滑車4a(図1及び図4では不図示)を用いて張り渡された2本の無端状の駆動ワイヤ4と、据付予定地1の端部に固定され、駆動ワイヤ4を回転させるモータ5と、据付予定地1の両端間に張り渡され、移動台車3の両方の側部をそれぞれ貫通する2本の逸走防止ワイヤ6と、により概略構成される。また、図4に示すように、ボックスカルバート110には、吊り上げ用のワイヤー3aを取り付けるための吊り上げフック111が側面に回転可能かつ取り外し可能に取り付けられている。
【0013】レール2は図1に示すように、コンクリート基礎1a上に、互いの間隔がボックスカルバート110の幅より広くなるように固定されている。
【0014】移動台車3は、図4および図5に示すように、2本のレール2上にそれぞれ立設されたH型鋼からなる略台形の側枠31(枠体)と、2つの側枠31の上部間に架設固定された架設部材32と、2つの側枠31の中央部間にそれぞれ架設固定された架設部材33と、架設部材32に取り付けられたギアードトロリー34(保持手段)およびチェーンブロック35(吊り上げ手段)と、チェーンブロック35に横向きに吊り下げられる棒状の吊金具36と、側枠31の一方の縦辺に沿って垂直方向に移動可能なリボルバージャッキ37(防揺手段の一部で図5では不図示)と、側枠31の他方の縦辺側に取り付けられたレバーブロック38(防揺手段の一部で図5では不図示)と、により概略構成される。
【0015】側枠31は下部には車輪31aを備える。また側枠31は例えば高さが5m程度であるため、高さ2m前後の所に梯子および手摺り付の作業用足場31bを設ける。また、側枠31の下端には駆動ワイヤ4が固定されており、下端側部には逸走防止ワイヤ6を通すための貫通孔を備えた部材31cが取り付けられている。
【0016】吊金具36はボックスカルバート110をワイヤー3aで吊り下げる金具である。また、チェーンブロック35は吊金具36を上下させ、ギアードトロリー34はチェーンブロック35の横方向の位置すなわちレール2と交わる方向の位置を微調整する。すなわち、ボックスカルバート110は、吊金具36を介してチェーンブロック35によって上下し、吊金具36・チェーンブロック35を介してギアードトロリー34によって横方向の位置を微調整する。
【0017】リボルバージャッキ37の一端は、図6に示すように、側枠31の一方の縦辺に沿う丸鋼39に、シャックルで取り付けられている。また、リボルバージャッキ37の他端はシャックルを介してボックスカルバート110の吊り上げフック111に取り付けられる。レバーブロック38は、図6に示すように、ワイヤー38aを引っ張るストッパー付レバーである。ワイヤー38aの端部はシャックルを介して吊り上げフック111に取り付けられている。すなわち、ボックスカルバート110はリボルバージャッキ37およびレバーブロック38によって反対方向にそれぞれ引っ張られているため、移送中に揺れることはない。
【0018】駆動ワイヤ4両端は、それぞれ移動台車3に固定されている。モータ5は、図4に示すように、コンクリート基礎1aに固定された鋼部材1bにフック1cを用いて組み付けられており、駆動ワイヤ4を回転させることで移動台車3をレール2に沿って動かすモータである。逸走防止ワイヤ6は、鋼部材1bの外側に固定された鋼部材1dにフック1eを用いて組み付けられている。
【0019】この移送システムによれば、ボックスカルバート110は、例えば据付予定地1の上端から、以下の要領で移送されてレール2に沿って直列に連結配置される。まず、モータ5を駆動して移動台車3を据付予定地1の上端に移動して、ボックスカルバート110の吊り上げフック111にワイヤー3a、リボルバージャッキ37およびワイヤー38aを取り付ける。そして、チェーンブロック35を用いてボックスカルバート110を吊り上げる。そして、モータ5を駆動して移動台車3を他端側に向けて所定位置まで移動させる。この際、上空の高架線120等は当然問題にならない。また、移動台車3は逸走防止ワイヤ6によっても案内されるため、レール2から脱線しにくい。そして、ギアードトロリー34で横方向の位置を微調整しつつチェーンブロック35を動かしてボックスカルバート110を既設のボックスカルバート110に対して直列に連続配置する。
【0020】従って、本実施の形態によれば、上空に高架線120が走っているにもかかわらず、また周囲を民有地で囲まれているにもかかわらず、クレーン等を用いる必要がないため、ボックスカルバート110を所定の位置に配置できる。この際、ボックスカルバート110はリボルバージャッキ37およびレバーブロック38の働きにより、移送中に揺れたり斜面でずり落ちたりすることはない。また、ボックスカルバート110等を台車等に載置する必要はないため、作業は簡易である。また、ギアードトロリー34でボックスカルバート110の横方向の移送位置を調整できるため、クレーンを用いる場合と比べてより簡易にボックスカルバート110を正確な位置に移送できる。
【0021】なお、以上の実施の形態においては、吊り上げ手段としてチェーンブロック35を用いたが、本発明はこれに限定されるものではなく、モータ駆動式の吊り上げ手段を用いてもよい。また、移動台車3の形状等も任意であり、その他、具体的な構成についても適宜に変更可能であることは勿論である。
【0022】
【発明の効果】請求項1記載の発明によれば、高架線等の障害物や作業ヤードを別個に確保できない場所でもボックスカルバートの移送が可能になる。また、ボックスカルバートを台車等に載置する必要もないため、その作業も簡易である。
【0023】請求項2記載の発明によれば、防揺手段の働きによりボックスカルバートの移送をより容易に行える。請求項3記載の発明によれば、クレーンを用いる場合と比べて簡易にボックスカルバートを正確な位置に移送することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用した一実施の形態の移送システムの斜視概略図である。
【図2】図1の移送システムの構成を説明する正面概略図である。
【図3】図1の移送システムの構成を説明する平面概略図である。
【図4】図1の要部を説明する正面図である。
【図5】図1の移送システムの移動台車の側面図である。
【図6】図5の要部を説明する概略図である。
【図7】図1のモータの取付構成を説明する斜視概略図である。
【符号の説明】
1 据付予定地
2 レール
3 移動台車
31 側枠(枠体)
31a 車輪
34 ギアードトロリー(保持手段)
35 チェーンブロック(吊り上げ手段)
37 リボルバージャッキ(防揺手段の一部)
38 レバーブロック(防揺手段の一部)
110 ボックスカルバート

【特許請求の範囲】
【請求項1】ボックスカルバートを連続して据付するために移送する方法であって、据付予定地に沿ってレールを配置し、このレール上に、ボックスカルバートを吊り上げる吊り上げ手段を備えた移動台車を載置し、前記移動台車を、ボックスカルバートを吊り上げた状態で所定位置まで前記移動台車を移動させてから、ボックスカルバートを降ろすことを特徴とするボックスカルバートの移送工法。
【請求項2】請求項1記載のボックスカルバートの移送工法に用いる移動台車であって、下部に前記レールに対応した車輪を備え、上部に前記吊り上げ手段を備えた枠体と、この枠体に取り付けられ、前記吊り上げ手段によって吊り上げられたボックスカルバートの水平方向の移動を抑える防揺手段と、を備えることを特徴とする移動台車。
【請求項3】請求項1に記載のボックスカルバートの移送工法に用いる移動台車であって、下部に前記レールに対応した車輪を備えた枠体と、前記吊り上げ手段を保持しており、前記レールに交わる方向に移動可能に前記枠体に組み付けられた保持手段と、を備えることを特徴とする移動台車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2001−303655(P2001−303655A)
【公開日】平成13年10月31日(2001.10.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−118208(P2000−118208)
【出願日】平成12年4月19日(2000.4.19)
【出願人】(000195971)西松建設株式会社 (329)
【Fターム(参考)】