説明

ボールペンレフィル

【課題】ボールペンチップの先端部に、少なくともボールを被膜する透明又は半透明の保護用樹脂被膜を付着するボールペンレフィルにおいて、インキ収容筒に収容したインキの色が、外部から識別可能なボールペンレフィルを簡単な構造で提供することである。
【解決手段】本発明は、インキ収容筒内に、ボールペン用インキを直詰めするとともに、前記インキ収容筒の先端部に、ボールを回転自在に抱持したボールペンチップを、直接又はチップホルダーを介して装着してなるボールペンレフィルであって、前記ボールペンチップの先端部に、少なくとも前記ボールを被膜する透明又は半透明の保護用樹脂被膜を付着するとともに、前記ボールと保護用樹脂被膜間に、前記ボールペン用インキの層を形成したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インキ収容筒内に、ボールペン用インキを直詰めし、前記インキ収容筒の先端部に、ボールを回転自在に抱持したボールペンチップの後端部を圧入装着してなるボールペンレフィルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ボールペンにおいて、黒、赤、青のように、1種類のボールペンに使用可能なボールペンレフィルにおいて、複数のインキ色が望まれている。
【0003】
こうしたインキ収容筒内に収容したインキ色を外部から確認するために、特開平8−104093号公報「ボールペン」等に開示のように、チップホルダーや尾栓等をインキ色と同色とする構造はよく知られている。
【0004】
また、チップ先端部の保護及びインキ垂れ下がり防止のために、チップ先端部に保護用樹脂被膜を有するボールペンも開示されており、登録実用新案第3076019号公報「チップ先端部に保護用樹脂被膜を有するボールペン用中芯及びそれを用いたボールペン」等には、保護用樹脂被膜を着色した構造が開示されている。
【特許文献1】「特開平8−104093号公報」
【特許文献2】「登録実用新案第3076019号公報」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、チップホルダーや尾栓等をインキ色と同色とすると、インキ色に併せて各部品を代える必要があり、製造コストが高騰する問題があった。同様に、保護用樹脂被膜を着色すると、製造工程の増加等により、コストが高騰する問題があった。
【0006】
本発明は上記問題を鑑み、ボールペンチップの先端部に、少なくともボールを被膜する透明又は半透明の保護用樹脂被膜を付着するボールペンレフィルにおいて、インキ収容筒に収容したインキの色が、外部から識別可能なボールペンレフィルを簡単な構造で提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために本発明では、インキ収容筒内に、ボールペン用インキを直詰めするとともに、前記インキ収容筒の先端部に、ボールを回転自在に抱持したボールペンチップを、直接又はチップホルダーを介して装着してなるボールペンレフィルであって、前記ボールペンチップの先端部に、少なくとも前記ボールを被膜する透明又は半透明の保護用樹脂被膜を付着するとともに、前記ボールと保護用樹脂被膜間に、前記ボールペン用インキの層を形成したことを特徴とする。
【0008】
また、前記ボールペン用インキの層の最大厚さが、0.01mm〜0.2mmであることを特徴とする。
【0009】
また、前記ボールペン用インキに、濡れ剤を含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、ボールペンチップの先端部に、少なくともボールを被膜する透明又は半透明の保護用樹脂被膜を付着するボールペンレフィルにおいて、インキ収容筒に収容したインキの色が、外部から識別可能なボールペンレフィルを簡単な構造で提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明における保護用樹脂被膜には、エチレン−酢酸ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ゴム系樹脂などの保護用樹脂被膜に用いることができる透明又は半透明の樹脂被膜を適宜用いることができる。
【0012】
また、ボールと保護用樹脂被膜間に形成するボールペンインキの層は、インキの層が薄過ぎると、外部からインキ色を識別し難く、インキの層が厚すぎると、チップ先端部から保護用樹脂被膜が剥がれやすくなるため、インキの層の厚さは、最大厚さが0.01mm〜0.2mmが好ましく、0.05mm〜0.1mmとすることが最も好ましい。
【0013】
本発明において、ボールペン用インキには、油性、水性のいずれも含まれ、ボールペン用インキの着色剤は、染料、顔料等、特に限定されるものではなく、適宜選択して使用することができる。特に、ボールペンレフィルに組立て後の外観においては、染料系のインキを用いると、顔料系に比べて、発色性が低く、製造工程でインキ色の識別を間違え易いため、本発明の効果は顕著である。
【0014】
ボールと保護用樹脂被膜間のインキ層の形成方法は、特に限定されない。一例としては、チップ先端部に保護用樹脂被膜を付着した後に、ボールペンチップ内及びボールペン用インキ内等に混入した空気を排出する遠心行程を行うことによって、ボールと保護用樹脂被膜間にボールペンインキ層を形成することができる。
【0015】
さらに、本発明に用いるボールペン用インキ組成物に濡れ剤を含有することで、ボールと保護用樹脂被膜間に形成するボールペンインキの層の該インキが、金属チップ先端より広がり易くなるため、インキ色が外部から、より識別し易くなるため好ましい。具体的には、濡れ剤としては、アセチレングリコール系界面活性剤、シリコン系界面活性剤、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩などが挙げられる。これらは単独又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0016】
実施例1
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明するが、本発明のボールペンレフィルは実施の形態に限定されるものではない。尚、図面中同じ部材、同じ部品については同じ番号を付してある。
【0017】
図1〜2に示すボールペンレフィル1は、ボール3の一部がチップ先端部4aより突出するように回転自在に抱持したボールペンチップ4を、インキ収容筒2の先端部に、直接、圧入装着している。また、インキ収容筒2内には、ボールペン用インキ7と、ボールペン用インキに追従するインキ追従体8を直に収容し、インキ収容筒2の後端部には尾栓6を装着してある。
【0018】
また、ボール3の後方には、コイルスプリング5を配設し、非使用時には、コイルスプリングの押圧力によってチップ先端部4aの内壁面に密接しているとともに、筆記時の筆圧によってボール3とチップ先端部4aの内壁とに隙間を形成して、ボールペン用インキを紙面等に流出する弁機構となっている。
【0019】
次に本発明に用いるボールペン用インキ組成物の作製方法の一例を説明する。
先ず水、水溶性有機溶剤、pH調整剤、保湿剤、リン酸エステル界面活性剤、濡れ剤、防錆剤、防菌剤、染料をマグネットホットスターラーで加温撹拌してベースインキを作成する。その後、上記作製したベースインキを加温しながら、剪断減粘性付与剤を投入してホモジナイザー攪拌機を用いて均一な状態となるまで充分に混合攪拌した後、濾紙を用い濾過を行って、水性ボールペン用インキ組成物を得た。具体的な配合量は下記の通りである。尚、インキ粘度は、ブルックフィールド社製DV−II粘度計(CPE−42ローター)を用いて20℃の環境下で、剪断速度1.92sec−1(回転数0.5rpm)、にてインキ粘度を測定したところ、1800mPa・sであった。
【0020】
具体的なインキ配合は、以下の通りである。
水 59.9質量部
水溶性有機溶剤(エチレングリコール) 20.0質量部
pH調整剤(トリエタノールアミン) 5.0質量部
保湿剤(尿素) 5.0質量部
保湿剤(ソルビットL) 3.0質量部
リン酸エステル界面活性剤(プライサーフA−215C) 1.0質量部
濡れ剤(アセチレングリコール系界面活性剤) 0.1質量部
防錆剤(ベンゾトリアゾール) 0.5質量部
防菌剤(1,2ベンゾイソチアゾリン−3−オン) 0.5質量部
染料(アシッドブルー9) 5.0質量部
剪断減粘性付与剤(キサンタンガム) 0.4質量部
【0021】
チップ先端部4aには、透明の保護用樹脂被膜9を付着してあり、ボール径が0.7mmのボール3と保護用樹脂被膜9間に、最大厚さが0.07mmのボールペン用インキ7の層Sを形成してある。
【0022】
このように、ボール3と保護用樹脂被膜9間に、ボールペン用インキ7の層Sが形成されると、外部からインキ収容筒2内のインキ色を識別することができる、ボールペン用インキ7と同色とした、チップホルダーや尾栓等を必要としないので、ボールペン用インキ7を色替えしても共通の部品を用いることができる。
【0023】
さらに、本発明に用いるボールペンチップにおいては、ボールとボールの受け座とのクリアランスが10〜50μmの範囲であることが好ましい。これは、前記クリアランスが10μm未満では、クリアランスが小さ過ぎて、インキ吐出が少なく、インキの層が形成しずらいため、外部からインキ色を識別し難くなり、50μmを越えると、クリアランスが大き過ぎて、遠心行程で、インキが吐出し過ぎて、保護用樹脂被膜が剥がれたり、インキ漏れを起こし易くなってしまう。さらに、より好ましくは、10〜25μmの範囲である。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明のボールペンレフィルは、水性、油性、剪断減粘性を付与したインキ等、インキの種類に限定されることなく、ボールペンレフィルとして広く利用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施例1におけるボールペンレフィルの縦断面図である。
【図2】図1における、一部省略した要部拡大断面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 ボールペンレフィル
2 インキ収容筒
3 ボール
4 ボールペンチップ
4a 先端部
5 コイルスプリング
6 尾栓
7 ボール用インキ
8 インキ追従体
9 保護用樹脂被膜
S インキ層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インキ収容筒内に、ボールペン用インキを直詰めするとともに、前記インキ収容筒の先端部に、ボールを回転自在に抱持したボールペンチップを、直接又はチップホルダーを介して装着してなるボールペンレフィルであって、前記ボールペンチップの先端部に、少なくとも前記ボールを被膜する透明又は半透明の保護用樹脂被膜を付着するとともに、前記ボールと保護用樹脂被膜間に、前記ボールペン用インキの層を形成したことを特徴とするボールペンレフィル。
【請求項2】
前記ボールペン用インキの層の最大厚さが、0.01mm〜0.2mmであることを特徴とする請求項1に記載のボールペンレフィル。
【請求項3】
前記ボールペン用インキに、アセチレングリコール系界面活性剤、シリコン系界面活性剤、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩のうち少なくとも1種以上の濡れ剤を含有することを特徴とする請求項1または2に記載のボールペンレフィル。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−120327(P2010−120327A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−297768(P2008−297768)
【出願日】平成20年11月21日(2008.11.21)
【出願人】(303022891)株式会社パイロットコーポレーション (647)
【Fターム(参考)】