説明

ボビン

【課題】軽量で加工、分解、再生、一部取り替え等が容易で且つ低コストで行え、ダンボールでフランジ部を構成した場合でもフランジ部が変形や座屈し難く、十分な強度を保有することができるボビンの提供を課題とする。
【解決手段】ワイヤー等の紐状部材を巻き付け或いは送り出すための胴部100と、該胴部100の両端部に構成されるフランジ部200とからなるボビン10であって、前記フランジ部200は、紙製若しくはプラスチック製のダンボール板からなる円板を複数枚張り合わせてなるフランジ部本体210と、該フランジ部本体210の外周縁に一体に結合された環状の補強帯220とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はボビンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属ワイヤー等の比較的重量のある紐状部材を巻回して保存等するのに使用されているボビンとしては、木製材を用い、これを釘やネジで結合してボビンにしたものが一般的であった。この従来の木製ボビンの場合には、ボビンが多数の釘の打ち付けやネジの取り付けによって形作られているため、加工が容易でなく、リサイクル使用や廃棄の際に打ち付けていた複数の釘を抜いたり、ネジを取り外す必要があり、作業時間や人件費等、コストがかかるという問題があった。また寸法が大きくなると重量が増し、移動や持ち運びに不便であるという問題があった。
一方、特開平11−60074号公報には、紙で構成されたボビンが、また特開平11−240085号公報にはダンボールで構成されたボビンが提供されている。
【特許文献1】特開平11−60074号公報
【特許文献2】特開平11−240085号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1に示すようなボビンは、紙で構成されていることから非常に軽量で持ち運び、廃棄処分が容易である点においてボビンの利点となるものである。その一方、フランジ部の厚みが薄いために設地面積が狭く構成されており、ボビンに重量のある線材を巻き付ける際にフランジが強度を保てず変形するという問題があった。
また上記特許文献2に示すようなボビンは、フランジ部として同じダンボール原板から一体的に切り出したダンボールカット片を重ね合わせた構成としており、ダンボールカット片自体の物性からくる反りやねじれに対しては防止効果がある点においてボビンの利点となるものである。その一方、フルート部が一方向に並んで設けられているため、外部からの曲げ力や圧縮力に対する強度が方向によって大きく異なり、外部からの荷重方向によっては、例えフランジ部がダンボールを複数枚重ね合わせた構成であっても、フランジ部が曲ったり、端部が座屈するという問題があった。また水等の液体はダンボールに浸透し易く、液体の浸透によってフランジ部が変形するという問題があった。
【0004】
そこで本発明は上記従来技術の問題を解消し、軽量で加工、分解、再生、一部取り替え等が容易で且つ低コストで行え、ダンボールでフランジ部を構成した場合でも該フランジ部が変形や座屈し難く、十分な強度を保有することができるボビンの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を達成するための本発明のボビンは、ワイヤー等の紐状部材を巻き付け或いは送り出すための胴部と、該胴部の両端部に構成されるフランジ部とからなるボビンであって、前記フランジ部は、紙製若しくはプラスチック製のダンボール板からなる円板を複数枚張り合わせてなるフランジ部本体と、該フランジ部本体の外周縁に一体に結合された環状の補強帯とからなることを第1の特徴としている。
また本発明のボビンは、上記第1の特徴に加えて、環状の補強帯は紙製の帯体を複数層に重ねて結合して構成していることを第2の特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
請求項1に記載のボビンによれば、フランジ部本体が紙製若しくはプラスチック製のダンボール板でできていることから軽量で、加工、分解、再生、一部取り替え等を容易に且つ低コストで行うことができる。またフランジ部本体は、紙製若しくはプラスチック製のダンボール板からなる円板を複数枚張り合わせた構成としていることから、外部からの曲げ力や圧縮力に対する強度を増すことができる。特にフランジ部本体の外周縁に一体に結合された環状の補強帯を有する構成としていることから、紐状部材を巻き付けた際に大きな重量が加わった場合においても、接地点から垂直方向に作用する力を前記環状の補強帯により円周方向に分散させ、また環状の補強帯の部分で適当に弾性変形することで、その接地面積を増大させて応力集中を緩和することができる。よってこれらの応力の分散、緩和作用により、フランジ部本体の形状が曲ったり、端部が座屈するのを防止することができる。また多方向からの力や圧縮に対してもフランジ部本体の形状の変形を防止することができる。
また水等の液体のフランジ部本体への浸透を防止することができる。
【0007】
請求項2に記載のボビンによれば、請求項1に記載の構成による作用効果に加えて、環状の補強帯は紙製の帯体を複数層に重ねて結合した構成としていることから、軽量で、加工、分解、再生、一部取り替え等が容易で且つ低コストで行える。特に紙製であっても、帯体を複数層重ねて結合したものとしているので、フランジ部に対して半径方向に加わる荷重に対しても十分な強度を持って耐えることが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下の図面を参照して、本発明の実施形態に係るボビンについて説明する。
図1は本発明の実施形態に係るボビンの全体斜視図、図2は本発明の実施形態に係るボビンの分解斜視図、図3は実施形態に係るボビンの縦断面図、図4はフランジ部の一部を切欠いた部分拡大断面図、図5は環状の補強帯を示し、(A)は全体斜視図、(B)はその部分拡大図である。図6はボビンに荷重がかった状態を説明するフランジ部の断面図を示し、(A)は全体断面図、(B)はその部分拡大図である。
【0009】
図1に示すように、ボビン10は胴部100と一対のフランジ部200、200とからなる。
前記胴部100はワイヤー当の紐状部材を巻き付け或いは送り出すためのもので、例えばライナー紙等の紙材を筒状になるようドラムに巻き付ける状態で積層して構成されたものを用いる。但し、筒状の形状で一定の強度を有するものであれば紙製の他、プラスチック製、木製、その他の材料で構成してもよく、また断面形状としては円形の他、角形等の何れでも可能である。しかし通常は丸筒が用いられる。またその大きさ、太さ等はボビンに巻く紐状部材の太さ、巻き長さ等、ボビンの用途によって自由に変えることができる。
【0010】
図2〜4も参照して、前記一対のフランジ部200、200は、胴部100を両側から支持する部材であり、フランジ部本体210と環状の補強帯220とからなる。
フランジ部本体210は、紙製若しくはプラスチック製のダンボール板から胴部100の外径よりも大径に打ち抜いた円形ダンボール板211を複数枚張り合わせて構成されている。張り合わせ方は、図4に示すように、接合面に塗布された接着剤によって隣接する複数枚の円形ダンボール板211を、そのフルート部211aが相互に交差するようにして接着する。これによって強度を上げることができる。またフランジ部本体210にはボビン10を支持する芯棒が挿通される軸孔300が開設され、その大きさは図2に示すように胴部100の内径とほぼ同じに形成される。
また図3に示すように、フランジ部本体210の胴部100との接合側には、胴部100を接合するための嵌合凹部210aが構成されている。この嵌合凹部210aの直径は、胴部100の直径より少し大きく形成されている。
【0011】
前記環状の補強帯220は、フランジ部本体の強度を補強すると共に、地面等に接地するための部材である。この補強帯220の幅はフランジ部本体210と少なくとも同じであることが望ましい。図5に示すように、補強帯220は、例えば紙製の帯体221を複数層に重ねて結合して構成することができる。複数層に重ねることで、接地点からフランジ部本体210に垂直方向に作用する力に対する強度を大きく向上させることができる。勿論、これに限定されるものではない。前記フランジ部本体210、補強帯220の大きさ等はボビンに巻く紐状部材の太さ、巻き長さ等、ボビンの用途によって自由に変えることができる。
【0012】
本実施形態におけるボビン10の組み立てを説明する。
今、胴部100を1体用意し、円形ダンボール板211を複数枚張り合わせたフランジ部本体210と環状の補強帯220とをそれぞれ2体ずつ用意する。そして胴部100の両端部をフランジ部本体210の嵌合凹部210aに順次接着し、嵌め合わせて行く。これによってフランジ部本体210が胴部100の両側端部に配されてなるボビンが形作られる。この状態では、形はボビンの形状になっているが、まだ全体が完成された状態とはなっていない。いわゆる仮組み状態である。次に一対の環状の補強帯220、220をフランジ部本体210に接着し結合させることで、フランジ部本体210が環状の補強帯220で補強された強固なボビン10が完成する。勿論、フランジ部本体210の外周に環状の補強帯220を接着・結合させてフランジ部200を完成させ、しかる後にそのフランジ部200を胴部100と嵌合、接着してボビン10を完成する順序であってもよい。
【0013】
図6を参照して、補強帯220がフランジ部本体210に結合された状態では、ボビン10に紐状部材が巻き付けられることで重量が増すと、ボビン10が接地された際にフランジ部200が接地点から垂直方向に受ける応力が増大する。補強帯220がフランジ部本体210に結合されていない場合には、前記応力がフランジ部本体210のダンボールの端部に直接的に作用して、該端部を変形、座屈させる。本発明ではフランジ部本体210の周縁が環状の補強帯220で十分に補強されており、接地点からの垂直応力を補強帯220の円周方向に分散して、耐変形性能、耐座屈性能を増大させている。また補強帯220による弾性変形により、接地面積を増大させている。更に補強帯220は、その幅方向の強度が大であることから、補強帯220を有するフランジ部200に対する曲げ応力に対しても十分に強度を上げることができる。よってボビン10の強度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係るボビンの全体斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係るボビンの分解斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係るボビンの縦断面図である。
【図4】フランジ部の一部を切欠いた部分拡大断面図である。
【図5】環状の補強帯を示し、(A)は全体斜視図、(B)はその部分拡大図である。
【図6】ボビンに荷重がかかった状態を説明するフランジ部を示し、(A)はフランジ部全体の断面図、(B)はその部分拡大図である。
【符号の説明】
【0015】
10 ボビン
100 胴部
200 フランジ部
210 フランジ部本体
210a 嵌合凹部
211 ダンボール円板
211a フルート部
220 補強帯
221 紙製の帯体
300 軸孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤー等の紐状部材を巻き付け或いは送り出すための胴部と、該胴部の両端部に構成されるフランジ部とからなるボビンであって、前記フランジ部は、紙製若しくはプラスチック製のダンボール板からなる円板を複数枚張り合わせてなるフランジ部本体と、該フランジ部本体の外周縁に一体に結合された環状の補強帯とからなることを特徴とするボビン。
【請求項2】
環状の補強帯は紙製の帯体を複数層に重ねて結合して構成されていることを特徴とする請求項1に記載のボビン。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2007−297174(P2007−297174A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−126435(P2006−126435)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(596094935)羽柳株式会社 (4)
【Fターム(参考)】