説明

ボールねじ装置

【課題】従来のナットに代えてボールガイドを使用し、このボールガイドおけるボールガイド溝の成形加工を簡便に行うことができ、しかも簡単な構成にして組立て作業も容易化することができると共に、製造コストの低減を実現することができるボールねじ装置を提供する。
【解決手段】ボールねじ装置におけるボールガイド10として、ねじ軸40の軸方向の垂直面に対しねじ軸のリード角θと対応する角度で傾斜する接合面(12A、12B)を形成した相互に接合する一対のボールガイド片(13L、13R)からなるボールガイド部材(12)を有し、前記一対のボールガイド片の接合面において前記複数のボール(30)を転動自在に収納配置し前記ねじ軸のねじ溝42に対し部分的に収容すると共に循環させるボールガイド溝(20)をそれぞれ対称的に刻設してなる前記ボールガイド部材の複数組を組合せて構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外周に螺旋状のねじ溝を形成したねじ軸と、前記ねじ溝の一部において転動自在に収容されると共にねじ軸の円周方向に循環移動させるように多数のボールを案内移動させるボールガイド溝を形成したボールガイドとを備えてなるボールねじ装置からなり、ボールガイド溝をボール循環溝として簡便に成形することができると共に、ボールガイドとねじ軸との螺合を容易かつ適正に行うことができ、しかもボールガイド溝に対するボールの適合性も容易化でき、低コスト化と汎用性を高めることができるボールねじ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来において、ボールねじからなる直動装置としてのボールねじ装置は、一般的に、外周に螺旋状のボール転送溝を形成したねじ軸と、前記ボール転送溝の一部において転動自在に収容されると共にねじ軸の円周方向に循環移動させるように多数のボールを案内移動させるボール溝を形成したナットとを備えた構成からなる。
【0003】
しかるに、この種のボールねじ装置においては、ボールを案内移動させるナットに形成するボール溝の両端部を連結して、前記ボール溝を移動する複数のボールを循環させるために、種々の構成からなるボール循環路が提案され、実用化されている。
る循環路を設けた構成からなるボールねじ装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
一般に、ボールねじ装置におけるボール溝としてのボール循環路は、ナット側に設けられるものであり、循環路部材として特に簡便な構成とするために、種々の形状構成からなる駒を使用することが提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
また、前記ボール循環路をねじ軸側に設けるものとして、ねじ軸を中空に構成しその内周面にリング部材を圧入・内嵌し、その一端部に相手部品取付け部を設けて、ねじ軸とリング部材都でねじ軸部材を構成し、前記ねじ軸のボール溝の両端部にそれぞれ循環孔を設け、これら循環孔の位置にはボールを循環孔へ案内するボールガイド手段としてのボールピックアップガイドをビョウ留めにより取付け、前記リング部材の外周面に前記両循環孔を半周分で連結する循環路を設けた構成からなるボールねじ装置が提案されている(特許文献2参照)。
【0006】
さらに、外周面に螺旋状のねじ溝が形成されたねじ軸と、このねじ軸に外嵌され、内周面に螺旋状のねじ溝が形成されたナットと、対応する両ねじ溝に形成される転動路に収容された多数のボールを備えたボールねじの組立装置であって、前記ボールを前記ナットのねじ溝に供給するボール供給孔を有し、前記ナットに挿嵌されるボールガイドと、前記ナットの一側面に設けられた略D字状の凸部に嵌合される略D字状の凹部が形成されたナット台座を備えた構成からなるボールねじの組立装置が提案されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−120826号公報
【特許文献2】特開2004−225770号公報
【特許文献3】特開2008−296324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述した特許文献1において提案されているボールねじにおいては、ボールを案内移動させるナットに形成するボール溝の両端部を連結して、前記ボール溝を移動する複数のボールを循環させるために、閉ループ起動を形成するチャンネルを有するボールガイドを設けるものであって、前記ナットにおけるボール溝の形成加工に際しては、高価な専用機を使用して、ねじ軸に形成される螺旋溝と適正に螺合するように寸法設定された多数のボ−ルが有効に収納配置されるように、精密な加工を必要とする。このため、この種のボールねじの組立て加工を容易化して、その製造コストを低減することは困難である。
【0009】
また、前述した特許文献2において提案されているボールねじ装置においては、ボール転動溝を形成したねじ軸と、ボール循環路を形成した循環路部材と別体として構成しているため、ボール転動溝やボール循環路の加工がし易く、組立て易いボールねじ装置が得られるとされている。しかしながら、この種のボールねじ装置においても、前述したボールねじの加工と同様に、ナットにおけるボール溝の形成加工に際しては、高価な専用機を使ボール溝の形成加工用して精密加工を必要とすると共に、その組立て作業も煩雑となり、依然としてその製造コストを低減することは困難である。
【0010】
さらに、前述した特許文献3において提案されているボールねじ装置においては、ボールをナットのねじ溝に供給するボール供給孔を有し、前記ナットに挿嵌されるボールガイドと、前記ナットの一側面に設けられた略D字状の凸部に嵌合される略D字状の凹部が形成されたナット台座を備えた構成とすることにより、ナットのナット台座に対する位置合わせが正確にでき、ボールねじの耐久性を向上できるボールねじの組立てを可能とする者である。しかしながら、この種のボールねじにおいても、依然として前述したボールねじの加工と同様に、ナットにおけるボール溝の形成加工に際しては、高価な専用機を使用して精密加工を必要とするものであるから、その組立て作業の容易化と共に、製造コストを低減することも困難である。
【0011】
そこで、本発明者は、前述した従来のボールねじ装置の問題点を解決すべく鋭意研究並びに試作を重ねた結果、外周面に螺旋状のねじ溝を形成したねじ軸と、このねじ軸と螺合するように内周面に螺旋状のボール溝を形成したナットと、前記ボール溝内に配置され前記ねじ軸のねじ溝に対し部分的に収容される複数のボールとを備えたボールねじ装置において、前記従来のナットに代えて、ねじ軸の軸方向の垂直面に対しねじ軸のリード角と対応する角度で傾斜する接合面を形成した相互に接合する一対のボールガイド片からなるボールガイド部材を設け、前記一対のボールガイド片の接合面において前記複数のボールを転動自在に収納配置し、前記ねじ軸のねじ溝に対し部分的に収容すると共に循環させるボールガイド溝をそれぞれ対称的に刻設し、このように構成した前記ボールガイド部材の複数組をそれぞれ前記ねじ軸の軸方向に同軸的に組合せて所要のボールガイドケーシング内に収納固定したボールガイドとして構成することにより、このボールガイドにおけるボールガイド溝の成形加工を高価な専用機を必要とすることなく簡便に行うことができ、しかも簡単な構成となることからボールねじ装置としての組立て作業も熟練を要することなく容易に達成し得ると共に、製造コストの低減も実現できることを突き止めた。
【0012】
従って、本発明の目的は、外周面に螺旋状のねじ溝を形成したねじ軸と、このねじ軸と部分的に螺合するように内周面に前記ねじ溝と対応するようにボールガイド溝を形成したボールガイドと、前記ボールガイド溝内に配置され前記ねじ軸のねじ溝に対し部分的に収容される複数のボールとを備えたボールねじ装置において、ボールガイドにおけるボールガイド溝の成形加工を簡便に行うことができ、しかも簡単な構成にして組立て作業も容易化することができると共に、製造コストの低減を実現することができるボールねじ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記の目的を達成するため、本発明の請求項1に記載のボールねじ装置は、外周面に螺旋状のねじ溝を形成したねじ軸と、このねじ軸を挿通させて部分的に螺合するように前記ねじ溝と対応するボールガイド溝を形成したボールガイドと、前記ボールガイド溝内に配置され前記ねじ軸のねじ溝に対し部分的に収容される複数のボールとを備えたボールねじ装置からなり、
前記ボールガイドは、ねじ軸の軸方向の垂直面に対しねじ軸のリード角と対応する角度で傾斜する接合面を形成した相互に接合する一対のボールガイド片からなるボールガイド部材を有し、前記一対のボールガイド片の接合面において前記複数のボールを転動自在に収納配置し前記ねじ軸のねじ溝に対し部分的に収容すると共に循環させるボールガイド溝をそれぞれ対称的に刻設し、このように構成した前記ナット部材の複数組をそれぞれ前記ねじ軸の軸方向に同軸的に組合せて所要のボールガイドケーシング内に収納固定した構成からなることを特徴とする。
【0014】
本発明の請求項2に記載のボールねじ装置は、前記一対のボールガイド片の接合面にそれぞれ対称的に刻設するボールガイド溝が、一対のボールガイド片の傾斜する接合面における最大厚みとなる位置と最小厚みとなる位置とを相互に結ぶ中心線に対し、左右対称的に設けることを特徴とする。
【0015】
本発明の請求項3に記載のボールねじ装置は、前記一対のボールガイド片の接合面にそれぞれ対称的に刻設するボールガイド溝が、一方のボールガイド片と他方のボールガイド片との接合面に刻設するボールガイド溝を、前記中心線上において相互のボールガイド片が最大厚みとなる位置と最小厚みとなる位置とが重なるよう接合するように設定することを特徴とする。
【0016】
本発明の請求項4に記載のボールねじ装置は、前記一対のボールガイド片の接合面にそれぞれ対称的に刻設するボールガイド溝が、前記中心線の一端側においてボールがねじ軸に形成したねじ溝内に部分的に収容されるように形成したボールガイド溝部分とし、前記中心線の他端側においてボールを循環させる循環路からなるボールガイド溝部分として、それぞれ設けたことを特徴とする。
【0017】
本発明の請求項5に記載のボールねじ装置は、前記一対のボールガイド片からなるボールガイド部材の複数組を組合せて構成してなるボールガイドが、それぞれ一対のボールガイド片の接合面に形成したボールガイド溝について、ボールガイド片の接合面における前記中心線を基準として、ねじ軸の回転方向にそれぞれ90°の等角度で位置変位させてなる4組またはそれ以上のボールガイド部材を組合せたことを特徴とする。
【0018】
本発明の請求項6に記載のボールねじ装置は、前記一対のボールガイド片からなるボールガイド部材の複数組を組合せて構成してなるボールガイドが、それぞれ一対のボールガイド片の接合面に形成したボールガイド溝について、ボールガイド片の接合面における前記中心線を基準として、ねじ軸の回転方向にそれぞれ120°の等角度で位置変位させてなる3組またはそれ以上のボールガイド部材を組合せたことを特徴とする。
【0019】
本発明の請求項7に記載のボールねじ装置は、前記複数組のナット部材を組合せて構成してなるボールガイドを、ボールガイドケーシング内に収納固定するに際し、前記ボールガイドの一端側面または両端側面に、ばね等の弾性部材を設けて弾力的に保持したことを特徴とする。
【0020】
本発明の請求項8に記載のボールねじ装置は、前記一対のボールガイド片からなるボールガイド部材に対し、前記ボールガイド片の外周部において、それぞれねじ軸の回転方向に90°または120°の等角度となる位置に、支持棒を挿通し得る挿通孔を設けたことを特徴とする
【0021】
本発明の請求項9に記載のボールねじ装置は、前記一対のボールガイド片からなるボールガイド部材において、前記一方のボールガイド片の接合面およびこれに近接ないし一部露呈するようにねじ軸挿通孔に沿って、ボールの直径寸法に近似する深さ寸法からなるボールガイド溝を形成すると共に、このボールガイド溝と対応して前記他方のボールガイド片の接合面およびこれに近接ないし一部露呈するようにねじ軸挿通孔に沿って、若干の深さ寸法からなるボールガイド溝を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明の請求項1に記載のボールねじ装置によれば、外周面に螺旋状のねじ溝を形成したねじ軸と、このねじ軸を挿通させて部分的に螺合するように前記ねじ溝と対応するボールガイド溝を形成したボールガイドと、前記ボールガイド溝内に配置され前記ねじ軸のねじ溝に対し部分的に収容される複数のボールとを備えたボールねじ装置からなり、前記ボールガイドは、ねじ軸の軸方向の垂直面に対しねじ軸のリード角と対応する角度で傾斜する接合面を形成した相互に接合する一対のボールガイド片からなるボールガイド部材を有し、前記一対のボールガイド片の接合面において前記複数のボールを転動自在に収納配置し前記ねじ軸のねじ溝に対し部分的に収容すると共に循環させるボールガイド溝をそれぞれ対称的に刻設し、このように構成した前記ナット部材の複数組をそれぞれ前記ねじ軸の軸方向に同軸的に組合せて所要のボールガイドケーシング内に収納固定した構成とすることにより、ボールガイドにおけるボールガイド溝の成形加工を簡便に行うことができ、しかも簡単な構成にして組立て作業も容易することができると共に、製造コストの低減を実現することができる。
【0023】
本発明の請求項2ないし請求項4に記載のボールねじ装置によれば、前記一対のボールガイド片の接合面にそれぞれ対称的に刻設するボールガイド溝を、一対のボールガイド片の傾斜する接合面における最大厚みとなる位置と最小厚みとなる位置とを相互に結ぶ中心線に対し、左右対称的に設け、また前記中心線上において相互のボールガイド片が最大厚みとなる位置と最小厚みとなる位置とが重なるよう接合するように設定し、さらに前記中心線の一端側においてボールがねじ軸に形成したねじ溝内に部分的に収容されるように形成したボールガイド溝部分とし、前記中心線の他端側においてボールを循環させる循環路からなるボールガイド溝部分として、それぞれ設けることにより、前記ボールガイド溝の成形加工を簡便にして容易に行うことができる。
【0024】
本発明の請求項5および請求項6に記載のボールねじ装置によれば、それぞれ一対のボールガイド片の接合面に形成したボールガイド溝について、ボールガイド片の接合面における前記中心線を基準として、ねじ軸の回転方向にそれぞれ90°の等角度で位置変位させてなる4組またはそれ以上のボールガイド部材を組合せたり、ボールガイド片の接合面における前記中心線を基準として、ねじ軸の回転方向にそれぞれ120°の等角度で位置変位させてなる3組またはそれ以上のボールガイド部材を組合せたりすることにより、ボールガイドの組立て作業を簡便にして容易に行うことができる。
【0025】
本発明の請求項7に記載のボールねじ装置によれば、複数組のボールガイド部材を組合せて構成してなるボールガイドを、ボールガイドケーシング内に収納固定するに際し、前記ボールガイドの一端側面または両端側面に、ばね等の弾性部材を設けて弾力的に保持することにより、それぞれのボールガイド部材の接合を適正に保持することができると共に、ボールガイドに対するねじ軸のバックラッシュを適正に抑制することができる。
【0026】
本発明の請求項8に記載のボールねじ装置によれば、一対のボールガイド片からなるボールガイド部材に対し、ボールガイド片の外周部において、それぞれねじ軸の回転方向に90°または120°の等角度となる位置に支持棒を挿通し得る挿通孔を設けることにより、複数組のボールガイド部材を組合せてボールガイドを組立てるに際して、前記挿通孔に支持棒を挿通してそれぞれボールガイド部材を適正な位置に設定することができると共に、ボールガイド溝へのボールの収納配置も簡便にして迅速かつ適正に達成することができる。
【0027】
本発明の請求項9に記載のボールねじ装置によれば、前記一対のボールガイド片からなるボールガイド部材において、前記一方のボールガイド片の接合面およびこれに近接ないし一部露呈するようにねじ軸挿通孔に沿って、ボールの直径寸法に近似する深さ寸法からなるボールガイド溝を形成すると共に、このボールガイド溝と対応して前記他方のボールガイド片の接合面およびこれに近接ないし一部露呈するようにねじ軸挿通孔に沿って、若干の深さ寸法からなるボールガイド溝を形成することにより、前記複数組のボールガイド部材からなるボールガイドを収納固定するボールガイドケーシングの外周部に対して、強大な荷重が加わった際に、内部におけるボールガイド部材のボールガイド片によって挾持されるボールを、前記深さ寸法に設定されたボールガイド溝内に保持させて、ボールガイド部材の安定性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係るボールねじ装置の一実施例を示す要部断面側面図である。
【図2】図1におけるボールねじ装置を構成する4組のボールガイド部材の組合せ状態を示す説明図である。
【図3】(a)は図2における各組のボールガイド部材について共通する一対のボールガイド片の接合分離状態を示す側面図、(b)はその変形例を示す側面図である。
【図4】図2に示す4組のボールガイド部材のうちの第1のボールガイド部材の分解説明図であって、(a)は2分割された一方のボールガイド片の接合面の平面図、(b)は(a)におけるb−b線断面図、(c)は2分割された他方のボールガイド片の接合面の平面図、(d)は(c)におけるd−d線断面図をそれぞれ示すものである。
【図5】図2に示す4組のボールガイド部材のうちの第2のボールガイド部材の分解説明図であって、(a)は2分割された一方のボールガイド片の接合面の平面図、(b)は(a)におけるb−b線断面図、(c)は2分割された他方のボールガイド片の接合面の平面図、(d)は(c)におけるd−d線断面図をそれぞれ示すものである。
【図6】図2に示す4組のボールガイド部材のうちの第3のボールガイド部材の分解説明図であって、(a)は2分割された一方のボールガイド片の接合面の平面図、(b)は(a)におけるb−b線断面図、(c)は2分割された他方のボールガイド片の接合面の平面図、(d)は(c)におけるd−d線断面図をそれぞれ示すものである。
【図7】図2に示す4組のボールガイド部材のうちの第4のボールガイド部材の分解説明図であって、(a)は2分割された一方のボールガイド片の接合面の平面図、(b)は(a)におけるb−b線断面図、(c)は2分割された他方のボールガイド片の接合面の平面図、(d)は(c)におけるd−d線断面図をそれぞれ示すものである。
【図8】ボールガイドを構成するボールガイド部材における一対のボールガイド片に対して形成するボールガイド溝の変形例を示すボールガイド片の側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に、本発明に係るボールねじ装置の実施例につき、添付図面を参照しながら以下詳細に説明する。
【0030】
図1、図2、図3(a)および図4〜図7は、本発明に係るボールねじ装置の一実施例を示すものであり、図1はボールねじ装置の要部断面を示す説明図、図2は図1に示す複数組のボールガイド部材からなるボールガイドの分解説明図、図3(a)は図2におけるボールガイド部材の接合分離状態の側面図、図4〜図7は図2における各ボールガイド部材を構成する一対のボールガイド片の接合面の構成をそれぞれ示す分解説明図である。
【0031】
本実施例におけるボールねじ装置は、第1図に示すように、外周面に螺旋状のねじ溝42を形成したねじ軸40と、このねじ軸40を挿通させるねじ軸挿通孔11を有し、前記ねじ軸40と部分的に螺合するように前記ねじ溝42と対応するボールガイド溝20(図4参照)を形成したボールガイド10と、前記ボールガイド溝20内に配置され前記ねじ軸40のねじ溝42に対し部分的に収容される複数のボール30とを備えた構成からなる。
【0032】
前記ボールガイド10は、基本的に、図2に示すように、ねじ軸40の軸方向の垂直面に対しねじ軸40のリード角θ(図1参照)と対応する角度θで傾斜する接合面12A、12B〔図3(a)および図4参照〕を形成して、相互に接合するように構成してなる一対のボールガイド片13L、13Rからなる第1のボールガイド部材12、同様に構成してなる一対のボールガイド片15L、15Rからなる第2のボールガイド部材14、同様に構成してなる一対のボールガイド片17L、17Rからなる第3のボールガイド部材16、および同様に構成してなる一対のボールガイド片19L、19Rからなる第4のボールガイド部材18からなる。本発明においては、基本的に前記4組のボールガイド部材12、14、16、18を、それぞれ前記ねじ軸40の軸方向に同軸的に組合せて本体50と蓋体52とからなるボールガイドケーシング内に収納固定して、ボールガイド10を構成することができる。
【0033】
そこで、本実施例のボールねじ装置においては、例えば図4に示すように、前記第1のボールガイド部材12における一対のボールガイド片13L、13Rの接合面12A、12Bにおいては、複数のボール30を転動自在に収納配置し、前記ねじ軸40のねじ溝42の一部に収容されるようにすると共に前記接合面12A、12B内において一巡して循環するようにしたボールガイド溝20をそれぞれ対称的に刻設した構成からなる。また、前記第2のボールガイド部材14、第3のボールガイド部材16および第4のボールガイド部材18についても、前記第1のボールガイド部材12と同様にして、それぞれ一対のボールガイド片15L、15Rと、17L、17Rと、19L、19Rのそれぞれ接合面14A、14Bと、16A、16Bと、18A、18Bに、それぞれボールガイド溝20が対称的に刻設される(図5、図6、図7参照)。従って、このようにボールガイド部材12、14、16、18を構成することにより、ボールガイド10の成形加工に際し、従来のように高価な専用機を必要とすることなく、簡便かつ容易にして低コストに実現することができる。
【0034】
また、本実施例のボールねじ装置においては、図4に示すように、前記第1のボールガイド部材12における一対のボールガイド片13L、13Rの接合面12A、12Bにそれぞれ対称的に刻設するボールガイド溝20は、一対のボールガイド片13L、13Rの傾斜する接合面12A、12Bにおける最大厚みとなる位置Xと最小厚みとなる位置Yとを相互に結ぶ中心線CLに対し、左右対称的に設ける。なお、前記第2のボールガイド部材14、第3のボールガイド部材16および第4のボールガイド部材18についても同様である(図5、図6、図7参照)。
【0035】
そして、この場合、前記第1のボールガイド部材12における一方のボールガガイド溝20は、前記中心線CL上において相互のボールガイド片13L、13Rが最大厚みとなる位置Xと最小厚みとなる位置Yとが重なるようにして接合するように設定する(図2参照)。また、前記第2のボールガイド部材14、第3のボールガイド部材16および第4のボールガイド部材18についても同様である(図2参照)。
【0036】
さらに、前記中心線CLの一端側においては、ボール30がねじ軸40に形成したねじ溝42内に部分的に収容されるように形成したボールガイド溝部分20aとし、前記中心線CLの他端側においては、ボール30を循環させる循環路からなるボールガイド溝部分20bとして、それぞれ設けられる。
【0037】
図1に示す本実施例のボールねじ装置は、5組のボールガイド部材12、14、16、18、12を組合せてボールガイド10を構成したものである。すなわち、それぞれのボールガイド部材12、14、16、18においては、一対のボールガイド片の接合面に形成したボールガイド溝20について、前記ボールガイド片の接合面における前記中心線CLを基準として、ねじ軸40の回転方向にそれぞれ90°の等角度で位置変位させた状態とし(図4ないし図7参照)、これらのボールガイド部材12、14、16、18をそれぞれ組合せて組立てたものである。なお、このようにボールガイド部材12、14、16、18を組合せて組立てる場合、図示例に限定されることなく、例えばそれらの組合せの順番は任意に設定して組合せ、組立てることができる。また、前記ボールガイド部材12、14、16、18を組合せる場合においては、4組のボールガイド部材12、14、16、18の組合せを基本として、それ以上のボールガイド部材を組合せてボールガイド10を組立てることができる。
【0038】
代案として、本発明のボールねじ装置においては、前述したように、一対のボールガイド片からなるボールガイド部材の複数組を組合せて構成してなるボールガイド10は、それぞれのボールガイド部材における一対のボールガイド片の接合面に形成したボールガイド溝20について、ボールガイド片の接合面における前記中心線CLを基準として、ねじ軸の回転方向にそれぞれ120°の等角度で位置変位させた構成とし、これらのボールガイド部材を3組またはそれ以上を12、14、16、18組合せて、組立てることもできる。
【0039】
また、本発明のボールねじ装置においては、前記複数組のボールガイド部材12、14、16、18を組合せて構成してなるボールガイド10は、ボールガイドケーシング50、52内に収納固定するに際し、前記ボールガイド10の一端側面または両端側面に、ばね等の弾性部材60を設けて弾力的に保持するように構成することができる(図1参照)。従って、このようにボールガイド10のボールガイドケーシング50、52内への収納固定に際して、弾性部材60を設けることによって、それぞれのボールガイド部材12、14、16、18の接合を適正に保持することができると共に、ボールガイド10に対するねじ軸40のバックラッシュを適正に抑制することができる。
【0040】
さらに、本発明のボールねじ装置においては、一対のボールガイド片からなるボールガイド部材12、14、16、18は、それぞれのボールガイド片13L、13Rと、15L、15Rと、17L、17Rと、19L、19Rの外周部において、ねじ軸40(図1参照)の回転方向にそれぞれ90°(または120°)からなる等角度の位置に、複数組のナット部材12、14、16、18を組合せて位置決めすることができる支持棒(図示せず)を挿通するための挿通孔22を設けた構成とすることができる。従って、このように設けた挿通孔22に対し、適宜支持棒を挿通することによって、複数組のボールガイド部材12、14、16、18を適正に組合せて、ボールガイド10の組立て作業を簡便かつ容易に行うことができる。
【0041】
なお、本発明のボールねじ装置において、例えば図8に示すように、一対のボールガイド片13L、13Rからなるボールガイド部材12において、前記一方のボールガイド片13Lの接合面12Aおよびこれに近接ないし一部露呈するようにねじ軸挿通孔11に沿って、ボールの直径寸法に近似する深さ寸法からなるボールガイド溝20a1、20b1 を形成すると共に、このボールガイド溝20a1、20b1 と対応して前記他方のボールガイド片13Rの接合面12Bおよびこれに近接ないし一部露呈するようにねじ軸挿通孔11に沿って、若干の深さ寸法からなるボールガイド溝20a2、20b2 を形成する。そして、他のボールガイド部材14、16、18についても、同様に構成する。このように構成することにより、前記複数組のボールガイド部材からなるボールガイド10を収納固定するボールガイドケーシング50の外周部(図1参照)に対して、強大な荷重が加わった際に、内部におけるボールガイド部材のボールガイド片によって挾持されるボール30を、前記深さ寸法に設定されたボールガイド溝20a1、20b1 内に保持させて、ボールガイド部材の安定性を高めることができる。
【0042】
以上、本発明の好適な実施例について説明したが、本発明は前述した実施例に限定されることなく、例えば、ねじ軸の任意のリード角θ´に対しは、これに対応して一対のボールガイド片における接合面の傾斜角度θ´を設定すること〔図3(b)参照〕、その他ボールガイドおよびボールガイド部材の形状構成、ボールガイド溝の深さ寸法や全体形状等について、本発明の精神を逸脱しない範囲内において多くの設計変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0043】
10 ボールガイド
11 ねじ軸挿通孔
12 第1のボールガイド部材
12A、12B 接合面
13L、13R ボールガイド片
14 第2のボールガイド部材
14A、14B 接合面
15L、15R ボールガイド片
16 第3のボールガイド部材
16A、16B 接合面
17L、17R ボールガイド片
18 第4のボールガイド部材
18A、18B 接合面
19L、19R ボールガイド片
20 ボールガイド溝
20a ねじ溝内にボールの収容が可能なボールガイド溝部分
20b 循環路としてのボールガイド溝部分
22 支持棒の挿通孔
30 ボール
40 ねじ軸
42 ねじ溝
50 ボールガイドケーシング本体
52 ボールガイドケーシング蓋体
60 弾性部材
θ ねじ軸のリード角
X 最大厚みとなる位置
Y 最小厚みとなる位置
CL 中心線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面に螺旋状のねじ溝を形成したねじ軸と、このねじ軸を挿通させて部分的に螺合するように前記ねじ溝と対応するボールガイド溝を形成したボールガイドと、前記ボールガイド溝内に配置され前記ねじ軸のねじ溝に対し部分的に収容される複数のボールとを備えたボールねじ装置からなり、
前記ボールガイドは、ねじ軸の軸方向の垂直面に対しねじ軸のリード角と対応する角度で傾斜する接合面を形成した相互に接合する一対のボールガイド片からなるボールガイド部材を有し、前記一対のボールガイド片の接合面において前記複数のボールを転動自在に収納配置し前記ねじ軸のねじ溝に対し部分的に収容すると共に循環させるボールガイド溝をそれぞれ対称的に刻設し、このように構成した前記ボールガイド部材の複数組をそれぞれ前記ねじ軸の軸方向に同軸的に組合せて所要のボールガイドケーシング内に収納固定した構成からなることを特徴とするボールねじ装置。
【請求項2】
前記一対のボールガイド片の接合面にそれぞれ対称的に刻設するボールガイド溝は、一対のボールガイド片の傾斜する接合面における最大厚みとなる位置と最小厚みとなる位置とを相互に結ぶ中心線に対し、左右対称的に設けたことを特徴とする請求項1記載のボールねじ装置。
【請求項3】
前記一対のボールガイド片の接合面にそれぞれ対称的に刻設するボールガイド溝は、一方のボールガイド片と他方のボールガイド片との接合面に刻設するボールガイド溝を、前記中心線上において相互のボールガイド片が最大厚みとなる位置と最小厚みとなる位置とが重なるよう接合するように設定したことを特徴とする請求項2記載のボールねじ装置。
【請求項4】
前記一対のボールガイド片の接合面にそれぞれ対称的に刻設するボールガイド溝は、前記中心線の一端側においてボールがねじ軸に形成したねじ溝内に部分的に収容されるように形成したボールガイド溝部分とし、前記中心線の他端側においてボールを循環させる循環路からなるボールガイド溝部分として、それぞれ設けたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のボールねじ装置。
【請求項5】
前記一対のボールガイド片からなるボールガイド部材の複数組を組合せて構成してなるボールガイドは、それぞれ一対のボールガイド片の接合面に形成したボールガイド溝について、前記ボールガイド片の接合面における前記中心線を基準として、ねじ軸の回転方向にそれぞれ90°の等角度で位置変位させてなる4組またはそれ以上のボールガイド部材を組合せることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のボールねじ装置。
【請求項6】
前記一対のボールガイド片からなるボールガイド部材の複数組を組合せて構成してなるボールガイドは、それぞれ一対のボールガイド片の接合面に形成したボールガイド溝について、ボールガイド片の接合面における前記中心線を基準として、ねじ軸の回転方向にそれぞれ120°の等角度で位置変位させてなる3組またはそれ以上のボールガイド部材を組合せることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のボールねじ装置。
【請求項7】
前記複数組のボールガイド部材を組合せて構成してなるボールガイドは、ボールガイドケーシング内に収納固定するに際し、前記ボールガイドの一端側面または両端側面に、ばね等の弾性部材を設けて弾力的に保持してなることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載のボールねじ装置。
【請求項8】
前記一対のボールガイド片からなるボールガイド部材は、ボールガイド片の外周部において、ねじ軸の回転方向にそれぞれ90°または120°の等角度となる位置に、支持棒を挿通し得る挿通孔を設けたことを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載のボールねじ装置。
【請求項9】
前記一対のボールガイド片からなるボールガイド部材は、前記一対のボールガイド片からなるボールガイド部材において、前記一方のボールガイド片の接合面およびこれに近接ないし一部露呈するようにねじ軸挿通孔に沿って、ボールの直径寸法に近似する深さ寸法からなるボールガイド溝を形成すると共に、このボールガイド溝と対応して前記他方のボールガイド片の接合面およびこれに近接ないし一部露呈するようにねじ軸挿通孔に沿って、若干の深さ寸法からなるボールガイド溝を形成することを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載のボールねじ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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