説明

ボールジョイント用ハウジング、その製造方法及びボールジョイント

【課題】製造コストの低減を図りつつ、ソケット部とリンケージ部とを確実に固定できるボールジョイント用ハウジングを提供する。
【解決手段】塑性変形可能な材料により形成したソケット部22を、ソケット部22と別体のリンケージ部21に圧入する。ソケット部22を圧入した状態でリベット46を変形加工してリンケージ部21とソケット部22とを固定する。ボールジョイント用ハウジング17の製造コストの低減を図ることができるとともに、リンケージ部21とソケット部22とを確実に固定できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、球頭部を内部に保持するボールジョイント用ハウジング、その製造方法及びボールジョイントに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ボールスタッドの球頭部、すなわちボール部を、ベアリングシートを介して回動可能に保持するボールジョイント用のハウジング(ソケット)としては、その全体がかしめ加工が容易な高伸び材料にて軸方向端部にかしめ部を有する略円筒形状に形成されたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、ボールジョイント用ハウジングの全体をかしめ加工が容易な高伸び材料にて形成する場合には、高伸び材料の材料費が高いため、全体としてコスト高となるおそれがあり、また形状などによっては強度確保に困難を伴うおそれがある。
【0004】
そこで、ハウジングを2つに分け、ボール部を回転可能に保持する内部ハウジング体を、かしめ加工が容易な高伸び材料により形成し、この高伸び材料より伸びにくい低伸び材料により形成した外部ハウジング体の内部に鋳込む構成が考えられる。
【特許文献1】特開2004−293572号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のように内部ハウジング体を外部ハウジング体の内部に鋳込む構成では、鋳込むための部品をロボットなどにより金型の内部へと配置するため、その設備が必要となるだけでなく、その配置時間がサイクルタイムに加算され、単価が増加する原因となるおそれがある。
【0006】
また、上述のようにハウジングを2つに分ける場合には、内部ハウジング体と外部ハウジング体とを確実に連結することが望まれる。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、製造コストの低減を図りつつ、内部ハウジング体と外部ハウジング体とを確実に固定できるボールジョイント用ハウジング、その製造方法及びボールジョイントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載のボールジョイント用ハウジングは、塑性変形可能な材料により形成され、かしめ変形により球頭部を内部に保持する内部ハウジング体と、この内部ハウジング体と別体に設けられ、この内部ハウジング体が圧入される外部ハウジング体と、この内部ハウジング体を前記外部ハウジング体に圧入した状態で変形加工されて前記内部ハウジング体を前記外部ハウジング体に固定する固定部とを具備したものである。
【0009】
請求項2記載のボールジョイント用ハウジングは、請求項1記載のボールジョイント用ハウジングにおいて、内部ハウジング体は、内部挿通孔を備え、外部ハウジング体は、前記内部ハウジング体を圧入した状態で前記内部挿通孔と連通する外部挿通孔を備え、固定部は、前記内部挿通孔及び前記外部挿通孔に挿通されて先端側が変形されるリベットであるものである。
【0010】
請求項3記載のボールジョイント用ハウジングは、請求項1記載のボールジョイント用ハウジングにおいて、外部ハウジング体は、内部ハウジング体と対向する位置に挿通孔を備え、固定部は、前記内部ハウジング体から突設され、この内部ハウジング体の前記外部ハウジング体への圧入により前記挿通孔に挿通され、この挿通孔に挿通された状態で先端側が変形されるリベット部であるものである。
【0011】
請求項4記載のボールジョイント用ハウジングは、請求項1記載のボールジョイント用ハウジングにおいて、外部ハウジング体は、ハウジング挿通孔を備え、固定部は、前記内部ハウジング体の一部をなし、前記内部ハウジング体の前記外部ハウジング体への圧入により前記ハウジング挿通孔に挿通され、かしめ変形によりこのハウジング挿通孔の周縁部に固定されるかしめ変形部であるものである。
【0012】
請求項5記載のボールジョイントは、請求項1ないし4いずれか一記載のボールジョイント用ハウジングと、このボールジョイント用ハウジングの内部ハウジング体に回動可能に保持される球頭部を有するボールスタッドとを具備したものである。
【0013】
請求項6記載のボールジョイント用ハウジングの製造方法は、塑性変形可能な材料により形成されかしめ変形により球頭部を内部に保持する内部ハウジング体を、この内部ハウジング体と別体の外部ハウジング体に圧入する圧入工程と、この圧入状態で固定部を変形加工することにより前記内部ハウジング体を前記外部ハウジング体に固定する固定工程とを具備したものである。
【0014】
請求項7記載のボールジョイント用ハウジングの製造方法は、請求項6記載のボールジョイント用ハウジングの製造方法において、固定部は、内部ハウジング体の内部挿通孔と、この内部ハウジング体を外部ハウジング体に圧入した状態で前記内部挿通孔に連通する外部ハウジング体の外部挿通孔とに挿通されるリベットであり、固定工程にて、前記内部挿通孔及び前記外部挿通孔に挿通されたリベットの先端側を変形させることで前記内部ハウジング体を前記外部ハウジング体に固定するものである。
【0015】
請求項8記載のボールジョイント用ハウジングの製造方法は、請求項6記載のボールジョイント用ハウジングの製造方法において、固定部は、内部ハウジング体から突設されたリベット部であり、固定工程にて、前記内部ハウジング体の前記外部ハウジング体への圧入により前記挿通孔に挿通されたリベット部の先端側を前記外部ハウジング体の外部にて変形させることで前記内部ハウジング体を前記外部ハウジング体に固定するものである。
【0016】
請求項9記載のボールジョイント用ハウジングの製造方法は、請求項6記載のボールジョイント用ハウジングの製造方法において、固定部は、内部ハウジング体の一部をなすかしめ変形部であり、固定工程にて、前記内部ハウジング体の前記外部ハウジング体への圧入により前記ハウジング挿通孔に挿通された前記かしめ変形部をかしめ変形して前記ハウジング挿通孔の周縁部に固定することで前記内部ハウジング体を前記外部ハウジング体に固定するものである。
【発明の効果】
【0017】
請求項1記載のボールジョイント用ハウジングによれば、塑性変形可能な材料により形成した内部ハウジング体を、この内部ハウジング体と別体の外部ハウジング体に圧入するとともに、この内部ハウジング体を圧入した状態で固定部を変形加工して内部ハウジング体と外部ハウジング体とを固定することにより、製造コストの低減を図ることができるとともに、内部ハウジング体と外部ハウジング体とを確実に固定できる。
【0018】
請求項2記載のボールジョイント用ハウジングによれば、内部ハウジング体の内部挿通孔と外部ハウジング体の外部挿通孔とに固定部であるリベットを挿入して、このリベットの先端側を変形させることで、内部ハウジング体と外部ハウジング体とを確実に固定する構成を容易に実現できる。
【0019】
請求項3記載のボールジョイント用ハウジングによれば、固定部であるリベット部を内部ハウジング体から突設し、このリベット部が内部ハウジング体を外部ハウジング体に圧入した状態で外部ハウジング体に設けた挿通孔に挿通されることで、この挿通されたリベット部の先端側を変形させることにより、内部ハウジング体と外部ハウジングとを容易かつ確実に固定できる。
【0020】
請求項4記載のボールジョイント用ハウジングによれば、内部ハウジング体の一部をなす固定部であるかしめ変形部が、内部ハウジング体を外部ハウジング体に圧入した状態で外部ハウジング体に設けたハウジング挿通孔に挿通されることで、この挿通されたかしめ変形部をかしめ変形させてハウジング挿通孔の周縁部に固定し、内部ハウジング体と外部ハウジングとを容易かつ確実に固定できる。
【0021】
請求項5記載のボールジョイントによれば、請求項1ないし4いずれか一記載のボールジョイント用ハウジングを備えることで、製造コストの低減を図ることができるとともに、内部ハウジング体と外部ハウジング体とを確実に固定して信頼性を向上できる。
【0022】
請求項6記載のボールジョイント用ハウジングの製造方法によれば、塑性変形可能な材料により形成した内部ハウジング体を、この内部ハウジング体と別体の外部ハウジング体に圧入するとともに、この内部ハウジング体を圧入した状態で固定部を変形加工して内部ハウジング体と外部ハウジング体とを固定することにより、製造コストの低減を図ることができるとともに、内部ハウジング体と外部ハウジング体とを確実に固定できる。
【0023】
請求項7記載のボールジョイント用ハウジングの製造方法によれば、内部ハウジング体の内部挿通孔と外部ハウジング体の外部挿通孔とに固定部であるリベットを挿入して、このリベットの先端側を変形させることで、内部ハウジング体と外部ハウジング体とを確実に固定する構成を容易に実現できる。
【0024】
請求項8記載のボールジョイント用ハウジングの製造方法によれば、内部ハウジング体から突設した固定部であるリベット部が、内部ハウジング体を外部ハウジング体に圧入した状態で外部ハウジング体に設けた挿通孔に挿通されることで、この挿通されたリベット部の先端側を変形させて、内部ハウジング体と外部ハウジングとを容易かつ確実に固定できる。
【0025】
請求項9記載のボールジョイント用ハウジングの製造方法によれば、内部ハウジング体の一部をなす固定部であるかしめ変形部が、内部ハウジング体を外部ハウジング体に圧入した状態で外部ハウジング体に設けたハウジング挿通孔に挿通されることで、この挿通されたかしめ変形部をかしめ変形させてハウジング挿通孔の周縁部に固定し、内部ハウジング体と外部ハウジングとを容易かつ確実に固定できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の第1の実施の形態の構成を図1及び図2を参照して説明する。
【0027】
図2において、11はスタビライザリンク用のボールジョイントで、このボールジョイント11は、例えば自動車の懸架装置、あるいは操舵装置などに用いられるものである。
【0028】
なお、以下、図1及び図2に示す上下方向を、便宜的に上下方向として説明する。
【0029】
ボールジョイント11は、鋼鉄製などのボールスタッド12を備え、ボールスタッド12は、略球状の球頭部であるボール部13、このボール部13に一体に突設された軸状の軸部であるスタッド部14及びこのスタッド部14の外周側に一体に突設された円環状の鍔部15を有している。
【0030】
また、ボールジョイント11は、ボールスタッド12のボール部13を合成樹脂製などのベアリングシート16を介して回動可能に保持する略有底円筒形状のボールジョイント用ハウジング17を備えている。そして、ボールスタッド12の鍔部15とボールジョイント用ハウジング17との間には、弾性変形可能なゴム製などの略円筒状のダストカバー18が設けられている。
【0031】
ボールジョイント用ハウジング17は、ソケットとも呼ばれるもので、図1に示すように、本体となる外部ハウジング体であるリンケージ部21と、このリンケージ部21と別体でこのリンケージ部21の内部に圧入される内部ハウジング体であるソケット部22とを備えた2重構造に形成されている。
【0032】
リンケージ部21は、例えば低コストで比重が軽い(軽量の)材料であるアルミニウムなどにより略円筒状に形成され、内部にソケット部22を圧入する圧入室部25が区画され、この圧入室部25に連通して、軸方向の一端部である上側に、ソケット部22が挿入される圧入開口26が開口され、軸方向の他端部である下側に、外部挿通孔27が開口されている。また、このリンケージ部21は、軸方向の一端部である上端部の外周に、ダストカバー18と係合するカバー用段部28が形成されている。
【0033】
圧入室部25は、圧入開口26に連続してリンケージ部21の軸方向に平行な円弧面状に形成された挿入側内周面31と、この挿入側内周面31の下端に連続しリンケージ部21の軸方向に対して下側に縮径されるように傾斜した円弧面状の傾斜内周面32と、この傾斜内周面32の下端に連続しリンケージ部21の軸方向に平行な円弧面状の固定内周面33と、この固定内周面33の下端に連続しリンケージ部21の軸方向に交差する方向に沿う円形平面状の底面34とを有し、この底面34の中央部に外部挿通孔27が穿設されている。
【0034】
また、ソケット部22は、塑性変形可能な材料、例えば鉄などにより略円筒状でかつリンケージ部21よりも薄肉状に形成され、内部に、ベアリングシート16に回動可能に保持されたボールスタッド12のボール部13(図2)を保持する内室37が区画され、この内室37に連通して、軸方向の一端部である上側に、ボールスタッド12のスタッド部14側(図2)が突出する突出開口38が開口され、軸方向の他端部である下側に、内部挿通孔39が開口されている。さらに、ソケット部22は、リンケージ部21の圧入室部25に対して所定の締め代を有するように、すなわち圧入室部25の形状よりも所定量大きく形成されている。この締め代は、大きすぎるとリンケージ部21に割れが生じるおそれがあり、小さすぎるとソケット部22にがたつきが生じるおそれがあるため、それらを考慮して適宜設定されている。
【0035】
そして、このソケット部22は、突出開口38を内部に有するかしめ部41を上端に備えソケット部22の軸方向に平行な円筒状の挿入側円筒部42と、この挿入側円筒部42の下端に連続しソケット部22の軸方向に対して下側に縮径されるように傾斜した円筒状の傾斜部43と、この傾斜部43の下端に連続しソケット部22の軸方向に平行な固定円筒部44と、この固定円筒部44の下端に連続しソケット部22の軸方向に交差する方向に沿う円板状の底部45とを有し、この底部45の中央部に内部挿通孔39が穿設されている。
【0036】
なお、このソケット部22は、圧入のための嵌め合い公差を緩めるために、適宜スリットや外周突起などを設けてもよい。
【0037】
また、一般的に、リンケージ部21は、ソケット部22よりも比重が軽い材料で形成されるが、同等の比重のもの、あるいは比重が重いものを用いてもよく、また、リンケージ部21とソケット部22とを同じ材質で形成してもよい。
【0038】
かしめ部41は、ソケット部22をリンケージ部21の圧入室部25に圧入した状態で、このリンケージ部21の圧入開口26から上方に突出する部分であり、ソケット部22の中心軸方向へのかしめ変形により、この中心軸側に伸びるように縮径変形し、その結果、図2に示すように、ボールスタッド12のボール部13がボールジョイント用ハウジング17内から抜け出ない状態になる。
【0039】
また、図1に示すように、挿入側円筒部42は、リンケージ部21の挿入側内周面31により外周面が保持されている。
【0040】
傾斜部43は、リンケージ部21の傾斜内周面32により外周面が保持されている。
【0041】
固定円筒部44は、リンケージ部21の固定内周面33により外周面が保持されている。
【0042】
底部45は、リンケージ部21の底面34に対向し、この底面34に当接することでソケット部22のリンケージ部21に対する挿入量が規制されている。
【0043】
そして、内部挿通孔39は、リンケージ部21の外部挿通孔27と略等しい径寸法を有し、ソケット部22をリンケージ部21に圧入した状態で外部挿通孔27と連通する。そして、これら連通した挿通孔27,39には、固定部であるリベット46が挿通されている。
【0044】
このリベット46は、リンケージ部21とソケット部22とを連結固定するもので、例えばアルミニウムなどの金属の材料により形成され、円形状の頭部47と、この頭部47よりも径小でこの頭部47から軸状に突設されたリベット軸部48とを備えている。
【0045】
頭部47は、各挿通孔27,39よりも径大に形成され、ソケット部22の底部45上に位置している。
【0046】
リベット軸部48は、各挿通孔27,39に挿通されてリンケージ部21の下部に先端側が突出しており、この先端側を潰すように変形させることで、この先端側に頭部47と同様の変形頭部49が形成され、この変形頭部49と頭部47とによりリンケージ部21とソケット部22とを連結固定するように構成されている。
【0047】
次に、上記第1の実施の形態のボールジョイント用ハウジングの製造方法を説明する。
【0048】
まず、例えば低コストで比重が軽いアルミニウムなどの材料をダイカスト成形、あるいは鋳造してリンケージ部21を得る(外部ハウジング体形成工程)。
【0049】
次いで、例えば鉄などの塑性変形可能な材料をプレス成形してソケット部22を得る(内部ハウジング体形成工程)。
【0050】
さらに、図1(a)に示すように、リンケージ部21の圧入室部25に、ソケット部22を圧入開口26側から圧入し(圧入工程)、リベット46を、ソケット部22の内室37側からリベット軸部48を各挿通孔27,39に挿通する(固定部挿入工程)。
【0051】
そして、図1(b)に示すように、リベット46のリベット軸部48の先端側を、リンケージ部21の外部にて変形させて変形頭部49を形成することで、リンケージ部21とソケット部22とが互いに連結固定される(固定工程)。
【0052】
次いで、ボールスタッド12のボール部13をベアリングシート16に回動可能に保持した状態で、このベアリングシート16とともにボール部13をソケット部22の内室37に突出開口38から挿入する。
【0053】
そして、ソケット部22のかしめ部41をベアリングシート16とともに中心軸方向へとかしめ変形させることで、ベアリングシート16とともにボール部13をボールジョイント用ハウジング17に保持する。
【0054】
この後、ダストカバー18をボールスタッド12の鍔部15とボールジョイント用ハウジング17のカバー用段部28との間に取り付けて、ボールジョイント11を得る。
【0055】
このように、上記第1の実施の形態によれば、塑性変形可能な材料により形成したソケット部22を、このソケット部22と別体のリンケージ部21に圧入するとともに、このソケット部22を圧入した状態でリベット46を変形加工してリンケージ部21とソケット部22とを固定することにより、ボールジョイント用ハウジング17の製造コストの低減を図ることができるとともに、リンケージ部21とソケット部22とを確実に固定できる。
【0056】
また、ボールジョイント用ハウジング17の本体となるリンケージ部21をソケット部22と別体とし、このリンケージ部21を、比重が軽く低コストの材料で形成して厚みを厚くし、ソケット部22を最小限の厚みとすれば、ボールジョイント用ハウジング17の大幅な軽量化及び低コスト化を図ることができる。
【0057】
さらに、リンケージ部にソケット部をインサート成形する場合などと比較して、ソケット部をリンケージ部内に配置するためのロボットなどの特殊な設備や、このソケット部をリンケージ部内に配置する際に要する時間なども不要となり、単価を抑制できる。
【0058】
そして、具体的に、ソケット部22の内部挿通孔39とリンケージ部21の外部挿通孔27とにリベット46を挿入して、このリベット46の先端側を変形させる構成とすることで、リンケージ部21とソケット部22とを確実に固定する構成を、容易に実現できる。
【0059】
しかも、リベット46のリベット軸部48をソケット部22側から各挿通孔39,27に挿通させることで、このリベット軸部48を、比較的スペースが大きいリンケージ部21の外部にて容易に変形させることができ、製造性が向上する。
【0060】
また、リベット46として、比重が軽いアルミニウム製のものを用いることで、ボールジョイント用ハウジング17の重量を抑制でき、リンケージ部にソケット部をインサート成形する場合などと比較しても、重量差を最小限に抑制できる。
【0061】
さらに、ソケット部22とリンケージ部21とを、圧入とリベット46とにより確実に固定できることで、かしめ部41をかしめ変形させる際などに割れが生じるなどの不具合を防止できる。
【0062】
そして、ボールジョイント11が上記ボールジョイント用ハウジング17を備えることで、軽量化及び製造コストの低減を図ることができるとともに、ソケット部22とリンケージ部21とを確実に固定でき、製品の信頼性(品質、強度など)を向上できる。
【0063】
なお、上記第1の実施の形態では、リベット46をソケット部22の内室37側から組み付けたが、リンケージ部21側から組み付けてソケット部22内でリベット軸部48の先端側を変形させてもよい。
【0064】
次に、第2の実施の形態を図3を参照して説明する。なお、上記第1の実施の形態と同様の構成及び作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0065】
この第2の実施の形態は、ボールジョイント用ハウジング17のリンケージ部21の底面34に外部挿通孔27に代えて挿通孔51が穿設され、この挿通孔51に対して、ソケット部22に突設された固定部であるリベット部52が挿入され、このリベット部52の先端側がリンケージ部21の外部で変形されることでリンケージ部21とソケット部22とが連結固定されているものである。
【0066】
具体的に、ソケット部22は、上記第1の実施の形態の固定円筒部44に変えて、傾斜部43の下端にソケット部22の軸方向に交差する方向に沿う円板状の底面部54が形成され、この底面部54の下部にリベット部52が突設されている。
【0067】
そして、リベット部52をソケット部22から突設し、図3(a)に示すように、このリベット部52がソケット部22をリンケージ部21に圧入した状態でこのリンケージ部21の挿通孔51に挿通されることで、別個のリベットなどを組み付ける工程が不要となるだけでなく、図3(b)に示すように、この挿通されたリベット部52の先端側を変形させて大径のリベット頭部55を形成することにより、ソケット部22の一部であるリベット部52を利用してソケット部22とリンケージ部21とを直接連結し、ソケット部22とリンケージ部21とを、より容易かつ確実に固定できる。
【0068】
また、ソケット部22とリンケージ部21とに亘って別個にリベットを組み付ける場合のように、ソケット部22の内室37側にリベットが突出する部分が形成されないため、内室37を広く確保できる。
【0069】
次に、第3の実施の形態を図4を参照して説明する。なお、上記第1の実施の形態と同様の構成及び作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0070】
この第3の実施の形態は、上記第1の実施の形態のボールジョイント用ハウジング17のリンケージ部21の下端に外部挿通孔27に代えて大径のハウジング挿通孔61が形成され、このハウジング挿通孔61に対して、ソケット部22の一部をなす固定部であるかしめ変形部62が挿入され、このかしめ変形部62がリンケージ部21の外部でかしめ変形されることでリンケージ部21とソケット部22とが連結固定されているものである。
【0071】
すなわち、リンケージ部21は、挿入側内周面31の下端の傾斜内周面32の下端にハウジング挿通孔61が形成されている。
【0072】
また、ソケット部22は、傾斜部43の下端に、ソケット部22の軸方向に平行で内室37の一部を区画する固定円筒部64と、固定円筒部44の下端に連続しソケット部22の軸方向に交差する方向に沿って形成され内室37の底部を区画する円板状の底部65とにより構成されるかしめ変形部62を備えている。
【0073】
そして、図4(a)に示すように、ソケット部22をリンケージ部21の圧入室部25に圧入した状態で、固定円筒部64の下端側の一部と、底部65とがリンケージ部21のハウジング挿通孔61から下方に突出し、底部65に対して下方から上方へと外力を加えることで、図4(b)に示すように、固定円筒部64の下端側が拡径されるようにかしめ変形され、ハウジング挿通孔61の周縁部に連結固定される。
【0074】
このように、ソケット部22の一部をなし内室37を区画するかしめ変形部62が、ソケット部22をリンケージ部21に圧入した状態でハウジング挿通孔61に挿通されることで、この挿通されたかしめ変形部62をかしめ変形させてハウジング挿通孔61の周縁部に固定することにより、ソケット部22とリンケージ部21とを容易かつ確実に固定できる。
【0075】
また、かしめ変形部62は、ソケット部22の一部をなすものであるため、別個のリベットでソケット部とリンケージ部とを連結固定したり、ソケット部22に連結用の突出部を設けたりする場合と比較して、重量を増加させる余分な部分が不要となり、より軽量化できる。
【0076】
しかも、リンケージ部21は、ソケット部22の一部を軸方向に突出させるために、軸方向の寸法を抑制できるので、材料コストを削減できるだけでなく、リンケージ部21をより軽量化できる。
【0077】
なお、上記各実施の形態において、ボールジョイント11の細部は、上記構成に限定されるものではなく、上記各実施の形態のボールジョイント用ハウジング17は、例えばボールジョイントとしてのボールブッシュ(ピロボール)用のハウジングなどとしても適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】(a)は本発明の第1の実施の形態のボールジョイント用ハウジングの製造方法の圧入工程を示す説明断面図、(b)は同上ボールジョイント用ハウジングの製造方法の固定工程を示す説明断面図である。
【図2】同上ボールジョイント用ハウジングを備えたボールジョイントを示す説明断面図である。
【図3】(a)は本発明の第2の実施の形態のボールジョイント用ハウジングの製造方法の圧入工程を示す説明断面図、(b)は同上ボールジョイント用ハウジングの製造方法の固定工程を示す説明断面図である。
【図4】(a)は本発明の第3の実施の形態のボールジョイント用ハウジングの製造方法の圧入工程を示す説明断面図、(b)は同上ボールジョイント用ハウジングの製造方法の固定工程を示す説明断面図である。
【符号の説明】
【0079】
11 ボールジョイント
12 ボールスタッド
13 球頭部であるボール部
17 ボールジョイント用ハウジング
21 外部ハウジング体としてのリンケージ部
22 内部ハウジング体としてのソケット部
27 外部挿通孔
39 内部挿通孔
46 固定部であるリベット
51 挿通孔
52 固定部であるリベット部
61 ハウジング挿通孔
62 固定部であるかしめ変形部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塑性変形可能な材料により形成され、かしめ変形により球頭部を内部に保持する内部ハウジング体と、
この内部ハウジング体と別体に設けられ、この内部ハウジング体が圧入される外部ハウジング体と、
この内部ハウジング体を前記外部ハウジング体に圧入した状態で変形加工されて前記内部ハウジング体を前記外部ハウジング体に固定する固定部と
を具備したことを特徴とするボールジョイント用ハウジング。
【請求項2】
内部ハウジング体は、内部挿通孔を備え、
外部ハウジング体は、前記内部ハウジング体を圧入した状態で前記内部挿通孔と連通する外部挿通孔を備え、
固定部は、前記内部挿通孔及び前記外部挿通孔に挿通されて先端側が変形されるリベットである
ことを特徴とする請求項1記載のボールジョイント用ハウジング。
【請求項3】
外部ハウジング体は、内部ハウジング体と対向する位置に挿通孔を備え、
固定部は、前記内部ハウジング体から突設され、この内部ハウジング体の前記外部ハウジング体への圧入により前記挿通孔に挿通され、この挿通孔に挿通された状態で先端側が変形されるリベット部である
ことを特徴とする請求項1記載のボールジョイント用ハウジング。
【請求項4】
外部ハウジング体は、ハウジング挿通孔を備え、
固定部は、前記内部ハウジング体の一部をなし、前記内部ハウジング体の前記外部ハウジング体への圧入により前記ハウジング挿通孔に挿通され、かしめ変形によりこのハウジング挿通孔の周縁部に固定されるかしめ変形部である
ことを特徴とする請求項1記載のボールジョイント用ハウジング。
【請求項5】
請求項1ないし4いずれか一記載のボールジョイント用ハウジングと、
このボールジョイント用ハウジングの内部ハウジング体に回動可能に保持される球頭部を有するボールスタッドと
を具備したことを特徴とするボールジョイント。
【請求項6】
塑性変形可能な材料により形成されかしめ変形により球頭部を内部に保持する内部ハウジング体を、この内部ハウジング体と別体の外部ハウジング体に圧入する圧入工程と、
この圧入状態で固定部を変形加工することにより前記内部ハウジング体を前記外部ハウジング体に固定する固定工程と
を具備したことを特徴とするボールジョイント用ハウジングの製造方法。
【請求項7】
固定部は、内部ハウジング体の内部挿通孔と、この内部ハウジング体を外部ハウジング体に圧入した状態で前記内部挿通孔に連通する外部ハウジング体の外部挿通孔とに挿通されるリベットであり、
固定工程にて、前記内部挿通孔及び前記外部挿通孔に挿通されたリベットの先端側を変形させることで前記内部ハウジング体を前記外部ハウジング体に固定する
ことを特徴とする請求項6記載のボールジョイント用ハウジングの製造方法。
【請求項8】
固定部は、内部ハウジング体から突設されたリベット部であり、
固定工程にて、前記内部ハウジング体の前記外部ハウジング体への圧入により前記挿通孔に挿通されたリベット部の先端側を前記外部ハウジング体の外部にて変形させることで前記内部ハウジング体を前記外部ハウジング体に固定する
ことを特徴とする請求項6記載のボールジョイント用ハウジングの製造方法。
【請求項9】
固定部は、内部ハウジング体の一部をなすかしめ変形部であり、
固定工程にて、前記内部ハウジング体の前記外部ハウジング体への圧入により前記ハウジング挿通孔に挿通された前記かしめ変形部をかしめ変形して前記ハウジング挿通孔の周縁部に固定することで前記内部ハウジング体を前記外部ハウジング体に固定する
ことを特徴とする請求項6記載のボールジョイント用ハウジングの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−47291(P2009−47291A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−216620(P2007−216620)
【出願日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(000198271)株式会社ソミック石川 (91)
【Fターム(参考)】