説明

ボンド磁石用フェライト磁性粉およびその製造方法、並びにボンド磁石

【課題】低コストで、生産性を損なうことなく、また、使用上支障となる磁気特性への悪影響をもたらすことなく、環境負荷物質である六価クロムの残存を確実に抑制したボンド磁石用フェライト磁性粉およびその製造方法、並びにボンド磁石を提供する。
【解決手段】原料粉を焼成して焼成粉を得る工程と、焼成された上記焼成粉を湿式粉砕する工程と、粉砕された上記焼成粉を湿式洗浄する工程と、洗浄された上記焼成粉をアニールする工程を行うとともに、上記湿式粉砕の工程や湿式洗浄において粉砕時や洗浄時の分散溶媒のpHを8.5以下に保ちながら粉砕や洗浄を行うことにより、環境負荷物質である六価クロムの生成を抑える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成分元素として鉄とアルカリ土類金属とを含むボンド磁石用磁性粉およびその製造方法、並びにその磁性分を用いたボンド磁石に関する。
【背景技術】
【0002】
ボンド磁石は、磁石(硬磁性体)粉末をフィラーとし、当該磁石粉末をゴムや樹脂等のバインダー(結着剤)で固化成形した複合永久磁石で、形状自由度が高く、機械的特性においても欠け難い等の利点があり、さらに、金型成形等による大量生産が容易で生産性にすぐれているなど、多くの利点を有する。
【0003】
このため、当該ボンド磁石の応用製品は非常に多岐にわたっており、たとえば、冷蔵庫のドアパッキン、各種マグネットシート、パソコン周辺機器のスピンドルモータ、自動車の各種メータ、健康機器、文具、玩具などに広く利用されている。
【0004】
このボンド磁石のフィラーである磁石粉末としては、通常、残留磁束密度および固有保磁力にすぐれたフェライト磁性粉が用いられる。このボンド磁石用のフェライト磁性粉については、たとえば特許文献1、2に記載されているように、種々開発されている。
【0005】
フェライト磁性材料には、成分元素として鉄とアルカリ土類金属とを含むものが多いが、これはボンド磁石用フェライト磁性粉の場合も概略同様である。この種のフェライト磁性材料としては、たとえば、BaO・6FeやSrO・6Fe等があるが、これらの材料はボンド磁石用フェライト磁性粉としても使用されている。
【0006】
このボンド磁石用フェライト磁性粉は、次のような工程を経て製造される。
(1)焼成元素材料として、鉄とアルカリ土類金属とを含む原料粉を焼成して焼成粉を得る工程
(2)工程(1)で得た焼成粉を粉砕する工程
(3)工程(2)で粉砕された焼成粉を洗浄する工程
(4)工程(3)で洗浄された焼成粉をアニールする工程
【0007】
【特許文献1】特許第3257936号公報
【特許文献2】特開2003−86412号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年、電気・電子製品等に対する要求は、その用途に対応できる特性に対する要求に加えて、コストに対する要求も厳しい。さらに最近では、環境問題の見地から、環境負荷の小さな製品が求められるようになってきた。
【0009】
本発明者らは、種々の電気・電子製品に広く用いられるボンド磁石に焼結等方性マグネットに近い磁気特性を発揮させることが産業上重要であると考えた。そこで、焼結等方性マグネットに近い磁気特性を有するボンド磁石を発明するための研究をおこなった。そして、当該研究の結果、ボンド磁石に少量のCr(クロム)元素を含有させることで、当該ボンド磁石の磁気特性を向上させることが出来ることに想到した。これは、当該ボンド磁石の原料であるフェライト磁性粉に適量のCrが含有されていると分散性が向上し、当該フェライト磁性粉と、バインダー樹脂やゴムとを混合したときの流動性が向上する。この流動性が向上する結果、フェライト磁性粉の配向性が高まり、製造されるボンド磁石にお
いて、磁気特性が向上する為であると考えられる。
【0010】
ところが、製造されたボンド磁石において環境負荷物質である六価クロムが検出される場合があった。尤も、当該ボンド磁石に残存した六価クロム量は環境基準を下回っており、直ちに環境汚染を惹起する心配はない。しかし、上述したように、ボンド磁石は、非常に多種・大量の電気・電子製品に利用されている。そこで、本発明者らは、当該ボンド磁石の磁石特性を低下させることなく、環境負荷物質である六価クロム量を出来るだけ削減することが必要と考えた。
【0011】
本発明は、以上のような状況下でなされたものであり、その目的は、バインダー樹脂やバインダーゴムと混合したときの流動性が高いことから、高特性のボンド磁石を製造することができ、且つ、当該製造されたボンド磁石において、六価クロム量が検出限界以下に低減されるフェライト磁性粉およびその製造方法、並びに、ボンド磁石を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、ボンド磁石用に六価クロムが検出される原因について研究を行い、以下のようなことを明らかにした。
【0013】
ボンド磁石製造用のフェライト磁性粉の製造工程には、上述したように、原料粉を焼成して得た適宜量のCr元素を含む焼成粉を洗浄する工程、当該焼成粉を湿式粉砕する工程の少なくても1つが含まれる。この洗浄工程や湿式粉砕工程は、一般的に水を溶媒(分散溶媒)として行う。
当該湿式洗浄工程を付加することで、製造されたフェライト磁性粉において、未反応の不純物成分が溶媒中に溶出することで除去される。すると、その後アニール処理を行った場合に、粒子間の凝集や粒成長が格段に抑制される。よって、このアニール処理において熱を加えることで、粉砕時に発生した結晶の歪みが除去されて磁気特性が回復すると共に、適宜量のCr元素を含むフェライト磁性粉中の粒子間の分散性が維持され、バインダーである天然ゴム、樹脂やゴムと混練した際に、これらバインダー中に均一に分散されることとなり、当該混練物中におけるフェライト磁性粉粒子の流動性・配向性が向上する。この結果、後工程において、当該混練物を、磁場中で射出成形したとき、個々のフェライト磁性粉粒子がより均一に配向する為、製造されるボンド磁石において磁力が向上する。
【0014】
また、当該湿式粉砕する工程を行うことで、フェライト磁性粉粒子中の未反応の不純物成分が溶媒中に溶出して除去されると共に効率よく粉砕することが可能となる。この結果、磁気特性の観点、および、樹脂と混合したときの流動性の観点において最適な粒径まで、生産性良く粉砕することが可能となる。
【0015】
しかし、当該湿式洗浄工程および湿式粉砕工程において、焼成粉中に存在する未反応のSrやBaなどのアルカリ土類金属が分散溶媒である水に溶出して当該分散溶媒のpHが8.5より高くなる。すると、焼成粉中に含まれていたCr化合物の一部が乾燥熱処理後に六価クロムに変化し易い状態となり、後のアニール工程で焼成されると、一部が六価クロムに変化することが判明した。
【0016】
ここで、本発明者らは、湿式洗浄時および湿式粉砕において、使用される分散溶媒の水素イオン濃度を、Cr化合物が溶出しないpH8.5以下の範囲に保つことにより、Cr化合物が六価クロムとなることを抑制する構成に想到し、本発明を完成させた。
【0017】
すなわち、上述の課題を解決するための第1の手段は、
鉄とアルカリ土類金属とを含み、湿式洗浄および/または湿式粉砕を経たボンド磁石用
のフェライト磁性粉であって、
100ppm以上、3000ppm以下のCr元素を含み、且つ、六価クロムが検出されないことを特徴とするフェライト磁性粉である。
【0018】
第2の手段は、
鉄とアルカリ土類金属とを含み、湿式洗浄および/または湿式粉砕を経たボンド磁石用のフェライト磁性粉であって、
100ppm以上、3000ppm以下のCr元素を含み、且つ、六価クロムの含有量が1ppm以下であることを特徴とするフェライト磁性粉である。
【0019】
第3の手段は、
第1または第2の手段に記載のフェライト磁性粉であって、
当該フェライト磁性粉7gにポリエステル樹脂0.4cc加え、φ15mmの型に充填し8MPaの圧力かけて作製した圧粉体の磁気特性において、
残留磁束密度Brが1730Gauss以上、固有保磁力iHcが2270Oe以上であることを特徴とするフェライト磁性粉である。
【0020】
第4の手段は、
鉄とアルカリ土類金属とを含む原料粉からボンド磁石用のフェライト磁性粉を製造するフェライト磁性粉の製造方法であって、
上記原料粉を焼成して焼成粉を得る工程と、上記焼成粉を湿式洗浄する工程と、上記湿式洗浄された焼成粉をアニールする工程とを有し、
上記湿式洗浄する工程において、洗浄に用いる分散溶媒のpHを8.5以下として洗浄を行うことを特徴とするボンド磁石用フェライト磁性粉の製造方法である。
【0021】
第5の手段は、
鉄とアルカリ土類金属とを含む原料粉からボンド磁石用のフェライト磁性粉を製造するフェライト磁性粉製造方法であって、
上記原料粉を焼成して焼成粉を得る工程と、上記焼成粉を粉砕する工程と、上記粉砕された焼成粉を湿式洗浄する工程と、上記湿式洗浄された焼成粉をアニールする工程とを有し、
上記湿式洗浄工程において、洗浄に用いる分散溶媒のpHを8.5以下として洗浄を行うことを特徴とするボンド磁石用フェライト磁性粉の製造方法である。
【0022】
第6の手段は、
鉄とアルカリ土類金属とを含む原料粉からボンド磁石用のフェライト磁性粉を製造するフェライト磁性粉製造方法であって、
上記原料粉を焼成して焼成粉を得る工程と、焼成された上記焼成粉を湿式粉砕する工程と、上記湿式粉砕された焼成粉をアニールする工程とを有し、
上記湿式粉砕工程において、湿式粉砕に用いる分散溶媒のpHを8.5以下として湿式粉砕を行うことを特徴とするボンド磁石用フェライト磁性粉の製造方法である。
【0023】
第7の手段は、
第4から第6のいずれかの手段に記載のフェライト磁性粉であって、
焼成粉を得る工程より後で、アニールする工程より前に、上記焼成粉へ、カーボン、および/または、カーボンを必須とし、H、O、N、Clのいずれか1種以上の元素とを含む沸点200℃以上の化合物を添加することを特徴とするボンド磁石用フェライト磁性粉の製造方法である。
【0024】
第8の手段は、
第4から第6のいずれかの手段に記載のフェライト磁性粉であって、
焼成粉を得る工程より後で、アニールする工程より前に、上記焼成粉へ、2価のFeおよび/または2価のFeを含む化合物を添加することを特徴とするボンド磁石用フェライト磁性粉の製造方法である。
【0025】
第9の手段は、
第4から第6のいずれかの手段に記載のフェライト磁性粉であって、
湿式粉砕および/または湿式洗浄された焼成粉を、Hガス、COガス、NOガス、HC(ハイドロカーボン)ガスのいずれか1種以上を含み、80℃〜300℃の温度範囲にあるガス雰囲気中で還元処理することを特徴とするボンド磁石用フェライト磁性粉の製造方法である。
【0026】
第10の手段は、
第1から第3の手段のいずれかに記載のボンド磁石用フェライト磁性粉を含むことを特徴とするボンド磁石である。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係るフェライト磁性粉によれば、バインダー樹脂やバインダーゴムと混合したときの流動性を確保できる。さらに、製造されたボンド磁石における六価クロム量を検出限界以下とすることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明に係るフェライト磁性粉は、100ppm以上、3000ppm以下のCr元素を含有しているが、六価クロムの含有量は、ジフェニルカルバジド吸光光度法の検出限界である1ppm以下である。
つまり、本発明に係るフェライト磁性粉は100ppm以上、3000ppm以下のCr元素を含有しているので、樹脂と混合したときのメルトフローレート(MFR)が70g/10min以上と高い。そして、当該MFRが高いので、当該フェライト磁性粉と樹脂との混合が円滑に進み均一性の高い混合物となる。当該均一性の高い混合物から製造した圧粉体を磁場中射出成形で製造したボンド磁石は高い磁気特性を示した。因みに、本発明に係るフェライト磁性粉磁気特性を測定するため、当該フェライト磁性粉7gにポリエステル樹脂を0.4cc加え、φ15mmの金型に充填し8MPaの圧力をかけて成形することで圧粉体とし、測定した。すると当該圧粉体は、残留磁束密度Brが1730Gauss以上、固有保磁力iHcが2270Oe以上の値を有していることが判明した。
そして、圧粉体としたとき残留磁束密度Brが1730Gauss以上、固有保磁力がiHc2270Oe以上を示すフェライト磁性粉を用い、磁場中射出成形してボンド磁石を製造した場合、得られたボンド磁石は、焼結等方性マグネットに近い1.8MGOe以上のBHmaxを確保できるようになることから、当該ボンド磁石は、モーターやマグロールなどへ広く応用できることが判明した。
【0029】
一方、本発明に係るフェライト磁性粉は、100ppm以上、3000ppm以下のCr元素を含有しているにも拘わらず、環境負荷物質である六価クロムの含有量は、ジフェニルカルバジド吸光光度法の検出限界以下である1ppm以下にすることができた。当該六価クロムの含有量は、環境基準(例えば、ROHS規格の定める1000ppm)よりもはるかに少ない量である。
【0030】
(第1の実施形態)
次に、本発明に係るボンド磁石用のフェライト磁性粉の製造方法について、その製造プロセスの好適な一実施形態を、図1を参照しながら説明する。
【0031】
本発明に係るフェライト磁性粉の製造工程は、図1のフローに示すように(1)配合および混合工程、(2)造粒工程、(3)焼成工程、(4)粉砕工程、(5)洗浄工程、(6)アニール工程の諸工程を有する。
以下、工程ごとに説明する。
【0032】
(1)配合・混合工程:
炭酸ストロンチウムと酸化鉄とを、モル比でSrCO:Fe=1:5.20〜6.00の範囲となるよう評量し、混合して混合物を得る。
このとき酸化鉄として、Feの純度が99.0〜99.9%、Cr元素の含有量が100ppm以上、3000ppm以下のものを用いた。これは、Crの含有量を100ppm以上とすることで、フェライト磁性粉の分散性を高める効果が発揮され、3000ppm以下とすることで、フェライト磁性粉の磁気特性の低下を回避できるからである。
【0033】
(2)造粒工程:
得られた混合物へ、5〜15wt%の水を添加して混合し、φ3〜10mmの球状に造粒し造粒粉を得る。
【0034】
(3)焼成工程:
造粒工程で得られた造粒粉を、乾燥後電気炉で900℃〜1350℃の範囲で10分間〜2時間の範囲で焼成して焼成粉を得る。ここで、焼成温度が900℃以上あれば、フェライト化反応が進行する。一方、焼成温度が1350℃以下であれば、当該焼成粉において、結晶の粗大成長や粒子間焼結を回避することができる。また、焼成時間が10分間以上あれば、当該焼成の効果を得ることが出来る。一方、生産性の観点からは焼成時間が2時間以下であることが好ましい。
【0035】
(4)粉砕工程:
粉砕工程においては、焼成工程で得られた焼成粉を、その平均粒子径が2.5μm以下となるまで湿式粉砕を行う。この湿式粉砕は水を分散溶媒にして行うが、このとき分散溶媒のpHが8.5以下を保持するように、酸性化合物を溶媒に添加する。いわゆるpH制御を行うが、このpH制御下での湿式粉砕によって、フェライト磁性粉を製造する。
【0036】
(5)洗浄工程:
洗浄工程においては、粉砕工程で得られたスラリー状の焼成粉に、溶媒を除いた焼成粉量に対して0.1重量倍以上であって、pH5〜8である水を添加して濾過脱水する。または、粉砕工程で得られたスラリー状の焼成粉を濾過脱水後、溶媒を除いた焼成粉量に対して0.1重量倍以上であってpH5〜8の水を用いて洗浄し、80〜150℃の乾燥機中で乾燥する。
【0037】
(6)アニール工程:
アニール工程は、上述した焼成粉の粉砕時または乾燥後の解砕時に、フェライト磁性粉の結晶に発生する結晶歪を除去するためのものである。アニール温度としては1050℃〜850℃の範囲とすることが好ましい。
【0038】
これは、当該アニール工程の温度を850℃以上にすることにより上記結晶歪みが除去されてHcをより高めることができるからである。一方、当該アニール温度が1050℃以下であれば、フェライト磁性粉の凝集の発生を抑制し、当該フェライト磁性粉の分散性を保つことができるからである。そして、当該アニール工程後に本発明に係るフェライト磁性粉を得た。
【0039】
上記フェライト磁性粉に対し、ジフェニルカルバジド吸光光度法により六価クロムの含有量を測定したところ、検出限界以下であったことから1ppm以下であることが確認された。
そして、上記フェライト磁性粉を用い、通常の方法によりボンド磁石を作製した。当該ボンド磁石は、各種電気・電子製品への用途へ、支障無く使用できることが確認された。
【0040】
(第2の実施形態)
次に、本発明に係るカーボン用のフェライト磁性粉の製造方法について、その製造プロセスの異なる好適な一実施形態を説明する。
【0041】
本発明に係るフェライト磁性粉の製造工程は、(1)配合および混合工程、(2)造粒工程、(3)焼成工程、(4)粉砕工程、(5)洗浄工程、(6)アニール工程の諸工程を有する。
以下、工程ごとに説明する。
【0042】
(1)配合・混合工程:
炭酸ストロンチウムと酸化鉄とを、モル比でSrCO:Fe=1:5.20〜6.00の範囲となるよう評量し、混合して混合物を得る。
このとき酸化鉄として、Feの純度が99.0〜99.9%、Cr元素の含有量が100ppm以上、3000ppm以下のものを用いた。これは、Crの含有量を100ppm以上とすることで、フェライト磁性粉の分散性を高める効果が発揮され、3000ppm以下とすることで、フェライト磁性粉の磁気特性の低下を回避できるからである。
【0043】
(2)造粒工程:
得られた混合物へ、5〜15wt%の水を添加して混合し、φ3〜10mmの球状に造粒して造粒粉を得る。
【0044】
(3)焼成工程:
造粒工程で得られた造粒粉を乾燥後、電気炉にて900℃〜1350℃の範囲で、10分間〜2時間焼成して焼成粉を得る。ここで、焼成温度が900℃以上あれば、フェライト化反応が進行する。一方、焼成温度が1350℃以下であれば、当該焼成粉において、結晶の粗大成長や粒子間焼結を回避することができる。焼成時間が10分間以上あれば、当該焼成の効果を得ることが出来る。一方、生産性の観点からは焼成時間が2時間以下であることが好ましい。
【0045】
(4)粉砕工程:
粉砕工程においては、焼成工程で得られた焼成粉を、その平均粒子径が2.5μm以下となるまで湿式粉砕を行う。当該焼成粉の平均粒子径を2.5μm以下とすることで、製造されるボンド磁石において保磁力などの磁気特性が向上する。
この湿式粉砕は水を分散溶媒にして行うが、このとき溶媒のpHが8.5以下を保持するように酸性化合物を溶媒へ添加し、いわゆるpH制御を行う。そして当該pH制御下での粉砕によって、フェライト磁性粉を製造する。
【0046】
また、さらに好ましくは、当該粉砕工程において、分散溶媒として水を用い、焼成工程で得られた焼成粉へ、さらに平均粒子径100μm以下の、カーボン、または、カーボンを必須とし、H、O、N、Clのいずれか1種以上の元素とを含む沸点200℃以上の化合物(以下、単にカーボン化合物と略記する場合がある。)、または、カーボンとカーボン化合物との両方を、添加混合する。そして、当該混合物を湿式粉砕し、フェライト磁性粉単体平均粒子径を2.5μm以下とする。
このとき、カーボンおよび/またはカーボン化合物の添加量は、焼成粉に対して0.2wt%〜2.0wt%とする。
さらに、カーボンおよび/またはカーボン化合物は、平均粒子径が100μm以下の粉体、または、液体の形態で添加混合することが好ましい。当該形態をとることで、フェライト磁性粉中に、微量に残留する六価クロムを還元する効果が高まるからである。ここで、カーボンを必須とし、H、O、N、Clのいずれか1種以上の元素とを含む沸点200℃以上の化合物の例としては、沸点が200℃以上のアルコール類(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール(PVA)など)が挙げられる。
ここで、当該カーボン化合物が、PVA等のように粒子形態を有する場合は、当該カーボン化合物を水やアルコールなどの溶媒に一旦溶かして添加してもよい。また、当該カーボンやカーボン化合物の添加量は、フェライト磁性粉に対して0.2wt%以上あれば十分な還元効果が発揮される。また、当該添加量がフェライト磁性粉に対して5wt%以下であれば、当該フェライト磁性粉をフェライトまで還元してしまう事態や、フェライト粒子間の焼結が発生する事態などを回避出来る。従って、当該カーボンやカーボン化合物の添加量が、フェライト磁性粉に対して0.2wt%以上、5wt%以下であれば高特性のボンド磁石を製造できるフェライト磁性粉を得ることが出来る。
【0047】
(5)洗浄工程:
洗浄工程においては、粉砕工程で得られたスラリー状の焼成粉に、溶媒を除いた焼成粉の重量に対して0.1重量倍以上であって、pH5〜8である水を添加した後、濾過脱水する。または、粉砕工程で得られたスラリー状の焼成粉を濾過脱水後、溶媒を除いた焼成粉の重量に対して0.1重量倍以上であってpH5〜8の水を加えて洗浄し、80〜150℃の乾燥機中で乾燥する。
【0048】
尚、上記(4)粉砕工程で説明した、平均粒子径100μm以下の、カーボン、または、カーボン化合物、または、カーボンとカーボン化合物との両方を添加混合する操作を、当該洗浄工程で行っても良い。
【0049】
(6)アニール工程:
アニール工程は、上述した焼成粉の粉砕時または乾燥後の解砕時に、フェライト磁性粉の結晶に発生する結晶歪を除去するためのものである。さらに、当該結晶歪の除去に加えて粉砕工程または洗浄工程でカーボンおよび/またはカーボン化合物を添加していた場合は、当該添加されたカーボンおよび/またはカーボン化合物の還元効果により、微量に残留した六価クロムが還元除去される。アニール温度としては1050℃〜850℃の範囲とすることが好ましい。
【0050】
当該アニール工程の温度を850℃以上にすることで、上記結晶歪みが除去され、製造されるボンド磁石においてHcをより高めることができる。さらに、当該結晶歪の除去に加えて粉砕工程または洗浄工程でカーボンおよび/またはカーボン化合物を添加していた場合は、六価クロムが微量に残留して存在していた場合も還元除去される。一方、当該アニール温度が1050℃以下であれば、フェライト磁性粉の凝集の発生が抑制され、当該フェライト磁性粉の分散性を保つことができる。この結果、当該アニール工程後に本発明に係るフェライト磁性粉を得た。
【0051】
また、上記(4)粉砕工程、(5)洗浄工程において、カーボンおよび/またはカーボン化合物の代わりに、2価のFe、または、2価のFeを含む化合物(例えば、FeO、FeSO、FeCl)、または、2価のFeと2価のFeを含む化合物の両方を、2価のFe量に換算して焼成粉に対して0.2wt%〜2wt%添加することも好ましい構
成である。
当該2価のFeおよび/または2価のFeを含む化合物を添加することによっても、当該2価のFeの還元力により、カーボンおよび/またはカーボン化合物を添加した場合と同様に六価クロムが還元除去され、本発明に係るフェライト磁性粉を得ることが出来る。
【0052】
上記フェライト磁性粉に対し、ジフェニルカルバジド吸光光度法により六価クロムの含有量を測定したところ、検出限界以下であったことから1ppm以下であることが確認された。
そして、上記フェライト磁性粉を用い、通常の方法によりボンド磁石を作製した。当該ボンド磁石は、各種電気・電子製品への用途へ、支障無く使用できることが確認された。
【0053】
(第3の実施形態)
次に、本発明に係るカーボン用のフェライト磁性粉の製造方法について、その製造プロセスのさらに異なる好適な一実施形態を説明する。
【0054】
本発明に係るフェライト磁性粉の製造工程は、(1)配合および混合工程、(2)造粒工程、(3)焼成工程、(4)粉砕工程、(5)洗浄工程、(6)アニール工程の諸工程を有する。
【0055】
以下、工程ごとに説明する。
(1)配合・混合工程:
炭酸ストロンチウムと酸化鉄とを、モル比でSrCO:Fe=1:5.20〜6.00の範囲となるよう評量し、混合して混合物を得る。
このとき酸化鉄として、Feの純度が99.0〜99.9%、Cr元素の含有量が100ppm以上、3000ppm以下のものを用いた。
これは、当該酸化鉄中のCr元素含有量を、100ppm以上とすることで、フェライト磁性粉の分散性を高めることができ、3000ppm以下とすることで、製造されるボンド磁石の磁気特性を低下させることなく、フェライト磁性粉の分散性を高めることができるからである。
【0056】
(2)造粒工程:
得られた混合物へ、5〜15wt%の水を添加して混合し、φ3〜10mmの球状に造粒し造粒粉を得る。
【0057】
(3)焼成工程:
造粒工程で得られた造粒粉を乾燥後、電気炉にて900℃〜1350℃の範囲で10分間〜2時間焼成して焼成粉を得る。ここで、焼成温度が900℃以上あれば、フェライト化反応が進行する。一方、焼成温度が1350℃以下であれば、当該焼成粉において、結晶の粗大成長や粒子間焼結を回避することができる。焼成時間が10分間以上あれば、当該焼成の効果を得ることが出来る。一方、生産性の観点からは焼成時間が2時間以下であることが好ましい。
【0058】
(4)粉砕工程:
粉砕工程においては、焼成工程で得られた焼成粉へ水を分散溶媒として加え、その平均粒子径が2.5μm以下となるまで湿式粉砕を行う。当該湿式粉砕を行うことで、生産性良く微粒子で高特性のフェライト粉を製造することができる。
【0059】
尚、(第1の実施形態(4))粉砕工程で説明した、平均粒子径100μm以下のカーボン、および/または、カーボン化合物を添加混合する操作を、当該粉砕工程で行っても良い。
【0060】
(5)洗浄工程:
洗浄工程においては、粉砕工程で得られたスラリー状の焼成粉に、溶媒を除いた焼成粉重量に対して0.1重量倍以上であって、pH5〜8である水を添加した後、濾過脱水する。または、粉砕工程で得られたスラリー状の焼成粉を濾過脱水後、溶媒を除いた焼成粉重量に対して0.1重量倍以上であってpH5〜8の水を加えて洗浄し、80〜150℃の乾燥機中で乾燥する。
【0061】
尚、(第1の実施形態(4))粉砕工程で説明した、平均粒子径100μm以下のカーボン、および/または、カーボン化合物を添加混合する操作を、当該洗浄工程で行っても良い。
【0062】
(6)アニール工程:
アニール工程では、上述した焼成粉の粉砕時または乾燥後の解砕時に、フェライト磁性粉の結晶に発生する結晶歪が除去される。さらに、当該結晶歪の除去に加えて粉砕工程または洗浄工程でカーボンおよび/またはカーボン化合物を添加していた場合は、六価クロムが微量に残留して存在していた場合も還元除去される。
アニール温度としては1050℃〜850℃の範囲とすることが好ましい。
当該アニール工程の温度を850℃以上にすることにより、上記結晶歪みが除去され、製造されるボンド磁石においてHcをより高めることができるからである。一方、当該アニール温度が1050℃以下であれば、フェライト磁性粉の凝集の発生を抑制し、当該フェライト磁性粉の分散性を保つことができるからである。
【0063】
次に、前記アニール工程後のフェライト磁性粉を、密閉可能で攪拌機能のついた恒温槽内に入れ、当該槽内をHガス、COガス、NOガス、HC(ハイドロカーボン)ガスのいずれか1種以上を含む還元ガスで置換し、80℃〜300℃の温度範囲とすることで、六価クロムを還元処理する。
ここで、還元ガスの濃度は0.01%以上が望ましい。還元ガスの濃度が0.01%以上あれば、残留する六価クロムを還元除去する効果が高く、還元処理時間を12時間以下とすることが出来る。
さらに、処理温度が80℃以上であれば、残留する六価クロムを還元する効果が発揮され、300℃以下ならばフェライトを還元して、製造されるボンド磁石においてフェライトの磁気特性を低下させてしまうことを回避できる。
そして、当該アニール工程後に本発明に係るフェライト磁性粉を得た。
【0064】
また、上記(4)粉砕工程、(5)洗浄工程において、カーボンおよび/またはカーボン化合物の代わりに、2価のFeおよび/または2価のFeを含む化合物を、2価のFe量に換算して焼成粉に対して0.2wt%〜2wt%添加することも好ましい構成である。当該2価のFeおよび/または2価のFeを含む化合物を添加することによっても、当該2価のFeの還元力により、カーボンおよび/またはカーボン化合物を添加した場合と同様に六価クロムが還元除去され、本発明に係るフェライト磁性粉を得ることが出来る。
【0065】
上記フェライト磁性粉に対し、ジフェニルカルバジド吸光光度法により六価クロムの含有量を測定したところ、検出限界であったことから1ppm以下であることが確認された。
そして、上記フェライト磁性粉の流動性を、後述するメルトフローレート(MFR)の測定方法に拠って求めたところ、本発明に係るフェライト磁性粉は流動性に優れ、樹脂やゴムと、容易且つ、均一に混合することが判明した。当該混合物を圧縮成型することで本発明に係るボンド磁石を製造することが出来た。当該ボンド磁石は、各種電気・電子製品への用途へ、支障無く使用できることが確認された。
当該本発明に係る、フェライト磁性粉の圧粉体での特性は残留磁束密度Brが1730Gauss以上、固有保磁力iHcが2270Oe以上の値を有しており、さらに磁場配向させた時のボンド磁石の磁気特性はBHmaxが、1.8MGOe以上を示すことから、焼結等方性マグネットに匹敵するものであった。
【実施例】
【0066】
以下、実施例を参照しながら本発明をより具体的に説明するが、本発明は、当該実施例の範囲に限られる訳ではない。
【0067】
(実施例1)
Cr元素を400ppm含有する酸化鉄と、炭酸ストロンチウムとを、モル比でSrCO:Fe=1:5.75となるよう評量する。そして、当該秤量物をサンプルミルで混合し混合粉とする。次に、当該混合粉に10Wt%の水を加えて混練し、当該混練物を造粒し平均粒子径8mmの造粒粉として乾燥した。当該乾燥した造粒粉を電気炉内に設置し、大気雰囲気中にて1200℃、2時間焼成して焼成物を得た。当該焼成物を、まずサンプルミルで粗砕し、平均粒径が8.5μmの焼成粉とした。
【0068】
次に、当該焼成粉を、容積10Lのアトライターを用いて120分間湿式粉砕した。
まず、当該焼成粉を1.3kg、濃度35%の塩酸を15g、φ8mmのスチールボールを10kg秤量した。次に、アトライターを回転速度200rpmで動作させながら、前記スチールボール10kg、pH6.7の水2L、前記塩酸15g、前記焼成粉1.3kgを、この順で当該アトライターの中に投入し、スラリーを得た。このとき、当該スラリーを分取して静置し、上澄み液のpHを計測したところpHは1.25であった。一方、アトライターは、120分間の動作を継続し湿式粉砕を行った。そして、当該湿式粉砕途中の60分間後と、終了の120分間後において、再度スラリーを分取して静置し、上澄み液のpHを計測したところ、60分間後のpHは5.29、120分間後のpHは7.7と、湿式粉砕時間の経過に伴い、pHは次第に上昇していた。しかし、当該湿式粉砕中におけるスラリーのpHは、8.5以下に保たれていた。
【0069】
湿式粉砕が完了したら、濾紙と漏斗を用いて得られたスラリーを脱水濾過した後、pH6.5の水4Lでデカンテーションして洗浄した。当該洗浄され濾過して得た焼成粉を120℃の乾燥機中で乾燥し、平均粒子径1.47μmのストロンチウムフェライト粉を得た。
【0070】
次に、当該ストロンチウムフェライト粉を電気炉内に設置し、大気雰囲気下にて980℃で20分間アニールし、実施例1に係るボンド磁石用フェライト磁性粉を製造した。
【0071】
製造された実施例1に係るボンド磁石用フェライト磁性粉の粉体特性を測定したところ、空気透過法で計測された比表面積径は1.65μm、圧縮密度は、3.29g/cmであった。尚、当該比表面積径、等の測定方法の態様については、後述する。
また、メルトフローレート(MFR)は、71.5g/10minと高い流動性を示していた。
【0072】
次に、実施例1に係るボンド磁石用フェライト磁性粉を用いて、後述する態様に従って、実施例1に係る圧粉体を製造した。
【0073】
実施例1に係る圧粉体の磁気特性を測定したところ、Brは1870Gauss(以下、単にGと記載する場合がある。)、iHcは2570Oeと高い値を示していた。
【0074】
次に、実施例1に係るボンド磁石用フェライト磁性粉を後述する「5.射出成形体の磁
気特性の測定」により、磁気特性の測定を行ったところ、Brは2751G、iHcは2444Oe、BHmaxは1.84MGOe、SQxは0.972であった。
【0075】
以上のことから、実施例1に係るボンド磁石用フェライト磁性粉の流動性が良い為、実施例1に係る射出成形体における配向性の指標の一つであるSQx値も高く、さらには、高い磁気特性を有していることが判明した。
また、実施例1に係るボンド磁石用フェライト磁性粉の六価クロム量をジフェニルカルバジド吸光光度法(抽出の方法は、低質調査法で3%溶質法により実施した。)により測定したところ、検出限界以下であったことから、1ppm以下であることが判明した。
以上、実施例1に係るボンド磁石用フェライト磁性粉および射出成形体について測定した、粉体特性、流動特性、および磁気特性の測定値を表1に記載した。
【0076】
ここで実施例1に係るボンド磁石用フェライト磁性粉等の、比表面積等の測定方法の具体的態様について説明する。
【0077】
1.空気透過法による比表面積径の測定
測定装置は、島津製作所(株)製、粉体比表面積測定装置SS−100を用いた。
当該粉体比表面積測定装置に付属のプレス機を用い、ボンド磁石用フェライト粉試料を、断面積2cm、厚さ1cmにプレス成形する。一方、当該粉体比表面積測定装置の試料筒にワセリンを少量塗り、当該プレス成形されたボンド磁石用フェライト粉試料をセットする。
そして、空気が、当該プレス成形されたボンド磁石用フェライト粉試料内を2cm透過する時間tを計測し、この計測時間tから下記の換算式を用いて、ボンド磁石用フェライト粉試料の比表面積を算出した。
Sw=(14/ρ)・((ΔP・A・t・ε)/(η・L・Q・(1−ε)))0.5
但し、Swは比表面積である。ρはプレス成形されたボンド磁石用フェライト粉試料の密度であり本実施例においては5.1g/cmである。ΔPは圧力差であり本実施例においては40g/cmである。Aは試料層の断面積であり本実施例においては2cmである。ηは水の粘性係数であり180×10−6g/cmである。Lは試料の厚さであり本実施例においては1cmである。Wは試料の重量であり本実施例においては5gである。Qは空気の透過量であり本実施例においては2cmである。tは空気の透過所要時間である。εは試料層の空隙率(1−W/(ρ・A・L))である。
【0078】
次に、ボンド磁石用フェライト粉試料の粒子形状は立方体、且つ、均一であると近似して、比表面積径:Da=6/(ρ・Sw)より、比表面積径を算出した。
【0079】
2.圧縮密度の測定
圧縮密度は、ボンド磁石用フェライト粉試料を1ton/cmで加圧成形した後の密度値を測定し、当該測定値を圧縮密度の値とした。
【0080】
3.メルトフローレート(MFR)の測定
(1)ボンド磁石用フェライト磁性粉を3ロット製造し、当該各ロットからボンド磁石用フェライト磁性粉を採取して3000gとした。一方、シランカップリング剤(日本ユニカ株式会社製、商品名A−1122)30g、水15g、メタノール30gを準備した。これらを、ハイスピードミキサー(深江工業株式会社製、FS−GC−5JD)内に装填し、周速8m/sec、処理時間5分間で混合し、混合物を得た。
(2)得られた混合物を100℃×90分間乾燥し、乾燥粉を得た。
(3)得られた乾燥粉3030gと、6−ナイロン(宇部興産株式会社製、P−1010)410gとをハイスピードミキサー(深江工業株式会社製、FS−GC−5JD)内に
装填し、周速8m/sec、処理時間5分間で混合し、混合物を得た。
(4)得られた混合物を230℃で混練し、平均径がほぼ2mmのペレットを得た。尚、当該混練には、KCK株式会社製の連続混練押し出し式装置(KCK70−22VEX(6))を用いた。
(5)得られたペレットに270℃で荷重10kgを掛け、10分間の内に流動性評価装置から押し出された混練物重量を測定し、この値をメルトフローレート(MFR)とした。尚、測定に用いた流動性評価装置は、東洋精機株式会社製のC−5059D2を用いた。この装置の構造はJIS−K7210に準拠したものである。
【0081】
4.圧粉体の磁気特性の測定
まずボンド磁石用フェライト磁性粉から圧粉体を製造した。
・ ボンド磁石用フェライト磁性粉7gを秤量し、ポリエステル樹脂0.4ccを加え混合した。
・ 秤量したボンド磁石用フェライト磁性粉を、φ15mmの円柱型の金型に充填し、圧力8MPaで20秒間加圧し圧粉体とした。
・ 得られた圧粉体を金型から抜き取り、乾燥機に入れ、150℃で30秒間かけて乾燥させる。そして室温である25℃に冷却後、当該円柱状の圧粉体のBr、iHc、を、BHトレーサー(東英工業製、BHトレーサー)で測定した。
【0082】
5.射出成形体の磁気特性の測定
射出成形体の磁気特性は、以下の様に測定した。
(1)上記「3.メルトフローレート(MFR)の測定」で説明した(1)〜(4)と同様にして、平均径がほぼ2mmのペレットを得た。
(2)得られたペレットを、射出成形機を用い10KOeの磁場中にて、温度290℃、成形圧力8.5N/mmで射出成形し、直径15mm×高さ8mmの円柱状の成形品を得た。尚、当該円柱状の成形品において、磁場の配向方向は円柱の中心軸に沿う方向とした。
(3)得られた円柱状の成形品のBr、iHc、BHmax、SQx(Br/4πI)を、BHトレーサー(東英工業製、BHトレーサー)で測定した。
【0083】
(実施例2)
実施例1と同様の原料を用い同様の操作をおこなって焼成粉を製造した。
製造された焼成粉に対し、以下のように湿式粉砕工程をおこなって実施例2に係るストロンチウムフェライト粉を製造した。
【0084】
まず、焼成粉を1.3kg、φ8mmのスチールボールを10kg秤量する。次に、容積10Lのアトライターを回転速度200rpmで動作させながら、前記スチールボール10kgとpH6.7の水2Lを投入した。さらに、直径φ6mmのスチールパイプをこの水溶液中に差し込み、1mL/minのスピードで20分間炭酸ガスを吹き込んだ。この水溶液を静置してpH計測したところpH4.80であった。次に、アトライターを回転速度200rpmで動作させながら、前記焼成粉1.3kgをこの水溶液中に投入し、スラリーを得た。このスラリーを分取して静置して上澄み液のpHを計測したところpHは6.64であった。
【0085】
次に、炭酸ガスの吹き込みを継続しながら、アトライターを120分間回転させて湿式粉砕を行った。当該湿式粉砕途中の60分間後と、終了の120分間後において、再度スラリーを分取して静置し、上澄み液のpHを計測したところ、60分後のpHは5.80、120分後のpHは5.7と、湿式粉砕を行っている間中スラリーのpHは8.5よりも低く保たれていた。
【0086】
湿式粉砕が完了したら、実施例1と同様にして、スラリーを脱水濾過した後、デカンテーションを行い、当該洗浄され濾過して得た焼成粉を乾燥し、平均粒子径1.42μmのストロンチウムフェライト粉を得た。
【0087】
次に、当該ストロンチウムフェライト粉を電気炉内に設置し、大気雰囲気下にて980℃で20分間アニールし、実施例2に係るボンド磁石用フェライト磁性粉を製造した。
【0088】
当該実施例2に係るボンド磁石用フェライト磁性粉の粉体特性を、実施例1と同様に測定したところ、空気透過法で計測された比表面積径は1.71μm、圧縮密度は3.31g/cmであった。
また、メルトフローレート(MFR)は、72.8g/10minと高い流動性を示していた。
【0089】
実施例2に係るボンド磁石用フェライト磁性粉から、実施例1と同様にして圧粉体を製造した。そして、当該圧粉体の磁気特性を測定したところ、Brは1870Gauss(以下Gとする)、iHcは2560Oeと高い値を示していた。
【0090】
さらに、実施例2に係るボンド磁石用フェライト磁性粉から、実施例1と同様にして実施例2に係る混練物を製造した。
当該実施例2に係る混練物を、実施例1と同様にして磁場中で射出成形した射出成形体の磁気特性の測定を行ったところ、Brは2757G、iHcは2440Oe、BHmaxは1.85MGOe、SQxは0.971であった。
【0091】
以上のことから、実施例2に係るボンド磁石用フェライト磁性粉の流動性が良い為、実施例2に係る射出成形体における配向性の指標の一つであるSQx値も高く、さらには、高い磁気特性を有していることが判明した。
【0092】
また、実施例2に係るボンド磁石用フェライト磁性粉の六価クロム量を実施例1と同様に測定したところ、検出限界以下であったことから、1ppm以下であることが判明した。
【0093】
以上、実施例2に係るボンド磁石用フェライト磁性粉および射出成形体について測定した、粉体特性、流動特性、および磁気特性の測定値を表1に記載した。
【0094】
(実施例3)
実施例1と同様の原料を用い同様の操作をおこなって焼成粉を製造した。
製造された焼成粉に対し湿式粉砕工程において、塩酸と、さらに当該焼成粉の0.5wt%に相当するカーボンと、を添加した以外は、実施例1と同様の操作をおこなってストロンチウムフェライト粉を製造した。
【0095】
具体的には、焼成粉を1.3kg、濃度35%の塩酸を12g、平均粒径3μmのカーボンを0.65g、φ8mmのスチールボールを10kg秤量する。次に、容積10Lのアトライターを回転速度200rpmで動作させながら、スチールボール10kgと、pH6.7の水2Lと、塩酸12g、焼成粉1.3kg、平均粒径3μmのカーボンを0.65gとを、この順に投入し混合してスラリーを得た。
【0096】
このとき、当該スラリーを分取して静置し、上澄み液のpHを計測したところpHは1.32であった。一方、アトライターは、120分間の動作を継続し湿式粉砕を行った。そして、当該湿式粉砕途中の60分間後と、終了の120分間後において、再度スラリーを分取して静置し、上澄み液のpHを計測したところ、60分間後のpHは5.81、1
20分間後のpHは8.2と、湿式粉砕時間の経過に伴い、pHは次第に上昇していた。しかし、当該湿式粉砕中におけるスラリーのpHは、8.5以下に保たれていた。
【0097】
湿式粉砕が完了したら、実施例1と同様にして、スラリーを脱水濾過した後、デカンテーションを行い、当該洗浄され濾過して得た焼成粉を乾燥し、平均粒子径1.50μmのストロンチウムフェライト粉を得た。
【0098】
次に、当該ストロンチウムフェライト粉を電気炉内に設置し、大気雰囲気下にて980℃で20分間アニールし、実施例3に係るボンド磁石用フェライト磁性粉を製造した。
【0099】
当該実施例3に係るボンド磁石用フェライト磁性粉の粉体特性を、実施例1と同様に測定したところ、空気透過法で計測された比表面積径は1.95μm、圧縮密度は3.43g/cmであった。
また、メルトフローレート(MFR)は、77.8g/10minと高い流動性を示していた。
【0100】
実施例3に係るボンド磁石用フェライト磁性粉から、実施例1と同様にして圧粉体を製造した。そして、当該圧粉体の磁気特性を測定したところ、Brは1880G、iHcは2570Oeと高い値を示していた。
【0101】
さらに、実施例3に係るボンド磁石用フェライト磁性粉から、実施例1と同様にして実施例3に係る混練物を製造した。
当該実施例3に係る混練物を、実施例1と同様にして磁場中で射出成形した射出成形体の磁気特性の測定を行ったところ、Brは2780G、iHcは2400Oe、BHmaxは1.84MGOe、SQxは0.980であった。
【0102】
以上のことから、実施例3に係るボンド磁石用フェライト磁性粉の流動性が良い為、実施例3に係る射出成形体における配向性の指標の一つであるSQx値も高く、さらには、高い磁気特性を有していることが判明した。
【0103】
また、実施例3に係るボンド磁石用フェライト磁性粉の六価クロム量を実施例1と同様に測定したところ、検出限界以下であったことから、1ppm以下であることが判明した。
【0104】
以上、実施例3に係るボンド磁石用フェライト磁性粉および射出成形体について測定した、粉体特性、流動特性、および磁気特性の測定値を表1に記載した。
【0105】
(実施例4)
実施例1と同様の原料を用い同様の操作をおこなって焼成粉を製造した。
製造された焼成粉を、湿式粉砕工程において塩酸を添加しない以外は、当該焼成粉から実施例1と同様に操作して、ストロンチウムフェライト粉を製造した。
【0106】
具体的には、焼成粉を1.3kg、濃度35%の塩酸を12g、φ8mmのスチールボールを10kg秤量する。次に、容積10Lのアトライターを回転速度200rpmで動作させながら、スチールボール10kgと、pH6.7の水2Lと、塩酸12g、焼成粉1.3kgとを、この順に投入し混合してスラリーを得た。
このとき、当該スラリーを分取して静置し、上澄み液のpHを計測したところpHは1.38であった。一方、アトライターは、120分間の動作を継続し湿式粉砕を行った。そして、当該湿式粉砕途中の60分間後と、終了の120分間後において、再度スラリーを分取して静置し、上澄み液のpHを計測したところ、60分間後のpHは5.90、1
20分間後のpHは8.4と、湿式粉砕時間の経過に伴い、pHは次第に上昇していた。しかし、当該湿式粉砕中におけるスラリーのpHは、8.5以下に保たれていた。
【0107】
湿式粉砕が完了したら、実施例1と同様にして、スラリーを脱水濾過した後、デカンテーションを行い、当該洗浄され濾過して得た焼成粉を乾燥し、平均粒子径1.50μmのストロンチウムフェライト粉を得た。
【0108】
次に、当該ストロンチウムフェライト粉を電気炉内に設置し、大気雰囲気下にて980℃で20分間アニールした。
そして、当該アニールされたストロンチウムフェライト粉を、攪拌機能を有する密閉された恒温槽内に設置し、当該恒温槽内に1L/分の流量で窒素と水素の混合ガス(但し、水素ガス濃度0.1%)を流し、当該恒温槽内の雰囲気を混合ガスで置換した。そして、当該置換完了後、当該アニールされたストロンチウムフェライト粉を攪拌しながら、当該恒温槽内の雰囲気温度を150℃まで昇温して2h保持した後、室温まで降温し、実施例4に係るボンド磁石用フェライト磁性粉を製造した。
【0109】
当該実施例4に係るボンド磁石用フェライト磁性粉の粉体特性を、実施例1と同様に測定したところ、空気透過法で計測された比表面積径は1.90μm、圧縮密度は3.41g/cmであった。
また、メルトフローレート(MFR)は、75.5g/10minと高い流動性を示していた。
【0110】
実施例4に係るボンド磁石用フェライト磁性粉から、実施例1と同様にして圧粉体を製造した。そして、当該圧粉体の磁気特性を測定したところ、Brは1880G、iHcは2550Oeと高い値を示していた。
【0111】
さらに、実施例4に係るボンド磁石用フェライト磁性粉から、実施例1と同様にして実施例4に係る混練物を製造した。
当該実施例4に係る混練物を、実施例1と同様にして磁場中で射出成形した射出成形体の磁気特性の測定を行ったところ、Brは2760G、iHcは2433Oe、BHmaxは1.86MGOe、SQxは0.978であった。
【0112】
以上のことから、実施例4に係るボンド磁石用フェライト磁性粉の流動性が良い為、実施例4に係る射出成形体における配向性の指標の一つであるSQx値も高く、さらには、高い磁気特性を有していることが判明した。
【0113】
また、実施例4に係るボンド磁石用フェライト磁性粉の六価クロム量を実施例1と同様に測定したところ、検出限界以下であったことから、1ppm以下であることが判明した。
【0114】
以上、実施例4に係るボンド磁石用フェライト磁性粉および射出成形体について測定した、粉体特性、流動特性、および磁気特性の測定値を表1に記載した。
【0115】
(比較例1)
実施例1と同様の原料を用い同様の操作をおこなって焼成粉を製造した。
製造された焼成粉を、湿式粉砕工程において塩酸を添加しない以外は、当該焼成粉から実施例1と同様にストロンチウムフェライト粉を製造した。
【0116】
具体的には、焼成粉を1.3kg、φ8mmのスチールボールを10kg秤量する。次に、容積10Lのアトライターを回転速度200rpmで動作させながら、スチールボー
ル10kgとpH6.7の水2L、焼成粉1.3kgをこの順に投入し、スラリーを得た。
このとき、当該スラリーを分取して静置し、上澄み液のpHを計測したところpHは9.95であった。一方、アトライターは、120分間の動作を継続し湿式粉砕を行った。そして、当該湿式粉砕途中の60分間後と、終了の120分間後において、再度スラリーを分取して静置し、上澄み液のpHを計測したところ、60分間後のpHは11.1、120分間後のpHは11.9と、湿式粉砕時間の経過に伴い、pHは次第に上昇していた。そして、当該湿式粉砕中におけるスラリーのpHは、Crが六価クロムに変化すると考えられるpH8.5より高い値となっていた。
【0117】
湿式粉砕が完了したら、実施例1と同様にして、スラリーを脱水濾過した後、デカンテーションを行い、当該洗浄され濾過して得た焼成粉を乾燥し、平均粒子径1.50μmのストロンチウムフェライト粉を得た。
【0118】
次に、当該ストロンチウムフェライト粉を電気炉内に設置し、大気雰囲気下にて980℃で20分間アニールし、比較例1に係るボンド磁石用フェライト磁性粉を製造した。
【0119】
当該比較例1に係るボンド磁石用フェライト磁性粉の粉体特性を、実施例1と同様に測定したところ、空気透過法で計測された比表面積径は1.80μm、圧縮密度は3.39g/cmであった。
また、メルトフローレート(MFR)は、72.3g/10minと高い流動性を示していた。
【0120】
比較例1に係るボンド磁石用フェライト磁性粉から、実施例1と同様にして圧粉体を製造した。そして、当該圧粉体の磁気特性を測定したところ、Brは1870G、iHcは2560Oeと高い値を示していた。
【0121】
さらに、比較例1に係るボンド磁石用フェライト磁性粉から、実施例1と同様にして比較例1に係る混練物を製造した。
当該比較例1に係る混練物を、実施例1と同様にして磁場中で射出成形した射出成形体の磁気特性の測定を行ったところ、Brは2753G、iHcは2442Oe、BHmaxは1.84MGOe、SQxは0.972であった。
【0122】
以上のことから、比較例1に係るボンド磁石用フェライト磁性粉の流動性が良い為、比較例1に係る射出成形体における配向性の指標の一つであるSQx値も高く、さらには、高い磁気特性を有していることが判明した。
【0123】
しかし、比較例1に係るボンド磁石用フェライト磁性粉の六価クロム量を実施例1と同様に測定したところ、49ppmであることが判明した。
【0124】
以上、比較例1に係るボンド磁石用フェライト磁性粉および射出成形体について測定した、粉体特性、流動特性、および磁気特性の測定値を表1に記載した。
【0125】
(比較例2)
Cr元素を5ppm含有する酸化鉄を原料として用いた以外は、実施例1と同様の操作をおこなって焼成粉を製造した。
製造された焼成粉を、湿式粉砕工程において塩酸を添加しない以外は、当該焼成粉から実施例1と同様にストロンチウムフェライト粉を製造した。
【0126】
具体的には、焼成粉を1.3kg、φ8mmのスチールボールを10kg秤量する。次
に、容積10Lのアトライターを回転速度200rpmで動作させながら、スチールボール10kgと、pH6.7の水2Lと、焼成粉1.3kgとをこの順に投入し、スラリーを得た。当該スラリーを分取して静置し、上澄み液のpHを計測したところpHは9.95であった。一方、アトライターは、120分間の動作を継続し湿式粉砕を行った。
そして、当該湿式粉砕開始から60分間後と、120分間後の当該湿式粉砕終了において、再度スラリーを分取して静置し、上澄み液のpHを計測した。すると、60分間後のpHは11.1、120分間後のpHは11.9であり、湿式粉砕時間の経過に伴い、pHは次第に上昇していた。そして、当該湿式粉砕中におけるスラリーのpHは、Crが六価クロムに変化すると考えられるpH8.5より高い値となっていた。
【0127】
湿式粉砕が完了したら、実施例1と同様にして、スラリーを脱水濾過した後、デカンテーションを行い、当該洗浄され濾過して得た焼成粉を乾燥し、平均粒子径1.45μmのストロンチウムフェライト粉を得た。
【0128】
次に、当該ストロンチウムフェライト粉を電気炉内に設置し、大気雰囲気下にて980℃で20分間アニールし、比較例2に係るボンド磁石用フェライト磁性粉を製造した。
【0129】
当該比較例2に係るボンド磁石用フェライト磁性粉の粉体特性を、実施例1と同様に測定したところ、空気透過法で計測された比表面積径は1.74μm、圧縮密度は3.37g/cmであった。
また、メルトフローレート(MFR)は、58.9g/10minと流動性が低かった。
【0130】
比較例2に係るボンド磁石用フェライト磁性粉から、実施例1と同様にして圧粉体を製造した。そして、当該圧粉体の磁気特性を測定したところ、Brは1850G、iHcは2300Oeであった。
【0131】
さらに、比較例2に係るボンド磁石用フェライト磁性粉から、実施例1と同様にして比較例2に係る混練物を製造した。
当該比較例2に係る混練物を、実施例1と同様にして磁場中で射出成形した射出成形体の磁気特性の測定を行ったところ、Brは2725G、iHcは24630Oe、BHmaxは1.77MGOe、SQxは0.964であった。
【0132】
以上のことから、比較例2に係るボンド磁石用フェライト磁性粉は流動性が悪く、比較例2に係る射出成形体における配向性の指標の一つであるSQx値が低下し、磁気特性が劣ることが判明した。
さらに、比較例2に係るボンド磁石用フェライト磁性粉の六価クロム量を、実施例1と同様に測定したところ、検出限界以下であったことから、1ppm以下であることが判明した。
以上、比較例2に係るボンド磁石用フェライト磁性粉および射出成形体について測定した、粉体特性、流動特性、および磁気特性の測定値を表1に記載した。
【0133】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0134】
【図1】本発明に係るボンド磁石用のフェライト磁性粉の製造例を示すフロー図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄とアルカリ土類金属とを含み、湿式洗浄および/または湿式粉砕を経たボンド磁石用のフェライト磁性粉であって、
100ppm以上、3000ppm以下のCr元素を含み、且つ、六価クロムが検出されないことを特徴とするフェライト磁性粉。
【請求項2】
鉄とアルカリ土類金属とを含み、湿式洗浄および/または湿式粉砕を経たボンド磁石用のフェライト磁性粉であって、
100ppm以上、3000ppm以下のCr元素を含み、且つ、六価クロムの含有量が1ppm以下であることを特徴とするフェライト磁性粉。
【請求項3】
請求項1または2に記載のフェライト磁性粉であって、
当該フェライト磁性粉7gにポリエステル樹脂0.4cc加え、φ15mmの型に充填し8MPaの圧力かけて作製した圧粉体の磁気特性において、
残留磁束密度Brが1730Gauss以上、固有保磁力iHcが2270Oe以上であることを特徴とするフェライト磁性粉。
【請求項4】
鉄とアルカリ土類金属とを含む原料粉からボンド磁石用のフェライト磁性粉を製造するフェライト磁性粉の製造方法であって、
上記原料粉を焼成して焼成粉を得る工程と、上記焼成粉を湿式洗浄する工程と、上記湿式洗浄された焼成粉をアニールする工程とを有し、
上記湿式洗浄する工程において、洗浄に用いる分散溶媒のpHを8.5以下として洗浄を行うことを特徴とするボンド磁石用フェライト磁性粉の製造方法。
【請求項5】
鉄とアルカリ土類金属とを含む原料粉からボンド磁石用のフェライト磁性粉を製造するフェライト磁性粉製造方法であって、
上記原料粉を焼成して焼成粉を得る工程と、上記焼成粉を粉砕する工程と、上記粉砕された焼成粉を湿式洗浄する工程と、上記湿式洗浄された焼成粉をアニールする工程とを有し、
上記湿式洗浄工程において、洗浄に用いる分散溶媒のpHを8.5以下として洗浄を行うことを特徴とするボンド磁石用フェライト磁性粉の製造方法。
【請求項6】
鉄とアルカリ土類金属とを含む原料粉からボンド磁石用のフェライト磁性粉を製造するフェライト磁性粉製造方法であって、
上記原料粉を焼成して焼成粉を得る工程と、焼成された上記焼成粉を湿式粉砕する工程と、上記湿式粉砕された焼成粉をアニールする工程とを有し、
上記湿式粉砕工程において、湿式粉砕に用いる分散溶媒のpHを8.5以下として湿式粉砕を行うことを特徴とするボンド磁石用フェライト磁性粉の製造方法。
【請求項7】
請求項4から6のいずれかに記載のフェライト磁性粉の製造方法であって、
焼成粉を得る工程より後で、アニールする工程より前に、上記焼成粉へ、カーボン、および/または、カーボンを必須とし、H、O、N、Clのいずれか1種以上の元素とを含む沸点200℃以上の化合物を添加することを特徴とするボンド磁石用フェライト磁性粉の製造方法。
【請求項8】
請求項4から6のいずれかに記載のフェライト磁性粉の製造方法であって、
焼成粉を得る工程より後で、アニールする工程より前に、上記焼成粉へ、2価のFeおよび/または2価のFeを含む化合物を添加することを特徴とするボンド磁石用フェライト磁性粉の製造方法。
【請求項9】
請求項4から6のいずれかに記載のフェライト磁性粉の製造方法であって、
湿式粉砕および/または湿式洗浄された焼成粉を、Hガス、COガス、NOガス、HC(ハイドロカーボン)ガスのいずれか1種以上を含み、80℃〜300℃の温度範囲にあるガス雰囲気中で還元処理することを特徴とするボンド磁石用フェライト磁性粉の製造方法。
【請求項10】
請求項1から3のいずれかに記載のボンド磁石用フェライト磁性粉を含むことを特徴とするボンド磁石。

【図1】
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【公開番号】特開2007−294871(P2007−294871A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−31074(P2007−31074)
【出願日】平成19年2月9日(2007.2.9)
【出願人】(506334182)DOWAエレクトロニクス株式会社 (336)
【出願人】(595156333)DOWAエフテック株式会社 (17)
【Fターム(参考)】