説明

ボリン酸錯体の抗ウイルス使用

ウイルスによって引き起こされる疾患を治療するための抗ウイルス剤ならびに治療薬として、ボロン酸錯体、特に、ヒドロキシキノリン、イミダゾールおよびピコリン酸誘導体を使用する組成物および方法を説明する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、35U.S.C §119(e)のもとに、2004年6月14日出願の米国仮出願番号第60/579419号の利益を請求し、この出願全体を参照により本明細書に組み込む。
【0002】
本発明は、抗ウイルスボリン酸エステル化合物およびその使用、ならびにこれらの化合物およびその薬剤組成物の調製および使用の分野に関する。
【背景技術】
【0003】
医薬の近代における1つの顕著な特徴は、細菌感染症および真菌感染症に関連した疾病率および死亡率が低下していることである。しかしならが、様々なウイルス感染症に対しては同じような成功に至っていない。
【0004】
ウイルスは、様々な動物およびヒトの疾患に関与している。これらに限定されないが、ヘルペスウイルス1型および2型(HSV−1およびHSV−2)、インフルエンザウイルスA型、B型およびC型(オルトミクソウイルス)、パラインフルエンザウイルス1型〜4型、合胞ウイルス、エプスタインバールウイルス、ライノウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ポリオウイルス、コクサッキーウイルス、エコーウイルス、風疹ウイルス、水疱瘡ウイルス、神経皮膚栄養性(neurodermatrophic)ウイルス、天然痘ウイルス、サイトメガロウイルス、A型、B型およびC型肝炎ウイルス、パポウイルス、狂犬病ウイルス、黄熱病ウイルス、デング熱ウイルス、西ナイルウイルスおよび重症急性呼吸器症候群(SARS)ウイルスを含むこれらの病原体と戦うための様々なアプローチが提案されている。表1に、種々のウイルスとそれに関連するヒトの疾患を示す。
【0005】
抗ウイルス化合物の開発における1つのアプローチは、感染した宿主細胞における正常ウイルスの代謝と複製を妨げる化合物を特定することである。新規なボリン酸エステル化合物のスクリーニングの間に、我々はこれらの化合物のあるものが細胞培養アッセイ法で抗ウイルス活性を示すことを見出した。
【0006】
【表1】

【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ウイルス疾患を治療するために現在用いられている多くの既存の化合物は、抵抗機序を前提としており、作製するのが高価であり、患者を十分に治療していないかまたは不都合な副作用を有している。したがって、ウイルスを死滅させ、ウイルスの複製を阻害し、ウイルスの病原作用を阻止する新規な化合物を引き続き必要としている。
【0008】
したがって、医学業界において、特に、現在利用できる治療に対して本質的にほとんど反応しないかまたはそれに対して抵抗性のある感染症を治療するための新規なより効果的な抗ウイルス化合物の必要性が依然としてある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一の態様では、本発明は、抗ウイルスボリン酸エステル化合物を説明する。その化合物はボリン酸誘導体、特にボリン酸錯体であり、抗ウイルス剤として有用なヒドロキシキノリン、ピコリン酸およびイミダゾールの誘導体などの化合物を含む。
【0010】
本発明の方法において有用な抗ウイルスホウ素化合物は、動物、最も好ましくはヒトにおいてウイルスの病因またはウイルスによる日和見感染を有する疾患、例えば、免疫学的に損なわれているかまたは衰弱した健康状態にある患者などを治療するために、動物、最も好ましくはヒトに投与することができる薬剤組成物としても提供される。好ましい実施形態では、本発明の方法および組成物において有用な抗ウイルスボリン酸エステル化合物は式1または式2で表される構造を有する。それらは本明細書で開示する置換基を有することが好ましい。
【0011】
本発明は、抗ウイルス化合物およびその薬剤組成物の調製方法、ならびに前記化合物を治療に用いるための方法も提供する。ウイルス感染症を治療するための化合物および薬剤組成物のキットおよびパッケージ化した実施形態も考慮する。
【0012】
本発明は、本明細書で開示する化合物を用いて、ウイルス感染症、好ましくは、ヘルペスウイルス1型および2型(HSV−1およびHSV−2)、インフルエンザウイルスA型、B型およびC型、パラインフルエンザウイルス1〜4、合胞ウイルス、エプスタインバールウイルス、ライノウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ポリオウイルス、コクサッキーウイルス、エコーウイルス、風疹ウイルス、水疱瘡ウイルス、神経皮膚栄養性ウイルス、天然痘ウイルス、サイトメガロウイルス、A型、B型およびC型肝炎ウイルス、パポウイルス、狂犬病ウイルス、黄熱病ウイルス、デング熱ウイルス、西ナイルウイルスならびに重症急性呼吸器症候群(SARS)ウイルスを治療するための方法も提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、ウイルスによる感染症を治療および/または予防するための抗ウイルス剤と抗ウイルスホウ素化合物の使用方法を提供する。
【0014】
本発明の方法および組成物において有用なボリン酸エステル化合物は、その塩、特に薬剤として許容される塩、水和物または溶媒和物を含む構造式1および構造式2を有する。
【0015】
【化1】

(式中、Bはホウ素であり、Oは酸素であり、
およびR**は、それぞれ独立に、任意選択で置換されたアルキル(C〜C)、任意選択で置換されたシクロアルキル(C〜C)、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルキニル、アラルキル、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたヘテロアリール、および任意選択で置換された複素環から選択され、
zは、0または1であり、zが1である場合、Aは、CH、CR10またはNであり、
Dは、N、CHまたはCR14であり、
Eは、水素、−OH、アルコキシ、2−(モルホリニル)エトキシ、−COH、−COアルキル、アルキル、(CHOH(n=1〜3)、−CHNH、−CHNHアルキル、−CHN(アルキル)、ハロゲン、−CHO、−CH=NOH、−NHまたは−CFであり、
mは、0から2であり、
rは、1または2であり、rが1である場合、Gは、=O(二重結合の酸素)であり、rが2である場合、各Gは、独立に、H、メチル、エチルまたはプロピルであり、
14は、−(CHOH(k=1、2または3である)、−CHNH、−CHNH−アルキル、−CHN(アルキル)、−COH、−COアルキル、−CONH、−OH、アルコキシ、アリールオキシ、−SH、−S−アルキル、−S−アリール、−SOアルキル、−SON(アルキル)、−SONHアルキル、−SONH、−SOH、−SCF、−CN、ハロゲン、−CF、−NO、アミノ、置換アミノ、−NHSOアルキルおよび−CONHから選択され、
Jは、CR10またはNであり、
、R10、R11および12は、それぞれ独立に、水素、アルキル、−(CHOH(n1〜3)、−CHNH、−CHNHアルキル、−CHN(アルキル)、ハロゲン、−CHO、−CH=NOH、−COH、−CO−アルキル、−S−アルキル、−SO−アルキル、−S−アリール、アミノ、アルコキシ、−CF、−SCF、−NO、−SOHおよび−OHからなる群から選択される)
【0016】
式1または式2のどちらかの好ましい実施形態では、Rおよび/またはR**は同一であるかまたは異なっており、RおよびR**の1つは、任意選択で置換された(C〜C)であるか、あるいはRおよびR**は、それぞれ、任意選択で置換されたアルキル(C〜C)である。
【0017】
式1または式2のどちらかの好ましい実施形態では、Rおよび/またはR**は同一であるかまたは異なっており、RおよびR**の1つは、任意選択で置換されたシクロアルキル(C〜C)であるか、あるいはRおよびR**は、それぞれ、任意選択で置換されたシクロアルキル(C〜C)である。
【0018】
式1または式2のどちらかの好ましい実施形態では、Rおよび/またはR**は同一であるかまたは異なっており、RおよびR**の1つは、任意選択で置換されたアルケニルであるか、あるいはRおよびR**は、それぞれ、任意選択で置換されたアルケニルである。その好ましい他の実施形態では、アルケニルは以下の構造を有する任意選択で置換されたビニルである。
【0019】
【化2】

式中、R41、R42およびR43は、それぞれ独立に、水素、アルキル、アリール、シクロアルキル、置換アリール、アラルキル、−(CHOH(k=1、2または3)、−CHNH、−CHNHアルキル、−CHN(アルキル)、−COH、−COアルキル、−CONH、−S−アルキル、−S−アリール、−SOアルキル、−SON(アルキル)、−SONHアルキル、−SONH、−SOH、−SCF、−CN、ハロゲン、−CFおよびNOからなる群から選択される。
【0020】
好ましい実施形態では、本発明の方法は、RおよびR**が同一であるかまたは異なっており、RおよびR**の1つが、任意選択で置換されたアルキニルである、あるいはRおよびR**が、それぞれ、任意選択で置換されたアルキニルである式1または式2の化合物を用いる。その好ましい他の実施形態では、アルキニルは以下の構造を有する。
【0021】
【化3】

式中、R41は上記定義の通りである。
【0022】
式1または式2のどちらかの好ましい実施形態では、Rおよび/またはR**は同一であるかまたは異なっており、RおよびR**の1つは、任意選択で置換されたアリールであるか、あるいはRおよびR**は、それぞれ、任意選択で置換されたアリールである。その好ましい他の実施形態では、アリールは以下の構造を有するフェニルである。
【0023】
【化4】

式中、R44、R45、R46、R47およびR48は、それぞれ、独立に、アルキル、シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、−(CHOH(k=1、2または3である)、−CHNH、−CHNH−アルキル、−CHN(アルキル)、−COH、−COアルキル、−CONH、−CONHアルキル、−CON(アルキル)、−OH、−アルコキシ、−アリールオキシ、−SH、−S−アルキル、−S−アリール、−SOアルキル、−SON(アルキル)、−SONHアルキル、−SONH、−SOH、−SCF、−CN、ハロゲン、−CF、−NO、アミノ、置換アミノ、−NHSOアルキル、−OCHCHNH、−OCHCHNHアルキル、−OCHCHN(アルキル)、オキサゾリジン−2−イルまたはアルキル置換オキサゾリジン−2−イルからなる群から選択される。
【0024】
好ましい実施形態では、本発明の方法は、RおよびR**が同一であるかまたは異なっており、RおよびR**の1つが、任意選択で置換されたベンジルである、あるいはRおよびR**が、それぞれ、任意選択で置換されたベンジルである式1または式2の化合物を用いる。その好ましい他の実施形態では、ベンジルは以下の構造を有する。
【0025】
【化5】

式中、R44、R45、R46、R47およびR48は、上記定義の通りである。
【0026】
好ましい実施形態では、本発明の方法は、RおよびR**が同一であるかまたは異なっており、RおよびR**の1つが、任意選択で置換されたヘテロアリールである、あるいはRおよびR**が、それぞれ、任意選択で置換されたヘテロアリールである式Iの化合物を用いる。その好ましい他の実施形態では、ヘテロアリールは以下の構造を有する。
【0027】
【化6】

式中、XはCH=CH、N=CH、NR50(R50=H、アルキル、アリールまたはアラルキルである)、OまたはSであり、
XがO、NまたはSである場合、Yは、CHまたはNであり、
41および42は、上記定義の通りである。
【0028】
他の態様では、本発明は、以下の構造(式3)
【0029】
【化7】

を有する化合物または薬剤として許容されるその塩、水和物もしくは溶媒和物を有効量で動物に投与することを含む動物のウイルス疾患を治療するための方法を提供する。
式中、Bは、ホウ素であり、Oは、酸素であり、
21およびR22は、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたシクロアルキル、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたヘテロアリール、および任意選択で置換された複素環からなる群から独立に選択される。
23〜R28は、水素、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、ハロ、シアノ、アリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、ヘテロアリール、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、チオ、アルキルチオ、アリールチオ、ヘテロアリールチオ、シクロアルキル、ヘテロシクリル、シクロアルキルオキシ、ヘテロシクリルオキシ、ホルミル、カルボキシ、チオホルミル、チオカルボキシ、スルホニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、ヘテロアリールスルホニル、アルキルスルフィニル、アリールスルフィニル、ヘテロアリールスルフィニル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、アルキルスルホニルアミノ、アリールスルホニルアミノからなる群から独立に選択され、上記アルキル−、アリール−およびヘテロアリール含有部分のそれぞれは任意選択で置換されている。
【0030】
いくつかの実施形態では、R21は、任意選択で置換されたアリール、または任意選択で置換されたヘテロアリールである。より具体的な実施形態では、R21は、任意選択で置換されたアリールである。さらにより具体的な実施形態は、R21が、任意選択で置換されたアリール、およびR22が、任意選択で置換されたアリールを提供する。さらにより具体的な実施形態では、R21およびR22は、独立に、任意選択で置換されたフェニルである。より具体的な実施形態では、R21およびR22が、独立に、ハロ、ヒドロキシ、チオ、アミノ、ホルミル、チオホルミル、カルボキシ、カルバモイル、チオカルバモイル、シアノ、任意選択で置換されたアルコキシ、アルキルチオ、アリールオキシ、アリールチオ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノおよびアルキルカルボニルオキシからなる群から選択される少なくとも1つの部分で置換されたフェニルであるものを含む。
【0031】
後者の実施形態のうち、式3の好ましい化合物は、R21およびR22が、独立に、ハロ、ヒドロキシ、チオ、アミノ、ホルミル、チオホルミル、カルボキシ、カルバモイル、チオカルバモイル、シアノ、任意選択で置換されたアルコキシ、アルキルチオ、アリールオキシ、アリールチオ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノおよびアルキルカルボニルオキシからなる群から選択される少なくとも1つの部分で置換されたフェニルであるものを含む。さらに具体的な化合物は、追加的にR23〜R28が水素、ハロ、ヒドロキシ、チオ、アミノ、ホルミル、チオホルミル、カルボキシ、カルバモイル、チオカルバモイル、シアノ、任意選択で置換されたアルコキシ、アルキルチオ、アリールオキシ、アリールチオ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノおよびアルキルカルボニルオキシからなる群から独立に選択されるものを含む。
【0032】
式3の他の実施形態では、R21およびR22は、独立に、ハロ、ヒドロキシ、チオ、アミノ、ホルミル、チオホルミル、カルボキシ、カルバモイル、チオカルバモイル、シアノ、任意選択で置換されたアルコキシ、アルキルチオ、アリールオキシ、アリールチオ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノおよびアルキルカルボニルオキシからなる群から選択される少なくとも1つの部分で置換されたフェニルであり、R28は、独立に水素、ハロまたはアミノである。
【0033】
本発明の他の実施形態は、R23〜R28が独立に、水素、ハロ、またはアミノであり、R21およびR22が、独立にハロ、ヒドロキシおよびアミノからなる群から選択される少なくとも1つの部分で置換されたフェニルである式3の構造を有する化合物の使用を含む。特に有用な実施形態は、化合物が(3−フルオロフェニル)(4−クロロフェニル)ボリン酸5,7ジクロロ−8−ヒドロキシキノリンエステル、ビス(3−クロロフェニル)ボリン酸2−アミノ−8−ヒドロキシキノリンエステルまたは(3−クロロフェニル)(3,4−ジメトキシフェニル)ボリン酸8−ヒドロキシキノリンエステルのものである。
【0034】
他の態様では、本発明は、以下の構造(式4)
【0035】
【化8】

を有する化合物または薬剤として許容されるその塩、水和物もしくは溶媒和物を有効量で動物に投与することを含む動物のウイルス疾患を治療するための方法を提供する。
式中、Bは、ホウ素であり、Oは、酸素であり、
31およびR32は、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアリール、アラルキル、および任意選択で置換されたヘテロアリールからなる群から独立に選択される。
33〜R36は、水素、アルキル、アリール、アリールカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、ジアルキルアミノ、ジアリールアミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、カルボキシアルキルオキシ、ヘテロシクリルオキシ、ヘテロシクリル、カルボキシ、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル、(アルキルアミノ)アルキル、(ジアルキルアミノ)アルキル、アルコキシカルボニル、カルバモイル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオ、アルキルチオ、アリールチオ、アルキルスルホニル、アルキルスルフィニル、アリールスルフィニル、ジアルキルスルファモイル、アルキルスルファモイル、スルファモイル、スルホニル、シアノ、ハロ、ニトロ、アルキルカルバモイルからなる群から選択され、上記部分のそれぞれは任意選択で置換されている。任意選択で、R35およびR36は、それらが結合している環原子とともに、任意選択で置換された芳香環を形成する。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態では、式4の化合物はR31およびR32の1つが、任意選択で置換されたアリールであるものを含む。より具体的な実施形態では、式4の化合物は、R31とR32の双方が、任意選択で置換されたアリールであるものを含む。さらにより具体的な実施形態では、R31とR32の双方が、任意選択で置換されたフェニルである式4の化合物である。さらにより具体的な実施形態では、R31とR32の双方が、任意選択で置換されたフェニルであり、R33〜R36が水素、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノおよびカルボキシからなる群から独立に選択されるものである。さらにより具体的な実施形態では、R31とR32の双方が、任意選択で置換されたフェニルであり、R33〜R36が水素、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノおよびカルボキシからなる群から独立に選択されるものである。その任意選択で置換されたフェニルは、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、−(CHOH(k=1、2または3である)、−CHNH、−CHNH−アルキル、−CHN(アルキル)、−COH、−COアルキル、−CONH、−CONHアルキル、−CON(アルキル)、−OH、−アルコキシ、−アリールオキシ、−SH、−S−アルキル、−S−アリール、−S(O)アルキル、−S(O)アリール、−SOアルキル、−SON(アルキル)、−SONHアルキル、−SONH、−SOH、−SCF、−CN、ハロゲン、−CF、−NO、アミノ、置換アミノ、−NHSOアルキル、−OCHCHNH、−OCHCHNHアルキル、−OCHCHN(アルキル)、オキサゾリジン−2−イルおよびアルキル置換オキサゾリジン−2−イルから選択される部分で置換されたフェニルである
【0037】
式4の化合物の中では、好ましい化合物は、R31とR32の双方が、任意選択で置換されたフェニルであり、R33〜R36が水素、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノまたはカルボキシからなる群から独立に選択され、その任意選択で置換されたフェニルが、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、−(CHOH(k=1、2または3である)、−CHNH、−CHNH−アルキル、−CHN(アルキル)、−COH、−COアルキル、−CONH、−CONHアルキル、−CON(アルキル)、−OH、アルコキシ、アリールオキシ、−SH、−S−アルキル、−S−アリール、−S(O)アルキル、−S(O)アリール、−SOアルキル、−SON(アルキル)、−SONHアルキル、−SONH、−SOH、−SCF、−CN、ハロゲン、−CF、−NO、アミノ、置換アミノ、−NHSOアルキル、−OCHCHNH、−OCHCHNHアルキル、−OCHCHN(アルキル)、オキサゾリジン−2−イルおよびアルキル置換オキサゾリジン−2−イルから選択される部分で置換されたフェニルであるものを含む。より具体的な実施形態では、R33〜R36の少なくとも1つはヒドロキシまたはアミノ、より具体的にはR33がヒドロキシであり、R34〜R36が水素であるものを含む。後者の化合物のうち、より具体的な化合物は、任意選択で置換されたフェニルが、水素、ハロゲンおよびアルキルからなる群から選択される部分で置換されたフェニルであるものを含む。
【0038】
式4で示す構造を有する他のより具体的な化合物は、R33がヒドロキシであり、R34〜R36が水素であり、R31とR32の双方が、任意選択で置換されたフェニルであり、その任意選択で置換されたフェニルがハロゲンおよびアルキルからなる群から選択される部分で置換されたフェニルであり、そのハロゲンがクロロであるものである。より具体的な化合物は、R33がヒドロキシであり、R34〜R36が水素であり、R31とR32の両方が任意選択で置換されたフェニルであり、その任意選択で置換されたフェニルが、水素、ハロゲンおよびアルキルからなる群から選択される部分で置換されたフェニルであり、そのハロゲンがクロロであり、そのアルキルがメチルであるものである。これらの化合物のうち、特に有用なものは、薬剤として許容されるその塩、水和物または溶媒和物を含む(ビス(3−クロロ−4−メチルフェニル)ボリルオキシ)(3−ヒドロキシピリジン−2−イル)メタノンである。
【0039】
本発明のさらに他の実施形態では、式4で示す化合物は、R31とR32の双方が、任意選択で置換されたフェニルであり、R33〜R36が、水素、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノおよびカルボキシからなる群から独立に選択されるものを含む。その任意選択で置換されたフェニルは、アルキル、シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、−(CHOH(k=1、2または3である)、−CHNH、−CHNH−アルキル、−CHN(アルキル)、−COH、−COアルキル、−CONH、−CONHアルキル、−CON(アルキル)、−OH、アルコキシ、アリールオキシ、−SH、−S−アルキル、−S−アリール、−S(O)アルキル、−S(O)アリール、−SOアルキル、−SON(アルキル)、−SONHアルキル、−SONH、−SOH、−SCF、−CN、ハロゲン、−CF、−NO、アミノ、置換アミノ、−NHSOアルキル、−OCHCHNH、−OCHCHNHアルキル、−OCHCHN(アルキル)、オキサゾリジン−2−イルおよびアルキル置換オキサゾリジン−2−イルからなる群から選択される部分で置換されたフェニルであり、R36はアミノであり、R33はヒドロキシであり、R34およびR35は水素である。これらの化合物のうち、有用な化合物は任意選択で置換されたフェニルが水素、ハロゲンおよびアルキルからなる群から選択される部分で置換されたフェニルであるものを含む。より具体的に有用な実施形態はハロゲンがクロロであるものである。これらの化合物のうち、薬剤として許容されるその塩、水和物および溶媒和物を含む化合物(ビス(3−クロロフェニル)ボリルオキシ)(6−アミノ−3−ヒドロキシピリジン−2−イル)メタノンが有用な特性を有する。
【0040】
いくつかの実施形態では、式3および式4について上記に考察した化合物は、ピコルナウイルス科、フラビウイルス科、コロナウイルス科、パラミクソウイルス科、オルトミクソウイルス科、レトロウイルス科、ヘルペスウイルス科およびヘパドナウイルス科からなる群から選択されるウイルスに関連するウイルス疾患を治療するために用いられる。
【0041】
本発明の構造は、合成手順および治療に使用する際の本発明の化合物が関わる溶媒からもたらされる原子を含む構造(式3および式4など)を与える溶媒相互作用も容認される。すなわち、かかる溶媒構造はそれ自体、特に、少なくともいくつかの本発明の化合物中、特にホウ素と窒素原子の間に入り込んで、1つまたは2つの原子によってその化合物の環サイズを増大させることができる。例えば、本発明の構造のホウ素環が、例えばホウ素、窒素、酸素および2つの炭素を含む5つの原子を含む場合、ホウ素と窒素の間に溶媒原子が入り込むと6員環または7員環がもたらされる。一例では、ヒドロキシルおよびアミノ溶媒を使用すると、環ホウ素と窒素原子の間に酸素または窒素を含む構造がもたらされて環のサイズが増大する。かかる構造は、明らかに本発明によるものと考えられる。好ましくは、R***はHまたはアルキルである。
【0042】
【化9】

【0043】
本明細書では、以下の用語は、本出願において別段の指定のない限り、その記述された意味を有する。
【0044】
本発明では、「アルキル」は1〜10個の炭素原子、好ましくは1〜6個の炭素原子を有する直鎖または分岐のアルキル基を意味する。「低級アルキル」と「C〜Cアルキル」という用語はどちらも、1〜6個の炭素原子のアルキル基を指す。かかるアルキル基の例には、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、2−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、2−ヘキシル、3−ヘキシルおよび3−メチルペンチルが含まれる。
【0045】
「置換アルキル」は、アルコキシ、置換アルコキシ、アリール、置換アリール、アリールオキシ、置換アリールオキシ、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環、置換複素環、ヒドロキシル、アミノ、置換アミノ、カルボキシル、−カルボキシル−アルキル、アミド、チオール、アルキルチオ、置換アルキルチオ、アリールチオ、置換アリールチオ、−SO−アルキル、−SO−アミノ、−SO−置換アミノ、−SO−OH、−SCF、シアノ、ハロ、ニトロおよび−NHSOアルキルから選択される1〜5個、好ましくは1〜3個、より好ましくは1個の置換基を有するアルキル基を意味する。
【0046】
「置換低級アルキル」は、置換アルキルについて上記で定義した、1〜5個、好ましくは1〜3個、より好ましくは1個の置換基で置換された低級アルキル基を意味する。
【0047】
「アルキレン」は、1〜10個の炭素原子、好ましくは1〜5個の炭素原子、より好ましくは1〜3個の炭素原子を有する二価のアルキル基を意味する。この用語は、メチレン、1,2−エチレン、1,3−n−プロピレン、1,4−n−ブチレン、2−メチル−1,4−プロピレン等の基で例示されるものである。
【0048】
「置換アルキレン」は、置換アルキルについて上記で定義した、1〜5個、好ましくは1〜3個、より好ましくは1個の置換基を有するアリレン基を意味する。
【0049】
「アルコキシ」、「低級アルコキシ」および「C〜Cアルコキシ」は、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、sec−ブトキシ、tentブトキシ、ペントキシ、2−ペンチル、イソペントキシ、ネオペントキシ、ヘキシオキシ、2−ヘキシオキシ、3−ヘキシオキシ、および3−メチルペントキシなどの1〜6個の炭素原子を有する直鎖または分岐のアルコキシ基を意味する。
【0050】
「置換アルコキシ」は−O−置換アルキルを意味する。
【0051】
「置換低級アルコキシ」は、置換アルキルについて上記で定義した、1〜5個、好ましくは1〜3個、より好ましくは1個の置換基で置換された−O−低級アルキル基を意味する。
【0052】
「アルキルカルボニルオキシ」は、−O−C(O)−アルキルを意味する。
【0053】
「ヒドロキシアルキル」は、ヒドロキシで置換されたアルキルを意味する。
【0054】
「ヒドロキシアルコキシ」は、ヒドロキシで置換されたアルコキシを意味する。
【0055】
「カルボキシアルキルオキシ」は、−O−アルキル−COOHおよびその塩を意味する。
【0056】
「アルキルオキシカルボニル」は、−C(O)−O−アルキルを意味する。
【0057】
本発明では「アルケニル」は、2〜6個の炭素原子、より好ましくは2〜4個の炭素原子を有し、少なくとも1つ、好ましくは1つのアルケニル不飽和部を有するアルケニル基を意味する。アルケニル基の例には、例えば、ビニル、アリル、n−ブタ−2−エン−1−イル等が含まれる。
【0058】
「置換アルケニル」は、アルコキシ、置換アルコキシ、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アリールオキシ、置換アリールオキシ、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環、置換複素環、ヒドロキシル、アミノ、置換アミノ、カルボキシル、−カルボキシル−アルキル、アミド、チオール、アルキルチオ、置換アルキルチオ、アリールチオ、置換アリールチオ、−SO−アルキル、−SO−アミノ、−SO−置換アミノ、−SO−OH、−SCF、シアノ、ハロ、ニトロ、−NHSOアルキルおよび−C(O)SOアルキルから選択される1〜3個の置換基、好ましくは1個の置換基を有するアルケニル基を意味する。ただし、どのヒドロキシルまたはチオール置換もビニル炭素原子上には存在しない。
【0059】
アルケニルおよび置換アルケニルという用語は、シス異性体およびトランス異性体ならびにその混合物を包含する。
【0060】
「アルキニル」は、2〜6個の炭素原子、より好ましくは2〜4個の炭素原子を有し、少なくとも1つ、好ましくは1つのアルキニル不飽和部を有するアルキニル基を意味する。アルキニル基には、例えば、アセチレニル、プロパギル、n−ブタ−2−イン−1−イル等が含まれる。
【0061】
「置換アルキニル」は、アルコキシ、置換アルコキシ、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アリールオキシ、置換アリールオキシ、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環、置換複素環、ヒドロキシル、アミノ、置換アミノ、カルボキシル、−カルボキシル−アルキル、アミド、チオール、アルキルチオ、置換アルキルチオ、アリールチオ、置換アリールチオ、−SO−アルキル、−SO−アミノ、−SO−置換アミノ、−SO−OH、−SCF、シアノ、ハロ、ニトロ、−NHSOアルキル、および−C(O)SOアルキルから選択される1〜3個の置換基、好ましくは1個の置換基を有するアルキニル基を意味する。ただし、どのヒドロキシルまたはチオール置換もアセチレンの炭素原子上には存在しない。
【0062】
「アミノ」は、−NHを意味する。
【0063】
「置換アミノ」は、R’およびR”が水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アリール、置換アリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環および置換複素環から独立に選択されるか、またはR’およびR”とそれに結合している窒素原子が複素環または置換複素環基を形成する−NR’R”基を意味する。ただし、R’とR”の双方が水素ではない。
【0064】
「アルキルアミノ」は、−NH−アルキルを意味する。
【0065】
「アミノアルキル」は、−アルキレン−NHを意味する。
【0066】
「ジアルキルアミノ」は、N(アルキル)(アルキル)を意味し、各アルキルは、同一であっても異なっていてもよい。
【0067】
「(アルキルアミノ)アルキル」は、−アルキレン−NH−アルキルを意味し、各アルキルは、同一であっても異なっていてもよい。
【0068】
「(ジアルキルアミノ)アルキル」は、−アルキレン−N(アルキル)(アルキル)を意味し、各アルキルは、同一であっても異なっていてもよい。
【0069】
「アリールアミノ」は、−NH−アリールを意味し、そのアリールは、以下で定義される。
【0070】
「アルキルスルホニルアミノ」は、NH−SOアルキルを意味する。
【0071】
「アリールスルホニルアミノ」は、NH−SOアリールを意味し、そのアリールは、以下で定義される。
【0072】
「ジアリールアミノ」は、−N(アリール)(アリール)を意味し、各アルキルは同一であっても異なっていてもよく、アリールは、以下で定義される。
【0073】
「アシルオキシ」は、基−OC(O)アルキル、−O(C)置換アルキル、−OC(O)アルケニル、−OC(O)置換アルケニル、−OC(O)アルキニル、−OC(O)置換アルキニル、−OC(O)アリール、−OC(O)置換アリール、−OC(O)シクロアルキル、−O(CO)置換シクロアルキル、−OC(O)ヘテロアリール、−OC(O)置換ヘテロアリール、−OC(O)複素環および−OC(O)置換複素環を意味する。
【0074】
「アルキルオキシカルボニル」は、−C(O)−Oアルキルを意味する。
【0075】
「アミド」または「カルバモイル」は、−C(O)アミノおよび−C(O)置換アミノを意味する。
【0076】
「アルキルカルバモイル」は、−C(O)−NH−アルキルを意味する。
【0077】
「ハロゲン」または「ハロ」という用語は、フッ素、臭素、臭素およびヨウ素を意味する。
【0078】
「シクロアルキル」、例えば、C〜Cシクロアルキルは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルおよびシクロヘプチルなどの3〜7個の原子を有するシクロアルキル基を意味する。
【0079】
「置換シクロアルキル」は、アルキル、置換アルキル、アルコキシ、置換アルコキシ、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アリールオキシ、置換アリールオキシ、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環、置換複素環、ヒドロキシル、アミノ、置換アミノ、カルボキシル、−カルボキシル−アルキル、アミド、チオール、アルキルチオ、置換アルキルチオ、アリールチオ、置換アリールチオ、−SO−アルキル、−SO−アミノ、−SO−置換アミノ、−SO−OH、−SCF、シアン、ハロ、ニトロ、NHSOアルキル、−C(O)SOアルキル、ケト(C=O)およびチオケト(C=S)から選択される1〜3個、好ましくは1個の置換基を有するシクロアルキル基を意味する。
【0080】
「シクロアルキルオキシ」または「置換シクロアルキルオキシ」という用語は、−O−シクロアルキルおよび−O−置換シクロアルキルを意味する。
【0081】
「アリール」は、その中で少なくとも1つが芳香族である単環(例えば、フェニル)、多環(例えば、ビフェニル)または多縮合環を有する芳香族炭素環基(例えば、1,2,3,4−テトラヒドロナフチル、ナフチル、アントリル、またはフェナントリル)を意味する。ただし、その結合点は芳香族炭素原子である。
【0082】
「置換アリール」は、アシルオキシ、アルキル、置換アルキル、アルコキシ、置換アルコキシ、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アリールオキシ、置換アリールオキシ、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環、置換複素環、ヒドロキシル、アミノ、置換アミノ、カルボキシル、−カルボキシル−アルキル、アミド、チオール、アルキルチオ、置換アルキルチオ、アリールチオ、置換アリールチオ、−SO−アルキル、−SO−アミノ、−SO−置換アミノ、−SO−OH、−SCF、シアン、ハロ、ニトロ、−NHSOアルキルおよび−C(O)SO−アルキルから選択される1〜3個、好ましくは1個の置換基を有するアリール基を意味する。一の実施形態では、その置換アリール基は、ハロ、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルキルチオ、トリフルオロメチル、低級アシルオキシ、アリール、ヘテロアリールおよびヒドロキシでモノ、ジ、トリ置換されている。好ましいアリール基にはフェニルおよびナフチルが含まれ、そのそれぞれは、本明細書で定義するように任意選択で置換されている。
【0083】
「アリールオキシ」は、−O−アリールを意味する。
【0084】
「置換アリールオキシ」は、−O−置換アリールを意味する。
【0085】
「アリールカルボニル」は、−C(O)アリールを意味する。
【0086】
「アラルキル」は、基−アルキレン−アリール、−アルキレン置換アリール、−置換アルキレン−アリール、および−置換アルキレン−置換アリールを意味する。
【0087】
「カルボキシル」または「カルボキシ」は、−COOHおよびその塩を意味する。
【0088】
「アルカノイル」または「アシル」は、基H−C(O)−、アルキル−C(O)−、置換アルキル−C(O)−、アルケニル−C(O)−、置換アルケニル−C(O)−、アルキニル−C(O)−、置換アルキニル−C(O)−シクロアルキル−C(O)−、置換シクロアルキル−C(O)−、アリール−C(O)−、置換アリール−C(O)−、ヘテロアリール−C(O)−、置換ヘテロアリール−C(O)−、複素環−C(O)−および置換複素環−C(O)−を指す。ただし、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環および置換複素環は本明細書の定義通りである。
【0089】
「アルカノイルアミノ」という用語は、基NH−C(O)Hおよび−NHC(O)−アルキルを指し、好ましくは、そのアルカノイルアミノは−NHC(O)−アルキルである。
【0090】
「ヘテロアリール」は、窒素、酸素またはイオウから選択される少なくとも1つから4つまでのヘテロ原子を含む5員、6員または7員環からなる1つまたは複数の芳香環系を意味する。かかるヘテロアリール基には、例えば、チエニル、フラニル、チアゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル(イソキサゾリル)、ピリジル、ピリミジニル、(イソ)キノリル、ナフチリジニル、ベンズイミダゾリルおよびベンズオキサゾリルが含まれる。好ましいヘテロアリールはチアゾリル、ピリミジニル、好ましくはピリミジン−2−イルおよびピリジルである。他の好ましいヘテロアリール基には、1−イミダゾリル、2−チエニル、1−(または2−)キノリル、1−(または2−)イソキノリル、1−(または2−)テトラヒドロイソキノリル、2−(または3−)フラニルおよび2−テトラヒドロフラニルが含まれる。
【0091】
「置換ヘテロアリール」は、置換アリールについて上記に定義したのと同様に1〜3個、好ましくは1個の置換基を有するヘテロアリール基を意味する。
【0092】
「ヘテロアリールオキシ」および「置換ヘテロアリールオキシ」は、−O−ヘテロアリールおよび−O−置換ヘテロアリールをそれぞれ意味する。
【0093】
「ヘテロアラルキル」は、基−アルキレン−ヘテロアリール、−アルキレン置換ヘテロアリール、−置換アルキレン−ヘテロアリールおよび−置換アルキレン−置換ヘテロアリールを意味する。
【0094】
「複素環」、「ヘテロサイクル」、「ヘテロシクリル」、「ヘテロシクロアルキル」または「シクロヘテロアルキル」は、環内に1〜10個の炭素原子、および窒素、イオウもしくは酸素からなる群から選択される1〜4個のヘテロ原子を含む単環または多縮合環を有する飽和もしくは不飽和の基を意味し、その縮合環系内では、結合点が複素環原子という前提で1個または複数の環はアリールまたはヘテロアリールであってよい。
【0095】
「置換複素環」は、シクロアルキルについて定義したのと同じ置換基である1〜3個、好ましくは1個の置換基で置換されたヘテロサイクル基を意味する。
【0096】
「ヘテロシクリルオキシ」は、−O−ヘテロシクリルを意味する。
【0097】
「チオール」または「チオ」は、−SHを意味する。
【0098】
「アルキルチオ」は、−S−アルキルを意味する。
【0099】
「置換アルキルチオ」は、−S−置換アルキルを意味する。
【0100】
「アリールチオ」は、−S−アリールを意味する。
【0101】
「置換アリールチオ」は、−S−置換アリールを意味する。
【0102】
「ヘテロアリールチオ」は、−S−ヘテロアリールを意味する。
【0103】
「シアン」は、−CNを意味する。
【0104】
「ホルミル」は、−C(=O)Hまたは−CHOを意味する。
【0105】
「チオホルミル」は、−C(=S)Hまたは−CHSを意味する。
【0106】
「スルホニル」は、−SOHを意味する。
【0107】
「アルキルスルホニル」は、−SOアルキルを意味する。
【0108】
「アリールスルホニル」は、−SOアリールを意味する。
【0109】
「ヘテロアリールスルホニル」は、−SOヘテロアリールを意味する。
【0110】
「アルキルスルフィニル」は、−SOアルキルを意味する。
【0111】
「アリールスルフィニル」は、−SOアリールを意味する。
【0112】
「ヘテロアリールスルフィニル」は、−SOヘテロアリールを意味する。
【0113】
「スルファモイル」は、−SO−NHを意味する。
【0114】
「スルファモイルオキシ」は、−O−SO−NHを意味する。
【0115】
「アルキルスルファモイル」は、−SO−NH−アルキルを意味する。
【0116】
「ジアルキルスルファモイル」は、−SO−N(アルキル)(アルキル)を意味し、各アルキルは同一であっても異なっていてもよい。
【0117】
「チオカルボキシル」は、−C(=S)OH、−C(=O)SHまたは−C(=S)SHを意味する。
【0118】
「チオカルバモイル」は、−C(=S)アミノおよび−C(=S)置換アミノを意味する。
【0119】
「芳香環」という用語は、任意選択で置換されたアリール基および任意選択で置換されたヘテロアリール基を指す。
【0120】
上記のすべての置換された基において、それら自体に他の置換基を有する置換基を定義する(例えば、それ自体が置換アリール基で置換されている置換基として置換アリール基を有する置換アリール等)ことによって得られるポリマーは本明細書に含まないことを理解されたい。その場合、かかる置換基の最大個数は3個である。すなわち、上記定義のそれぞれは、例えば、置換アリール基が、−置換アリール−(置換アリール)−置換アリールに限定されるように、ある限度に限定されている。本発明では、許容されない置換は考慮していない。
【0121】
「リガンド」は、ルイス酸のホウ素中心と配位結合を形成することができ、同時にボリン酸エステル部分として付属している窒素含有芳香族系を意味する。かかるリガンドは当分野の技術者に周知である。例としては以下の構造で示すものである。
【0122】
【化10】

【0123】
新規に発見した用途を有する化合物はウイルスの活性の阻害に関わる。
【0124】
経口投与のためには、活性化合物を当技術分野でよく知られている薬剤として許容される担体と一緒にすることによって、化合物を容易に処方することができる。かかる担体は、本発明の化合物が、治療を受ける患者に経口摂取されるように、錠剤、丸剤、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤、懸濁剤等として処方することができる。経口使用のための製剤は、固体賦形剤を用いて得ることができ、望むなら適当な助剤を加えた後、得られた混合物を任意選択で粉砕し、顆粒混合物を処理して錠剤を得ることができる。適切な賦形剤は、特に、ラクトース、スクロース、マンニトールまたはソルビトールを含む糖;例えば、トウモロコシでんぷん、小麦でんぷん、米でんぷん、ジャガイモでんぷん、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロースなどのセルロース調合物および/またはポリビニルピロリドン(PVP)などのフィラーである。望むなら、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはアルギン酸ナトリウムなどのその塩などの崩壊剤を加えることができる。
【0125】
経口で使用できる製剤には、ゼラチンでできた押し込み型カプセル剤、ならびにゼラチンとグリセロールまたはソルビトールなどの可塑剤でできた軟質の密封カプセル剤が含まれる。押し込み型カプセル剤は、活性成分を、ラクトースなどのフィラー、でんぷんなどの結合剤および/またはタルクまたはステアリン酸マグネシウムなどの滑剤あるいは任意選択の安定剤と混合して含むことができる。軟質カプセル剤では、活性化合物を、脂肪油、流動パラフィンまたは液状ポリエチレングリコールなどの適当な液体中に溶解するかまたは懸濁することができる。さらに安定剤を加えることができる。経口投与のためのすべての処方は、かかる投与に適した剤形でなければならない。頬側投与のためには、組成物は、通常の方法で処方した錠剤またはトローチ剤の形態をとることができる。
【0126】
吸入による投与のためには、本発明で用いる化合物は、適切な噴射剤、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素または他の適切なガスを使用して、加圧パックまたは噴霧器からのエアロゾルスプレーで提供する形で好都合に送達される。加圧エアロゾルの場合、投与量単位は、定量送達用の弁を備えることによって決めることができる。吸入器で使用するための、例えばゼラチンでできたカプセル剤およびカートリッジは、化合物と、ラクトースまたはでんぷんなどの適当な粉末ベースの粉末ミックスを含めて処方することができる。
【0127】
化合物は、注入、例えば、ボーラス注入法または持続注入による腸管外投与のために処方することができる。注入のための処方は、単位剤形、例えば、保存剤を加えたアンプルまたはマルチ用量容器で提供することができる。組成物は、油性または水性媒体中の懸濁剤、液剤または乳剤の形態をとることができ、懸濁剤、安定化剤および/または分散剤などの処方用薬剤を含むことができる。
【0128】
腸管外投与用の薬剤処方には、水可溶性の形態での活性化合物の水性液剤が含まれる。さらに、活性化合物の懸濁剤を、適当な油性注入懸濁剤として調製することができる。適切な脂肪親和性溶媒または媒体には、ゴマ油などの脂肪油、オレイン酸エチルなどの合成脂肪酸エステル、トリグリセリドまたはリポソームが含まれる。水性注入懸濁剤は、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトールまたはデキストランなどの懸濁剤の粘度を増大させる物質を含むことができる。懸濁剤は任意選択で、化合物の溶解性を増大させて高濃度の液剤の調合を可能にする適切な安定剤または薬剤も含むことができる。あるいは、活性成分は、使用前に適切な媒体、例えば滅菌された発熱物質フリーの水で構成するための粉剤の形態であってよい。化合物は、例えばカカオバターまたは他のグリセリドなどの通常の坐剤の基剤を含む、坐剤または保持浣腸などの直腸用組成物で処方することもできる。
【0129】
上記処方に加え、化合物はデボー製剤として処方することもできる。かかる長期に作用する処方は、植込み(例えば、皮下または筋肉内に)または筋肉内注射によって投与することができる。したがって、例えば、化合物は、適切なポリマーもしくは疎水性材料(例えば、許容される油状物中の乳剤として)またはイオン交換樹脂を用いて、あるいはやや溶けにくい誘導体、例えば、やや溶けにくい塩として処方することができる。
【0130】
本発明の疎水性化合物のための薬剤担体は、ベンジルアルコール、非極性界面活性剤、水混和性有機ポリマーおよび水相を含む共溶媒系である。溶媒系はVPD共溶媒系であってよい。VPDは、3%重量/容積のベンジルアルコール、8%重量/容積の非極性界面活性剤ポリソルベート80および65%重量/容積のポリエチレングリコール300を含み、無水エタノールで全容積にした液剤である。VPD共溶媒系(VPD:5W)は、5%ブドウ糖水溶液でVPDを1:1希釈したものからなる。この共溶媒系は疎水性化合物もよく溶解し、全身投与した場合それ自体低毒性である。もちろん、共溶媒系の割合は、その溶解性と毒性の特性を失わないで、かなり変えることができる。さらに、共溶媒成分の実体(identity)は、ポリソルベート80の代わりに例えば他の低毒性の非極性界面活性剤を用いることができ、ポリエチレングリコールの割合を変えることができ、生体適合性ポリマー例えばポリビニルピロリドンでポリエチレングリコールを置き換えることができ、また他の糖または多糖でブドウ糖を置き換えることができる。
【0131】
あるいは、疎水性薬剤化合物のために他の送達系を用いることができる。リポソームおよびエマルジョンは、疎水性薬物用の送達媒体または担体のよく知られた例である。ジメチルスルホキシドなどの特定の有機溶媒も用いることができるが、これは通常、毒性がより大きくなるという犠牲をともなう。さらに、化合物を、治療薬を含む固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスなどの持続放出系を用いて送達することができる。様々な持続放出材料が確認されており、当分野の技術者によく知られている。その化学的性質に応じて、持続放出カプセル剤は、数週間から100日間超にわたり化合物を放出することができる。治療薬の化学的性質および生物学的安定性に応じて、タンパク質や核酸の安定化のための追加のストラテジーを用いることができる。
【0132】
薬剤組成物は、適切な固体もしくはゲル相の担体または賦形剤も含むことができる。かかる担体または賦形剤の例には、これらに限定されないが、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、種々の糖、でんぷん、セルロース誘導体、ゼラチンおよびポリエチレングリコールなどのポリマーが含まれる。
【0133】
化合物は、薬剤として適合性のある対イオンとの塩として提供することができる。薬剤として適合性のある塩は、これらに限定されないが、塩酸、硫酸、酢酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、リン酸、臭化水素酸、スルフィン酸、ギ酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、硝酸、安息香酸、クエン酸、酒石酸、マレイン酸、ヨウ化水素酸、酢酸などのアルカン酸、HOOC−(CH−CH(式中rは0〜4である)等を含む多くの酸で生成させることができる。塩は、水性溶媒または対応する遊離塩基の形態である他のプロトン溶媒中でより可溶性の傾向にある。非毒性の薬剤用塩基付加塩には、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウムなどの塩基の塩が含まれる。当分野の技術者は広い範囲の非毒性の薬剤として許容される付加塩を理解されよう。
【0134】
この化合物の薬剤組成物を処方し、全身、局在または局所での投与を含む様々な手段を介して投与することができる。
【0135】
局所投与のためには、化合物は、活性化合物を当技術分野で周知の薬剤として許容される担体と一緒にして容易に処方することができる。かかる担体は、本発明の化合物を、局所塗布するために、ゲル剤、スラリー剤、懸濁剤、クリームおよび軟膏として処方することができる。望むなら、架橋ポリビニルピロリドン、寒天またはアルギン酸もしくはアルギン酸ナトリウムなどのその塩などの崩壊剤を加えることができる。
【0136】
処方および投与の技術は、Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Co.、Easton、PAに見ることができる。投与の様式は、体内の所望の標的部位への送達を最大にするように選択することができる。投与の適切な経路は、例えば、経口、経直腸、経粘膜、経皮または腸内投与を含むことができる。筋肉内、皮下および髄内の注入を含む腸管外送達、ならびに、くも膜下、直接脳室内、静脈内、腹膜内、経鼻または眼内の注入も考慮される。
【0137】
あるいは、全身的ではなく局所的に、例えば、特定の組織中に直接、しばしばデポー放出または持続放出処方で化合物を注入することによって、化合物を投与することができる
【0138】
使用に適した薬剤組成物には、その本来の目的を達成するのに有効な量で活性成分を含む組成物が含まれる。より具体的には、治療上有効な量とは、治療を受ける対象の現在の症状の進展を阻止するかまたはそれを軽減するのに効果的な量を意味する。有効量の決定は、特に、本明細書で提供する詳細な開示に照らせば、十分に当分野の技術者の能力の範囲内である。
【0139】
本発明の方法で使用するどの化合物についても、治療上効果的な用量は、本明細書で開示する細胞培養アッセイからまず推定することができる。例えば、用量は、動物モデルで、細胞培養で測定したEC50(50%増大させるのに効果的な用量)、すなわち、細菌性細胞成長の最大阻害の半分を達成する試験化合物の濃度を含む循環濃度範囲を達成するように処方することができる。かかる情報を用いて、ヒトでの有用な用量をより正確に決定することができる。
【0140】
しかし、任意の個別患者のための具体的な用量レベルは、用いる具体的な化合物の活性、年齢、体重、健康状態、性別、食事、投与の時間、投与の経路、排せつの速度、薬物の併用、治療を受ける個々の疾患の重篤度および処方せん医師の判断を含む様々な要素によることを理解されたい。
【0141】
ヒト以外の動物への投与については、薬物、または薬物を含む薬剤組成物を、動物の飼料または飲料水に加えることもできる。動物の飼料または飲料水産物を、その食事によって動物が適当な量の薬物を摂取するように、所定用量の薬物と一緒に処方すると好都合である。動物が消費するほぼ直前に薬物を含むプレミックスを飼料または飲料水に加えるのも好都合であろう。
【0142】
本発明の抗ウイルス使用のために好ましい化合物はある種の薬理学的特性を含む。かかる特性には、これらに限定されないが、経口での生物学的利用能、低毒性、低い血清タンパク質結合およびインビトロおよびインビボでの望ましい半減期が含まれる。アッセイを、これらの望ましい薬理学的特性を推定するために使用することができる。生物学的利用能を推定するために用いるアッセイには、Caw−2細胞単層を含むヒト腸細胞単層を横断する輸送が含まれる。血清タンパク質結合はアルブミン結合アッセイから推定することができる。かかるアッセイは、Oravcovaらの(1996、J.Chromat.B677:1〜27頁)に総説が記載されている。化合物半減期は化合物投薬の頻度に反比例する。インビトロでの化合物の半減期は、KuhnzおよびGieschenの(Drug Metabolism and Disposition、(1998)volume26、1120〜1127頁)に記載のようにしてクロソーム半減期のアッセイにより推定することができる。
【0143】
かかる化合物の毒性および治療効力は、例えば、LD50(個体群の50%に対して致死量である用量)およびED50(個体群の50%に対して治療効果がある用量)を測定するための、細胞培養または実験動物での標準の薬学的手順によって測定することができる。毒性効果と治療効果の用量比が治療指数であり、それはLD50とED50の比で表すことができる。高い治療指数を有する化合物が好ましい。これらの細胞培養アッセイおよび動物試験から得られたデータを、ヒトにおける使用のための投与量範囲の処方に用いることができる。かかる化合物の投与量は、毒性がほとんどないかまたは毒性がない、ED50を含む循環濃度の範囲内にあることが好ましい。投与量は、使用する剤形および用いる投与の経路に応じて、この範囲内で変化させることができる。正確な処方、投与の経路および投与量は、患者の状態を見ている個々の医師によって選択される(例えば、 Finglら、1975、in The Pharmacological Basis of Therapeutics、Ch.1、p.1を参照されたい)。
【0144】
投薬の量および間隔は、細菌性細胞成長の阻害効果を維持するのに十分な活性部分の血漿レベルを提供するように個別に調節することができる。全身投与のための通常の患者への投与量は100〜2000mg/日の範囲である。患者身体の表面積の観点から述べると、通常の投与量は50〜910mg/m/日の範囲である。通常の平均血漿レベルは0.1〜1000Mの範囲内に維持しなければならない。局所投与または選択的摂取の場合、化合物の効果的な濃度を血漿濃度と関係づけることはできない。
【0145】
本発明は、病原性ウイルスによって引き起こされる動物とヒトの両方の疾患を治療するための組成物と方法に関する。本発明の抗ウイルス化合物は、動物とヒトの両方の疾患を治療するために有用であり、その疾患には、これらに限定されないが、ヒトA型肝炎−B型肝炎、ヒトライノウイルス、黄熱病、ヒト呼吸器コロナウイルス、重症急性呼吸器症候群(SARS)、呼吸器合胞体ウイルス、インフルエンザ、ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV−1)、ヒト免疫不全ウイルス2型(HIV−2)、単純ヘルペスウイルス1型(HSV−1)、単純ヘルペスウイルス2型(HSV−2)、ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)、水疱瘡ウイルス、エプスタインバール(EBV)が含まれる。
【0146】
特許および特許出願を含むすべての物品および文献の本出願におけるその開示全体を参照により本明細書に組み込む。
【0147】
本発明の化合物は新規な部類の抗ウイルス剤を含む。これらの薬剤の影響を受け易い、医学的に重要なウイルス種には、これらに限定されないが、ピコルナウイルス科、フラビウイルス科、コロナウイルス科、パラミクソウイルス科、オルトミクソウイルス科、レトロウイルス科、ヘルペスウイルス科およびヘパドナウイルス科のものが含まれる。
【0148】
本発明の手順の実施にあたっては、個々の緩衝液、培地、試薬、細胞、培養条件等への言及は、もちろん限定するためのものではなく、その考察がなされている個々の文脈において、当分野の技術者が重要であるかまたは価値があると認めるすべての関連材料を含むものと読取るべきであることを理解されたい。例えば、1つの緩衝液系または培地を他のものと置き換えて、まったく同じではなくても、しばしば同じような結果を得ることができる。本明細書で開示した方法および手順の使用において、かかる置き換えが、必要以上の実験をすることなくその目的に最適に働くようにすることができるよう、当分野の技術者は、かかる方法および手法の知識を十分に有していよう。
【実施例】
【0149】
本発明を以下の非限定的実施例でより詳細に説明する。これらの方法および実施例は、本発明を本明細書で説明した実施形態に限定するものではなく、他の実施形態および使用が疑いなくそれ自体で当分野の技術者に示唆していることを理解されたい。
【0150】
所定のガイドラインおよび手順によって、その抗ウイルス活性について本発明の化合物を評価する。
【0151】
5.1 インビトロでの抗ウイルス活性のためのプロトコル
5.1.1 黄熱病(YFV)抗ウイルスアッセイ
黄熱病(YFV)抗ウイルスアッセイを、7日間アッセイエンドポイントを可能にするために用いたHeLa細胞で実施した。HeLa細胞をT−75フラスコ中で継代培養した。アッセイの1日前に、細胞をトリプシン処理してペレット化し、カウントして、ウェル当たり100plの容積の96ウェル平底組織培養プレート中の組織培地に1×10/ウェルで再懸濁させた。細胞のプレーティングの1日後にウェルを洗浄し、培地を半対数のシリーズで、媒体中で希釈された様々な濃度の試験化合物を含む完全培地(2%血清)で置き換えた。予備滴定した17D菌株YFVウイルスの一定分量を、各実験の直前に冷凍庫(−80℃)から取り出した。各ウェルに加えたそのウイルスの量で、感染後7日間で細胞が完全に死滅するように、ウイルスを組織培地中に希釈した。
【0152】
5.1.2 HepG2 2.2.15抗ウイルス評価アッセイ
HBV aywl菌株を産生するHepG2 2.2.15細胞を、2%ウシ胎仔血清で補充したDMEM培地を用いて2.5×10/ウェルの密度で、96ウェルコラーゲンコーティングしたマイクロタイタープレートにプレーティングした。細胞をプレーティングして1日後にウェルを洗浄し、培地を半対数のシリーズで、媒体中で希釈された試験化合物を含む完全培地で置き換えた。
【0153】
培地を、正の対照化合物であるラミブジンを最初に加えた3日後に、新規に希釈した化合物を含む新鮮な培地で1回置き換えた。細胞生存率を、Vmaxプレートリーダー(Molecular Devices、Sunnyvale、CA)を用いて、メーカーのプロトコルにしたがってCell Titer96(登録商標)試薬(Promega、Madison、WI)で測定した。その混合物を、代謝的に活性な細胞のミトコンドリア内酵素によって可溶性ホルマザン生成物に新陳代謝させ、細胞数の迅速な定量分析ができるようにする。培地を取り除き、100μLの新鮮な培地と10μLのCell Titer96で置き換えた。プレートを37℃で4時間再インキュベートし、Molecular Devices Vmaxプレートリーダーを用いて、分光光度法で490nmおよび650nmで読取った。化合物を含まない対照と比較した化合物処理ウェルの細胞生存率パーセントを、対照値に対する各薬物濃度でウイルスの細胞変性作用の低減割合と細胞数をグラフ化する、社内のコンピュータプログラムを用いて計算した。このプログラムは、細胞変性作用を50%(IC50)低減させる薬物の阻害濃度と50%の細胞を死滅させる毒性濃度(TC50)を内挿する。
【0154】
5.1.3 HCY RNAレプリコン抗ウイルス評価プロトコル
【0155】
【化11】

安定な発光酵素(LUC)レポーターを含む、細胞系ET(luc−ubi−neo/ET)、新規なHCY RNAレプリコンを用いた。レプリコンの組成を図式的に上記する(Krieger,N.、V.LohmannおよびR.Bartenschlager.2001、「細胞培養適用性変異によるC型肝炎ウイルスRNAレプリコン複製の向上(Enhancement of hepatitis C virus RNA replicon replication by cell culture adaptive mutations)」J.Virol.75:4614〜4624頁を参照)。HCY RNAレプリコンETは、蛍光発光酵素(Luc)、ユビキチン(Ubiq)およびネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(Neo)融合タンパク質の産生を推進するHCY(5’)の5’NTR(IRES)を含む。ユビキチン開裂によってLUCおよびNeo遺伝子が放出される。EMCY IRESエレメント(E−I)はHCY構造タンパク質NS3−NS5の翻訳を制御する。NS3タンパク質はHCYポリタンパク質を開裂させて、HCY複製に必要とされる成熟NS3、NS4A、NS4B、NS5AおよびNS5Bタンパク質を放出する。レプリコンの3’末端にHCYの標準の3’NTRがある。HCY複製の間接的な尺度としてLUCレポーターを用いる。LUCレポーターの活性はHCY RNAレベルに正比例し、正の対照抗ウイルス化合物は、LUCかまたはRNAのエンドポイントを用いてそれに匹敵するように挙動する。LUCエンドポイントの使用はHCY RNAより安価であり、化合物のライブラリをスクリーニングするための高処理量用途に用いることができる。
【0156】
HCY RNAレプリコン抗ウイルス評価アッセイは、それぞれ5つの半対数濃度で、化合物の効果を試験する。インターフェロンα2bを正対照化合物として各試行に含める。ET系のサブコンフルエント培養を、細胞数の分析(細胞毒性)または抗ウイルス活性のための96ウェルプレート中にプレーティングし、翌日、薬物を適切なウェルに加える。細胞を72時間後に処理する。その際、細胞はなおサブコンフルエントの状態である。化合物のIC50とIC90値を、HCY RNAレプリコン誘導LUC活性として、またはTaqMan RT−PCRを用いたHCY RNAとして評価されたHCY RNAレベルから得る。化合物のTC50とTC90の値を、LUCアッセイ法を用いた場合の細胞数と細胞毒性の指標として比色法を用いて算出し、他方、TaqMan RTPCRを用いて測定したリボソーム(rRNA)レベルを、RNAをベースとしたアッセイでの細胞数の目安として用いる。化合物のTI50とTI90値を、スプレッドシートから計算する。
【0157】
5.2ボリン酸錯体
上記手順を用いて以下の表の結果を得た。化合物10〜81についての代表的な抗ウイルスデータを表1に、ml当たりのマイクログラムで示した値を用いてIC50(50%阻害濃度)として示す。すなわち、本発明は、一般にボリン酸錯体またはエステルと称され、最も好ましくは二置換のボリン酸から誘導される抗ウイルス化合物を提供する。
【0158】
本発明の化合物の合成は複数の様式で行われる。反応スキーム#1は、中間体ボリン酸の合成、続く所望のボリン酸錯体への転化を示す。RおよびR**が同一である場合、2当量のアリールマグネシウムハライド(またはアリールリチウム)とトリアルキルボレートの反応、続く酸性加水分解によって所望のボリン酸5が得られる。RおよびR**が同一でない場合、1当量のアリールマグネシウムハライド(またはアリールリチウム)と適当なアリール(ジアルコキシ)ボラン(4)、ヘテロアリール(ジアルコキシ)ボランまたはアルキル(ジアルコキシ)ボラン(メトキシ、エトキシ、イソプロポキシまたはプロポキシ部分を含むアルコキシ基)との反応、続く酸性加水分解によって非相称ボリン酸6を良好な収率で得る。適用できる場合、アルキレンエステル(3、T=単結合、CH、CMe)と適当な有機セリウム、有機リチウム、有機マグネシウムまたは同等の反応物の反応が好都合である。
【0159】
スキーム1に示すように、ボリン酸錯体は、前駆体ボリン酸から、適切な溶媒(すなわち、エタノール、イソプロパノール、ジオキサン、エーテル、トルエン、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンまたはテトラヒドロフラン)中の1当量の所望の複素環リガンドとの反応によって得られる。
【0160】
【化12】

【0161】
ある場合には、本発明の化合物は1個または複数の不斉炭素原子を含み、それによって化合物は異なる立体異性の形態で存在することができる。これらの化合物は、例えば、ラセミ化合物または光学的に活性な形態であってよい。この場合、単一の鏡像異性体、すなわち光学的に活性な形態は、不斉合成による、またはラセミ化合物の分割によって得ることができる。ラセミ化合物分割は、例えば、分割剤の存在下での結晶化、または、例えばキラルHPLCカラムを用いたクロマトグラフィーなどの通常の方法によって実施することができる。
【0162】
本発明の代表的な化合物には、これらに限定されないが、本明細書で開示した化合物ならびにその薬剤として許容される酸付加塩および塩基付加塩が含まれる。さらに、本発明の化合物が酸付加塩として得られる場合、酸塩の溶液を酸性化して遊離塩基を得ることができる。逆に、生成物が遊離塩基である場合、付加塩、特に薬剤として許容される付加塩は、遊離塩基を適切な有機溶媒中に溶解させ、塩基化合物から酸付加塩を調製する通常の手順によって、その溶液を酸で処理して調製することができる。好ましい実施形態では、本発明の化合物は、化合物13〜15および81(表2〜4)のいずれか、およびその変形体を含む。
【0163】
【表2】

【0164】
【表3】

【0165】
【表4】

【0166】
本発明は、化合物のアシル化されたプロドラッグの抗ウイルス使用も包含する。当分野の技術者は、ウイルス感染症の治療のための非毒性薬剤として許容される付加塩およびアシル化プロドラッグ化合物を調製するのに用いることができる様々な合成手法を理解されよう。
【0167】
5.3 合成実施例
5.3.1 一般的記述
プロトンNMRはVarian AS400分光計で記録し、化学シフトをテトラメチルシランからのδ(ppm)ダウンフィールドとして示した。質量分析はMicromass QuattroIIとApplied Biosystem AP3000によって測定した。化合物特定番号を括弧内に示し、そのいくつかはスキーム1、表1〜3の番号と対応する。
【0168】
5.3.2 エチレングリコールボロネートエステルの生成(3、T=単結合)一般的手順
ボロン酸を窒素雰囲気下で無水THFまたは無水ジエチルエーテル(約10mL/g)中に溶解した。エチレングリコール(1モル当量)を反応液に加え、反応液を1〜4時間加熱還流させた。反応液を室温に冷却し、溶媒を減圧下で除去し、エチレングリコールエステルが油状物または固形物として残留した。油状物が得られる、またはヘキサン中に溶解した固形物が得られた場合、無水ヘキサンを加え減圧下で除去した。次いで、生成物を高真空に数時間かけた。ヘキサン中に溶解しない固形物が得られた場合、固形物をろ取し、冷ヘキサンで洗浄した。
【0169】
5.3.2.1 3−シアノフェニルボロン酸エチレングリコールエステル(3a)
3−シアノフェニルボロン酸(1g、6.8ミリモル)を窒素雰囲気下で無水THF(10ml)中に溶解した。エチレングリコール(379μL、422mg、6.8ミリモル)を加え、反応物を4時間加熱還流させ、次いで室温に冷却した。THFをロータリーエバポレーターで除去して白色固形物を得た。冷ヘキサンを加え、生成物をろ取して白色固形物を得た(1.18g、定量的収率)。H−NMR(300.058MHz,DMSO−d6)δ ppm 7.92〜8.01(3H,m)、7.50〜7.64(1H,m)、4.35(4H,s)
【0170】
5.3.2.2 チオフェン−3−ボロン酸エチレングリコールエステル(3b)
チオフェン−3−ボロン酸(1g、7.8ミリモル)を窒素雰囲気下で無水THF(10mL)中に溶解した。エチレングリコール(435μL、484mg、7.8ミリモル)を加え、反応物を1時間加熱還流し、次いで室温に冷却した。THFをロータリーエバポレーターで除去して白色固形物を得た。ヘキサンを加えて固形物を溶解し、ロータリーエバポレーターで除去した。生成物を高真空にかけて黄褐色の固形物(1.17g、97%)を得た。H NMR(300.058MHz,CDCI3)δ ppm 7.93(1H,s)、7.3〜7.4(2H,m)、4.35(4H,s)。
【0171】
5.3.3 ボロン酸エチレングリコールエステルからの非相称ボリン酸(6)の生成。一般的手順A:グリニャールの手法
ボロン酸エチレングリコールエステルを窒素雰囲気下で無水THF(10〜20mL/g)中に溶解した。溶液をアセトン−ドライアイス浴中で−78℃に冷却するか、または氷水浴中で0℃に冷却した。グリニャール試薬(0.95〜1.2モル当量)を冷却溶液に滴下した。反応物を室温に加温し、3〜18時間攪拌した。6N HCl(2mL/g)を加え、溶媒を真空下で除去した。生成物をジエチルエーテル(40mL/g)中に抽出し、水(3×等容積)で洗浄した。有機層を(MgSO)で脱水してろ過し、溶媒をロータリーエバポレーターで除去して粗生成物を得た。これを、カラムクロマトグラフィーで精製するか、または精製することなく次の工程で用いた。代替の後処理:ボリン酸生成物がアミンまたはピリジンなどの塩基性基を含む場合、室温で3〜18時間攪拌後、水(2mL/g)を加え、pHを約8に調整した。生成物をジエチルエーテル、酢酸エチルまたはTHF中に最大で3回(40mL/g)抽出した。有機層を(MgSO)で脱水してろ過し、溶媒をロータリーエバポレーターで除去して粗生成物を得た。これを、カラムクロマトグラフィーで精製する、または精製することなく次の工程で用いた。
【0172】
5.3.3.1 (4−シアノフェニル)(3−フルオロフェニル)ボリン酸(6a)
4−シアノフェニルボロン酸エチレングリコールエステル(500mg、2.89ミリモル)を窒素雰囲気下で無水THF中に溶解した。アセトン/ドライアイス浴中で溶液を−78℃に冷却し、3−フルオロフェニルマグネシウムブロミド(THF中に1M、2.74mL、2.74ミリモル、0.95モル当量)を冷却溶液に滴下した。反応物を徐々に室温に加温し、18時間攪拌した。6N HCl(1mL)を反応物に加えると濁った外観を示した。溶媒をロータリーエバポレーターで除去した。生成物をジエチルエーテル(20mL)中に抽出し、水(3×20mL)で洗浄した。有機層を(MgSO)で脱水してろ過し、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を除去して粗生成物を油性固形物として得た。これを精製することなく次の工程で用いた。
【0173】
5.3.4 一般的手順B:(ヘテロ)アリールリチウム手法
臭化(ヘテロ)アリールまたはヨウ化(ヘテロ)アリールを窒素雰囲気下で無水THF(20〜30mL/g)中に溶解し、脱ガスした。アセトン−ドライアイス浴中で溶液を−78℃に冷却し、THFまたは他の溶媒(1.2〜2.4モル当量)中のn−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウムまたはtert−ブチルリチウムを冷却溶液に滴下すると、全体的に溶液が濃い黄色に変色した。ボロン酸エチレングリコールエステル(1モル当量)を窒素雰囲気下で無水THFまたはジエチルエーテル(2〜10mL/g)中に溶解した。THF中のボロン酸エチレングリコールエステルを冷却アリール−リチウム溶液に滴下すると、全体的に溶液が淡い黄色に変色した。反応物を室温に加温し、1〜18時間攪拌した。6N HCl(2〜4mL/g)を加え、溶媒を真空下で除去した。生成物をジエチルエーテル(40mL/g)中に抽出し、水(3×等容積)で洗浄した。有機層を(MgSO)で脱水してろ過し、溶媒をロータリーエバポレーターで除去して粗生成物を得た。これを、カラムクロマトグラフィーで精製するか、または精製することなく次の工程で用いた。代替の後処理:ボリン酸生成物がアミンまたはピリジンなどの塩基性基を含む場合、室温で3〜18時間攪拌後、水(2mL/g)を加え、pHを5〜7に調整した。生成物をジエチルエーテル、酢酸エチルまたはTHF(40mL/g)中に抽出し、水(3×等容積)で洗浄した。有機層を(MgSO)で脱水してろ過し、溶媒をロータリーエバポレーターで除去して粗生成物を得た。これを、カラムクロマトグラフィーで精製する、または精製することなく次の工程で用いた。
【0174】
5.3.4.1 (3−チエニル)(3−クロロフェニル)ボリン酸(6b)
3−クロロ−ブロモベンゼン(447μL、728mg、3.8ミリモル)を窒素雰囲気下で無水THF(15mL)中に溶解した。溶液を脱ガスし、アセトン−ドライアイス浴中で−78℃に冷却した。tert−ブチルリチウム(THF中に1.7M、4.47mL、7.6ミリモル、2モル当量)を冷却溶液に滴下すると、溶液は濃い黄色に変色した。溶液を−78℃で攪拌しながら、3−チオフェンボロン酸エチレングリコールエステル(586mg)を無水ジエチルエーテル(1mL)中に溶解した。次いで、ボロン酸エステル溶液を冷却溶液に滴下すると、淡黄色に変色した。反応物を室温に加温し、18時間攪拌した。6N HCl(2mL)を加え、反応物を1時間攪拌した。溶媒をロータリーエバポレーターで除去した。生成物をジエチルエーテル(10mL)中に抽出し、水(2×10mL)で洗浄した。有機層を(MgSO)で脱水してろ過し、溶媒をロータリーエバポレーターで除去して粗生成物を橙色の油状物として得た。生成物を、シリカゲルと溶離液としてのヘキサン:酢酸エチル5:1を用いてカラムクロマトグラフィーで精製して高純度の生成物を透明な油状物として得た(614mg、73%)。
【0175】
5.3.4.2 (3−クロロフェニル)ビニルボリン酸(6c)
これを、6bで説明した方法と同様の方法で、3−シアノフェニルボロン酸エチレングリコールエステルとビニルマグネシウムブロミドの反応によって調製した。
【0176】
5.3.4.3 (3−フルオロ−5−クロロフェニル)エチニルボリン酸(6d)
これを、6bで説明した方法と同様の方法で、3−フルオロ−5−クロロフェニルボロン酸エチレングリコールエステルとエチニルマグネシウムブロミドの反応によって調製した。
【0177】
5.3.4.4 (4−メチル−3−クロロフェニル)(2−チエニルボリン酸(6e)
これを、6bで説明した方法と同様の方法で、2−チエニルボロン酸エチレングリコールエステルと4−メチル−3−クロロフェニルリチウムの反応によって調製した。
【0178】
5.3.4.5 (4−シアノフェニル)エチニルボリン酸(6f)
これを、6bで説明した方法と同様の方法で、4−シアノフェニルボロン酸エチレングリコールエステルとエチニルマグネシウムブロミドの反応によって調製した。
【0179】
5.3.4.6 (3−フルオロフェニル)シクロプロピルボリン酸(6g)
これを、6bで説明した方法と同様の方法で、3−フルオロフェニルボロン酸エチレングリコールエステルとシクロプロピルリチウムの反応によって調製した。
【0180】
5.3.4.7 (3−チエニル)メチルボリン酸(6h)
これを、6bで説明した方法と同様の方法で、3−チエニルボロン酸エチレングリコールエステルとメチルリチウムの反応によって調製した。
【0181】
5.3.4.8 (4−ピリジル)フェニルボリン酸(6i)
これを、6bで説明した方法と同様の方法で、フェニルボロン酸エチレングリコールエステルと4−ピリジルリチウムの反応によって調製した。
【0182】
5.3.4.9 (3−シアノフェニル)(2−フルオロフェニル)ボリン酸(6j)
これを、6bで説明した方法と同様の方法で、3−シアノフェニルボロン酸エチレングリコールエステルと2−フルオロフェニルリチウムの反応によって調製した。
【0183】
5.3.5 有機金属とトリアルキルボレートの反応による対称ボリン酸(5)の生成:ビス(4−クロロフェニル)ボリン酸(5a)(手順C)
無水テトラヒドロフラン(THF、25mL)中のトリメチルボレート(0.37mL)の冷却溶液(−78℃)を4−クロロフェニルマグネシウムブロミド(6.75mL。エーテル中に1M溶液)に滴下して処理した。反応混合物を−78℃で1時間攪拌し、次いで室温で18時間攪拌した。溶媒を減圧下で除去した。得られた残留物を100mLのエーテルおよび15mLの6N塩酸と攪拌した。有機層を分離し、水層をエーテル(2×100mL)で抽出した。一緒にした有機抽出物をブラインで洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を除去して淡い黄味がかった固形物を得た。生成物を、シリカゲル(Hex:エーテル=1:1)を用いてクロマトグラフにかけて420mgのボリン酸を得た。H NMR(400MHz,CDCI3)δ:5.84(s,OH)、7.46(d,4H,Ar−H)、7.72(d,4H,Ar−H)。
【0184】
5.3.5.1 ビス(3−クロロ−4−メチルフェニル)ボリン酸(5b)
5aと同様の方法で、標記化合物を、3−クロロ−4−メチルフェニルマグネシウムブロミドとトリメチルボレートの反応により得た。生成物をシリカゲルでのクロマトグラフィーにより得た。
【0185】
5.3.5.2 ビス(3−フルオロ−4−メチルフェニル)ボリン酸(5c)
5aと同様の方法で、標記化合物を、3−フルオロ−4−メチルフェニルリチウムとトリメチルボレートの反応により得た。生成物をシリカゲルでのクロマトグラフィーにより得た。
【0186】
5.3.5.3 ビス(3−クロロ−4−メトキシフェニル)ボリン酸(5d)
5aと同様の方法で、標記化合物を、3−クロロ−4−メトキシフェニルリチウムとトリメチルボレートの反応により得た。生成物をシリカゲルでのクロマトグラフィーにより得た。
【0187】
5.3.5.4 ビス(3−フルオロ−4−メトキシフェニル)ボリン酸(5e)
5aと同様の方法で、標記化合物を、3−フルオロ−4−メトキシフェニルリチウムとトリメチルボレートの反応により得た。生成物をシリカゲルでのクロマトグラフィーにより得た。
【0188】
5.3.6 有機金属とアルキル(アリール)ジアルコキシボランの反応による非相称ボリン酸(6)の生成。(4−クロロフェニル)メチルボリン酸(6k)(手順D)
−78℃で4−クロロフェニルマグネシウムブロミド(5.5mL、エーテル中に1M溶液)に、ジ(イソプロポキシ)メチルボラン(1mL、0.78g)をシリンジで滴下した。反応混合物を−78℃で1時間攪拌し、次いで周囲温度で終夜攪拌した。反応混合物に100mLのエーテルと15mLの6N塩酸を滴下して処理し、1時間攪拌した。有機層を分離し、水層をエーテル(2×100mL)で抽出した。一緒にした有機抽出物をブラインで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧下で除去して1.1gの油状物を得た。生成物のH NMRは(4−クロロフェニル)メチルボリン酸と一致していた。
【0189】
5.3.6.1 (4−フルオロフェニル)メチルボリン酸(6m)
6kと同様の方法で、標記化合物を、4−フルオロフェニルマグネシウムブロミドとジ(イソプロポキシ)メチルボランの反応により得た。生成物をシリカゲルでのクロマトグラフィーにより得た。
【0190】
5.3.6.2 (4−ビフェニル)メチルボリン酸(6n)
6kと同様の方法で、標記化合物を、4−ビフェニルリチウムとジ(イソプロポキシ)メチルボランの反応により得た。生成物を、シリカゲルでのクロマトグラフィーにより得た。
【0191】
5.3.6.3 (3−クロロ−4−メチルフェニル)メチルボリン酸(6o)
6kと同様の方法で、標記化合物を、3−クロロ−4−メチルフェニルリチウムとジ(イソプロポキシ)メチルボランの反応により得た。生成物をシリカゲルでのクロマトグラフィーにより得た。
【0192】
5.3.6.4 (3−クロロ−4−メトキシフェニル)メチルボリン酸(6p)
6kと同様の方法で、標記化合物を、3−クロロ−4−メトキシフェニルリチウムとジ(イソプロポキシ)メチルボランの反応により得た。生成物をシリカゲルでのクロマトグラフィーにより得た。
【0193】
5.3.6.5 (4−ジメチルアミノフェニル)メチルボリン酸(6q)
6kと同様の方法で、標記化合物を、4−ジメチルアミノフェニルリチウムとジ(イソプロポキシ)メチルボランの反応により得た。生成物をシリカゲルでのクロマトグラフィーにより得た。
【0194】
5.3.6.6 (3−クロロ−4−ジメチルアミノフェニル)ビニルボリン酸(6r)
6kと同様の方法で、標記化合物を、3−クロロ−4−ジメチルアミノフェニルリチウムとジ(ブトキシ)ビニルボランの反応により得た。生成物をシリカゲルでのクロマトグラフィーにより得た。
【0195】
5.3.6.7 ピリジルビニルボリン酸(6s)
THF(15mL)中の3−ブロモピリジン(1.60g、10.0ミリモル)の溶液に、窒素雰囲気下、室温でイソプロピルマグネシウムクロリド(THF中に2.0M)(5.0mL、10ミリモル)を加え、混合物を1時間攪拌した。その混合物にビニルボロン酸ジブチルエステル(3.4mL)を滴下し、混合物を室温で18時間攪拌した。水を加え、1M塩酸でpHを7に調整した。混合物を酢酸エチルで抽出した。有機層をブラインで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧下で除去して標記化合物を得た(1.04g、78%)。
【0196】
5.3.6.8 ビス(3−クロロフェニル)ボリン酸4−(ヒドロキシエチル)イミダゾールエステル(60)
エタノール(10mL)中のビス(3−クロロフェニル)ボリン酸(0.4g、1.428ミリモル)の溶液に、4−(ヒドロキシエチル)イミダゾールヒドロクロリド(0.191g、1.428ミリモル)、重炭酸ナトリウム(0.180g、2.143ミリモル)を加え、反応混合物を室温で18時間攪拌した。塩をろ過して除去した。ろ液を濃縮し、ヘキサンで処理して生成物を固形物として得た。これをろ取した(450mg、84.9%収率)。MS(ESI−):m/z=343(M−1)。
【0197】
5.3.6.9 ビス(4−クロロフェニル)ボリン酸4−(ヒドロキシメチル)イミダゾールエステル(61)
実施例60と同様の方法で、標記化合物を、ビス(4−クロロフェニル)ボリン酸と4−(ヒドロキシメチル)イミダゾールヒドロクロリドの反応により得た。生成物を白色結晶として得た。MS(ESI−):m/z=329(M−1)。
【0198】
5.3.6.10 ビス(3−クロロ−4−メチルフェニル)ボリン酸1−ベンジル−4−(ヒドロキシメチル)イミダゾールエステル(62)
メタノール(5mL)中の1−ベンジル−4−(ヒドロキシメチル)イミダゾール(96mg、0.521ミリモル)の溶液に、ビス(3−クロロ−4−メチルフェニル)ボリン酸(121mg、0.521ミリモル)を加え、反応混合物を室温で2時間攪拌した。溶媒を減圧下で除去し、残留物をヘキサンで処理して固形物を得た。ろ過により生成物を単離し、ヘキサンで洗浄して生成物(193mg、83%)を得た。H NMR(CDCl)δ:2.3(s,6H,2XCH3)、4.8(brs,2H,CH2)、5.1(brs,2H,CH2)、6.9〜7.4(複雑,13H,Ar−H);MS(ES+)(m/z)448.78、MF C2523BClO。
【0199】
5.3.6.11 ビス(3−クロロ−4−メチルフェニル)ボリン酸1−メチル−2−(ヒドロキシメチル)イミダゾールエステル(63)
節5.3.6.10と同様の方法で、標記化合物を、ビス(3−クロロ−4−メチルフェニル)ボリン酸と1−メチル−2(ヒドロキシメチル)イミダゾールヒドロクロリドの反応により得た。生成物を白色結晶として得た。MS(ESI+):m/z=373(M−1)。
【0200】
5.3.6.12 ビス(3−クロロ−4−メチルフェニル)ボリン酸1−エチル−2−(ヒドロキシメチル)イミダゾールエステル(64)
節5.3.6.10と同様の方法で、標記化合物を、ビス(3−クロロ−4−メチルフェニル)ボリン酸と1−エチル−2−(ヒドロキシ−メチル)イミダゾールヒドロクロリドの反応により得た。生成物を白色結晶として得た。MS(ESI+):m/z=387(M−1)。
【0201】
5.3.6.13 ビス(3−クロロ−4−メチルフェニル)ボリン酸1−メチル−4−(ヒドロキシメチル)イミダゾールエステル(65)
節5.3.6.10と同様の方法で、標記化合物を、ビス(3−クロロ−4−メチルフェニル)ボリン酸と1−メチル−4−(ヒドロキシメチル)イミダゾールヒドロクロリドの反応により得た。生成物を白色結晶として得た。MS(ESI+):m/z=373(M−1)。
【0202】
5.3.6.14 ビス(3−クロロ−4−メチルフェニル)ボリン酸2−ピリジルエタノールエステル(66)
節5.3.6.8と同様の方法で、標記化合物を、ビス(3−クロロ−4−メチルフェニル)ボリン酸と2−ピリジルエタノールの反応により得た。生成物を白色結晶として得た。MS(ESI+):m/z=384(M)。
【0203】
5.3.6.15 ビス(4−クロロフェニル)ボリン酸2−ピリジルエタノールエステル(67)
節5.3.6.8と同様の方法で、標記化合物を、ビス(4−クロロフェニル)ボリン酸と2−ピリジルメタノールの反応により得た。生成物を白色結晶として得た。MS(ESI+):m/z=342(M+1)。
【0204】
5.3.6.16 ビス(4−フルオロフェニル)ボリン酸2−ピリジルメタノールエステル(68)
節5.3.6.8と同様の方法で、標記化合物を、ビス(4−フルオロフェニル)ボリン酸と2−ピリジルメタノールの反応により得た。5の生成物を白色結晶として得た。H NMR(CDCl):δ=5.3(s,2H)、6.9(t,4H)、7.3(t,4H)、7.5〜7.6(m,2H)、8.1(t,1H)および8.3(d,1H)ppm。
【0205】
5.3.7 ヒドロキシキノリン誘導体
5.3.7.1 ビス(3−クロロフェニル)ボリン酸5−シアノ−キノリン−8−イルエステル(16)
エタノール(10mL)中のビス(3−クロロフェニル)ボリン酸(0.25g)の溶液を、エタノール(5mL)および水(2mL)中の5−シアノ−8−ヒドロキシキノリン(0.15g)溶液と混合した。混合物を5℃で攪拌した。次いで反応混合物を周囲温度で攪拌し、黄色の固形沈澱物が形成された。反応混合物をさらに21時間攪拌した。ろ過により生成物を単離し、ヘキサンで洗浄し、空気乾燥して272mgの錯体を得た。MS:m/z=171(ESI+);m/z=251、249および169(ESI−)。
【0206】
5.3.7.2 ビス(3−クロロ−4−フルオロ−フェニル)ボリン酸キノリン−8−イルエステル(12)
節5.3.7.1と同様の方法で、標記化合物を、ビス(3−クロロ−4−フルオロフェニル)ボリン酸と8−ヒドロキシキノリンの反応により得た。生成物を黄色結晶として得た。MS(ESI−):m/z=287および285。
【0207】
5.3.7.3 (3−フルオロフェニル)(4−クロロフェニル)ボリン酸キノリン−8−イルエステル(11)
節5.3.7.1と同様の方法で、標記化合物を、(3−フルオロフェニル)(4−クロロフェニル)ボリン酸と8−ヒドロキシキノリンの反応により得た。生成物を黄色結晶として得た。MS:m/z=250(ESI+);m/z=235および233(ESI−)。
【0208】
5.3.7.4 (4−フルオロフェニル)(4−クロロフェニル)ボリン酸キノリン−8−イルエステル(15)
節5.3.7.1と同様の方法で、標記化合物を、(4−フルオロフェニル)(4−クロロフェニル)ボリン酸と8−ヒドロキシキノリンの反応により得た。生成物を黄色結晶として得た。MS:m/z=146(ESI+);m/z=235および233(ESI−)。
【0209】
5.3.7.5 (3−ピリジル)ビニルボリン酸8−ヒドロキシキノリンエステル(49)
エタノール30mL中の(3−ピリジル)ビニルボリン酸(1.04g)とキノリン−8−イル(0.961g)の混合物を40℃で20分間攪拌した。溶媒を減圧下で除去し、残留物をエーテル/ジイソプロピルエーテル/ヘキサンで処理して所望の錯体を黄色結晶として得た。H NMR(300MHz,DMSO−d6)δ(ppm)5.23(dd,J=19.3,4.1Hz,1H)、5.46(dd,J=13.5,4.1Hz,1H)、6.43(dd,J=19.3,13.5Hz,1H)、7.14(d,J=7.6Hz,1H)、7.19(dd,J=7.6,4.7Hz,1H)、7.41(d,J=8.2Hz,1H)、7.6〜7.8(m,2H)、7.88(dd,J=8.5,5.0Hz,1H)、8.35(dd,J=5.0,2.1Hz,1H)、8.57(s,1H)、8.76(d,J=8.5Hz,1H)、9.00(d,J=5.0Hz,1H)ESI−MS m/z 261(陽イオン);C1613BNO=260.11
【0210】
5.3.7.6 (2−チエニルメチル)ボリン酸キノリン−8−イルエステル(51)
節5.3.7.1と同様の方法で、標記化合物を、(2−チエニル)メチルボリン酸と8−ヒドロキシキノリンの反応により得た。生成物を黄色結晶で得た。
【0211】
5.3.7.7 (3−クロロフェニル)(2−チエニル)ボリン酸キノリン−8−イルエステル(52)
節5.3.7.1と同様の方法で、標記化合物を、(3−クロロフェニル)(2−チエニル)ボリン酸と8−ヒドロキシキノリンの反応により得た。生成物を黄色結晶として得た。MS(ESI+):m/z=350(M+1)。
【0212】
5.3.7.8 (3−シアノフェニル)ビニルボリン酸キノリン−8−イルエステル(37)
節5.3.7.1と同様の方法で、標記化合物を、(3−シアノフェニル)ビニルボリン酸と8−ヒドロキシキノリンの反応により得た。生成物を黄色結晶として得た。MS(ESI+):m/z=285(M+1)。
【0213】
5.3.7.9 (2−クロロフェニル)エチニルボリン酸キノリン−8−イルエステル(53)
節5.3.7.1と同様の方法で、標記化合物を、(2−クロロフェニル)エチニルボリン酸と8−ヒドロキシキノリンの反応により得た。生成物を黄色結晶として得た。MS(ESI,陽イオン):m/z=291(M+)および292(M+1);H NMR(DMSO−d8,300MHz):δ8.82(d,1H)、8.78(d,1H)、8.03(dd,1H)、7.88(dd,1H)、7.70(t,1H)、7.46(d,1H)、7.33〜7.24(m,2H)、7.18(dd,1H)、7.10(d,1H)および3.04(s,1H)ppm。
【0214】
5.3.7.10 ビス(エチニル)ボリン酸8−ヒドロキシキノリンエステル(54)
節5.3.7.1と同様の方法で、標記化合物を、ビス(エチニル)ボリン酸−THF溶液と8−ヒドロキシキノリンの反応により得た。ビスボリン酸が非常に揮発性であるため後処理工程でTHFをロータリーエバポレーターで蒸発させることなく、(エチニル)ボリン酸を、エチニルマグネシウムブロミドとトリメチルボレートから調製した。錯体生成物を淡黄色結晶として得た。MS(ESI,陽イオン):m/z=205(M+)および206(M+1);H NMR(DMSO−d6,300MHz):δ9.05(dd,1H)、8.84(dd,1H)、7.97(dd,1H)、7.68(t,1H)、7.70(d,1H)、7.08(d,1H)および2.90(s,2H)ppm。
【0215】
5.3.7.11 (3−フルオロフェニル)シクロプロピルボリン酸8−ヒドロキシキノリンエステル(55)
節5.3.7.1と同様の方法で、標記化合物を、(3−フルオロフェニル)シクロプロピルボリン酸と8−ヒドロキシキノリンの反応により得た。生成物を淡黄色結晶として得た。H NMR(DMSO−d):δ=−0.25〜−0.20(m,1H)、0.10〜0.25(m,3H)、0.3〜0.4(m,1H)、6.9〜7.0(m,1H)、7.1(d,1H)、7.2〜7.3(m,3H)、7.4(d,1H)、7.65(t,1H)、7.9(dd,1H)、8.75(d,1H)および9.1(d,1H)ppm。
【0216】
5.3.7.12 ジビニルボリン酸キノリン−8−イルエステル(70)
実施例に記載の手順で標記化合物を調製し、化合物を黄色結晶として得た。MS(ESI,陽イオン):m/z=209(M+)および210(M+1);H NMR(DMSO−d6,300MHz):δ8.75〜8.65(m,2H)、7.87(dd,1H)、7.63(t,1H)、7.34(d,1H)、7.02(d,1H)、6.17(dd,2H)、5.36(dd,2H)および5.20(dd,2H)ppm。
【0217】
5.3.7.13 (3−クロロフェニル)(3,4−ジメトキシフェニル)ボリン酸8−ヒドロキシキノリンエステル(71)
実施例6aで説明した手順によって、(3−クロロフェニル)(3,4−ジメトキシフェニル)ボリン酸を、3,4−ジメトキシフェニルマグネシウムブロミドと3−クロロフェニルボロン酸エチレングリコールエステルから調製した。標記錯体生成物を節5.3.7.1で説明した手法によって作製し、黄色結晶として得た。MS(ESI,陽イオン):m/z=404(M+1);H NMR(DMSO−d6,300MHz):δ9.17(d,1H)、8.78(d,1H)、7.90(dd,1H)、7.70(t,1H)、7.43(d,1H)、7.30〜7.17(m,5H)、6.89〜6.80(m,3H)、3,66(s,3H)および3.62(s,3H)ppm。
【0218】
5.3.7.14 (2−クロロフェニル)ビニルボリン酸8−ヒドロキシキノリンエステル(72)
節5.3.7.1と同様の方法で、標記化合物を、(2−クロロフェニル)(ビニル)ボリン酸と8−ヒドロキシキノリンの反応により得た。生成物を黄色結晶として得た。MS(ESI,陽イオン):m/z=293(M+)および294(M+1);H NMR(DMSO−d6,300MHz):δ8.80(d,1H)、8.75(d,1H)、7.84(dd,1H)、7.65(t,1H)、7.55〜7.50(m,1H)、7.38(d,1H)、7.20〜7.16(m,3H)、7.08(d,1H)、6.54(dd,1H)、5.40(dd,1H)および5.12(dd,1H)ppm。
【0219】
5.3.7.15 (3−フルオロフェニル)ビニルボリン酸キノリン−8−イルエステル(73)
節5.3.7.1と同様の方法で、標記化合物を、(3−フルオロフェニル)(ビニル)ボリン酸と8−ヒドロキシキノリンの反応により得た。生成物を黄色結晶として得た。MS(ESI,陽イオン):m/z=277(M+)および278(M+1);H NMR(DMSO−d6,300MHz):δ8.80(d,1H)、8.74(d,1H)、7.87(dd,1H)、7.67(t,1H)、7.40(d,1H)、7.28〜7.20(m,2H)、7.14〜7.11(m,2H)、6.97〜6.90(m,1H)、6.41(dd,1H)、5.44(dd,1H)および5.21(dd,1H)ppm。
【0220】
5.3.7.16 (3−クロロフェニル)エチニルボリン酸8−ヒドロキシキノリンエステル(74)
節5.3.7.1と同様の方法で、標記化合物を、(3−クロロフェニル)エチニルボリン酸と8−ヒドロキシキノリンの反応により得た。生成物を黄色結晶として得た。MS(ESI,陽イオン):m/z=291(M+)および292(M+1);H NMR(DMSO−d6,300MHz):δ8.93(d,1H)、8.80(d,1H)、7.89(dd,1H)、7.71(t,1H)、7.47(d,1H)、7.45(d,1H)、7.35〜7.31(m,1H)、7.25〜7.22(m,15 2H)、7.18(d,1H)および3.05(s,1H)ppm。
【0221】
5.3.8 ヒドロキシピコリン酸誘導体
5.3.8.1 ビス(3−クロロ−4−メチルフェニル)ボリン酸3−ヒドロキシピコリネートエステル(69)
ビス(3−クロロ−4−メチルフェニル)ボリン酸(14.6g)をエタノール(120mL)中に溶解し、加熱還流させた。3−ヒドロキシピコリン酸(5.83g)を分割して高温溶液に加えた。分割した3−ヒドロキシピコリン酸の最後の部分を加えた後、反応液を還流下で15分間攪拌し、次いで室温に冷却した。いくらかのエタノールを除去して反応液を濃縮した。固形物をろ取した。エタノールから1回再結晶化して標記生成物を白色結晶として得た(13.4g)。MP=165.0〜166.5℃。MS(ESI+):m/z=400(M+1)。
【0222】
好ましい実施形態では、本発明は、本明細書で具体的に述べた化合物、ならびに薬剤として許容されるその塩、水和物および溶媒和物、ならびに薬剤として許容される担体を含むこれらの化合物のいずれかの組成物の抗ウイルス剤としての使用を含む。
【0223】
本発明は、抗ウイルス化合物のいずれか、好ましくは表2〜4にまとめたもののうちの1つまたは複数を治療有効量で前記患者に投与することによって、それに苦しむ患者における細菌による疾患を治療し、および/または感染する恐れのある患者の感染を防止するための方法にも関する。
【0224】
好ましい実施形態では、その細菌は、前記ウイルスが、ピコルナウイルス科、フラビウイルス科、コロナウイルス科、パラミクソウイルス科、オルトミクソウイルス科、レトロウイルス科、ヘルペスウイルス科およびヘパドナウイルス科からなる群(これらに限定されないが)から選択されるメンバーであるウイルスである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構造を有する化合物ならびにその薬剤として許容される塩、水和物および溶媒和物を有効量で動物に投与することを含む、動物のウイルス疾患を治療するための方法。
【化1】

(式中、R21およびR22は、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたシクロアルキル、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたヘテロアリールおよび任意選択で置換された複素環からなる群から独立に選択され、
23〜R28は、水素、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、ハロ、シアノ、アリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、ヘテロアリール、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、チオ、アルキルチオ、アリールチオ、ヘテロアリールチオ、シクロアルキル、ヘテロシクリル、シクロアルキルオキシ、ヘテロシクリルオキシ、ホルミル、カルボキシ、チオホルミル、チオカルボキシ、スルホニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、ヘテロアリールスルホニル、アルキルスルフィニル、アリールスルフィニル、ヘテロアリールスルフィニル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、アルキルスルホニルアミノ、アリールスルホニルアミノからなる群から独立に選択され、上記アルキル−、アリール−およびヘテロアリール−含有部分のそれぞれは任意選択で置換されている)
【請求項2】
21が、任意選択で置換されたアリールまたは任意選択で置換されたヘテロアリールである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
21が、任意選択で置換されたアリールである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
22が、任意選択で置換されたアリールである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
21およびR22が、独立に、任意選択で置換されたフェニルである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
21およびR22が、独立に、ハロ、ヒドロキシ、チオ、アミノ、ホルミル、チオホルミル、カルボキシ、カルバモイル、チオカルバモイル、シアノ、任意選択で置換されたアルコキシ、アルキルチオ、アリールオキシ、アリールチオ、アリールアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノおよびアルキルカルボニルオキシからなる群から選択される少なくとも1つの部分で置換されたフェニルである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
23〜R28が、水素、ハロ、ヒドロキシ、チオ、アミノ、ホルミル、チオホルミル、カルボキシ、カルバモイル、チオカルバモイル、シアノ、ならびに任意選択で置換されたアルコキシ、アルキルチオ、アリールオキシ、アリールチオ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノおよびアルキルカルボニルオキシからなる群から独立に選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
23〜R28が、独立に、水素、ハロまたはアミノである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
21およびR22が、独立に、ハロ、ヒドロキシおよびアミノからなる群から選択される少なくとも1つの部分で置換されたフェニルである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記化合物が、(3−フルオロフェニル)(4−クロロフェニル)ボリン酸5,7−ジクロロ−8−ヒドロキシキノリンエステル、ビス(3−クロロフェニル)ボリン酸2−アミノ−8−ヒドロキシキノリンエステル、または(3−クロロフェニル)(3,4−ジメトキシフェニル)ボリン酸8−ヒドロキシキノリンエステルである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
以下の構造を有する化合物ならびに薬剤として許容されるその塩、水和物、および溶媒和物を有効量投与することを含む、動物のウイルス疾患を治療するための方法。
【化2】

(式中、
31およびR32は、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアリール、アラルキル、および任意選択で置換されたヘテロアリールからなる群から独立に選択され、
33〜R36は、水素、アルキル、アリール、アリールカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、ジアルキルアミノ、ジアリールアミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、カルボキシアルキルオキシ、ヘテロシクリルオキシ、ヘテロシクリル、カルボキシ、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル、(アルキルアミノ)アルキル、(ジアルキルアミノ)アルキル、アルキルオキシカルボニル、カルバモイル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオ、アルキルチオ、アリールチオ、アルキルスルホニル、アルキルスルフィニル、アリールスルフィニル、ジアルキルスルファモイル、アルキルスルファモイル、スルファモイル、スルホ、シアノ、ハロ、ニトロ、アルキルカルバモイルからなる群から選択され、上記部分のそれぞれは任意選択で置換されており、
およびRは、それらが結合している環原子とともに任意選択で置換された芳香環を形成している)
【請求項12】
31およびR32の1つが、任意選択で置換されたアリールである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
31とR32の双方が、任意選択で置換されたアリールである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
31とR32の双方が、任意選択で置換されたフェニルである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
33〜R36が、水素、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノまたはカルボキシからなる群から独立に選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記任意選択で置換されたフェニルが、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、−(CHOH(k=1、2または3)、−CHNH、−CHNH−アルキル、−CHN(アルキル)、−COH、−COアルキル、−CONH、−CONHアルキル、−CON(アルキル)、−OH、アルコキシ、アリールオキシ、−SH、−S−アルキル、−S−アリール、−S(O)アルキル、−S(O)アリール、−SOアルキル、−SON(アルキル)、−SONHアルキル、−SONH、−SOH、−SCF、−CN、ハロゲン、−CF、−NO、アミノ、置換アミノ、−NHSOアルキル、−OCHCHNH、−OCHCHNHアルキル、−OCHCHN(アルキル)、オキサゾリジン−2−イル、およびアルキル置換オキサゾリジン−2−イルからなる群から選択される部分で置換されたフェニルである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
33〜R36の少なくとも1つが、ヒドロキシまたはアミノである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
33がヒドロキシであり、R34〜R36が水素である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記任意選択で置換されたフェニルが、水素、ハロゲンおよびアルキルからなる群から選択される部分で置換されたフェニルである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記ハロゲンが、クロロである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記アルキルが、メチルである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記化合物が、(ビス(3−クロロ−4−メチルフェニル)ボリルオキシ)(3−ヒドロキシピリジン−2−イル)メタノンである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記化合物が前記(ビス(3−クロロ−4−メチルフェニル)ボリルオキシ)(3−ヒドロキシピリジン−2−イル)メタノンの溶媒和物である請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記化合物が、前記(ビス(3−クロロ−4−メチルフェニル)ボリルオキシ)(3−ヒドロキシピリジン−2−イル)メタノンの水和物である、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
36がアミノであり、R33がヒドロキシであり、R34およびR35が水素である、請求項17に記載の方法。
【請求項26】
前記任意選択で置換されたフェニルが、水素、ハロゲンおよびアルキルからなる群から選択される部分で置換されたフェニルである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記ハロゲンが、クロロである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記化合物が、(ビス(3−クロロフェニル)ボリルオキシ)(6−アミノ−3−ヒドロキシピリジン−2−イル)メタノンである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記化合物が、前記(ビス(3−クロロフェニル)ボリルオキシ)(6−アミノ−3−ヒドロキシピリジン−2−イル)メタノンの溶媒和物である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記化合物が、前記(ビス(3−クロロフェニル)ボリルオキシ)(6−アミノ−3−ヒドロキシピリジン−2−イル)メタノンの水和物である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記ウイルス疾患が、ピコルナウイルス科、フラビウイルス科、コロナウイルス科、パラミクソウイルス科、オルトミクソウイルス科、レトロウイルス科、ヘルペスウイルス科およびヘパドナウイルス科からなる群から選択されるウイルスに関連している、請求項1または11に記載の方法。

【公表番号】特表2008−502694(P2008−502694A)
【公表日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−516648(P2007−516648)
【出願日】平成17年6月14日(2005.6.14)
【国際出願番号】PCT/US2005/020978
【国際公開番号】WO2006/085932
【国際公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(505465841)アナコール ファーマシューティカルズ,インコーポレイテッド (19)
【Fターム(参考)】