説明

ボールペン用O/Wエマルションインキ組成物

【目的】 本発明の目的は、長距離筆記をしても筆記性能が低下しないボールペン用O/W型エマルションインキ組成物を提供することにある。
【構成】 染料を含む油相を乳化剤によって水中に乳化分散したボールペン用O/W型エマルションインキ組成物において、前記乳化剤が、特定の構造を有するノニオン界面活性剤と、水溶性アニオン界面活性剤とを併用したボールペン用O/W型エマルションインキ組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長距離筆記をしても筆記感触が軽く滑らかで、筆跡にカスレが生じ難く、ボールペンのリフィル中で凝集、合一による油相と水相の分離が生じにくい、ボールペン用O/W型エマルションインキ組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、水溶性染料を用いたボールペン用水性インキは、筆跡が鮮やかで裏写りしにくいという特性を持っているが引っかかり感があるという欠点を持っている。着色剤を顔料にしたインキは、筆記濃度向上や沈降防止のために比較的インキ粘度を高く設定されており書き味に劣る。また、油溶性染料を有機溶剤に溶解した油性ボールペンインキは引っかかり感はないが書き味が重く、書き味を良くするために粘度を低いものとすると有機溶剤が紙に浸透する裏写りが起こる。
【0003】
裏写りがなく、筆記時の引っかかり感がないボールペンインキの従来技術として着色剤である油溶性染料と有機溶剤とからなる油相を乳化剤により水に乳化分散したボールペン用O/W型エマルションインキが知られている。
【0004】
特許文献1に記載の発明では、乳化剤としてHLBが8以下のポリグリセリン脂肪酸エステルと炭素数が8以上の水に不溶なアシル乳酸ナトリウム塩を組み合わせて使用したことで、安定したO/W型エマルションインキを作成し、裏写りがなく耐水性の優れたボールペン用インキ組成物が開示されている。
特許文献2に記載の発明では、乳化剤として、染料との相溶性の高い芳香環を有する界面活性剤を使用し、更に、エチレンオキサイドの付加数が異なる界面活性剤を組み合わせてエマルションのミセル濃度を高めた引っかかり感のない長期安定性を有するボールペン用インキ組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−173920号公報
【特許文献2】特開2010−275391号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び特許文献2で開示されているO/W型エマルションインキは、筆跡の裏写りや引っかかり感を改善しているが、ボールペン用のインキとしては、更に満たさなければならない問題がある。
即ち、ボールペンは、筆記部材となるボールがボールホルダーの先端より一部突出状態で回転自在に抱持され、このボールを紙面などの被筆記面に押し付けて移動されることによって回転し、ボール表面や内部のインキを紙面に転写するものであるが、ボールが被筆記面に押し付けられる際に、ボールホルダーの後部に形成された内方突出部であるボール受け座に強圧されるので、該部でボールの回転を阻害する摩擦が発生し、滑らかな筆記感を阻害する可能性があると共に、長距離筆記によってボール受け座が摩耗すると、ボールが後退してインキ通路の一部を塞ぎ、流通するインキ量が少なくなって突出するインキが少なくなり、筆跡がカスレる可能性がある。
上述のO/W型エマルションインキでは、ボールとボール受け座との間にインキが挟まれて強圧を受けた場合にエマルション粒子が崩壊し、壊れたエマルション粒子は合一して粒子状体を形成しなくなり、ボールと受け座との間で緩衝材として働かなくなるので長距離筆記すると磨耗が生じやすく筆跡がカスレやすくなることも考えられる。
【0007】
本発明の目的は、長距離筆記をしても筆記性能が低下しないボールペン用O/W型エマルションインキ組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、染料を含む油相を乳化剤によって水中に乳化分散したボールペン用O/W型エマルションインキ組成物において、前記乳化剤として、下記一般式(化1)〜(化8)に示す化合物から選ばれる1種もしくは2種以上の混合物であるノニオン界面活性剤と、水溶性アニオン界面活性剤とを併用したボールペン用O/W型エマルションインキ組成物を要旨とするものである。
【0009】
【化1】

【0010】
【化2】

【0011】
【化3】

【0012】
【化4】

【0013】
【化5】

【0014】
【化6】

【0015】
【化7】

【0016】
【化8】

【発明の効果】
【0017】
上記一般式(化1)〜(化8)にて示されるノニオン界面活性剤は、水酸基に最も距離の近い脂肪酸エステルまでのエーテル結合が0又は1の場合、エーテル酸素が持つ豊富な電子による電子の偏りを妨げる効果を受けないので、電子供与性の水酸基から電子吸引性の脂肪酸残基の酸素原子へ電子の偏りが生じ、水酸基では電子が不足した状態になっている。よって、上記一般式(化1)〜(化8)にて示される化合物から選ばれる1種もしくは2種以上の混合物であるノニオン界面活性剤と、水溶性アニオン界面活性剤とを組み合わせて乳化剤として使用した場合、水に溶解しイオン化したアニオン界面活性剤のアニオン基は電子を豊富に有しているために、上記一般式(化1)〜(化8)にて示されるノニオン界面活性剤の水酸基と電気的に近接することができ、上記一般式(化1)〜(化8)にて示されるノニオン界面活性剤の水酸基と水溶性アニオン界面活性剤のアニオン基との水素結合が非常に強固になり、アニオン−ノニオン界面活性剤複合体を形成すると推測される。
このアニオン−ノニオン界面活性剤複合体は、形成される時に、中に水分子を取り込んだ状態となっており、エマルションの粒子膜が強固でかつ弾力性を有するので、ボールとボール受け座との間でボールと受け座間の衝撃吸収材として作用するため、ボールとボール受け座との摩擦を軽減し、ボール受け座の摩耗を抑制させる事ができ、インキを使いきるまでの長距離筆記においても、筆記感触が重くなったり、筆跡がカスレるといった筆記不良の生じないボールペンとすることができるものと推察される。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明で使用されるノニオン界面活性剤は、上記一般式(化1)〜(化8)にて示される化合物のいずれかであって、二種以上を組み合わせて使用することもできる。
一般式(化1)で示される化合物の代表例として脂肪酸アルカノールアミドがあり、ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ラウリン酸イソプロパノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド、パーム核油脂肪酸ジエタノールアミド、ミリスチン酸ジエタノールアミド、ステアリン酸ジエタノールアミド、ステアリン酸モノエタノールアミド、ラウリン酸モノイソプロパノールアミド、ヤシ油脂肪酸N−メチルエタノールアミド等が挙げられる。
一般式(化2)で示される化合物の代表例としてグリセリン脂肪酸エステルがあり、ウンデシレン酸グリセリル、ウンデカノイン酸グリセリル、ミリスチン酸グリセリル、ステアリン酸グリセリル、イソステアリン酸グリセリル、オレイン酸グリセリル、ラウリン酸グリセリル、パルミチン酸グリセリル、ジステアリン酸グリセリル等が挙げられる。
一般式(化3)で示される化合物の代表例としてポリグリセリン脂肪酸エステルがあり、モノステアリン酸ジグリセリル、ジイソステアリン酸デカグリセリル、ジオレイン酸ジグリセリル、デカオレイン酸デカグリセリル、ドデカベヘニン酸デカグリセリル、トリオレイン酸デカグリセリル、トリステアリン酸デカグリセリル、トリステアリン酸テトラグリセリル、トリステアリン酸ヘキサグリセリル、ヘプタベヘニン酸デカグリセリル、ペンタイソステアリン酸デカグリセリル、ペンタオレイン酸デカグリセリル、ペンタステアリン酸デカグリセリル、ペンタステアリン酸テトラグリセリル、ペンタステアリン酸ヘキサグリセリル、モノイソステアリン酸ジグリセリル、モノイソステアリン酸デカグリセリル、モノオレイン酸ジグリセリル、モノオレイン酸デカグリセリル、モノオレイン酸テトラグリセリル、モノステアリン酸デカグリセリル、モノステアリン酸テトラグリセリル、モノリノール酸デカグリセリルなどが挙げられる。
一般式(化4)で示される化合物の代表例としてプロピレングリコール脂肪酸エステルがあり、モノステアリン酸プロピレングリコール、モノオレイン酸プロピレングリコール、モノパルミチン酸プロピレングリコール、モノベヘニン酸プロピレングリコール等が挙げられる。
一般式(化5)で示される化合物の代表例としてポリオキシエチレン(1〜2)アルキルエーテルがある。
一般式(化6)で示される化合物の代表例としてソルビタン脂肪酸エステルがあり、ヤシ油脂肪酸ソルビタン、パルミチン酸ソルビタン、ステアリン酸ソルビタン、セスキステアリン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、イソステアリン酸ソルビタン、セスキイソステアリン酸ソルビタン、オレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタンなどが挙げられる。
一般式(化7)で示される化合物の代表例としてショ糖脂肪酸エステルがあり、ショ糖ステアリン酸エステル、ショ糖パルミチン酸エステル、ショ糖オレイン酸エステル、ショ糖ラウリン酸エステル、ショ糖ベヘニン酸エステル、ショ糖エルカ酸エステルが挙げられる。
一般式(化8)で示される化合物の代表例として、アルキルポリグルコシドがあり、アルキル(炭素数8〜16)グルコシドが挙げられる。
脂肪酸残基のアルキル基が直鎖アルキル基の場合、立体障害が小さくアニオン−ノニオン界面活性剤複合体の界面活性剤間距離がさらに近接するため水分子のアニオン−ノニオン界面活性剤複合体への閉じ込めが強固になり、エマルションの膜を強固かつ弾力性を有する事ができるようになるために、エマルションの合一防止、受け座の摩耗防止に作用する。
【0019】
本発明における水溶性アニオン界面活性剤としては、脂肪酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、アシルイセチオン酸塩、N−アシルサルコシン塩、N−アシルメチルアラニン塩、N−アシルタウリン塩、N−アシルグルタミン酸塩、アルカンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、高級脂肪酸エステルスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、二級高級アルコール硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩、βナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、アルキルアリルスルホン酸塩、アマイドエーテルサルフェート、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩等が使用でき、より具体的には、下記のものが使用可能である。
脂肪酸塩として、ヤシ油脂肪酸カリウム、ヤシ油脂肪酸トリエタノールアミン、ヤシ油脂肪酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、ラウリン酸トリエタノールアミン、ミリスチン酸ナトリウム、ミリスチン酸カリウム、ミリスチン酸イソプロパノールアミン、パルミチン酸カリウム、パルミチン酸ナトリウム、パルミチン酸イソプロパノールアミン、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸トリエタノールアミン、オレイン酸ナトリウム、ヒマシ油脂肪酸ナトリウム、半硬化牛脂脂肪酸ソーダ石けん、半硬化牛脂脂肪酸カリ石けんが挙げられる。
ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩として、ラウリルエーテル酢酸ナトリウム、ポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸ナトリウム等が挙げられる。
アシルイセチオン酸塩として、ヤシ油脂肪酸エチルエステルスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。
N−アシルサルコシン塩として、ヤシ油脂肪酸サルコシンナトリウム、ヤシ油脂肪酸サルコシントリエタノールアミン、ラウロイルサルコシンカリウム、ラウロイルサルコシントリエタノールアミン、オレイルサルコシンナトリウム、ミリストイルサルコシンナトリウムが挙げられ、N−アシルメチルアラニン塩として、ヤシ油脂肪酸メチルアラニンナトリウム、ラウロイルメチルアラニン、ラウロイルメチルアラニンナトリウム、ラウロイルメチルアラニントリエタノールアミン、ミリストイルメチルアラニンアトリウム等が挙げられる。
N−アシルタウリン塩として、ラウロイルメチルタウリンナトリウム、ヤシ油脂肪酸メチルタウリンカリウム、ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム、ヤシ油脂肪酸メチルタウリンマグネシウム、ミリストイルメチルタウリンナトリウム、パルミトイルメチルタウリンナトリウム、ステアロイルメチルタウリンナトリウム、オレイルメチルタウリンナトリウム等が挙げられる。
N−アシルグルタミン酸塩として、ヤシ油脂肪酸グルタミン酸ナトリウム、ヤシ油脂肪酸グルタミン酸カリウム、ヤシ油脂肪酸グルタミン酸トリエタノールアミン、ラウロイルグルタミン酸カリウム、ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、ラウロイルグルタミン酸トリエタノールアミン、ミリストイルグルタミン酸カリウム、ミリストイルグルタミン酸ナトリウム、ミリストイルグルタミン酸トリエタノールアミン、ステアロイルグルタミン酸カリウム、ステアロイルグルタミン酸ナトリウム、ステアロイルグルタミン酸2ナトリウム、硬化牛脂脂肪酸アシルグルタミン酸ナトリウム等が挙げられる。
アルカンスルホン酸塩として、アルカンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。
α−オレフィンスルホン酸塩として、テトラデセンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。
アルキルスルホコハク酸塩として、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム、スルホコハク酸ラウリル2ナトリウム等が挙げられる。
高級脂肪酸エステルスルホン酸塩として、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、テトラデセンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。
アルキル硫酸エステル塩として、アルキル(11,13,15)硫酸トリエタノールアミン、アルキル(12,13)硫酸ナトリウム、アルキル(12,13)硫酸トリエタノールアミン、アルキル(12,14,16)硫酸アンモニウム、アルキル(12〜13)硫酸ジエタノールアミン、アルキル(12〜14)硫酸トリエタノールアミン、アルキル(12〜15)硫酸トリエタノールアミン、ヤシ油アルキル硫酸マグネシウム、ヤシ油アルキル硫酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸カリウム、ラウリル硫酸マグネシウム、ラウリル硫酸モノエタノールアミン、ラウリル硫酸ジエタノールアミン、ミリスチル硫酸ナトリウム、ステアロイル硫酸ナトリウム、オレイル硫酸ナトリウム、オレイル硫酸トリエタノールアミン等が挙げられる。
二級高級アルコール硫酸エステル塩として、ナトリウム−7−エチル−2−メチルウンデカノール−4−サルフェート等が挙げられる。
ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩として、ポリオキシエチレン(1)アルキル(11,13,15)エーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン(1)アルキル(11,13,15)エーテル硫酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレン(3)アルキル(11〜15)エーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン(2)アルキル(12,13)エーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン(3)アルキル(12〜14)エーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン(3)アルキル(12〜15)エーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン(2)ミリスチルエーテル硫酸ナトリウム等が挙げられる。
アルキルリン酸エステル塩として、ラウリルリン酸ナトリウム、セチルリン酸カリウム、セチルリン酸ジエタノールアミン等が挙げられる。
βナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物として、アルキルナフタレンスルホン酸塩等が挙げられる。
アルキルアリルスルホン酸塩として、ドデシルベンゼンスルホン酸等が挙げられる。
アマイドエーテルサルフェートとして、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド硫酸ナトリウム等が挙げられる。
ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩として、ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンオクチルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンセチルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸ジエタノールアミン等が挙げられる。
ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテルリン酸塩として、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルのリン酸ナトリウム塩、リン酸トリエタノールアミン塩が挙げられる。
これに加えてアルキルアリルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレン誘導体フェニルエーテル硫酸エステル塩、アルキルスルホン酸フェニルエステルポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、脂肪酸グリセリド硫酸エステル塩、高級脂肪酸アルキロールアミド硫酸エステル塩、高級脂肪酸アミドスルホン酸塩、アルキルアリルスルホン酸塩のホルマリン縮合物、スルホアルキルポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテルスルホン酸塩、脂肪酸アルカノールアミド硫酸エステル塩、α−スルホ脂肪酸メチルエステル塩、不均化ロジン酸セッケン、ナフテン酸セッケン、アシル乳酸塩、ポリオキシエーテルアルキルアリルエーテル脂肪酸塩が挙げられる。
尚、本発明における水溶性アニオン界面活性剤の水溶性とは、25℃における水への溶解度が0.01g/水100g以上であるアニオン界面活性剤をいう。また、ナトリウム塩やカリウム塩など1価の金属塩であることが好ましい。
水への溶解度が25℃において0.01g/水100gより少ないと、アニオン界面活性剤が水に溶解し電離することができないため、エマルション粒子表面にアニオン界面活性剤のアニオン基を配向せずにアニオン−ノニオン界面活性剤複合体を形成できないものと推察される。
また、アルキル基を有し、このアルキル基が直鎖アルキルであれば、立体障害が小さいので、水と相溶性のない炭化水素は高密度で油相に配向することができることから、界面活性剤間距離が近接し、高密度に配向した界面活性剤同士の水素結合の量が増大することでエマルションの膜は強固になり、高密度に配向した界面活性剤によって仕切られた空間に水分子が取り込まれていることで、水分子は界面活性剤間の移動が制限され、界面活性剤分子方向に移動するようになるためにエマルションの弾力性が向上し、エマルションの合一防止、受け座の摩耗防止に作用する。さらに、水溶性アニオン界面活性剤の中でもアニオン基がリン酸エステル塩、カルボン酸塩水溶性アニオン界面活性剤を用いると、リン酸塩のリン原子やカルボン酸塩の炭素原子の電気陰性度が低いため、アニオン基の酸素原子に電子が多くなることで、ノニオン界面活性剤との水素結合がより強固になるために、受け座の摩耗防止に作用する。
【0020】
本発明に用いるノニオン界面活性剤と水溶性アニオン界面活性剤の総量はインキ組成物全体の0.1重量%以上5重量%以下が好ましい。界面活性剤の総量が0.1重量%未満であると、アニオン−ノニオン界面活性剤複合体の量が少ないため、ボールとボール受け座間の緩衝作用を十分に果たさず、ボール受け座の磨耗防止の効果が十分に現れない場合がある。また、5重量%より多くなるとインキの界面張力が低下し、筆跡の滲みが生じるようになる。
【0021】
油相を着色する染料としては従来油性ボールペン用インキに用いられている染料が限定無く使用可能である。染料としては、酸性染料、塩基性染料、金属錯塩染料、造塩染料、アジン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、トリフェニルメタン染料などが使用でき、具体的にはニグロシンベ−スEE、同EEL、同EX、同EXBP、同EB、オイルイエロー101、同107、オイルピンク312、オイルブラウンBB、同GR、オイルグリーンBG、オイルブルー613、オイルスカーレット308、同BOS、オイルブラックHBB、同860、同BS、バリファストイエロー1101、同1105、同1109、同3104、同3105、同3108、同4120、同AUM、バリファストオレンジ2210、同3209、同3210、バリファストレッド1306、同1308、同1320、同1355、同1360、同2303、同2320、同3304、同3306、同3320、バリファストピンク2310N、バリファストブラウン2402、同3405、バリファストグリーン1501、バリファストブルー1603、同1605、同1607、同1631、同2606、同2610、同2620、バリファストバイオレット1701、同1702、バリファストブラック1802、同1805、同1807、同3804、同3806、同3808、同3810、同3820、同3830、スピリットレッド102、スピリットブラックAB、オスピーイエローRY、ROB−B、MVB3、SPブルー105(以上、オリエント化学工業(株)製)、アイゼンスピロンイエロー3RH、同GRLHスペシャル、同C−2GH、同C−GNH、アイゼンスピロンオレンジ2RH、同GRHコンクスペシャル、アイゼンスピロンレッドGEH、同BEH、同GRLHスペシャル、同C−GH、同C−BH、アイゼンスピロンバイオレットRH、同C−RH、アイゼンスピロンブラウンBHコンク、同RH、アイゼンスピロンマホガニーRH、アイゼンスピロンブルーGNH、同2BNH、同C−RH、同BPNH、アイゼンスピロングリーンC−GH、同3GNHスペシャル、アイゼンスピロンブラックBNH、同MH、同RLH、同GMHスペシャル、同BHスペシャル、S.B.N.オレンジ703、S.B.N.バイオレット510、同521、S.P.T.オレンジ6、S.P.T.ブルー111、SOTピンク1、SOTブルー4、SOTブラック1、同6、同10、同12、13リキッド、アイゼンローダミンBベース、アイゼンメチルバイオレットベース、アイゼンビクトリアブルーBベース(以上、保土谷化学工業(株)製)、オイルイエローCH、オイルピンク330、オイルブルー8B、オイルブラックS、同FSスペシャルA、同2020、同109、同215、ALイエロー1106D、同3101、ALレッド2308、ネオスーパーイエローC−131、同C−132、同C−134、ネオスーパーオレンジC−233、ネオスーパーレッドC−431、ネオスーパーブルーC−555、ネオスーパーブラウンC−732、同C−733(以上、中央合成化学(株)製)、オレオゾールファストイエロー2G、同GCN、オレオゾールファストオレンジGL、オレオゾールファストレッドBL、同RL(以上、田岡化学工業(株)製)、サビニールイエロー2GLS、同RLS、同2RLS、サビニールオレンジRLS、サビニールファイアレッドGLS、サビニールレッド3BLS、サビニールピンク6BLS、サビニールブルーRN、同GLS、サビニールグリーン2GLS、サビニールブラウンGLS(以上、サンド社製、スイス国)、マゼンタSP247%、クリスタルバイオレット10B250%、マラカイトグリーンクリスタルコンク、ブリリアントグリーンクリスタルH90%、スピリットソルブルレッド64843(以上、ホリディ社製、英国)、ネプチューンレッドベース543、ネプチューンブルーベース634、ネプチューンバイオレットベース604、バソニールレッド540、バソニールバイオレット600、ビクトリアブルーF4R、ニグロシンベースLK(以上、BASF社製、独国)、メチルバイオレット2Bベース(以上、National Anilne Div.社製、米国)などが使用できる。これらは単独で用いても複数を混合して用いてもよい。
【0022】
O/W型エマルションインキ全量に対して染料を含む油相は10重量%以上50重量%以下、水相は50重量%以上90重量%以下であることが好ましい。
【0023】
油溶性染料の添加量は油相50重量%以下、好ましくは45重量%以下で使用できる。多くなると有機溶剤に溶解せず油相部分が不安定になりエマルションの熱安定性が悪くなることがある。
【0024】
また、色調調整に水相に従来公知の水性染料として酸性染料、直接染料、塩基性染料等を油溶性染料に追加して使用することができる。また顔料も水相・油相両方に併用できる。顔料の例を挙げると、ファーネストブラック、コンタクトブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック、黒色酸化鉄、黄色酸化鉄、赤色酸化鉄、群青、紺青、コバルトブルー、チタンイエロー、ターコイズ、モリブデートオレンジ、酸化チタン等の無機顔料、金粉、銀粉、銅粉、アルミニウム粉、真鍮粉、錫粉等の金属粉顔料、雲母系顔料、C.I.PIGMENT RED2、同3、同5、同17、同22、同38、同41、同48:2、同48:3、同49、同50:1、同53:1、同57:1、同58:2、同60、同63:1、同63:2、同64:1、同88、同112、同122、同123、同144、同146、同149、同166、同168、同170、同176、同177、同178、同179、同180、同185、同190、同194、同206、同207、同209、同216、同245、C.I.PIGMENT ORANGE 5、同10、同13、同16、同36、同40、同43、C.I.PIGMENT VIOLET 19、同23、同31、同33、同36、同38、同50、C.I.PIGMENT BLUE 2、同15、同15:1、同15:2、同15:3、同15:4、同15:5、同16、同17、同22、同25、同60、同66、C.I.PIGMENT BROWN 25、同26、C.I.PIGMENT YELLOW 1、同3、同12、同13、同24、同93、同94、同95、同97、同99、同108、同109、同110、同117、同120、同139、同153、同166、同167、同173、C.I.PIGMENT GREEN 7、同10、同36等がある。これらは、1種もしくは2種以上混合して用いることが出来る。また、顔料を水性媒体に分散した分散顔料の例を挙げると、チバスペシャリティケミカルズ(株)製のunisperseシリーズ、クラリアントジャパン(株)製のHostfineシリーズ、大日本インキ化学工業(株)製のDisperseシリーズ、Ryudyeシリーズ、富士色素(株)製のFuji.SPシリーズ、山陽色素(株)製のEmacolシリーズ、Sandyeシリーズ、オリエント化学工業(株)製のMicroPigmoシリーズ、MicroJetシリーズ、東洋インキ(株)製のRio Fastシリーズ、EM Colorシリーズ、住化カラー(株)製のPoluxシリーズ、(以上、無機、有機顔料の分散体)、日本蛍光化学(株)製のNKWシリーズ、東洋ソーダ(株)製のコスモカラーシリーズ、シンロイヒ(株)製のシンロイヒ・カラーベースシリーズ(以上、蛍光顔料の分散体)等がある。これらは1種もしくは2種以上混合して用いることが出来る。
尚、上記染料、顔料、分散顔料は混合して使用することもできる。
【0025】
エマルションインキ組成物の油相溶剤に使用できるものとしては、従来より油性インキボールペンで使用され、油溶性染料を溶解することができるものであれば際限なく使用できる。筆跡濃度が濃く鮮明になるようにするためには油溶性染料を30重量%以上溶解できるものであることが好ましい。
また、水に溶解し難く、水への溶解度として5g/水100g以下であることが好ましい。油相溶剤の水への溶解度が5g/水100gより大きい場合、油相から水相へ溶剤が移動しやすく、エマルション粒子表面の強度が弱くなるためにボールとボール受け座間の緩衝作用が低下することがある。
油相溶剤に使用できるものの具体例としては、1価のアルコールとしては、β−フェニルエチルアルコール、ベンジルアルコール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、イソトリデシルアルコールが挙げられ、グリコールエーテルとしては、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、エチレンググリコールモノエチルベンジルエーテル、エチレングリコールモノα‐メチルベンジルエーテル、エチレングリコールモノα,α’ジメチルベンジルエーテル、エチレングリコールモノメチルフェニルエーテル異性体混合物、エチレングリコールモノジメチルフェニルエーテル異性体混合物、エチレングリコールモノエチルフェニルエーテル異性体混合物、エチレングリコールモノメチルベンジルエーテル異性体混合物、エチレングリコールモノエチルベンジルエーテル異性体混合物、エチレングリコールモノシクロヘキシルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、モノベンジルエーテル、プロピレングリコールモノシクロヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノシクロヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルフェニルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノフェニルエーテル、ジプロピレングリコールモノベンジルエーテル、ジプロピレングリコールモノシクロヘキシルエーテル、トリプロピレングリコールモノフェニルエーテル、3−メチル−3−メトキシ−1−ブタノール、ジエチレングリコールジブチルエーテル等が挙げられ、グリコールエーテルアセテートとしては、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、エチレングリコールブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート等が挙げられ、グリコールジアセテートとしては、エチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート等が挙げられ、エステルとしては、酢酸−2−メチルペンチル、酢酸−1−メチルアミル、酢酸ヘプチル、酢酸オクチル、酢酸−2−エチルヘキシル、酢酸ノニル、酢酸デシル、酪酸ブチル、乳酸−n−ブチル、乳酸アミル、アジピン酸オクチル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジオクチル、トリアセチン、γ−ブチロラクトン等が挙げられ、窒素含有溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−2−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン、N−シクロヘキシル−2−ピロリドン等が挙げられる。
これらは単独で用いてもまた2種以上混合して用いても良い。配合量はエマルションインキ組成物の油相に対し1重量%以上90重量%以下である。
【0026】
インキの乾燥防止や凍結防止のために水性成分に水溶性有機溶剤を配合することが望ましく、具体的には多価アルコールとして、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、ヘキシレングリコール、チオジエチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、2−ブテン−1,4−ジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,2−オクタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ペンタンジオール、4−メチル−1,2−ペンタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2,4−ブタントリオール等が挙げられ、1価のアルコールとして、エタノール、メタノール、ブタノール、プロパノール、イソプロパノールなどの炭素数1〜4のもの等が挙げられ、グリコールエーテルとして、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、1−メチル−1−メトキシブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル等が挙げられ、これに加えて、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセチン、ジアセチン、トリアセチン、スルホラン等が挙げられる。これらの1種又は2種以上を用いることができる。配合量は水性成分全体の50重量%以下が好ましい。
【0027】
ボールペンインキとして望ましい粘度やレオロジー性能を付与するために、水性成分に、高分子多糖類や合成高分子などを添加することができる。
高分子多糖類として、プルラン、ザンサンガム、ウェランガム、ラムザンガム、デンプン、カチオンデンプン、デキストリン、デンプングリコール酸ナトリウム及びそれらの誘導体、アラビアガム、トラガカントガム、ローカストビーンガム、グアーガム及びその誘導体、寒天、カラゲニン、アルギン酸、アルギン酸塩、ペクチン、ゼラチン、ガゼイン、ガゼインナトリウム、グルコマンナン、デキストラン、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、デンプングリコール酸ナトリウム、ラノリン誘導体、キトサン誘導体等が挙げられ、合成高分子としては、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルピロリドン及びその誘導体、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリアクリル酸およびその共重合体、ポリアクリル酸またはポリメタクリル酸のアルカリ塩、アクリル酸またはメタクリル酸含有共重合体のアルカリ塩、スチレンとマレイン酸の共重合体のアルカリ塩、酢酸ビニルとクロトン酸の共重合体のアルカリ塩等が挙げられる。
【0028】
水相のpH調整のために、pH調整剤を配合することができ、有機系または無機系の塩基および酸が使用される。好ましい有機系塩基はアミン類として脂肪アミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、ジイソプロピルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、アミノメチルプロパノールまたはジメチルアミノメチルプロパノールが挙げられ、好ましい無機系塩基として水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、またはアンモニア等が挙げられる。
水相のpHが高いと造塩染料などは構造が不安定になり染料の析出が発生したり、pHが低いとボールペンチップの腐食が発生するため適宜公知のpH調整剤を用いて水相のpHを4.5〜9.5程度に保つことが好ましい。
【0029】
染料の退色防止のために、紫外線吸収剤を配合することができ、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、サリチレート、ジベンゾイルメタン、アントラニレート、メチルベンジリデン、オクチルトリアゾン、2−フェニルベンズイミダゾール−5−スルホン酸、オクトクリレン、トリアジン、シンナメート、シアノアクリレート、ジシアノエチレン、エトクリレン、ドロメトリゾールトリシロキサン、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェノールトリアジン、ドロメトリゾール、ジオクチルブタミドトリアゾン、テレフタリリデンジカンファースルホン酸およびパラ−アミノベンゾエート、サリチル酸、ベンズオキサゾール、ピリチオン亜鉛、ならびに、それらのエステル誘導体等が挙げられる。
【0030】
インキの経時変化による影響を抑えるために、酸化防止剤を配合することができ、ビタミンCおよびその誘導体として酢酸アスコルビル、リン酸アスコルビルおよびパルミチン酸アスコルビルが挙げられ、ビタミンEおよびその誘導体として酢酸トコフェリル、フラボンもしくはフラボノイドが挙げられ、アミノ酸としてヒスチジン、グリシン、チロシン、トリプトファンおよびそれらの誘導体が挙げられ、ビタミンAおよびその誘導体、葉酸およびその誘導体、カロテノイドおよびカロテン、尿酸およびその誘導体、クエン酸、乳酸、リンゴ酸スチルべンおよびその誘導体、ザクロ抽出物、ビタミンK1もしくはK2、ビタミンK1オキシドもしくはビタミンK2オキシド等が挙げられる。
【0031】
錆の発生を抑制するために、防錆剤を配合することができ、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオグリコール酸アンモニウム、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、サポニン等が挙げられる。
【0032】
腐食や黴の発生を抑制するために防腐剤、防黴剤を配合することができ、石炭酸、1、2−ベンズチアゾリン3−オンのナトリウム塩、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、パラオキシ安息香酸プロピル、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルフォニル)ピリジン、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム等が挙げられる。
【0033】
O/W型エマルションインキを作成する乳化分散の方法は特に制限されるものではなく、スターラー、ホモミキサー、ホモジナイザーなどで適当な温度で撹拌することで作成することができるが、アニオン界面活性剤及びHLBが10以上の水溶性ノニオン界面活性剤は予め水相に溶解し、HLBが10未満の油溶性ノニオン界面活性剤は予め油相に溶解しておくことで界面活性剤が均一に分散し乳化しやすくなる。また、作成したエマルションをさらに微細にするために高圧ホモジナイザー処理することもできる、エマルション粒子径を揃えたり不溶解物を除くためにろ過や遠心処理をすることもできる。ボールペン形態にしたときにインキを書き切るまでの長期間分散状態を維持することができるように作成後のエマルションの平均粒子径は1μm以下にすることが好ましい。
乳化剤以外の用途に用いる界面活性剤は乳化処理後に添加を行うことが好ましい。
【実施例】
【0034】
実施例1
スピロンバイオレットC−RH(着色剤:保土ヶ谷化学工業(株)製) 7.00重量%
スピロンイエローC−GNH(着色剤:保土ヶ谷化学工業(株)製) 2.50重量%
ベンジルアルコール(油相溶剤) 20.50重量%
ラウリン酸ジエタノールアミド(ノニオン界面活性剤、化1で示される化合物、HLB=12.0) 0.50重量%
ラウロイルサルコシンナトリウム(水溶性アニオン界面活性剤) 0.60重量%
グリセリン 20.00重量%
PVP K−90(ポリビニルピロリドン:ISPジャパン(株)製) 0.70重量%
イオン交換水 45.40重量%
油相溶剤に着色剤を加え80℃3時間加熱撹拌してA液を作成する。ラウリン酸ジエタノールアミド及びラウロイルサルコシンナトリウム、グリセリン、PVP K−90、イオン交換水を25℃で1時間撹拌しB液を作成する。80℃でA液にB液を加えマグネチックスターラーで45分撹拌したあと撹拌しながら冷却し黒色エマルションインキを作成した。
【0035】
実施例2
スピロンイエローC−GNH(着色剤) 3.35重量%
スピロンレッドC−GH(着色剤:保土ヶ谷化学工業(株)製) 3.15重量%
スピロンレッドC−BH(着色剤:保土ヶ谷化学工業(株)製) 5.50重量%
ベンジルアルコール(油相溶剤) 5.40重量%
エチレングリコールモノフェニルエーテル(油相溶剤) 12.60重量%
モノステアリン酸プロピレングリコール(ノニオン界面活性剤、化4で示される化合物、HLB=3.5) 1.05重量%
オレイルサルコシンナトリウム(水溶性アニオン界面活性剤) 0.05重量%
エチレングリコール 25.00重量%
ケルザンAR(キサンタンガム:三晶(株)製) 0.60重量%
イオン交換水 42.00重量%
油相溶剤に着色剤、モノステアリン酸プロピレングリコールを加え80℃3時間加熱撹拌してA液を作成する。オレイルサルコシンナトリウム、エチレングリコール、ケルザンAR、イオン交換水を20℃1時間撹拌しB液を作成する。スリーワンモーターでB液を75℃に加熱し撹拌しながらA液を滴下し75℃で45分撹拌したあと、撹拌しながら冷却し赤色エマルションインキを作成した。
【0036】
実施例3
スピロンレッドC−BH(着色剤) 1.30重量%
ネオスーパーブルーC−555(着色剤:中央合成化学(株)製) 10.30重量%
エチレングリコールモノフェニルエーテル(油相溶剤) 18.40重量%
モノパルミチン酸ソルビタン(ノニオン界面活性剤、化6で示される化合物、HLB=6.7) 0.20重量%
ペラルゴン酸スルホン酸ナトリウム(水溶性アニオン界面活性剤) 1.70重量%
ラウリル硫酸ナトリウム(浸透促進剤、アニオン界面活性剤) 0.10重量%
エチレングリコール 25.00重量%
ケルザンAR 0.60重量%
イオン交換水 42.40重量%
油相溶剤に着色剤、モノパルミチン酸ソルビタンを加え80℃3時間加熱撹拌してA液を作成する。80℃に加熱したペラルゴン酸スルホン酸ナトリウム、エチレングリコール、ケルザンAR、イオン交換水をホモジナイザーで撹拌しながらA液を滴下し5分間処理したあと、スリーワンモーターで撹拌しながら冷却し、ラウリル硫酸ナトリウムを加えさらに5分撹拌することで青色エマルションインキを作成した。
【0037】
実施例4
スピロンイエローC−GNH(着色剤) 6.80重量%
スピロンレッドC−BH(着色剤) 3.00重量%
エチレングリコールモノフェニルエーテル(油相溶剤) 20.20重量%
モノステアリン酸グリセリル(ノニオン界面活性剤、化2で示される化合物、HLB=4.0) 0.50重量%
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(水溶性アニオン界面活性剤) 0.20重量%
グリセリン 15.00重量%
イオン交換水 54.30重量%
油相溶剤に着色剤、モノステアリン酸グリセリルを加え80℃3時間加熱撹拌してA液を作成する。80℃に加熱したモノステアリン酸グリセリル、イオン交換水の混合物をホモジナイザーで撹拌しながらA液を滴下し5分間処理したあと、さらに高圧ホモジナイザーで20℃に冷却しながら3パス処理し橙色エマルションインキを作成した。
【0038】
実施例5
スピロンイエローC−GNH(着色剤) 4.65重量%
ネオスーパーブルーC−555(着色剤) 2.60重量%
エチレングリコールモノフェニルエーテル(油相溶剤) 22.75重量%
ショ糖モノエルカ酸エステル(ノニオン界面活性剤、化7で示される化合物、HLB=15.0) 0.10重量%
ラウリルリン酸ナトリウム(水溶性アニオン界面活性剤) 0.70重量%
グリセリン 10.00重量%
イオン交換水 59.20重量%
油相溶剤に着色剤を加え80℃3時間加熱撹拌してA液を作成する。80℃に加熱したショ糖モノエルカ酸エステル及びラウリルリン酸ナトリウム、グリセリン、イオン交換水の混合物をホモジナイザーで撹拌しながらA液を滴下し5分間処理したあと、さらに高圧ホモジナイザーで20℃に冷却しながら3パス処理し緑色エマルションインキを作成した。
【0039】
実施例6
スピロンブルーC−BH(着色剤:保土ヶ谷化学工業(株)製) 5.25重量%
ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(油相溶剤) 19.75重量%
モノリノール酸ポリグリセリル−10(ノニオン界面活性剤、化3で示される化合物、HLB=10.0) 0.30重量%
ドデシルフェニルエーテルリン酸ナトリウム(水溶性アニオン界面活性剤)
0.10重量%
グリセリン 10.00重量%
イオン交換水 64.60重量%
油相溶剤に着色剤を加え80℃3時間加熱撹拌してA液を作成する。80℃に加熱したモノリノール酸ポリグリセリル−10及びドデシルフェニルエーテルリン酸ナトリウム、グリセリン、イオン交換水の混合物をホモジナイザーで撹拌しながらA液を滴下し5分間処理したあと、さらに高圧ホモジナイザーで20℃に冷却しながら3パス処理し青色エマルションインキを作成した。
【0040】
実施例7
スピロンバイオレッドC−RH(着色剤) 7.50重量%
スピロンイエローC−GNH(着色剤) 2.85重量%
バリファーストレッド#2320(着色剤、オリエント化学工業(株)製)
0.75重量%
カーボンブラック(顔料着色剤) 3.00重量%
プロピレングリコールモノフェニルエーテル(油相溶剤) 6.40重量%
ベンジルアルコール(油相溶剤) 7.50重量%
ジイソステアリン酸ポリグリセリル−10(ノニオン界面活性剤、化3で示される化合物、HLB=10.0) 0.80重量%
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(水溶性アニオン界面活性剤) 0.10重量%
エチレングリコール 10.00重量%
PVP K−90 1.00重量%
イオン交換水 60.10重量%
油相溶剤に着色剤を加え80℃3時間加熱撹拌してA液を作成する。60℃に加熱したジイソステアリン酸ポリグリセリル−10及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、エチレングリコール、PVP K−90、イオン交換水及びビーズミルで分散処理を行った顔料着色剤分散体の混合物を撹拌しながらA液を滴下し5分間処理したあとスリーワンモーターで攪拌しながら冷却し、さらに高圧ホモジナイザーで20℃に冷却しながら3パス処理し黒色エマルションインキを作成した。
【0041】
実施例8
スピロンバイオレットC−RH(着色剤) 7.00重量%
スピロンイエローC−GNH(着色剤) 2.50重量%
ベンジルアルコール(油相溶剤) 20.50重量%
モノオレイン酸ポリグリセリル−4(ノニオン界面活性剤、化3で示される化合物、HLB=6.0) 0.05重量%
オレイル硫酸トリエタノールアミン(水溶性アニオン界面活性剤) 1.05重量%
グリセリン 20.00重量%
PVP K−90 0.70重量%
イオン交換水 45.40重量%
油相溶剤に着色剤、モノオレイン酸ポリグリセリル−4を加え80℃3時間加熱撹拌してA液を作成する。オレイル硫酸トリエタノールアミン、グリセリン、PVP K−90、イオン交換水を25℃で1時間撹拌しB液を作成する。80℃でA液にB液を加えマグネチックスターラーで45分撹拌したあと撹拌しながら冷却し黒色エマルションインキを作成した。
【0042】
実施例9
スピロンバイオレットC−RH(着色剤) 7.00重量%
スピロンイエローC−GNH(着色剤) 2.50重量%
ベンジルアルコール(油相溶剤) 20.50重量%
ラウリン酸ジエタノールアミド(ノニオン界面活性剤、化1で示される化合物、HLB=12.0) 2.00重量%
ポリオキシエチレン(5)セチルエーテルリン酸ナトリウム(水溶性アニオン界面活性剤) 1.00重量%
グリセリン 20.00重量%
PVP K−90 0.70重量%
イオン交換水 46.30重量%
油相溶剤に着色剤を加え80℃3時間加熱撹拌してA液を作成する。ラウリン酸ジエタノールアミド及びポリオキシエチレン(5)セチルエーテルリン酸ナトリウム、グリセリン、PVP K−90、イオン交換水を25℃で1時間撹拌しB液を作成する。80℃でA液にB液を加えマグネチックスターラーで45分撹拌したあと撹拌しながら冷却し黒色エマルションインキを作成した。
【0043】
実施例10
スピロンバイオレットC−RH(着色剤) 7.00重量%
スピロンイエローC−GNH(着色剤) 2.50重量%
ベンジルアルコール(油相溶剤) 20.50重量%
モノステアリン酸プロピレングリコール(ノニオン界面活性剤、化4で示される化合物、HLB=3.5) 0.10重量%
ポリオキシエチレン(10)リノールエーテルリン酸ナトリウム(水溶性アニオン界面活性剤) 0.05重量%
グリセリン 20.00重量%
PVP K−90 0.70重量%
イオン交換水 49.15重量%
油相溶剤に着色剤、モノステアリン酸プロピレングリコールを加え80℃3時間加熱撹拌してA液を作成する。ポリオキシエチレン(10)リノールエーテルリン酸ナトリウム、グリセリン、PVP K−90、イオン交換水を25℃で1時間撹拌しB液を作成する。80℃でA液にB液を加えマグネチックスターラーで45分撹拌したあと撹拌しながら冷却し黒色エマルションインキを作成した。
【0044】
実施例11
スピロンバイオレットC−RH(着色剤) 7.00重量%
スピロンイエローC−GNH(着色剤) 2.50重量%
ベンジルアルコール(油相溶剤) 20.50重量%
ステアリルグルコシド(ノニオン界面活性剤、化8で示される化合物、HLB=7.5)
0.02重量%
ポリオキシエチレン(30)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(水溶性アニオン界面活性剤) 0.04重量%
グリセリン 20.00重量%
PVP K−90 0.70重量%
イオン交換水 49.24重量%
油相溶剤に着色剤、ステアリルグルコシドを加え80℃3時間加熱撹拌してA液を作成する。ポリオキシエチレン(30)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム、グリセリン、PVP K−90、イオン交換水を25℃で1時間撹拌しB液を作成する。80℃でA液にB液を加えマグネチックスターラーで45分撹拌したあと撹拌しながら冷却し黒色エマルションインキを作成した。
【0045】
実施例12
スピロンバイオレットC−RH(着色剤) 7.00重量%
スピロンイエローC−GNH(着色剤) 2.50重量%
ベンジルアルコール(油相溶剤) 20.50重量%
ポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル(ノニオン界面活性剤、化5で示される化合物、HLB=9.5) 2.90重量%
ポリオキシエチレン(20)ジスチレン化フェニルエーテル硫酸ナトリウム(水溶性アニオン界面活性剤) 2.00重量%
グリセリン 20.00重量%
PVP K−90 0.70重量%
イオン交換水 44.40重量%
油相溶剤に着色剤、ポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテルを加え80℃3時間加熱撹拌してA液を作成する。ポリオキシエチレン(20)ジスチレン化フェニルエーテル硫酸ナトリウム、グリセリン、PVP K−90、イオン交換水を25℃で1時間撹拌しB液を作成する。80℃でA液にB液を加えマグネチックスターラーで45分撹拌したあと撹拌しながら冷却し黒色エマルションインキを作成した。
【0046】
実施例13
スピロンレッドC−BH(着色剤) 1.30重量%
ネオスーパーブルーC−555(着色剤) 10.30重量%
エチレングリコールモノフェニルエーテル(油相溶剤) 18.40重量%
ショ糖モノエルカ酸エステル(ノニオン界面活性剤、化7で示される化合物、HLB=15.0) 0.20重量%
ポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテルリン酸ナトリウム(水溶性アニオン界面活性剤) 1.70重量%
エチレングリコール 25.00重量%
ケルザンAR 0.60重量%
イオン交換水 42.50重量%
油相溶剤に着色剤を加え80℃3時間加熱撹拌してA液を作成する。80℃に加熱したショ糖モノエルカ酸エステル及びポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテルリン酸ナトリウム、エチレングリコール、ケルザンAR、イオン交換水の混合物をホモジナイザーで撹拌しながらA液を滴下し5分間処理したあと、スリーワンモーターで撹拌しながら冷却し青色エマルションインキを作成した。
【0047】
実施例14
スピロンブルーC−BH(着色剤:保土ヶ谷化学工業(株)製) 5.25重量%
ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(油相溶剤) 19.75重量%
モノリノール酸ポリグリセリル−10(ノニオン界面活性剤、化3で示される化合物、HLB=10.0) 0.30重量%
ポリオキシエチレン(15)オレイルエーテル酢酸ナトリウム(水溶性アニオン界面活性剤) 0.10重量%
グリセリン 10.00重量%
イオン交換水 64.60重量%
油相溶剤に着色剤を加え80℃3時間加熱撹拌してA液を作成する。80℃に加熱したモノリノール酸ポリグリセリル−10及びポリオキシエチレン(15)オレイルエーテル酢酸ナトリウム、グリセリン、イオン交換水の混合物をホモジナイザーで撹拌しながらA液を滴下し5分間処理したあと、さらに高圧ホモジナイザーで20℃に冷却しながら3パス処理し青色エマルションインキを作成した。
【0048】
実施例15
スピロンイエローC−GNH(着色剤) 6.80重量%
スピロンレッドC−BH(着色剤) 3.00重量%
エチレングリコールモノフェニルエーテル(油相溶剤) 20.20重量%
ジイソステアリン酸ポリグリセリル−10(ノニオン界面活性剤、化3で示される化合物、HLB=12.0) 0.50重量%
ポリオキシエチレン(25)ラウリルエーテル硫酸アンモニウム(水溶性アニオン界面活性剤) 0.20重量%
グリセリン 15.00重量%
イオン交換水 54.30重量%
油相溶剤に着色剤、ジイソステアリン酸ポリグリセリル−10を加え80℃3時間加熱撹拌してA液を作成する。80℃に加熱したポリオキシエチレン(25)ラウリルエーテル硫酸アンモニウム、イオン交換水の混合物をホモジナイザーで撹拌しながらA液を滴下し5分間処理したあと、さらに高圧ホモジナイザーで20℃に冷却しながら3パス処理し橙色エマルションインキを作成した。
【0049】
実施例16
スピロンイエローC−GNH(着色剤) 3.35重量%
スピロンレッドC−GH(着色剤:保土ヶ谷化学工業(株)製) 3.15重量%
スピロンレッドC−BH(着色剤:保土ヶ谷化学工業(株)製) 5.50重量%
ベンジルアルコール(油相溶剤) 5.40重量%
エチレングリコールモノフェニルエーテル(油相溶剤) 12.60重量%
モノオレイン酸ポリグリセリル−4(ノニオン界面活性剤、化3で示される化合物、HLB=6.0) 2.00重量%
ポリオキシエチレン(40)ドデシルフェニルエーテル硫酸ナトリウム(水溶性アニオン界面活性剤) 1.00重量%
エチレングリコール 25.00重量%
ケルザンAR(キサンタンガム:三晶(株)製) 0.60重量%
イオン交換水 42.00重量%
油相溶剤に着色剤、モノオレイン酸ポリグリセリル−4を加え80℃3時間加熱撹拌してA液を作成する。ポリオキシエチレン(40)ドデシルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、エチレングリコール、ケルザンAR、イオン交換水を20℃1時間撹拌しB液を作成する。スリーワンモーターでB液を75℃に加熱し撹拌しながらA液を滴下し75℃で45分撹拌したあと、撹拌しながら冷却し赤色エマルションインキを作成した。
【0050】
比較例1
実施例9においてラウリン酸ジエタノールアミドの全量をパルミチン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(HLB=15.6)に置き換えた以外は実施例9と同様にして黒色エマルションインキを作成した。
【0051】
比較例2
実施例13においてショ糖モノエルカ酸エステルの全量をポリオキシエチレン(10)フェトステロール(HLB=12.5)に置き換えた以外は実施例13と同様にして青色エマルションインキを作成した。
【0052】
比較例3
実施例10においてモノステアリン酸プロピレングリコールの全量をポリオキシエチレン(40)ステアリルエーテル(HLB=17.5)に置き換え、油相溶剤とではなく、イオン交換水と混合させた以外は実施例10と同様にして黒色エマルションインキを作成した。
【0053】
比較例4
実施例16においてモノオレイン酸ポリグリセリル−4の全量をポリオキシエチレン(10)クミルフェニルエーテル(HLB=15.0)に置き換えた以外は実施例16と同様にして赤色エマルションインキを作成した。
【0054】
比較例5
実施例1においてラウリン酸ジエタノールアミドの全量をステアリン酸ポリオキシエチレン(15)グリセリル(HLB=13.5)に置き換えた以外は実施例1と同様にして黒色エマルションインキを作成した。
【0055】
比較例6
実施例2においてモノステアリン酸プロピレングリコールの全量をポリオキシエチレン(9)オクチルエーテル(HLB=10.5)に置き換えた以外は実施例2と同様にして赤色エマルションインキを作成した。
【0056】
比較例7
実施例5においてショ糖モノエルカ酸エステルの全量をポリオキシエチレン(40)スチレン化フェニルエーテル(HLB=18.0)に置き換えた以外は実施例5と同様にして緑色エマルションインキを作成した。
【0057】
比較例8
実施例6においてモノリノール酸ポリグリセリル−10の全量をポリオキシエチレン(10)ノニルフェニルエーテル(HLB=14.0)に置き換えた以外は実施例6と同様にして青色エマルションインキを作成した。
【0058】
比較例9
実施例1においてラウリン酸ジエタノールアミドの全量をオレイル硫酸カリウムに置き換えた以外は実施例1と同様にして黒色エマルションインキを作成した。
【0059】
比較例10
実施例1においてラウロイルサルコシンナトリウムの全量をラウリン酸ポリグリセリル−10(HLB=15.5)に置き換えた以外は実施例1と同様にして黒色エマルションインキを作成した。
【0060】
比較例11
実施例1においてラウロイルサルコシンナトリウムの全量をポリオキシエチレン(6)セチルエーテル(HLB=10.5)に置き換えた以外は実施例1と同様にして黒色エマルションインキを作成した。
【0061】
比較例12
実施例1においてラウリン酸ジエタノールアミドの全量をポリオキシエチレン(40)ジスチレン化フェニルエーテル(HLB=18.0)に置き換え、ラウロイルサルコシンナトリウムの全量をポリオキシエチレン(10)ノニルフェニルエーテル(HLB=14.0)に置き換えた以外は実施例1と同様にして黒色エマルションインキを作成した。
【0062】
比較例13
実施例1においてラウリン酸ジエタノールアミドの全量をモノオレイン酸デカグリセリル(HLB=12.0)に置き換え、ラウロイルサルコシンナトリウムの全量をステアロイル乳酸ナトリウムに置き換えた以外は実施例1と同様にして黒色エマルションインキを作成した。
【0063】
比較例14
UNISPERSE RED 2030−S2(界面活性剤分散赤色顔料、チバスペシャリティケミカルズ(株)製) 40.00重量%
エチレングリコール 10.00重量%
サルコシネートOH(潤滑剤、N−オレオイルサルコシン、日光ケミカルズ(株)製)
3.00重量%
トリエタノールアミン 0.50重量%
イオン交換水 46.50重量%
上記成分を、プロペラで30分撹拌した後、1ミクロン糸巻きフィルターを通して赤色インキを得た。
【0064】
比較例15
実施例1においてイオン交換水の全量をベンジルアルコールに置き換えた以外は実施例1と同様にして黒色インキを作成した。
【0065】
筆記試験用試験サンプルの作成
上記実施例1〜16及び、比較例1〜15で得た各インキ組成物を直径0.5mmの超硬製のボール抱持したボールペンペン先をもつノック式ボールペン(ノック式エナージェル、製品符号BLN75、ぺんてる(株)製)のインキ収容管に1.7g充填し、試験用ボールペンサンプルとした。
【0066】
ボール受け座磨耗性評価
上記実施例1〜16及び、比較例1〜15のインキ組成物を充填した試験用ボールペンサンプルを自動筆記装置(TS−4C−10型、(株)精機工業研究所製)を使用して、筆記加重100g、筆記角度70度、毎秒7cmの速度で、リンテック(株)製NS−<55>カエテの用紙を移動させて、200mの連続した螺旋状の筆記を行った。ペン先を押し当てて、ボールを後方に移動させボール受け座を有する内方突出部に押し付けた状態で、ボールホルダー先端からのボールの突出高さについて、筆記前と上記200m筆記後でそれぞれ測定し、その差を内方突出部の摩耗量として算出した。
【0067】
筆跡のカスレ評価
ボール受け座磨耗性評価の際の筆跡を確認し、カスレの数を確認した。
【0068】
上記試験の結果を表1に示す。
【0069】
【表1】

【0070】
実施例1〜16において水溶性アニオン界面活性剤と上記一般式(化1)〜(化8)に示す構造から選ばれるノニオン界面活性剤とを組み合わせて乳化剤として使用した場合、受け座の磨耗防止作用が向上した。しかし、乳化剤中のアニオン界面活性剤とノニオン界面活性剤どちらかの割合が多すぎるとエマルションの形成安定性が低下し粒子が大きくなり、アニオン−ノニオン界面活性剤複合体が十分に形成できないため、受け座の磨耗防止性が低下してしまう。アニオン界面活性剤およびノニオン界面活性剤のエステル結合部位のアルキルが直鎖アルキルであると、活性剤間の立体障害の低下によって活性剤複合体の密度が上昇し、水分子を複合対中に強固に閉じ込めておくことができるためボール受け座の磨耗防止性が上昇する。
比較例1〜15において乳化剤がアニオン界面活性剤のみ、又はノニオン界面活性剤のみではアニオン−ノニオン界面活性剤間の水素結合を有しないため複合体を形成せず、ボール受け座磨耗性が悪い。ボール受け座の摩耗によってボールがインキ吐出部を塞いでしまうために吐出不良が起こり、カスレが生じてしまう。さらにアニオン界面活性剤のみで用いるとすぐに油相粒子の合一が起こってしまうためボールペン用インキ組成物として適さない。水溶性アニオン界面活性剤と上記一般式(化1)〜(化8)に示す構造以外のノニオン界面活性剤を組み合わせた場合、ノニオン界面活性剤の水酸基の電子は豊富に存在するためアニオン界面活性剤との電気的な接近が生じないことから複合体が形成できずボール受け座の磨耗防止作用が得られない。比較例13においてアニオン界面活性剤が水に不溶なアニオン界面活性剤の場合、水に溶解しないためイオン化せず、アニオン界面活性剤のアニオン基が水面に面することなく油相に存在するためエマルション粒子表面でアニオン−ノニオン界面活性剤複合体を形成できないためボール受け座の磨耗防止作用が得られない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
染料を含む油相を乳化剤によって水中に乳化分散したボールペン用O/W型エマルションインキ組成物において、前記乳化剤が、下記一般式(化1)〜(化8)に示す構造から選ばれるノニオン界面活性剤の1種もしくは2種以上の混合物と、水溶性アニオン界面活性剤とを併用したボールペン用O/W型エマルションインキ組成物。
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

【請求項2】
前記界面活性剤が直鎖アルキル基を有する請求項1に記載のボールペン用O/W型エマルションインキ組成物。
【請求項3】
前記水溶性アニオン界面活性剤のアニオン基がリン酸エステル塩、カルボン酸塩である請求項1又は請求項2のいずれかに記載のボールペン用O/W型エマルションインキ組成物。

【公開番号】特開2012−149229(P2012−149229A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−256510(P2011−256510)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000005511)ぺんてる株式会社 (899)
【Fターム(参考)】